(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076468
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】音出力装置
(51)【国際特許分類】
H04S 7/00 20060101AFI20230525BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230525BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H04S7/00 300
G08G1/16 F
B60R11/02 S
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035187
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2021143074の分割
【原出願日】2017-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】針谷 真人
(57)【要約】
【課題】移動体の搭乗者に対して状況に応じた適正な報知音を出力できる音出力装置を提供する。
【解決手段】ドライバモニタリング部は、心拍センサ、車内カメラなどを用いて、搭乗者の覚醒度、および、運転集中度等を推定する。報知音音像定位制御部は、報知音の種別と車両状態情報から、報知音の重要度を判定する。また、車両状態情報、覚醒度、運転集中度に基づいて、搭乗者の報知音に対する感度を判定する。また、報知音に対する感度に応じて、報知音の音像定位を制御する。そして、報知音出力部は、DSP等からなる音源装置や複数のスピーカ等の音響システムから構成され、報知音を出力するとともに、その報知音の音像定位を搭乗者の耳元などの特定位置に設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の搭乗者への報知音に関する情報を取得する報知音情報取得部と、
前記搭乗者の音認識に関する感度を推定する音感度推定部と、
前記搭乗者への報知音の音像定位を、前記音感度推定部で推定した前記感度に基づいて変化させる音像定位制御部と、
を備えることを特徴とする音出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の搭乗者に報知音を出力する音出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドライバに対して報知音を出力するものが例えば特開2010-208606号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この従来技術は、障害物を検知したときに、その存在を知らせる報知音声(報知音)の音像定位を、検出した方位に定位させることにより、ドライバに認識させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、例えば自動運転か手動運転かの車両の制御状態や、運転者が運転に集中しているかや覚醒しているかなどのドライバの状態に係わらず、一意的に報知音の音像定位を決めているため、状況によっては、ドライバが煩わしさを感じるような報知音が出力される場合がある。
【0005】
本発明は、移動体の搭乗者に対して状況に応じた適正な報知音を出力できる音出力装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、移動体の搭乗者への報知音に関する情報を取得する報知音情報取得部と、前記搭乗者の音認識に関する感度を推定する音感度推定部と、前記搭乗者への報知音の音像定位を、前記音感度推定部で推定した前記感度に基づいて変化させる音像定位制御部と、
を備えることを特徴とする音出力装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例の音出力装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施例の音出力装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施例の音出力装置のコンピュータが実行するプログラムがフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態にかかる音出力装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる音出力装置は、移動体の搭乗者への報知音に関する情報を取得する報知音情報取得部と、前記搭乗者の音認識に関する感度を推定する音感度推定部と、前記搭乗者への報知音の音像定位を、前記音感度推定部で推定した前記感度に基づいて変化させる音像定位制御部と、を備えている。したがって、搭乗者の音認識に関する感度に応じた音像定位で適正な報知音を出力できる。
【0009】
また、前記音感度推定部は、前記搭乗者の生体情報を含む搭乗者状態情報に基づいて、前記搭乗者の音認識に関する感度を推定する。搭乗者状態情報は、例えば、搭乗者の心拍数や、瞬きの頻度、あくびの頻度、運転集中度などであり、搭乗者の状態に適した音像定
位で報知音を出力できる。
【0010】
また、前記移動体内の音に関する状態を含む移動体状態を検出する移動体状態検出部を備え、前記音感度推定部は、前記移動体状態検出部で検出した前記移動体状態に基づいて、前記搭乗者の音認識に関する感度を推定する。移動体情報は、例えば車両内でのコンテンツ再生音の状態などであり、車両の状態に適した音像定位で報知音を出力できる。
【0011】
また、前記音像定位制御部は、前記搭乗者の音認識に関する感度が低い場合には、感度が高い場合よりも、前記音像定位を前記搭乗者の特定位置に近づける。特定位置は例えば搭乗者の耳元や、頭上などであり、通常では体験することの少ない特異な位置に報知音を出力できる。
【0012】
また、前記報知音情報取得部が前記報知音に関する情報として取得した前記報知音の種別情報に基づいて、前記報知音の重要度を判定する重要度判定部を備え、前記音像定位制御部は、前記感度および前記重要度に応じて前記音像定位を変化させる。これにより、報知音の重要度に応じた音像定位で報知音を出力できる。
【0013】
また、前記移動体の運転制御に関する運転制御情報を取得する運転制御情報取得部を備え、前記音像定位制御部は、前記運転制御情報と、前記感度および前記重要度に応じて前記音像定位を変化させる。運転制御情報は車両が自動運転であるか手動運転であるか等の車両の制御状態を示す情報であり、車両の状態に適した音像定位で報知音を出力できる。
【0014】
また、前記音像定位制御部は、前記重要度判定部により重要度が高いと判定された場合は、前記感度に係わらず、前記音像定位を前記搭乗者の特定位置にする。これにより、報知音の重要度に応じた音像定位で報知音を出力できる。
【0015】
また、前記音感度推定部は、前記搭乗者状態情報として前記搭乗者の覚醒度および/または運転集中度を検出する。
【0016】
また、前記移動体状態検出部は、前記移動体状態として、前記移動体内のコンテンツ再生装置が再生する音に関する状態を検出する。
【0017】
また、本発明の一実施形態にかかる音出力方法は、移動体の搭乗者への報知音に関する情報を取得する報知音情報取得工程と、前記搭乗者の音認識に関する感度を推定する音感度推定工程と、前記搭乗者への報知音の音像定位を、前記音感度推定部で推定した前記感度に基づいて変化させる音像定位制御工程と、を含むものである。
【0018】
また、上述した音出力方法をコンピュータにより実行させる音出力プログラムとしてもよい。
【実施例0019】
本発明の実施例にかかる音出力装置を
図1乃至
図3を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施例の音出力装置の概略構成図、
図2は同実施例の音出力装置の機能ブロック図である。
【0021】
図1に示すように、実施例の音出力装置は、車両に搭載され、コンピュータ等で動作する制御部1、本発明の実施例の音出力プログラム等を記憶している記憶装置2、DPS等により音響信号を出力する音源装置3、複数のスピーカ等からなる音響システム4、ナビゲーション装置からの各種データ、生体センサ(脈拍センサ等)からの生体情報、車内カ
メラからの画像データ等を入力する入力システム5を備えている。
【0022】
図2の機能ブロック図において、ナビゲーション部は例えば運転ルートを案内するナビゲーション案内音などを出力する。運転支援情報出力部は、自動運転中は、車両の制動予告(例えば「右レーンに移動します。」、「緊急停車します。」など)の情報を出力し、、手動運転中は、レーン逸脱警告、車間距離警告などの安全運転支援の情報を出力する。そして、「報知音源情報」は、ナビゲーション部からのナビゲーション案内音声、および、運転支援情報出力部からの制動予告音、危険警告音などの報知音、並びにそれらの報知音の種別を示す種別情報を含む情報であり、これらの情報が報知音音像定位制御部に入力される。
【0023】
また、
図2の機能ブロック図において、自動運転制御部は、加速・操舵・制動の運転操作の全部または一部を自動で制御するものである。より具体的には、自動運転は、自動運転レベルに応じて、加速・操舵・制動のうち自動となる制御が異なるものである。自動運転制御部は、自動運転か手動運転かを示す情報、自動運転レベルに応じた車両の制御状態を示す情報等を出力する。また、コンテンツ再生部は以下の機能を有している。例えば、ここでいうコンテンツ再生とは、CD、DVD等のパッケージメディアの再生、テレビ、ラジオ等の放送コンテンツの再生、無線通信により取得したコンテンツの再生等であって、搭乗者に視聴させる映像や音声の再生等のことである。コンテンツ再生部は、これらの再生中のコンテンツ情報を出力する。そして、「車両状態情報」は、上記自動運転制御部が出力する情報、コンテンツ再生部が再生中の場合は、このコンテンツ再生部が出力するコンテンツ情報などの情報であり、これらの情報が報知音音像定位制御部に入力される。
【0024】
「ドライバモニタリング部」は、心拍センサ、車内カメラなどを用いて、車両の運転者の覚醒度、および、運転集中度等を推定し、その推定状態を示す情報を出力する。運転者の覚醒度は、心拍数の低下、瞬きの頻度、あくびの頻度などで判定する。運転集中度は脇見の頻度などで判定する。そして、これらの推定状態を示す情報が報知音音像定位制御部に入力される。
【0025】
「報知音音像定位制御部」は、「報知音重要度判定部」、「感度判定部」、「音像定位制御部」を含んでいる。「報知音重要度判定部」は、報知音源情報に含まれる報知音の種別と、車両状態情報から、報知音の重要度を判定する。「感度判定部」は、車両状態情報、覚醒度、運転集中度に基づいて、運転者の報知音に対する感度を判定する。「音像定位制御部」は、判定された報知音に対する感度に応じて、報知音の音像定位を制御する。
【0026】
「報知音出力部」は、DSP等からなる音源装置3や複数のスピーカ等の音響システム4から構成されている。報知音出力部は、運転者による報知音の音源の方向および距離の認識(報知音の音像定位)を音像定位制御部による制御に基づいて変化させる。言い換えれば、報知音出力部は、音像定位制御部による制御に基づいて、報知音の仮想音源の位置が変化するように、報知音を加工したうえで出力する。
【0027】
図3は実施例の音出力装置の制御部1におけるコンピュータが実行する音出力プログラムのフローチャートである。なお、このフローチャートは、制御部1のコンピュータ(そのCPU)が実行する制御プログラムの内の要部フローチャートであり、制御プログラムのメイン処理に対するサブルーチンとして構成されている。
【0028】
まず、ステップS1で音再生指示処理を実行する。ステップS1では、ナビゲーション部、運転支援情報出力部から出力される報知音の再生指示、および、前記報知音の種別の情報を受信し、ステップS2に進む。ステップS2の音の重要度判定処理では、ステップS1で再生指示された報知音の重要度を、受信した報知音の種別(例えたナビゲーション
案内音声、制動予告音、危険警告音など)、および、この時に自動運転制御部から取得した車両の制御状態(自動運転/手動運転、または、自動運転レベル)から判定する。
【0029】
この重要度判定処理は、例えば以下のように、報知音の重要度を設定する。重要度が低い状態としては、運転者が聞き逃しても影響の少ない報知音(自動運転時のナビゲーション案内音声など)の場合とする。また、重要度が中程度の状態としては、車両の制御に急な変化を及ぼさない報知音(例えば手動運転時のナビゲーション案内音声、自動運転中の車線変更報知など)の場合とする。また、重要度が高い状態としては、車両の制御に急な変化を及ぼす報知音(例えば自動運転中の急ブレーキ報知、手動運転中の障害物警告、車線逸脱警告など)の場合とする。あるいは、自動運転のレベルに応じて、報知音の種別毎の重要度を判定するようにしてもよい。そして、重要度が中程度の場合には、ステップS3に進み、重要度が高い場合はステップS6に進み、重要度が低い場合はステップS7に進む。
【0030】
ステップS3の音の感度判定処理では、再生指示のあった報知音に対しての運転者の感度を判定する。この感度は、この時の他の音源(例えば再生中のコンテンツの再生音など)の再生状態、ドライバモニタリング部が推定した運転者の覚醒度、運転者の運転集中度などから判定する。例えば、他の音源の再生状態について、再生中なら「NG」、再生停止中なら「OK」、覚醒度について、運転者の覚醒度が低ければ「NG」、運転者の覚醒度が高ければ「OK」、運転集中度について、運転者の運転集中度が低ければ「NG」、運転者の運転集中度が高ければ「OK」、と要素ごとに評価する。上記の3要素の中で、一つでも「NG」があれば運転者の感度は「低」とし、全てが「OK」ならば運転者の感度は「高」とする。上記の判定条件は一例であって、適宜設定してよい。例えば、「OK」が2つ以上あれば、感度は「高」と判定してもよい。
【0031】
そして、感度が低いときは、ステップS4で報知音の音像定位を耳元(特定位置)に設定する処理を行い、感度が高いときは、ステップS5で報知音の音像定位を標準位置に設定する処理を行い、ステップS8に進む。
【0032】
一方、ステップS2で重要度が高いと判定してステップS6に進むと、このステップS6で報知音の音像定位を耳元に設定する処理を行い、ステップS8に進む。また、ステップS2で重要度が低いと判定してステップS7に進むと、このステップS7で報知音の音像定位を標準位置に設定する処理を行い、ステップS8に進む。
【0033】
ここで、ステップS4およびステップS6の報知音の音像定位を耳元に設定する処理では、ステップS1で指定された報知音の音像定位を、運転者の耳元で聞こえるように設定する。なお、耳元の位置は「特定位置」の一例であり、「特定位置」は耳元に限定されず、特異な位置(例えば頭上など)に定位させてもよい。このように、通常では体験することの少ない特異な位置から報知音が聞こえことになり、運転者は、報知音を認識し易くなる。音像定位の制御は、リアルタイムで制御する方法(例えばDSPによる加工)でもよいし、元の音源は同じで、定位する場所が違う複数の音源を予め用意しておき、適時どの音源を再生させるかを選択するようにしてもよい。
【0034】
ステップS5及びステップS7の報知音の音像定位を標準位置に設定する処理では、ステップS1で指定された報知音の音像定位を、標準位置に設定する。この標準位置は、運転者の正面などとして、コンテンツ再生音などと同時にさせた場合、その報知音だけが特徴的な定位をしていると感じない場所とする。
【0035】
そして、ステップS8の報知音再生処理では、設定した音像定位に基づいて報知音を再生する。
【0036】
以上、一実施例について説明したが、他の実施例として以下のものがある。車室内の騒音レベルを測定するためのマイク等をさらに備え、車室内の、話し声、コンテンツ再生音、走行音、車外から漏れ込む騒音など、各種の騒音量に応じて、報知音の音量レベルを変化させてもよい。例えば、車室内の騒音量が小さい場合は、小さい音量レベルで報知音を出力し、車室内の騒音量が大きい場合は、大きい音量レベルで報知音を出力する。
【0037】
このように、騒音環境に応じた報知音が出力されることで、報知音の音像定位が標準位置である場合には、運転者は違和感のない報知音を聞くことができ、報知音の音像定位が特定位置である場合には、運転者が報知音をさらに認識し易くなる。
【0038】
以上の実施例では、報知音の重要度が高い時、または重要度中で報知音に対する感度が低い時の報知音の音像定位を耳元としているが、耳元には限定されず、特定位置としては運転者が気づきやすい位置としてもよい。例えば、車室内で再生中のコンテンツの再生音の音像定位の位置をリアルタイムで取得し、当該コンテンツの再生音の音像定位の位置と、気づかせるべき報知音の音像定位の位置とが、離れた位置となるように報知音の音像定位を制御してもよい。これにより、例えば視聴中のコンテンツの再生音と異なる位置から報知音を聞くことができ、運転者が報知音を認識し易くなる。なお、上記のコンテンツの再生音の音像定位の位置をリアルタイムで取得するには、例えばコンテンツの音データ等の位相や音量を分析したり、コンテンツにその情報が含まれている場合はその情報を利用するなどすればよい。
【0039】
また、以上の実施例では、報知音の重要度が高い時、または重要度中で報知音に対する感度が低い時の報知音の音像定位を、運転者に対する特定位置としているが、運転者に限定せず、同乗者を含む車両の搭乗者の少なくともいずれかに対する特定位置としてもよい。この場合、同乗者用の生体センサの出力、および同乗者を撮影する車内カメラの画像に基づき、前述の実施例と同様の処理を同乗者に対して行うようにすればよい。
【0040】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の音出力装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。