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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076712
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】放射標識生体分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20230525BHJP
   C07K 5/083 20060101ALI20230525BHJP
   C07K 5/062 20060101ALI20230525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230525BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
C07K16/30
C07K5/083 ZNA
C07K5/062
A61P35/00
A61K51/08 100
A61K51/10 100
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023062556
(22)【出願日】2023-04-07
(62)【分割の表示】P 2019553023の分割
【原出願日】2018-03-29
(31)【優先権主張番号】62/478,754
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/500,692
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/529,532
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/583,134
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ロッド ザルツキー
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン ヴァイッドヤナタン
(57)【要約】
【課題】放射標識生体分子と、放射性ハロゲン原子で生体分子を放射標識するための方法であって、インビボにおける脱ハロゲン化による放射性ハロゲンの喪失を最小にし、生体分子の生物学的活性を保存し、癌細胞における放射活性の保持を最大にし、インビボ投与後の正常組織における放射活性の保持を最小にする方法を提供すること。
【解決手段】いくつかのこのような放射標識生体分子は、放射性ハロゲンに代えてまたはそれに加えて、放射性金属原子を含む。生体分子は特定の細胞型に対する親和性を有し、特定の細胞、例えば癌細胞に特異的に結合し得る。関連生体分子としては、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、ペプチド、他のタンパク質、ナノ粒子およびアプタマーが挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生体分子を放射標識するために有用な化合物およびその前駆体と、放射標識生体分子とに関する。化合物は、細胞内に内在化された生体分子からの放射活性を有効に保持して、このような化合物を疾患、特に癌の診断および処置に有用にし得る。
【背景技術】
【0002】
背景
放射性ヨウ素化は、生体分子を放射標識する最も簡便な方法の1つである。ヨウ素のいくつかの放射性同位体は、癌のイメージングおよび標的放射線療法に利用可能である。ヨウ素の放射性同位体はアルカリ性溶液として供給され、ヨウ素は-1(I;ヨウ化物)の酸化状態でこれらに存在する。標準的な生体分子放射性ヨウ素化方法は、生体分子、例えば抗体、他のタンパク質およびペプチド中に存在するチロシンアミノ酸への求電子置換のために、+1酸化状態へのヨウ素の酸化を必要とする。このように放射性ヨウ素化されたモノクローナル抗体(mAb)およびペプチドの課題としては、内在化後の細胞内におけるタンパク質分解に対するインビボ不安定性、脱ヨウ素化、および両プロセスの結果として腫瘍細胞からの放射活性の喪失が挙げられる。(受容体および特定の抗原への結合の結果として起こり得る)内在化後、細胞内において、放射性ヨウ素化抗体およびペプチドは放射性ヨードチロシンにタンパク質分解的に分解され、膜アミノ酸輸送体により細胞から効率的に輸送されることが広く認識されている。放出された放射性ヨードチロシンは、組織中に見られる脱ヨウ素酵素により脱ヨウ素化され、遊離放射性ヨウ素が再分布し、ヨウ化ナトリウム共輸送体発現を伴う器官、特に甲状腺、胃および唾液腺に蓄積する。したがって、腫瘍に保持される放射標識の量は減少し、同時に、正常組織における放射活性の取り込みが増加する。
【0003】
抗体の欠点の1つは、全身投与後の高いバックグラウンドレベルおよびその結果として低い腫瘍対バックグラウンド比をもたらす長い血中半減期である。また、従来の抗体は固形腫瘍への拡散がやや遅く、それにより、それらが腫瘍塊全体の受容体/抗原に均一に到達して結合することが妨げられる。
【0004】
いくつかの化合物が当技術分野で特定されているが、それらは不安定であり、商業的量による生産が困難である。したがって、標的放射線療法およびイメージング用途のために、生体分子を放射標識するために使用され得る改善された補欠分子化合物が必要である。
【0005】
また、血液脳関門により課される送達制限により、抗体のサイズは脳内の腫瘍にとって特に問題となるので、腫瘍細胞、特に脳転移への抗体の取り込みは低い。本発明は、正常組織、特に腎臓により取り込まれる放射標識の量を減少させながら、腫瘍細胞により取り込まれて保持されることができる組成物により、癌(脳に転移した癌を含む)の処置に関連する問題に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、インビボにおける脱ハロゲン化による放射性ハロゲンの喪失を最小にし、生体分子の生物学的活性を保存し、癌細胞などの疾患細胞における保持を最大にし、インビボ投与後の正常組織における放射活性の保持を最小にする方法で、放射性ハロゲン原子で生体分子(高分子とも称される)を放射標識するための方法、化合物、および組成物に関する。生体分子は特定の細胞型に対する親和性を有する。すなわち、生体分子は、特定の細胞、例えば癌細胞に特異的に結合し得る。本発明の組成物は、放射標識生体分子を含む。このような生体分子としては、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、ペプチド、他のタンパク質、ナノ粒子およびアプタマーが挙げられる。本発明の目的のための生体分子のこのような例としては、ダイアボディ、scFv断片、DARPin、フィブロネクチンIII型ベースの足場、アフィボディ、VHH分子(単一ドメイン抗体断片(sdAb)およびナノボディとしても公知)、核酸またはタンパク質アプタマーおよびナノ粒子が挙げられる。加えて、抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびF(ab’)断片を含む50kDa超のタンパク質などのより大きな分子は、本発明の実施において使用され得る。加えて、50nm未満のサイズを有するナノ粒子は、本発明の実施において使用され得る。
【0007】
本発明の方法は、放射標識に有効な補欠分子化合物を利用する。このようなものとして、本開示は、このような放射標識化合物(本明細書では「補欠分子化合物」と称される)、およびこのような補欠分子化合物を得るための前駆体(本明細書では「放射性ハロゲン前駆体」と称される)を提供する。本開示はさらに、このような補欠分子化合物/ラジカルおよび1つまたはそれを超える高分子を含む放射標識高分子(例えば、生体分子)を提供する。いくつかのこのような実施形態では、これらの放射標識高分子は、標的放射線治療剤である。本発明の補欠分子化合物および放射標識化合物は、例えば、疾患の診断および標的放射線療法に有用である。
【0008】
本開示の一態様では、式Iにより表される補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体の形態の化合物:
【化1】

(式中、
Xは、CHまたはNであり;
およびLは、結合、置換または非置換アルキル鎖、置換または非置換アルケニル鎖、置換または非置換アルキニル鎖およびポリエチレングリコール(PEG)鎖から独立して選択され;
MMCMは、高分子コンジュゲート部分であり;
は、置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖、または少なくとも3個の酸素原子を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖であり、ここで、Lは、刷子縁酵素切断可能ペプチドを必要に応じて含有し;
CGは、グアニジン;POH;SOH;1つまたはそれを超える荷電D-またはL-アミノ酸、例えばアルギニン、ホスホノ/スルホフェニルアラニン、グルタメート、アスパルタートおよびリジン;親水性炭水化物部分;ポリエチレングリコール(PEG)鎖;ならびにZ-グアニジン(本明細書では「グアニジノ-Z」とも称される)から選択され;
Zは、(CHであり;
nは、1超であり;
mは、0~4(X=CHの場合)または0~3(X=Nの場合)であり;ならびに
Yは、(上記放射性ハロゲン前駆体中の)アルキル金属部分または(上記補欠分子化合物中の)放射性ハロゲンであり、ここで、上記放射性ハロゲンは、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131I、211Atからなる群より選択される放射性ハロゲンであるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0009】
特定の好ましい実施形態では、m=1である。
【0010】
いくつかの実施形態では、Yは、トリメチルスタンニル(SnMe)、トリ-n-ブチルスタンニル(SnBu)およびトリメチルシリル(SiMe)からなる群より選択されるアルキル金属部分(化合物が放射性ハロゲン前駆体である場合)である。他の実施形態では、Yは、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125Iおよび211Atからなる群より選択される放射性ハロゲン(化合物が補欠分子化合物である場合)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、MMCMは、活性エステルまたは(Gly)(mは1であるかまたはそれを超える)。いくつかの実施形態では、MMCMは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、テトラフルオロフェノール(TFP)エステル、イソチオシアネート基またはマレイミド基からなる群より選択される。1つの例示的なMMCMはGly-Gly-Glyである。
【0012】
いくつかの実施形態では、Lは(CH(p=1~6またはp=2~6)である。いくつかの実施形態では、必要に応じた刷子縁酵素切断可能ペプチドは、L内に存在する場合、Gly-Lys、Gly-TyrおよびGly-Phe-Lysからなる群より選択される。
【0013】
特定の実施形態では、化合物(補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体)は、式1aの以下の構造:
【化2】

により表される。
【0014】
特定の実施形態では、化合物は、N-スクシンイミジル3-グアニジノメチル-5-[131I]ヨードベンゾエート(iso-[131I]SGMIB)またはN-スクシンイミジル3-[211At]アスタト-5-グアニジノメチルベンゾエート(iso-[211At]SAGMB)を含む。
【0015】
本発明の別の態様では、本開示は、式2により表される補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体の形態の化合物:
【化3】

(式中、
MCは、多座金属キレート部分であり;
Cmは、チオ尿素、アミドまたはチオエーテルであり;
は、結合、置換または非置換アルキル鎖、置換または非置換アルケニル鎖、一方または両方の末端にNH、COまたはSを必要に応じて有する置換または非置換アルキニル鎖およびポリエチレングリコール(PEG)鎖から選択され;ならびに
Tは、本明細書に開示される(例えば、式1、例えば式1Aの)化合物(補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体)である)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、MCは大環状構造である。特定の例示的な補欠分子化合物では、MCは、DOTA、TETA、NOTPおよびNOTAから選択される。いくつかの実施形態では、MCは非環式多座配位子である。特定の例示的な補欠分子化合物では、MCは、EDTA、EDPTPおよびDTPAから選択される。
【0017】
特定の実施形態では、Yはアルキル金属部分である(化合物が放射性ハロゲン前駆体である場合)。放射性ハロゲン前駆体中のアルキル金属部分は、例えば、トリメチルスタンニル(SnMe)、トリ-n-ブチルスタンニル(SnBu)およびトリメチルシリル(SiMe)からなる群より選択される。このような前駆体は、本明細書に記載されるように、本明細書に開示される補欠分子化合物および放射標識生体分子の生産において有用であり得る。他の実施形態では、Yは、放射性ハロゲン(化合物が補欠分子化合物である場合)、例えば75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iまたは211Atである。
【0018】
本開示はさらに、生体分子に付着した本明細書に開示される補欠分子化合物を含む放射標識生体分子を提供し、生体分子に付着した本明細書に開示される放射性ハロゲン前駆体を含む中間体(これは、反応して放射標識生体分子を形成し得る)も提供する。
【0019】
生体分子は様々なものであり得る。特定の実施形態では、生体分子は、抗体、抗体断片、VHH分子、アプタマーまたはそれらの変形物からなる群より選択される。特定の実施形態では、生体分子はVHHである。特定の実施形態では、VHHはHER2を標的にする。いくつかの実施形態では、VHHは、配列番号1~5に記載されている配列から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
本開示はさらに、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と併せて、本明細書に開示される放射標識生体分子を含む医薬組成物を提供する。本開示のさらなる態様では、癌を処置するための方法であって、それを必要とする個体に、有効量の本明細書に開示される放射標識生体分子および/または有効量の本明細書に開示される医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0021】
本開示の実施形態の理解を提供するために、添付図面を参照するが、これは必ずしも正確な比率ではない。図面は例示にすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、(A)[211At]SAGMB-5F7 VHH、(B)[131I]SGMIB-5F7 VHH、(C)iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHおよび(D)iso-[131I]SGMIB-5F7 VHHの非還元SDS-PAGE/蛍光イメージングプロファイルを提供し、左のレーンの分子量標準は比較用である;
【0023】
図2図2は、(A)[131I]SGMIB、(B)iso-[131I]SGMIB、(C)[211At]SAGMBおよび(D)iso-[211At]SAGMBを使用して標識した5F7 VHHを用いて、HER2発現BT474M1乳癌腫細胞で実施した飽和結合アッセイの結果を提供する;
【0024】
図3図3は、インビトロにおけるBT474M1細胞への[211At]SAGMIB-5F7 VHHおよびiso-[211At]SAGMB-5F7 VHHの内在化のプロットを提供し、図3Aは、細胞結合(内在化+表面結合)放射活性の合計を示し、図3Bは、内在化放射活性を示す;
【0025】
図4図4は、インビトロにおけるBT474M1細胞への[131I]SGMIB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-5F7 VHHの内在化のプロットを提供し、図4Aは、細胞結合(内在化+表面結合)放射活性の合計を示し、図4Bは、内在化放射活性を示す;
【0026】
図5図5は、腫瘍における取り込みと比較した、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスにおける[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[211At]SAGMB-5F7 VHHの生体内分布を示し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-57/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;
【0027】
図6図6は、腫瘍における取り込みと比較した、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスにおける[131I]SGMIB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-5F7 VHHの生体内分布を示し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-57/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;
【0028】
図7図7は、腎臓における取り込みと比較した、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスにおける[211At]SAGMB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7 VHHの生体内分布を示し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-57/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;
【0029】
図8図8は、腎臓における取り込みと比較した、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスにおける[131I]SGMIB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-5F7 VHHの生体内分布を示し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-57/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;
【0030】
図9図9は、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスの甲状腺(図9A)および胃(図9B)における[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[211At]SAGMB-5F7 VHHの取り込みに関するデータを提供し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-57/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;
【0031】
図10図10は、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスの甲状腺(図10A)および胃(図10B)における[131I]SGMIB-5F7およびiso-[131I]SGMIB-5F7の取り込みに関するデータを提供し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-57/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;
【0032】
図11図11は、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスにおける[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[211At]SAGMB-5F7 VHHの生体内分布から得られた腫瘍対組織比を示し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-5F7/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;ならびに
【0033】
図12図12は、BT474M1異種移植片を有するSCIDマウスにおける[131I]SGMIB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-5F7の生体内分布から得られた腫瘍対組織比を示し、データは、[131I]SGMIB-5F7/[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-5F7/iso-[211At]SAGMB-5F7 VHHタンデムを投与した後に対標識研究から得られた;ならびに
【0034】
図13図13は、皮下B474M1ヒト乳癌腫異種移植片を有するSCIDマウスにおける[211At]SAGMB-5F7 VHHおよび[131I]SGMIB-5F7 VHHの対標識生体内分布を提供する表である;ならびに
【0035】
図14図14は、皮下B474M1ヒト乳癌腫異種移植片を有するSCIDマウスにおけるiso-[211At]SAGMB-5F7 VHHおよびiso-[131I]SGMIB-5F7 VHHの対標識生体内分布を提供する表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
次に、例示的な実施形態を参照して、本開示をより詳細に以下で説明する。これらの例示的な実施形態は、本開示が十分かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように記載されている。実際、本開示は多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用法的要件を満たすように提供されている。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0037】
癌を含む疾患を診断および処置するための化合物、組成物および方法が提供される。一般に、本開示の化合物は、(標的放射線治療剤を提供する)標的化部分として機能する高分子(例えば、生体分子)に付着した放射標識補欠分子化合物/ラジカルまたは放射標識補欠分子団を含む。このようなものとして、本開示は、放射標識補欠分子化合物およびラジカルそれ自体、ならびにそれに付着したこのような放射標識補欠分子化合物/ラジカルを有する高分子(本明細書のいくつかの実施形態では「放射標識生体分子」または「標的放射性治療剤」と称される)を包含する。
【0038】
本開示はまた、補欠分子団および/または標的放射線治療剤が生産され得るアルキル金属部分(本明細書では「放射性ハロゲン前駆体」と称される)を含有するこのような化合物およびラジカル(単独および/または生体分子との組み合わせ)を包含する。有利には、いくつかの実施形態では、このような前駆体の調製は、より大きな放射性ハロゲン(例えば限定されないが、18Fよりも大きな75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atを含む)を含む補欠分子化合物および標的放射線治療剤の生産を可能にする。
【0039】
標識補欠分子化合物/ラジカルまたは放射性ハロゲン前駆体(単独または高分子に付着)は、一般に、放射性ハロゲンまたはその前駆体に加えて、荷電基(CG)および高分子コンジュゲート部分(MMCM)を含む。以下により詳細に記載されるように、これらの各成分は、1つまたはそれを超える切断可能(または切断不能)リンカーに結合され得る。いくつかの実施形態では、標的放射線治療剤は、生体分子(標的化部分)、放射標識補欠分子団またはテンプレートおよび必要に応じてキレート剤(大環状または非環状のいずれか)を含む。
【0040】
本明細書に記載される放射標識化合物、特に放射標識生体分子および使用方法は、標的細胞における放射活性のより大きな取り込み、内在化後の標的細胞における放射活性のより高い保持、および正常細胞における放射活性のより少ない取り込みをもたらす;例えば、放射活性の甲状腺および腎臓取り込みがより少ない。本発明の標的放射線療法は、放射性核種を悪性細胞集団に選択的に送達することができる。標的放射線療法の利点は、目的の臨床適用の制約にベストマッチする特性を有する放射性核種を選択し得ることである。一例として、中枢神経系(CNS)腫瘍の場合、放射線は、有利には、正常CNS組織の照射を最小にする組織範囲で選択されるであろう。
【0041】
本明細書で提供される化合物(例えば、放射性ハロゲン前駆体、補欠分子化合物、中間体および標的放射線治療剤)は、細胞内タンパク質分解後に、リソソーム膜または細胞膜を通過し得ないエキソサイトーシス耐性の荷電異化産物を生成する標識技術を使用して、標的疾患細胞、例えば癌細胞における放射性核種、特に(特定の実施形態では)放射性ハロゲンの保持を増強する方法により調製される。標識を有する分子の一部がリソソーム分解に対して不活性であり、タンパク質分解後に細胞内に捕捉される場合、本発明の化合物は荷電異化産物を含む。
【0042】
本開示により包含される特定の補欠分子化合物およびその前駆体(すなわち、放射性ハロゲン前駆体)は、式1のもの
【化4】

式1:クラスI型化合物の一般構造
ならびにその誘導体および変異体を含む。
【0043】
本発明は、それに付着したホモ(X=CH)またはヘテロ(X=N)芳香環:補欠分子化合物/ラジカルまたは前駆体を高分子、放射性ハロゲンまたは放射性ハロゲン前駆体(Y)にカップリングするための高分子コンジュゲート部分(MMCM);および1個またはそれを超える荷電置換基(CG)を含む式1の一般構造の補欠分子化合物/ラジカルおよびその前駆体(「クラスI型化合物」と称される)を含む。これらの各成分は、リンカー(L、L、L)を介して芳香環に付着され得るか、または芳香環に直接結合され得る(すなわち、Lおよび/またはLおよび/またはLが結合である場合)。式1に示されているこれらの各成分は、以下にさらに詳細に記載される。
【0044】
いくつかの実施形態では、Yは放射性ハロゲンである(式1が放射標識補欠分子化合物/ラジカルを表す場合)。このような放射性ハロゲンは、18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atから選択され得る。有利には、いくつかの実施形態では、放射性ハロゲンは18Fよりも大きい。特定の実施形態では、放射性ハロゲンYは、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atから選択される。特定の実施形態では、放射性ハロゲンYは、75Br、76Br、77Brおよび211Atから選択される。特定の一実施形態では、放射性ハロゲンYは211Atである。
【0045】
他の実施形態では、Yはアルキル金属部分である(式1が放射性ハロゲン前駆体/ラジカルを表す場合)。例示的なアルキル金属部分としては、限定されないが、トリメチルスタンニル(SnMe)、トリ-n-ブチルスタンニル(SnBu)およびトリメチルシリル(SiMe)を含むトリアルキル金属前駆体が挙げられる。
【0046】
Yは芳香環に直接結合され得るか(L=直接結合)、またはリンカー(L)を介して芳香環に結合され得る。Lは、例えば、スペーサー、例えば置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖または短いポリエチレングリコール(PEG)鎖(1~10個のエチレングリコール単位)であり得る。
【0047】
荷電基(CG)は、典型的には、本明細書に開示される補欠分子団に存在する(すなわち、mは1であるかまたはそれを超える)。典型的には、mは1である;しかしながら、m=2、m=3および(X=CHである場合)mが4であり得るように、1個を超えるCGが環に付着され得る。1個を超えるCGが環に付着される場合、このような各CG(および対応するL)は、同じものまたは異なるものであり得る。特定の実施形態では、以下で言及されるように(式2に示されているように)、別の部分が式1の環に付着され得、このようなさらなる部分が荷電性である場合、mは0であり得る(すなわち、いくつかの実施形態では、さらなる部分は、「荷電基」として有効に機能し得る)。
【0048】
荷電基は、典型的には、内部細胞環境の生理学的条件下で荷電性の基である。いくつかの実施形態では、荷電基(CG)は、グアニジン、POH基またはSOH基を含む。いくつかの実施形態では、CGは、1個を超える炭素を含有するグアニジノアルキル基である。いくつかの実施形態では、CGは、グアニジノ親水性基(例えば、アミノまたはヒドロキシル含有基)および/またはアルキルオキシカルボニルグアニジン基である。他の実施形態では、CGは、1つまたはそれを超える荷電D-アミノ酸、例えばアルギニン、グルタメート、アスパルタート、リジンおよび/またはホスホノ/スルホフェニルアラニンを含む。なおさらなる実施形態では、CGは親水性炭水化物部分を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、癌細胞における細胞内捕捉を増加させるために、1個、2個または3個のCG部分(および必要に応じて、対応するリンカー基L)を含み得る。
【0049】
CGは芳香環に直接結合され得るか(L=直接結合)、またはリンカー(L)を介して芳香環に結合され得る。Lは、例えば、スペーサー、例えば置換もしくは非置換アルキル鎖(例えば、単純な置換もしくは非置換アルキル鎖、例えばメチレン)、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖、少なくとも3個の酸素のPEG鎖、または刷子縁酵素切断可能ペプチド、例えばGly-Lys、Gly-TyrもしくはGly-Phe-Lysを含有する前述のいずれかであり得る。特定の実施形態では、CGがグアニジンであり、Lが非置換アルキル鎖である場合、非置換アルキル鎖は2個またはそれを超える炭素原子を含むことに留意する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、代謝可能スペーサーまたは切断可能リンカーL(例えば、刷子縁酵素切断可能リンカー)は、CGと芳香環との間に位置する。これらの製剤により、CG部分が腎臓で切断されて、電荷が排除され、腎臓の腎尿細管細胞から(今や中性であるかまたはあまり荷電していない)放射性種が解放され、その後、それらが迅速に尿中に排泄されるので、腎臓における放射活性の取り込みおよび保持の増加が回避され得る。刷子縁酵素切断可能リンカーは、以前には放射活性と共に使用されていたが、「電荷スイッチ」を作るこの方法では使用されず、標識試薬は、腫瘍では荷電性であるので保持されるが、腎臓では電荷を喪失するので除去される。
【0051】
このようなリンカーとしては、メプリンβ(腎臓刷子縁膜で発現されるメタロプロテアーゼ)を標的にするリンカー配列(Jodalら、(2015)PLoS One Apr 9;10(4):e0123443);リジンのイプシロンアミノ基を介して抗体断片に連結されたC末端リジンまたはC末端(N(イプシロン)-アミノ-1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホン)リジン(これは、近位尿細管細胞による取り込みの前に放射標識ペプチドリンカーを切断する腎臓刷子縁酵素のリジン特異的カルボキシペプチダーゼ活性を利用することにより、減少した腎臓取り込みを示す)(Liら、(2002)Bioconjug Chem 13(5):985-995);L-チロシンO-チロシン、L-アスパラギン、L-グルタミン、N-Boc-L-リジン(Akizawaら、(2013)Bioconjugate Chem 24:291-299);グリシル-リジン(Aranoら、(1999)Cancer Research 59:128-134)(これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、MMCMは活性エステルである。本明細書では、活性エステルは、穏和な条件、すなわち、高分子/生体分子の生物学的機能の喪失をもたらさない条件下で、高分子/生体分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)上に存在するアミン基とコンジュゲートされ得るエステルとして定義される。例示的なこのようなMMCM基としては、限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはテトラフルオロフェノール(TFP)エステル、イソチオシアネート基またはマレイミド基が挙げられる。このようなMMCMは、一般に、タンパク質またはペプチド上のアミン基のランダム(非部位特異的)標識をもたらす。他の実施形態では、MMCMは、酵素ソルターゼ(これは、1つの部位(タンパク質のN末端またはC末端のいずれか)のみへのコンジュゲーションをもたらす)を使用して実施すべき部位特異的コンジュゲーションを提供する。この場合、MMCMは、例えば、トリペプチドGlyGlyGlyである。
【0053】
MMCMは芳香環に直接結合され得るか(L=直接結合)、またはリンカーを介して芳香環に結合され得る(L)。Lは、例えば、スペーサー、例えば置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖または短いポリエチレングリコール(PEG)鎖(1~10個のエチレングリコール単位)であり得る。
【0054】
芳香環上のこれら3個の部分(-L-MMCM、-L-CGおよび-L-Y)の位置は変動し得る。XがCHである場合、これら3個の部分は、芳香環の位置のいずれかに配置され得る。いくつかのこのような実施形態では、-L-CGおよび-L-Y部分は、(1位の)-L-MMCM部分に対してそれぞれ3位および4位(またはそれぞれ4位および3位)に位置する。いくつかのこのような実施形態では、芳香環が1位、3位および5位に参照部分を含むように、-L-CGおよび-L-Y部分は、-L-MMCM部分に対して3位および5位に位置する。XがNである場合、これらの3個の部分は、環の残りの5つの位置(例えば限定されないが、環の2位、4位および6位を含む)のいずれかに配置され得る。
【0055】
本発明の標的化分子を標識するための式1の範囲内の特定の補欠分子化合物、および放射性ハロゲン前駆体は、以下に示されているように、式1Aの化合物ならびにその誘導体および変異体を含む。示されているように、式1Aでは、XはCHであり(すなわち、芳香環はベンゼン環である)、Lはメチレン基であり、3個の部分(-L-MMCM、-L-Yおよび-CH-CG)は、芳香環の1位、3位および5位に存在する。
【化5】

式1A:サブクラスIA型化合物の一般構造
【0056】
本発明はまた、以下に示されている式2の一般構造を有するその化合物(「クラスII型化合物」と称される)を含む。
MC-Cm-L-Cm-T
式2:クラスII化合物の一般構造
【0057】
このような化合物は、多座金属キレート部分(MC)、Lの両端にコンジュゲート部分(Cm)を有するリンカー(L)、および放射性ハロゲン化テンプレートまたは放射性ハロゲン前駆体テンプレート(T)を含む。Tは、例えば、上記に示されているように、式1の化合物または式1Aの化合物(MMCMを含有する化合物)であり得る。いくつかの実施形態では、Tは補欠分子化合物/ラジカルであり、いくつかの実施形態では、Tは放射性ハロゲン前駆体化合物/ラジカルである。いくつかのこのような実施形態では、上記で言及されているように、m=0であり、式2の「MC-Cm-L-Cm」部分は、上記式1におけるL-CG部分の所望の機能を提供する(すなわち、MC-Cm-L-Cm置換基は十分に「荷電基」である)。他のこのような実施形態では、m=1、2または3であり、「T」の芳香環は少なくとも4個の置換基(すなわち、L-MMCM、L-Y、L-CGおよびCm-L-Cm-MC)を有し、1個またはそれを超えるさらなるL-CG置換基を必要に応じて含み得る。
【0058】
は、LおよびLについて上記で定義されるとおりであり得る。このようなものとして、Lは直接結合であり得るか、または例えばスペーサー、例えば置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖、もしくは短いポリエチレングリコール(PEG)鎖(1~10個のエチレングリコール単位)であり得る。Lはやはり、上記で定義されるとおりであるが、一方または両方の末端にNH、CO(カルボニル)またはS(チオエーテル)を有する。
【0059】
Cmは、例えば、チオ尿素、アミドまたはチオエーテルであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、Cmは、チオ尿素(例えば、キレート部分およびTのコンジュゲート官能基がイソチオシアネートである場合)、アミド(キレート部分およびTのコンジュゲート官能基がNHSもしくはTFP活性エステルまたはハロゲン化アシルである場合)、またはチオエーテル(キレート部分およびTのコンジュゲート官能基がマレイミドである場合)である。
【0060】
一般に、Tは、MMCM(これを介して、高分子を化合物にカップリングし得る)を含有する放射標識部分または放射性ハロゲン前駆体である。上記で言及されているように、いくつかの実施形態では、Tは、式1の化合物/ラジカルまたは式1Aの化合物/ラジカルであり得る。他の実施形態では、限定されないが、Choiら、(2014)Nucl
Med Biol 41(10):802-812(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているiso-SGMIB;Reistら、(1997)Nucl Med Biol 24(7):639-648(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているSIPC;または米国特許第5,302,700号(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているSDMBを含む他の放射性ハロゲンテンプレート(T)が使用され得る。
【0061】
MCは任意の多座部分であり得、環状または非環状であり得る。MCの組成は変動し得る。MCは錯体化され得ない(金属を欠く)か、または安定(非放射性)もしくは放射性形態の金属、好ましくは三価金属(M+3)、例えばルテチウム、イットリウム、インジウム、アクチニウムもしくはガリウムと錯体化され得、MCは、MC上に存在する遊離COOH基の1個を使用して、またはMC骨格炭素の1個を含むMC上の他の位置を介してリンカーに接続される。MCと錯体化され得る特定の具体的な放射性金属としては、限定されないが、177Lu、64Cu、111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thからなる群より選択される放射性金属が挙げられる。このリストは包括的なものではなく、これらの例示的な放射性金属は三価であるが、本発明にしたがって使用され得る特定のMCは他の価数の金属に結合し得、このようなMCおよび放射性金属も本明細書に包含されることに留意する。
【0062】
いくつかの実施形態では、MCに結合した放射性金属を含めることにより、分子上の他の場所における放射性原子の必要性を排除し得る(例えば、式2のT=式1/1aの部分である場合に「Y」として)。このようなものとして、式2の化合物では、「T」は、放射性原子(例えば、ハロゲン)を含んでもよいしまたは含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、Tは、上記式1/1aに示されている部分を含み、「Y」基は、非放射性ハロゲン(例えば、非放射性臭素またはヨウ素)である。他の実施形態では、放射性ハロゲン(例えば、式2のT=式1/1aの部分である場合に「Y」として)および(上記で言及されている放射性金属などのMCに結合した)放射性金属の両方を含む式2の化合物が提供される。特定の実施形態では、このような戦略は、例えば、複数の同位体について同じ補欠分子剤の使用を可能にするであろう。特定の例では、式2の化合物は、低エネルギーベータ放射体(例えば、131I)+高エネルギーベータ放射体(例えば、90Y);またはアルファ放射体(例えば、225Ac)金属およびベータ放射体ハロゲン(例えば、131I);またはアルファ放射体ハロゲン(例えば、211At)およびベータ放射体放射性金属(例えば、177Lu)で提供される。
【0063】
いくつかの実施形態では、MCは、8個またはそれを超える原子を含有する環からなる大環状配位子であって、カルボキシル基またはホスホネート基などの少なくとも3個の負荷電置換基を有する大環状配位子である。MC基として適切な例示的な大環状配位子としては、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ酢酸(NOTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラ酢酸(TETA)および1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ(メチレンホスホン酸)(NOTP)が挙げられる。他の実施形態では、MCは、Galiら、Anticancer Research(2001),21(4A),2785-2792)(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているMeO-DOTAである。
【0064】
クラスII化合物の例は以下の式2Aに示されており、MCは、DOTAを含む大環状配位子であり、放射性ハロゲン化テンプレートTは、式1に対応する部分である。
【化6】

式2A:DOTA MCを有する例示的なクラスII化合物
【0065】
式2Aの左側の括弧は、Cm基が結合したMC(DOTA)上の特定部位が限定されない(すなわち、Cmがその上の様々な部位でDOTAに結合し得る)ことを伝えることを意図する。同様に、式2Aの右側の括弧は、Cm基が結合した「T」の環上の特定部位が限定されない(すなわち、Cmが環上の様々な部位でTに結合し得る)ことを伝えることを意図する。やはり、上記で言及されているように、CG-Lは存在してもよいしまたは存在しなくてもよい。いくつかの実施形態では、式2AのTのベンゼン環は、4個の置換基(連結MC、L-MMCM、L-YおよびL-CGを含む)を含む。他の実施形態では、式2AのTのベンゼン環は、3個の置換基(連結MC、L-MMCMおよびL-Yを含む)を含む。後者の実施形態は、連結MCが荷電性である場合に特に関連する(すなわち、それは、「L-CG」置換基の所望の機能の提供に取って代わり得る)。
【0066】
いくつかの実施形態では、MCは、6個またはそれを超える原子を含有する鎖からなる非環式配位子であって、カルボキシル基またはホスホネート基などの少なくとも3個の負荷電置換基を有する非環式配位子である。MC基として適切な例示的な非環式配位子としては、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。クラスII化合物の例は以下の式2Bに示されており、MCは、DTPAを含む非環式配位子であり、放射性ハロゲン化テンプレートTは、式1に対応する部分である。
【化7】

式2B:DTPA(非環式)MCを有する例示的なクラスII化合物
【0067】
式2Aに関して上記で言及されているように、式2Bの左側の括弧は、Cm基が結合したMC(DTPA)上の特定部位が限定されない(すなわち、Cmがその上の様々な部位でDTPAに結合し得る)ことを伝えることを意図する。同様に、式2Bの右側の括弧は、Cm基が結合した「T」の環上の特定部位が限定されない(すなわち、Cmが環上の様々な部位でTに結合し得る)ことを伝えることを意図する。やはり、上記で言及されているように、CG-Lは存在してもよいしまたは存在しなくてもよい。いくつかの実施形態では、式2BのTのベンゼン環は、4個の置換基(連結MC、L-MMCM、L-YおよびL-CGを含む)を含む。他の実施形態では、式2AのTのベンゼン環は、3個の置換基(連結MC、L-MMCMおよびL-Yを含む)を含む。後者の実施形態は、連結MCが荷電性である場合に特に関連する(すなわち、それは、「L-CG」置換基の所望の機能の提供に取って代わり得る)。
【0068】
いくつかの特定の実施形態では、MC=DOTA、L=-NH(CHNH-、T=3-ヨード-5-スクシンイミジルオキシカルボニル-ベンゾイル、Cm=アミドおよびMMCM=N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミド含有部分、またはソルターゼを使用した部位特異的コンジュゲーションのための(Gly)(上記式を参照のこと)である式2の化合物が提供される。
【0069】
MMCMを含有する上記式は、付着高分子(例えば、生体分子)でさらに官能化され得、このようなものとして、いくつかの実施形態では、MMCMを介してそれに配位された高分子(例えば、生体分子)をさらに含む本明細書の上記で提供される式のいずれかの化合物が包含される。したがって、本開示は、(放射性配位子前駆体および生体分子を含む)中間体および(補欠分子団および生体分子を含む)放射標識生体分子(これらは両方とも、金属キレート部分を含んでもよいしまたは含まなくてもよい)を包含する。
【0070】
本開示はさらに、本明細書に記載される補欠分子化合物および放射標識生体分子を合成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法は、一般に、式1の化合物(式中、Y=アルキル金属放射性ハロゲン前駆体)を調製することを含む。特定の実施形態では、前記方法は、一般に、式2の化合物(式中、(Y=アルキル金属放射性ハロゲン前駆体)を調製することを含む。いくつかの実施形態では、このような前駆体を用いることにより、より大きな放射性「Y」基、例えば限定されないが、18Fよりも大きな75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atを含む補欠分子化合物および放射標識生体分子の調製が可能になる。いくつかの実施形態では、高分子はMMCMに配位され得、Yはアルキル金属放射性ハロゲン前駆体の形態である;次いで、その後の反応は、Yが所望の放射性ハロゲン原子の形態である生成物を提供する。
定義:
【0071】
「C-Cアルキル」はそれ自体で、またはC-Cハロアルキル、C-Cアルキルカルボニル、C-Cアルキルアミンなどの複合表現で、指定数の炭素原子を有する直鎖または分枝脂肪族炭化水素ラジカルを表し、例えば、C-Cアルキルは、1~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを意味する。C-Cアルキルは対応する意味を有し、ペンチルおよびヘキシルのすべての直鎖および分枝鎖異性体も含む。本発明において使用するための好ましいアルキルラジカルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルを含むC-Cアルキル、特にC-Cアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、t-ブチル、n-ブチルおよびイソブチルである。典型的には、メチルおよびイソプロピルが好ましい。アルキル基は非置換であり得るか、または同じものもしくは異なるものであり得る1個もしくはそれを超える置換基で置換され得、各置換基は、ハロ、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、-O-アルキル、-O-アリール、-アルキレン-O-アルキル、アルキルチオ、-NH、-NH(アルキル)、-N(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、-O-C(=O)-アルキル、-O-C(=O)-アリール、-O-C(=O)-シクロアルキル、-C(=O)OHおよび-C(=O)O-アルキルから独立して選択される。特に指示がない限り、アルキル基は非置換であることが一般に好ましい。
【0072】
「C-Cアルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し、指定数の炭素原子を有する直鎖または分枝脂肪族炭化水素ラジカルを表し、例えば、C-Cアルケニルは、2~4個の炭素原子を有するアルケニルラジカルを意味し;C-Cアルケニルは、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカルを意味する。非限定的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、n-ブテニル、3-メチルブト-2-エニル、n-ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は非置換であり得るか、または同じものもしくは異なるものであり得る1個もしくはそれを超える置換基で置換され得、各置換基は、ハロ、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、-O-アルキル、-O-アリール、-アルキレン-O-アルキル、アルキルチオ、-NH、-NH(アルキル)、-N(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、-O-C(=O)-アルキル、-O-C(=O)-アリール、-O-C(=O)-シクロアルキル、-C(=O)OHおよび-C(=O)O-アルキルから独立して選択される。特に指示がない限り、アルケニル基は非置換であることが一般に好ましい。
【0073】
「C-Cアルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有し、指定数の炭素原子を有する直鎖または分枝脂肪族炭化水素ラジカルを表し、例えば、C-Cアルキニルは、2~4個の炭素原子を有するアルキニルラジカルを意味し;C-Cアルキニルは、2~6個の炭素原子を有するアルキニルラジカルを意味する。非限定的なアルケニル基としては、エチニル、プロピニル、2-ブチニルおよび3-メチルブトイニルペンチニルおよびヘキシニルが挙げられる。アルキニル基は非置換であり得るか、または同じものもしくは異なるものであり得る1個もしくはそれを超える置換基で置換され得、各置換基は、ハロ、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、-O-アルキル、-O-アリール、-アルキレン-O-アルキル、アルキルチオ、-NH、-NH(アルキル)、-N(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、-O-C(O)-アルキル、-O-C(O)-アリール、-O-C(O)-シクロアルキル、-C(O)OHおよび-C(O)O-アルキルから独立して選択される。特に指示がない限り、アルキニル基は非置換であることが一般に好ましい。
【0074】
本明細書で使用される場合、「C-Cハロアルキル」という用語は、少なくとも1個のC原子がハロゲン(例えば、C-Cハロアルキル基は、1~3個のハロゲン原子を含有し得る)、好ましくはヨウ素、臭素またはフッ素で置換されたC-Cアルキルを表す。典型的なハロアルキル基はC1-ハロアルキルであり、適切には、ハロはヨードを表す。例示的なハロアルキル基としては、ヨードメチル、ジヨードメチルおよびトリヨードメチルが挙げられる。本明細書で使用される場合、ハロゲンの1個のみが放射性であり得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「C-Cヒドロキシアルキル」という用語は、少なくとも1個のC原子が1個のヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキルを表す。典型的なC-Cヒドロキシアルキル基は、1個のC原子が1個のヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキルである。例示的なヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチルおよびヒドロキシエチルが挙げられる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「C-Cアルキレン」という用語は、指示数の炭素原子を有する直鎖または分枝二価アルキルラジカルを表す。本発明において使用するための好ましいC-Cアルキレンラジカルは、C-Cアルキレンである。アルキレン基の非限定的な例としては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CH(CH)-および-CH(CH(CH)-が挙げられる。
【0077】
「C-Cアルコキシ」は、ラジカルC-Cアルキル-O-(C-Cアルキルは上記で定義されるとおりである)を表す。特に興味深いものは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、t-ブトキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシおよびイソブトキシを含むC-Cアルコキシである。典型的には、メトキシおよびイソプロポキシが好ましい。C-Cアルコキシは対応する意味を有し、ペントキシおよびヘキソキシのすべての直鎖および分枝鎖異性体を含むように拡大される。
【0078】
「Me」という用語はメチルを意味し、「MeO」はメトキシを意味する。「アミノ」という用語は、ラジカル-NHを表す。「ハロ」という用語は、ハロゲンラジカル、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードまたはアスタトを表す。典型的には、ハロ基は、ヨード、ブロモまたはアスタトである。「アリール」という用語は、芳香環、例えばフェニル、ビフェニルまたはナフチル基を表す。
【0079】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、O、SおよびNから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含有する安定飽和単環式3~12員環を表す。一実施形態では、安定飽和単環式3~12員環は4個のNヘテロ原子を含有する。第2の実施形態では、安定飽和単環式3~12員環は、O、SおよびNから独立して選択される2個のヘテロ原子を含有する。第3の実施形態では、安定飽和単環式3~12員環は、O、SおよびNから独立して選択される3個のヘテロ原子を含有する。ヘテロシクロアルキル基は非置換であり得るか、または同じものもしくは異なるものであり得る1個もしくはそれを超える置換基で置換され得、各置換基は、ハロ、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、-O-アルキル、-O-アリール、-アルキレン-O-アルキル、アルキルチオ、-NH、-NH(アルキル)、-N(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、-O-C(O)-アルキル、-O-C(O)-アリール、-O-C(O)-シクロアルキル、-C(O)OHおよび-C(O)O-アルキルからなる群より選択される。特に指示がない限り、ヘテロシクロアルキル基は非置換であることが一般に好ましい。
【0080】
「ヘテロアリール」という用語は、O、SおよびNから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含有する安定芳香環を表す。好ましい実施形態では、本開示において有用なヘテロアリール部分は、6個の環原子を有する。本発明の一実施形態では、安定芳香族環系は、Nである1個のヘテロ原子を含有する。
【0081】
「アミノC-Cアルキル」という用語は、アミノ基で置換された(すなわち、アルキル部分の1個の水素原子がNH基で置き換えられた)上記で定義されるC-Cアルキル基を表す。典型的には、「アミノC-Cアルキル」は、アミノC-Cアルキルである。
【0082】
「アミノC-Cアルキルカルボニル」という用語は、アルキル部分の1個の水素原子がNH基で置き換えられた上記で定義されるC-Cアルキルカルボニルラジカルを表す。典型的には、「アミノC-Cアルキルカルボニル」は、アミノC-Cアルキルカルボニルである。アミノC-Cアルキルカルボニルの例としては、限定されないが、グリシル:C(=O)CHNH、アラニル:C(=O)CH(NH)CH、バリニル:C=OCH(NH)CH(CH、ロイシニル:C(=O)CH(NH)(CHCH、イソロイシニル:C(=O)CH(NH)CH(CH)(CHCH)およびノルロイシニル:C(=O)CH(NH)(CHCHなどが挙げられる。この定義は、天然に存在するアミノ酸に限定されない。
【0083】
関連用語は、上記で提供される定義および技術分野における一般的な用法にしたがって解釈される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「(=O)」という用語は、炭素原子に付着した場合にカルボニル部分を形成する。原子の原子価が許容する場合に、原子はオキソ基を有し得るにすぎないことに留意すべきである。
「一リン酸、二リン酸および三リン酸エステル」という用語は、基:
【化8】

を指す。
【0085】
「チオ一リン酸、チオ二リン酸およびチオ三リン酸エステル」という用語は、基:
【化9】

を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、定義において使用される任意の分子部分上のラジカル位置は、それが化学的に安定である限り、このような部分上の任意の場所であり得る。任意の部分において、存在する任意の変数が1回を超えて出現する場合、各定義は独立している。
【0087】
本明細書で使用される場合は常に、「式1の化合物」、「式1Aの化合物」、「式2の化合物」または「本発明の化合物」または類似語句は、式1の化合物および式1の化合物のサブグループ、式2の化合物および式2の化合物のサブグループ(可能な立体化学的異性体を含む)ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物を含むことを意味する。
【0088】
「溶媒和物」という用語は、式1および2の化合物ならびにそれらの塩が形成することができる任意の薬学的に許容される溶媒和物をカバーする。このような溶媒和物は、例えば、水和物、アルコラート、例えばエタノラート、プロパノラートなど、特に水和物である。
【0089】
一般に、本出願において使用される化合物の名称は、ChemDraw Professional 16.0を使用して生成される。加えて、構造または構造の一部の立体化学が、例えば太字または破線で示されない場合、構造またはその構造の一部は、そのすべての立体異性体を包含すると解釈すべきである。
【0090】
リンカーはまた、コア構造への各部分の結合を促進するように選択され得る。例えば、補欠分子化合物の好ましい合成経路に関して以下により詳細に議論されているように、代表的なリンカーは、1~6個の炭素原子(この1個の炭素原子は、環式(炭化水素環)ラジカルまたは複素環式(複素環)ラジカルで置換され得る)を有する二官能性アルキル鎖(例えば、-CH-、-C-、-C-など)である。代表的な複素環式ラジカルは、複素環において少なくとも1個の窒素原子を有する。したがって、このような複素環式ラジカルの具体例は、ジアジニル、ジアゾリル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラジニルおよびテトラゾリルラジカルである。これらのおよび他の複素環式ラジカルまたは他の環式ラジカルは、別の環式もしくは複素環式ラジカルに必要に応じて縮合され得るか、またはそれ自体が縮合環系の一部である別の環式もしくは複素環式ラジカルに縮合され得る(例えば、トリアゾリルラジカル(または他の窒素原子置換複素環式炭化水素ラジカル)がジベンゾアゾカニルラジカルに縮合される場合のように、トリアゾリルラジカルは、それ自体が2つの6員環に縮合された8員環または複素環式ラジカルに縮合され得る)。したがって、3つまたはそれを超える縮合環、例えば炭化水素環、複素環およびこれらの環の組み合わせを含有するリンカーが可能である。代表的な荷電基リンカーLは、1~6個の炭素原子を有する二価置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、または置換もしくは非置換アルキニル鎖である。一般に、L、L、Lおよび/またはLは、1~6個の炭素原子を有する置換または非置換二価アルキルラジカルであり得(を含み得)、1個またはそれを超える炭素原子は、ヘテロ原子、例えばNH、OもしくはSで置換され得、および/もしくは置き換えられ得るか、または1~8個の炭素原子を有する(例えば、分枝アルキルラジカルの形成をもたらす)別のアルキルラジカルであって、直鎖、分枝もしくは環状であり得る別のアルキルラジカルで置換され得、もしくは置き換えられ得る。例えば、アルキルラジカルの1個の炭素原子を置換してカルボニル(C=O)基を提供し、隣接炭素原子をNHで置き換え、それにより、ペプチド/アミド結合-(C=O)-NH-をもたらし得る。したがって、代表的なリンカーL、L、LおよびLは、アルキル鎖に組み込まれるこのようなペプチド結合、-NH-結合、-(C=O)-結合および/または環状-C-結合(このような結合のいずれか2つ、3つまたは4つの組み合わせを含む)の1つまたはそれよりも多くを有する二価アルキルラジカルを含み得る。加えて、L、Lおよび/またはLの二価アルキルラジカルの場合、1組またはそれを超える隣接炭素原子間において炭素-炭素二重結合および/または炭素-炭素三重結合が形成されて、二価不飽和(例えば、オレフィン)アルキルラジカルが提供され得る。
【0091】
生体分子のための適切な標識方法の選択は、生物学的環境との相互作用後の分子運命の慎重な検討を必要とする。放射性ヨウ素化タンパク質およびペプチドの場合、甲状腺ホルモン代謝に通常関与するものなどの脱ヨウ素酵素の作用回避が重要な懸念である。N-スクシンイミジル3-[131I]ヨードベンゾエート(SIB)などの試薬は、放射標識が存在する部位のチロシン非類似構造に基づいて、インビボで感知可能な脱ヨウ素化を受けないタンパク質を生じさせる。しかしながら、細胞表面受容体または抗原への結合後、標識タンパク質またはペプチドが細胞内在化を受けると、その細胞間経路に応じて、SIB標識であっても、標的細胞からの標識のかなりの喪失が起こり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明の標的放射線治療方法は、15mm未満の組織範囲で放射線を放出する放射性ハロゲンを利用し得る。これらとしては、アルファ放射体、例えば211At、ベータ放射体、例えば131Iおよびオージェ電子放射体、例えば77Br、123Iおよび125Iなどが挙げられる。放射性ハロゲン、例えば75Br、76Br、124Iなどを利用したポジトロン放出断層撮影法(PET);放射性ハロゲン、例えば123I、131Iおよび77Brなどを利用した単一光子放射コンピューター断層撮影法(SPECT);または上記放射性ハロゲンのいずれかを用いて実施され得る術中イメージングにより、放射線が体外で検出され得るように、本発明の診断イメージング方法は、5mm超の組織範囲で放射線を利用する。米国特許第5,302,700号(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。特に、131Iは、2.3mmの最大組織範囲で低エネルギーβ粒子を放出する。Steinら、(2003)Cancer Res 63:111-118(これは、参照により本明細書に組み込まれる)。本発明のセラノスティック法は、1)同じ放射性ハロゲンを利用して、標的放射線療法および診断イメージングを実施するか(例えば、131I、123I、77Brなど)、または2)同じ元素の異なる放射性ハロゲンを利用して、標的放射線療法および診断イメージングを実施する(例えば、124Iおよび131I;123Iおよび131I;77Brおよび76Br;77Brおよび75Brなど)。(例えば、式2の化合物を用いる)いくつかの実施形態では、分子の金属キレート部分に結合する他の放射性金属が使用され得る。
【0093】
上記放射標識補欠分子化合物にカップリングされ得る代表的な生体分子としては、細胞表面受容体、抗原または輸送体に特異的に結合する分子が挙げられる。代表的な細胞表面抗原または受容体としては、細胞により内在化されるものが挙げられる。生体分子は、細胞により数秒間、数分間、数時間または数日間かけて内在化される。好ましい生体分子は迅速に内在化される(すなわち、生体分子のほとんどは数分から数時間後に内在化される)。生体分子は、10-6Mまたはそれ未満、好ましくは10-8-1またはそれ未満の親和定数(K)で結合する場合に、特異的に結合するとみなされる。
【0094】
生体分子は、細胞表面抗原、受容体または輸送体に特異的に結合する抗体、抗体の断片または合成ペプチドであり得る。抗体としては、モノクローナル抗体(mAb)が挙げられ、抗体断片としては、VHH分子(単一ドメイン抗体断片(sdAb)またはナノボディとしても公知)が挙げられる。好ましい実施形態では、生体分子は、内在化抗体または抗体断片である。細胞表面抗原に特異的に結合して細胞により内在化される任意の抗体は、内在化抗体である。抗体は、任意のクラス(すなわち、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM)の免疫グロブリンであり得、哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、ヒトまたは他の適切な種(Camelidae科のものを含む)の免疫化により得られ得る。抗体はポリクローナルであり得る(すなわち、細胞表面抗原またはその断片で免疫化された動物の血清から得られ得る)。抗体はまたモノクローナルであり得る(すなわち、当技術分野で公知であるように、細胞膜または表面リガンドまたは抗原またはそれらの断片を使用した哺乳動物の免疫化、免疫化哺乳動物由来のリンパまたは脾臓細胞と骨髄腫細胞株との融合、および特定のハイブリドーマクローンの単離により形成され得る)。抗体はまた、組換え抗体、例えば、組換えDNA法により生産されるキメラまたは種間抗体であり得る。好ましい内在化抗体は、細胞表面抗原への結合に対する特異性を有するマウス可変領域と一緒にヒト免疫グロブリン定常領域を含むヒト化抗体である(例えば、Reistら、1997を参照のこと)。抗体の断片を使用する場合、断片は、細胞表面抗原に特異的に結合することができるべきである。断片は、例えば、免疫グロブリン軽鎖可変領域の少なくとも一部と、免疫グロブリン重鎖可変領域の少なくとも一部とを含み得る。生体分子はまた、細胞表面抗原に特異的に結合する合成ポリペプチドであり得る。例えば、米国特許第5,260,203号に記載されているように、または当技術分野で別様に公知であるように、生体分子は、免疫グロブリン軽鎖可変領域の少なくとも一部と、免疫グロブリン重鎖可変領域の少なくとも一部とを含む合成ポリペプチドであり得る。
【0095】
標識mAbの公知の分子標的の多くは、抗原および受容体を内在化している。B細胞リンパ腫(Pressら、1994;Hansenら、1996)、T細胞白血病(Geisslerら、1991)および神経芽細胞腫細胞(Novak-Hoferら、1994)はすべて、迅速に内在化される抗原を有する。内在化受容体は、mAbを腫瘍に標的化するために使用されている。これらとしては、野生型上皮成長因子受容体(EGFR;神経膠腫および扁平上皮細胞癌腫;Bradyら、1992;Baselgaら、1994)、p185 c-erbB-2癌遺伝子産物HER2(乳癌腫および卵巣癌腫;De
Santesら、1992;Xuら、1997)ならびにトランスフェリン受容体(神経膠腫および他の腫瘍;Laskeら、1997)が挙げられる。実際、細胞表面抗原に結合する事実上あらゆるmAbで内在化が起こり得ることが示唆されている(Mattesら、1994;Sharkeyら、1997a)。
【0096】
放射免疫療法のmAb内在化の利点は、放射活性が標的細胞上に長期間捕捉される限り、細胞核に送達される放射線吸収線量を増加させる可能性があることである。放射線線量測定計算は、多細胞範囲β放射体131Iであっても、細胞膜から細胞質小胞への崩壊部位のシフトが、細胞核により受容される放射線量を2倍増加させ(Daghighianら、1996)、それにより、処置を潜在的に増加させ得ることを示唆している。他方、mAb内在化の欠点は、この事象がmAbをさらなる異化プロセスに曝露し、腫瘍細胞からの放射活性の放出、癌細胞への放射線量の減少、体内の正常組織への放射線量の増加をもたらし得ることである。
【0097】
細胞により内在化される抗原または受容体は、最終的には、エンドソームまたはリソソーム内に局在化され得る。標的化部分または内在化部分は、癌細胞などの標的疾患細胞に結合する部分であり、細胞表面受容体、輸送体、細胞表面上に見られる抗原、例えば膜貫通受容体、細胞外成長因子への結合後に内在化される。このように、本発明の化合物は、疾患細胞または腫瘍細胞の任意の集団を対象とし得る。したがって、それは、任意の癌、腫瘍または悪性成長を標的にするために広く使用され得る。本発明の化合物は、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、上皮成長因子受容体(EGFR)、その腫瘍特異的突然変異体EGFRvIII、血管内皮成長因子(VEGF)、VEGFA/B、EGFR(HER1/ERBB1)、HER2(ERBB2/neu)、ALK、Ax1、CD20、CD30、CD38、CD47、CD52、CDK4、CDK6、PD-1、PD-L1、KIT、VEGFR1/2/3、BAFF、HDAC、プロテアソーム、ABL、FLT3、KIT、MET、RET、IL-6、IL-6R、IL-1β、EGFR(HER1/ERBB1)、MEK、ROS1、BRAF、ABL、RANKL、B4GALNT1(GD2)、SLAMF7、(CS1/CD319/CRACC)、mTOR、BTK、P13Kδ、PDGFR、PDGFRα、PDGFRβ、CTLA4、PARP、HDAC、FGFR1-3、RAF、RET、JAK1/2、JAK3、Smoothened、MEK、BCL2、PTCH、PIGF、EMP2、CSF-1R、LYPD3などに標的化され得る。例えば、ワールドワイドウェブ上で「mycancergenome」ウェブサイトのoverview-of-targeted-therapies-for-cancerセクションに見られるAbramson,R.(2017)Overview for Targeted Therapies for Cancer,My Cancer Genomeを参照のこと。
【0098】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、抗HER2 VHH配列、例えば配列番号1~5に示されているもの、ならびに前記配列の結合特異性を保持するその断片および変異体から選択され得る。すなわち、本発明は、放射標識VHHドメインの断片、類似体、突然変異体、変異体および誘導体を包含する。これらのオリゴクローナルVHHは、HER2受容体上の広範なエピトープを標的化し得る。VHHのいくつかは、HER2への結合についてトラスツズマブと競合しない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるVHH配列の断片、類似体、突然変異体、変異体および/または誘導体は、配列番号1~5の少なくとも1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。表1を参照のこと。
【0099】
2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度の決定では、当業者は、アミノ酸置換と一般に記載され得る「保存的」アミノ酸置換(これは、アミノ酸残基が類似化学構造の別のアミノ酸残基で置き換えられ、ポリペプチドの機能、活性または他の生物学的特性にほとんどまたは本質的に影響を与えない)を考慮し得る。アミノ酸配列および核酸配列は、それらが全長にわたって100%の配列同一性を有する場合、全く同じものである。
【0100】
本明細書で使用される場合、配列が参照配列と「少なくともX%同一」であると定義される場合(例えば、「配列番号2と少なくとも95%同一のポリペプチド」)、特に指示がない限り、「X%同一」は、絶対同一性率を指す。「絶対同一性率」という用語は、ミスマッチアミノ酸または核酸の類似性にかかわらず、同一アミノ酸または核酸を1としてスコア化し、任意の置換をゼロとしてスコア化することにより決定される配列同一性の割合を指す。典型的な配列アラインメントでは、2つの配列の「絶対同一性率」は、アミノ酸または核酸「同一性」の割合として提示される。2つの配列の最適なアラインメントが配列の一方または両方におけるギャップの挿入を必要とする場合、他方の配列のギャップとアライメントする一方の配列のアミノ酸残基は、同一性率を決定する目的でミスマッチとしてカウントされる。ギャップは、内部的または外部的(すなわち、切断)であり得る。絶対同一性率は、例えば、デフォルトパラメータを使用したClustal Wプログラム、1999年6月のバージョン1.8(Thompsonら、(1994)Nucleic Acids Res 22:4673-4680)を使用して容易に決定され得る。
【0101】
示されているように、本発明の放射標識生体分子は、任意の疾患または悪性細胞集団に標的化され得る。いくつかの場合では、小生体分子を使用することが好ましい場合がある。脳転移は、体内の他の器官の原発腫瘍から脳に広がった癌細胞である。転移性腫瘍は、脳における最も一般的な腫瘤病変である。すべての癌患者の推定24~45%は、脳転移を有する。一般的に、肺癌、乳癌、黒色腫、結腸癌および腎臓癌は脳に広がる。脳転移は、生存不良および高い罹患率に関連する。転移性脳腫瘍のための治療の改善は、本発明の一態様である。
【0102】
乳癌の脳転移の計算孔径は、直径10nm未満である。(Mittapaliら、(2017)Cancer Res 77(2):238-246)。したがって、小分子は、転移性脳腫瘍を有効に標的化および処置するために必要である。転移性脳腫瘍の診断および処置において使用するために、本発明の標的生体分子は、限定されないが、アフィボディ、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)、アプタマーおよびVHH分子(単一ドメイン抗体断片(sdAb)またはナノボディとしても公知)(これらは、本明細書では小生体分子と総称される)を含む小分子である。他の「小分子」足場は、質量/サイズ、例えば10nm未満のサイズまたは25kDa未満を特徴とする。示されているように、これらの小生体分子は、癌細胞の一部に結合するように設計される。例えば、VHHは、癌細胞上の受容体、例えばヒト上皮成長因子受容体-2(HER2)または他の上記受容体のいずれかに特異的に結合するように調製され得る。例えば、米国特許第9,234,028号;米国特許第9,309,515号;米国特許第8,524,244号;米国特許第9,234,065号;Liuら、(2012)J Transl.Med.10:148;Gijsら、(2016)Pharmaceuticals(Basel)9(2):29;Moosavianら、(2015)Iran J.Basic Med.Sci.18(6):576-586;Mahlknechtら、(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.110:8170-8175を参照のこと。
【0103】
小さなサイズにより、VHH、アプタマーおよび他の小生体分子は、固形腫瘍全体に効率的に拡散および分布し、標的抗原に対する高い結合特異性および親和性により、小生体分子の高い腫瘍取り込みが観察され得る。重要なことに、それらの血中半減期は、全長抗体またはより大きな標的タンパク質よりも有意に短く、それにより、腎臓による小生体分子の未結合画分の迅速なクリアランスが可能になり、その投与直後の腫瘍対正常組織比がより高くなる。VHHは、免疫化ラクダまたはラマからのクローニングおよびファージディスプレイパニングによる選択により、ナノモルからピコモルの親和性で容易に生成される。また、VHHまたはsdAbは安定であり、工業グレードの方法および適格な細菌、酵母または哺乳動物細胞を使用して大量に容易に生産される。他の小さなタンパク質系標的化ベクターと比較して、VHHは、一般に、安定性、溶解性、発現収率、多量体の構築、および隠れたまたは非一般的なエピトープを認識する能力の点で大きな利点を提供する。米国特許第6,248,516号;米国特許第6,300,064号;米国特許第6,846,634号;米国特許第6,846,634号;米国特許第6,696,245号;米国特許第9,243,065号;米国特許第7,696,320号(これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0104】
アプタマーは、特定の標的化分子に結合するオリゴヌクレオチドまたはペプチド分子である。アプタマーは核酸分子(DNA、RNA、XNA)であり得、オリゴヌクレオチド(1つまたはそれを超える短い可変ペプチドドメインからなるペプチド分子)の短い鎖からなり得る。アプタマーは、化学合成により容易に生成される分子認識特性を提供し、望ましい保存特性を有し、治療用途において免疫原性をほとんどまたは全く誘発しない。Keefeら、(2010)Nature Reviews Drug Discovery 9:537-550;Ellington and Szostak(1990)Nature 346:818-822;Tuerk and Gold(1990)Science 249:505-510;Kulbachinskiy,A.V.(2007)Biochemistry 72:1505-1518(これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0105】
本明細書で使用される場合、被験体内の放射線の「(計算平均)実効線量」は、体のすべての指定組織および器官における等価線量の組織加重和を指す。放射線の種類および照射される各器官または組織の性質を考慮する。それは、国際放射線防護委員会(ICRP)により考案された放射線防護の国際システムにおける放射線防護の線量制限の中心的な量である。実効線量のSI単位は、1ジュール/キログラム(J/kg)であるシーベルト(Sv)である。実効線量は、1991年に線量のICRPシステムにおける以前の「実効線量当量」に置き替わった。放射性医薬品を使用する手順では、実効線量は、典型的には、注射放射能の単位当たり(すなわち、mSv/MBq)で表される。このため、個々の患者の実効線量は、MBqで表される放射性医薬品の注射放射能と、mSv/MBqで表される計算平均実効線量とに依存するであろう。
【0106】
放射性医薬品の実効線量は、2004年にFDAにより承認されたOLINDA/EXM(登録商標)ソフトウェアを使用して計算される。OLINDA/EXM(登録商標)パーソナルコンピューターコードは、放射性医薬品の線量計算および動態モデリングを実行する(OLINDA/EXMは、Organ Level Internal Dose Assessment/Exponential Modelingを表す)。OLINDA(登録商標)は、全身投与された放射性医薬品から体の異なる器官への放射線量を計算し、ユーザー提供の生体動態データの回帰分析を実行して、核医学薬のこのような計算を支援する。これらの計算は、核医学の診断および治療用途におけるこのような医薬品の使用のリスク/ベネフィット評価を実施するために使用される。前記技術は、内部線量分野で広く受け入れられ使用されている成人、子供、妊婦などのためのいくつかの標準身体モデルを用いる。前記計算は、製薬産業開発者、核医学専門家、教育者、規制当局、研究者、および放射性薬物を患者または研究被験体に与えた場合に送達すべき許容放射線量を研究する他の者に有用である。
【0107】
計算実効線量は、選択された標準身体モデルおよび選択された排尿膀胱モデルに依存する。本明細書で提供される値は、女性成人モデルおよび1時間の排尿膀胱間隔を使用して計算されている。
【0108】
したがって、特定の実施形態では、癌の予防および/または処置は、本明細書に開示される放射標識小生体分子、すなわちアプタマー、VHHまたはその機能的断片などを、それを必要とする被験体に投与することにより達成され、小生体分子は、被験体において0.001~0.05mSv/MBqの計算平均実効線量、例えば限定されないが、0.02~0.05mSv/MBq、より好ましくは0.02~0.04mSv/MBq、最も好ましくは0.03~0.05mSv/MBqの計算平均実効線量を有することを特徴とする。
【0109】
したがって、投与1回当たり患者に適用される放射活性の線量は、有効であるために十分に高くなければならないが、線量制限毒性(DLT)をもたらす線量未満でなければならない。例えば131ヨウ素による放射標識抗体を含む医薬組成物では、治療状況における超えてはならない最大耐用量(MTD)を決定しなければならない。
【0110】
本明細書で想定されるタンパク質およびペプチド(以下、生体分子と総称される)ならびに/またはそれを含む組成物は、予防または処置すべき疾患または障害を予防および/または処置するために適切な処置レジメンにしたがって投与される。一般に、臨床医は、適切な処置レジメンを決定することができるであろう。一般に、処置レジメンは、1つまたはそれを超える薬学的有効量または用量で、1つもしくはそれを超える小生体分子、例えばVHH配列もしくはポリペプチドまたはそれを含む1つもしくはそれを超える組成物を投与することを含む。
【0111】
好都合なことに、所望の用量は、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量(これもさらに分割され得る)として提示され得る。投与レジメンは、長期(すなわち、少なくとも2週間、例えば数カ月間または数年間)または毎日処置を含み得る。特に、投与レジメンは、1日1回から1年1回、例えば1日1回および12カ月ごとに1回、例えば限定されないが、週1回で変動し得る。したがって、処置の所望の期間および有効性に応じて、本明細書に開示される医薬小生体分子組成物は、1回または数回、さらには断続的に、例えば異なる投与量で数日間、数週間または数カ月間にわたって毎日投与され得る。本明細書に開示される小生体分子組成物の適用量は、処置すべき癌または他の疾患の性質に依存する。DLTを回避しながら、癌への実効放射線量送達を達成するために、複数回の投与が好ましい場合がある。しかしながら、放射標識物質は、典型的には、4~24週間間隔で、好ましくは8~20週間間隔で投与される。当業者は、投与を2回またはそれを超える適用(これは、互いに直後に適用され得るか、または例えば1日から1週間の範囲のいくつかの他の所定間隔で適用され得る)に分割する方法を把握している。
【0112】
特に、本明細書に開示される生体分子は、本明細書で引用される疾患および障害の予防および/または処置に使用されるかまたは使用され得る他の医薬活性化合物または物質と組み合わせて使用され得、その結果として、相乗効果が得られてもよいしまたは得られなくてもよい。このような化合物および物質ならびにそれらを投与するための経路、方法および医薬製剤または組成物の例は、臨床医には明らかであろう。
【0113】
本発明の文脈では、「と組み合わせて」、「併用療法で」または「併用処置で」は、このような組み合わせの有益な効果から患者が利益を受け得るレジメンで、本明細書に開示される放射標識生体分子、例えばVHH、アプタマーなどが1つまたはそれを超える他の医薬活性化合物または物質と一緒に患者に適用されることを意味するものとする。特に、両処置は、時間的に近接して患者に適用される。好ましい実施形態では、両処置は、4週間(28日)以内に患者に適用される。より好ましくは、両処置は、2週間(14日)以内、より好ましくは1週間(7日)以内に適用される。好ましい実施形態では、2つの処置は、2または3日以内に適用される。別の好ましい実施形態では、2つの処置は、同日に、すなわち24時間以内に適用される。別の実施形態では、2つの処置は、4時間以内または2時間以内または1時間以内に適用される。別の実施形態では、2つの処置は、並行して、すなわち同時に適用されるか、または2つの投与は、時間的に重複している。
【0114】
特定の非限定的な実施形態では、本発明の放射標識生体分子は、1つまたはそれを超える治療用抗体または治療用抗体断片と一緒に適用される。したがって、これらの特定の非限定的な実施形態では、放射標識生体分子を用いた標的放射線療法は、1つまたはそれを超える治療用抗体または治療用抗体断片を用いた通常の免疫療法と組み合わされる。さらなる特定の実施形態では、放射標識生体分子は、1つまたはそれを超える治療用抗体または治療用抗体断片を用いた併用療法または併用処置方法、例えば限定されないが、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))および/またはペルツズマブ(Perjeta(登録商標))を用いた併用処置において使用される。
【0115】
例えば、放射標識生体分子と、1つまたはそれを超える治療用抗体または治療用抗体断片、例えば限定されないが、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))および/またはペルツズマブ(Perjeta(登録商標))とは同時に注入され得るか、または注入は時間的に重複し得る。2つの薬物が同時に投与される場合、それらは、1つの単一医薬調製物で一緒に製剤化され得るか、またはそれらは、例えば1つの単一輸液に溶解もしくは希釈することにより、投与直前に2つの異なる医薬調製物から一緒に混合され得る。別の実施形態では、2つの薬物は、別々に、すなわち2つの独立した医薬組成物として投与される。好ましい一実施形態では、2つの処置の投与は、患者の体内の腫瘍細胞が有効量の細胞毒性薬および放射線に同時に曝露されるものである。別の好ましい実施形態では、有効量の本発明の放射標識生体分子と、1つまたはそれを超える治療用抗体または治療用抗体断片、例えば限定されないが、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))および/またはペルツズマブ(Perjeta(登録商標))とは両方とも、腫瘍部位に同時に存在する。本発明はまた、定義される組み合わせに加えて投与されるさらなる薬剤の使用を包含する。これは、例えば、1つまたはそれを超えるさらなる化学療法剤であり得る。それはまた、与えられた他の薬物のいずれかの望ましくない副作用を予防、抑制または改善するために適用される1つまたはそれを超える薬剤であり得る。例えば、白血球の増殖を刺激するサイトカインは、白血球減少症または好中球減少症の効果を改善するために適用され得る。
【0116】
さらなる態様によれば、腫瘍特異的または癌細胞特異的標的分子が関与する少なくとも1つの癌関連疾患および/または障害の予防および/または処置のための医薬を調製するための、目的の腫瘍特異的または癌細胞特異的標的分子に特異的に結合する本明細書で想定される放射標識生体分子の使用が提供される。したがって、本出願は、腫瘍特異的または癌細胞特異的標的が関与する少なくとも1つの癌関連疾患および/または障害の予防および/または処置において使用するための、上記のものなどの腫瘍特異的または癌細胞特異的標的に特異的に結合する生体分子を提供する。特定の実施形態では、少なくとも1つの癌関連疾患および/または障害の予防および/または処置のための方法であって、それを必要とする被験体に、医薬活性量の本明細書で想定される1つまたはそれを超える生体分子(VHH配列またはその機能的断片、ポリペプチド、アプタマーなどを含む)および/または医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0117】
本明細書に記載される放射標識生体分子で処置すべき被験体または患者は任意の温血動物であり得るが、特に、癌関連疾患および/または他の疾患障害を患っているかまたはそのリスクがある哺乳動物、より具体的にはヒトである。本明細書に記載される生体分子(すなわち、VHH配列またはその機能的断片、アプタマー、ポリペプチドなど)およびそれを含む組成物の有効性は、関与する特定の疾患または障害に応じて、それ自体が公知の任意の適切なインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、インビボアッセイおよび/または動物モデルまたはそれらの任意の組み合わせを使用して試験され得る。適切なアッセイおよび動物モデルは、当業者には明らかであろう。
【0118】
関与する腫瘍特異的または癌細胞特異的標的に応じて、当業者は、一般に、腫瘍特異的または癌細胞特異的分子への結合について;ならびに1つまたはそれを超える癌関連疾患および障害に関する治療効果および/または予防効果について、本明細書に記載される生体分子を試験するための適切なインビトロアッセイ、細胞アッセイまたは動物モデルを選択することができるであろう。
【0119】
したがって、医薬として使用するための、より具体的には、固形腫瘍を含む癌に関連する疾患または障害の処置のための方法において使用するための、少なくとも1つの放射標識生体分子またはその機能的断片を含むかまたはそれから本質的になる生体分子が提供される。
【0120】
特定の実施形態では、本明細書で想定される放射標識生体分子は、癌および新生物症状を処置および/または予防するために使用される。癌または新生物症状の例としては、限定されないが、線維肉腫、筋肉肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭頸部の癌、皮膚癌、脳癌、扁平上皮細胞癌腫、皮脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌腫、気管支癌腫、腎細胞癌腫、肝細胞腫、胆管癌腫、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫またはカポジ肉腫が挙げられる。本明細書で想定される生体分子はまた、様々な増殖性障害を処置するために使用され得る。増殖性障害の例としては、造血性新生物性障害ならびに細胞増殖性および/または分化障害、例えば限定されないが、上皮過形成、硬化性腺腫および小管乳頭腫;腫瘍、例えば間質腫瘍、例えば線維腺腫、葉状腫瘍および肉腫ならびに上皮腫瘍、例えば大管乳頭腫;乳房の癌腫、例えば上皮内(非浸潤性)癌腫、例えば非浸潤性乳管癌腫(パジェット病を含む)および非浸潤性小葉癌腫ならびに浸潤性(浸潤)癌腫、例えば限定されないが、浸潤性乳管癌腫、浸潤性小葉癌腫、髄様癌腫、コロイド(粘液)癌腫、尿細管癌腫、浸潤性乳頭癌腫、他の悪性新生物、女性化乳房癌腫、気管支癌腫、例えば腫瘍随伴症候群、細気管支肺胞癌腫、神経内分泌腫瘍、例えば気管支カルチノイド、他の腫瘍および転移性腫瘍;胸膜の病状、例えば炎症性胸水、非炎症性胸水、気胸および胸膜腫瘍、例えば孤立性線維性腫瘍(胸膜線維腫)、悪性中皮腫、非新生物性ポリープ、腺腫、家族性症候群、結腸直腸発癌、結腸直腸癌腫、カルチノイド腫瘍、結節性過形成、腺腫および悪性腫瘍、例えば肝臓の原発癌瘍および転移性腫瘍、体腔上皮の腫瘍、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍、類内膜腫瘍、明細胞腺癌、嚢胞腺線維腫、ブレナー腫瘍、表面上皮腫瘍;胚細胞腫瘍、例えば成熟(良性)奇形腫、単皮奇形腫、未成熟悪性奇形腫、胚芽腫、内胚葉洞腫瘍、絨毛癌;性索間質腫瘍、例えば顆粒膜鞘細胞腫瘍、卵胞膜細胞腫線維腫、男性ホルモン産生細胞腫、ヒル細胞腫瘍および性腺芽腫;ならびに転移性腫瘍、例えばクルケンベルグ腫瘍が挙げられる。
【0121】
特許請求されている補欠分子化合物で標識した生体分子の投与後の放射活性のイメージングは、例えば、ガンマカメラ(放射線シンチグラフィー)、単一光子放射コンピューター断層撮影法(SPECT)およびポジトロン放射断層撮影法(PET)を用いた体のスキャンを含む標準的な放射線学的方法により実施され得る(例えば、Bradwellら、Immunology Today 6:163-170,1985を参照のこと)。インビボ使用の場合、生体分子にカップリングされた標識補欠分子化合物は、診断的または治療的に許容される量で与えられるべきである。治療的に許容される量は、1つまたはそれを超える投与量で投与された場合に、臨床処置に許容される毒性レベルで、所望の治療効果、例えば腫瘍の収縮を生じさせる量である。このような投与量は、腫瘍細胞内における十分な放射線の吸収を引き起こして、例えばDNAを破壊することにより、これらの細胞を損傷するであろう。このような投与量は、好ましくは、隣接および遠位の健常細胞への最小限の損傷を引き起こすはずである。
【0122】
特定の組成物の用量および組成物の投与手段は両方とも、組成物の特定の質、患者の症状、年齢および体重、処置されている特定の疾患の進行、ならびに他の関連因子に基づいて決定され得る。組成物が抗体を含有する場合、組成物の有効投与量は、約5μg~約50μg/患者体重kg、約50μg~約5mg/kg、約100μg~約500μg/患者体重kgおよび約200~約250μg/kgの範囲内である。放射活性の診断的に許容される量は、診断に許容される毒性レベルで、診断に必要な標識生体分子からの放射活性の検出を可能にする量である。
【0123】
様々な実施形態が本明細書で以下に提供される。
【0124】
実施形態1:式Iにより表される化合物(補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体を含む):
【化10】

(式中、
Xは、CHまたはNであり;
およびLは、結合、置換または非置換アルキル鎖、置換または非置換アルケニル鎖、置換または非置換アルキニル鎖およびポリエチレングリコール(PEG)鎖から独立して選択され;
MMCMは、高分子コンジュゲート部分であり;
は、置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖、または少なくとも3個の酸素原子を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖であり、ここで、Lは、刷子縁酵素切断可能ペプチドを必要に応じて含有し;
CGは、グアニジン;POH;SOH;1つまたはそれを超える荷電D-アミノ酸、アルギニンまたはホスホノ/スルホフェニルアラニン、グルタメート、アスパルタート、リジン;親水性炭水化物部分;ポリエチレングリコール(PEG)鎖;およびグアニジノ-Zから選択され;
Zは、(CHであり;
nは、1超であり;ならびに
Yはアルキル金属放射性ハロゲン前駆体であるか、または18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atからなる群より選択される放射性ハロゲンである)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0125】
実施形態2:Yが、トリメチルスタンニル(SnMe)、トリ-n-ブチルスタンニル(SnBu)およびトリメチルシリル(SiMe)からなる群より選択されるアルキル金属放射性ハロゲン前駆体である、実施形態1に記載の化合物。
【0126】
実施形態3:Yが、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atからなる群より選択される放射性ハロゲンである、実施形態1に記載の化合物。
【0127】
実施形態4:MMCMが、活性エステルまたは(Gly)(mは1であるかまたはそれを超える)である、実施形態1~3のいずれかに記載の化合物。
【0128】
実施形態5:MMCMが、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、テトラフルオロフェノール(TFP)エステル、イソチオシアネート基またはマレイミド基からなる群より選択される、実施形態1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【0129】
実施形態6:MMCMがGly-Gly-Glyである、実施形態1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【0130】
実施形態7:Lが(CH(p=1~6)である、実施形態1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【0131】
実施形態8:上記必要に応じた刷子縁酵素切断可能ペプチドが、Gly-Lys、Gly-TyrおよびGly-Phe-Lysからなる群より選択される、実施形態1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【0132】
実施形態9:以下の構造:
【化11】

により表される、実施形態1~8のいずれかに記載の化合物。
【0133】
実施形態10:N-スクシンイミジル3-グアニジノメチル-5-[131I]ヨードベンゾエートまたはN-スクシンイミジル3-[211At]アスタト-5-グアニジノメチルベンゾエートである、実施形態9に記載の化合物。
【0134】
実施形態11:生体分子に付着した実施形態1~10のいずれか一項に記載の化合物を含む、放射標識生体分子または中間体。
【0135】
実施形態12:上記生体分子が、抗体、抗体断片、VHH分子、アプタマーまたはそれらの変形物からなる群より選択される、実施形態11に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0136】
実施形態13:前記標識生体分子がVHHである、実施形態11または12に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0137】
実施形態14:前記VHHがHER2を標的にする、実施形態13に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0138】
実施形態15:前記VHHが、配列番号1~5に記載されている配列から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態14に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0139】
実施形態16:薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と併せて、実施形態11~15のいずれかに記載の(上記化合物が補欠分子化合物の形態である)放射標識生体分子を含む、医薬組成物。
【0140】
実施形態17:式2により表される化合物(補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体を含む):
【化12】

(式中、
MCは、多座金属キレート部分であり;
Cmは、チオ尿素、アミドまたはチオエーテルであり;
は、結合、置換または非置換アルキル鎖、置換または非置換アルケニル鎖、一方または両方の末端にNH、COまたはSを必要に応じて有する置換または非置換アルキニル鎖およびポリエチレングリコール(PEG)鎖から選択され;ならびに
Tは、実施形態1~10のいずれかに記載の化合物である)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0141】
実施形態18:MCが大環状構造である、実施形態17に記載の化合物。
【0142】
実施形態19:MCが、DOTA、TETA、NOTPおよびNOTAから選択される、実施形態17に記載の化合物。
【0143】
実施形態20:MCが非環式多座配位子である、実施形態17に記載の化合物。
【0144】
実施形態21:MCが、EDTA、EDTMPおよびDTPAから選択される、実施形態17に記載の化合物。
【0145】
実施形態22:上記MCに結合した金属をさらに含む、実施形態17~21のいずれか一項に記載の化合物。
【0146】
実施形態23:上記金属が、177Lu、64Cu、111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thからなる群より選択される、実施形態21に記載の化合物。
【0147】
実施形態24:Yがアルキル金属部分である(および上記化合物が放射性ハロゲン前駆体である)、実施形態17~23のいずれか一項に記載の化合物。
【0148】
実施形態25:上記アルキル金属部分が、トリメチルスタンニル(SnMe)、トリ-n-ブチルスタンニル(SnBu)およびトリメチルシリル(SiMe)からなる群より選択されるアルキル金属部分である、実施形態24に記載の化合物。
【0149】
実施形態26:Yが、放射性ハロゲン、例えば75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iまたは211Atである(および上記化合物が補欠分子化合物である)、実施形態17~23のいずれか一項に記載の化合物。
【0150】
実施形態27:生体分子に付着した実施形態17~26のいずれか一項に記載の化合物を含む、放射標識生体分子または中間体。
【0151】
実施形態28:上記生体分子が、抗体、抗体断片、VHH分子およびアプタマーからなる群より選択される、実施形態27に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0152】
実施形態29:前記標識生体分子がVHHである、実施形態27に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0153】
実施形態30:前記VHHがHER2を標的にする、実施形態29に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0154】
実施形態31:前記VHHが、配列番号1~5に記載されている配列から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態30に記載の放射標識生体分子または中間体。
【0155】
実施形態32:薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と併せて、実施形態27~31のいずれかに記載の(上記化合物が補欠分子化合物である)放射標識生体分子を含む、医薬組成物。
【0156】
実施形態33:癌を処置するための方法であって、それを必要とする個体に、有効量の実施形態11~15もしくは27~31のいずれか一項に記載の放射標識生体分子または有効量の実施形態16もしくは32に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0157】
本開示は、上記実施形態の2つ、3つ、4つまたはそれよりも多くの任意の組み合わせを含むだけではなく、本開示に記載されるいずれか2つ、3つ、4つまたはそれを超える特徴または要素が本明細書の特定の実施形態で明示的に組み合わされているかにかかわらず、このような特徴または要素の組み合わせも含む。
【0158】
以下の実施例は、限定ではなく例示として提供される。
【実施例0159】
実験
実施例1:SIB-Arg
【化13】

スキーム1:SIB-Arg標準の合成アプローチ
【化14】

スキーム2:SIB-Argのスズ前駆体の合成アプローチ
【化15】

スキーム3:放射性ハロゲン化SIB-Argの合成アプローチ
【0160】
D-アルギニンを含む0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)の溶液(174.2mg;3.5ml中1mmol)を、ビス(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)5-ヨードイソフタレート(486.2mg;1mmol)を含むテトラヒドロフラン(THF;5.0ml)の溶液に徐々に添加する。混合物を室温で撹拌し、反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)により追跡する。溶媒を蒸発させた後、粗物質を逆相セミ分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供する。同じ手順にしたがって、1mmol(524mg)のビス(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)5-(トリメチルスタンニル)イソフタレートを1mmolのD-アルギニンとコンジュゲートする。標準条件を使用してスズ前駆体を放射性ハロゲン化し、精製し、次いで、高分子にコンジュゲートする。
実施例2:Arg-Gly-Tyr-PEG-SIB
【0161】
グアニジンを有するアミノ酸アルギニン、刷子縁酵素切断可能リンカージペプチドGlyTyrを含有する分子であって、PEGリンカーを介してSIB部分に接続された分子(Arg-Gly-Tyr-PEG-SIB)は、スキーム4~6に示されている。標準的なヨード脱スタンニル化反応を使用して、この分子の放射標識バージョン、例えばArg-Gly-Tyr-PEG-[131I]SIBを対応するスズ前駆体から得る。
【化16】

スキーム4:Arg-Gly-Tyr-PEG-SIB標準の合成
【化17】

スキーム5:Arg-Gly-Tyr-PEG-SIBのスズ前駆体の合成
【化18】

スキーム6:放射性ハロゲン化Arg-Gly-Tyr-PEG-SIBの合成
【0162】
固相ペプチド合成によりN-アセチルアルギニニル-グリシル-チロシンを合成し、PEGジアミンにカップリングする(n=2~4)。あるいは、PEGジアミンを塩化トリチル樹脂にアンカリングし、3つのアミノ酸を連続的に付着させ得る。得られたペプチド誘導体(1mmol)を、ビス(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)5-ヨードイソフタレート(486.2mg;1mmol)を含むTHFと0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)との混合物と反応させる。反応の進行を逆相HPLCにより追跡し、完了したら、逆相セミ分取HPLCにより生成物を単離する。ビス(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)5-ヨードイソフタレートをビス(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)5-(トリメチルスタンニル)イソフタレートに置き換えることにより、同様の方法でスズ前駆体を合成する。スズ前駆体を放射性ハロゲン化し、標準条件を使用して高分子とのコンジュゲーションのために精製する。
実施例3:DOTA-PEG-SIB
【0163】
DOTA-PEG-SIBの合成スキームは、スキーム7に示されている。同じアプローチを使用して、スズ前駆体を合成し得る。標準条件を使用して、放射性ヨウ素でスズ前駆体を標識し得る;ヨード誘導体およびスズ誘導体の両方に存在するDOTA部分を非放射性ルテチウムと錯体化させ得る。SIB-DOTA(Vaidyanathanら、(2012)Bioorg.Med.Chem.20(24):6929-6939)とは異なり、DOTA大環状分子の4個のCOOH基はすべて、金属イオンとの錯体化に利用可能であり、PEGリンカーが疎水性6炭素アルキル鎖に取って代わる。また、重要なことに、リンカーは、刷子縁切断可能アミノ酸配列を含み得る。
【化19】

スキーム7:DOTA-PEG-SIBの合成
【0164】
5-(tert-ブトキシ)-5-オキソ-4-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン酸(DOTAGAテトラ-t-Buエステル;30mg、43μmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(13.8mg、120μmol)、N-Boc-2-{2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エチルアミン(35mg、120μmol)およびEDC(18.6mg、120μmol)を含むDMF(0.5mL)の混合物を20℃で一晩撹拌する。次いで、それをセミ分取逆相HPLCにより精製して、トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2,2,24,24-テトラメチル-4,18,22-トリオキソ-3,8,11,14,23-ペンタオキサ-5,17-ジアザペンタコサン-21-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテートを油状物(16mg、16μmol、収率39%)として得る。LRMS (LCMS-ESI) m/z: 975.7 (M+H).トリフルオロ酢酸(300μl)を上記生成物(16mg、16μmol)に添加し、得られた溶液を20℃で一晩撹拌する。TFAを蒸発させて、2,2’,2’’-(10-(1-アミノ-16-カルボキシ-13-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザヘキサデカン-16-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸を油状物(10mg、15.4μmol、収率96%)として得る。LRMS (LCMS-ESI) m/z: 651.3 (M+H).1当量の各試薬および1当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミンを含むDMFを反応させることにより、上記生成物をビス(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)5-ヨードイソフタレートにカップリングする。生成物を逆相HPLCにより精製し、177Luなどの放射性金属によるその後の標識のために高分子とコンジュゲートする。
実施例4:プレコンジュゲーション-概念
【0165】
前述の実施例は、最初に(スズまたは他のアルキル金属前駆体から)放射性ハロゲン化分子を合成し、次いで放射標識分子を高分子にカップリングすることからなるアプローチを示す。代替アプローチは、最初に放射性ハロゲンの前駆体を高分子と反応させ、次いでこのタンパク質-前駆体コンジュゲートを放射標識することである。この第2のアプローチはプレコンジュゲーションと称され、合成時間の減少(放射活性に重要)および全体収率の増加を含むいくつかの潜在的利点を有する。放射性ハロゲン標識ではなく放射性金属標識の一般的なアプローチであるプレコンジュゲーション代替法では、それらの化学的性質の違いにより、最初に、スズ含有前駆体分子を高分子にコンジュゲートする。次いで、このような誘導体化高分子を放射性ハロゲン化し得るが、好ましくは、この手順を6.5未満のpHで実施する。このアプローチは、スキーム7(非放射性ルテチウムとの錯体化)に示されている薬剤を使用して、スキーム8に示されている。
【化20】

スキーム8:タンパク質とLu-DOTA-PEG-SIBスズ前駆体とのプレコンジュゲーション、および得られたコンジュゲートの放射性ハロゲン化
【0166】
あるいは、177Luなどの放射性金属による標識のために、非錯体化DOTA部分を有するヨード誘導体を使用し得る。例えば、177Lu、177LuCl(2Ci/mlの場合、10μlの0.05M HClを0.15M酢酸アンモニウム緩衝液で希釈し、100~1000μgのDOTA-PEG-SIBと反応させ、反応が完了したら、標準的なサイズ排除クロマトグラフィー法により精製する。
【0167】
さらに、非錯体化DOTA部分を有するスズ誘導体を高分子とコンジュゲートし、次いで、放射性金属および放射性ハロゲンの両方で標識し得る。
実施例5:プレコンジュゲーション-実験的アプローチ
【0168】
ヨード誘導体について上記に記載されているのと同じ手順にしたがって、DOTAGA誘導体2,2’,2’’-(10-(1-アミノ-16-カルボキシ-13-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザヘキサデカン-16-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸をビス(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)5-(トリメチルスタンニル)イソフタレートにカップリングする。次いで、それを非放射性ルテチウムと錯体化する。このために、50μmolのスズ誘導体を、5当量のLuClを含む10mlの0.4M酢酸緩衝液(pH5.2)で処理する。反応の進行を逆相HPLCにより追跡し、ルテチウム錯体をセミ分取逆相HPLCにより精製する。次いで、複合体を高分子にコンジュゲートする。このために、高分子を含む0.2M炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)の溶液(10nmol/ml)を、補欠分子剤を含むDMSOの溶液(25mM;5μl、125nmol)に添加し、混合物を20℃で1時間インキュベートする。得られた高分子-補欠分子団コンジュゲートを単離し、同時に、適切な分子量カットオフ(例えば、VHHの場合には10kDa)を有するVivaSpin限外濾過ユニット(GE Healthcare)で濾過することにより、緩衝液を0.2Mアセテート(pH5.5)に交換する。次いで、改変高分子をpH5で放射性ハロゲン化する。
実施例6:放射性ヨウ素化の前の担体ヨウ素による高分子のプレヨウ素化
【0169】
(アルキル金属補欠分子剤をプレコンジュゲートし、続いて、放射性ハロゲン化を実施する)上記戦略では、特に放射性ヨウ素化の欠点の1つは、目的の放射標識部位(すなわち、アルキル金属基を有する部分)に加えて、高分子中に存在する構成チロシン残基も放射性ヨウ素化され得ることである。放射性ヨウ素をチロシン上に置くことの問題は、内因性脱ヨウ素酵素の作用により、放射活性が体内で一旦放出され、癌細胞の高分子に局在化しないことである。より低いpH(4~5)で放射性ヨウ素化を行うことによりこれを最小にし得るが、それを完全に回避し得ない。この潜在的問題を回避する1つのアプローチは、最初に、非放射性ヨウ素をこれらのチロシン残基に導入してから、高分子を放射性ヨウ素化に供することである。これらの同じ内因性脱ヨウ素酵素により媒介されると、構成チロシン残基上の非放射性ヨウ素が除去され、それにより、元のチロシン構造が復元され、想定標的に対する高分子の親和性が維持される可能性が高い。クロラミン-Tなどの酸化剤の存在下で過剰なヨウ化ナトリウムでタンパク質を処理することにより、タンパク質の非放射性ヨウ素化を簡単に達成し得る。
【0170】
このアプローチの例として、VHHタンパク質を含む0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を、各15当量のヨウ化ナトリウムおよびクロラミン-Tと室温で5~10分間反応させる。重亜硫酸ナトリウム(2モル当量のクロラミン-T)の添加により、反応を停止する。ゲル濾過または限外濾過により、ヨウ素化タンパク質を精製する。
実施例7:
【0171】
CNS疾患の標的放射線療法。中枢神経系(CNS)の癌を処置するための魅力的な戦略は、本発明の小生体分子などのベクターを使用して、放射性核種を悪性細胞集団に選択的に送達する標的放射線療法である。標的放射線療法の利点は、目的の臨床適用の制約にベストマッチする特性を有する放射性核種を選択し得ることであり、これは、CNS腫瘍の場合、正常CNS組織の照射を最小にする組織範囲の放射線を選択することを意味する。例えば、新生物性髄膜炎(NM)は、CSF中では浮遊性癌細胞として現れ、区画壁上ではシート状沈着物として現れる。放射線線量測定計算は、脊髄への線量を最小にしながら腫瘍細胞への放射線量沈着を最大化にすることによるNMの処置にとって、短距離放射線を放出する放射性核種が最適であることを示している。
【0172】
VHH分子。単一ドメイン抗体断片(sdAb)またはナノボディとしても公知のVHH分子はCamelidaeに由来し、インタクトなmAbよりも1桁小さな分子量(約15kDa)を有する天然抗体の最小抗原結合断片である。人工アフィボディ足場とは異なり、VHHは、免疫化ラクダまたはラマからのクローニングおよびファージディスプレイパニングによる選択により、ナノモルからピコモルの親和性で容易に生成される。他の小さなタンパク質系標的化ベクターと比較して、VHHは、一般に、熱的および化学的安定性、低い免疫原性、溶解性、発現収率、多量体の構築、および隠れたまたは非一般的なエピトープを認識する能力の点で大きな利点を提供する。現在のところ、単量体フォーマットおよび多量体フォーマットの両方のVHHは、炎症を含む多くの疾患の治療薬として臨床評価を受けている。抗HER2 VHHのパネルを、99mTc、68Ga、18F、131Iおよび177Luを含む様々な放射性核種で標識した。これらの放射標識VHHは、3~6%ID/gの範囲内のピーク腫瘍取り込みと、腎臓を除くすべての正常組織からの迅速なクリアランスとを示した。本発明は、有意に高い腫瘍取り込み、腎臓を含む正常組織における低い蓄積、改善された放射標識効率を示し、HER2およびHER1などの内在化受容体の標的化において使用するためのより強力な放射標識生体分子を提供する。
【0173】
アルファ粒子放射体:CNS腫瘍標的放射線療法の理論的根拠。現在のCNS腫瘍処置において使用される外部ビーム放射線のように、131Iなどのベータ放射体は、低エネルギー付与の放射線である。他方、α粒子は高線エネルギー付与(LET)放射線であり、その結果、癌細胞を殺傷する能力は、低酸素、線量率効果または細胞周期位置により損なわれず、CNS腫瘍の標的放射線療法に対する魅力が高まる。低LET放射線の場合とは異なり、細胞は、アポトーシス機構により腫瘍細胞を殺傷することが示されているα粒子により誘発されるDNA二本鎖切断を修復する限定的な能力を有するにすぎないので、耐性機構はα粒子の有効性を制限しない。組織内のα粒子の範囲は、ほんの数個の細胞直径に相当するわずか50~80μmであり、腫瘍隣接正常CNS組織の照射を最小にしながらCSF中の自由浮遊腫瘍細胞、脊髄上の薄い板状の腫瘍および頭蓋内転移を破壊するために理想的に適するはずである。したがって、ベータ放射体およびアルファ放射体は両方とも、本発明により包含される。
実施例8:HER-2発現癌の標的放射線療法のための補欠分子剤としての放射標識iso-SAGMBおよびiso-SGMIB
1.イントロダクション
【0174】
乳房、非小細胞肺、胃、結腸および卵巣を含む複数の種類の癌を有する患者の一部では、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)が過剰発現される。乳癌の最大20~30%がHER2を過剰発現し、HER2は、中枢神経系(CNS)へのより大きな転移傾向を含むより侵襲的表現型を付与することが示されている。また、抗HER2モノクローナル抗体(mAb)トラスツズマブで処置された患者では、脳転移および軟髄膜癌腫症のより高い発生率が報告されている。多くの場合、トラスツズマブは、多くの患者において全身性疾患を制御することにより、生存を延長する;しかしながら、この大きなタンパク質の血液脳関門不透過性に起因する不十分な送達により、これは、トラスツズマブが有効ではないCNS病変の機会を増加させる。
【0175】
HER2陽性CNS疾患を有する患者は、厳しい予後を有する;したがって、神経機能の障害(これは、従来の放射線療法を含む非特異的処置の不幸な副作用であり得る)を伴わないより有効であり得る処置に対する喫緊の必要性がある。癌処置の特異性を増加させるための魅力的なアプローチは、mAbまたは他のベクターを使用して、細胞傷害性放射性核種を癌細胞に選択的に送達する標的放射線療法である。CNS内の疾患の状況では、α粒子(ごくわずかな細胞直径(50~80μm)の組織範囲の放射線)は、正常組織のクロスファイア照射を最小にし得るので有利であり得る。また、α粒子は、高い相対的生物学的有効性を有し、その破壊を達成するために必要な細胞当たりの横断がごくわずかである。
【0176】
HER2陽性癌の処置のためのα粒子の治療可能性の初期調査として、7.2時間の半減期のα放射体211Atでトラスツズマブを標識し、3つのHER2発現ヒト乳癌腫株に対するその細胞毒性をインビトロで評価した。211At標識トラスツズマブの相対的生物学的有効性は、従来の外部ビーム療法よりも約10倍高く、生存の有意な減少が達成され、結合した細胞当たりの211At原子はごくわずかであった。HER2陽性乳癌性髄膜炎モデルにおいてその後の研究を実施して、211At標識トラスツズマブの単回髄腔内注射の治療有効性を評価した。いくつかの長期生存体では、生存期間中央値の有意な延長が観察された;しかしながら、髄腔内区画への直接注射であっても、いくつかの動物では、神経軸領域が処置を免れたことが組織病理学的分析により明らかになった。インタクトなmAbは、それらの大きなサイズが均一な送達を妨げ、静脈内適用の場合には遅い正常組織クリアランスをもたらすので、211Atなどの短命なα放射体と組み合わせて使用するために理想的ではない。
【0177】
これらの制限を克服するために、組換え断片、例えばダイアボディおよびミニボディならびにより小さな足場、例えばアフィボディを含む様々なより小さなHER2標的タンパク質が開発されている。Camelidae重鎖のみ抗体に由来し、単一ドメイン抗体断片(sdAb)である重鎖のみ抗体の可変ドメイン(VHH)またはナノボディとして公知の別の魅力的な標的放射線療法プラットフォームは、12~15kDaの分子量を有する。これらのVHHは、nMからpMの親和性、高い熱的および化学的安定性、ならびに低い免疫原性で比較的安価に生成され得る。また、それらの小さなサイズにより、それらは、血液および正常組織から迅速に除去され、腫瘍に効率的に浸透するが、これは、211Atのような短命なα放射体と共に使用するために特に有利な特性である。最後に、動物モデルおよび最近の臨床イメージング試験では、高いHER2親和性を有するいくつかのVHHが生成され、HER2陽性癌を標的にすると報告されている。
【0178】
211Atで5F7 VHHを標識するための試薬N-スクシンイミジル3-[211At]アスタト-4-グアニジノメチルベンゾエート([211At]SAGMB)および新規残留剤N-スクシンイミジル3-[211At]アスタト-5-グアニジノメチルベンゾエート(iso-[211At]SAGMB)の潜在的有用性を評価した。並行して、ベータ粒子放射体131Iで標識した類似試薬(N-スクシンイミジル4-グアニジノメチル-3-[131I]ヨードベンゾエート([131I]SGMIB)およびN-スクシンイミジル3-グアニジノメチル-5-[131I]ヨードベンゾエート(iso-[131I]SGMIB))の潜在的有用性を評価した。HER2発現乳癌腫細胞および異種移植片において、4つの残留剤の腫瘍標的化特性を評価した。
2.材料および方法
2.1.概要
【0179】
注記される場合を除いて、すべての試薬はSigma-Aldrichから購入した。0.1N NaOH中ナトリウム[131I]ヨージド(44.4TBq/mmol)は、Perkin-Elmer Life and Analytical Sciences(Boston,MA,USA)から入手した。Duke University CS-30サイクロトロンにおいて、209Bi(α,2n)211At反応を介して、28MeVのα粒子を天然ビスマス金属標的に衝突させることにより、アスタチン-211を生産した。乾式蒸留により標的からアスタチン-211を単離し、PEEKまたはPTFEチューブ中に捕捉し、最後に、以前に記載されているようにN-クロロスクシンイミド(NCS)を含むメタノールの溶液(0.2mg/mL)で抽出した。以前に報告されているように、スクシンイミジル4/5-((1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル)-3-ヨードベンゾエート(Boc-SGMIB/iso-SGMIB)およびそれらの対応するスズ前駆体(Boc-SGMTB/iso-SGMTB)を合成した。Model 126プログラマブル溶媒モジュール、Model 166 NM可変波長検出器およびScanRam RadioTLCスキャナー/HPLC検出器の組み合わせ(LabLogic;Brandon,FL,USA)を備えるBeckman Gold HPLCシステムを使用して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を実施した。Lauraソフトウェア(LabLogic)を使用して、HPLCデータを取得および処理した。4.6×250mm Partisilシリカカラム(10μm;Alltech,Deerfield,IL,USA)を使用して順相HPLCを実施し、1mL/分の流速で、0.2%酢酸を含む75:25ヘキサン:酢酸エチル(v/v)の混合物を用いてアイソクラティックモードで溶出させた。ゲル濾過用使い捨てPD10脱塩カラムは、GE Healthcare(Piscataway,NJ,USA)から購入した。移動相としてPBS(pH7.4)を用いてシリカゲル含浸ガラス繊維シート(Pall Corporation,East Hills,NY,USA)を使用して、インスタント薄層クロマトグラフィー(ITLC)を実施した。上記TLCスキャナーを使用して、またはシートを小さなストリップに切断して自動ガンマカウンターでカウントすることにより、放射活性について展開シートを分析した。LKB 1282(Wallac,Finland)またはPerkin Elmer Wizard II(Shelton,CT,USA)自動ガンマカウンターのいずれかを使用して、様々なサンプル中の放射活性レベルを評価した。
2.2.抗HER2 5F7 VHH分子
【0180】
抗HER2 5F7 VHH分子は、Ablynx NV(Ghent,Belgium)からの寄贈として入手し、SKBR3ヒト乳癌腫細胞で免疫化されたラマ由来のファージライブラリーから選択した。グリシン-グリシン-システイン(GGC)C末端テールを省略して、純粋な単量体調製物としたことを除いて、その生産、精製および特性評価は、以前に記載されているとおりであった(Pruszynski M,Koumarianou E,Vaidyanathan G,Revets H,Devoogdt N,Lahoutte Tら、Targeting breast carcinoma
with radioiodinated anti-HER2 Nanobody.Nucl Med Biol 2013;40:52-9(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
2.3.細胞および細胞培養条件
【0181】
細胞培養試薬は、Invitrogen(Grand Island,NY,USA)から購入した。10%ウシ胎仔血清(FCS)、ストレプトマイシン(100μg/mL)およびペニシリン(100IU/mL)(Sigma-Aldrich,MO,USA)を含有するDMEM/F12培地で、BT474M1ヒト乳癌腫細胞を成長させた。細胞を5%CO加湿インキュベーター中、37℃で培養した。
2.4.[131I]SGMIBおよびiso-[131I]SGMIBの合成
【0182】
ほとんどの実験において、以前に報告されているように、酸化剤としてtert-ブチルヒドロペルオキシドを使用し、溶媒としてクロロホルムを使用した対応するスズ前駆体の放射性ヨード脱スタンニル化により、[131I]SGMIBおよびiso-[131I]SGMIBを合成した。Vaidyanathan G,Zalutsky MR.Synthesis of N-succinimidyl 4-guanidinomethyl-3-[*I]iodobenzoate:a radio-iodination agent for labeling internalizing proteins and peptides.Nature Prot 2007;2:282-6およびChoi J,Vaidyanathan G,Koumarianou E,McDougald D,Pruszynski M,Osada Tら、N-Succinimidyl guanidinomethyl iodobenzoate protein radiohalogenation agents:influence of isomeric substitution on radiolabeling and target cell residualization.Nucl Med Biol 2014;41:802-12(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。より最近のランでは、酸化剤としてNCSを使用し、メタノール中で反応を実施した。このために、NCSを含むメタノールの溶液(0.2mg/mL;100μL)、酢酸(1μL)および[131I]ヨージド(1~2μL;37~74MBq)をその順序で、50μgの必要なスズ前駆体を含有するハーフドラムガラスバイアルに添加し、時折バイアルを回転させながら、反応を20℃で15分間進行させた。溶媒のほとんどをアルゴン流で蒸発させ、残渣を200μLの各酢酸エチルおよび水に分配した。酢酸エチル層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、酢酸エチルを蒸発させた。残留放射活性をHPLC移動相(200μL)で再構成し、順相カラムに注入した。単離および脱保護の手順は、[211At]SAGMBおよびiso-[211At]SAGMBについて以下に記載されているとおりであった。
2.5.[211At]SAGMBおよびiso-[211At]SAGMBの合成
【0183】
アスタチン-211を含むNCS/メタノール(30~56MBq)を、200μgの必要なスズ前駆体を含有するバイアルに添加し、続いて、10μLの酢酸を添加した。反応混合物を20℃で30分間インキュベートし、穏やかなアルゴン流でメタノールを蒸発させた。残留混合物を20μLの(75:25)ヘキサン/酢酸エチルに再溶解させ、順相HPLCカラムに注入した。Boc-iso-[211At]SAGMBまたはBoc-[211At]SAGMB(t=約25分)を含有するHPLC画分を単離し、溶媒をアルゴン流下で20分間蒸発させた。100μLのトリフルオロ酢酸(TFA)で20℃で10分間処理することにより、Boc保護基を除去した。TFAの完全な除去を確実にするために、酢酸エチル添加(50μL)および蒸発のプロセスを3回実施した。次いで、残留放射活性を5F7 VHH標識にそのまま使用した。
2.6.5F7 VHHの放射標識
【0184】
以前に報告されているように、[131I]SGMIBまたはiso-[131I]SGMIBによる5F7 VHHのヨウ素131標識を実施した。Choi J,Vaidyanathan G,Koumarianou E,McDougald D,Pruszynski M,Osada Tら、N-Succinimidyl guanidinomethyl iodobenzoate protein radiohalogenation agents:influence of isomeric substitution on radiolabeling and target cell residualization.Nucl Med Biol 2014;41:802-12(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。211標識では、5F7 VHHを含む0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.5)の溶液(50μL、2mg/mL)の溶液を、[211At]SAGMBまたはiso-[211At]SAGMB放射能を含有するバイアルに添加し、混合物を20℃で20分間インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で溶出するPD-10カラムによるゲル濾過により、標識5F7 VHHを精製した。使用前に、PD-10カラムをヒト血清アルブミンで前処理して、非特異的結合を最小にした。
2.7.品質管理手順
【0185】
ITLCおよびSDS-PAGEにより各131I-および211At標識5F7調製物を評価して、それぞれタンパク質関連放射活性ならびに凝集体および多量体種の存在を決定した。ITLCでは、移動相としてPBS(pH7.4)を使用した;この系では、インタクトなタンパク質は開始点に留まり(R=0)、より低分子量の放射性種は0.7~0.8のR値で移動した。以前に記載されているように、非還元条件下におけるSDS-PAGEおよび蛍光イメージングを実施した。HER2細胞外ドメインでコーティングした磁気ビーズ、または陰性対照としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用してLindmo法により、標識5F7 VHHコンジュゲートの免疫反応性画分を決定した。簡潔に言えば、標識5F7のアリコート(約5ng)を2倍濃度のHER2およびBSAコーティングビーズの両方と共にインキュベートし、無限HER2過剰に対して推定される特異的結合として免疫反応性画分を計算した。
2.8.放射標識5F7コンジュゲートの結合親和性
【0186】
BT474M1乳癌腫細胞を細胞8×10個/ウェルの密度で24ウェルプレートにプレーティングし、37℃で24時間インキュベートする。次いで、細胞を4℃で30分間順化させてから、漸増濃度の放射標識5F7コンジュゲート(0.1~100nM)を添加した。次いで、細胞を4℃で2時間インキュベートし、未結合放射活性を含有する培地を除去し、細胞を冷PBSで2回洗浄した。最後に、1N NaOH(0.5mL)で37℃で10分間処理することにより、細胞を可溶化した。自動ガンマカウンターを使用して、細胞結合放射活性をカウントした。非特異的結合を決定するために、100倍過剰のトラスツズマブもインキュベーション培地に添加したことを除いては上記のように、並行アッセイを実施した。GraphPad Prismソフトウェアを使用してデータをフィッティングして、K値を決定した。
2.9.内在化アッセイ
【0187】
BT474M1乳癌腫細胞を使用して、内在化および細胞処理アッセイを対標識形式で実施した。細胞8×10個/ウェルの密度の細胞を含む3mLの培地を6ウェルプレートにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした後、4℃にし、30分間インキュベートした。培地を除去し、各5nmolの[211At]SAGMB-5F7+[131I]SGMIB-5F7またはiso-[211At]SAGMB-5F7+iso-[131I]SGMIB-5F7のいずれかを含有する新鮮培地を補充し、細胞を4℃でさらに1時間インキュベートした。未結合放射活性を含有する細胞培養上清を除去し、37℃の新鮮培地を添加した。37℃で1、2、4、6および24時間インキュベートした後、内在化されたか、細胞膜上にあったか、または細胞培養上清に放出された初期細胞結合放射活性の割合を、以前に記載されているように決定した。非特異的取り込みを決定するために、100倍モル過剰のトラスツズマブもウェルに添加したことを除いては上記のように、並行実験を実施した。
2.10.対標識生体内分布実験
【0188】
デューク大学施設内動物管理使用委員会により確立されたガイドラインにしたがって、動物実験を実施した。以前に記載されているように、SCIDマウスにおいて皮下BT474M1腫瘍異種移植片を確立し(Pruszynski M,Koumarianou
E,Vaidyanathan G,Revets H,Devoogdt N,Lahoutte Tら、Improved tumor targeting of anti-HER2 nanobody through N-succinimidyl 4-guanidinomethyl-3-iodobenzoate radiolabeling.J Nucl Med 2014;55:650-6(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、腫瘍が約350~500mmの体積に達したら、2つの対標識生体内分布研究を実施した。5匹のマウスの群は、約185kBqの各標識分子の尾静脈注射を受けた。第1の実験では、[211At]SAGMB-5F7(178MBq/mg)および[131I]SGMIB-5F7(174MBq/mg)を投与し、第2のものでは、iso-[211At]SAGMB-5F7(85MBq/mg)およびiso-[131I]SGMIB-5F7(89MBq/mg)を注射した。このように、2つの各異性体配置について、腫瘍標的化およびインビボ安定性に対する211At-for-131I置換の効果を直接比較することができた。注射後1時間、2時間、4時間および21時間に、生体内分布を評価した;第2の研究では、14時間のさらなる時点が含まれていた。血液および尿を採取し、イソフルランの過剰摂取により、マウスを屠殺した。腫瘍および正常組織を単離し、ブロット乾燥し、血液および尿と一緒に計量した。自動ガンマカウンターを使用して、5%注射標準液と一緒にすべての組織サンプルを、131Iおよび211At放射能についてカウントし、注射線量率(%ID)/器官/組織gを計算した。
2.11.統計分析
【0189】
データは、平均±標準偏差として示されている。コインキュベート(インビトロ)または同時投与(インビボ)した標識コンジュゲートの挙動の差を、Microsoft Office excelプログラムを使用した対応のある両側スチューデントt検定を用いて、統計的有意性について分析し、コインキュベートまたは同時投与しなかった標識コンジュゲートの挙動の差を、対応のないスチューデントt検定を用いて試験した。P値<0.05の差は、統計的に有意とみなされた。
3.結果
3.1.放射標識
【0190】
4つの放射性ハロゲン化5F7 VHHコンジュゲートの合成スキームは、スキーム9に提供されている。
【化21】

スキーム9:[211At]SAGMB/iso-[211At]SAGMBを使用した211Atによる、または[*I]SGMIB/iso-[*I]SGMIBを使用した放射性ヨウ素による5F7 VHH分子の合成
【0191】
同一条件下において、iso-[211At]SAGMB-Bocの合成の放射化学的収率は、[211At]SAGMB-Bocの62.6±2.3%(n=6)と比較して66.8±2.4%(n=7)であった。2つの収率の差は小さかったが、それは統計的に有意であった(P<0.05)。[211At]SAGMB-Bocの合成の放射化学的収率は、酸化剤としてTBHPを使用し、溶媒としてクロロホルムを使用した場合に以前に報告されたものと同様であった。本明細書で報告されるほとんどの実験では、酸化剤としてTBHPを使用して、[131I]SGMIBおよびiso-[131I]SGMIBを合成した;しかしながら、いくつかの研究では、酸化剤としてNCSを使用し、溶媒としてメタノールを使用して、[131I]SGMIBおよびiso-[131I]SGMIBを合成したところ、TBHPおよびクロロホルムを使用して得られたものよりもかなり高い69.2±4.2%(n=4)および84.0±4.5%(n=2)の放射化学的収率がそれぞれ得られた。
【0192】
TFAによるBoc-[211At]SAGMBおよびBoc-iso-[211At]SAGMBの処理により得られた[211At]SAGMBおよびiso-[211At]SAGMBとの反応により、211Atによる5F7 VHHの標識を達成した。同一条件下で実施した場合、5F7へのiso-[211At]SAGMB(39.5±6.8%;n=5)および[211At]SAGMB(38.4±15.6%;n=6)のコンジュゲーション効率は同様であった(P>0.05)。[131I]SGMIBおよびiso-[131I]SGMIBによる5F7の標識のコンジュゲーション効率は、それぞれ28.9±13.0%(n=6)および33.1±7.1%(n=6)であった。ITLC分析により得られた放射化学的純度は、それぞれiso-[211At]SAGMB-5F7、[211At]SAGMB-5F7、iso-[131I]SGMIB-5F7および[131I]SGMIB-5F7について98.9%、97.8%、98.6%および98.4%あった。図1に示されているように、非還元条件下で実施したSDS-PAGEにより、4つの放射性ハロゲン化5F7コンジュゲートの放射活性の98%超が、VHH単量体の分子量に対応する約15kDaの分子量を有する単一バンドに存在することが実証された。
3.2.免疫反応性画分および結合親和性
【0193】
5F7 VHHの標識がHER2結合を損なうかを決定するために、分子標的としてHER2の細胞外ドメインを使用して、対標識フォーマットで免疫反応性画分を決定した。それぞれiso-[211At]SAGMB-5F7、[211At]SAGMB-5F7、iso-[131I]SGMIB-5F7および[131I]SGMIB-5F7について、免疫反応性画分は81.3±0.9%、83.5±1.1%、81.8±1.4%および84.5±0.8%であると決定されたが、これは、使用した補欠分子剤にかかわらず、5F7 VHHが同程度に免疫反応性を保持することを示唆している。HER2発現BT474M1ヒト乳癌腫細胞で実施した飽和結合アッセイから得られた解離定数(K)値は、4つの標識コンジュゲートについて5nM未満であった(図2)。細胞(8×10個)を漸増量の標識VHHコンジュゲートと共にインキュベートし、特定の細胞結合放射活性を本明細書に記載されるように決定することに基づいて、図2のデータを得た。プロットを生成し、GraphPad Prismソフトウェアを使用してKd値を計算した。しかしながら、iso-[211At]SAGMB-5F7(3.0±0.1nM)では、[211At]SAGMB-5F7(4.5±0.4nM)と比較して有意に高い親和性結合(P<0.05)が観察された。iso-[131I]SGMIB-5F7および[131I]SGMIB-5F7のK値はそれぞれ1.3±0.2nMおよび2.4±0.2nMであったが、これは、iso-コンジュゲーションコンジュゲートの親和性がより高いことを示している。131I標識コンジュゲートは、それらの対応する211At標識5F7カウンターパートよりも有意に高い結合親和性を有していた(P<0.05)。
3.3.内在化アッセイ
【0194】
HER2発現BT474M1細胞を使用して対標識内在化アッセイを実施して、[211At]SAGMB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7(図3)および[131I]SGMIB-5F7およびiso-[131I]SGMIB-5F7(図4)によるインビトロ放射活性の細胞内捕捉の程度を決定した。2つの異なる実験から得られた2つのバージョンの標識5F7に基づいて、図3に表されているデータを生成した。図3に示されているように、それぞれ77.4±0.8%および67.2±1.1%の値が観察された場合、細胞結合(膜結合+内在化)および[211At]SAGMB-5F7により内在化した初期結合放射活性の割合は、24時間にわたってほぼ一定のままであった。一般に、補欠分子剤の性質の変化は、HER2陽性癌細胞の放射活性の残留に影響を及ぼさなかった。例えば、6時間の時点では、それぞれiso-[211At]SAGMB-5F7およびiso-[131I]SGMIB-5F7について、初期結合放射活性の69.5±1.2%および73.2±1.7%が細胞内区画に留まっていた。しかしながら、[131I]SGMIB-5F7および[211At]SAGMB-5F7の挙動とは異なり、24時間の時点におけるiso-[131I]SGMIB-5F7(49.0±3.6%)およびiso-[211At]SAGMB-5F7(48.4±5.5%)からの細胞内放射活性レベルは、1~6時間に観察されたものよりも有意に低かった(P<0.05)。
3.4.生体内分布研究
【0195】
皮下BT474M1乳癌異種移植片を有するSCIDマウスにおいて2回の対標識実験を実施して、[211At]SAGMB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7の組織分布をそれらの131I標識カウンターパートと直接比較した。21時間の期間(これは、211At崩壊の約3半減期に対応する)で得られた結果は、それぞれ表1および表2に要約されている。[211At]SAGMB-5F7の腫瘍取り込みは、注射後1~4時間では15~16%ID/gのままであり、次いで、21時間の時点では9.49±1.22%ID/gに低下した(図5)。放射性ヨウ素化コンジュゲートの値が約20%高かった(11.8±1.5%ID/g;P<0.05)21時間の時点を除いて、同時投与[131I]SGMIB-5F7についても同様の腫瘍取り込み値が観察された(図6)。第2の実験では、iso-[211At]SAGMB-5F7の腫瘍取り込みに関して、放射性ヨウ素化したカウンターパートと比較して同様の傾向が観察された。しかしながら、すべての時点において、iso-[211At]SAGMB-5F7の腫瘍蓄積は、[211At]SAGMB-5F7のものよりもほぼ50%高く(図5)、4時間の時点で23.4±2.2%ID/gのピークに達した(有意差、P<0.05、対応のないt検定による21時間の時点を除く)。同様に、すべての時点において、iso-[131I]SGMIB-5F7の腫瘍取り込みは、[131I]SGMIB-5F7のものよりも有意に高かった(図6)。腎臓を除いて、4つの5F7放射性コンジュゲート、特にiso-[211At]SAGMB-5F7およびiso-[131I]SGMIB-5F7の正常組織取り込みは低かった。腎臓では、iso-コンジュゲートの放射能レベルは、対応する非iso-コンジュゲートのものよりも有意に低く(対応のないt検定によりP<0.05)(図7および8)、211At標識コンジュゲートについては、差はあまり顕著ではなかった。211At標識化合物については、炭素-ハロゲン結合強度がより低いと予想されるので、甲状腺および胃(遊離アスタチドおよびヨウ化物を隔離することが公知の組織)の放射能レベルの比較は、これらのコンジュゲートの相対的インビボ安定性を解明することができる。4つの5F7 VHHコンジュゲートの注射後の甲状腺および胃における211Atおよび131I活性の取り込みは、それぞれ図9および10に要約されている。両211At標識5F7コンジュゲートの甲状腺および胃蓄積は、それらの131I標識同時投与カウンターパートで見られるよりも有意に高かった。しかしながら、甲状腺および胃放射能レベルは、iso-[211At]SAGMB-5F7では、[211At]SAGMB-5F7と比較して約2倍低かったが、これは、iso-[211At]SAGMB-5F7のインビボにおける脱アスタチン化程度がより低いことを示唆している。
【0196】
図11に示されているように、すべての組織において、iso-[211At]SAGMB-5F7の腫瘍対正常組織比は、[211At]SAGMB-5F7のものよりも有意に高かった。例えば、4時間の時点において、腫瘍対肝臓比、腫瘍対血液比、腫瘍対脾臓比および腫瘍対腎臓比は、[211At]SAGMB-5F7の7.31±1.26、32±4、7.11±1.47および0.67±0.08と比較して、iso-[211At]SAGMB-5F7ではそれぞれ18±4、63±13、21±3および1.50±0.25であった。同様に、すべての組織において、iso-[131I]SGMIB-5F7の腫瘍対正常組織比は、[131I]SGMIB-5F7のものよりも有意に高かった(図12)。最後に、放射性ヨウ素化5F7 VHHコンジュゲートの腫瘍対正常組織比は、対応する211At標識5F7 VHHコンジュゲートのものよりもかなり高かった。
4.考察
【0197】
本研究では、正荷電標識異化産物の生成を介して受容体媒介性内在化後に、放射性核種をHER2発現癌細胞に捕捉するように設計した2つの関連補欠分子剤[211At]SAGMBおよびiso-[211At]SAGMBを使用して、α粒子放出放射性ハロゲン211Atで抗HER2 5F7 VHHを成功裏に標識した。HER2発現乳癌腫細胞に対する211Atα粒子の高い細胞毒性は、インビトロおよびインビボの区画状況において、211At標識トラスツズマブを用いて実証されている。211Atは、標的放射線療法にとって多くの潜在的利点を有するが、そのα粒子の短距離組織範囲と7.2時間の半減期との組み合わせは、正常組織からの迅速なクリアランスと共に癌細胞への均一かつ長期の送達を迅速に達成するための戦略の開発を必要とする。この目標を達成するためのほとんどのアプローチは、mAb断片などの小分子を利用する;しかしながら、全mAbの場合とは異なり、211At標識mAb断片は甲状腺および胃における高い取り込みを示すが、これは、インビボにおける遊離211の放出を示している。HER2標的化空間内では、この挙動は、N-スクシンイミジル3-[211At]アスタトベンゾエート(SAB)(これは、対応する125I標識構築物よりも25~55倍高い胃および甲状腺レベルを示した)を使用して標識したアフィボディ(7kDa)で観察された。N-スクシンイミジルN-(4-[211At]アスタトフェネチルスクシナメート(SAPS)を使用して211Atで抗HER2ダイアボディも標識し、いくつかの有望な治療反応が得られたが、211At標識ダイアボディの生体内分布結果は報告しなかった。
【0198】
最適な211At標識抗HER2構築物を開発しようとして、上記インビボ安定性問題を検討するだけではなく、標識分子の結合および内在化後の癌細胞における放射活性封入の程度および期間を最大にする方法も検討することが重要である。加えて、正常組織における滞留時間を延長させずに、治療的に適切なレベルで迅速な腫瘍標的化を提供するタンパク質フォーマットを選択しなければならない。抗HER2 VHHSGMIBコンジュゲートで得られた優れた結果は、211Atで5F7 VHH標識するためのグアニジノメチル置換補欠分子団の潜在的有用性を評価する本研究の動機を提供した。GGCテールを有する(Pruszynski M,Koumarianou E,Vaidyanathan G,Revets H,Devoogdt N,Lahoutte Tら、Improved tumor targeting of anti-HER2 nanobody through N-succinimidyl 4-guanidinomethyl-3-iodobenzoate radiolabeling.J Nucl Med 2014;55:650-6,which is incorporated herein by referenceを参照のこと)および有しない(Vaidyanathan G,McDougald D,Choi J.,Koumarianou E,Weitzel D,Osada Tら、Preclinical evaluation of 18F標識 anti-HER2 nanobody conjugates for imaging HER2 receptor expression by immuno-PET.J Nucl Med 2016;57:967-73を参照のこと)5F7 VHHを、BT474M1異種移植片および両構築物を有するSCIDマウスにおけるSGMIB後に評価したところ、注射後2時間に腫瘍取り込みがピークに達したが、これは、このVHHが、211Atの7.2時間の半減期に適合する局在化動態を有することを示唆している。GGCテールを有しないバージョンは純粋な単量体として存在し、単量体と5F7-GGCの二量体との混合物(Pruszynski M,Koumarianou E,Vaidyanathan G,Revets
H,Devoogdt N,Lahoutte Tら、Improved tumor
targeting of anti-HER2 nanobody through
N-succinimidyl 4-guanidinomethyl-3-iodobenzoate radiolabeling.J Nucl Med 2014;55:650-6(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)と対比して有意に高い腫瘍局在化を示したので、これらの実験において使用するために、テールなし5F7構築物を選択した。
【0199】
アスタチン原子のサイズはヨウ素原子と比較して大きいので、211標識では、立体障害がさらに重要な要因であり得る。iso-[131I]SGMIBでは、[131I]SGMIBと比較して有意に高い放射性ヨウ素化およびタンパク質コンジュゲーション収率が観察されたことに基づいて、5F7 VHHの標識について、iso-[211At]SAGMB(1,3,5-異性体)および[211At]SAGMB(1,3,4-異性体)を両方とも評価した。iso-[211At]SAGMBの放射標識およびVHHコンジュゲーション収率は、[211At]SAGMBのものよりも高かったが、これらの差は有意ではなかった。これらの補欠分子団およびそれらの放射性ヨウ素化カウンターパートのコンジュゲーションは、HER2過剰発現BT474M1乳癌腫細胞への結合に対する優れた免疫反応性および親和性(<5nM)を有する単量体生成物をもたらした。[131I]SGMIB-5F7について得られた結果は、[131I]SGMIB-5F7-GGC構築物について以前に報告されているものとよく一致していた。Pruszynski M,Koumarianou E,Vaidyanathan G,Revets H,Devoogdt N,Lahoutte Tら、Improved tumor targeting of anti-HER2 nanobody through N-succinimidyl 4-guanidinomethyl-3-iodobenzoate radiolabeling.J Nucl Med 2014;55:650-6(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。両異性体では、211At標識5F7コンジュゲートの親和性は、対応する131I標識5F7 VHHコンジュゲートのものの約半分であった。いかなる作用機構にも縛られるものではないが、アスタチン原子のより大きなサイズおよび211Atα粒子の放射線分解効果は、結合親和性を減少させ得ると考えられる。それにもかかわらず、iso-[211At]SAGMB-5F7(3.0±0.1nM)および[211At]SAGMB-5F7(4.5±0.4nM)の結合親和性は、標的放射線療法としてのそれらの使用と適合するはずである。
【0200】
放射標識受容体標的タンパク質の結合および細胞プロセシング後の癌細胞における放射性核種捕捉の最大化は、標的放射線療法の有効性を増加させるはずである。トラスツズマブおよび5F7 VHHの両方を用いて実施した内在化アッセイにより、[*I]SGMIBまたはiso-[*I]SGMIBのいずれかによるこれらのHER2標的タンパク質の標識は、6時間まで同程度の放射性ヨウ素の細胞内捕捉をもたらすことが実証された;しかしながら、24時間の時点では、iso-[*I]SGMIBについては、総細胞結合および内在化放射能は有意に低かった。Choi J,Vaidyanathan G,Koumarianou E,McDougald D,Pruszynski M,Osada Tら、N-Succinimidyl guanidinomethyl
iodobenzoate protein radiohalogenation agents:influence of isomeric substitution on radiolabeling and target cell residualization.Nucl Med Biol 2014;41:802-12(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。これらの結果は、iso-[*I]SGMIBの残留能力が[*I]SGMIBのものほど持続的ではないことを示唆しているが、その半減期は7.2時間であるので、これは211Atの重大な欠点であり得ない。BT474M1乳癌腫細胞の対標識実験は、iso-[211At]SAGMB-5F7および[211At]SAGMB-5F7の両方の細胞結合および細胞内放射能をそれらの放射性ヨウ素化カウンターパート直接比較を可能にした。本発明者らの結果により、1,3,4-および1,3,5-異性体の両方について、ヨウ素からアスタチンへの置換は残留能力に影響を与えないことが示された;しかしながら、後者については、24時間の時点において、iso-[211At]SAGMB-5F7およびiso-[131I]SGMIB-5F7の両方で、細胞内捕捉の有意な減少が観察された。この挙動の原因となる機構は不明であるが、1,3,5-異性体のより高い異化率および/または標識異化産物の放出が役割を果たし得る可能性が高いと思われる。それにもかかわらず、iso-[211At]SAGMB-5F7であっても、24時間の時点において、初期結合放射活性の48.4±5.5%が依然として内在化しており、211At原子の90%超はこの時間までに崩壊するので、これは有望である。
【0201】
この研究の主な焦点は、211At標識5F7 VHHコンジュゲートの評価であり、本発明者らが知る限りでは、VHH分子の標識についてこの有望なα放射体を評価する最初の試みである。これらの薬剤の1つである[211At]SAGMBは、上皮成長因子受容体の突然変異体と反応するインタクトな内在化mAb L8A4を標識するために成功裏に使用されている。しかしながら、あるタイプのタンパク質構築物の結果から別のものを推定することは注意して行わなければならない。例えば、Nε-(3-[131I]ヨードベンゾイル)-Lys-Nα-マレイミド-Gly-GEEEK(131I-IB-Mal-D-GEEEK)は、インタクトなmAb L8A4を標識するための優れた試薬であることが示されたが、5F7 VHHの標識では、腫瘍取り込みの面で利点を提供せず、腎臓取り込みの面で明確な不利点を提供した。重要なことに、[211At]SAGMB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7を用いた内在化アッセイで観察されたHER2発現BT474M1癌細胞の放射活性の高い長期保持は、同じBT474M1細胞株由来の異種移植片を有するSCIDマウスにおいて実施した対標識生体内分布研究において再現された。これらの211At標識5F7コンジュゲートで観察された腫瘍蓄積の規模は、99mTc、177Lu、68Gaおよび18Fで標識した別のHER2標的VHH(2Rs15d)、ならびに211Atを含む様々な放射性核種で標識したHER2特異的アフィボディについて報告されているものよりも2~3倍高かった。
【0202】
腫瘍放射能レベルに影響を及ぼす異性体置換パターンの可能性に関して、すべての時点において、iso-[131I]SGMIB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7は、[131I]SGMIB-5F7および[211At]SAGMB-5F7と比較して有意かつ予想外な約1.5倍の腫瘍送達利点を示した。しかしながら、インビトロ内在化アッセイでは最終時点まで、両異性体について同程度の細胞内捕捉が観察されたので、これは、残留能力の差を反映しないと思われる。211At-および131I標識VHHコンジュゲートのインビボ挙動の差に関して、HER2陽性BT474M1異種移植片における[211At]SAGMB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7の局在化は、早期時点では、それらの同時投与131I標識類似体のものと同等であったが、21時間の時点では約20%低かった。これは、インビボ安定性に関するハロゲン依存的差を反映している可能性があり、アスタチンのより低いC-X結合強度と一致して、最も可能性の高い原因であるアスタチンの脱ハロゲン化率はより高かった。両方の異性体について、甲状腺および胃(遊離放射性ハロゲン化物を隔離することが公知の組織)における211Atレベルは、131Iと比較して高いという観察結果により、これは裏付けられる。しかしながら、[211At]SAGMB-5F7の注射後の甲状腺および胃における放射能レベルはそれぞれ0.4~0.6%および1.0~2.3%IDであり、iso-[211At]SAGMB-5F7のものはそれぞれ0.2~0.3%および0.6~1.7%IDであったが、これは、iso-[211At]SAGMBコンジュゲートの脱アスタチン化程度がより低いことを示唆している。同様に、iso-[131I]SGMIB-5F7の注射後の胃および甲状腺放射活性レベルは、[131I]SGMIB-5F7のものよりも低かったが、これは、これらの放射性ハロゲン化sdAbコンジュゲートのインビボ安定性の予想外な異性体依存的差を示唆している。それにもかかわらず、[211At]SAGMB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7の両方の甲状腺および胃における211At取り込みの程度は、いくつかの異なる方法を使用して標識した様々な低分子量タンパク質について報告されているものよりも低かった。[211At]SAGMB-5F7およびiso-[211At]SAGMB-5F7からの211At[アスタチド]の喪失は比較的低かったにもかかわらず、それは正常組織毒性(これは、211At標識抗体を用いた臨床研究において行われたように、ブロッキング剤の使用により有意に減少され得る)を増加させ得る。
【0203】
腫瘍対正常組織比は、一般に、放射性ヨウ素化コンジュゲートでは、アスタチン化バージョンと比較して高かったが、これはおそらく、ヨードバージョンのより高いインビボ安定性を反映している。予想外のことに、iso-補欠分子剤を使用して5F7 VHHを標識した場合、両放射性核種について、腫瘍対正常組織比は有意に高かった。表1および表2に要約されているように、これは、腫瘍取り込みにおけるいくつかの利点だけではなく、特に131I標識コンジュゲートについて、正常組織におけるかなり低い放射能レベルも反映している。この挙動の考えられる説明は、肝臓脾臓および肺などの正常器官における標識VHHの非特異的取り込みを遮断するためには特定の質量のVHH分子が必要であるという質量効果である。Xavier C,Vaneycken I,D’Huyvetter M,Heemskerk J,Keyaerts M,Vincke Cら、Synthesis,preclinical validation,dosimetry,and toxicity of68Ga-NOTA-anti-HER2 nanobodies for iPET imaging of HER2 receptor expression in cancer.J Nucl Med 2013;54:776-784(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。[211At]SAGMB-5F7+[131I]SGMIB-5F77生体内分布実験を2.1μgの総5F7 VHH用量で実施し、iso-[211At]SAGMB-5F7+iso-[131I]SGMIB-5F7研究では、4.3μgの総5F7用量を投与したので、これは本明細書に関連し得る。しかしながら、2.1μgの総VHH用量で本研究において[131I]SGMIB-5F7について観察された生体内分布は、4.3.および6.8μgの総5F7用量で[131I]SGMIB-5F7について以前に報告されているものと極めて類似していたので、これは要因ではない可能性がある。Vaidyanathan G,McDougald D,Choi J.,Koumarianou E,Weitzel D,Osada Tら、Preclinical evaluation of18F-labeled anti-HER2 nanobody conjugates for imaging HER2 receptor expression by immuno-PET.J Nucl Med 2016;57:967-73(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。また、抗HER2 VHH 2Rs15dについて、質量依存的局在化の有意差は、0.1~1μgの用量で68Gaによる標識後に観察されたが、本研究において使用した用量を包含する1~10μgの用量では観察されなかった。
【0204】
特に、同じ動物モデルにおいてiso-[125I]SGMIB-トラスツズマブおよび[131I]SGMIB-トラスツズマブを比較した場合に以前に観察された組織分布の類似性を考慮すると、同じ放射性ハロゲンを有する2つの異性体バージョンで観察された生物学的挙動の差は予想外であった。Choi Jら、Nucl Med Biol 2014;41:802-12(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。しかしながら、VHH分子はインタクトなmAbよりも約10倍小さく、これは、脱ヨウ素酵素および脱ハロゲン化につながり得る他の酵素、例えばシトクロムP450への容易なアクセスを可能にするために十分に小さな種へのより迅速な分解につながり得る。iso-[125I]SGMIB-5F7の代謝安定性が[131I]SGMIB-5F7と比較して大きいことは、2つのコンジュゲートの異化の差と、インビボ脱ヨウ素化に対する標識異化産物の感受性とにより説明することができる。最近の総説に要約されているように、放射性ヨウ素化合物の設計の微妙な差は、脱ヨウ素化速度の増加につながり得る。これと一致して、メタ-ヨードベンジルグアニジン(iso-SGMIBの構造要素)の脱ヨウ素化は、オルト-ヨードベンジルグアニジン(SGMIBの構造要素)のものよりも少なかった。iso-SGMIB-VHHおよびSGMIB-VHHコンジュゲートから生成した標識異化産物の化学的性質を評価して、観察されたそれらのインビボ挙動差をもたらす機構をよりよく理解するための研究が計画されている。
【0205】
標的放射線療法のプラットフォームとしてVHH分子を使用することの潜在的問題は、腎臓における放射活性の高い蓄積および長期保持であり、これは、線量制限腎毒性をもたらし得る。この挙動は、放射性金属、例えば177Luおよびいくつかの残留放射性ハロゲン化剤、例えば131I-IB-Mal-D-GEEEKで観察されている。例えば、131I-IB-Mal-D-GEEEKを使用して5F7-GGCを標識した場合、腎臓レベルは、注射後1~8時間では150%ID/g超であり、24時間の時点では約100%ID/gであった。対照的に、本研究において評価した4つの放射性ハロゲン化5F7コンジュゲートではすべて、初期腎臓放射活性レベルは高かったが(60~100%ID/g)迅速に減少し、腎クリアランス半減期は約1~2時間であった。驚くべきことに、すべての時点において、131I-および211At標識iso-コンジュゲートの両方の腎臓放射活性レベルは、それらの対応する1,3,4異性体コンジュゲートについて観察されたものよりも有意に低く、腎臓保持の差は時間と共に増加した。例えば、iso-[131I]SGMIB-5F7の注射後21時間に観察された腎臓放射活性レベルは、[131I]SGMIB-5F7のものよりも4倍超低かった。腎臓放射能レベルの放射性核種依存的差も観察されたが、所定の放射性核種の2つの異性体バージョン間のものよりも程度は低い。逆説的に、iso-[211At]SAGMB-5F7の注射後の腎臓放射活性レベルは、同時投与iso-[131I]SGMIB-5F7のものより高く、[211At]SAGMB-5F7の注射後の腎臓放射活性レベルは、同時投与[131I]SGMIB-5F7のものよりも低かった。現時点では、4つの5F7 VHH放射性コンジュゲートの腎臓取り込みおよび保持の差を説明することができず、腎臓保持に影響を与え得る物理的特性、例えば極性および親水性におけるアシル化剤の類似性を考慮すると予想外であった。また、以前の研究では、[131I]SGMIBおよび[211At]SAGMBで標識したインタクトmAb L8A4と、[131I]SGMIBおよびiso-[125I]SGMIBを使用して標識したトラスツズマブとの間の腎臓取り込み値の有意差が示されなかった。それらのより低い腎臓放射活性レベルの原因となる機構は明確ではないが、iso-[211At]SAGMBおよびiso-[131I]SGMIBコンジュゲートは、5F7および潜在的には他のVHHによる腎臓への放射線吸収線量を最小にするための最適な試薬である。腎臓放射線量をさらなる減少が必要である場合、これは、少なくとも177Lu標識VHHコンジュゲートを用いて血漿増量剤ゲロフシンとの同時注入により達成され得ることが示されている。
【0206】
要約すると、211Atを用いて合理的な収率で抗HER2 5F7 VHHを標識にすることができ、標識後の親和性および免疫反応性の保持が優れていることが実証された。[211At]SAGMB-5F7を用いた前臨床モデルにおける研究により、高い持続的な腫瘍標的化および迅速な正常組織クリアランスが実証され、iso-[211At]SAGMB-5F7では、さらにより好ましい観察結果が得られた。また、iso-[131I]SGMIB-5F7は、[131I]SGMIB-5F7と比較して有意に改善された腫瘍標的化を提供することが示された。まとめると、本発明者らの結果は、iso-[211At]SAGMB-5F7およびiso-[131I]SGMIB-5F7が、HER2発現悪性腫瘍の処置のためのα粒子およびβ粒子放出標的放射線療法としてのさらなる評価を保証することを示唆している。
【0207】
HER2を標的にするVHH配列であって、本発明の実施においてVHH配列としては、配列番号1~5に記載されているものが挙げられる。
配列番号1
免疫グロブリン重鎖可変領域、部分[Camelus dromedarius]DVQLVESGGGSVQGAAGGSLRLSCAASDITYSTDCMGWFRQAPGKEREGVATINNGRAITYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLRPKDTAIYYCAARLRAGYCYPADYSMDYWGKGTQVTVSS
配列番号2
免疫グロブリン重鎖可変領域、部分[Camelus dromedarius]DVQLEESGGGSVQAGGSLRLSCAASGYIYSTYCMGWFRQAPGKEREGVAAINDVGGSVYYADSVKGRFTISQDIAQDTMYLQMNDLTPENTVTYTCAALRCLSDSDPDTRVHMYYDWGQGTQVTVSS
配列番号3
免疫グロブリン重鎖可変領域、部分[Camelus dromedarius]DVQLEESGGGSVQTGGSLRLSCAASGYTYSSACMGWFRQGPGKEREAVADVNTGGRRTYYADSVKGRFTISQDNTKDMRYLQMNNLKPEDTATYYCATGPRRRDYGLGPCDYNYWGQGTQVTVSS
配列番号4
免疫グロブリン重鎖可変領域、部分[Camelus dromedarius]EVQLEESGGGLVQPGGSLTLSCAASGYTFTNCAAGWYRQAPGKECELVASIFSGNRTNYADSVKGRFTISRDNTKDIVYLQMNSLKPEDTTVYYCDARTPCWGQGTQVTVSS
配列番号5
免疫グロブリン重鎖可変領域、部分[Camelus dromedarius]EVQLEESGGGSVQAGGSLRLSCAASGYTFLQLLHGWFRQAPGKEREVVARFNTDINKTFYLESVKGRFTLSQDNAKNTLYLQMNSLKPEDTAIYYCAASRPDSTCDYFAYRGQGTQVTVSS
【0208】
本明細書で言及される刊行物、特許および特許出願はすべて、本発明が関係する当業者の水準を示すものである。刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の各刊行物、特許または特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。前述の本発明は、理解を明確にする目的で、例示および実施例としてある程度詳細に記載されているが、実施形態の範囲内で特定の変更および改変を実施し得ることは明らかであろう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式Iにより表される補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体の形態の化合物:
【化22】

(式中、
Xは、CHまたはNであり;
およびLは、結合、置換または非置換アルキル鎖、置換または非置換アルケニル鎖、置換または非置換アルキニル鎖およびポリエチレングリコール(PEG)鎖から独立して選択され;
MMCMは、高分子コンジュゲート部分であり;
は、置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖、または少なくとも3個の酸素原子を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖であり、ここで、Lは、刷子縁酵素切断可能ペプチドを必要に応じて含有し;
CGは、グアニジン;POH;SOH;アルギニン、ホスホノ/スルホフェニルアラニン、グルタメート、アスパルタートおよびリジンから選択される1つまたはそれを超える荷電D-またはL-アミノ酸;親水性炭水化物部分;ポリエチレングリコール(PEG)鎖;ならびにZ-グアニジンから選択され;
Zは、(CHであり;
nは、1超であり;
mは、0~3であり;ならびに
Yはアルキル金属部分であるか、または75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atからなる群より選択される放射性ハロゲンである)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
(項目2)
放射性ハロゲン前駆体であり、Yが、トリメチルスタンニル(SnMe)、トリ-n-ブチルスタンニル(SnBu)およびトリメチルシリル(SiMe)からなる群より選択されるアルキル金属部分である、項目1に記載の化合物。
(項目3)
補欠分子化合物であり、Yが、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atからなる群より選択される放射性ハロゲンである、項目1に記載の化合物。
(項目4)
MMCMが、活性エステルまたは(Gly)(mは1であるかまたはそれを超える)である、項目1に記載の化合物。
(項目5)
MMCMが、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、テトラフルオロフェノール(TFP)エステル、イソチオシアネート基またはマレイミド基からなる群より選択される、項目1に記載の化合物。
(項目6)
MMCMがGly-Gly-Glyである、項目1に記載の化合物。
(項目7)
が(CH(p=1~6)である、項目1に記載の化合物。
(項目8)
前記必要に応じた刷子縁酵素切断可能ペプチドが、Gly-Lys、Gly-TyrおよびGly-Phe-Lysからなる群より選択される、項目1に記載の化合物。
(項目9)
以下の構造:
【化23】

により表される、項目1に記載の化合物。
(項目10)
N-スクシンイミジル3-グアニジノメチル-5-[131I]ヨードベンゾエートまたはN-スクシンイミジル3-[211At]アスタト-5-グアニジノメチルベンゾエートを含む、項目9に記載の化合物。
(項目11)
生体分子に付着した項目1に記載の化合物を含む、放射標識生体分子または中間体。
(項目12)
前記生体分子が、抗体、抗体断片、VHH分子、アプタマーまたはそれらの変形物からなる群より選択される、項目11に記載の放射標識生体分子または中間体。
(項目13)
前記標識生体分子がVHHである、項目11に記載の放射標識生体分子または中間体。(項目14)
前記VHHがHER2を標的にする、項目13に記載の放射標識生体分子または中間体。
(項目15)
前記VHHが、配列番号1~5に記載されている配列から選択されるアミノ酸配列を含む、項目14に記載の放射標識生体分子または中間体。
(項目16)
薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と併せて、項目11に記載の放射標識生体分子を含む、医薬組成物。
(項目17)
式2により表される補欠分子化合物または放射性ハロゲン前駆体の形態の化合物:
【化24】

(式中、
MCは、多座金属キレート部分であり;
Cmは、チオ尿素、アミドまたはチオエーテルであり;
は、結合、置換または非置換アルキル鎖、置換または非置換アルケニル鎖、一方または両方の末端にNH、COまたはSを必要に応じて有する置換または非置換アルキニル鎖およびポリエチレングリコール(PEG)鎖から選択され;
Tは、項目1~10のいずれかに記載の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
(項目18)
MCが大環状構造である、項目17に記載の化合物。
(項目19)
MCが、DOTA、TETA、NOTPおよびNOTAから選択される、項目17に記載の化合物。
(項目20)
MCが非環式多座配位子である、項目17に記載の化合物。
(項目21)
MCが、EDTA、EDTMPおよびDTPAから選択される、項目17に記載の化合物。
(項目22)
放射性ハロゲン前駆体であり、Yが、トリメチルスタンニル(SnMe)、トリ-n-ブチルスタンニル(SnBu)およびトリメチルシリル(SiMe)からなる群より選択されるアルキル金属部分である、項目17に記載の化合物。
(項目23)
補欠分子化合物であり、Yが、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atから選択される放射性ハロゲンである、項目17に記載の化合物。
(項目24)
前記MCに結合した金属をさらに含む、項目17に記載の化合物。
(項目25)
前記金属が、177Lu、64Cu、111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thからなる群より選択される放射性金属である、項目24に記載の化合物。
(項目26)
生体分子に付着した項目17に記載の化合物を含む、放射標識生体分子または中間体。(項目27)
前記生体分子が、抗体、抗体断片、VHH分子およびアプタマーからなる群より選択される、項目26に記載の放射標識生体分子または中間体。
(項目28)
前記生体分子がVHHである、項目26に記載の放射標識生体分子または中間体。
(項目29)
前記VHHがHER2を標的にする、項目28に記載の放射標識生体分子または中間体。
(項目30)
前記VHHが、配列番号1~5に記載されている配列から選択されるアミノ酸配列を含む、項目29に記載の放射標識生体分子または中間体。
(項目31)
薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と併せて、項目26に記載の放射標識生体分子を含む、医薬組成物。
(項目32)
癌を処置するための方法であって、それを必要とする個体に、有効量の項目11に記載の放射標識生体分子を投与することを含む、方法。
(項目33)
癌を処置するための方法であって、それを必要とする個体に、有効量の項目26に記載の放射標識生体分子を投与することを含む、方法。
図1
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【配列表】
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【外国語明細書】