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特開2023-76520両親媒性化合物、並びにこれを用いた医療用樹脂組成物および医薬品添加剤
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  • 特開-両親媒性化合物、並びにこれを用いた医療用樹脂組成物および医薬品添加剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076520
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】両親媒性化合物、並びにこれを用いた医療用樹脂組成物および医薬品添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/28 20060101AFI20230525BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C08F20/28
A61K9/127
A61K47/32
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045195
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2021512133の分割
【原出願日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019067826
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今瀬 将人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 あかね
(57)【要約】
【課題】薬物キャリアとしての長期血中滞留性リポソーム等への応用が可能な両親媒性化合物において、細胞内への取込み効率の低下を抑制しつつ、プラスチックに対する吸着性を低減させうる手段を提供する。
【解決手段】分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、炭素原子数8以上の炭化水素基とを有する、両親媒性化合物により、上記課題は解決されうる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、
炭素原子数8以上の炭化水素基と、
を有する、両親媒性化合物。
【請求項2】
前記部位(I)は、前記単量体(a)由来の構成単位(A)を有する重合体からなる、請求項1に記載の両親媒性化合物。
【請求項3】
前記炭化水素基の炭素原子数が8~50である、請求項1または2に記載の両親媒性化合物。
【請求項4】
前記炭化水素基が、直接もしくは二価の結合基を介して前記構成単位(A)を含む部位(I)と結合しているか、または直接もしくは二価の結合基を介して構成単位(A)を含む部位(I)と結合している脂質の一部として存在している、請求項1~3のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項5】
前記単量体(a)が単官能の単量体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項6】
前記構成単位(A)が、下記化学式(1):
【化1】


式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、
Xは、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-O-、-CHO-または-CHCHO-を表す、
で表される構成単位を含む、請求項5に記載の両親媒性化合物。
【請求項7】
前記炭化水素基が脂質の一部として存在しており、前記脂質の分子量が2000以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項8】
前記構成単位(A)を含む部位(I)の数平均分子量(Mn)が1000~15000である、請求項1~7のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の両親媒性化合物を含む、医療用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の両親媒性化合物を含む、リポソーム。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の両親媒性化合物、請求項9に記載の医療用樹脂組成物または請求項10に記載のリポソームから構成された、医薬品添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性化合物、並びにこれを用いた医療用樹脂組成物および医薬品添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬物送達システム(すなわち、ドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug
Delivery System))に基づく製剤(DDS製剤)の開発が積極的に行われてきている。最近のDDS製剤にあっては、アクティブターゲッティング療法における分子標的治療薬と、パッシブターゲッティング療法におけるナノテクノロジーによって医薬を標的細胞に集積し易くした製剤がある。
【0003】
このパッシブターゲッティング療法に利用されている物質としては、ポリエチレングリコール(PEG:PolyEthylene Glycol)が広く用いられている。
【0004】
例えば、リポソームや高分子ミセルをPEGにより修飾したPEG修飾リポソームを長期血中滞留性リポソームとして薬物キャリアに用いて、これにドキソルビシンを封入した製剤(ドキシル(登録商標))などが臨床的に利用されている。
【0005】
PEGは、その骨格構造が単純であることから柔軟性が高い。また、多くの水分子を水和できるという特性を有しているため、PEGにより薬物粒子やキャリアを修飾することにより、粒子表層に重厚な水和層が形成される。この水和層により、血清タンパク質や細胞との相互作用が抑制され、その結果、薬物の血中(体内)滞留時間が大きく延伸されること(ステルス化:Stealth化)が知られている。
【0006】
このように、PEGにより修飾化した医薬品は、今後も新規製剤化技術において重要な一翼を担うと期待されており、現在も多くのものが臨床試験中である。しかしながら、近年PEGにより表面修飾したリポソームや高分子ミセルにおいて、その繰り返し投与(頻回投与)により薬物のステルス性が失われる現象(Accelerated Blood
Clearance:ABC現象)が生じることが報告されている(非特許文献1)。
【0007】
このABC現象は、頻回投与に伴う薬理効果の低減や、予期せぬ副作用が誘導される可能性があることを意味している。したがって、今後このようなPEG化医薬品にあっては、適応疾患の種類や、薬物投与様式(投与量/投与回数/投与頻度)に制約が課せられることも予想され、この課題の克服が強く望まれている。
【0008】
これまで、PEGに代わる修飾剤を用いて修飾化医薬品を作製することにより、ABC現象の発生を抑制しようとする試みがなされている。例えば、PEG代替のポリマーとして、ポリビニルピロリドン(PVP)を修飾剤として用いて、タンパク質薬物にステルス性を付与する技術が報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Pharmacol. Exp. Ther., 292(3): 1071-1079 (2000)
【非特許文献2】Biomaterials, 25(16): 3259-3266 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、主に薬物キャリアとしての長期血中滞留性リポソーム等への応用を前提として、分子内に親水性部分と疎水性部分とを有する両親媒性化合物の開発を進めてきた。そして、その際の検討において、本発明者らは、PVPがポリプロピレン(PP)等のプラスチックに対して高い吸着性を示すことを見出した。ここで、注射器のシリンジの構成材料としてはポリプロピレン(PP)が汎用されている。このため、例えば重合体修飾化リポソームを薬物キャリアとして用いて注射液やプレフィルドシリンジを構成する場合や、重合体でタンパク質を修飾したものを有効成分として用いて注射液やプレフィルドシリンジを構成する場合を想定すると、有効成分を含むリポソームがPVPを介してシリンジの内壁に吸着され、リポソームに内包された有効成分の一部が投与されずにシリンジ内に残存してしまうなどの問題が生じる可能性がある。また、従来公知のPEG修飾リポソームでは、細胞内への取込み効率が低下してしまうという問題もある。
【0011】
そこで本発明は、薬物キャリアとしての長期血中滞留性リポソーム等への応用が可能な両親媒性化合物において、細胞内への取込み効率の低下を抑制しつつ、プラスチックに対する吸着性を低減させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体由来の構成単位を含む部位(本明細書において、単に「部位(I)」とも称する)と、炭素原子数8以上の炭化水素基とを分子内に含む両親媒性化合物を用いることで、上記の課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の一形態によれば、分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、炭素原子数8以上の炭化水素基とを有する、両親媒性化合物が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薬物キャリアとしての長期血中滞留性リポソーム等への応用が可能な両親媒性化合物において、細胞内への取込み効率の低下を抑制しつつ、プラスチックに対する吸着性を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、製造例4で作製した両親媒性化合物(重合体)(2w/v%または4w/v%のPBS溶液)を用いて修飾されたリポソームの粒子径を、無修飾のリポソームと比較して示すグラフである。
図2図2は、製造例1~7および比較製造例1で作製した両親媒性化合物(重合体)のそれぞれの2w/v%PBS溶液の存在下で培養したマウス由来線維芽細胞(L929細胞)の細胞生存率を示すグラフである。
図3図3は、製造例1~7および比較製造例1で作製した両親媒性化合物(重合体)のそれぞれの2w/v%PBS溶液を用いて修飾されたリポソームの存在下で培養したマウス由来線維芽細胞(L929細胞)の細胞生存率を、無修飾のリポソームと比較して示すグラフである。
図4図4は、製造例4で作製した両親媒性化合物(重合体)の2w/v%PBS溶液を用いて修飾された蛍光物質内封修飾リポソームのHepG2細胞への取込み量の測定結果を、無修飾リポソームおよびPEG修飾リポソームと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態は、分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、炭素原子数8以上の炭化水素基とを有する、両親媒性化合物である。
【0017】
このような構成を有する両親媒性化合物の部位(I)はPVPと比較してPP等のプラスチックに対する吸着性が低い。このため、当該化合物は、薬物キャリアとしての長期血中滞留性リポソーム等への応用が可能でありながらも、プラスチックに対する吸着性を低減させることが可能となる。その結果、例えば当該化合物を用いて修飾されたリポソームを薬物キャリアとしてこれに内包された有効成分が、シリンジ内へ残存してしまう虞を低減することができる。また、PEGで修飾されたリポソームで見られるような細胞内への取込み効率の低下を有意に抑制することが可能となる。
【0018】
本発明に係る両親媒性化合物が、例えば上述した用途に用いられた場合に優れた性能を発揮することができるメカニズムは完全には明らかとはなっていないが、疎水的吸着といったメカニズムが推定されている。なお、このメカニズムは推定によるものであり、本発明は当該メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。さらに、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0020】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」は同義語として扱う。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、アクリレートおよびメタクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。さらに、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%の条件で測定する。
【0021】
<両親媒性化合物>
本形態に係る両親媒性化合物は、所定の構造を有する構成単位(A)を含む部位(I)と、炭素原子数8以上の炭化水素基とを有するものである。以下、これらの構成要素について、詳細に説明する。
【0022】
(部位(I))
本発明に係る両親媒性化合物は、まず、分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)を有する。好ましい実施形態において、部位(I)は分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を有する重合体からなる。ここで、本明細書において「単量体(P)由来の構造単位(Q)」(Pは任意の適切な符号を表し、(P)の表記はない場合もある)とは、代表的には、「単量体(P)」(または単に「単量体」)が有する重合性不飽和二重結合の結合の一つが重合によって開き、重合体の少なくとも一部を構成する単位(Q)(Qは任意の適切な符号を表し、(Q)の表記はない場合もある)となったものを意味する。上記「単量体(P)由来の構造単位」には、上記のように単量体(P)(または単に「単量体」)が重合して形成される構造単位(下記に示す具体例では一般式(Q)で表される構造単位)と同じ構造であれば、別の製法によって形成された構造単位であってもよい。例えば、水酸基が保護された単量体(a)を重合して形成された構造単位に対して脱保護処理を施して構成単位(A)を形成してもよい。例えば、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレートまたはグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを重合後、加水分解してグリセリン(メタ)アクリレート由来の構造単位を形成してもよい。
【0023】
分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)は、ビニル単量体であることが好ましく、(メタ)アクリル単量体であることがより好ましい。また、単量体(a)は単官能の単量体であっても多官能の単量体であってもよいが、好ましくは単官能の単量体を含み、より好ましくは単官能の単量体からなる。
【0024】
ここで、単量体(a)としての(メタ)アクリル単量体としては、グリセリンモノ(メタ)アクリレート(別名 2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート)、1,2-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが好適に使用される。これらの中で、工業的入手のし易さや反応性の高さから、グリセリンモノアクリレート(GLMA)またはグリセリンモノメタクリレート(GLMMA)が好ましい。これらの(メタ)アクリル単量体(a)を重合することにより、当該単量体(a)に含まれるエチレン性二重結合が切断されて構成単位(A)が生じる。なお、単量体(a)は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
また、単量体(a)に由来する構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数は2~10であるが、本明細書において「側鎖」とは、当該構成単位が含まれる主鎖以外の部分を指す。そして、「主鎖」とは、構成単位が連なることにより構成される重合体における連続して結合した炭素原子の鎖のうち、炭素原子数が最大となるものを意味する。ただし、例外的に、単量体(a)がメタクリル単量体である場合には、当該単量体における不飽和二重結合を構成する炭素原子に結合したメチル基は主鎖も側鎖も構成しないものとする。なお、上述したように、単量体(a)に由来する構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数は2~10であるが、この炭素原子の数は、好ましくは3~8であり、より好ましくは4~6である。
【0026】
ここで、構成単位(A)は、下記化学式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。また、Xは、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-O-、-CHO-または-CHCHO-を表し、好ましくは-C(=O)-O-である。
【0029】
上記化学式(1)で表される構成単位のうち、Rが水素原子であり、Xが-C(=O)-O-であるものは単量体(a)としてのグリセリンモノアクリレート(GLMA)に由来するものである。また、上記化学式(1)で表される構成単位のうち、Rがメチル基であり、Xが-C(=O)-O-であるものは単量体(a)としてのグリセリンモノメタクリレート(GLMMA)に由来するものである。
【0030】
両親媒性化合物を構成する部位(I)に占める、分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)の割合は、例えば1~100質量%であり、好ましくは20~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%であり、さらに好ましくは60~100質量%であり、いっそう好ましくは80~100質量%であり、特に好ましくは90~100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。構成単位(A)の割合が上記の範囲内の値であれば、本発明の作用効果を奏することができる。
【0031】
両親媒性化合物を構成する部位(I)が構成単位(A)以外の構成単位(以下、単に「構成単位(B)」とも称する)を含む場合、構成単位(B)は任意のラジカル重合性単量体(以下、共重合によって構成単位(B)となる単量体を「単量体(b)」とも称する)に由来するものでありうる。両親媒性化合物を構成する部位(I)が構成単位(B)を含む場合、部位(I)に占める構成単位(B)の割合は、例えば99質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、いっそう好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0032】
単量体(b)としては、例えば、単量体(a)以外の、水酸基含有(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルモノマー、アルキレンオキサイド、アルコキシポリオキシアルキレングリコール、環状化合物、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)などが挙げられる。これらの単量体(b)もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキル基の炭素数が2~4であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
前記ポリオキシアルキレン基含有不飽和単量体としては、例えば、下記化学式(2)で表される単量体などが挙げられる。
【0035】
【化2】
【0036】
式(2)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Rは、炭素数2~18のアルキレン基を表し、Rは、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Xは、炭素数1~5のアルキレン基、-CO-基、またはRC=CR-基がビニル基であるときは直接結合を表し、mは、-(RO)-基の平均付加モル数であり、1~300の数を表す。なお、式(2)中、(RO)が2種以上のROから構成される場合には、2種以上のROは、ランダム、ブロック、交互のいずれの結合形態であってもよい。
【0037】
式(2)において、Rは、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基である。Rのなかでは、水素原子および炭素数1~20の炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~3の炭化水素基がよりいっそう好ましく、炭素数1または2の炭化水素基がさらに好ましい。炭化水素基のなかでは、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、炭素数1~20のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基がさらにいっそう好ましい。
【0038】
式(2)において、式:-RO-で表されるオキシアルキレン基は、炭素数2~18のオキシアルキレン基である。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ-1-ブテン基、オキシ-2-ブテン基などが挙げられる。これらのオキシアルキレン基のなかでは、炭素数2~8のオキシアルキレン基が好ましく、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などの炭素数2~4のオキシアルキレン基がより好ましく、オキシエチレン基がさらに好ましい。
【0039】
化学式(2)において、mは、式:-RO-で表わされるオキシアルキレン基の平均付加モル数である。平均付加モル数は、ポリオキシアルキレン基含有不飽和単量体1モルにおけるオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。mの下限値は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは8以上である。mの上限値は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。
【0040】
Xは、炭素数1~5のアルキレン基、-CO-基、またはRC=CR-基がビニル基であるときは直接結合を表す。これらの基のなかでは、-CO-基が好ましい。
【0041】
ポリオキシアルキレン基含有不飽和単量体としては、例えば、不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコールエステル単量体、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノマレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0042】
不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物は、不飽和基を有するアルコールにポリアルキレングリコール鎖が付加した化合物である。不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-メチル-2-プロペニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-2-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-メチル-3-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-メチル-2-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1-ジメチル-2-プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテルなどが挙げられる。
【0043】
ポリアルキレングリコールエステル系単量体は、不飽和基とポリアルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された単量体である。
【0044】
前記ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、例えば、アルコールに炭素数2~18のオキシアルキレン基が1~300モル付加したアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物が好ましい。アルコキシポリアルキレングリコールのなかでは、オキシエチレン基を主成分とするものが好ましい。前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの炭素数1~30の脂肪族アルコール、シクロヘキサノールなどの炭素数3~30の脂環族アルコール、(メタ)アリルアルコール、3-ブテン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オールなどの炭素数3~30の不飽和アルコールなどが挙げられる。前記エステル化物としては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリエチレングリコールポリブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ポリアルキレングリコールエステル系単量体のなかでは、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートなどの(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0045】
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアルコキシ基の炭素数が1~4であり、アルキル基の炭素数が1~4であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
前記ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ジアミノメチル(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、アジリジン類、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリルアミド、ビニルアルコール、ビニルホルムアミド、ビニルイソブチルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0047】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの炭素数2~4のアルキレンオキサイドなどが挙げられる。
【0048】
前記アルコキシポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリプロピレングリコールなどの炭素数1~4のアルコキシ基および炭素数1~4のオキシアルキレン基を有し、オキシアルキレン基の付加モル数が2~30であるアルコキシポリオキシアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0049】
環状化合物としては、例えば、L-ラクチドなどのラクチド類、ε-カプロラクトンなどのラクトン類、トリメチルカーボネート、環状アミノ酸、モルフォリン-2,5-ジオンなどが挙げられる。
【0050】
部位(I)が構成単位(A)を含む重合体からなる場合に、当該重合体を構成する重合体は、同一の種類または異なる種類の重合体同士を結合させることによって得られるブロック共重合体の構成を有していてもよい。
【0051】
上記重合体の数平均分子量(Mn)は、シリンジの内壁への吸着性などの観点から、好ましくは1000以上であり、より好ましくは2000以上であり、さらに好ましくは3000以上である。また、上記重合体の数平均分子量(Mn)は、体外排出性などの観点から、好ましくは90000以下であり、より好ましくは30000以下であり、さらに好ましくは15000以下である。なお、上記重合体の数平均分子量(Mn)の値は、後述する実施例において、製造例1~7で得られた重合体についてのMnの測定方法に基づいて測定したときの値を意味する。ここで、後述する実施例においては、両親媒性化合物の数平均分子量(Mn)を測定していることから、この測定値から部位(I)(重合体)以外の部位の分子量を減算することにより部位(I)(重合体)のMnの値を算出可能である。正確な値が算出できるのであれば、部位(I)(重合体)のみを用いて同様の手法によりMnの値を求めてもよい。
【0052】
上記重合体の分子量分布([重合平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]の値)は、リポソームへの両親媒性化合物(重合体)の修飾性などの観点から、好ましくは1~5であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1~2であり、さらに好ましくは1~1.5であり、さらに好ましくは1~1.3である。
【0053】
部位(I)を構成する重合体は、単量体(a)および必要に応じて単量体(b)を含む単量体組成物を重合することにより得ることができる。上記単量体組成物を重合させる方法としては、例えば、ラジカル重合法、原子移動ラジカル重合法、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法などに代表されるリビングラジカル重合法、イオン重合法、開環重合法、配位重合法、重縮合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0054】
単量体組成物を重合させる際には、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロエタン、ジクロロメタンなどのハロゲン原子含有溶媒;ジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒や、水が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒の量は、重合条件、単量体組成物の組成、得られる重合体の濃度などを考慮して適宜決定すればよい。
【0055】
単量体組成物を重合させる際には、重合体の分子量を調整したり、炭化水素基を導入したりするために、連鎖移動剤を用いることができる。
【0056】
連鎖移動剤としては、例えば、チオ酢酸ナトリウム、チオ酢酸カリウムなどのチオ酢酸アルカリ金属塩、システイン、システアミン、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオ酢酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩などの親水性チオール系連鎖移動剤;2-アミノプロパン-1-オールなどの1級アルコール、イソプロパノールなどの2級アルコール、亜リン酸、次亜リン酸およびそれらの塩(例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムなど)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸およびそれらの塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウムなど)などの非チオール系の連鎖移動剤;ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、チオコレステロール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタンなどの疎水性チオール系連鎖移動剤などが挙げられる。また、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合を行う場合には、連鎖移動剤として可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤を用いる必要がある。このようなRAFT剤としては、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルベンゾチオエート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボネート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロパン酸、シアノメチルドデシルチオカルボネート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモチオエート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
連鎖移動剤の量は、単量体組成物に含まれる単量体の種類、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。ただし、数平均分子量が数千~数万の重合体を得る場合には、単量体100質量部あたり、連鎖移動剤の量が0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましい。
【0058】
単量体組成物を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。
【0059】
重合開始剤としては、例えば、アゾイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-ジメトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メトキシプロパンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチル-2-プロペニルプロパンアミド)、2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)[2,2’-アゾビスプロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのラジカル重合開始剤;ブロモメチルベンゼン、1-(ブロモメチル)-4-メチルベンゼン、2-ブロモイソ酪酸エチル、2-ブロモイソ酪酸ヒドロキシエチル、ビス[2-(2’-ブロモイソブチリルオキシ)エチル]ジスルフィド、2-ブロモイソ酪酸10-ウンデセニル、4-(1-ブロモエチル)安息香酸などのリビングラジカル重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体100質量部あたり、重合開始剤の量は、好ましくは0.001~20質量部であり、より好ましくは0.005~10質量部である。
【0061】
単量体組成物を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温~200℃、より好ましくは40~140℃である。また、単量体組成物を重合させる際の雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。反応時間は、単量体の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
【0062】
以上のようにして好ましくは単量体組成物を重合させることにより、部位(I)を構成する重合体を得ることができる。ここで、得られる重合体は、その末端に官能基を有していてもよい。部位(I)を構成する重合体がその末端に官能基を有すると、当該官能基を介して医薬などを修飾したり、当該官能基を介して後述する所定の炭化水素基と連結させたりすることが容易に行われうる。ただし、部位(I)を構成する重合体はその末端に官能基を有していなくてもよい。なお、本発明に係る両親媒性化合物は、分子内に炭素原子数8以上の炭化水素基と部位(I)(重合体を含む)とを有しているが、部位(I)を構成する重合体がその末端に官能基を有する場合、当該官能基は、当該重合体の片末端のみに存在していてもよく、両末端に存在していてもよい。また、上記重合体の末端に存在する官能基は、部位(I)が後述する所定の炭化水素基と結合している側に位置していてもよいし、これとは反対の側に位置していてもよい。
【0063】
部位(I)を構成する重合体が有しうる官能基としては、アニオン性官能基、カチオン性官能基、ノニオン性官能基および両性官能基が好ましい。当該官能基は、反応性官能基であることが好ましい。好適な反応性官能基としては、-SH基、式:-COOM(Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す)で表される基、水酸基、アリル基、エポキシ基、アルデヒド基、-NH基、CONH-基などが挙げられる。前記Mとしては、例えば、ナトリウム原子、カリウム原子などのアルカリ金属原子が挙げられる。重合体がその末端に官能基を有する場合、当該官能基の数は、特に限定されないが、好ましくは1~6個であり、より好ましくは1~4個であり、さらに好ましくは1~2個である。
【0064】
部位(I)を構成する重合体の末端に官能基を導入するためには、当該重合体に官能基を導入するための官能基含有化合物を用いることができる。当該重合体の末端に官能基を導入するための官能基含有化合物としては、例えば、チオ酢酸ナトリウム、チオ酢酸カリウムなどのチオ酢酸アルカリ金属塩、システイン、システアミン、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオ酢酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩などのチオール系連鎖移動剤;4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メトキシプロパンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチル-2-プロペニルプロパンアミド)、2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)[2,2’-アゾビスプロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン二塩酸塩、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどの官能基が導入された重合開始剤などが挙げられる。これらの官能基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上述した官能基含有化合物のなかには、上述した連鎖移動剤や重合開始剤に該当するものが含まれるが、連鎖移動剤や重合開始剤に該当する官能基含有化合物は、連鎖移動剤または重合開始剤と、官能基含有化合物のうちの一方のみの目的で用いられてもよいし、双方の目的で用いられてもよい。
【0065】
また、重合開始剤としてリビング重合開始剤を用いる場合には、当該リビング重合開始剤を用いて調製された重合体の末端に存在するハロゲン原子に官能基含有化合物を反応させることによって当該重合体の末端に官能基を導入してもよい。このようなハロゲン原子と反応して上記重合体の末端に官能基を導入しうる官能基含有化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピルジアミンなどのアミン化合物、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサデカンジチオールなどのジチオール化合物、アリルメルカプタンなどをはじめ、システイン、システアミン、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオ酢酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩などのチオール化合物などが挙げられる。
【0066】
重合体の末端に官能基を導入するための官能基含有化合物の量は、重合体を構成する単量体(構成単位)の種類、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。数平均分子量が数千~数万の重合体を得る場合には、単量体100質量部あたり、連鎖移動剤の量が0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましい。
【0067】
部位(I)を構成する重合体の末端に官能基を導入する方法としては、例えば、
(1)重合開始剤として前記官能基が導入された重合開始剤の存在下で単量体組成物を重合して重合体を得る方法、
(2)連鎖移動剤として前記官能基が導入された連鎖移動剤の存在下で単量体組成物を重合して重合体を得る方法、
(3)重合体の末端に存在するハロゲン原子と官能基含有化合物とを反応させる方法
などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0068】
(炭化水素基)
本発明に係る両親媒性化合物は、上述した「分子内に水酸基を2個以上有する単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)」に加えて、炭素原子数8以上の炭化水素基をも有する点に特徴がある。当該炭化水素基の具体的な構成は特に制限されない。
【0069】
一例として、上記炭化水素基は、水溶液中で疎水的相互作用により分子同士の集合体を形成する性能を持つ有機化合物に含まれる基であることが好ましい。このような有機化合物としては、炭化水素、疎水性重合体、脂質、およびその他の有機分子などが挙げられる。
【0070】
炭化水素としては、炭素原子数8~50の脂肪族炭化水素または炭素原子数8~50の芳香族炭化水素が挙げられる。すなわち、本発明の好ましい実施形態において、炭化水素基の炭素原子数は8~50であり、より好ましくは8~40であり、さらに好ましくは8~30であり、特に好ましくは8~20である。
【0071】
炭素原子数8~50の脂肪族炭化水素の例としては、例えば、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン等の直鎖状アルカン、これらの分岐アルカン、これらの環状アルカン等が挙げられ、好ましくは直鎖状アルカンである。
【0072】
また、炭素原子数8~50の芳香族炭化水素の例としては、例えば、2-フェニルエタン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレセイン、これらの位置異性体等が挙げられる。
【0073】
疎水性重合体としては、上述した部位(I)の構成単位となりうるビニルモノマーのうち、側鎖に炭素原子数8以上の炭化水素基を有するものを主成分として重合した重合体が挙げられる。
【0074】
「脂質」とは、長鎖脂肪酸または炭化水素鎖を持ち、水に対して難溶性であり有機溶媒に溶けやすい有機化合物を意味する。「脂質」は、さらに大別して、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、ステロール類、中性脂質、飽和または不飽和の脂肪酸等に分類されうる。
【0075】
リン脂質は、グリセロリン脂質とスフィンゴリン脂質に大別される。グリセロリン脂質の代表的なものとしては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)が挙げられる。一方、スフィンゴリン脂質の代表的なものとしては、スフィンゴミエリンが挙げられる。リン脂質の具体例としては、以下の(a)~(i)に記載の脂質が挙げられる。
【0076】
(a)ホスファチジルコリン類
ホスファチジルコリン類の具体例としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、ジオクタノイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジヘキサノイルホスファチジルコリン(DHPC)、ジブチリルホスファチジルコリン(DBPC)、ジエライドイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジアラキドノイルホスファチジルコリン、ジイコセノイルホスファチジルコリン(DEPC)、ジヘプタノイルホスファチジルコリン、ジカプロイルホスファチジルコリン、ジヘプタデカノイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、1-パルミトイル-2-アラキドノイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-リノレオイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1,2-ジミリストイルアミド-1,2-デオキシホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、ジ-0-ヘキサデシルホスファチジルコリン、トランスジエライドイルホスファチジルコリン、ジパルミテライドイル-ホスファチジルコリン、n-オクタデシル-2-メチルホスファチジルコリン、n-オクタデシルホスファチジルコリン、1-ラウリルプロパンジオール-3-ホスホコリン、エリスロ-N-リグノセロイルスフィンゴホスファチジルコリンおよびパルミトイル-(9-cis-オクタデセノイル)-3-sn-ホスファチジルコリン等が挙げられる。
【0077】
(b)ホスファチジルセリン類
ホスファチジルセリン類の具体例としては、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジラウロイルホスファチジルセリン(DLPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、リゾホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルセリンおよび1,2-ジ-(9-cis-オクタデセノイル)-3-sn-ホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0078】
(c)ホスファチジルイノシトール類
ホスファチジルイノシトール類の具体例としては、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、およびジラウロイルホスファチジルイノシトール(DLPI)等が挙げられる。
【0079】
(d)ホスファチジルグリセロール類
ホスファチジルグリセロール類の具体例としては、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、リゾホスファチジルグリセロール、水素化大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水素化卵ホスファチジルグリセロール(HEPG)およびカルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール)等が挙げられる。
【0080】
(e)ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)類
ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)類の具体例としては、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジデカノイルホスファチジルエタノールアミン(DDPE)、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン(NGPE)、リゾホスファチジルエタノールアミン、N-(7-ニトロ-2,1,3-ベンゾキシジアゾール-4-イル)-1,2-ジオレオイル-sn-ホスファチジルエタノールアミン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよび1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。なお、後述する製造例7では、マレイミド基を有するジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)誘導体であるジステアロイルN-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)-L-α-ホスファチジルエタノールアミン(日油(株)製、COATSOME(登録商標)FE-8080MA3)を脂質の原料として用いている。このように、部位(I)との連結のためのマレイミド基やスクシンイミド基などの官能基を、8以上の種々の炭素原子数の炭化水素基とともに有するホスファチジルエタノールアミン類(および他の脂質誘導体)もまた、これと同様に用いられうる。
【0081】
(f)ホスファチジン酸類
ホスファチジン酸類の具体例としては、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)およびジオレイルホスファチジン酸(DOPA)等が挙げられる。
【0082】
(g)スフィンゴリン脂質
スフィンゴリン脂質の具体例としては、例えば、スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、ジステアロイルスフィンゴミエリン、セラミドシリアチン、セラミドホスホリルエタノールアミンおよびセラミドホスホリルグリセロール等が挙げられる。
【0083】
糖脂質は、グリセロ糖脂質とスフィンゴ糖脂質に大別される。糖脂質としては、以下の(a)~(c)に記載の脂質が挙げられる。
【0084】
(a)グリセロ糖脂質
グリセロ糖脂質の具体例としては、ジグリコシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、スルホキシリボシルジグリセリド、(1,3)-D-マンノシル(1,3)ジグリセリド、ジガラクトシルグリセリド、ジガラクトシルジラウロイルグリセリド、ジガラクトシルジミリストイルグリセリド、ジガラクトシルジパルミトイルグリセリド、ジガラクトシルジステアロイルグリセリド、ガラクトシルグリセリド、ガラクトシルジラウロイルグリセリド、ガラクトシルジミリストイルグリセリド、ガラクトシルジパルミトイルグリセリド、ガラクトシルジステアロイルグリセリドおよびジガラクトシルジアシルグリセロール等が挙げられる。
【0085】
(b)スフィンゴ糖脂質
スフィンゴ糖脂質の具体例としては、セラミド(セレブロシド)、ガラクトシルセラミド、ラクトシルセラミド、ジガラクトシルセラミド、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGM2、ガングリオシドGM3、スルファチド、セラミドオリゴヘキソシドおよびグロボシドが挙げられる。
【0086】
(c)その他の糖脂質
その他の糖脂質としては、セラミドオリゴヘキソシド、パルミチルグリコシド、ステアリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキルグリコシド、アミノフェニルグリコシド、コレステリルマルトシド、コレステリルグルコシド、3-コレステリル-6’-(グリコシルチオ)ヘキシルエーテル糖脂質およびグルカミド類等が挙げられる。
【0087】
ステロール類の最も代表的なものは、コレステロールである。コレステロールの他、ステロール類には、例えば、コレステロールコハク酸、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、チモステロール、エルゴステロール、キャンペステロール、フコステロール、22-ケトステロール、20-ヒドロキシステロール、7-ヒドロキシコレステロール、19-ヒドロキシコレステロール、22-ヒドロキシコレステロール、25-ヒドロキシコレステロール、7-デヒドロコレステロール、5α-コレスト-7-エン-3β-オール、エピコレステロール、デヒドロエルゴステロール、硫酸コレステロール、ヘミコハク酸コレステロール、フタル酸コレステロール、リン酸コレステロール、吉草酸コレステロール、コレステロールヘミサクシネート、3βN-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイルコレステロール、コレステロールアセテート、コレステリルオレート、コレステリルリノレート、コレステリルミリステート、コレステリルパルミテート、コレステリルアラキデート、コプロスタノール、コレステロールエステル、コレステリルフォスフォリルコリンおよび3,6,9-トリオキサオクタン-1-オール-コレステリル-3e-オール等が挙げられる。
【0088】
中性脂質としては、例えば、ジグリセリド(例えばジオレイン、ジパルミトレイン)および混合カプリリン-カプリンジグリセリド、トリアシルグリセロール(トリオレイン、トリパルミトレイン、トリミリストレイン、トリラウリン、トリカプリン、トリカプリリン、トリカプロイン等)、スクアレン、トコフェロールおよびコレステロール等が挙げられる。
【0089】
飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルガン酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、トリデシレン酸、ミリスチン酸、ペンタデシレン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデシレン酸、アラキジン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、アイコセン酸、エルシン酸、ドコサペンタエン酸等の炭素数5~30の飽和もしくは不飽和の脂肪酸が挙げられる。
【0090】
その他の有機分子(天然化合物、化学合成化合物を問わず)についても、炭素原子数8以上の炭化水素基を有している場合には、本発明に係る両親媒性化合物における炭素原子数8以上の炭化水素基の供給源として用いることが可能である。例えば、脂溶性ビタミンである、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンKおよびこれらの誘導体が挙げられる。また、一本または複数本の長鎖アルキル鎖(炭素数8以上)から構成される有機分子(例えばジアルキルグリセロールなど)や、フラーレンC60などの炭素分子もまた、炭素原子数8以上の炭化水素基の供給源として用いられうる。
【0091】
ここで、本発明の好ましい実施形態において、炭素原子数8以上の(好ましくは炭素原子数8~50の)炭化水素基は、直接もしくは二価の結合基を介して構成単位(A)を含む部位(I)と結合しているか、または該部位(I)と直接もしくは二価の結合基を介して構成単位(A)を含む部位(I)と結合している脂質(例えば、リン脂質)の一部として存在していることが好ましい。
【0092】
炭素原子数8以上の炭化水素基も部位(I)を構成する重合体と同様に、その末端で官能基を有していてもよい。炭素原子数8以上の炭化水素基がその末端に官能基を有すると、当該官能基を介して医薬などを修飾したりすることが可能となる。ただし、炭素原子数8以上の炭化水素基はその末端に官能基を有していなくてもよい。なお、炭素原子数8以上の炭化水素基がその末端に官能基を有する場合、当該官能基は、炭素原子数8以上の炭化水素基の片末端のみに存在していてもよく、両末端に存在していてもよい。また、炭素原子数8以上の炭化水素基の末端に存在する官能基は、炭素原子数8以上の炭化水素基が部位(I)と結合している側に位置していてもよいし、これとは反対の側に位置していてもよい。
【0093】
炭素原子数8以上の炭化水素基の分子量は、体外排出性などの観点から、好ましくは5000以下であり、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1000以下である。好ましくは100以上であり、より好ましくは150以上である。ここで、両親媒性化合物の分子量に占める「炭素原子数8以上の炭化水素基」の分子量の割合は、好ましくは0.2~20%であり、より好ましくは0.5~15%であり、さらに好ましくは1~10%である。
【0094】
また、本発明において、炭素原子数8以上の炭化水素基が脂質の一部として両親媒性化合物中に存在している場合に、当該脂質の分子量は、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1000以下である。ここで、炭素原子数8以上の炭化水素基が脂質の一部として両親媒性化合物中に存在している場合に、両親媒性化合物の分子量に占める当該脂質の分子量の割合は、好ましくは2~50%であり、より好ましくは5~35%であり、さらに好ましくは10~20%である。
【0095】
上記二価の結合基は、部位(I)と炭素原子数8以上の炭化水素基とを結合している基であり、その構造は特に制限されず、部位(I)の構造の一部に含まれていてもよい。このような二価の結合基として、具体的には、-S-、-S-C(=S)-、-S-C(=S)-S-、-S-C(=S)-N(-R)-、-S-C(=S)-O-、-S-R-C(=O)-O-、-S-R-C(=O)-N(-R)-、-S-R-O-、-S-R-O-C(=O)-、-O-、-O-C(=O)-、-N(-R)-C(=O)-およびこれらを含む二価の結合基が例示される。ここで、上記Rは、水素原子または炭素数1~30の炭化水素基である。上記Rは、炭素数1~30の炭化水素基である。なお、脂質(脂質の変性物を含む)から、一の水素原子と一の炭素原子数8以上の炭化水素基とを除いた残基も、上記二価の結合基の好ましい形態の一つである。上記二価の結合基は、分子量が5000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
【0096】
ここで、二価の結合基を介して炭素原子数8以上の炭化水素基と部位(I)とを連結する方法としては、連鎖移動剤および/または重合開始剤の存在下で単量体組成物を重合して部位(I)を構成する重合体を得る際に、上記連鎖移動剤および/または重合開始剤として、炭素原子数8以上の炭化水素基を含む部位を構成しうる構造を分子内に含む連鎖移動剤や重合開始剤を用いる方法が挙げられる。特に炭素原子数8以上の炭化水素基に結合したチオール基(-SH基)を有する連鎖移動剤を用いて単量体組成物の重合を行うことで、炭素原子数8以上の炭化水素基がチオエーテル結合(-S-)を介して部位(I)と結合されてなる両親媒性化合物を得ることができる(後述する製造例1~6を参照)。
【0097】
また、二価の結合基を介して炭素原子数8以上の炭化水素基と部位(I)とを連結する他の方法として、まず、連鎖移動剤の存在下で単量体組成物を重合して部位(I)を構成する重合体を得る際に、上記連鎖移動剤として、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤を用いてRAFT重合を行うことにより、部位(I)を構成する重合体の末端にチオール基(-SH基)を導入する。続いて、炭素原子数8以上の炭化水素基とともに、チオール基(-SH基)と反応しうる官能基(例えば、マレイミド基など)を有する化合物を上記チオール基(-SH基)と反応させる。これにより、チオエーテル結合(-S-)を介して炭素原子数8以上の炭化水素基と部位(I)とを連結することができる(後述する製造例7を参照)。この手法は炭素原子数8以上の炭化水素基が脂質またはその他の有機分子の一部として両親媒性化合物中に存在する場合に特に有用である。
【0098】
本発明に係る両親媒性化合物においては、部位(I)を構成する重合体または、炭素原子数8以上の炭化水素基が重合体の一部として化合物中に存在する場合の当該重合体は、架橋構造を有するものであってもよい。上記重合体を架橋させる方法としては、例えば、化学的架橋法、物理的架橋法などが挙げられる。化学的架橋法としては、例えば、エポキシ化合物、酸化デンプン、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、スベルイミノ酸ジメチル、カルボジイミド、スクシンイミジル化合物、ジイソシアナート化合物、アシルアジド、ロイテリン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、アスコルビン酸銅、グルコースリシン、光酸化剤などの化学的架橋剤を用いて重合体を架橋させる方法、熱脱水処理、紫外線の照射、電子線の照射、ガンマ線の照射などによって重合体を化学的に架橋させる方法などが挙げられる。また、物理的架橋法としては、例えば、塩で重合体を架橋させる方法、静電的相互作用によって重合体を架橋させる方法、水素結合で重合体を架橋させる方法、疎水性相互作用によって重合体を架橋させる方法などが挙げられる。上記架橋方法は、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明に係る両親媒性化合物の数平均分子量(Mn)は1000以上であることが好ましく、2000以上であることがさらに好ましく、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがさらに好ましい。
【0099】
<両親媒性化合物の用途>
本発明に係る両親媒性化合物は、生体適合性が高いことから、医療用途に好適に用いられうる。すなわち、本発明の他の形態によれば、本発明に係る両親媒性化合物を含む医療用樹脂組成物が提供される。この医療用樹脂組成物は、本発明に係る両親媒性化合物からなるものであってもよいし、他の成分をさらに含むものであってもよい。他の成分としては、例えば、水、生理食塩水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、リン酸緩衝生理食塩水、生体内分解性ポリマー、無血清培地、医薬添加物として許容される界面活性剤、生体内で許容される生理的pH緩衝液などが挙げられる。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
本発明に係る両親媒性化合物または医療用樹脂組成物は、医薬品添加剤として好適に用いられうる。医薬品添加剤としては、例えば、医薬などを保持するための担体などが挙げられる。本発明に係る両親媒性化合物または医療用樹脂組成物で医薬などを保持する方法としては、例えば、両親媒性化合物を構成する部位(I)または炭素原子数8以上の炭化水素基が有する官能基に医薬などを結合させることによって担体と医薬などとを複合化させる方法、両親媒性化合物または医療用樹脂組成物と医薬などとを均一な組成となるように混合する方法、医薬などの粒子を両親媒性化合物または医療用樹脂組成物で被覆する方法、脂質と両親媒性化合物または医療用樹脂組成物との混合物を粒子化させ、得られる粒子の内部に医薬などを内包させる方法、医薬などをリポソームで内包させた粒子を両親媒性化合物または医療用樹脂組成物で被覆することにより、両親媒性化合物または医療用樹脂組成物の外皮の内部に当該粒子を内包させる方法、医薬などとリポソームとの混合物の粒子を両親媒性化合物または医療用樹脂組成物で被覆することにより、両親媒性化合物または医療用樹脂組成物の外皮の内部に当該粒子を内包させる方法、医薬などを両親媒性化合物または医療用樹脂組成物でミセル化させることにより、医薬などを内包させる方法、医薬などを両親媒性化合物およびリポソームを構成する脂質でリポソーム化させることにより、医薬などを内包させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0101】
上記リポソームは、例えば、脂質をtert-ブチルアルコールなどの溶媒に溶解させた後、凍結乾燥する方法、薬物を溶解させた溶液を脂質に添加することによって脂質を膨潤させて超音波で分散させた後、得られた分散体にポリエチレングリコール-フォスファチジルエタノールアミンなどを添加する方法などによって調製することができる。
【0102】
リポソームは、カチオン化剤でカチオン化されていることが好ましい。カチオン化剤としては、従来公知のものが適宜選択されて用いられうる。リポソームは、例えば、水素化大豆レシチン、コレステロール、3,5-ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩などをtert-ブチルアルコールなどの溶媒に溶解させ、得られた脂質混合溶液を凍結させることによって得ることができる。リポソームを構成する脂質は、生体内で安定である。当該脂質としては、炭素原子数8以上の炭化水素基の供給源として上記で例示したものが同様に用いられうる。
【0103】
なお、上記の例ではリポソームを挙げたが、リポソームの代わりに、例えば、エマルション、ナノ粒子、マイクロ粒子、高分子化合物などを用いることができる。
【0104】
医薬としては、生物学的または薬理学的に活性な医薬を用いることができる。医薬としては、例えば、抗腫瘍剤、抗癌剤、抗生物質、抗ウィルス剤、抗癌効果増強剤、免疫増強剤、免疫調節剤、免疫回復剤、放射線増感剤、放射線防護剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、うっ血除去薬、抗真菌剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、血管新生阻害剤、酵素剤、抗酸化剤、ホルモン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、平滑筋細胞の増殖剤、平滑筋細胞の遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、ケミカルメディエーターの遊離抑制剤、血管内皮細胞の増殖促進剤、血管内皮細胞の増殖抑制剤、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、サイトカイン、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、幹細胞因子、β型トランスフォーミング増殖因子、肝細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、エリスロポエチン、ワクチン、タンパク質、ムコタンパク質、ペプチド、多糖類、リポ多糖類、糖鎖、アンチセンス、リボザイム、デコイ、核酸、抗体などが挙げられる。これらの医薬は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
医薬を投与する対象としては、ヒト、サル、ネズミ、家畜などの哺乳動物が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0106】
医薬を注射によって投与する場合、例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射、腫瘍内注射などにより、医薬を体内に注射することができる。ここで、上述したように、本発明に係る両親媒性化合物の親水性部位はPVPと比較してPP等のプラスチックに対する吸着性が低い。このため、当該化合物は、薬物キャリアとしての長期血中滞留性リポソーム等への応用が可能でありながらも、プラスチックに対する吸着性を低減させることが可能となる。その結果、例えば当該化合物を用いて修飾されたリポソームに内包された有効成分が、シリンジ内へ残存してしまう虞を低減することができる。したがって、本発明に係る両親媒性化合物または医療用樹脂組成物の好適な用途の1つは、リポソーム等の形態で医薬などを保持するための担体として用いられる医薬品添加剤である。そして、当該医薬品添加剤は、注射剤の形態で投与される医薬品に添加されるものであることが好ましい。
【0107】
本発明に係る両親媒性化合物または医療用樹脂組成物に保持させる医薬の量は、医薬が投与される対象、医薬の種類などによって異なることから、一概には決定することができない。通常、本発明に係る両親媒性化合物または医療用樹脂組成物に含まれる固形分100gあたり、医薬の量が1μg~50g程度であることが好ましい。
【実施例0108】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
[重合体の平均分子量の測定]
後述する製造例1~7および比較製造例1において製造された重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。この際、測定条件は、以下の通りとした。
【0110】
〔重合体の数平均分子量の測定条件(製造例1~7で得られた重合体)〕
・測定機器:東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC
・分子量カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel SuperAWM-HとSuperAW2500を2本直列に接続
・溶離液:10mmol/L臭化リチウム添加ジメチルホルムアミド
・検量線用標準物質:ポリスチレン
・測定用溶液の調製:ジメチルホルムアミドに重合体を溶解させて重合体の濃度が0.2質量%の溶液を調製し、当該溶液をフィルターで濾過した後の濾液を使用する。
【0111】
〔重合体の数平均分子量の測定条件(比較製造例1で得られた重合体)〕
・測定機器:東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC
・分子量カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel α-Mとα-2500を2本直列に接続
・溶離液:0.2M硝酸ナトリウム水溶液80vol%とアセトニトリル20vol%との混合溶液
・検量線用標準物質:ポリエチレングリコール
・測定用溶液の調製:溶離液に重合体を溶解させて重合体の濃度が0.2質量%の溶液を調製し、当該溶液をフィルターで濾過した後の濾液を使用する。
【0112】
[両親媒性化合物(重合体)の製造例]
以下の手法により、重合体の形態を有する両親媒性化合物を製造した。
【0113】
(製造例1)
3方コック付きシュレンク管に、グリセリンモノアクリレート1.0g、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタノエート0.071g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.022g、エタノール1.8g、および水0.2gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、70℃にて1時間撹拌した。得られた反応液をジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端にアルキル基(n-ドデシル基)を含有するポリグリセリンモノアクリレートを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は2200であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基(n-ドデシル基)の分子量は169.3である。
【0114】
(製造例2)
3方コック付きシュレンク管に、グリセリンモノアクリレート1.0g、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタノエート0.043g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.013g、エタノール1.8g、および水0.2gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、70℃にて1時間撹拌した。得られた反応液をジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端にアルキル基(n-ドデシル基)を含有するポリグリセリンモノアクリレートを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は10900であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基を含む部位(n-ドデシル基)の分子量は169.3である。
【0115】
(製造例3)
3方コック付きシュレンク管に、グリセリンモノアクリレート1.0g、1-オクタデカンチオール0.098g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.021g、エタノール2.25g、および水0.25gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、80℃にて3時間撹拌した。得られた反応液をジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端にアルキル基(n-オクタデシル基)を含有するポリグリセリンモノアクリレートを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は4100であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基(n-オクタデシル基)の分子量は253.5である。
【0116】
(製造例4)
3方コック付きシュレンク管に、グリセリンモノアクリレート1.0g、1-オクタデカンチオール0.049g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.014g、エタノール1.8g、および水0.2gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、80℃にて3時間撹拌した。得られた反応液をジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端にアルキル基(n-オクタデシル基)を含有するポリグリセリンモノアクリレートを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は8600であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基(n-オクタデシル基)の分子量は253.5である。
【0117】
(製造例5)
3方コック付きシュレンク管に、グリセリンモノメタクリレート1.0g、1-オクタデカンチオール 0.045g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.013g、エタノール1.6g、およびn-ブタノール0.4gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、80℃にて3時間撹拌した。得られた反応液の溶液部をジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端にアルキル基(n-オクタデシル基)を含有するポリグリセリンモノメタクリレートを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は4100であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基(n-オクタデシル基)の分子量は253.5である。
【0118】
(製造例6)
3方コック付きシュレンク管に、グリセリンモノメタクリレート1.0g、1-オクタデカンチオール0.045g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.013g、エタノール1.6g、およびn-ブタノール0.4gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、80℃にて3時間撹拌した。得られた反応液の沈降部をエタノール1.0gに溶解させ、さらにジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端にアルキル基(n-オクタデシル基)を含有するポリグリセリンモノメタクリレートを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は14000であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基(n-オクタデシル基)の分子量は253.5である。
【0119】
(製造例7)
3方コック付きシュレンク管に、グリセリンモノメタクリレート1.0g、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸0.022g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.016g、エタノール0.8g、およびn-ブタノール0.2gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、50℃にて30分間撹拌した。得られた反応液をジエチルエーテル中に滴下し精製した。得られた重合体0.2g、プロピルアミン0.25g、水1.0gを仕込み室温にて終夜撹拌し凍結乾燥することで、末端にチオール基を導入したポリグリセリンモノメタクリレートを得た。得られた重合体の数平均分子量は5200であった。
【0120】
その後、10mLスクリュー管に、上記で得られた重合体0.0165g、ジステアロイルN-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)-L-α-ホスファチジルエタノールアミン(日油(株)製、COATSOME(登録商標)FE-8080MA3)0.0276g、トリエチルアミン75μL、クロロホルム0.06g、およびメタノール0.4gを仕込んだ。次いで、室温にて終夜反応させた後、ジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端に脂質を含有するポリグリセリンモノメタクリレートを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は6000であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基の供給源である脂質部分の分子量は約954である。
【0121】
(比較製造例1)
3方コック付きシュレンク管に、N-ビニル-2-ピロリドン1.0g、オクタデカンチオール0.064g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.018g、エタノール1.6g、およびn-ブタノール0.4gを仕込んだ。次いで、管内部の窒素置換を行い、80℃にて3時間撹拌した。得られた反応液をジエチルエーテル中に滴下し精製することで、末端にアルキル基(n-オクタデシル基)を含有するポリビニルピロリドンを得た。得られた両親媒性化合物(重合体)の数平均分子量は12000であった。このうち、炭素原子数8以上の炭化水素基(n-オクタデシル基)の分子量は253.5である。
【0122】
[リポソームの作製]
水素添加大豆由来ホスファチジルコリン(Avanti Polar Lipids社)17.6mg、およびコレステロール(東京化成工業株式会社)4.7mgを20mLのメタノールに溶解した後、200mL容のナスフラスコに入れ、65℃のウォーターバス中でエバポレートして、脂質膜を形成させた。ここに20w/v%のグルコースを含むPBSを3mL加え、密栓して65℃にて30分間温浴し、水和させて脂質懸濁液とした。この脂質懸濁液をマイクロテストチューブに移し、4倍量のPBSを加えた後、15000×Gで20分間遠心分離して、形成したリポソームを沈殿させた。遠心分離後、上清を捨て、新たにPBSを1mL加えて再懸濁したものを、65℃に温めたエクストルーダー(ポアサイズ0.1μm)で整粒し、脂質当量として12.9mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。リポソーム懸濁液の濃度測定はラボアッセイ(商標)りん脂質(富士フイルム和光純薬株式会社)を用い、測定プロトコルは添付のマニュアルに準拠した。
【0123】
[リポソームへの両親媒性化合物(重合体)の修飾]
上記製造例4で作製した両親媒性化合物(重合体)である、末端にアルキル基(n-オクタデシル基)を含有するポリグリセリンモノアクリレート(数平均分子量8600)を、2w/v%または4w/v%となるようPBSに溶解して、濃度の異なる重合体溶液を調製した。この重合体溶液のそれぞれと、上記で調製したリポソーム懸濁液とを等体積で混合して10℃にて60分間静置し、両親媒性化合物をリポソームに修飾した。ここでは、リポソームを構成する脂質二重膜に、末端アルキル基含有ポリマーのアルキル基部分が挿入されることで、リポソーム表面が当該ポリマーの親水性部位によって修飾(被覆)されたような構造が得られていると推測される。一方、重合体溶液の替わりに同体積のPBSを混合して反応したものを対照区とした。その後、15000×Gで20分間遠心分離し、上清を除いて未反応の両親媒性化合物を除去し、形成した沈殿をPBSで再懸濁した。ゼータサイザーナノZS(マルバーン・パナリティカル社)で各リポソームの粒子径を測定した。その結果、図1に示すように、対照区ではリポソームの粒子径が160.6±5.2nmであった。これに対し、2w/v%および4w/v%の重合体溶液で修飾したリポソームの粒子径はそれぞれ、174.8±6.5nmおよび174.6±5.5nmであり、両親媒性化合物を用いた修飾による粒子径の増大が確認された。
【0124】
[培養細胞を用いた両親媒性化合物(重合体)の細胞毒性試験]
終濃度10w/v%でウシ胎児血清(FBS)(DSファーマバイオメディカル社)を添加したDMEM培地(ナカライテスク社)を用いてマウス由来線維芽細胞であるL929細胞(DSファーマバイオメディカル社)の培養を行った。5.0×10細胞/cmとなるように100mmセルカルチャーディッシュ(BD Falcon社)に播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。100mmセルカルチャーディッシュで70%コンフルエントの状態まで培養したL929細胞を、0.25w/v%トリプシン/50mM EDTA溶液で処理し、前述の血清添加DMEM培地を添加してトリプシン反応を停止させて、L929細胞懸濁液を得た。0.4w/v%トリパンブルー溶液(富士フイルム和光純薬(株))を用いてL929細胞懸濁液中の細胞数を測定した。細胞懸濁液を1ウェルあたりの細胞数が2.5×10細胞となるよう96ウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンス社)に播種し、37℃、5%CO条件下で24時間培養した。24時間後、各ウェルから培地を50μLずつ除去した後、製造例1~7および比較製造例1で作製した両親媒性化合物(重合体)を2w/v%となるようにPBSに溶解した重合体溶液を各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%CO条件下で24時間インキュベートした。インキュベート後、各ウェルに細胞増殖キットII(XTT)(シグマアルドリッチ社)試薬を51μLずつ加え、37℃、5%CO条件下で3時間インキュベートした。その後、プレートリーダーSH-9000(コロナ電気株式会社)で吸光度を測定した。測定プロトコルはキットに添付のマニュアルに準拠した。重合体溶液の替わりにPBSを加えて試験したウェルの測定値と、各サンプルを加えたウェルの測定値を基に、L929細胞の生存率を以下の式から算出した。
【0125】
(生存率)[%]=(各サンプルを加えたウェルの測定値)÷(PBSを加えたウェルの測定値)×100
その結果、図2に示すように、いずれの重合体溶液もL929細胞の生存率に有意な差を与えず、顕著な細胞毒性は見られなかった。
【0126】
[培養細胞を用いた両親媒性化合物(重合体)修飾リポソームの細胞毒性試験]
終濃度10w/v%でウシ胎児血清(FBS)(DSファーマバイオメディカル社)を添加したDMEM培地(ナカライテスク社)を用いてマウス由来線維芽細胞であるL929細胞(DSファーマバイオメディカル社)の培養を行った。5.0×10細胞/cmとなるように100mmセルカルチャーディッシュ(BD Falcon社)に播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。100mmセルカルチャーディッシュで70%コンフルエントの状態まで培養したL929細胞を、0.25w/v%トリプシン/50mM EDTA溶液で処理し、前述の血清添加DMEM培地を添加してトリプシン反応を停止させて、L929細胞懸濁液を得た。0.4w/v%トリパンブルー溶液(富士フイルム和光純薬(株))を用いてL929細胞懸濁液中の細胞数を測定した。細胞懸濁液を1ウェルあたりの細胞数が2.5×10細胞となるよう96ウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンス社)に播種し、37℃、5%CO条件下で24時間培養した。24時間後、各ウェルから培地を50μLずつ除去した。次いで、前述の「リポソームへの両親媒性化合物(重合体)の修飾」の項の記載に従い、上記製造例1~7および比較製造例1で作製した両親媒性化合物(重合体)の2w/v%溶液を用いて得られた修飾リポソーム懸濁液または無修飾リポソーム懸濁液(いずれも5mg-脂質/mL)を50μLずつ加えて、37℃、5%CO条件下で24時間インキュベートした。インキュベート後、各ウェルに細胞増殖キットII(XTT)(シグマアルドリッチ社)試薬を51μLずつ加え、37℃、5%CO条件下で3時間インキュベートした。その後、プレートリーダーSH-9000(コロナ電気株式会社)で吸光度を測定した。測定プロトコルはキットに添付のマニュアルに準拠した。修飾リポソーム懸濁液の替わりにPBSを加えて試験したウェルの測定値と、各サンプルを加えたウェルの測定値を基に、L929細胞の生存率を以下の式から算出した。
【0127】
(生存率)[%]=(各サンプルを加えたウェルの測定値)÷(PBSを加えたウェルの測定値)×100
その結果、図3に示すように、いずれの両親媒性化合物(重合体)を修飾したリポソームもL929細胞の生存率に有意な差を与えず、顕著な細胞毒性は見られなかった。
【0128】
[両親媒性化合物(重合体)のプラスチック表面への吸着試験]
上記製造例4および製造例6、並びに比較製造例1で作製した両親媒性化合物(重合体)のそれぞれを、1w/v%となるようPBSに溶解して、重合体溶液を調製した。この重合体溶液4.5mLとポリプロピレン(PP)製微粉末(平均粒径5ミクロンメートル)1.5gとをねじ口瓶に入れ、スターラーで30分間撹拌した。撹拌後、それぞれの重合体溶液の重合体濃度を、GPCのピーク面積から定量した。初発の重合体濃度(C)および試験後の重合体濃度(C)から、以下の式を用いて微粉末1gあたりの重合体の吸着量を算出した。結果を下記の表1に示す。
【0129】
(微粉末への吸着量)[mg/g]=(C-C)÷(微粉末[g])
【0130】
【表1】
【0131】
表1に示す結果からわかるように、部位(I)がPVPからなる両親媒性化合物(重合体)と比較して、部位(I)がGLMMAまたはGLMAからなる両親媒性化合物(重合体)では、ポリプロピレン(PP)製微粉末への吸着が有意に少なかった。
【0132】
[蛍光物質内封リポソームの作製]
水素添加大豆由来ホスファチジルコリン(Avanti Polar Lipids社)17.6mg、およびコレステロール(東京化成工業株式会社)4.7mgを20mLのメタノールに溶解した後、200mL容のナスフラスコに入れ、65℃のウォーターバス中でエバポレートして、脂質膜を形成させた。ここに20w/v%のグルコースおよび0.02%w/vのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を含むPBSを3mL加え、密栓して65℃にて30分間温浴し、水和させて脂質懸濁液とした。この脂質懸濁液をマイクロテストチューブに移し、4倍量のPBSを加えた後、15000×Gで20分間遠心分離して、形成したリポソームを沈殿させた。遠心分離後、上清を捨て、新たにPBSを1mL加えて再懸濁したものを、65℃に温めたエクストルーダー(ポアサイズ0.1μm)で整粒し、脂質当量として13.7mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。リポソーム懸濁液の濃度測定はラボアッセイ(商標)りん脂質(富士フイルム和光純薬株式会社)を用い、測定プロトコルは添付のマニュアルに準拠した。
【0133】
[PEG修飾リポソームの作製]
水素添加大豆由来ホスファチジルコリン(Avanti Polar Lipids社)12.9mg、コレステロール(東京化成工業株式会社)3.4mg、およびPEG-リン脂質(日油(株)製、SUNBRIGHT(登録商標)DSPE-020CN)3.76mgを20mLのメタノールに溶解した後、200mL容のナスフラスコに入れ、65℃のウォーターバス中でエバポレートして、脂質膜を形成させた。ここに20w/v%のグルコースおよび0.02%w/vのFITCを含むPBSを3mL加え、密栓して65℃にて30分間温浴し、水和させて脂質懸濁液とした。この脂質懸濁液をマイクロテストチューブに移し、4倍量のPBSを加えた後、15000×Gで20分間遠心分離して、形成したリポソームを沈殿させた。遠心分離後、上清を捨て、新たにPBSを1mL加えて再懸濁したものを、65℃に温めたエクストルーダー(ポアサイズ0.1μm)で整粒し、脂質当量として9.7mg/mLのリポソーム懸濁液を得た。リポソーム懸濁液の濃度測定はラボアッセイ(商標)りん脂質(富士フイルム和光純薬株式会社)を用い、測定プロトコルは添付のマニュアルに準拠した。
【0134】
[培養細胞を用いた両親媒性化合物(重合体)修飾リポソームの細胞取込み試験]
終濃度10w/v%でウシ胎児血清(FBS)(DSファーマバイオメディカル社)を添加したMEM培地(ナカライテスク社)を用いてヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞(DSファーマバイオメディカル社)の培養を行った。5.0×10細胞/cmとなるように100mmセルカルチャーディッシュ(BD Falcon社)に播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。100mmセルカルチャーディッシュで70%コンフルエントの状態まで培養したHePG2細胞を、0.25w/v%トリプシン/50mM EDTA溶液で処理し、前述の血清添加MEM培地を添加してトリプシン反応を停止させて、HepG2細胞懸濁液を得た。0.4w/v%トリパンブルー溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)を用いてHepG2細胞懸濁液中の細胞数を測定した。細胞懸濁液を1ウェルあたりの細胞数が4×10細胞となるよう24ウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンス社)に播種し、37℃、5%CO条件下で48時間培養した。48時間後、各ウェルから培地を除去し、血清を添加していないMEM培地を500μL加えた。次いで、前述の「リポソームへの両親媒性化合物(重合体)の修飾」の項の記載に従い、上記製造例4で作製した両親媒性化合物(重合体)の2w/v%溶液を用いて得られた蛍光物質内封修飾リポソーム懸濁液、または[PEG修飾リポソームの作製]の項の記載に従い作成したPEG修飾リポソーム、または無修飾リポソーム懸濁液(いずれも5mg-脂質/mL)を50μLずつ加えて、37℃または4℃、5%CO条件下で3時間インキュベートした。インキュベート後、各ウェルの培地を除去し、PBSで2回洗浄した後、0.02w/vのトリトンX-100を含む0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液を350μL加えて細胞を溶解し、プレートリーダーSH-9000(コロナ電気株式会社)で溶解液の蛍光強度を測定した。4℃でインキュベートしたウェルと、37℃でインキュベートしたウェルの測定値を基に、HepG2細胞へのリポソームの取込み量を以下の式から算出した。
【0135】
(取込み量)[-]=(37℃でインキュベートしたウェルの測定値)-(4℃でインキュベートしたウェルの測定値)
次いで、無修飾リポソームとの取込み量の比を以下の式から算出した。
【0136】
(取込み量比)[%]=(各修飾リポソームの取込み量)÷(無修飾リポソームの取込み量)×100
その結果、図4に示すように、PEG修飾リポソームでは無修飾リポソームと比較して細胞への取込み量が有意に減少したのに対し、両親媒性化合物(重合体)を修飾したリポソームでは無修飾リポソームと比較して取込み量に有意な差は見られなかった。
【0137】
本出願は、2019年3月29日に出願された日本特許出願番号2019-067826号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、
炭素原子数8以上の炭化水素基と、
を有
前記構成単位(A)が、下記化学式(1):
【化1】


式(1)中、R は、水素原子またはメチル基を表し、
Xは、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-O-、-CH O-または-CH CH O-を表す、
で表される構成単位を含み
前記部位(I)に占める構成単位(A)の割合は、80~100質量%である、両親媒性化合物。
【請求項2】
分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、
炭素原子数8以上の炭化水素基と、
を有し、
前記構成単位(A)が、下記化学式(1):
【化1】


式(1)中、R は、水素原子またはメチル基を表し、
Xは、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-O-、-CH O-または-CH CH O-を表す、
で表される構成単位を含み、
前記部位(I)に占める構成単位(A)の割合は、50~100質量%であり、
(メタ)アクリル酸2-フェニルエチル由来の構成単位を含有しない、両親媒性化合物。
【請求項3】
前記部位(I)は、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルベンゾチオエート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボネート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロパン酸、シアノメチルドデシルチオカルボネート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモチオエート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、およびビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドからなる群より選択される1種以上の化合物由来の骨格を有する、請求項1または2に記載の両親媒性化合物。
【請求項4】
分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、
炭素原子数8以上の炭化水素基と、
を有し、
前記部位(I)は、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルベンゾチオエート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボネート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロパン酸、シアノメチルドデシルチオカルボネート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモチオエート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、およびビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドからなる群より選択される1種以上の化合物由来の骨格を有する、両親媒性化合物。
【請求項5】
前記部位(I)は、前記単量体(a)由来の構成単位(A)を有する重合体からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項6】
前記炭化水素基の炭素原子数が8~50である、請求項1~5のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項7】
前記炭化水素基が、直接もしくは二価の結合基を介して前記構成単位(A)を含む部位(I)と結合しているか、または直接もしくは二価の結合基を介して構成単位(A)を含む部位(I)と結合している脂質の一部として存在している、請求項1~のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項8】
前記単量体(a)が単官能の単量体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項9】
前記炭化水素基が脂質の一部として存在しており、前記脂質の分子量が2000以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項10】
前記構成単位(A)を含む部位(I)の数平均分子量(Mn)が1000~15000である、請求項1~のいずれか1項に記載の両親媒性化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の両親媒性化合物を含む、医療用樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の両親媒性化合物を含む、エマルション、ナノ粒子、マイクロ粒子または高分子化合物
【請求項13】
分子内に水酸基を2個以上有し、構成単位の炭素原子のうち側鎖を構成する炭素原子の数が2~10である単量体(a)由来の構成単位(A)を含む部位(I)と、
炭素原子数8以上の炭化水素基と、
を有する両親媒性化合物を含む、エマルション、ナノ粒子、マイクロ粒子または高分子化合物。