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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076532
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20230525BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230525BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
F01N13/08 Z
F01N3/24 F
F01N3/24 T
F02B67/00 F
F02B67/00 K
F02B67/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046411
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2021174617の分割
【原出願日】2019-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内堀 正崇
(57)【要約】
【課題】熱膨張による部品等の破損を回避しつつ、コンパクトなエンジンを提供する。
【解決手段】エンジンは、排気マニホールドと、過給機と、排気ガス浄化装置と、過給機と排気ガス浄化装置とを接続する接続管と、を備える。接続管は、過給機のタービンを通過した排気マニホールドからの排気ガスを、排気ガス浄化装置に導く。接続管は、上流部を有する。上流部は、一端が直線部と接続され、他端が過給機と接続されて曲がった形状を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気マニホールドと、
過給機と、
排気ガス浄化装置と、
前記過給機と前記排気ガス浄化装置とを接続する接続管と、を備え、前記接続管が、前記過給機のタービンを通過した前記排気マニホールドからの排気ガスを、前記排気ガス浄化装置に導くエンジンであって、
前記接続管は、上流部を有し、
前記上流部は、一端が直線部と接続され、他端が前記過給機と接続されて曲がった形状を有することを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンであって、
前記直線部は、前記過給機の高さ方向の一方側を通過するように配置されることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンであって、
前記接続管は、一端が前記直線部と接続され、他端が前記排気ガス浄化装置と接続されて曲がった形状を有する下流部をさらに有することを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項1に記載のエンジンであって、
前記上流部の曲げ角度が90度以上であることを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項1に記載のエンジンであって、
前記接続管における前記排気ガス浄化装置との接続部は、上方から見て、前記エンジンの幅方向に沿うように設けられることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機及び排気ガス浄化装置を備えるエンジンに関する。詳細には、過給機と排気ガス浄化装置とを接続する接続管の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気ガス浄化装置がエンジン本体の上方に配置されたエンジンが知られている。特許文献1は、この種のエンジンを開示する。
【0003】
特許文献1のエンジンは、排気ガス浄化装置としてのDPFの排気ガス入口が、過給機の排気ガス出口に近い側に設けられ、過給機とDPFとの間の排気ガス通路を短く形成する構成となっている。DPFは、Diesel Particulate Filterの略称である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-72722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、排気ガスの温度は一般的に高いため、上記特許文献1の構成では、排気ガス通路を構成するDPFの排気ガス入口管及びハウジング支持体のそれぞれにおいて熱膨張が発生し、他の部分との連結部等において破損が生じるおそれがある。
【0006】
一方、DPFの排気ガス入口を過給機の排気ガス出口と異なる側に設ける場合、過給機とDPFとを接続する排気ガス通路部分を長く形成することで、排気ガスによる熱膨張を吸収することができる。しかし、この場合、エンジンのコンパクト化に配慮しつつ、当該排気ガス通路部分を合理的にレイアウトすることが困難である。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、熱膨張による部品等の破損を回避しつつ、コンパクトなエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成のエンジンが提供される。即ち、このエンジンは、排気マニホールドと、過給機と、排気ガス浄化装置と、前記過給機と前記排気ガス浄化装置とを接続する接続管と、を備え、前記接続管が、前記過給機のタービンを通過した前記排気マニホールドからの排気ガスを、前記排気ガス浄化装置に導くエンジンであって、前記接続管は、上流部を有し、前記上流部は、一端が直線部と接続され、他端が前記過給機と接続されて曲がった形状を有する。
【0010】
前記直線部は、前記過給機の高さ方向の一方側を通過するように配置されてもよい。
【0011】
前記接続管は、一端が前記直線部と接続され、他端が前記排気ガス浄化装置と接続されて曲がった形状を有する下流部をさらに有してもよい。
【0012】
前記上流部の曲げ角度が90度以上であってもよい。
【0013】
前記接続管における前記排気ガス浄化装置との接続部は、上方から見て、前記エンジンの幅方向に沿うように設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの構成を示す斜視図。
図2】エンジンの幅方向に沿う向きで見た側面図。
図3】フライホイールハウジング側から見たエンジンの側面図。
図4】エンジンにおける吸気及び排気の流れを示す概念図。
図5】油補給口を示す斜視図。
図6】オイルシール及びシールカバーを示す部分断面図。
図7】クランク軸位相用目盛りを示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン100の構成を示す斜視図である。図2は、エンジン100の幅方向に沿う向きで見た側面図である。図3は、フライホイールハウジング61側から見たエンジン100の側面図である。図4は、エンジン100における吸気及び排気の流れを示す概念図である。図5は、油補給口90を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すエンジン100は、ディーゼルエンジンであって、例えばトラクタ等の農業機械及びスキッドステアローダ等の建設機械等に搭載される。エンジン100は、例えば、4つの気筒を有する直列4気筒エンジンとして構成される。なお、気筒の数は、4つに限定されない。
【0017】
初めに、エンジン100が備えるエンジン本体1の基本的な構成について説明する。なお、以下の説明では、図1に示すエンジン100の上下方向を高さ方向と称する。エンジン100は平面視で細長い略長方形となっており、その長手方向は、クランク軸10が延びる方向と一致している。以下の説明では、エンジン100の長手方向というときは、クランク軸10の軸方向を意味する。また、高さ方向及び長手方向の何れとも直交する方向をエンジン100の幅方向と称する。エンジン100の高さ方向は第1方向に相当し、長手方向は第2方向に相当し、幅方向は第3方向に相当する。
【0018】
エンジン本体1は、図1等に示すように、主として、下から順に配置された、オイルパン11と、シリンダブロック12と、シリンダヘッド13と、ヘッドカバー14と、から構成されている。
【0019】
オイルパン11は、エンジン100の下部(下側の端部)に設けられている。オイルパン11は、上部が開放された容器状に形成されている。オイルパン11の内部には、エンジン100を潤滑するためのエンジンオイルが貯留されている。
【0020】
オイルパン11に貯留されるエンジンオイルは、エンジン本体1に設けられた図略のエンジンオイルポンプにより吸入された後にエンジン本体の各部に供給され、エンジン本体1を潤滑した後、オイルパン11に戻され貯留される。
【0021】
ところで、エンジン100が搭載された車体が使用されずに長期にわたって保管された場合、エンジンオイルが重力によって下部へと移動し、潤滑対象のそれぞれの可動部における油膜の量が不十分になってしまう現象がある。
【0022】
この現象の対策として、エンジン100が長期にわたって稼動していなかった場合、始動前において、相対的に高い位置からエンジンオイルを補給することで、エンジン100の始動時において、エンジン100の各部において十分に潤滑可能な油膜の量を短時間で達成する手法がある。
【0023】
本実施形態のエンジン100においては、エンジンオイルを補給するための油補給口90が複数設けられている。具体的には、図5に示すように、エンジン100の長手方向におけるヘッドカバー14の両側のそれぞれに油補給口90が設けられ、幅方向におけるフライホイールハウジング61の上側の両サイドのそれぞれに油補給口90が設けられている。即ち、本実施形態のエンジン100においては、長手方向における異なる位置、及び幅方向における異なる位置のそれぞれに、合わせて4つの油補給口90が設けられている。
【0024】
これにより、エンジン100が搭載される車体の姿勢及び周囲の障害物の配置位置に応じて、エンジンオイルを補給し易い油補給口90を選択可能となり、エンジン100の利便性を向上することができる。
【0025】
シリンダブロック12は、オイルパン11の上側に取り付けられている。シリンダブロック12の下部には、クランク軸10等を収容するための凹部が形成されている。図1においては省略されているが、シリンダブロック12の上部には、図3及び図4に示すように、複数のシリンダ30が形成されている。4つのシリンダ30は、クランク軸10の軸方向に沿って並べて配置されている。
【0026】
それぞれのシリンダ30には、ピストンが収容されている。シリンダ30の内部のピストンは、上下方向に移動することができる。ピストンは、図略のコンロッドを介して、クランク軸10と連結されている。クランク軸10は、それぞれのシリンダ30においてピストンが往復運動することにより回転する。
【0027】
図2等に示すように、シリンダヘッド13は、シリンダブロック12の上側に取り付けられている。シリンダヘッド13及びシリンダブロック12により、図4に示す燃焼室31がそれぞれのシリンダ30に対応して形成される。
【0028】
ヘッドカバー14は、シリンダヘッド13の上側に設けられている。ヘッドカバー14の内部には、図略の吸気弁及び排気弁を動作させるための図略のプッシュロッド及びロッカーアーム等からなる動弁機構が収容されている。
【0029】
エンジン100の長手方向におけるエンジン本体1の一方側には、冷却ファン6が回転可能に取り付けられている。冷却ファン6は、クランク軸10からの動力が伝達されることにより回転する。冷却ファン6は、回転することによって空気の流れを発生させ、エンジン100の冷却水を冷却するためのラジエータ(図示しない)に空気を通過させるとともに、エンジン100に風を当てる。この結果、エンジン100が冷却される。
【0030】
エンジン100の長手方向において、冷却ファン6と反対側には、フライホイールハウジング61が配置されている。図示しないが、フライホイールハウジング61の内部には、エンジン100のフライホイールが配置されている。
【0031】
続いて、吸気及び排気の流れに着目しながら、本実施形態のエンジン100の構成について、図4等を参照して簡単に説明する。
【0032】
図4に示すように、エンジン100は、吸気部2と、動力発生部3と、排気部4と、を主要な構成として備えている。
【0033】
吸気部2は、外部から空気を吸入する。吸気部2は、吸気管21と、スロットル弁22と、吸気マニホールド23と、過給機24と、を備える。
【0034】
吸気管21は、吸気通路を構成し、外部から吸入された空気を内部に流すことができる。
【0035】
スロットル弁22は、吸気通路の中途部に配置されている。スロットル弁22は、図略の制御装置からの制御指令に従ってその開度を変更することにより、吸気通路の断面積を変化させる。これにより、吸気マニホールド23へ供給する空気量を調整することができる。
【0036】
吸気マニホールド23は、吸気が流れる方向において、吸気管21の下流側端部に接続されている。吸気マニホールド23は、吸気管21を介して供給された空気を、シリンダ30の数に応じて分配し、それぞれのシリンダ30に形成された燃焼室31へ供給する。
【0037】
吸気マニホールド23は、図3に示すように、概ね直方体状に形成されるシリンダヘッド13の横向きの面に取り付けられている。クランク軸10の回転中心と、4つのシリンダ30と、を含む仮想平面P1を図3のように考えたときに、吸気マニホールド23は、当該仮想平面P1よりも一側に配置されている。
【0038】
シリンダヘッド13が有する横向きの面のうち、吸気マニホールド23が取り付けられる側と反対側の面には、後述する排気マニホールド42が取り付けられている。排気マニホールド42は、仮想平面P1を基準として、吸気マニホールド23と反対側に配置されている。以下の説明では、エンジン100の幅方向において、吸気マニホールド23が配置される側を吸気側と呼び、排気マニホールド42が配置される側を排気側と呼ぶことがある。図2には、エンジン100の排気側の側面が描かれている。
【0039】
動力発生部3は、複数(本実施形態においては4つ)のシリンダ30から構成される。動力発生部3は、各シリンダ30に形成された燃焼室31において、燃料を燃焼させることによって、ピストンを往復運動させる動力を発生する。
【0040】
具体的には、各燃焼室31では、吸気マニホールド23から供給された空気が圧縮された後に、図略の燃料供給部から供給された燃料が噴射される。これにより、燃焼室31で燃焼が発生し、ピストンを上下往復運動させることができる。こうして得られた動力は、クランク軸10等を介して、動力下流側の適宜の装置へ伝達される。
【0041】
過給機24は、図4に示すように、タービン25と、シャフト26と、コンプレッサ27と、を備える。コンプレッサ27は、シャフト26を介してタービン25と連結されている。このように、燃焼室31から排出された排気ガスを利用して回転するタービン25の回転に伴って、コンプレッサ27が回転することにより、図略のエアクリーナによって浄化された空気が圧縮され強制的に吸入される。
【0042】
過給機24は、図1等に示すように、排気マニホールド42の上側に配置されている。過給機24は、図2に示す側面(排気側の側面)において、排気マニホールド42と後述のATD43との間に配置されている。また、図3に示すように、エンジン100の長手方向に沿う向きで見たとき、過給機24は、排気マニホールド42よりエンジン100の幅方向外側に位置する。
【0043】
過給機24は、図3に示すように、エンジン100の長手方向に沿う向きで見たとき、少なくとも一部が、ATD43(具体的には後述のDPF装置44)の下側に位置するように配置されている。これにより、エンジン100を幅方向でコンパクトにすることができる。
【0044】
過給機24は、シャフト26の回転軸がエンジン100の長手方向に沿って延びるように配置されている。図2に示すように、過給機24が備えるタービン25は、フライホイールハウジング61に近い側に配置され、コンプレッサ27は、冷却ファン6に近い側に配置されている。
【0045】
図4に示す排気部4は、燃焼室31内で発生した排気ガスを外部に排出する。排気部4は、排気管41と、排気マニホールド42と、ATD(排気ガス浄化装置)43と、を備える。ATDとは、After Treatment Deviceの略称である。
【0046】
排気管41は、排気ガス通路を構成し、その内部には、燃焼室31から排出された排気ガスを流すことができる。排気管41は、第1排気管51と、第2排気管(接続管)52と、第3排気管53と、を備える。第1排気管51、第2排気管52及び第3排気管53は、金属管により構成されている。
【0047】
第1排気管51は、排気マニホールド42と過給機24とを接続し、排気マニホールド42からの排気ガスを過給機24のタービン25へ導く。第2排気管52は、過給機24とATD43とを接続し、過給機24のタービン25を通過した排気ガスをATD43へ導く。第3排気管53は、ATD43を通過した排気ガスを外部へ導く。
【0048】
排気マニホールド42は、排気ガスが流れる方向において、排気管41(即ち第1排気管51)の上流側端部に接続されている。排気マニホールド42は、各燃焼室31で発生した排気ガスをまとめて第1排気管51へ導く。
【0049】
ATD43は、シリンダ30から排出された排気ガスの後処理を行う装置である。ATD43は、図4に示すように、排気ガスの流れにおいて、第2排気管52の出口側に配置されている。ATD43は、排気ガス内に含まれるNOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)等の有害成分及び粒子状物質(Particulate Matter)を除去することによって、排気ガスを浄化する。
【0050】
ATD43は、DPF装置44と、SCR装置45と、を備えている。SCRは、Selective Catalytic Reductionの略称である。DPF装置44とSCR装置45とは、連結管54によって互いに接続される。
【0051】
DPF装置44は、図1等に示すDPFケース44a内に収容されている図略の酸化触媒、フィルタを介して、排気ガスに含まれる一酸化炭素、一酸化窒素、粒子状物質等を除去する。酸化触媒は、白金等で構成され、排気ガスに含まれる未燃燃料、一酸化炭素、一酸化窒素等を酸化(燃焼)するための触媒である。フィルタは、酸化触媒より排気ガスの下流側に配置され、例えばフォールフロー型のフィルタとして構成される。フィルタは、酸化触媒で処理された排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集する。
【0052】
DPFケース44aは、図1及び図2に示すように、細長い略円筒状の中空部材から構成されている。DPFケース44aは、エンジン100の長手方向に延びるように、エンジン本体1の上側に取り付けられている。DPFケース44aは、後述のSCRケース45aよりも、エンジン100の幅方向において、排気側(過給機24及び排気マニホールド42が位置する側)に取り付けられている。
【0053】
図2に示すように、DPFケース44aにおける排気ガスの入口(即ち、排気管41と接続する部分)が、当該DPFケース44aの長手方向における冷却ファン6に近い側の端部に形成されている。
【0054】
このように、DPF装置44の排気ガスの入口と過給機24の排気ガスの出口とは、エンジン100の長手方向において、互いに異なる側に位置する。これにより、DPF装置44と過給機24とを接続する第2排気管52を相対的に長く形成することができる。
【0055】
DPF装置44内の内部においては、排気ガスが、冷却ファン6に近い側からフライホイールハウジング61に近い側に向かって流れる。DPF装置44を通過した排気ガスは、連結管54に流れる。連結管54は、DPF装置44及びSCR装置45と概ね平行に配置された直線状の部分を有している。排気ガスは、連結管54において、フライホイールハウジング61に近い側から冷却ファン6に近い側に向かって流れる。排気ガスは、連結管54において、図略の尿素供給装置から供給された尿素と混合される。その後、排気ガスは連結管54からSCR装置45へ流れる。
【0056】
SCR装置45は、図1等に示すSCRケース45a内に収容されているSCR触媒、スリップ触媒を介して、排気ガスに含まれるNOxを除去する。SCR触媒は、アンモニアを吸着するセラミック等の素材から構成される。排気ガスに含まれるNOxは、アンモニアを吸着したSCR触媒に触れることで還元され、窒素と水に変化する。スリップ触媒は、アンモニアが外部へ放出されることを防止するために用いられる。スリップ触媒は、アンモニアを酸化させる白金等の触媒であり、アンモニアを酸化させて窒素と水に変化させる。
【0057】
SCRケース45aは、図1に示すように、DPFケース44aと同様に、細長い略円筒状の中空状部材から構成されている。SCRケース45aは、エンジン100の長手方向に延びるように、エンジン本体1の上側に取り付けられている。SCRケース45aは、DPFケース44aよりも、エンジン100の幅方向において、吸気側に取り付けられている。即ち、DPFケース44aとSCRケース45aは、エンジン100の幅方向に並べて取り付けられている。
【0058】
図1に示すように、SCRケース45aにおける排気ガスの入口は、当該SCRケース45aの長手方向における冷却ファン6に近い側の端部に形成されている。SCRケース45aにおける排気ガスの出口は、当該SCRケース45aの長手方向におけるフライホイールハウジング61に近い側の端部に形成されている。
【0059】
SCR装置45の内部においては、排気ガスが、冷却ファン6に近い側からフライホイールハウジング61に近い側に向かって流れる。SCR装置45を通過した排気ガスは、SCRケース45aの排気ガスの出口に接続された第3排気管53を介して外部へ排出される。
【0060】
DPFケース44aとSCRケース45aは、エンジン100の幅方向に並べて配置されている。DPFケース44a及びSCRケース45aの何れも、ヘッドカバー14の上側に配置された支持台8の上に取り付けられている。支持台8は、支持ブラケット9を介して、エンジン本体1に取り付けられている。
【0061】
このように、ATD43(DPF装置44及びSCR装置45)は、その長手方向がエンジン100の長手方向と平行になる姿勢(即ち、クランク軸10と平行な姿勢)で、エンジン本体1の上側に取り付けられる。上記のように、細長いATD43をエンジン100の長手方向に沿って配置することで、仮にエンジン100の仕様によってATD43の長さが変化しても、エンジン100の幅方向を短くすることができる。従って、本実施形態のエンジン100は、幅方向におけるコンパクト化を実現できており、例えば、細いボンネットの内部にエンジンを収容することが必要な小型トラクタ等へ適用することが好適である。
【0062】
続いて、過給機24とATD43のDPF装置44とを接続する第2排気管52の構成及び配置について、図1から図3を参照して説明する。
【0063】
第2排気管52は、図1及び図2に示すように、過給機24の下側を迂回するように形成される。第2排気管52は、上流部52aと、中間部(直線部)52bと、下流部52cと、を備える。
【0064】
上流部52aは、図2に示すように、エンジン100の幅方向に沿う向きで見たとき、横向きU字状の曲がった形状となっている。上流部52aの長手方向一側の端部は過給機24のタービン25側に接続され、長手方向他側の端部は中間部52bに接続されている。上流部52aは、過給機24のタービン25を通過した排気ガスを中間部52bへ導く。
【0065】
上流部52aは、エンジン100の長手方向において、過給機24よりもフライホイールハウジング61に近い側に配置されている。上流部52aは、図3に示すように、エンジン100の長手方向に沿う向きで見たとき、エンジン100の高さ方向成分を含む方向に延びるように配置されている。
【0066】
中間部52bは、上流部52aと下流部52cとを接続する部分であって、上流部52aから導かれた排気ガスを下流部52cへ導く。中間部52bは、直線状の配管から構成されている。中間部52bは、エンジン100の長手方向に延びるように配置されている。中間部52bの排気ガスは、フライホイールハウジング61に近い側から冷却ファン6に近い側に流れる。
【0067】
中間部52bは、図1及び図2に示すように、シリンダブロック12の上端部の近傍であって、過給機24の下方に配置されている。中間部52bは、エンジン100の幅方向に沿う向きで見たとき、図2に示すように過給機24の下方近傍に配置されている。即ち、過給機24と中間部52bは、上下方向で互いに隣接して配置されている。
【0068】
中間部52bは、図3に示すように、エンジン100の長手方向に沿う向きで見たとき、過給機24より内側に配置されている。第3方向での過給機24の両端のうち、シリンダ30から遠い側の端部24aに着目すると、中間部52bは、当該端部24aよりもシリンダ30に近い側に配置されている。従って、エンジン100の高さ方向に沿って上から見たとき(即ち、エンジン100の平面視で)、中間部52bは、過給機24によって完全に隠れた部分を有する。
【0069】
中間部52bは、図1及び図3に示すように、過給機24より下方に位置する排気マニホールド42の側方に配置されている。中間部52bは、エンジン100の幅方向において、排気マニホールド42より外側に配置されている。
【0070】
中間部52bは、図3に示すように、エンジン100の幅方向において、排気マニホールド42と互いに隣接して配置されている。エンジン100の幅方向に沿う向きでエンジン100の排気側の側面を見たとき、図2に示すように、中間部52bは排気マニホールド42の一部と重なっている。即ち、排気マニホールド42の一部(下部)が、中間部52bによって隠れている。
【0071】
具体的には、中間部52bの下端は、排気マニホールド42の下端より下側に位置する。中間部52bの上端は、排気マニホールド42の上端より下側に位置する。即ち、過給機24及び排気マニホールド42は、中間部52bの下端より上側に配置されている。
【0072】
下流部52cは、図2に示すように、エンジン100の幅方向に沿う向きで見たとき、略L字状に曲がった形状となっている。下流部52cの長手方向一側の端部は中間部52bに接続され、他側の端部はDPF装置44の排気ガスの入口に接続されている。下流部52cは、中間部52bを通過した排気ガスをDPF装置44へ導く。
【0073】
下流部52cは、エンジン100の長手方向において、過給機24よりも冷却ファン6に近い側に配置されている。下流部52cは、下流部52cは、図2に示すように、エンジン100の高さ方向成分を含む方向に延びるように配置されている部分を有する。
【0074】
上記のような構成とすることで、排気マニホールド42の近傍において、過給機24及び第2排気管52をコンパクトに配置することができ、エンジン100の幅方向の長さをコンパクトにすることができる。
【0075】
また、図1及び図3に示すように、第2排気管52をシリンダブロック12の上端部近傍に配置することで、過給機24及び第2排気管52の下方において、他の機器類を配置可能なスペースが広く形成される。この他の機器類は、例えば、エアコンプレッサー等の補機類を例として挙げることができる。これにより、エンジン100の幅方向の長さがほぼ変わらない前提の下においても、必要に応じて様々な補機類をエンジン100のエンジン本体1に取り付けることができるので、エンジン100の周辺の部品レイアウトの自由度を高めることができる。
【0076】
続いて、本実施形態のエンジン100におけるオイルシール63の保護構成について図6及び図7を参照して説明する。図6は、オイルシール63及びシールカバー64を示す部分断面図である。図7は、クランク軸10の位相の識別用目盛りを示す部分斜視図である。
【0077】
図6に示すように、本実施形態のエンジン100においては、クランク軸10の外周面と、シリンダブロック12に取り付けられるクランクケース62と、の間の隙間を埋めるためのオイルシール63が設けられている。オイルシール63は、例えば、樹脂(ゴム)から構成されている。
【0078】
このオイルシール63を設けることで、クランクケース62内のエンジンオイルがクランク軸10の回転によって外部に飛散することを防止できる。
【0079】
本実施形態のエンジン100には、上記オイルシール63を保護するためのシールカバー64が設けられている。このシールカバー64は、図2及び図6に示すように、クランク軸10の軸方向において、オイルシール63を挟んでシリンダブロック12とは反対側に設けられている。シールカバー64は、クランクケース62の近傍に配置されている。
【0080】
これにより、外部からのゴミや、エンジン100の塗装時における塗料等がオイルシール63に付着することを回避できるので、オイルシール63の劣化を抑制でき、その寿命を長く維持することができる。
【0081】
シールカバー64は、図6に示すように、クランク軸10からの動力を冷却ファン6に伝達するためのプーリ65とともに、ボルト等を介して、クランク軸10に固定されている。即ち、シールカバー64は、クランク軸10の回転に伴って回転する。
【0082】
シールカバー64の外周面には、図7に示すように、クランク軸10の位相を外部から確認するための目盛りである回転側目盛り64aが形成されている。これにより、クランクケース62に形成された固定側目盛り62aに近い位置に、回転側目盛り64aを設けることができ、固定側目盛り62aと回転側目盛り64aとの位置ズレを確認し易くなり、視認性を向上することができる。この結果、エンジン100の組立て及びメンテナンス時において、クランク軸10の位相を容易に確認でき、作業性を向上することができる。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態のエンジン100は、エンジン本体1と、クランク軸10と、冷却ファン6と、排気マニホールド42と、過給機24と、ATD43と、第2排気管52と、を備える。エンジン100の高さ方向を第1方向としたとき、クランク軸10は、第1方向と垂直な第2方向に延びる。冷却ファン6は、第2方向におけるエンジン本体1の一方側に配置される。過給機24は、排気マニホールド42からの排気ガスにより駆動される。ATD43は、排気マニホールド42からの排気ガスを浄化する。第2排気管52は、過給機24とATD43とを接続する。ATD43は、長手方向が第2方向と平行となる姿勢で配置される。第2排気管52は、ATD43の第2方向における冷却ファン6側と連結している。第2排気管52は、排気マニホールド42の側方であって、過給機24の下方を通過するように配置されている。
【0084】
これにより、第2排気管52を過給機24より外側に張り出さないように配置することができ、エンジン100のコンパクト化を図りながら、より合理的な第2排気管52のレイアウトを得ることができる。また、第2排気管52を相対的に長く形成することができるので、高温の排気ガスによる熱膨張を吸収することができる。
【0085】
また、本実施形態のエンジン100において、第2排気管52は、第2方向と平行に延びる中間部52bを有する。排気マニホールド42及び過給機24は、中間部52bの下端より上側に配置されている。
【0086】
これにより、外形が相対的に大きい過給機24を上側に配置することで、その下方に、第2排気管52及び他の機器類を配置するスペースを容易に確保することができる。
【0087】
また、本実施形態のエンジン100において、第1方向及び第2方向の何れとも垂直な方向を第3方向としたとき、過給機24は、第3方向におけるエンジン本体1の一方側に配置される。第3方向に沿う向きで見たとき、中間部52bは、少なくとも一部が排気マニホールド42と重なるように、かつ、過給機24と上下に隣接して配置される。第2方向に沿う向きで見たとき、中間部52bは、排気マニホールド42と第3方向で互いに隣接して配置されている。
【0088】
このように、第2排気管52、過給機24及び排気マニホールド42を、第1方向におけるエンジン100の中間部のまとまったスペースに配置することで、エンジン100の第3方向での長さをコンパクトに収めることができる。また、第2排気管52の下方に他の機器類を配置するスペースを広く確保することができる。
【0089】
また、本実施形態のエンジン100において、過給機24は、第3方向におけるエンジン本体1の一方側に配置される。第2排気管52は、過給機24の、第3方向におけるエンジン本体1から遠い側の端部24aよりも、第3方向においてエンジン本体1に近い側に配置されている。
【0090】
これにより、第3方向において、第2排気管52を過給機24より内側に収めるように配置することができる。従って、第3方向におけるエンジン100のコンパクト化を図ることができる。
【0091】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0092】
第2排気管52の中間部52bが、第2方向と平行でなく、第2方向の成分を含む斜め方向に延びるように配置されても良い。
【0093】
ATD43は、DPF装置44のみ備えても良い。この場合、第2排気管52の中間部52bが過給機24の上方を通過するように、第2排気管52を配置しても良い。
【0094】
エンジン100の幅方向に沿う向きでエンジン100の排気側の側面を見たとき、排気マニホールド42の全部が中間部52bによって隠れるように配置しても良い。言い換えれば、中間部52bの上端が、排気マニホールド42の上端より上側に位置しても良い。
【0095】
平面視で見たときに、エンジン100の略長方形の長手方向は、クランク軸10が延びる方向と垂直であっても良い。また、平面視で見たときに、エンジン100が略正方形であっても良い。
【符号の説明】
【0096】
6 冷却ファン
10 クランク軸
24 過給機
42 排気マニホールド
43 ATD(排気ガス浄化装置)
52 第2排気管(接続管)
100 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7