(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007651
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】発泡樹脂を挟持した金属板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20230112BHJP
B29C 39/20 20060101ALI20230112BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230112BHJP
B29C 44/20 20060101ALI20230112BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20230112BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20230112BHJP
E04C 2/34 20060101ALI20230112BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20230112BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
B32B15/08 Z
B29C39/20
B29C44/00 A
B29C44/20
B29C44/36
E04C2/26 V
E04C2/34 Q
B29K105:04
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110639
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】大河瀬 睦人
(72)【発明者】
【氏名】上田 修一
(72)【発明者】
【氏名】野阪 定治
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
【テーマコード(参考)】
2E162
4F100
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
2E162CB08
2E162CD01
2E162CD02
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4F100JK01
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4F214UF27
(57)【要約】
【課題】 金属板の凹凸状溝の深さをできるだけ低くしつつ、軽量化を図りながらも剛性の強い発泡樹脂を挟持した金属板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 一方の金属板2aと他方の金属板2bの表裏面に各々凹凸状溝3Aが形成されており、前記一方と他方の金属板の凹凸状溝3Aは、金属板の長さ方向Xに対して直線状に複数形成されているか、及び/又は、金属板の短辺方向Yに対して斜め直線状に複数形成されており、これら複数の凹凸状溝3Aの長さや幅間隔や形状等の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と金属板との間に発泡樹脂が挟持された長尺状の発泡樹脂を挟持した金属板において、前記一方の金属板と前記他方の金属板のどちらか一方面、もしくは表裏面に各々凹凸状溝が形成されており、前記一方と他方の金属板の凹凸状溝は、金属板の長さ方向に対して直線状に複数形成されているか、及び/又は、金属板の短辺方向に対して直線状に複数形成されており、これら複数の凹凸状溝の長さ、及び/又は、幅の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整していることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板。
【請求項2】
前記一方と他方の金属板の凹凸状溝は、金属板の長さ方向に対して斜め直線状に複数形成されているか、及び/又は、金属板の短辺方向に対して斜め直線状に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂を挟持した金属板。
【請求項3】
前記一方と他方の金属板の凹凸状溝は、前記一方と他方の金属板の幅間隔H1に対する前記凹凸状溝の表面側又は裏面側段差の深さ間隔H2における比率(H2/H1)の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整していることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡樹脂を挟持した金属板。
【請求項4】
前記一方と他方の金属板の凹凸状溝は、金属板の長さ方向に対して斜め直線状に複数形成されているとともに、金属板の短辺方向に対して斜め直線状に複数形成されており、これら凹凸状溝の交差する方向の角度の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の発泡樹脂を挟持した金属板。
【請求項5】
前記斜め直線状の凹凸状溝は、前記一方と他方の各金属板の長さ方向の中心において対称になるように形成されているか、及び/又は、前記一方と他方の金属板の短辺方向の中心において対称になるように形成されているか、及び/又は、前記一方と他方の金属板において対称になるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の発泡樹脂を挟持した金属板。
【請求項6】
金属板と金属板との間に発泡樹脂が挟持された長尺状の発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法において、前記一方と他方の金属板の表裏面に直線状の凹凸状溝を形成する第1のエンボスロールと、前記他方の金属板の表裏面に直線状の前記凹凸状溝を形成する第2のエンボスロールとを備え、前記第1のエンボスロールによる凹凸状溝方向と前記第2のエンボスロールによる凹凸状溝方向とが異なる方向に設定可能であるとともに、金属板に対する間隔を調整可能に構成されていることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法。
【請求項7】
金属板と金属板との間に発泡樹脂が挟持された長尺状の発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法において、前記一方の金属板の表裏面に直線状の前記凹凸状溝を形成する第1のエンボスロールと、前記他方の金属板の表裏面に直線状の前記凹凸状溝を形成する第2のエンボスロールと、前記第1のエンボスロール及び/又は前記第2のエンボスロールを主ロールとしてこれら連続するように配される従ロールとを備え、前記従ロールの凹凸状溝が前記主ロールの凹凸状溝に対応する斜めに設定可能で、また、金属板に対する間隔を調整可能に構成されているとともに、金属板に対する間隔を調整可能に構成されていることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法。
【請求項8】
前記第1のエンボスロールと前記第2のエンボスロール、及び/又は、前記従ロールは、各々複数個配置され、これらの複数のロールの溝幅を異ならせているか、及び/又は、前記凹凸状溝に対する長さに対応するロール径の溝の大きさを異ならせていることを特徴とする請求項6又は7記載の発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板と金属板との間に発泡ウレタン等の合成樹脂材を発泡させた発泡樹脂を挟持した金属板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建材用や、その他の構造物用として多くの金属板が使用されている。金属板でも、特にアルミニウム製の金属板は、軽量化のみならず加工精度に優れるために広く普及している。また、断熱性や難燃性・耐熱性等の要請から、金属板と金属板との間に熱可塑性合成樹脂や発泡樹脂を介在させたものが軽量化に優れ広く普及している。
【0003】
特許文献1は、「上下2枚の金属板の間に熱可塑性合成樹脂板を介在して三層構造にしたラミネート板において、片面もしくは両面が同一模様または上下両面が異なる模様を有するエンボス金属板によって構成したことを特徴とするエンボスラミネート板。」(請求項1)と、「上面板と下面板との模様の位置関係が板面垂直軸のまわりに0~180°の間で回転した変位関係を保って接着形成されたことを特徴とする特許請求の範囲1項に記載の凹凸状溝ラミネート板。」(請求項2)記載されている。
そして、その明細書中には、「自動車用、建材用、家電用、その他の構造物用としては金属板が多く使用されているが、これらの金属板においては軽量化を図るために、板厚を減少させる傾向が一般的趨勢になっている。しかしながら、構造物において特に問題となる剛性は、板厚の3乗に比例するため、ゲージダウンを行うと大幅な剛性低下が起こる。一方、軽量化に対してはプラスチック等の使用があるが、耐熱性・耐疵付性の観点からは金属には劣る欠点があり、また、金属とプラスチックをラミネート化することにより、厚みが厚くなるため大幅な製造費用の上昇につながるなどの欠点があった。したがって、本発明の目的は、製造費用増大を招くことなく軽量化と剛性確保とを両立させることのできるエンボスラミネート板を提供し、これによって各種構造用金属板に対する要望に応えることにある。」と記載されている。
特許文献2は、その要約において、(課題)「フェノール樹脂発泡体の表面欠陥を覆い隠す効果が発揮されると共に、意匠、美観効果が加味され、かつ長期使用時の防食性、難燃性、耐熱性、熱線反射性、意匠性などの品質が維持されるフェノール樹脂発泡体積層板、この積層板を与える金属箔を提供する。」と記載され、(解決手段)「展性を有する金属箔2の少なくとも一方の面にエンボス加工を施してなるエンボス加工金属箔30、およびフェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の面にシート状布材、接着剤層および金属箔2が順に積層され、かつ前記金属箔として、上記エンボス加工金属箔を用い、表面側がエンボス加工部31となるように配したフェノール樹脂発泡体積層板である。」と記載されている。
特許文献3は、その要約において、(課題)「ニップ部を通過した後の基材に形成される凹凸模様を鮮明なものとすることができるエンボス加工装置、受けロールおよびエンボス加工方法を提供する。」と記載され、(解決手段)「エンボス加工装置1は、その外周面にエンボス版12が設けられたエンボスロール10と、エンボスロール10に対向するよう設けられ、発泡ゴムから形成される外周層22を有する受けロール20とを備えており、エンボスロール10は受けロール20に向かって押圧されるようになっており、エンボスロール10と受けロール20との間に形成されるニップ部Nを通過するシート状の基材Wに対してエンボス版12により凹凸模様が形成されるようになっている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-156246号公報
【特許文献2】特開2006-35675号公報
【特許文献3】特開2016-203525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軽量化のためには金属板は薄くする必要があるが(特許文献2では、箔状にして意匠性を高めるなどするが、剛性は考慮されていない。)、薄いアルミニウム板では剛性が十分に確保できないことから、剛性を強くする工夫が従来から行われている(特許文献1)。剛性を上げるためには、アルミニウム板等の金属板を厚くするか、発泡樹脂の密度を高めることが一般的ではある。この点特許文献1では、上下の金属板の両面が異なる模様(エンボス加工)を形成するものである。なお、長尺状の発泡樹脂を挟持した金属板において、重要な剛性とは、長尺状の長手方向に対する曲げ強度を強くするとともに、外的な力の付与によるエンボス加工部分の変形や損傷の抑制である。そして、金属板全体に均衡のとれた曲げ強度が必要である。
しかしながら、従来から金属板の表面には溝が形成されたものが一般的に使用されているところ、溝の深さ(大きさ)を大きくすると、剛性が確保されたとしても、発泡樹脂の充填密度を上げることが困難になったり、エンボス模様を変更したり、特殊な発泡樹脂を使用する必要性が生じるなどして、製造コストが高価になるなどの不都合がある。また、特許文献1のように、片面もしくは両面が同一模様または上下両面が異なる模様を有するエンボス金属板によって構成しただけでは金属板全体に均衡のとれた曲げ強度が確保できないおそれがあること、模様が曲線などを含めて複雑になる恐れがある。
これに対して、本願発明者らの研究によれば、直線状の金属板表面の凹凸状溝(エンボス加工部分)の長さや幅、形状、又、その方向性を変える工夫をするだけでも、発泡樹脂の厚みに関わらず、長手方向に対する剛性を上げることができることを明らかにした。
また、前記エンボス加工部分の溝の深さを深くすることは、金属板の安定した剛性の確保の点から好ましくないだけでなく、金属板に対し溝を形成するときのエンボスローラの凹凸を深くする必要が生じる点からも好ましくなく、エンボス加工部分の溝の深さ(大きさ)をできるだけ浅く(小さく)することが好ましい。この点、本願発明者らの研究によれば、上記直線状のエンボス加工による溝を使用したとしても、上記溝の長さや幅、又、その方向性を変える工夫をしたりすることで、一対の金属板の厚みH1に対する凹凸状溝の深さH2の比率(%)を低くできることも予測することができた。
【0006】
そこで本発明の目的は、直線状のエンボス加工による溝を使用したとしても、上下一対の金属板の間において発泡樹脂の充填密度を調整することができるようにして、金属板に設けられた溝の深さをできるだけ浅く(低く)しつつ、軽量化を図りながらも剛性の強い発泡樹脂を挟持した金属板及びその製造方法を提供することにある。
また、一対の金属板にエンボス加工を施すことにより、エンボス加工が施されていないものと比較して、発泡樹脂の使用量を削減しても、剛性を同等、またはそれ以上に高めることが可能であるとともに環境負荷を低減できる発泡樹脂を挟持した金属板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、まず、一対の金属板の間に発泡樹脂が挟持された発泡樹脂を挟持した金属板のうち、一方の金属板に凹凸状溝3Aを形成したもの(
図6(a))と、形成しないものとで(
図6(b))、曲げ強度に対して差が生じるかどうか実験した。これらの仕様は表2に示すとおりである。
表1において、平板とは、一方と他方の金属板の両方ともに凹凸状溝3Aを設けない平板である場合の曲げ強度を示している。曲げ強度とは、発泡樹脂を挟持した金属板の中央の幅方向に鋼鉄板の刃先を差し込むように荷重をかけて行った曲げ強度試験の結果である。
図6(a)(b)の中央の線S3が曲げ強度試験の刃先を入れた跡である。
その結果、表1に示すように、金属板に凹凸状溝3Aを形成したもの(
図1(a)(b)の符号3M,3Nや、
図6(a)の符号3A)の方が高い曲げ強度が得られた(表1;改善率が1.54倍と1.75倍)。
なお、上下とも平板(エンボス無し)において、発泡樹脂層を厚くすると、曲げ強度は高くなるが、前記凹凸状溝3Aを設けた場合のように、改善率が1.54倍、1.75倍というような大幅な上昇にはならなかった。
【0008】
【0009】
【0010】
次に、表1や表2の試験体3に示す発泡樹脂を挟持した金属板1Aは、
図7(a)(b)に示すように、厚さ0.2mmの一対のアルミニウム板2a、2bを使用して、発泡樹脂5を挟持しており厚さH1が8.66mmであり、一方(他方)の金属板に設けられたエンボスの深さH2(凹凸状溝3Aの段差)は0.3mmであり、その全体の厚みに対するエンボスの深さ(凹凸状溝3Aの段差)の比率(H2/H1)を求めたところ、3.5%となった。
上述の表1や表2のように0.3mmの深さの凹凸状溝3Aを一方の金属板及び/又は他方の金属板に設けることで、凹凸状溝を有しない発泡樹脂を挟持した金属板と比較し、1.5倍から1.7倍の曲げ強度を得られることとなり、発泡樹脂を挟持した金属板1Aの厚みと曲げ強度のバランスを考慮する必要があるが、発泡樹脂の使用量を削減し、曲げ強度を有しつつ従来よりも薄い発泡樹脂を挟持した金属板1Aを提供することができる。
【0011】
以上の実験結果から、本発明は、以下のように工夫した構成を採用した。
本発明は、金属板と金属板との間に発泡樹脂が挟持された長尺状の発泡樹脂を挟持した金属板において、前記一方の金属板と前記他方の金属板の表裏面に各々凹凸状溝が形成されており、前記一方と他方の金属板の凹凸状溝は、金属板の長さ方向に対して直線状に複数形成されているか、及び/又は、金属板の短辺方向に対して直線状に複数形成されており、これら複数の凹凸状溝の長さ、及び/又は、幅の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整していることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板である。
また、本発明における一方と他方の金属板の凹凸状溝は、金属板の長さ方向に対して斜め直線状に複数形成されているか、及び/又は、金属板の短辺方向に対して斜め直線状に複数形成されており、これら複数の凹凸状溝の長さや幅の違いや形状や角度の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整していることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板である。
また、本発明における前記一方と他方の金属板の凹凸状溝は、前記一方と他方の金属板の幅間隔H1に対する前記凹凸状溝の表面側又は裏面側段差の深さ間隔H2における比率(H2/H1)の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整していることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板である。
前記一方と他方の金属板の凹凸状溝は、金属板の長さ方向に対して斜め直線状に複数形成されているとともに、金属板の短辺方向に対して斜め直線状に複数形成されており、これら凹凸状溝の交差する方向の角度の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整していることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板である。
ここで、前記一方の金属板と前記他方の金属板の少なくとも一方の表裏面に各々凹凸状溝が形成されるものである。例えば、外側の表面のみに凹凸状溝が形成されるものは、含まれない。凹凸状溝は、外力に対しては、剛性を発揮するのみならず、発泡樹脂との関係では充填密度に影響を与えるためである。
凹凸状溝には、波形の溝も含まれるが、角張った形状の凹凸状の溝が好ましい。発泡樹脂の充填密度を高くすることができること、製品の剛性を高くできることなどからである。
前記一方の金属板の凹凸状溝に対応する他方の金属板の凹凸状溝には、その幅、長さ、形状や角度が少なくとも一つ対応していれば良く、その幅、長さ、形状や角度が完全に一致した対応である必要はない。ここで、凹凸状溝の形状としては、
図7(a)(b)(c)で示すような、左右の幅広の凸部Kb,Kbの間に中央の凸部3Aaが形成されるとともに、左右の凹部3Ab,3Abが設けられて凹凸が形成されているものが、形状が簡易であり、かつ、発泡樹脂5の充填密度を調整できる点で好ましい形状である。なお、充填密度とは、凹凸状溝3Aの幅や長さや形状により、充填される発泡樹脂の密度に差が生じて、剛性や曲げ強度に影響を与えることを含めて使用するものである。
これら本発明によれば、上記直線状の凹凸状溝に対して発泡樹脂を充填するだけで(発泡樹脂の充填密度を調整可能になり)、長手方向や短辺方向に対する曲げ強度を強くできるとともに、エンボス加工(凹凸状溝加工)の破損・損傷に強い剛性を確保することができる。また、発泡樹脂の充填密度を高くすることで、金属板裏面の発泡樹脂との接着力・接合力を強くすることが期待できる。
【0012】
本発明としては、前記直線状の凹凸状溝は、前記一方と他方の各金属板の長さ方向の中心において対称になるように形成されているか、及び/又は、前記一方と他方の金属板の短辺方向の中心において対称になるように形成されているか、及び/又は、前記一方と他方の金属板において対称(表裏の金属板の凹凸状溝の対称)になるように形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、前記凹凸状溝を対称形状で設けることにより、発泡樹脂の充填密度を高くして、金属板全体に対して均衡のとれた剛性(曲げ強度)を発揮することとなる。
ここで、クロス状の凹凸状溝において、
図5に示す様な交差点S1を設けないものが好ましい。これは、交差点S1を設けると、凹凸状溝の幅や長さ等にもよるが、左右の流路である凹凸状溝に発泡樹脂が流れる確率を防止するためである。
【0013】
また、本発明は、金属板と金属板との間に発泡樹脂が挟持された長尺状の発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法において、前記一方と他方の金属板の表裏面に直線状の凹凸状溝を形成する第1のエンボスロールと、前記他方の金属板の表裏面に直線状の前記凹凸状溝を形成する第2のエンボスロールとを備え、前記第1のエンボスロールによる凹凸状溝方向と前記第2のエンボスロールによる凹凸状溝方向とが異なる方向に設定可能であるとともに、金属板に対する間隔を調整可能に構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、前記第1のエンボスロールと前記第2のエンボスロールとが向きを変えることができるので、前記一方の金属板と他方の金属板に対して前記斜めの凹凸状溝を効率的に形成することができる。また、金属板に対する間隔を調整可能に構成されていることから、上下両方の金属板に凹凸状溝を設けることで凹凸状溝の表面側又は裏面側段差H2を低くすることができる(
図7(b))。この段差H2の低さは、強い剛性を安定して発揮するために不可欠な重要な要素である。
【0014】
また、本発明は、金属板と金属板との間に発泡樹脂が挟持された長尺状の発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法において、前記一方の金属板の表裏面に直線状の前記凹凸状溝を形成する第1のエンボスロールと、前記他方の金属板の表裏面に直線状の前記凹凸状溝を形成する第2のエンボスロールと、前記第1のエンボスロール及び/又は前記第2のエンボスロールを主ロールとしてこれら連続するように配される従ロールとを備え、前記従ロールの凹凸状溝が前記主ロールの凹凸状溝に対応する斜めに設定可能で、また、金属板に対する間隔を調整可能に構成されていることを特徴とする発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法である。
本発明によれば、前記従ロールの凹凸状溝が前記主ロールの凹凸状溝に対応する斜めに設定可能に構成されていることから、前記従ロールの斜めの凹凸状溝に対応する斜め凹凸状溝(クロス状の前記凹凸状溝)を連続的に形成することができる。また、金属板に対する間隔を調整可能に構成されていることから、上下両方の金属板に凹凸状溝を設けることで凹凸状溝の表面側又は裏面側の段差H2を低くすることができる(
図7(b))。
【0015】
本発明としては、前記第1のエンボスロールと前記第2のエンボスロール、及び/又は、前記従ロールは、各々複数個配置され、これらの複数のロールの溝幅を異ならせているか、及び/又は、前記凹凸状溝に対する長さに対応するロール径の溝の大きさを異ならせていることを特徴とする。すなわち、前記凹凸状溝を形成するロールの溝幅や長さや大きさを異ならせていることで、前記凹凸状溝の幅、長さ、形状や、凹凸状溝の表面側又は裏面側の段差H2を調整することができる(
図7(b))。
本発明によれば、前記一方と他方の金属板の前記斜め直線状の凹凸状溝に対して高密度に、そして効率的に発泡樹脂を充填させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡樹脂を挟持した金属板によれば、上下一対の金属板の間において発泡樹脂の充填密度を調整することができるので、金属板の凹凸状溝の深さ(大きさ)をできるだけ低く(小さく)しつつ、軽量化を図りながらも長手方向に対する曲げ強度を強くするとともに、エンボス加工(凹凸状溝)の破損・損傷が生じないようにすることが可能である。そして、斜め直線状に凹凸状溝を設けると、平行な直線状の場合と比較して、発泡樹脂の充填方向が直線状に進まずに(斜め直線状に充填されて)、その分だけ金属板の表裏面の前記凹凸状溝に向かう割合が高くなり、比較的容易に充填密度を高くすることができ、しかも、製造方法においても平行な直線状のエンボスロール等を使用して容易に製造可能である。
また、本発明の発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法によれば、前記第1のエンボスロールによる凹凸状溝方向と前記第2のエンボスロールによる凹凸状溝方向とが異なる方向に設定可能で、また、金属板に対する間隔を調整可能に構成されていることにより、前記凹凸状溝の幅や長さや形状等を調節しながら簡易に形成して、発泡樹脂の充填密度を高くして効率的に製造可能になる。
さらに一対の金属板に本発明のような凹凸状溝を施すことにより、エンボス加工が施されていないものや、その他のエンボス加工が施されたものと比較して、発泡樹脂の使用量を削減し薄くても剛性を同等、またはそれ以上に高めることが可能であるとともに、発泡樹脂の使用量削減による環境負荷低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態の発泡樹脂を挟持した金属板を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の金属板を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態の金属板を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態の他の例を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態の他の例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の発泡樹脂を挟持した金属板を示す比較画像である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の発泡樹脂を挟持した金属板を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態の発泡樹脂の製造装置を説明する図である。
【
図9】本発明の実施形態の発泡樹脂の製造装置を説明する図である。
【
図10】本発明の実施形態の発泡樹脂の製造装置を説明する図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態の金属板を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態の金属板の他の例を示す図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態の金属板の他の例を示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態の金属板を示す図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態の金属板の他の例を示す図である。
【
図16】本発明の第1の実施形態の金属板の他の例を示す図である。
【
図17】本発明の第1の実施形態の金属板の他の例を示す図である。
【
図18】本発明の第1の実施形態の金属板の他の例を示す図である。
【
図19】本発明の第1の実施形態の金属板の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の発泡樹脂を挟持した金属板1Aを示す図である。
本実施形態の発泡樹脂を挟持した金属板1Aは、発泡樹脂5を挟持した金属板2a、2bから構成され、金属板2a、2bはアルミニウム製である。本実施の形態における発泡樹脂を挟持した金属板1Aはバス(浴槽)パネルなどの建材製品として使用される。金属板2a、2bに挟持される発泡樹脂(層)5は、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂で板状に形成されている。発泡樹脂層5を形成する熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、及びポリイソシアヌレート樹脂等が挙げられる。発泡樹脂層5がこれらの熱硬化性樹脂で形成されていれば、発泡樹脂を挟持した金属板1の難燃性をより高められる。フェノール樹脂を発泡させるための発泡剤としては、ハロゲン化炭化水素やハロゲン化不飽和炭化水素が好ましい。
図2(a)(b)に示すように、この金属板2a,2bの長手方向に対して平行な直線状に凹凸状溝3M,3Nが複数本形成されている。複数本の凹凸状溝3M,3Nは、その長さは同じであるが幅が異なり、一方の金属板2aは、広幅の凹凸状溝3Mが形成され、他方の金属板2bは細幅の凹凸状溝3Nが形成されている。なお、
図2(c)(d)に示す例では、一方の金属板2aと他方の金属板2bとに各々広幅の凹凸状溝3Mと細幅の凹凸状溝3Nが形成されている。
これら平行な直線状の凹凸状溝3Aは、幅の広い凹凸状溝3Mと幅の狭い凹凸状溝3Nとが組み合わされているものは、同じ幅の凹凸状溝が連続して設けられるものと比較して、充填密度を高めることができる。
また、前記凹凸状溝を
図7(a)に示すように詳細に説明すると、凹凸状溝3Aは、その溝の中央部分に凸部3Aaが設けられて対称軸となるように、両脇に凹部3Abが配された構成となっている。単なる溝ではなく、凹部3Abに挟まれるように凸部3Aaが配された凹凸状であることで、凹部3Abを深く設けなくても曲げ強度を高めることが可能となる。なお、上記凹部3Abに挟まれるように凸部3Aaが複数個配されたものとしたり、これら複数の凸部3Aaが上記凹部3Abの高さ(深さ)よりも低くしたりして、充填密度を高めつつ発泡樹脂5の量を少なくすることも可能である。
このことは、凹部3Abが深いとその端部に外的な力が加わることにより、変形や損傷が生じるおそれがあるが、凹部3Abが浅いことで、変形や損傷を抑制できる効果も得られることになる。
さらに、
図7(c)に示すように、本実施の形態の形態における金属板2a(2b)の凹凸状溝3Aが設けられている部分の幅Kaと凹凸状溝3Aが設けられていない部分の幅Kbは略同一となるように形成されている(Ka=Kb)。これは、所望する曲げ強度に応じて、Ka>Kbや、Ka<Kbとすることができ、曲げ強度を高めたい場合は、Ka>Kbとすることが望ましい。
これら平行な直線状の凹凸状溝3Aは、X-X線(長手方向)を介して対称に設けるようにしたり、一方の金属板2aと他方の金属板2bとの間で対称になるように形成したりすることで、バランスの取れた曲げ強度を得ることができる(
図2)。
【0020】
発泡樹脂5には、アルミニウム粒子及びバインダ樹脂を含有する。アルミニウム粒子を形成する材料として、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成することができる。
また、バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が使用できる。
【0021】
前記一方の金属板2aと他方の金属板2bには、凹凸状溝(エンボス加工)3Aが形成されている(
図2、6、7)。エンボス加工は、一方の金属板と他方の金属板2a,2bの両方(表側と裏側)に各々形成することが好ましい。また、それぞれの金属板2a、2bにおいて、上面(表面)だけではなく、内側の面(裏面、発泡樹脂と接する面)にも凹凸形状が形成されていることが好ましい。発泡樹脂の充填密度が高められるからである。
【0022】
図16(a)(b)は、本発明の第1の実施形態の他の例を示す図である。
図16(a)(b)の例21Aは、前記平行な直線状の凹凸状溝3Aが一方の金属板2aと他方の金属板2bの各々において、対称の配置で、かつ、その長さが異なるように形成されている。
また、
図17(a)(b)の例22Bでは、これら複数の凹凸状溝3Aの長さと太さ(図中3Mと3Nで示す)の違いがあるもので場所により曲げ強度に変化をもたらす。さらに発泡樹脂の充填密度を場所により調整可能である(発泡樹脂を挟持した金属板1Aの端部の曲げ強度を高くした例である)。このように、上下の前記凹凸状溝3Aの長さや幅の違いにより曲げ強度に変化を持たせたり、発泡樹脂の充填密度を調整することができ、一対の金属板の厚みH1に対する凹凸状溝3Aの深さH2の比率(%)を低くできることも予測できる(
図7(a)(b))。
【0023】
図18(a)(b)と
図19(a)(b)の例23C,24Dは、本発明の第1の実施形態の他の例を示す図である。これらの発泡樹脂を挟持した金属板23C,24Dは、前記平行な直線状の凹凸状溝3Aが一方の金属板2aの短辺方向(Y-Y)に設けられるものであり、他方の金属板2bでは長手方向に凹凸状溝3Aが形成されている。
図19(a)(b)に示すように、凹凸状溝3Aの太さを異ならせても良く、長手方向に平行なものと組み合わせて、縦横の格子状に形成しても良い。
【0024】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施形態を示す図である。
図3が示す発泡樹脂を挟持した金属板1Bが示す、長辺方向X又は、短辺方向Yに対し傾斜した直線状の凹凸状溝3Aが形成されており、複数本の凹凸状溝3Aは、その長さが異なる。
図3の例では、これら複数の凹凸状溝3Aの幅間隔の違いにより発泡樹脂の充填密度が異なる。なお、前記傾斜した直線状の凹凸状溝3AはX-X線を軸に一方の金属板2aと2bに線対称となるように設けられている。
ここで、一方の金属板2aと他方の金属板2bにおいて斜め直線状の凹凸状溝3Aを形成するメリットとしては、矩形状の金属板2a,2bの角部で複数形成すると、その長さの異なる前記斜め直線状の前記凹凸状溝3Aが容易に形成できることと(長さが異なることで発泡樹脂5の重点密度を変えて調整できることが容易であり)、また、斜め直線状にあると、第1の実施の形態の平行な直線状の場合と比較して、発泡樹脂の充填方向が直線状に進まずに(斜め直線状に充填されたり、上下に向かって充填されるので)、その分だけ金属板の表裏面の前記凹凸状溝に向かう割合が高くなり、充填密度を高くできることが挙げられる。
ここで、エンボス加工によって設けられた凹凸状溝3Aは、凹凸状溝を横断するように加えられる曲げる力には強いが、エンボス加工による凹凸状溝と同じ方向に加えられる曲げる力には弱い。例えば、長辺方向Xに設けられた凹凸状溝3Aは、前記凹凸状溝3Aを横断する短辺方向Yに曲げようとする力には強いが、長辺方向Xに曲げようとする力には弱くなる。
そこで本実施の形態のように、長辺方向X及び短辺方向Yの両方向に対して傾斜したように設けられた凹凸状溝とすることで、長辺方向X及び短辺方向Yから曲げようとする力に対し剛性を発揮するようにできる。
【0025】
図4(a)(b)は、本発明の第2の実施形態の他の例1Cを示す図である。
図4(a)(b)の例1Cは、上記1Bと同様に傾斜した直線状の凹凸状溝3Aが一方の金属板2aと他方の金属板2bに形成されており、複数本の凹凸状溝3Aはその長さが異なるとともに、1Cでは、これら複数の凹凸状溝3Aの幅間隔の違いにより発泡樹脂の充填密度が異なる。本実施の形態でも、前記斜め直線状の凹凸状溝3AがX-X線を対称軸にして一方の金属板2aと他方の金属板2bに線対称に設けられている。
なお、
図5に示すように、1Dは交差する方向において、一方の斜めの凹凸状溝3Aと他方の斜めの凹凸状溝3Bは、交差するものも考えられる。後述するように、前記凹凸状溝の長さや幅間隔にもよるが、交差する角度(交差点の角度)D1は、略90°が好ましく、120°以上では好ましくない。
【0026】
次に、本実施形態の発泡樹脂を挟持した金属板の製造方法は、例えば
図8に示すような製造装置11により製造する。
本発明に係る製造装置11は、搬送部14と、第1と第2のアルミコイル巻装機12A,12Bと、第1と第2のエンボスロール13(第1のエンボスロール13Aと第2のエンボスロール13B)と、発泡樹脂注入機15と、硬化炉17とを備えている。
搬送部14は、水平面に沿って複数の搬送ローラが並べられており、第1のアルミコイル巻装機12Aから所定長さにして繰り出される一方の金属板2aを硬化炉17へと供給する。なお、搬送部14には、一方と他方の金属板2a,2bを加熱するヒータが配置されている。他方の金属板2bは、第2のアルミコイル巻装機12Bから一方の金属板2a上に発泡樹脂5が注入された後に図に示すように発泡樹脂5の上に供給される。
発泡樹脂注入機15は、例えば、フェノール樹脂や発泡剤等を混合した発泡樹脂剤を前記一方の金属板2a上に供給する。
硬化炉17には、発泡樹脂5を一方と他方の金属板2a,2bで挟持した状態で供給され、発泡樹脂5を加熱して硬化させる。
【0027】
ここで、前記第1のエンボスロール13Aと第2のエンボスロール13Bと従ロール18が複数個配置され、回転方向を一方の金属板2aの進行方向と同期させ、進行方向と平行な凹凸状溝3Aを形成することができる。
さらにエンボスロール13としては、
図9(a)(b)に示すように、これらのロールの回転方向を一方の金属板2aの進行方向と異ならせることで、一方の金属板2aの長辺方向X及び短辺方向Yから傾斜した向きの異なる凹凸状溝3Aを形成することができる。エンボスロール13は角度変更可能に構成されるとともに、一方と他方の金属板2a,2bに設けられる凹凸状溝3Aの深さH2を変更可能に構成されている。
【0028】
また、前記発泡樹脂注入機15としては、
図10(a)(b)に示すように、発泡剤のノズル部15aを一方と他方の金属板2a,2bの周囲に配置して、搬送部14により搬送される一方と他方の金属板2a,2bの凹凸状溝3A,3Bに対して(一方と他方の金属板2a,2bを移動しないように固定された状態にして)、その一方側の他方側の凹凸状溝3A,3Bに対して同時に、外周から発泡樹脂剤5を供給することも可能である。
なお、
図8に示すように、前記一方の金属板2aを所定長さで引き出してから、前記一方の金属板2aに対して発泡樹脂剤5を供給して前記他方の金属板2bを重ね合わせるという装置の場合の利点としては、一対の金属板の厚みH1を調節できることが挙げられる。
【0029】
(実験例)
次に、本発明の実験例について比較例を参照しながら説明する。
【0030】
まず、サンプル品(試験体)1~3として、一方及び、他方の金属板2a、2bに凹凸状溝3Aを形成しない金属板2a、2bで発泡樹脂5を挟持した試験体1、
図6や
図7に示すように、一方の金属板2aに長辺方向Xと平行な凹凸状溝3Aを形成した一方の金属板2aと凹凸状溝3Aを形成しない他方の金属板2bで発泡樹脂5を挟持した試験体2、一方及び、他方の金属板2a、2bに凹凸状溝3Aを形成し、発泡樹脂5を挟持した試験体3で曲げ強度を比較したが、各試験体の仕様は、表2に示す。
今回の曲げ強度の試験は、凹凸状溝3を横断する方向(ここでは短辺方向Y)に鋼鉄板の刃先を差し込むように荷重を付与する方法で行った(
図6に示すS3が鋼鉄板の刃先の跡である。)。
その結果、表1に示すように、格子状の凹凸状溝3Aを形成した試験体2及び、試験体3が金属板2a、2bに凹凸状溝3Aを形成しない試験体1に比べて、1.5倍以上の高い曲げ強度が得られた。
次に、
図6に示すように、長手方向に平行な凹凸状溝3Aを形成した一方の金属板2aと、凹凸状溝3Aを形成しない平板な他方の金属板2bで発泡樹脂5を挟持した金属板1Aと、
図5(a)に示すように、金属板2aのX及び短辺方向Yから傾斜した凹凸状溝3Aと3Bによって格子状(クロス)の凹凸状溝を形成した一方の金属板2aと、凹凸状溝を形成しない平板な他方の金属板2bで発泡樹脂5を挟持した金属板1Dについて、曲げ強度を比較したところ、格子状の凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂を挟持した金属板1Dの方が曲げ強度が高い結果が得られた。
【0031】
次に、
図5に示す一方の金属板2aに斜めクロス状の凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂5を挟持した金属板1Dと、
図6に示す平行な凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂を挟持した金属板1Aについて、曲げ強度を比較したところ、格子状の凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂を挟持した金属板1D(クロス状の凹凸状溝)の方が高い曲げ強度が得られるわけではなかった。すなわち、実験の中では、クロス状の凹凸状溝3A、3Bの方が高い曲げ強度が得られる場合もあったが、クロス状の凹凸状溝3A、3Bの方が平行な直線の場合よりも低い曲げ強度になる場合もあった。ここで、上記金属板の他方側2bは、いずれも平板な金属板である。
また、
図19に示す一方の金属板2aに十字状の凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂を挟持した金属板24Dと、
図6に示す平行な凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂を挟持した金属板100aについて、曲げ強度を比較したところ、格子状の凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂を挟持した金属板24Dの方が高い曲げ強度が得られるわけではなかった。すなわち、実験の中では、クロスの凹凸状溝を有する発泡樹脂を挟持した金属板24Dの方が高い曲げ強度が得られる場合もあったが、平行な凹凸状溝3Aの場合よりも低い曲げ強度になる場合もあった。ここで、上記
図6の金属板の他方側100bは、いずれも平板な金属板である。
次に、
図5に示すような格子状の凹凸状溝3A、3Bを形成した一方の金属板2aと、凹凸状溝3Aを形成しない平板な他方の金属板2bで発泡樹脂5を挟持した金属板1Dは、凹凸状溝3Aと3Bの交差部分の角度D1が略90°である場合では、上記試験体2や試験体3よりも高い曲げ強度が得られたが、
図11に示すような格子状(交差状或いはクロス状)の凹凸状溝3A,3Bを形成した発泡樹脂を挟持した金属板1Fは、交差部分の角度D1が約160°である場合では、試験体2に示すような平行な凹凸状溝3Aを形成した発泡樹脂を挟持した金属板1Aよりも低い曲げ強度となった。
その結果を検証すると、交差部分の対角線D2の幅が曲げ強度に影響を与えることが分った。すなわち、交差部分の角度D1が略90°である場合では、交差部分の対角線D2の幅が狭く、曲げ強度に影響を与えないが、交差部分の角度D1が略160°である場合は、交差部分の対角線D1の幅が広く、曲げ強度に影響を与えることが分った。
この点に対する対応としては、
図12(a)(b)に示すように、交差部S1を作らないようにすることが考えられる。その結果、また、行き止まり部分S2が形成できるが、これにより、上下の前記凹凸状溝3A,3Bの方に発泡樹脂が押しやられて、前記凹凸状溝3A,3Bの充填密度を高くすることができるようになる。
なお、
図12に示す例の前記凹凸状溝3A,3Bのエンボス模様を更に小さなものとしていくと
図13の状態になり、更に小さくして複数配することも可能である。
【0032】
ここで、エンボス加工が一方向だけでは剛性が出ない方向性D1もあるため(例えば幅方向;Y-Y方向)、斜めクロスのエンボスを入れることも可能である。すなわち、第1の実施の形態では、前記一方の金属板2aの凹凸状溝3A,3Bは、金属板の長さ方向(X-X)に対して斜めに一方の凹凸状溝が形成されており、前記他方の金属板2bに前記斜めの凹凸状溝が金属板の長さ方向において前記一方の金属板2aと対称になるように形成されている。これにより金属板全体の曲がり強度に均衡を持たせることができる。
また、前記一方の金属板2aと前記他方の金属板2bの各々の斜めの凹凸溝3A,3Bは、交差するものではなく、片方の金属板のみに前記斜めの凹凸状溝3A,3Bが形成されているものと比較して、長手方向に対する曲げ強度を強くするとともに破損に強い剛性を確保する。
【0033】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施例について実験例と比較例を参照しながら説明する。
本実施の形態の発泡樹脂を挟持した金属板1Jと1Kは、
図14と
図15に示すように、前記一方と他方の金属板2a,2bに対応する斜めの凹凸状溝3A,3Bを、前記一方と他方の各金属板の長さ方向の中心(Ox-Ox)において対称になるように形成し(1J)、前記一方と他方の金属板の短辺方向の中心(Oy-Oy)において対称になるように形成したものである(1K)。このような配置構成にすることで、金属板全体に対して均衡のとれた剛性(曲げ強度)を発揮することとなる。また、凹凸状溝3Aの長さや幅の違いや形状や角度の違いにより発泡樹脂の充填密度を調整し易くし、必要な個所の充填密度を高くすることができる。
【0034】
以上、本実施の形態では、アルミニウム製の金属板で説明したが、本発明は金属製板において広く適用可能である。また、金属板の厚さを150μm~5000μm程度のもので説明したが、本発明は、これら以上の厚みの金属板にも広く適用である。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B,1C,1D,1F,1G,1J,1K,21A,22B,23C,24D
発泡樹脂を挟持した金属板、
2a, 一方の金属板、
2b、 他方の金属板、
5 発泡樹脂、
3A,3M,3N 一方と他方の金属板の凹凸状溝、
3Aa 凹凸状溝の凸部、
3Ab 凹凸状溝の凹部、
11 製造装置、
12A,12B アルミコイル巻装機、
13A,13B エンボスロール、
14 搬送部、
17 硬化炉、
18 従ロール、
D1 対応する凹凸状溝の交差角度、
D2 凹凸状溝の交差幅、
H1 発泡樹脂を挟持した金属板の厚さ、
H2 凹凸状溝の表面側又は裏面側段差の深さ(凹部の深さ)、
Ka 金属板に設けられた凹凸状溝の幅、
Kb 金属板の凹凸状溝が設けられていない部分の幅、
S1 交差部(交差点部)、
S2 行き止まり部、
X 金属板の長辺方向(長さ方向、長手方向)、
Y 金属板の短辺方向