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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007648
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110636
(22)【出願日】2021-07-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA18
2E001FA51
2E001FA71
2E001GA02
2E001GA12
2E001HB01
2E001LA01
2E001LA18
2E001PA01
2E001PA05
2E001PA07
2E001PA08
(57)【要約】
【課題】目地カバー装置において、設置コストを低減しつつ回動支持部材の剛性や同期性を高め、地震に対する耐久性を高める。
【解決手段】目地カバー装置10は、目地16を覆うカバー34と、一方の建造物12の側壁面12A側に設けられた複数の第1支点41にそれぞれ枢支されて水平回動可能とされ、カバー34を支持する上辺部36Aをそれぞれ備え、先端側の第2支点42同士が連結部材44により枢支連結されて平行リンク機構46を構成し、通常時において、第2支点42が第1支点41に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされている複数の回動支持部材36と、該回動支持部材36を、第2支点42が側壁面12Aから離れる方向に付勢する引張りばね38(付勢部材)と、他方の建造物14側に設けられ、他方の建造物14が一方の建造物12に対して相対的に接近した際に連結部材44を押圧するローラ40(押圧部材)と、を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地を介して互いに隣接する一方の建造物から他方の建造物側に差し出され、目地を覆うカバーと、
前記一方の建造物の側壁面側に設けられた複数の第1支点にそれぞれ枢支されて水平回動可能とされ、前記カバーを支持する上辺部をそれぞれ備え、先端側にそれぞれ設けられた第2支点同士が連結部材により枢支連結されて平行リンク機構を構成し、通常時において、前記一方の建造物から前記他方の建造物に向かう最短距離の方向を基準として、前記第2支点が前記第1支点に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされている複数の回動支持部材と、
前記回動支持部材を、前記第2支点が前記側壁面から離れる方向に付勢する付勢部材と、
前記他方の建造物側の少なくとも前記連結部材と対向する位置に設けられ、前記他方の建造物が前記一方の建造物に対して相対的に接近した際に前記連結部材を押圧し、前記回動支持部材の回動による前記連結部材との相対変位に伴い該連結部材上を移動する押圧部材と、
を有する目地カバー装置。
【請求項2】
前記回動支持部材の前記上辺部の高さ位置は、前記第1支点側から前記第2支点側に向かうにしたがって低くなっている、請求項1に記載の目地カバー装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記回動支持部材の回動による前記連結部材との相対変位に伴い該連結部材上を転動するローラである、請求項1又は請求項2に記載の目地カバー装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記回動支持部材と前記一方の建造物との間に張設された引張りばねであり、
前記引張りばねの前記一方の建造物側の端部は、前記第1支点よりも前記一方の建造物から離れて配置されている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の目地カバー装置。
【請求項5】
前記連結部材に設けられた補助第1支点に枢支され、水平回動可能とされ、前記一方の建造物側に差し出された補助回動部材と、
前記補助回動部材を、該補助回動部材の先端が前記連結部材から離れる方向に付勢する補助付勢部材と、を有し、
通常時において、前記連結部材から前記一方の建造物に向かう最短距離の方向を基準として、前記補助回動部材の先端が、該補助第1支点に対し平面視でオフセットされている、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに隣接する一方の建造物から他方の建造物側に差し出され、一方の建造物と他方の建造物の間の目地を覆うカバーと、該カバーの直下に位置する回動支持部材とを有する目地カバー装置が開示されている。回動支持部材は、上部に水平状の支承杆部を備え、一方の建造物の側壁面に水平回動可能に連結され、常時は付勢手段の付勢力を介して一方の建造物の側壁面から斜め前方に突出する位置に保持されている。
【0003】
また、回動支持部材毎に被押圧端が設けられている。被押圧端は、支承杆部の下方で該支承杆部の先端より前方に突出して他方の建造物の側壁面に当接可能である。
【0004】
地震時に目地幅が狭くなるのに伴って他方の建造物の側壁面に被押圧端が押圧されることによって、各回動支持部材が他方の建造物側に回動し、カバーが先端側から順次下方に垂下する。これにより、カバーと他方の建造物の側壁面との衝突を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5231971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の従来例では、回動支持部材毎に被押圧端が設けられており、部材の剛性上の問題を有している。また、他方の建造物は免震構造を有しており、地震発生時には様々な方向に動くことに加えて、複数の回動支持部材が互いに独立して動くことができるため、回転のタイミングが一致せず、カバーの動きに偏りが生じる可能性がある。具体的には、付勢手段の付勢力により回動支持部材が復帰する際に一部の回動支持部材の復帰が遅く、複数の回動支持部材の回転のタイミングがずれることで、垂下していた回動支持部材カバーをスムーズに持ち上げることができない可能性がある。回動支持部材が他方の建造物側に回動して折り畳まれるタイミングがずれても、カバーの垂れ下がりがスムーズでなくなる可能性がある。
【0007】
また、被押圧端にガイドローラを設ける場合、他方の建造物(免震部)の側壁面のうち、ガイドローラに当接する一帯に、ガイドローラから該側壁面を保護するための鋼板を取り付ける必要がある。
【0008】
本発明は、目地カバー装置において、設置コストを低減しつつ回動支持部材の剛性や同期性を高め、地震に対する耐久性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る目地カバー装置は、目地を介して互いに隣接する一方の建造物から他方の建造物側に差し出され、目地を覆うカバーと、前記一方の建造物の側壁面側に設けられた複数の第1支点にそれぞれ枢支されて水平回動可能とされ、前記カバーを支持する上辺部をそれぞれ備え、先端側にそれぞれ設けられた第2支点同士が連結部材により枢支連結されて平行リンク機構を構成し、通常時において、前記一方の建造物から前記他方の建造物に向かう最短距離の方向を基準として、前記第2支点が前記第1支点に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされている複数の回動支持部材と、前記回動支持部材を、前記第2支点が前記側壁面から離れる方向に付勢する付勢部材と、前記他方の建造物側の少なくとも前記連結部材と対向する位置に設けられ、前記他方の建造物が前記一方の建造物に対して相対的に接近した際に前記連結部材を押圧し、前記回動支持部材の回動による前記連結部材との相対変位に伴い該連結部材上を移動する押圧部材と、を有する。
【0010】
この目地カバー装置では、複数の回動支持部材が、一方の建造物の側壁面に設けられた複数の第1支点にそれぞれ枢支されると共に、先端側の第2支点が連結部材により枢支連結されて平行リンク機構を構成している。したがって、回動支持部材の剛性や同期性が高く、地震に対する耐久性が高い。また、他方の建造物が一方の建造物に対して相対的に接近した際に、連結部材が押圧部材に当接することから、他方の建造物の側壁面一帯を鋼板で保護する必要がなく、設置コストを低減できる。
【0011】
回動支持部材は、付勢部材により、第2支点が一方の建造物の側壁面から離れる方向に付勢されている。通常時は回動支持部材が他方の建造物側に向けて突出している。また、各々の回動支持部材において、一方の建造物から他方の建造物に向かう最短距離の方向を基準として、第2支点が第1支点に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされている。この状態では、カバーが回動支持部材により下方から支持されて一方の建造物から他方の建造物側に差し出されている。このカバーにより一方の建造物と他方の建造物の間の目地が覆われる。
【0012】
地震により他方の建造物が一方の建造物に対して相対的に接近すると、押圧部材が連結部材を押圧して一方の建造物の側壁面側へ変位させる。連結部材と回動支持部材は平行リンク機構を構成しているので、連結部材の変位により複数の回動支持部材が、付勢部材の付勢力に抗して一方の建造物の側壁面側へ同期して水平回動する。このとき、第2支点は第1支点に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされているので、複数の回動支持部材は同じ方向に水平回動する。この水平回動により複数の回動支持部材が同期して折り畳まれるにしたがい、カバーがスムーズに下方に垂下する。これにより、カバーと他方の建造物との衝突が回避される。
【0013】
他方の建造物が一方の建造物から離間すると、複数の回動支持部材が、付勢部材の付勢力により、第2支点が一方の建造物の側壁面から離れる方向に同期して回動して、他方の建造物側に向けて突出する。またこのとき、カバーは、複数の回動支持部材によりスムーズに持ち上げられて、一方の建造物から他方の建造物側に差し出される。
【0014】
第2の態様は、第1の態様に係る目地カバー装置において、前記回動支持部材の前記上辺部の高さ位置が、前記第1支点側から前記第2支点側に向かうにしたがって低くなっている。
【0015】
この目地カバー装置では、回動支持部材の上辺部の高さ位置が、第1支点側から第2支点側に向かうにしたがって低くなっているので、回動支持部材の回動時におけるカバーの垂下と復帰の動作がスムーズになる。また、他方の建造物から遮蔽部材が一方の建造物側に差し出されて、この遮蔽部材の直下に目地カバー装置が配置される場合、この上辺部の構成により、復帰状態のカバーが上方向に動く空間があることから、上下方向の振動時にカバーが該空間に逃げることができる。これにより、カバーの破損を抑制できる。
【0016】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る目地カバー装置において、前記押圧部材が、前記回動支持部材の回動による前記連結部材との相対変位に伴い該連結部材上を転動するローラである。
【0017】
この目地カバー装置では、押圧部材としてのローラが、連結部材に当接した状態で、回動支持部材の回動による連結部材との相対変位に伴い該連結部材上を転動する。これにより、押圧部材と連結部材との間の摩擦が低減されるので、回動支持部材の回動がスムーズになる。
【0018】
第4の態様は、第1~第3の態様の何れか1態様に係る目地カバー装置において、前記付勢部材が、前記回動支持部材と前記一方の建造物との間に張設された引張りばねであり、前記引張りばねの前記一方の建造物側の端部は、前記第1支点よりも前記一方の建造物から離れて配置されている。
【0019】
この目地カバー装置では、付勢部材としての引張りばねの一方の建造物側の端部が、第1支点よりも一方の建造物から離れて配置されているので、引張りばねの一方の建造物側の端部と第1支点の位置が、一方の建造物から同程度離れている場合と比較して、折り畳まれた回動支持部材を復帰させるための回転モーメントが発生し易い。したがって、回動支持部材を姿勢復帰させ易い。
【0020】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る目地カバー装置において、前記連結部材に設けられた補助第1支点に枢支され、水平回動可能とされ、前記一方の建造物側に差し出された補助回動部材と、前記補助回動部材を、該補助回動部材の先端が前記連結部材から離れる方向に付勢する補助付勢部材と、を有し、通常時において、前記連結部材から前記一方の建造物に向かう最短距離の方向を基準として、前記補助回動部材の先端が、該補助第1支点に対し平面視でオフセットされている。
【0021】
この目地カバー装置では、補助付勢部材に付勢された補助回動部材が補助第1支点において連結部材に枢支され、一方の建造物側に差し出されている。補助回動部材の先端は、該補助第1支点に対し平面視でオフセットされている。したがって、回動支持部材が折り畳まれるとき、補助回動部材も共に折り畳まれる。回動支持部材が復帰し始めるときには、補助回動部材も復帰し始める。これにより、目地の幅が広く、カバーの長さが比較的長く重い構造であっても、回動支持部材の復帰を促進することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、目地カバー装置において、設置コストを低減しつつ回動支持部材の剛性や同期性を高め、地震に対する耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る目地カバー装置において、通常時の状態を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る目地カバー装置において、通常時よりも他方の建造物が一方の建造物から離れた状態を示す断面図である。
図3図2における床カバー材とカバーとの重なり状態を示す拡大断面図である。
図4】他方の建造物が一方の建造物に接近し、ローラが連結部材を押圧することで、一対の回動支持部材が一方の建造物側に折り畳まれ、カバーが下方に垂下し、床カバー材が一方の建造物の上に乗り上げた状態を示す断面図である。
図5図3において、床カバー材の代わりとなる遮蔽部材が他方の建造物に設けられた例を示す断面図である。
図6】第1実施形態に係る目地カバー装置を示す斜視図である。
図7】第1実施形態に係る目地カバー装置の要部を示す斜視図である。
図8】第1実施形態において、ローラが連結部材を押圧することで、一対の回動支持部材が一方の建造物側に折り畳まれた状態を示す斜視図である。
図9】第1実施形態に係る目地カバー装置において、通常時の状態を示す平面図である。
図10】他方の建造物が一方の建造物に接近し、ローラが連結部材を押圧することで、一対の回動支持部材が一方の建造物側に折り畳まれた状態を示す平面図である。
図11】第1実施形態に係る目地カバー装置において、通常時よりも他方の建造物が一方の建造物から離れた状態を示す平面図である。
図12】第2実施形態に係る目地カバー装置において、通常時の状態を示す断面図である。
図13】他方の建造物が一方の建造物に接近し、ローラが連結部材を押圧することで、一対の回動支持部材が一方の建造物側に折り畳まれ、カバーが下方に垂下し、床カバー材が一方の建造物の上に乗り上げた状態を示す断面図である。
図14】第2実施形態に係る目地カバー装置を示す斜視図である。
図15】第2実施形態において、ローラが連結部材を押圧することで、一対の回動支持部材が一方の建造物側に折り畳まれた状態を示す斜視図である。
図16】補助回動部材を示す拡大斜視図である。
図17】補助回動部材が折り畳まれた状態を示す斜視図である。
図18】第2実施形態に係る目地カバー装置において、他方の建造物が一方の建造物に接近した状態を示す平面図である。
図19】他方の建造物が、図18の状態から一方の建造物に接近し、ローラが連結部材を押圧することで、一対の回動支持部材が一方の建造物側にある程度回動した状態を示す平面図である。
図20】他方の建造物が、図19の状態から更に一方の建造物に接近し、ローラが連結部材を押圧することで、一対の回動支持部材が一方の建造物側に折り畳まれた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0025】
[第1実施形態]
図1から図11において、本実施形態に係る目地カバー装置10は、互いに隣接する一方の建造物12と他方の建造物14の間の目地16に設けられている。他方の建造物14は、例えば図示しない免震装置によって下部が支持された免震構造の建物である。目地16は、他方の建造物14の周囲に沿って所定幅で形成され、地震時における他方の建造物14とその周囲の建造物(一方の建造物12)との水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0026】
ここで、図1図2図4に示されるように、一方の建造物12の側縁には、水平受縁18と、該水平受縁18の外端から上方傾斜する傾斜受縁22とを備えた摺動受枠体24が配設されている。また、他方の建造物14からは、遮蔽部材26が一方の建造物12側に差し出されている。
【0027】
遮蔽部材26は、水平受縁18の深さに一致する所定の厚みを備えた平板矩形状に形成されており、その基端が他方の建造物14の側縁に連結手段28を介して揺動可能に連結されている。該遮蔽部材26の先端側は自由端となっており、該自由端の外端には支点30Aを中心に上下方向に若干揺動可能な端部遮蔽板30が突出して設けられている。なお、「通常時」とは、回動支持部材36が復帰状態にあることを意味する。
【0028】
図1に示される通常時において、遮蔽部材26は、他方の建造物14から一方の建造物12側に差し出されて目地16を覆っており、自由端が摺動受枠体24の水平受縁18上に摺動可能に載っている。また、自由端と、摺動受枠体24の傾斜受縁22間に生じる作動空隙32の上方が、端部遮蔽板30によって遮蔽されている。
【0029】
なお、図5に示されるように、他方の建造物14に、その側壁面14Aに一体形成された突出縁からなる遮蔽部材27が一方の建造物12の上面より若干上方位置に差し出されていてもよい。通常時は、この遮蔽部材27によって目地16が覆われている。
【0030】
一方の建造物12の側壁面12Aの目地16に沿う方向には、1つ以上の目地カバー装置10が配設されている。この目地カバー装置10は、カバー34と、複数の回動支持部材36と、付勢部材の一例としての引張りばね38と、押圧部材の一例としてのローラ40と、を有している。
【0031】
(カバー)
図1から図4において、カバー34は、目地16を介して互いに隣接する一方の建造物12から他方の建造物14側に差し出され、目地16を覆う部材である。カバー34は、目地16に沿う方向に延在し、回動支持部材36によって下方から支持される。このカバー34は、基端部に位置する分割カバー板34Aと、複数の分割カバー板34Bを備えており、分割カバー板34A,34Bが目地16の幅方向に並列した状態で、その全体形状が略平板矩形状に形成されている。
【0032】
ここで、図3に示されるように、分割カバー板34Bには、目地16の幅方向の端部に断面円形の嵌合突条34B1と、該嵌合突条34B1を遊嵌可能な包持溝34B2が形成されている。嵌合突条34B1を包持溝34B2内に側方から嵌挿することにより、隣り合う複数の分割カバー板34Bの各端部相互が上下方向に回動可能に連結されている。分割カバー板34Aにも同様の嵌合突条が設けられており、嵌合突条が該分割カバー板34Aの隣りに位置する分割カバー板34Bの包持溝34B2に側方から嵌挿されることで、分割カバー板34Aと、複数の分割カバー板34Bとが連結されている。そして、基端部の分割カバー板34Aは、取付フレーム48の上部プレート50にボルト締結されている。これによって、カバー34が一方の建造物12側に取り付けられている。
【0033】
また、図3に示されるように、分割カバー板34Bの底面34B3は、回動支持部材36との間の摩擦を軽減するために、例えば分割カバー板34Bの長手方向から見て波形等の凹凸形状に形成されていてもよい。また、カバー34の先端に位置する分割カバー板34Bの長手方向の端面に、プレート35が取り付けられていてもよい。本実施形態では、複数の分割カバー板34Bに対し、1つ置きに左右交互にプレート35が設けられている。このプレート35は、例えばねじ56と、分割カバー板34Bの端部に設けられた固定部54とにより締結固定されている。また、プレート35は、例えば、先端の分割カバー板34Bの端面の上部における包持溝34B2の位置から、該分割カバー板34Bの幅方向の反対側に位置する嵌合突条34B1までに跨るように構成されている。プレート35を用いることで、カバー34が目地16に沿う方向に複数設けられている場合に、カバー34同士の間の間隙を確保し、カバー34同士の干渉を抑制することができる。
【0034】
(回動支持部材)
図1図6から図8において、複数の回動支持部材36は、一方の建造物12の側壁面12A側に設けられた複数の第1支点41に対し、それぞれ枢支されて水平回動可能とされている。換言すれば、1つの回動支持部材36に対し、1つの第1支点41が設けられている。本実施形態では、1つのカバー34に対し、2つの回動支持部材36が用いられている。
【0035】
複数の回動支持部材36は、カバー34(図1図2)を支持する上辺部36Aをそれぞれ備えている。また各々の回動支持部材36は、上辺部36Aと、前枠部36Bと、軸部36Cと、下枠部36Dとにより略四角形の枠状に形成されている。上辺部36Aと前枠部36Bは、例えば丸パイプをL字形に折り曲げることで一体成形されている。前枠部36Bは、上辺部36Aの先端から湾曲部36Eを経て下方へ延びる部位である。軸部36Cは、上辺部36Aの基端側に結合され上下方向に延び第1支点41に枢支される部位である。下枠部36Dは、略水平方向に延び、軸部36Cの下端部と前枠部36Bとを連結する部位である。
【0036】
第1支点41は、取付フレーム48の上部プレート50と、取付フレーム48の下部に結合される下部フレーム52にそれぞれ設けられ、軸部36Cの上端及び下端を枢支している。取付フレーム48及び下部フレーム52は、一方の建造物12の側壁面12Aに植設されたアンカーボルト58を用いて該側壁面12Aに締結されている。また、下部フレーム52は、ねじ53を用いて取付フレーム48の底面に締結されている。
【0037】
回動支持部材36の先端側にそれぞれ設けられた第2支点42同士は、連結部材44により枢支連結されており、これによって平行リンク機構46が構成されている。具体的には、第2支点42は、前枠部36Bと連結部材44とが相対回転する部分である。前枠部36Bの下部は、例えば下枠部36Dよりも下方まで延び、連結部材44を上下方向に貫通している。前枠部36Bの下端にナット60(図1図2)を締結することで、連結部材44が前枠部36Bから抜け落ちないように保持されている。つまり、連結部材44は、前枠部36Bの延長上における下枠部36Dより下方に設けられている。連結部材44は、水平方向に延び、かつ平面視で一方の建造物12の側壁面12Aと平行に配置されている。
【0038】
図9に示されるように、ローラ40が連結部材44から離れた状態において、一方の建造物12から他方の建造物14に向かう最短距離の方向Xを基準として、複数の第2支点42が複数の第1支点41に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされている。方向Xは、例えば一方の建造物12の側壁面12Aに対する法線の方向に相当する。換言すれば、第1支点41と第2支点42を結ぶ仮想線Aが、方向Xに対して同じ方向に同角度傾斜している。図示の例では、回動支持部材36の上辺部36A及び下枠部36Dがこのように傾斜している。
【0039】
このときの側壁面12Aに対する仮想線Aの鋭角側の角度θの最大値は、例えば下部フレーム52に設けられたストッパ49(図6から図8)により制限されている。ストッパ49は、例えばボルトの頭部である。回動支持部材36は、復帰状態において、引張りばね38により付勢されてストッパ49に当接するようになっている。このとき、角度θが最大となる。なお、ストッパ49の構成はこれに限られず、角度θの最大値を制限できる構成であればよい。
【0040】
なお、複数の第2支点42が複数の第1支点41に対し平面視で同じ側にオフセットしていれば、ローラ40が連結部材44を押圧したときに回動支持部材36が折り畳まれる方向にモーメントが発生する。したがって、例えば回動支持部材36の上辺部36A及び下枠部36Dが屈曲又は湾曲する構成であってもよい。
【0041】
図1図2図4に示されるように、回動支持部材36の上辺部36Aの高さ位置は、第1支点41側から第2支点42側に向かうにしたがって低くなっていてもよい。図示の例では、上辺部36Aは、第1支点41側から第2支点42側に向かうにしたがって下方へ直線的に傾斜している。これにより、復帰状態のカバー34が上方向に動く空間S(図1)が確保されている。
【0042】
なお、上辺部36Aが非直線的に傾斜していてもよい。例えば上辺部36Aが、第1支点41側から第2支点42側に向かうにしたがって下がる階段状に形成されていてもよい。また、上辺部36Aが若干湾曲していてもよい。
【0043】
(引張りばね)
図1図6から図8において、引張りばね38は、付勢部材の一種であり、回動支持部材36を、第2支点42が側壁面12Aから離れる方向に付勢している。引張りばね38は、回動支持部材36と一方の建造物12との間に張設されている。図示の例では、3本の引張りばね38が、下枠部36Dの上側近傍に上下方向に並列に配置されている。引張りばね38の一方の建造物12側の端部である一端38Aは、取付フレーム48及び下部フレーム52に固定されたばね受け62に引っ掛けられている。引張りばね38の他端38Bは、前枠部36Bに取り付けられたばね受け64に引っ掛けられている。ばね受け64は、前枠部36Bに対して固定されているか、又は前枠部36Bに対して回動可能とされている。
【0044】
上記したように、回動支持部材36は、復帰状態において、引張りばね38により付勢されてストッパ49に当接している。したがって、引張りばね38は、回動支持部材36が復帰状態にあるとき、自由状態よりある程度引き延ばされた状態にあり、回動支持部材36を常時付勢している。これにより、回動支持部材36の無用な動きが抑制されている。
【0045】
図9に示されるように、引張りばね38の一端38Aは、例えば、第1支点41よりも一方の建造物12から離れて配置されている。一方の建造物12からの距離は、方向X又は方向Xと平行な方向での距離である。具体的には、ばね受け62が、第1支点41が設けられた取付フレーム48よりも他方の建造物14側に張り出している。引張りばね38の一端38Aは、このばね受け62に引っ掛けられているため、第1支点41よりも一方の建造物12から離れて配置される。
【0046】
(ローラ)
ローラ40は、押圧部材の一例であり、他方の建造物14側の少なくとも連結部材44と対向する位置に設けられ、他方の建造物14が一方の建造物12に対して相対的に接近した際に連結部材44を押圧する。ローラ40は、連結部材44に接触した状態において、回動支持部材36の回動による連結部材44との相対変位に伴い該連結部材44上を転動するようになっている。
【0047】
図1に示されるように、ローラ40は、一対のL字形のブラケット66により枢支され、支持軸68の軸方向は上下方向(鉛直方向)とされている。一対のブラケット66は、他方の建造物14の側壁面14Aに植設されたアンカーボルト70を用いて該側壁面14Aにそれぞれ締結されている。
【0048】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図6図9において、本実施形態に係る目地カバー装置10では、複数の回動支持部材36が、一方の建造物12の側壁面12Aに設けられた複数の第1支点41にそれぞれ枢支されると共に、先端側の第2支点42が連結部材44により枢支連結されて平行リンク機構46を構成している。したがって、回動支持部材36の剛性や同期性が高く、地震に対する耐久性が高い。また、他方の建造物14が一方の建造物12に対して相対的に接近した際に、連結部材44がローラ40に当接することから、他方の建造物14の側壁面14A一帯を鋼板で保護する必要がなく、設置コストを低減できる。このように、本実施形態によれば、改善された目地カバー装置10を提供することができる。
【0049】
回動支持部材36は、引張りばね38により、第2支点42が一方の建造物12の側壁面12Aから離れる方向に付勢されている。通常時は一方の建造物12と他方の建造物14が離れているため、ローラ40が連結部材44から離れており、回動支持部材36が他方の建造物14側に向けて突出している。また、各々の回動支持部材36において、一方の建造物12から他方の建造物14に向かう最短距離の方向Xを基準として、第2支点42が第1支点41に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされている。この状態では、図1に示されるように、カバー34が回動支持部材36により下方から支持されて一方の建造物12から他方の建造物14側に差し出されている。このカバー34により一方の建造物12と他方の建造物14の間の目地16が覆われる。
【0050】
図8図10に示されるように、地震により他方の建造物14が一方の建造物12に対して相対的に接近すると、ローラ40が連結部材44に接触し、該連結部材44を押圧して一方の建造物12の側壁面12A側へ変位させる。連結部材44と回動支持部材36は平行リンク機構46を構成しているので、連結部材44の変位により複数の回動支持部材36が、引張りばね38の付勢力に抗して一方の建造物12の側壁面12A側へ同期して水平回動する。このとき、第2支点42は第1支点41に対し平面視でそれぞれ同じ側にオフセットされているので、複数の回動支持部材36は同じ方向に水平回動する。このとき、平行リンク機構46の作用により、連結部材44は、平面視で一方の建造物12の側壁面12Aに対して接近すると共に、側壁面12Aに沿った方向に変位する。
【0051】
またこのとき、押圧部材としてのローラ40が、連結部材44に当接した状態で、回動支持部材36の回動による連結部材44との相対変位に伴い該連結部材44上を転動する。これにより、押圧部材と連結部材44との間の摩擦が低減されるので、回動支持部材36の回動がスムーズになる。
【0052】
回動支持部材36が水平回動して折り畳まれるにしたがい、カバー34がスムーズに下方に垂下する。これにより、カバー34と他方の建造物14との衝突が回避される。またこのとき、図4に示されるように、遮蔽部材26は摺動受枠体24に乗り上げる。
【0053】
次に、他方の建造物14が一方の建造物12から離間すると、複数の回動支持部材36が、引張りばね38の付勢力により、第2支点42が一方の建造物12の側壁面12Aから離れる方向に同期して回動して、他方の建造物14側に向けて突出する(図6図9)。
【0054】
ここで、図9に示されるように、引張りばね38の一方の建造物12側の端部(一端38A)が、第1支点41よりも一方の建造物12から離れて配置されているので、引張りばね38の一方の建造物12側の端部(一端38A)と第1支点41の位置が、一方の建造物12から同程度離れている場合と比較して、折り畳まれた回動支持部材36を復帰させるための回転モーメントが発生し易い。したがって、回動支持部材36を姿勢復帰させ易い。
【0055】
またこのとき、図1に示されるように、カバー34は、回動支持部材36によりスムーズに持ち上げられて、一方の建造物12から他方の建造物14側に差し出される。他方の建造物14と一方の建造物12との接近と離間が繰り返される間、上記作用が繰り返される。地震が収まると、回動支持部材36は通常時の状態、具体的には、他方の建造物14側に向けて突出した姿勢に復帰する。本実施形態では、連結部材44と回動支持部材36が平行リンク機構46を構成しているので、回動支持部材36の回動のタイミングが一致し、カバー34の動きに偏りが生じ難い。
【0056】
回動支持部材36の上辺部36Aの高さ位置が、第1支点41側から第2支点42側に向かうにしたがって低くなっているので、回動支持部材36の回動時におけるカバー34の垂下と復帰の動作がスムーズになる。また、他方の建造物から遮蔽部材が一方の建造物側に差し出されて、この遮蔽部材の直下に目地カバー装置が配置される場合、この上辺部36Aの構成により、復帰状態のカバー34が上方向に動く空間S(図1)があることから、上下方向の振動時にカバー34が該空間Sに逃げることができる。これにより、カバー34の破損を抑制できる。
【0057】
また、上記のような回動支持部材36の上辺部36Aの形状により、他方の建造物14の位置が下がった場合でも、遮蔽部材26の先端が上方に突出することが抑制されると共に、地震時には遮蔽部材26がカバー34や回動支持部材36に干渉されることなく円滑に可動する。
【0058】
図2図11に示されるように、地震により他方の建造物14が一方の建造物12から更に離間した場合には、目地16の幅が拡大するが、遮蔽部材26がカバー34の上を摺動することで、目地16の露出は抑制される。
【0059】
[第2実施形態]
図12から図15において、本実施形態に係る目地カバー装置20では、回動支持部材36が中枠72を有している。中枠72は、上辺部36Aの中間部と下枠部36Dの中間部を上下に連結して、回動支持部材36を補強している。つまり、中枠72は補強部材の一種である。中枠72には、ばね受け64が取り付けられている。本実施形態では、第1実施形態のようにばね受け64が前枠部36Bに取り付けられる場合と比較して、引張りばね38の長さが短い。このため、十分な付勢力を確保するため、引張りばね38が第1実施形態の場合より多く設けられている。図示の例では、1つの回動支持部材36につき、9本の引張りばね38が設けられている。
【0060】
また、図16図17に示されるように、本実施形態に係る目地カバー装置20は、補助回動部材76と、補助付勢部材の一例としての引張りばね78を有している。補助回動部材76と引張りばね78は、復帰補助装置74を構成している。
【0061】
補助回動部材76は、連結部材44に設けられた補助第1支点81に枢支され、水平回動可能とされ、一方の建造物12側に差し出された、例えば一対のアングル材である。各々の補助回動部材76は、基端76A側において連結部材44の上面と下面に回動可能に取り付けられている。補助回動部材76の先端76Bには、ローラ80の支持軸82が両端支持されている。ローラ80の軸方向は上下方向(鉛直方向)とされている。ローラ80の外周面は、補助回動部材76がどの角度位置にあっても、補助回動部材76の先端76Bより一方の建造物12側に張り出すように取り付けられている。
【0062】
図18に示されるように、通常時において、連結部材44から一方の建造物12に向かう最短距離の方向Xを基準として、補助回動部材76の先端76B(ローラ80)が、補助第1支点81に対し平面視でオフセットされている。換言すれば、補助回動部材76の補助第1支点81と支持軸82を結ぶ仮想線Bが、方向Xに対して傾斜している。平面において、仮想線Bの延長線は、例えば回動支持部材36についての仮想線Aと交差する。なお、仮想線Bの延長線が仮想線Aと交差しない配置、例えば図18において補助回動部材76、引張りばね78及びストッパ84が目地16の幅方向に対して線対称となる配置であってもよい。
【0063】
図16に示されるように、補助回動部材76は、復帰状態において、引張りばね78により付勢されてストッパ84に当接するようになっている。このとき、連結部材44に対する仮想線Bの鋭角側の角度θ’が最大となる。なお、ストッパ84の構成はこれに限られず、角度θ’の最大値を制限できる構成であればよい。
【0064】
図16図18に示されるように、引張りばね78は、補助付勢部材の一種であり、ばね受け86と支持軸82の間に張設され、補助回動部材76を、該補助回動部材76の先端76B(ローラ80)が連結部材44から離れる方向に回転付勢する部材である。例えば2本の引張りばね78が、上下方向に並列に設けられている。引張りばね78の一端78Aは、ばね受け86に引っ掛けられている。引張りばね78の他端78Bは、支持軸80に引っ掛けられている。ばね受け86は、連結部材44のうち、補助第1支点81に対しストッパ84と同じ側で、かつ該ストッパ84よりも離れた位置に設けられている。
【0065】
補助回動部材76は、復帰状態において、引張りばね78により付勢されてストッパ84に当接している。したがって、引張りばね78は、補助回動部材76が復帰状態にあるとき、自由状態よりある程度引き延ばされた状態にあり、補助回動部材76を常時付勢している。これにより、補助回動部材76の無用な動きが抑制されている。
【0066】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ここでは、地震時の回動支持部材36の折り畳みと復帰、それに伴うカバー34の垂下と持ち上げ等、第1実施形態と共通の作用については説明を省略する。
【0068】
図12から図20において、本実施形態に係る目地カバー装置20では、復帰補助装置74において、引張りばね78に付勢された補助回動部材76が補助第1支点81において連結部材44に枢支され、一方の建造物12側に差し出されている。補助回動部材76の先端76B(ローラ80)は、該補助第1支点81に対し平面視でオフセットされている。したがって、図19に示されるように、地震により回動支持部材36が引張りばね38の付勢力に抗してある程度折り畳まれると、ローラ80が一方の建造物12の側壁面12Aに当接する。回動支持部材36が更に折り畳まれると、ローラ80が連結部材44側に押圧されることで、補助回動部材76が引張りばね78の付勢力に抗して補助第1支点81を中心に水平回動して折り畳まれる。このとき、ローラ80は、一方の建造物12の側壁面12A上を移動する。この結果、図15図17図19図20に示されるように、回動支持部材36及び補助回動部材76が折り畳まれる。
【0069】
引張りばね38の付勢力により回動支持部材36が復帰し始めるときには、補助回動部材76も引張りばね78の付勢力により復帰し始める。補助回動部材76の復帰により回動支持部材36の復帰が促進される。これによって、目地16の幅が広く、カバー34の長さが比較的長く重い構造であっても、回動支持部材36の折り畳み時に垂下していたカバー34を持ち上げて他方の建造物14側に差し出すことができる。つまり、本実施形態は、目地16の幅が比較的広い構造に好適である。
【0070】
このように、本実施形態によれば、改善された目地カバー装置20を提供することができる。
【0071】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0072】
目地カバー装置10,20は、目地16に沿った方向に複数設置することが可能である。また、図18から図20に示されるように、一方の建造物12と他方の建造物14の水平方向の相対変位に対するロバスト性向上を考慮して、他方の建造物14の側壁面14Aに複数のローラ40を設けてもよい。このようにすることで、通常時における連結部材44とローラ40の位置関係が変化した場合でも、他方の建造物14が一方の建造物12に接近したときに何れかのローラ40を連結部材44に当接させることができる。また、上述の実施形態では、2つの回動支持部材36を連結部材44で枢支連結したが、3つ以上の回動支持部材を連結部材で枢支連結してもよい。
【0073】
付勢部材の一例として、引張りばね38を挙げたが、付勢部材はこれに限られず、回動支持部材36を付勢できるものであれば他の種類のばねや、ガススプリング等であってもよい。また、第1実施形態と第2実施形態とで、引張りばね38の取付け方や本数を入れ替えてもよい。
【0074】
補助付勢部材の一例として引張りばね78を挙げたが、補助付勢部材はこれに限られず、補助回動部材76を付勢できるものであれば他の種類のばねや、ガススプリング等であってもよい。
【0075】
ローラ40は、全方向に回転可能なボールローラであってもよい。一方の建造物12と他方の建造物14の上下方向の相対移動時に、ローラ40が上下方向に転動できると、ローラ40と連結部材44の間における上下方向の摩擦力の発生を抑制できる。これにより、回動支持部材36に水平方向を中心としたモーメントが作用することを抑制できる。
【符号の説明】
【0076】
10…目地カバー装置、12…一方の建造物、12A…側壁面、14…他方の建造物、14A…側壁面、16…目地、18…水平受縁、20…目地カバー装置、22…傾斜受縁、24…摺動受枠体、26…遮蔽部材、27…遮蔽部材、28…連結手段、30…端部遮蔽板、30A…支点、32…作動空隙、34…カバー、34A…分割カバー板、34B…分割カバー板、34B1…嵌合突条、34B2…包持溝、34B3…底面、35…プレート、36…回動支持部材、36A…上辺部、36B…前枠部、36C…軸部、36D…下枠部、36E…湾曲部、38…引張りばね(付勢部材)、38A…一端、38B…他端、40…ローラ(押圧部材)、41…第1支点、42…第2支点、44…連結部材、46…平行リンク機構、48…取付フレーム、49…ストッパ、50…上部プレート、52…下部フレーム、53…ねじ、54…固定部、56…ねじ、58…アンカーボルト、60…ナット、62…ばね受け、64…ばね受け、66…ブラケット、68…支持軸、70…アンカーボルト、72…中枠、74…復帰補助装置、76…補助回動部材、76A…基端、76B…先端、78…引張りばね(補助付勢部材)、80…ローラ、81…補助第1支点、82…支持軸、84…ストッパ、86…ばね受け、L…仮想線、X…最短距離の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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