(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076523
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】マイクロ液滴・気泡生成デバイス
(51)【国際特許分類】
B01F 23/41 20220101AFI20230525BHJP
B01F 23/232 20220101ALI20230525BHJP
B01F 33/301 20220101ALI20230525BHJP
【FI】
B01F23/41
B01F23/232
B01F33/301
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045459
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2020503634の分割
【原出願日】2019-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2018036014
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(72)【発明者】
【氏名】西迫 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鳥取 直友
(57)【要約】
【課題】液滴または気泡生成用流路に対応する個別の貫通孔を必要としないマイクロ液滴・気泡生成方法を提供する。
【解決手段】スリットと複数のマイクロ流路の列を備えるマイクロ液滴・気泡生成デバイスを用い、複数のマイクロ流路に対して、スリットの終端を接続するとともに、スリットを挟むような配置で2つの供給口の終端又は供給口と排出口の終端を接続し、スリットを挟む2つの供給口から、又は挟まれたスリットと挟む2つの供給口の一方とから、分散相の流れと連続相の流れを複数のマイクロ流路に向かって供給し、挟まれたスリットとマイクロ流路との接続位置において、連続相の流れと分散相の流れを会合させ、連続相の流れを駆動力として分散相をせん断し、分散相の液滴または気泡を生成し、生成物を排出口から回収する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ液滴・気泡の生成方法であって、
複数のマイクロ流路の列と、
前記複数のマイクロ流路に接続された、分散相供給口、連続相供給口、排出口と、
前記分散相供給口、連続相供給口、排出口のいずれか1つの一部を構成するスリットと
を含み、かつ
前記スリットが、前記スリットの終端が前記複数のマイクロ流路に接続されており、前記スリットが、前記複数のマイクロ流路の流路に沿って、前記分散相供給口、連続相供給口、排出口の前記いずれか1つ以外の他の2つの供給口又は排出口に挟まれるように配置されている、
マイクロ液滴・気泡の生成デバイスを用いて、
前記複数のマイクロ流路に対して、前記スリットと前記他の2つの供給口の一方とから、または前記他の2つの供給口から、それぞれ、分散相と連続相とを、前記複数のマイクロ流路に向けて供給し、
前記他の2つの供給口から供給されて前記複数のマイクロ流路内に形成される前記分散相の流れと前記連続相の流れ、または前記スリットと前記他の2つの供給口の一方とから供給されて前記スリット内と前記複数のマイクロ流路内に形成される前記分散相の流れと前記連続相の流れを、前記複数のマイクロ流路と前記挟まれたスリットとの接続箇所において会合させ、
前記挟まれたスリットと前記マイクロ流路との前記接続箇所において、前記連続相の流れを駆動力として、前記分散相をせん断して,前記分散相の液滴または気泡を生成し、
前記液滴または気泡を含む生成物を、前記接続箇所から前記排出口を介して回収する
ことを特徴とするマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項2】
前記デバイスにおいて、前記分散相供給口、前記連続相供給口及び前記排出口の前記複数のマイクロ流路との接続部である終端がいずれもスリット状である、請求項1に記載されたマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項3】
前記スリットが、板状のスリットである、請求項1または2に記載されたマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項4】
前記スリットが、環状のスリットである、請求項1または2に記載されたマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項5】
前記デバイスが、複数のスリットを備えた部品と、表面に複数の微細溝の列が加工された平板部品とを、互いに位置あわせして、前記複数のスリットの終端の面と、前記平板部品の前記微細溝が加工された側の面とを貼り合せることで構成されている、請求項3または4に記載されたマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項6】
前記デバイスが、複数のスリットを備えた部品の表面に複数の微細溝の列が加工されており、別の平板部品によって前記微細溝の封止を行うことで複数のマイクロ流路の列が形成されている、請求項3または4に記載されたマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項7】
前記マイクロ流路の大きさが、幅1~200μm、高さ1~200μmである、請求項1-6のいずれか一項に記載のマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項8】
前記スリットの終端における幅が10~500μmである、請求項1-7のいずれか一項に記載のマイクロ液滴・気泡生成方法。
【請求項9】
前記分散相が気相であり、前記連続相が液相である、請求項1-8のいずれか一項に記載のマイクロ気泡生成方法。
【請求項10】
前記分散相と前記連続相がともに液相である、請求項1-8のいずれか一項に記載のマイクロ液滴生成方法。
【請求項11】
前記マイクロ流路の内壁が疎水性表面で構成され、前記分散相が水相、前記連続相が有機相である、請求項1-8のいずれか一項に記載のマイクロ液滴生成方法。
【請求項12】
前記マイクロ流路の内壁が親水性表面で構成され、前記分散相が有機相、前記連続相が水相である、請求項1-8のいずれか一項に記載のマイクロ液滴生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路を用いたマイクロ液滴・気泡生成デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流路の分岐構造を用いたマイクロ液滴・気泡生成法は、単分散性に優れたエマルション液滴や気泡を生成できるため、化学・生化学分析をはじめ、様々な分野で応用されている。しかしながら、この方法を生産技術に応用する場合、所要の生産量、例えば数トン/年、を単一のマイクロ流路で実現することは難しい(非特許文献1および2)。
【0003】
このような状況下で、液滴や気泡の生成量を大幅に増加(スケールアップ)させるために、多数のマイクロ流路を並列配置する試みが報告されている(非特許文献3および4)。マイクロ流路の分岐構造を用いたマイクロ液滴・気泡生成では、分散相と連続相の流量により生成される液滴や気泡のサイズが変化するため、サイズの揃った液滴や気泡の生成には、並列配置されたマイクロ流路に、分散相および連続相をそれぞれ均一に分配供給する必要がある。従来の並列化デバイスでは、各生成流路に対して、対称に分岐した分配流路を接続した構造(非特許文献3~5)や、生成流路のサイズに対して十分に大きい流路をはしご状に接続する構造(非特許文献5~7)により、各生成流路への均等な流量分配が実現されている。これまでに、対称分岐構造による分配流路を用いて、円環状に最大512個の十字型液滴生成流路を並列化した事例(非特許文献8)や、はしご状の液体分配流路を用いて、行列状に最大1000個の液滴生成流路を並列化した事例(非特許文献9)が報告されている。同様の装置を用いた気泡の大量生産の事例も報告されている(非特許文献10)。また、液体供給流路と液滴生成流路を着脱可能な装置も提案されている(非特許文献2および3)。
【0004】
一方、従来の並列化デバイスでは、液体または気体分配用流路と各液滴または気泡生成用流路を接続するために、各液滴または気泡生成用流路に対応する個別の貫通孔を作製しているため、複雑なデバイス作製工程が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Nisisako et al., Lab Chip, 8, 287-293,2008.
【非特許文献2】T. Nisisako et al., Lab Chip, 12, 3426-3435,2012.
【非特許文献3】T. Nisisako et al., Curr. Opin. Colloid Interface Sci., 25, 1-12, 2016.
【非特許文献4】H.-H. Jeong et al., Korean J. Chem. Eng.33,1757-1766,2016.
【非特許文献5】G.T.Meris et al., Ind.Eng.Chem.48,881-889,2009.
【非特許文献6】W. Li et al., Lab Chip, 9, 2715-2721,2009.
【非特許文献7】M. B. Romanowsky et al., Lab Chip, 12, 802-807,2012.
【非特許文献8】D. Conchouso et al., Lab Chip, 14, 3011-3020,2014.
【非特許文献9】H.-H. Jeong et al., Lab Chip, 15, 4387-4392,2015.
【非特許文献10】H.-H. Jeong et al., Lab Chip, 17, 2667-2673, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決し、各液滴または気泡生成用流路に対応する個別の貫通孔を必要としないマイクロ液滴・気泡生成デバイスを提供するものである。本発明においては、従来のデバイスにおいて液滴または気泡生成流路が二次元平面に配置されていたのと異なり、スリットとマイクロ流路アレイを三次元的に組み合わせた単純な構成により、従来よりも容易に実装・管理ができ且つマイクロ液滴または気泡生成部が高密度に配置されたマイクロ液滴・気泡生成デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の問題を解決するために、以下の発明及び態様を提供するものである。
(態様1)
スリット(3,4,5)と複数のマイクロ流路(9)の列を備えるマイクロ液滴・気泡生成デバイスであって,
該スリット(3,4,5)は,分散相供給用スリット(3),連続相供給用スリット(4),排出用スリット(5)のいずれか1つ以上であり,
該スリット(3,4,5)の少なくとも1つは,分散相供給口(6),連続相供給口(7),排出口(8)のいずれか2つに挟まれるように配置され,
該複数のマイクロ流路(9)は,上記の挟まれて配置されたスリットの終端の存在する,スリットに垂直な面において,該スリットの終端と,両脇の2つの供給口、または供給口と排出口、を接続するように配置され,
分散相(1)は該分散相供給口(6)から供給され,連続相(2)は該連続相供給口(7)から供給され,
該分散相(1)と該連続相(2)のいずれか一方または両方は,該複数のマイクロ流路(9)に分配され,
上記の挟まれて配置されたスリットとマイクロ流路の接続箇所において,該連続相(2)の流れを駆動力として該分散相(1)をせん断し,該分散相(1)の液滴または気泡が生成され,生成物は排出口から回収される,
ように構成してなるマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様2)
該分散相供給口(6),該連続相供給口(7)及び該排出口(8)の該複数のマイクロ流路との接続部である終端がいずれもスリット状である,態様1に記載されたマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様3)
該スリット(3,4,5)が,板状のスリットである,態様1または2に記載されたマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様4)
該スリット(3,4,5)が,環状のスリットである,態様1または2に記載されたマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様5)
複数のスリットを備えた部品(20,22,24)と,表面に複数の微細溝の列が加工された平板部品(10、12、14)とを,互いに位置あわせして,該複数のスリットの終端の面と、該平板部品の該微細溝が加工された側の面とを貼り合せることで構成される,態様3または4に記載されたマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様6)
複数のスリットを備えた部品(21、23)の表面に複数の微細溝(11-1,13-1)の列が加工されており,別の平板部品(11、13)によって該微細溝(11-1,13-1)の封止を行うことで複数のマイクロ流路の列が形成される,態様3または4に記載されたマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様7)
該マイクロ流路(9)の大きさが,幅1~200μm,高さ1~200μmである態様5または6に記載されたマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様8)
該スリット(3,4,5)の終端における幅が10~500μmである態様5または6に記載されたマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
(態様9)
該分散相(1)が気相であり,該連続相(2)が液相である態様7または8に記載のマイクロ気泡生成デバイス。
(態様10)
該分散相(1)と該連続相(2)がともに液相である態様7または8に記載のマイクロ液滴生成デバイス。
(態様11)
該マイクロ流路(9)の内壁が疎水性表面で構成され,該分散相(1)が水相,該連続相(2)が有機相である,態様10に記載のマイクロ液滴生成デバイス。
(態様12)
該マイクロ流路(9)の内壁が親水性表面で構成され,該分散相(1)が有機相,該連続相(2)が水相である,態様10に記載のマイクロ液滴生成デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各液滴または気泡生成用流路に対応する個別の貫通孔を必要としないマイクロ液滴または気泡生成デバイスを提供し得る。さらに、本発明によれば、従来のデバイスにおいて液滴または気泡生成流路が二次元平面に配置されていたのと異なり、スリットとマイクロ流路アレイを三次元的に組み合わせた単純な構成により、従来よりも容易に実装・管理ができ且つマイクロ液滴生成部が高密度に配置されたマイクロ液滴または気泡生成デバイスを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスにおける三次元配列された液滴・気泡生成流路の一例を示す。
【
図2】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は、組み立て後の行列状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝を有する部品と液体分配装置を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図3】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は、組み立て後の行列状液体分配装置の断面図、(b)微細溝を有する部品と液体分配装置を接合した際の上面図、(c)スリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図4】本発明において液滴分配装置に接合される微細溝を有する部品の溝形状の例を示す図。
【
図5】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は組み立て後の行列状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝が加工された液体分配装置に蓋を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図6】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は組み立て後の行列状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝が加工された液体分配装置に蓋を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図7】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)組み立て後の行列状液体分配装置の断面図、(b)微細溝が加工された液体分配装置に蓋を接合した際の上面図、(c)スリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図8】本発明において、液滴分配装置上のスリットと微細溝の形状の一例を示す図。
【
図9】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は3つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝を有する部品と液体分配装置を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図10】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は3つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝を有する部品と液体分配装置を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図11】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は3つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝を有する部品と液体分配装置を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図12】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は3つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝が加工された液体分配装置に蓋を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図13】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は3つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝が加工された液体分配装置に蓋を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図14】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、(a)は3つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図、(b)は微細溝が加工された液体分配装置に蓋を接合した際の上面図、(c)はスリットとマイクロ流路の交差部で液滴が生成される様子を示す図。
【
図15】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、4つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図を示す(微細溝を有する部品と液体分配装置を接合)。
【
図16】本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスの1つの実施態様において、4つの部材を組み立てた後の円環状液体分配装置の断面図を示す(微細溝が加工された液体分配装置に蓋を接合)。
【
図17】実施例1における、(a)液滴生成の様子と(b)生成液滴のサイズ分布を示す(連続相流量(Q
c)= 20 mL/h,分散相流量(Q
d)= 20 mL/h)。
【
図18】実施例2における、(a)液滴生成の様子と(b)生成液滴のサイズ分布を示す(連続相流量(Q
c)= 20 mL/h,分散相流量(Q
d)= 40 mL/h)。
【
図19】実施例3における、(a)液滴生成の様子と(b)生成液滴のサイズ分布を示す(連続相流量(Q
c)= 20 mL/h,分散相流量(Q
d)= 60 mLh)。
【
図20】実施例4における、(a)液滴生成の様子と(b)生成液滴のサイズ分布を示す(連続相流量(Q
c)= 20 mL/h,分散相流量(Q
d)= 80 mL/h)。
【
図21】実施例5における、(a)液滴生成の様子と(b)生成液滴のサイズ分布を示す(連続相流量(Q
c)= 40 mL/h,分散相流量(Q
d)= 20 mL/h)。
【
図22】実施例6における、(a)液滴生成の様子と(b)生成液滴のサイズ分布を示す(連続相流量(Q
c)= 60 mL/h,分散相流量(Q
d)= 20 mL/h)。
【
図23】実施例7におけるW/O液滴生成の様子を示す。
【
図24】実施例7で生成されたW/O液滴を装置外部で撮影した写真を図(a),サイズ分布を(b)に示す。
【
図25】実施例8におけるマイクロ流路内でのW/O液滴生成の様子を(a)に示す(連続相流量(Q
c)=10 mL/h,分散相流量(Q
d)=5 mL/h)。マイクロ流路と分散相供給用スリットの結合箇所において生成したW/O液滴が,中央の排出口に流れ込む様子の観察((b))。生成された液滴の平均径および,変動係数(CV値)を示す((c))。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、スリット(3,4,5)と複数のマイクロ流路(9)の列を備えるマイクロ液滴・気泡生成デバイスであって,
該スリット(3,4,5)は,分散相供給用スリット(3),連続相供給用スリット(4),排出用スリット(5)のいずれか1つ以上であり,
該スリット(3,4,5)の少なくとも1つは,分散相供給口(6),連続相供給口(7),排出口(8)のいずれか2つに挟まれるように配置され,
該複数のマイクロ流路(9)は,上記の挟まれて配置されたスリットの終端の存在する,スリットに垂直な面において,該スリットの終端と,両脇の2つの供給口、または供給口と排出口、を接続するように配置され,
分散相(1)は該分散相供給口(6)から供給され,連続相(2)は該連続相供給口(7)から供給され,
該分散相(1)と該連続相(2)のいずれか一方または両方は,該複数のマイクロ流路(9)に分配され,
上記の挟まれて配置されたスリットと該マイクロ流路(9)の接続箇所において,該連続相(2)の流れを駆動力として該分散相(1)をせん断し,該分散相(1)の液滴または気泡が生成され,生成物は排出口から回収される,
ように構成してなるマイクロ液滴・気泡生成デバイスに関する。
【0011】
本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスは、スリットと複数のマイクロ流路の列を備える。
本発明において、スリットは、基準平面において幅と該幅の寸法より大きい寸法の軸線(スリット長さ)を有する線状のスリット端面を有し、基準平面はその上に複数のマイクロ流路の列が存在する平面であり、スリットは、その基準平面を終端として基準平面から基準平面の横断方向に延在する。スリット端面の形状は、特に限定されず、例えば、直線状、円環状であってよい。スリットの横断方向の寸法は、スリットの深さ(高さ)ともいえる。
【0012】
複数のマイクロ流路の列は、上記基準平面の上に存在し、複数のマイクロ流路の列は、基準平面を終端とするスリットと基準平面で接続されている。すなわち、複数のマイクロ流路は、基準平面においてスリットとの接続箇所を有する。
【0013】
本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスは、分散相供給口,連続相供給口,排出口を有する。分散相供給口は、複数のマイクロ流路に対して分散相を供給する輸送経路であり、複数のマイクロ流路との接続箇所を有する。連続相供給口は、複数のマイクロ流路に対して連続相を供給する輸送経路であり、複数のマイクロ流路との接続箇所を有する。排出口は、複数のマイクロ流路から生成した液滴・気泡生成物を排出する輸送経路であり、複数のマイクロ流路との接続箇所を有する。
【0014】
スリットは,分散相供給用スリット,連続相供給用スリット,排出用スリットのいずれか1つ以上であり,ここに、分散相供給用スリット,連続相供給用スリット,排出用スリットは、それぞれ、分散相供給口,連続相供給口,排出口の一部を構成するものであり、かつ複数のマイクロ流路との接続箇所を終端とするものである。
【0015】
本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスでは、スリットの少なくとも1つ(以下、特定スリットという。)は,それぞれ、分散相供給口,連続相供給口,排出口のいずれか2つに挟まれるように配置されている。典型的には、スリットが連続相供給用スリットである場合は、分散相供給口と排出口とに挟まれており、スリットが分散相供給用スリットである場合は、連続相供給口と排出口とに挟まれており、スリットが排出口である場合は、分散相供給用スリットと連続相供給口とに挟まれている。しかし、スリット(供給口又は排出口)とその両脇の供給口/排出口が、異なる供給口/排出口であるとは限らず、スリット(供給口又は排出口)とその両脇の供給口/排出口の一方又は両方が、同じ供給口/排出口であってもよい(その例を後記する)。なお、2つに挟まれるように配置とは、分散相供給口,連続相供給口,排出口がそれぞれマイクロ流路に対して接続されている接続箇所を基準として、分散相供給口,連続相供給口,排出口のうちの2つの接続箇所がスリットを挟んで配置されていることを指称する。
【0016】
複数のマイクロ流路は,特定スリットの終端の存在する,スリットに垂直な面(基準平面)において,特定スリットの終端と,その両脇の2つの供給口、または供給口と排出口、とを接続するように配置されている。特定スリットの両脇の供給口、排出口とは、特定スリットの両側における最も近い供給口、排出口をいう。
【0017】
そして、上記の構成を有するマイクロ液滴・気泡生成デバイスにおいて、分散相は分散相供給口から供給され,連続相は連続相供給口から供給され,分散相と連続相のいずれか一方または両方が複数のマイクロ流路に分配される。ここで、複数のマイクロ流路に分配されるとは、特定スリットの片側または両側にある分散相供給口及び/又は連続相供給口から供給された分散相及び/又は連続相が、その分散相供給口及び/又は連続相供給口と特定スリットとの間に存在する複数のマイクロ流路に分配されることを意味する。分散相と連続相のいずれか一方のみが複数のマイクロ流路に分配される場合、分散相と連続相の他方は、特定スリットに供給され、最終的に複数のマイクロ流路との接続箇所に至る。
【0018】
その結果として、特定スリットとマイクロ流路の接続箇所において,連続相の流れと分散相の流れが会合し、連続相の流れを駆動力として分散相をせん断し,分散相の液滴または気泡が生成され,その生成物(液滴または気泡)は排出口から回収される。すなわち、液滴または気泡は、特定スリットとマイクロ流路の接続箇所において生成される。特定スリットとその両隣のマイクロ流路の接続箇所は、特定スリットと、その両側のマイクロ流路が会合する箇所であるが、両側のマイクロ流路が会合する位置は、必ずしも特定スリットの同一の場所ではなく、互いに位置がずれた位置でもよい(
図4,8参照)。そして、特定スリットと、その両側のマイクロ流路との合計3種の流路のうち2種に分散相と連続相が供給され、分散相の流路と連続相の流路が会合する部位(上記接続箇所)で、連続相の流れを駆動力として分散相がせん断されることで,分散相の液滴または気泡が生成され、3種の流路のうち残りの1種の流路から生成物(液滴または気泡)が回収される。
【0019】
したがって、特定スリットは、上記のように、分散相供給口,連続相供給口又は排出口の一部を構成するものであるが、同時に、両脇のマイクロ流路との接続箇所において、分散相と連続相とから分散相の液滴または気泡を生成する機能を兼ねる要素である。
【0020】
本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスでは、特定スリットは1つでも、2つ以上でもよい。特定スリットが2つ以上であるとは、例えば、基準平面に、<連続相供給口-分散相供給口(その1)-分散相供給口(その2)-排出口>の順で供給口及び排出口が配置されて、分散相供給口(その1)と分散相供給口(その2)がスリットであり、これらの供給口及び排出口の間をマイクロ流路が接続している例を挙げることができる。このとき、分散相供給口(その1)と分散相供給口(その2)は、それぞれの両隣の一方は特定スリットと同じ分散相供給口である(先に予告した例である)。ただし、分散相供給口(その1)と分散相供給口(その2)は、いずれも、最終的には、連続相供給口と排出口とによって挟まれている配置である。
【0021】
本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスでは、特定スリット以外の連続相供給口、分散相供給口、排出口が、マイクロ流路と接続する終端がスリットであってもよい。したがって、本発明のマイクロ液滴・気泡生成デバイスでは、特定スリットは少なくとも1つであるが、スリットの個数は特定スリットの個数より多くてもよい。例えば、基準平面に、<連続相供給口-分散相供給口-排出口>の順で配置されて、分散相供給口が特定スリットであるとき、連続相供給口と排出口の終端は、任意にスリットであることができる。あるいは、連続相供給口と排出口の終端は、任意に円筒形孔などであってもよい。
【0022】
本発明は、1つの側面において、下記マイクロ液滴・気泡生成デバイス(100)である。すなわち、
スリット(3,4,5)と複数のマイクロ流路(9)の列を備えるマイクロ液滴・気泡生成デバイス(100)であって,
該デバイス(100)は、該複数のマイクロ流路(9)の列を含む基準平面(x、y面)と、該基準平面に垂直な横断方向(z方向)とを有し、
該デバイス(100)は、該複数のマイクロ流路(9)に対する分散相供給口(6)及び連続相供給口(7)と,該複数のマイクロ流路(9)からの排出口(8)とを有し、該分散相供給口(6)、該連続相供給口(7)及び該排出口(8)は、それぞれ、該複数のマイクロ流路(9)との接続箇所を有し、
該スリット(3,4,5)は、該基準平面において幅と該幅より大きい長尺方向寸法(スリット長さ)を有する線状のスリット端面を有し、該基準平面を終端として該基準平面から該横断方向に延在し、かつ、該基準平面において該複数のマイクロ流路(9)との接続箇所を有し、
該スリット(3,4,5)は,分散相供給用スリット(3),連続相供給用スリット(4)及び排出用スリット(5)のいずれか1つ以上であり,ここに、該分散相供給用スリット(3)、該連続相供給用スリット(4)及び該排出用スリット(5)は、それぞれ、該分散相供給口(6)、該連続相供給口(7)及び該排出口(8)のそれぞれの一部を構成するものであり、
該スリット(3,4,5)の少なくとも1つ(以下、特定スリットという。)は,それぞれ、該分散相供給口(6),該連続相供給口(7)及び該排出口(8)のいずれか2つに挟まれるように配置され,ここに、挟まれるように配置とは、該分散相供給口(6),該連続相供給口(7)及び該排出口(8)と該複数のマイクロ流路(9)との該接続箇所の位置と、該特定スリットとの位置関係に基づき、
該特定スリットと、該特定スリットを挟むように両隣に配置された、該分散相供給口(6),該連続相供給口(7)及び該排出口(8)のいずれか2つとは、該複数のマイクロ流路(9)を介して接続されており、
分散相は該分散相供給口(6)から該複数のマイクロ流路(9)に供給され,連続相は該連続相供給口(7)から該複数のマイクロ流路(9)に供給され,
該特定スリットと該複数のマイクロ流路との該接続箇所において,該連続相の流れを駆動力として該分散相をせん断することで,該分散相の液滴または気泡が生成され,その生成物は該排出口から回収される,
ように構成してなるマイクロ液滴・気泡生成デバイス。
【0023】
本発明において、マイクロ流路の大きさは、目的に応じて決定しうるが、幅および高さが通常0.1~1000μm程度、好ましくは1~200μm程度から選ばれる。マイクロ流路の断面形状は,特に制限されないが,好ましくは,矩形,台形,三角形,半円,円,楕円,半楕円の中から加工対象の材料および加工手段に合わせて選択される。
【0024】
スリットの幅は、通常1~1000μm程度、好ましくは10~500μm程度から選ばれる。
【0025】
本発明において、液滴を生成する場合は,好適には、分散相と連続相を形成する液体は,有機化合物または水である。有機化合物としては、特に制限されないが、好適にはデカン、オクタン等のアルカン類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、オレイン酸等の脂肪酸類等が挙げられる。また,固体またはゲル状の微粒子を得るために,熱や光重合反応等による硬化処理が可能な水相あるいは有機相を分散相として使用することも可能であり,使用できる材料はたとえば、公知の重合性モノマー、オリゴマーまたはポリマーが挙げられ、好適にはアクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、等が挙げられる。
【0026】
液滴を生成する場合は分散相および連続相の組み合わせは、通常,水中油型(O/W型)、油中油型(O/O型)、または油中水型(W/O型)とすることができる。
【0027】
本発明において,気泡を生成する場合には,分散相は気体であり,連続相は水相あるいは有機相から構成される液体である。気体としては,特に制限されないが,好適には,大気,酸素,窒素,二酸化炭素,アルゴンガス等が挙げられる。
【0028】
単一のマイクロ流路あたりの分散相および連続相の流量は、その種類等にもよるが、通常0.001mL~10mL/時間程度から選ばれる。
【0029】
本発明の実施態様1において、マイクロ液滴・気泡生成デバイス(100)は、矩形断面形状を有する複数の並列化直線状微細溝アレイ基板(10)と、液体または気体分配用部品(20)とから構成される(
図1)。微細溝アレイ基板(マイクロ流路アレイともいう。)(10)は、125本の矩形断面(幅100μm、高さ110μm)形状を有する直線状微細溝(10-1)を有し、隣り合う溝同士の隙間は100μmである(
図1(a))。
【0030】
一方
図1において、液体または気体分配用部品(20)は、幅24mm、長さ40mm、高さ8mmの4つの部材から構成される(
図1(b))。最上部の第1部材(20-1)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、生成物排出用スリット(5)および排出口(8)を有する。上から2段目の第2部材(20-2)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、および連続相供給口(7)を有する。上から3段目の第3部材(20-3)は、分散相供給用スリット(3)、および分散相供給口(6)を有する。最下段の第4部材(20-4)は、第3部材(20-3)の分散相供給用スリット(3)によって底部に形成される貫通孔を閉じるための平板である。液体または気体分配用部品(20)の第1~第4部材を組合せた時の断面斜視図を
図1(c)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層から装置(100)の内部のスリット状流路(3,4)を流れて、液体または分配装置(100)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第3部材(20-3)において分散相供給口(6)から分散相供給用スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第2部材(20-2)において連続相供給口(7)から連続相供給用スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット(3,4)内をそれぞれ上方に送られる。ここでは、スリットの形状を強調するために、スリットを除く部分を分散相供給口(6)、連続相供給口(7)及び排出口(8)と表示しているが、本開示において、スリットは、機能的には、分散相供給口(6)、連続相供給口(7)または排出口(8)の一部であることは、前述のとおりである(以下の態様において同様であるが、繰り返して記載しない。)。
【0031】
微細溝アレイ基板(10)を、液体または気体分配用部品(20)上の3つのスリット、すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)および生成物排出用スリット(5)と位置合わせをし、結合したものを
図1(d)に示す。スリット終端部における長辺幅は27mm、短辺幅は100μmであり、スリット同士は0.5mm離れている。
図1(d)では、上側のスリット(4)に連続相(2)が供給され,中央のスリット(3)に分散相(1)が供給され、連続相(2)は微細溝(10-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て下側のスリット(5)から排出される。
図1(e)は、装置(100)内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0032】
本発明の実施態様2において,液体または気体分配用部品(20)は、4つの部材から構成される(
図2)。最上部の第1部材(20-1)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、生成物排出用スリット(5)、および排出口(8)を有する。上から2段目の第2部材(20-2)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、および分散相供給口(6)を有する。上から3段目の第3部材(20-3)は、連続相供給用スリット(4)、および連続相供給口(7)を有する。最下段の第4部材(20-4)は、第3部材(20-3)の連続相供給用スリット(4)によって底部に形成される貫通孔を閉じるための平板である(
図2)。液体または気体分配用部品(20)の第1~第4部材を組合せた時の断面斜視図を
図2(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層からスリットを流れて、液体または気体分配用部品(20)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第2部材(20-2)において分散相供給口(6)から分散相供給用スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第3部材(20-3)において連続相供給口(7)から連続相供給用スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット内をそれぞれ上方に送られる。
【0033】
微細溝アレイ基板(10)を、液体または気体分配用部品(20)上の3つのスリット、すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)および排出用スリット(5)と位置合わせをし、結合したものを
図2(b)に示す。
図2(b)では、上側のスリット(3)に分散相(1)が供給され,中央のスリット(4)に連続相(2)が供給され、分散相(1)は微細溝(10-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て下側のスリット(5)で排出される。
図2(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0034】
本発明の実施態様3において,液体または気体分配用部品(20)は、4つの部材から構成される(
図3)。最上部の第1部材(20-1)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、生成物排出用スリット(5)、および連続相供給口(7)を有する。上から2段目の第2部材(20-2)は、排出用スリット(5)、分散相供給用スリット(3)、および分散相供給口(6)を有する。上から3段目の第3部材(20-3)は、排出用スリット(5)、および排出口(8)を有する。最下段の第4部材(20-4)は、第3部材(20-3)の排出用スリット(5)によって底部に形成される貫通孔を閉じるための平板である。液体または気体分配用部品(20)の第1~第4部材を組合せた時の断面斜視図を
図3(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層からスリットを流れて、液体または気体分配用部品(20)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第2部材(20-2)において分散相供給口(6)から分散相供給用スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第1部材(20-1)において連続相供給口(7)から連続相供給用スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット(4,3)内をそれぞれ上方に送られる。
【0035】
微細溝アレイ基板(10)を、液体または気体分配用部品(20)上の3つのスリット、すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)および排出用スリット(5)と位置合わせをし、結合したものを
図3(b)に示す。
図3(b)では、上側のスリット(3)に分散相(1)が供給され,下側のスリット(4)に連続相(2)供給され,分散相(1)と連続相(2)は微細溝(10-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物が中央のスリット(5)で排出される。
図3(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0036】
本発明の実施態様1~3において,液体または気体分配用部品(20)に接合される微細溝(10-1)を有する部品(10)の溝形状を
図4に示す。
図4(a)は,3つのスリット(破線)を直線状マイクロ流路(実線)の列で垂直に橋渡ししている場合であり,
図4(b)は3つのスリット(破線)を直線状マイクロ流路(実線)の列で斜めに交わるように橋渡ししている場合であり,
図4(c)は3つのスリットを橋渡しするマイクロ流路(実線)の幅が連続的に変化している場合である。なお,微細溝の幅は不連続的に変化してもよい。
図4(d)~(f)は,挟まれたスリット(破線)と両脇のスリット(破線)を接続するマイクロ流路(実線)が分割されている場合であり,
図4(d)は位置とサイズが合っている場合,
図4(e)は位置がずれている場合,
図4(f)は数の対応が1:1でない場合,を示す。また
図4(g)は橋渡しするマイクロ流路(実線)の列が一部互いに接合されている場合を示す。
図4(a)~(g)の特徴は任意に組み合わせてもよい。
【0037】
本発明の実施態様1~3において、微細溝アレイ基板(10)は、例えばSi基板上にネガ型フォトレジストであるSU-8(日本化薬株式会社)を用いて作製した鋳型からシリコーン樹脂(PDMS:ポリジメチルシロキサン)にパターンを転写して作製することができる。液体または気体分配用部品(20)は、例えばステンレス鋼素材(SUS304)を機械加工して作製することができる。また、液体または気体分配用部品(20)のスリット状の貫通孔は、例えばワイヤ放電加工により作製することができる。
【0038】
本発明の実施態様1~3において、例えば純水等の分散相および1wt%の界面活性剤を添加したフッ素系オイル等の連続相を送液することにより、W/O液滴が生成される。分散相と連続相の送液には、たとえばガラスシリンジおよびシリンジポンプを用いることができる。液滴や気泡の生成の観察および生成液滴または気泡のサイズ測定には、例えば正立型光学顕微鏡および高速度ビデオカメラを組み合わせて使用するのが好適である。
【0039】
本発明の実施態様4において,液体または気体分配用部品(21)は、4つの部材から構成される(
図5)。最上部の第1部材(21-1)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、生成物排出用スリット(5)、各スリットを互いに橋渡しする微細溝(11-1)のアレイ、および生成物排出用スリット(5)に接続されている排出口(8)を有する。上から2段目の第2部材(21-2)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、および連続相供給口(7)を有する。上から3段目の第3部材(21-3)は、分散相供給用スリット(3)、および分散相供給口(6)を有する。最下段の第4部材(21-4)は、第3部材(21-3)の分散相供給用スリット(3)によって底部に形成される貫通孔を閉じるための平板である。液体または気体分配用部品(21)の第1~第4部材を組合せた時の断面斜視図を
図5(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層からスリットを流れて、液体または気体分配用部品(21)の上部へと供給される。すなわち、連続相(2)は、第2部材(21-2)において連続相供給口(7)から連続相供給用スリット(4)に供給され、分散相(1)は、第3部材(21-3)において分散相供給口(6)から分散相供給用スリット(3)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット内をそれぞれ上方に送られる。
【0040】
液体または気体分配用部品(21)上の3つのスリット、すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)および排出用スリット(5)と微細溝(11-1)を密閉するための蓋(11)を接合したものを
図5(b)に示す。
図5(b)では、上側のスリットに連続相(2)が供給され、中央のスリット(3)に分散相(1)が供給され,連続相(2)は微細溝(11-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て下側のスリット(5)で排出される。
図5(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0041】
本発明の実施態様5において,液体または気体分配用部品(21)は、4つの部材から構成される(
図6)。最上部の第1部材(21-1)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、生成物排出用スリット(5)、各スリットを橋渡しする微細溝(11-1)および排出口(8)を有する(
図6)。上から2段目の第2部材(21-2)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、および分散相供給口(6)を有する。上から3段目の第3部材(21-3)は、連続相供給用スリット(4)、および連続相供給口(7)を有する。最下段の第4部材(21-4)は、第3部材(21-3)の連続相供給用スリット(4)によって底部に形成される貫通孔を閉じるための平板である。液体または気体分配用部品(21)の第1~第4部材を組合せた時の断面斜視図を
図6(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層からスリット(3,4)を流れて、液体または気体分配用部品(21)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第2部材(21-2)において分散相供給口(6)から分散相供給用スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第3部材(21-3)において連続相供給口(7)から連続相供給用スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット内をそれぞれ上方に送られる。
【0042】
液体または気体分配用部品(21)上の3つのスリット、すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)および排出用スリット(5)と微細溝(11-1)を密閉するための蓋(11)を接合したものを
図6(b)に示す。
図6(b)では、上側のスリット(3)に分散相(1)が供給され、中央のスリット(4)に連続相(2)が供給され,分散相(1)は微細溝(11-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て下側のスリット(5)で排出される。
図6(c)は、装置内で液滴が生成される様子を表したものである。連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0043】
本発明の実施態様6において,液体または気体分配用部品(21)は、4つの部材から構成される(
図7)。最上部の第1部材(21-1)は、連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)、排出用スリット(5)、各スリットを橋渡しする微細溝(11-1)および連続相供給口(7)を有する。上から2段目の第2部材(21-2)は、分散相供給用スリット(3)、排出用スリット(5)、および分散相供給口(6)を有する。上から3段目の第3部材(21-3)は、排出用スリット(5)および排出口(8)を有する。最下段の第4部材(21-4)は、第3部材(21-3)の排出用スリット(5)によって底部に形成される貫通孔を閉じるための平板である。液体または気体分配用部品(21)の第1~第4部材を組合せた時の断面斜視図を
図7(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層からスリット(3,4)を流れて、液体または気体分配用部品(21)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第2部材(21-2)において分散相供給口(6)から分散相供給用スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第1部材(21-1)において連続相供給口(7)から連続相供給用スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット内をそれぞれ上方に送られる。
【0044】
液体または気体分配用部品(21)上の3つのスリット、すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)および排出用スリット(5)と微細溝(11-1)を密閉するための蓋(11)を接合したものを
図7(b)に示す。
図7(b)では、上側のスリット(3)に分散相(1)が供給され、下側のスリット(4)に連続相(2)が供給され,分散相(1)と連続相(2)は微細溝(11-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物が中央のスリット(5)で排出される。
図7(c)は、装置内で液滴が生成される様子を表したものである。排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0045】
本発明の実施態様4~6において,液体または気体分配用部品(21)に加工される微細溝の形状の例を
図8に示す。
図8(a)は,3本のスリットを垂直に交わる直線状微細溝で橋渡しする場合,
図8(b)は斜めに交わる直線状微細溝で橋渡しする場合,
図8(c)は橋渡しする微細溝の幅が連続的に変化している場合である。なお,微細溝の幅は不連続的に変化してもよい。
図8(d)は橋渡しする微細溝の位置にずれがある場合,
図8(e)は橋渡しする微細溝の数の対応が1:1でない場合である。
【0046】
本発明の実施態様4~6において、密封用の蓋(11)は、例えばシリコーン樹脂(PDMS:ポリジメチルシロキサン)やアクリル樹脂,ガラス等の透明部材を用いて作製することが望ましい。液体または気体分配装置は、例えばステンレス鋼素材(SUS304)を機械加工して作製する。また、液体または気体分配装置のスリット状の貫通孔は、例えばワイヤ放電加工により作製することができる。また,スリット同士を橋渡しする微細溝は機械切削加工,レーザ加工,エッチング等にて作製することができる。
【0047】
本発明の実施態様4~6において、例えば純水等の分散相および1wt%の界面活性剤を添加したフッ素系オイル等の連続相を送液することにより、W/O液滴が生成される。分散相と連続相の送液には、たとえばガラスシリンジおよびシリンジポンプを用いることができる。液滴や気泡生成の観察および生成液滴または気泡のサイズ測定には、例えば正立型光学顕微鏡および高速度ビデオカメラを組み合わせて使用するのが好適である。
【0048】
本発明の実施態様7において,液体または気体分配用部品(22)は,3つの部材より構成される(
図9)。液体または気体分配用部品(22)は,微細溝(12-1)を有する部品(12)の下部に配置される,連続相供給口(7)を備えた最上部の第1部材(22-1)と,分散相供給口(6)を備え,且つ第1部材(22-1)と組み合わせることで連続相(2)を供給するための円環状スリット(4)を形成する上から2段目の第2部材(22-2)と,第2部材(22-2)と組み合わせることで分散相(1)を供給するための円環状スリット(3)を形成し且つ中央の生成物排出用円筒形孔(5-1)と排出口(8)を備える上から3段目の第3部材(22-3)を具備する(
図9)。液体または気体分配用部品(22)の第1~第3部材を組合せた時の断面斜視図を
図9(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層から円環状スリット(3,4)を流れて、液体または気体分配用部品(22)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第2部材(22-2)において分散相供給口(6)から分散相供給用の円環状スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第1部材(22-1)において連続相供給口(7)から連続相供給用の円環状スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット内をそれぞれ上方に送液される。ここでは、円環状スリット(3,4)及び円筒形孔(5-1)の形状を強調するために、円環状スリット(3,4)及び円筒形孔(5-1)を除く部分を分散相供給口(6)、連続相供給口(7)及び排出口(8)と表示しているが、本開示において、円環状スリット(3,4)及び円筒形孔(5-1)は、機能的には、分散相供給口(6)、連続相供給口(7)または排出口(8)の一部であることは、前述のとおりである(以下の態様において円環状スリット及び円筒形孔に関して分散相供給口、連続相供給口、排出口との関係は同様であるが、繰り返して記載しない。)。
【0049】
液体または気体分配用部品(22)上の2つのスリット(すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)),及び排出口(8)の一部である円筒形孔(5-1)と、微細溝(12-1)を有する部品(12)とを接合したものを
図9(b)に示す。
図9(b)では、外側の円環状スリット(4)に連続相(2)が供給され、内側のスリット(3)に分散相(1)が供給され,連続相(2)は微細溝(12-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て中央の排出用円筒形孔(5-1)から排出される。
図9(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡)が生成される。生成物は排出用円筒形孔(5-1)を経て排出口(8)から排出される。
【0050】
本発明の実施態様8において,液体または気体分配用部品(22)は,3つの部材より構成される(
図10)。液体または気体分配用部品(22)は,微細溝(12-1)を有する部品(12)の下部に配置される,分散相供給口(6)を備えた最上部の第1部材(22-1)と,連続相供給口(7)を備え,且つ第1部材(22-1)と組み合わせることで分散相(1)を供給するための円環状スリット(3)を形成する上から2段目の第2部材(22-2)と,前記第2部材(22-2)と組み合わせることで連続相(2)を供給するための円環状スリット(4)を形成し且つ中央の生成物排出用円筒形孔(5-1)と排出口(8)を備える上から3段目の第3部材(22-3)を具備する(
図10)。液体または気体分配用部品(22)の第1~第3部材を組合せた時の断面斜視図を
図10(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層から円環状スリット(3,4)を流れて、液体または気体分配用部品(22)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第1部材(22-1)において分散相供給口(6)から分散相供給用の円環状スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第2部材において連続相供給口(7)から連続相供給用の円環状スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット内をそれぞれ上方に送液される。
【0051】
液体または気体分配用部品(22)上の2つのスリット(すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)),及び円筒形孔(5-1)と、微細溝(12-1)を有する部品(12)とを接合したものを
図10(b)に示す。
図10(b)では、外側の円環状スリット(3)に分散相(1)が供給され、内側のスリット(4)に連続相(2)が供給され,分散相(1)微細溝(12-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て中央の排出用円筒形孔(5-1)から排出される。
図10(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用円筒形孔(5-1)を経て排出口(8)から排出される。
【0052】
本発明の実施態様9において,液体または気体分配用部品(22)は,3つの部材より構成される(
図11)。液体または気体分配用部品(22)は,微細溝(12-1)を有する部品(12)の下部に配置される,分散相供給口(6)を備えた最上部の第1部材(22-1)と,排出口(8)を備え,且つ第1部材と組み合わせることで分散相(1)を供給するための円環状スリット(3)を形成する上から2段目の第2部材(22-2)と,第2部材(22-2)と組み合わせることで生成された液滴または気体を排出するための円環状スリット(5)を形成し且つ中央の連続相供給用円筒形孔(4-1)と連続相供給口(7)を備える上から3段目の第3部材(22-3)を具備する。液体または気体分配用部品(22)の第1~第3部材を組合せた時の断面斜視図を
図11(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層から円環状スリット(3)、円筒形孔(4-1)を流れて、液体または気体分配用部品(22)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第1部材(22-1)において分散相供給口(6)から分散相供給用の円環状スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第3部材(22-3)において連続相供給口(7)から連続相供給用の円筒形孔(4-1)に供給され、分散相(1)はスリット内,連続相(2)は円筒形孔内をそれぞれ上方に送液される。
【0053】
液体または気体分配用部品(22)上の2つのスリット(すなわち分散相供給用スリット(3)、生成物排出用円環状スリット(5))、及び連続相供給用円筒形孔(4-1)と、微細溝(12-1)を有する部品(12)とを接合したものを
図11(b)に示す。
図11(b)では、外側の円環状スリット(3)に分散相(1)が供給され、中央の円筒形孔(4-1)に連続相(2)が供給され,分散相(1)と連続相(2)は微細溝(12-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物が内側の円環状スリット(5)から排出される。
図11(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0054】
本発明の実施態様10において,液体または気体分配用部品(22)は,3つの部材より構成される(
図12)。液体または気体分配用部品(22)は,スリット(3,4)と円筒形孔(5-1)と微細溝(13-1)を密封するための平板の蓋(13)の下部に配置される,連続相供給口(7)を備えた最上部の第1部材(23-1)と,分散相供給口(6)を備え,且つ第1部材(23-1)と組み合わせることで連続相(2)を供給するための円環状スリット(4)を形成する上から2段目の第2部材(23-2)と,前記第2部材(23-2)と組み合わせることで分散相(1)を供給するための円環状スリット(3)を形成し且つ中央に生成物排出用の円筒形孔(5-1)を備える上から3段目の第3部材(23-3)を具備する。また,3つの部材(23-3)を組み合わせることで形成された円環状スリット(4,3)の間および,円環状スリット(5)と円筒形孔(5-1)の間には微細な溝(13-1)が加工されている。液体または気体分配用部品(22)の第1~第3部材を組合せた時の断面斜視図を
図12(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層から円環状スリット(3、4)を流れて、液体または気体分配用部品(22)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第2部材(23-2)において分散相供給口(6)から分散相供給用の円環状スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第1部材(23-1)において連続相供給口(7)から連続相供給用の円環状スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット(3、4)内をそれぞれ上方に送液される。
【0055】
液体または気体分配用部品(22)上の2つのスリット(すなわち連続相供給用スリット(4)および分散相供給用スリット(3)),排出用円筒形孔(5-1)、及び微細溝(13-1)と、密封用の平板の蓋(13)とを接合したものを
図12(b)に示す。
図12(b)では、外側の円環状スリット(4)に連続相(2)が供給され、内側のスリット(3)に分散相(1)が供給され,連続相(2)は微細溝(13-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て中央の排出用円筒形孔(5-1)から回収される。
図12(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。分散相供給用スリット(3)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用円筒形孔(5-1)を経て排出口(8)から排出される。
【0056】
本発明の実施態様11において,液体または気体分配用部品(22)は,3つの部材より構成される(
図13)。液体または気体分配用部品(22)は,スリット(3,4)と排出用円筒形孔(5-1)と微細溝(13-1)を密封するための平板の蓋(13)の下部に配置される,分散相供給口(6)を備えた最上部の第1部材(23-1)と,連続相供給口(7)を備え,且つ前記第1部材(23-1)と組み合わせることで分散相(1)を供給するための円環状スリット(3)を形成する上から2段目の第2部材(23-2)と,前記第2部材(23-2)と組み合わせることで連続相(2)を供給するための円環状スリット(4)を形成し且つ中央に排出用円筒形孔(5-1)を備える上から3段目の第3部材(23-3)を具備する。また,3つの部材を組み合わせることで形成された円環状スリットの間および,円環状スリット(3,4)と円筒形孔(5-1)の間には微細な溝が加工されている。液体または気体分配用部品(22)の第1~第3部材を組合せた時の断面斜視図を
図13(a)に示す。供給された分散相(1)、連続相(2)は下層から円環状スリット(3,4)を流れて、液体または気体分配用部品(22)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第1部材(23-1)において分散相供給口(6)から分散相供給用の円環状スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第2部材において連続相供給口(7)から連続相供給用の円環状スリット(4)に供給され、連続相(2)および分散相(1)は各スリット内をそれぞれ上方に送液される。
【0057】
液体または気体分配用部品(22)上の2つのスリット(すなわち連続相供給用スリット(4)、分散相供給用スリット(3)),排出用円筒形孔(5-1)、及び微細溝(13-1)と、密封用の平板の蓋(13)を接合したものを
図13(b)に示す。
図13(b)では、外側の円環状スリット(3)に分散相(1)が供給され、内側のスリット(4)に連続相(2)が供給され,分散相(1)は微細溝(13-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物がマイクロ流路(9)を経て中央の排出用円筒形孔(5-1)から排出される。
図13(c)は、装置内で液滴または気泡が生成される様子を表したものである。連続相供給用スリット(4)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用円筒形孔(5-1)を経て排出口(8)から排出される。
【0058】
本発明の実施態様12において,液体または気体分配用部品(22)は,3つの部材より構成される(
図14)。液体または気体分配用部品(22)は,スリット(3,4)と円筒形孔(4-1)と微細溝(13-1)を密封するための平板の蓋(13)の下部に配置される,分散相供給口(6)を備えた最上部の第1部材(23-1)と,排出口(8)を備え,且つ前記第1部品材(23-1)を組み合わせることで分散相(1)を供給するための円環状スリット(3)を形成する上から2段目の第2部材(23-2)と,前記第2部材(23-2)と組み合わせることで生成された液滴または気泡を排出するための円環状スリット(5)を形成し、且つ中央に連続相を供給するための円筒形孔(4-1)を備える上から3段目の第3部材(23-3)を具備する。また,3つの部材を組み合わせることで形成された円環状スリット(3,5)の間および,円環状スリット(5)と円筒形孔(4-1)の間には微細な溝(13-1)が加工されている。液体分配用部品(22)の第1~第3部材を組合せた時の断面斜視図を
図14(a)に示す。供給された分散相(1)は下層から円環状スリット(3)を流れて、連続相(2)は中央に連続相を供給するための円筒形孔(4-1)を流れて、液体または気体分配用部品(22)の上部へと供給される。すなわち、分散相(1)は、第1部材(23-1)において分散相供給口(6)から分散相供給用の円環状スリット(3)に供給され、連続相(2)は、第3部材において連続相供給口(7)から連続相供給用の円筒形孔(4-1)に供給され、分散相(1)はスリット内,連続相(2)は円筒内をそれぞれ上方に送液される。
【0059】
液体または気体分配用部品(22)上の2つのスリット(すなわち液滴または気泡を排出するための円環状スリット(5),分散相供給用スリット(3)),及び連続相供給用の円筒形孔(4-1)と、密封用の平板の蓋(13)とを接合したものを
図14(b)に示す。
図14(b)では、外側の円環状スリット(3)に分散相(1)が供給され、中央の円筒形孔(4-1)に連続相(2)が供給され,分散相(1)と連続相(2)は微細溝(13-1)から形成されたマイクロ流路(9)に供給され、排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において生成した生成物が内側の円環状スリット(5)で排出される。
図14(c)は、装置内で液滴(または気泡)が生成される様子を表したものである。排出用スリット(5)とマイクロ流路(9)の接続箇所において、連続相(2)の流れにより分散相(1)がせん断され液滴または気泡が生成される。生成物は排出用円環状スリット(5)を経て排出口(8)から排出される。
【0060】
本発明の実施態様13において,上記実施態様7~9において用いられた装置の中央円筒形孔を円環状スリット(15-3)にするように,
図15に示すように4つの部材を用いて液体または気体分配装置(100)を構成し,微細溝を有する部品(微細溝アレイ基板)(14)と貼り合せることにより,同様に液滴または気泡の生成に用いることができる。14は微細溝(14-1)を有する部品であり、15-1、15-2は円環状スリットであり、16-1.16-2、16-3は供給口または排出口であり、24-1,24-2,24-3,24-5は液体または気体分配用部品(24)を構成する部材である。
【0061】
本発明の実施態様14において,上記実施態様10~12において用いられた装置の中央円筒形孔を円環状スリット(17-3)にするように,
図16に示すように4つの部材を用いて液体または気体分配装置(100)を構成し,密封用の基板と貼り合せることにより,同様に液滴または気泡の生成に用いることができる。17は密封用の蓋、16-1、16-2は円環状スリットであり、18-1.18-2、18-3は供給口または排出口であり、25-1,25-2,25-3,25-5は液体または気体分配用部品(24)を構成する部材である。
【実施例0062】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
矩形断面形状を有する並列化直線マイクロ流路基板(微細溝アレイ基板)(10)と液体または気体分配用部品(20)から構成される液滴生成デバイス(
図1)を設計・製作して用いた。マイクロ流路基板は,125本の矩形断面(幅100 μm,高さ110 μm,長さ1.4 mm)形状を有する直線マイクロ流路からなり,流路同士の隙間は100 μmとした(
図1(a))。一方,液体分配装置は,幅24 mm,長さ40 mm,高さ8 mmの4つの部材の積層によって構成した (
図1(b))。最上部の部材は,連続相供給用スリット(4),分散相供給用スリット(3),生成物排出(液体回収)用スリット(5)の計3つのスリット,および生成物排出(液体回収用スリット(5)に接続された側面の排出口(8)を有する。各スリットの幅は100 μm,長さは27 mmであり,各スリット同士の隙間は,500μmとした(
図1(c))。上から2段目の部材は,連続相供給用スリット(4),分散相供給用スリット(3),及び連続相供給用スリット(4)に接続された側面の連続相供給口(7)を有し,直上の部材の液体回収用スリット(5)の密閉を行う。上から3段目の第3部材(20-3)は,分散相供給用スリット(3)及び分散相供給用スリット(3)に接続された側面の分散相供給口(6)を有し,直上の部材の連続相供給用スリット(4)の密閉を行う。最下段の部材には,直上の部材の分散相供給用スリット(3)を密閉する。分液体または気体配用部材(20)の4つの部材を組み合わせたときの断面図を
図1(c)に示す。供給された分散相(1),連続相(2)が下層からスリット流路を流れて,分配装置の上部へと供給される。
【0063】
マイクロ流路基板を液体または気体液体分配用部品(20)上の3本のスリットと位置合わせをし,接合したものを装置上側から見た際の概念図を
図1(d)に示す。ここでは,中央のスリット流路(3)に分散相(1),上側のスリット流路(4)に連続相(2)が供給され,下側のスリット流路(5)で生成物が回収される。
図1(e)は,マイクロ流路内で液滴が生成される様子を表した概念図である。
【0064】
マイクロ流路基板は,Si 基板上にネガ型フォトレジストであるSU-8 (日本化薬)を用いて作製した高さ110 μmの鋳型からポリジメチルシロキサン(PDMS)にパターンを転写することで作製した。PDMS原料として,Silpot184(東レ・ダウコーニング)を用いた。液体分配用部品(20)の4つの部材は,ステンレス素材(SUS304)を機械加工することで作製した。また,液体分配用部品(20)のスリット状の貫通孔はワイヤ放電加工により作製した。流路分配装置に連続相,分散相を供給する際に,液体分配用装置の各部材間の接着面からの液漏れを防ぐために,接着面にはPDMSを塗布し,120 ℃で加熱し,硬化させた。
【0065】
導入試料には,連続相として界面活性剤(SY-Glyster CRS-75, 阪本薬品工業,1wt%)を含むコーン油(和光純薬工業),分散相として純水を用いた。液体分配用装置への送液には10 mlガラスシリンジ(1000 series,Hamilton Company,USA)及びシリンジポンプ(KDS200, KD Scientific,USA)を用いた。マイクロ流路内での液滴生成の様子を観察するために正立顕微(BX-51,オリンパス)と高速度ビデオカメラ(Fastcam-1024PCI,Photron)を組み合わせて用いた。
【0066】
連続相流量(Q
c)を20 mL/h,分散相流量(Q
d)を20 mL/hに設定した際の,並列化マイクロ流路内でのW/O液滴生成の様子を
図17(a)に示す。マイクロ流路と分散相供給用スリットとが結合箇所においてW/O液滴が生成されることが観察された。スリット中央付近で,マイクロ流路1本あたり1秒間に生成される液滴の個数は33.3個であった。また,生成された液滴の平均径は87 μm,変動係数(CV値)は14.7 %であった(
図17(b))。
【0067】
実施例2
実施例1と同一の実験装置を用い,分散相流量を40 mL/h とする以外は実施例1と同条件で実験を行った。スリット中央部におけるW/O液滴生成の様子と,生成液滴サイズの分布を
図18に示す。得られた液滴の平均径は63 μm,変動係数は10.4%であった。
【0068】
実施例3
実施例1と同一の実験装置を用い,分散相流量を60 mL/h とする以外は実施例1と同条件で実験を行った。スリット中央部におけるW/O液滴生成の様子と,生成液滴サイズの分布を
図19に示す。得られた液滴の平均径は72 μm,変動係数は8.9%であった。
【0069】
実施例4
実施例1と同一の実験装置を用い,分散相流量を80 mL/h とする以外は実施例1と同条件で実験を行った。スリット中央部におけるW/O液滴生成の様子と,生成液滴サイズの分布を
図20に示す。得られた液滴の平均径は55 μm,変動係数は16.0%であった。
【0070】
実施例5
実施例1と同一の実験装置を用い,連続相流量を40 mL/h とする以外は実施例1と同条件で実験を行った。スリット中央部におけるW/O液滴生成の様子と,生成液滴サイズの分布を
図21に示す。得られた液滴の平均径は58 μm,変動係数は15.7%であった。
【0071】
実施例6
実施例1と同一の実験装置及用い,連続相流量を60 mL/h とする以外は実施例1と同条件で実験を行った。スリット中央部におけるW/O液滴生成の様子と,生成液滴サイズの分布を
図22に示す。得られた液滴の平均径は51 μm,変動係数は22.9%であった。
【0072】
実施例7(行列状デバイス)
実施例1と同様の実験装置において,微細溝アレイ基板上の125本の直線状微細溝のサイズを幅100 μm,高さ50 μm,長さ1.4 mmとし,分散相流量を10 mL/h,連続相流量を10 mL/hとする以外は実施例1と同条件で実験を行った。
スリット中央部におけるW/O液滴生成の様子を
図23に示す。また生成されたW/O液滴を装置外部で撮影した写真を
図24(a),サイズ分布を
図24(b)に示す。得られた液滴の平均径は76 μm,変動係数は5.4%であった。
【0073】
実施例8(円環状デバイス)
矩形断面形状を有する微細溝(12-1)が複数,放射状に配置された微細溝アレイ基板(12)と環状スリット(3,4)を有する液体分配用部品(22)から構成される液滴生成デバイス(100)を設計・製作して用いた(
図9)。微細溝アレイ基板(12)は,放射状に配置された100本の矩形断面(幅100 μm,深さ100 μm,長さ3.2 mm)形状を有する直線状の微細溝(12-1)からなり,隣接する微細溝同士の角度は3.6°とした。一方,液体分配用部品(22)は,3つの部材(22-1,22-2,22-3)を互いに積層,はめ合わせることで構成した(
図9(a))。最上部の部材(22-1)は,側面に連続相供給口(7)を有し,中間部の部材(22-2)は,側面に分散相供給口(6)を有し,最下部の部材(22-3)は,その上面の中心の円筒形孔から側面に接続される排出口(8)を有する。最上部の部材(22-1)と中間部の部材(22-2)の組合せにより,直径13.5 mm,幅500 μmの円環状の連続相供給用スリット(3)が形成され,中間部の部材(22-2)と最下部の部材(22-3)の組合せにより,直径10.5 mm,幅500 μmの円環状の分散相供給用スリット(3)が形成される。微細溝アレイ基板(12)を液体分配用部品(22)の2本の円環状スリット(3,4)および中央の排出口と位置合わせをし,配置したものを装置上側から見た際の概念図を
図9(b)に示す。供給された分散相,連続相が円環状スリット流路を流れて,液体分配用装置の上部へと供給される。
図9(c)は,マイクロ流路内で液滴が生成される様子を表した概念図である。
【0074】
微細溝アレイ基板(12)は,実施例1と同様に,SU-8を用いて作製した高さ100 μmの鋳型からPDMSにパターンを転写することで作製した。液体分配用部品(22)の3つの部材は,ステンレス素材(SUS304)を機械加工することで作製した。液体分配用装置に連続相,分散相を供給する際に,液体分配用装置の各部材間の接触面からの液漏れを防ぐために,PTFE製のバックアップリングを使用した。
【0075】
導入試料には,実施例1と同じものを用いた。また,液体分配用装置への送液,マイクロ流路内での液滴生成の様子の観察には,実施例1と同じ装置を用いた。
【0076】
連続相流量(Q
c)を10 mL/h,分散相流量(Q
d)を5 mL/hに設定した際の,マイクロ流路内でのW/O液滴生成の様子を
図25(a)に示す。マイクロ流路と分散相供給用スリットの結合箇所においてW/O液滴が生成され,中央の排出口に流れ込む様子が観察された(
図25(b))。生成された液滴の平均径は109 μm,変動係数(CV値)は5.5%であった(
図25(c))。
本発明によれば、液体分配用流路と各液滴生成用流路を接続するために、各液滴生成用流路に対応する個別の貫通孔を必要としないマイクロ液滴・気泡生成デバイスを提供し得る。