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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076730
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】掘削機、及び地盤掘削方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/08 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
E02D23/08 B
E02D23/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062722
(22)【出願日】2023-04-07
(62)【分割の表示】P 2019073475の分割
【原出願日】2019-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(71)【出願人】
【識別番号】393030899
【氏名又は名称】アジア海洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】小倉 剛
(72)【発明者】
【氏名】仲野 勝博
(72)【発明者】
【氏名】亀井 良至
(72)【発明者】
【氏名】吉川 修
(72)【発明者】
【氏名】金丸 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】杜若 善彦
(72)【発明者】
【氏名】坂梨 利男
(72)【発明者】
【氏名】坂本 守
(72)【発明者】
【氏名】濱田 良幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬二
(72)【発明者】
【氏名】野田 義道
(72)【発明者】
【氏名】後藤 祥斗
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 正志
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を掘削する。
【解決手段】掘削機10は、上下方向に延びて地中に沈設され、かつ、内部に水が貯留されている筒状のケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を水中掘削するものである。掘削機10は、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2に載置される架台11と、架台11に支持されて架台11に対して水平旋回可能な本体部12と、本体部12の一側に上部が枢支されてこの上部から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアーム13と、アーム13の上部の枢支軸Qを中心としてアーム13を傾動させる傾動装置15と、アーム13の下端部13cに設けられて地盤2を水中掘削する地盤掘削部14であって、本体部12、アーム13、及び傾動装置15の作動によって、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を平面視で扇形状に水中掘削可能な地盤掘削部14と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びて地中に沈設され、かつ、内部に水が貯留されている筒状のケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を水中掘削する掘削機を用いて前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を水中掘削する方法であって、
前記掘削機は、
平面視で前記ケーソン躯体内に位置する地盤に載置される架台と、
前記架台に支持されて前記架台に対して水平旋回可能な本体部と、
前記本体部の一側に上部が枢支されて該上部から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアームと、
前記アームの下端部に設けられて地盤を水中掘削する地盤掘削部と、
前記アームの上部の枢支軸を中心として前記アームを傾動させる傾動装置と、
を備え、
前記方法は、前記本体部、前記アーム、及び前記傾動装置を作動させて、前記地盤掘削部を前記ケーソン躯体の刃口部の下方位置まで移動させ、前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を前記地盤掘削部によって水中掘削することで、前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤に、平面視で扇形状の掘削孔を形成する掘削工程を含む、地盤掘削方法。
【請求項2】
前記掘削工程では、平面視で、複数の前記掘削孔が、前記ケーソン躯体の周方向に沿って並ぶように、前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤に、複数の前記掘削孔が形成される、請求項1に記載の地盤掘削方法。
【請求項3】
前記地盤掘削部による地盤掘削により発生した掘削土を、開閉自在なグラブバケットを有する掘削装置を用いて、前記ケーソン躯体内から前記ケーソン躯体外に排土する排土工程を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の地盤掘削方法。
【請求項4】
平面視で前記ケーソン躯体内に位置する地盤に、複数の孔を掘削形成する削孔工程を更に含み、
隣り合う前記孔同士の間隔が、前記グラブバケットの最大開口幅よりも狭い、請求項3に記載の地盤掘削方法。
【請求項5】
前記削孔工程では、前記掘削機を用いて、鉛直方向に延びる前記孔が掘削形成される、請求項4に記載の地盤掘削方法。
【請求項6】
上下方向に延びて地中に沈設され、かつ、内部に水が貯留されている筒状のケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を水中掘削する掘削機であって、
平面視で前記ケーソン躯体内に位置する地盤に載置される架台と、
前記架台に支持されて前記架台に対して水平旋回可能な本体部と、
前記本体部の一側に上部が枢支されて該上部から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアームと、
前記アームの上部の枢支軸を中心として前記アームを傾動させる傾動装置と、
前記アームの下端部に設けられて地盤を水中掘削する地盤掘削部であって、前記本体部、前記アーム、及び前記傾動装置の作動によって、前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を平面視で扇形状に水中掘削可能な前記地盤掘削部と、
を備える、掘削機。
【請求項7】
前記架台は、各々の下端部が地盤面に接触可能な複数本の脚部と、前記脚部によって支持される架台本体と、を含んで構成され、
前記本体部は、前記架台本体に支持されて前記架台本体に対して水平旋回可能であり、
平面視で、互いに隣り合う前記脚部同士の間に前記傾動装置が位置している、請求項6に記載の掘削機。
【請求項8】
前記互いに隣り合う前記脚部同士の各々の上端部から立設された柱部材を更に備え、
前記柱部材同士の間に前記傾動装置が位置しており、
前記傾動装置が前記柱部材に接触しない範囲内で、前記本体部が、前記架台本体に対して水平旋回可能である、請求項7に記載の掘削機。
【請求項9】
前記架台本体は平面視で三角形状をなし、該三角形状における3つの角部にそれぞれ前記脚部の上部が固定されている、請求項7又は請求項8に記載の掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を掘削する掘削機と、当該掘削機を用いる地盤掘削方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、いわゆるオープンケーソン工法で用いられ得る水中掘削機を開示している。この水中掘削機は、ケーソン躯体内に配置されるフロートと、このフロートの下部に設けられた掘削機とを有している。このフロートにはグリッパーが設けられており、このグリッパーでケーソン躯体の内面を押圧することにより、フロートをケーソン躯体内の任意の位置に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-81349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、掘削機による地盤掘削の反力をケーソン躯体から取ろうとすると、グリッパーを有するフロートからなる反力受け装置のサイズが大型化してしまう。このため、当該反力受け装置の組立作業やケーソン躯体内への設置作業に手間を要し、また、これら作業のコストの増大を招いていた。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、簡易な構成でケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を掘削することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の第1態様では、地盤掘削方法は、上下方向に延びて地中に沈設され、かつ、内部に水が貯留されている筒状のケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を水中掘削する掘削機を用いてケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を水中掘削する方法である。掘削機は、平面視でケーソン躯体内に位置する地盤に載置される架台と、架台に支持されて架台に対して水平旋回可能な本体部と、本体部の一側に上部が枢支されて該上部から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアームと、アームの下端部に設けられて地盤を水中掘削する地盤掘削部と、アームの上部の枢支軸を中心としてアームを傾動させる傾動装置と、を備える。前記第1態様における地盤掘削方法は、本体部、アーム、及び傾動装置を作動させて、地盤掘削部をケーソン躯体の刃口部の下方位置まで移動させ、ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を地盤掘削部によって水中掘削することで、ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤に、平面視で扇形状の掘削孔を形成する掘削工程を含む。
【0007】
本発明の第2態様では、掘削機は、上下方向に延びて地中に沈設され、かつ、内部に水が貯留されている筒状のケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を水中掘削するものである。掘削機は、平面視でケーソン躯体内に位置する地盤に載置される架台と、架台に支持されて架台に対して水平旋回可能な本体部と、本体部の一側に上部が枢支されて該上部から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアームと、アームの上部の枢支軸を中心としてアームを傾動させる傾動装置と、アームの下端部に設けられて地盤を水中掘削する地盤掘削部であって、本体部、アーム、及び傾動装置の作動によって、ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を平面視で扇形状に水中掘削可能な地盤掘削部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、掘削機の架台が、平面視でケーソン躯体内に位置する地盤に載置される。ゆえに、掘削機は、地盤掘削の際に、架台が載置されている地盤から反力を取ることができる。従って、掘削機は、ケーソン躯体から反力を取ることなく、地盤から反力を取ることができるので、前述のフロートなどの大型な反力受け装置を省略することができ、ひいては、簡易な構成でケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を掘削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態におけるケーソン躯体の下方の地盤を掘削する方法を示す図
図2】同上実施形態におけるケーソン躯体の下方の地盤を掘削する方法を示す図
図3】同上実施形態におけるケーソン躯体の下方の地盤を掘削する方法を示す図
図4】同上実施形態におけるケーソン躯体の下方の地盤を掘削する方法を示す図
図5】同上実施形態における掘削機を右後方から見た斜視図
図6】同上実施形態における掘削機を左後方から見た斜視図
図7】同上実施形態における掘削機を後方から見た斜視図
図8】同上実施形態における掘削機のアーム及び地盤掘削部を右側方から見た拡大斜視図
図9】同上実施形態における制御ユニットの概略構成を示す図
図10】本発明の第2実施形態におけるケーソン躯体の下方の地盤を掘削する方法を示す図
図11】同上実施形態におけるケーソン躯体の下方の地盤を掘削する方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1図4は、本発明の第1実施形態におけるケーソン躯体1の下方の地盤2を掘削する方法を示す図である。ここで、図1(A)及び図2(A)は、上方から見た、ケーソン躯体1、及び掘削孔3の位置関係を示す。図1(B)、図2(B)、図3、及び図4は、ケーソン躯体1の縦断面図に対応するものである。
【0012】
本実施形態では、本発明に係る掘削機の設置方法及び地盤掘削方法を立坑の構築に適用した例を説明するが、本発明に係る掘削機の設置方法及び地盤掘削方法の適用例はこれに限らない。
【0013】
立坑は、上下両端が開口して上下方向に延びる円筒状のケーソン躯体1により構成される。ケーソン躯体1は例えばコンクリート製である。本実施形態における立坑の構築では、地盤2を水中掘削してケーソン躯体1を徐々に沈下させていく工法(いわゆるオープンケーソン工法)が用いられる。ここにおいて、立坑(ケーソン躯体1)内に水Wが導入されて、立坑(ケーソン躯体1)内に水Wが貯留された状態で、地盤2の掘削(水中掘削)が行われる。尚、本実施形態では、地上の圧入装置(図示せず)によってケーソン躯体1を下方に押圧することで、ケーソン躯体1を地中に圧入沈下させる。この圧入装置としては、例えば特開平10-176477号公報に開示の圧入装置を用いることができるが、圧入装置の構成はこれに限らない。
【0014】
本実施形態では、図1に示す地盤2が硬質地盤であり、地盤2よりも上方の地盤が軟質地盤である。本実施形態では、前述の軟質地盤側から、硬質地盤である地盤2が露出するまで(すなわち、図1に示す状態に至るまで)、ケーソン躯体1内にて、前述の軟質地盤の水中掘削が行われる(軟質地盤掘削工程)。この軟質地盤の水中掘削では、開閉自在なクラムシェルバケットなどのグラブバケット7(図4参照)を有する掘削装置6(図4参照)が用いられ得る。
【0015】
本実施形態におけるケーソン躯体1の下方の地盤2を掘削する方法では、まず、図1及び図2に示すように、ケーソン躯体1の径方向内方からケーソン躯体1の刃口部1bの下方(刃口部1bの直下)に向けてケーソン躯体1の径方向外方かつ下方に地盤2を掘削することで、複数の掘削孔3を形成する。各掘削孔3は平面視で扇形状である。尚、本実施形態では、地盤2に4個の掘削孔3を形成しているが、掘削孔3の個数はこれに限らず、任意である。また、複数の掘削孔3が、ケーソン躯体1の周方向に互いに若干オーバーラップするように地盤2に形成されてもよい。
【0016】
本実施形態では、平面視で、複数の掘削孔3が、ケーソン躯体1の周方向に沿って並んでいる。また、本実施形態では、複数の掘削孔3が、ケーソン躯体1の周方向に互いに間隔を空けて地盤2に形成されている。この掘削孔3を地盤2に形成する工程(刃口下部掘削工程)に先立って、ケーソン躯体1内に水Wが導入される(図1参照)。また、この刃口下部掘削工程に先立って、グラブバケット7を有する掘削装置6を用いて、平面視でケーソン躯体1内に位置する前述の軟質地盤が掘削される(軟質地盤掘削工程)。
【0017】
掘削孔3を地盤2に形成するときには掘削機10が用いられる。この掘削機10の詳細については図5図9を用いて後述する。ここで、掘削機10は、地盤2から反力を取って、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方を掘削することができる。
【0018】
次に、図3に示すように、ケーソン躯体1を圧入沈下させる。このケーソン躯体1の圧入沈下には、前述の地上の圧入装置(図示せず)が用いられ得る。
【0019】
次に、図3及び図4に示すように、グラブバケット7を有する掘削装置6を用いて、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2を掘削する。掘削装置6は、例えば、地上に配置されたクレーン(図示せず)と、クレーンのブームの先端部から吊り下げられたグラブバケット7とを含んで構成される。グラブバケット7は、開閉動作可能な一対のシェル7aを含んで構成される。尚、図4は、このグラブバケット7を有する掘削装置6を用いて地盤2を掘削する工程(バケット掘削工程)が完了した状態を示している。
このようにして、地盤2の掘削が行われる。
【0020】
次に、掘削機10について図5図9を用いて説明する。図5は、掘削機10を右後方から見た斜視図である。図6は、掘削機10を左後方から見た斜視図である。図7は、掘削機10を後方から見た斜視図である。図8は、掘削機10のアーム13及び地盤掘削部14を右側方から見た拡大斜視図である。図9は、制御ユニット18の概略構成を示す図である。
【0021】
本実施形態では、図5図8に示した状態の掘削機10について、説明の便宜上、図5に示すように前後左右を規定して、以下説明する。ここで、掘削機10の前側は、掘削機10のうち、アーム13及び地盤掘削部14が位置する側に対応する。一方、掘削機10の後側は、掘削機10のうち、アーム13及び地盤掘削部14が位置する側と反対の側に対応する。
【0022】
本実施形態では、掘削機10は、総重量が例えば20t程度であり、前後方向の長さが例えば5m程度である。しかしながら、掘削機10の総重量や前後方向の長さは前述のものに限定されない。
本実施形態では、ケーソン躯体1の内径が例えば12m程度である。しかしながら、ケーソン躯体1については、掘削機10を設置できる程度の内径であればよく、ゆえに、ケーソン躯体1の内径は12m程度に限定されない。
【0023】
掘削機10は、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を掘削(水中掘削)するものである。掘削機10は、架台11と、本体部12と、アーム13と、地盤掘削部14と、傾動装置15と、排土装置16と、スライドガイド装置17と、制御ユニット18とを備える。
【0024】
架台11は、架台本体21と、複数本(本実施形態では3本)の脚部22とを含んで構成される。尚、本実施形態では、脚部22の本数が3本であるが、脚部22の本数は3本に限らず、例えば4本以上の任意の本数であってもよい。
【0025】
脚部22は、上下方向に伸縮可能に延びている。脚部22は油圧ジャッキと同様の構成を有しており、上下方向に延びるシリンダ22aと、シリンダ22aの下端側にて進出・退入可能なロッド22bにより構成される。ここで、ロッド22bの進出・退入が、脚部22の伸縮(伸長・短縮)に対応する。
【0026】
脚部22の下端部(ロッド22bの下端部)22cは地盤2の表面(地盤面)に接触可能である。脚部22の下端部(ロッド22bの下端部)22cには、当該下端部22cを地盤面(水底面)に食い込ませるための複数の突起23が設けられている。
【0027】
架台本体21は平面視で三角形状をなしており、この三角形状における3つの角部には、それぞれ、脚部22の上部(シリンダ22aの上部)が固定されている。3本の脚部22は、掘削機10の左前部、右前部、及び後部に位置している。架台本体21は、3本の脚部22によって支持されている。尚、本実施形態では、架台本体21は平面視で三角形状をなしているが、架台本体21の平面視での形状はこれに限らない。例えば、架台本体21は平面視で矩形状をなしてもよい。
【0028】
架台本体21には、上下方向に延びる仮想軸Pを旋回中心として本体部12を水平旋回させるための駆動用モータ(図示せず)が設けられている。この駆動モータは、本実施形態では油圧モータであるが、油圧モータの代わりに電動モータを用いてもよい。
【0029】
本体部12は、架台本体21の上方に位置している。本体部12は、架台11(架台本体21)に支持されて架台11(架台本体21)に対して仮想軸Pを旋回中心として水平旋回可能である。
【0030】
本体部12は、平面視で前後方向に長い矩形状のベース部25と、ベース部25の前端部から上方かつ前方に延びるブーム部26とを含んで構成される。ベース部25の前側部分には前述の仮想軸Pが位置している。ベース部25の中央~後側部分には、排土装置16を構成するポンプ装置27が設置されている。
【0031】
アーム13は、本体部12のブーム部26の上端部に上端部が枢支されて下方に延びるシリンダ13aと、シリンダ13aの下端側にて進出・退入可能なロッド13bにより構成される。ここで、ロッド13bの進出・退入が、アーム13の伸縮(伸長・短縮)に対応する。
【0032】
アーム13には油圧ジャッキ28が並設されている。油圧ジャッキ28は、アーム13のシリンダ13aに固定されてシリンダ13aと並んで延びるシリンダ28aと、シリンダ28aの下端側にて進出・退入可能なロッド28bにより構成される。ロッド28bはアーム13のロッド13bに固定されている。ここで、ロッド28bの進出・退入が、油圧ジャッキ28の伸縮(伸長・短縮)に対応する。
【0033】
ゆえに、アーム13は、それに並設された油圧ジャッキ28の伸縮動作に応じて伸縮可能である。また、本体部12のブーム部26の上端部には、アーム13の上端部(シリンダ13aの上端部)が枢支されており、アーム13は、この枢支された上端部から下方に延びている。
【0034】
アーム13の下端部(ロッド13bの下端部)13cには、地盤2を掘削する地盤掘削部14を構成するカッタヘッド30が設けられている。カッタヘッド30は、図示しない駆動用モータを回転駆動源として回転可能であり、地盤2を回転掘削する。この駆動用モータは例えばアーム13に内蔵されている。この駆動モータは、本実施形態では油圧モータであるが、油圧モータの代わりに電動モータを用いてもよい。
カッタヘッド30には、カッタヘッド30による地盤2の回転掘削により発生した掘削土を取り入れるための開口部31が形成されている。
【0035】
傾動装置15は、後端部が本体部12のベース部25の前端部に取り付けられ、前端部がアーム13のシリンダ13aの長手方向中央部に取り付けられて伸縮可能な油圧ジャッキ33を含む。傾動装置15(油圧ジャッキ33)は、アーム13の上端部(シリンダ13aの上端部)の枢支軸Qを中心としてアーム13を傾動させ得る。ここで、油圧ジャッキ33を最大限短縮させると、アーム13は直立状態となる。一方、油圧ジャッキ33を伸長させると、アーム13は傾斜状態となる。
【0036】
排土装置16は、ポンプ装置27、第1管部36、第2管部37、第3管部(図示せず)、第4管部38、及び第5管部39を含んで構成される。
第1管部36は、アーム13のロッド13bの下端部13cに固定されている。第1管部36は、その下端部がカッタヘッド30の開口部31に連通し、上端部が第2管部37の下端部に連通している。
【0037】
第2管部37は、アーム13のシリンダ13aに並んで延びている。第2管部37は例えば蛇腹パイプからなり、油圧ジャッキ28及びアーム13の伸縮に追従して伸縮可能である。第2管部37の上端部は第3管部の一端部に連通している。
【0038】
尚、本実施形態では、第1管部36及び第2管部37をアーム13の外側に配置しているが、この他、第1管部36と第2管部37との少なくとも一方をアーム13の内側に配置してもよい。すなわち、アーム13が第1管部36と第2管部37との少なくとも一方を内蔵するようにしてもよい。
【0039】
第3管部は、アーム13のシリンダ13aの上端部に設けられている。第3管部の他端部は、第4管部38の上端部に連通している。
第4管部38は、その上端部からブーム部26に沿って下方かつ後方に延び、更に、ベース部25に沿って後方に延びて、ポンプ装置27の吸込部に連通している。ここで、ポンプ装置27の駆動源は、電動モータ又は油圧モータである。
【0040】
ポンプ装置27の吐出部には、第5管部39の前端部が連通している。第5管部39は前後方向に延びており、後端部が掘削機10の後方を向いて開口している。
【0041】
排土装置16では、ポンプ装置27を作動させると、地盤掘削部14による地盤掘削により発生した掘削土が、カッタヘッド30の開口部31から取り込まれて、第1管部36、第2管部37、第3管部、及び第4管部38を経てポンプ装置27に吸引され、ポンプ装置27から吐出されて、第5管部39から後方(水W中)に排出される。この排出された掘削土は、地盤面(地盤2の表面)における、掘削孔3から離間した箇所に溜まり得る。このようにして、ポンプ装置27は、地盤掘削部14による地盤掘削により発生した掘削土を吸引して本体部12の後側から排出する機能を実現し得る。
【0042】
ここで、本体部12のうち、アーム13及び地盤掘削部14に近い側(前側)が、本発明の「本体部の一側」に対応する。これに対し、本体部12のうち、アーム13及び地盤掘削部14から遠い側(後側)が、本発明の「本体部の他側」に対応する。
【0043】
本実施形態では、平面視で、左前の脚部22と右前の脚部22との間(後述する柱部材45a,45b間)に本体部12のブーム部26及び油圧ジャッキ33(傾動装置15)が位置している。ゆえに、ブーム部26及び油圧ジャッキ33(傾動装置15)が柱部材45a,45bなどに接触しない範囲内で本体部12が架台11に対して水平旋回可能である。それゆえ、掘削機10によって形成される掘削孔3は、図2(A)に示すように平面視で扇形状となり得る。
【0044】
架台11上には、スライドガイド装置17が設けられている。スライドガイド装置17は、保護フレーム40と、2本の延長部42a,42bと、2つのシュー部材43a,43bとを含んで構成される。
【0045】
保護フレーム40は、本体部12の左側方、右側方、及び後方を囲むように設けられている。保護フレーム40は、2本の柱部材45a,45bと、2本のC字形部材46a,46bと、複数本の補強部材47とを含んで構成される。柱部材45aは、左前の脚部22の上端部から立設されており、柱部材45bは、右前の脚部22から立設されている。C字形部材46a,46bは、平面視で、前側開放のC字形状である。C字形部材46aの一端部は柱部材45aの上端部に固定されており、他端部は柱部材45bの上端部に固定されている。C字形部材46bの一端部は柱部材45aの上下方向中央部に固定されており、他端部は柱部材45bの上下方向中央部に固定されている。補強部材47は上下方向に延びており、上端部がC字形部材46aに固定されて、下端部がC字形部材46bに固定されている。複数の補強部材47が、C字形部材46a,46bの周方向に互いに間隔を空けて並んでいる。
【0046】
延長部42aは、後端部(一端部)が柱部材45aの上端部に固定されて、柱部材45aから水平方向外方に(前方に)延びている。延長部42bは、後端部(一端部)が柱部材45bの上端部に固定されて、柱部材45bから水平方向外方に(前方に)延びている。従って、延長部42a,42bは、各々の後端部(一端部)が、柱部材45a,45bを介して、架台11に連結されている。また、延長部42a,42bは、平面視で、架台11から水平方向外方に(前方に)延びている。
【0047】
シュー部材43aは、延長部42aの前端部(他端部)に設けられている。シュー部材43bは、延長部42bの前端部(他端部)に設けられている。シュー部材43a,43bは、ケーソン躯体1の内周面1aに接触可能である。
【0048】
C字形部材46aには、滑車50を備える吊り部51が取り付けられている。滑車50には、吊りワイヤー52が巻き掛けられている。地上に設けられたクレーンなどの揚重装置(図示せず)は、吊りワイヤー52を介して、掘削機10を吊り下げ支持可能であり、また、掘削機10を昇降可能である。
ここで、本実施形態では、平面視で、吊り部51の位置が、掘削機10の重心に略一致している。換言すれば、吊り部51の直下に掘削機10の重心が位置している。
【0049】
掘削機10が必要とする電力は、地上から電力線を介して供給される。
架台本体21には、掘削機10の各油圧機器(油圧ジャッキや油圧モータなど)に油圧を供給するための油圧ユニット(図示せず)が設けられている。
また、架台本体21には制御ユニット18と姿勢測定部55とが設けられている。姿勢測定部55は例えばジャイロセンサを含んで構成されており、架台11の姿勢(詳しくは、架台本体21の姿勢)を測定することができる。
【0050】
制御ユニット18は、掘削機10の作動に関する各種演算や各種制御を行う。制御ユニット18は、掘削制御部56と、姿勢制御部57とを有する。掘削制御部56には、地上の操作室に設置されている操作パネル58からの操作信号59に基づいて、主として以下(ア)~(エ)の作動制御を行う。ここで、操作パネル58は作業員によって操作され得る。また、前述の操作信号59は、信号線などを介して、又は、無線機器を介して、伝達され得る。
【0051】
(ア)本体部12を水平旋回させるための駆動用モータ
(イ)アーム13に並設された油圧ジャッキ28
(ウ)傾動装置15(油圧ジャッキ33)
(エ)カッタヘッド30の駆動用モータ
【0052】
姿勢制御部57は、姿勢測定部55からの姿勢測定信号60に基づいて架台11が所定の姿勢となるように姿勢制御する。ここで、所定の姿勢とは、本実施形態では、水平姿勢を意味する。この水平姿勢では、例えば、前述の架台本体21及びベース部25が略水平になる。
【0053】
尚、本実施形態では、具体的には、姿勢制御部57は、姿勢測定部55からの姿勢測定信号60に基づいて、架台本体21の水平姿勢を保持するように脚部22の伸縮動作を制御する。ゆえに、本実施形態では、架台本体21の水平姿勢が自動的に保持され得る。
【0054】
掘削機10を、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2上に設置する際には、掘削機10を吊りワイヤー52を介して前述の揚重装置によって吊り下げて、シュー部材43a,43bをケーソン躯体1の内周面1aに接触させつつ、掘削機10を下降させる。掘削機10の下降時には、アーム13及びカッタヘッド30がケーソン躯体1の内周面1aに接触しないように、油圧ジャッキ28,33の伸縮量(伸長量)を適宜調整することが好ましい。
【0055】
掘削機10の下降が進んで掘削機10が地盤2上に載置されると、掘削機10の自重により、架台11の脚部22の下端部22cの突起23が地盤面(地盤2の表面)に食い込む。
【0056】
次に、地盤2上に載置された掘削機10を用いて、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を掘削する方法(前述の刃口下部掘削工程)について説明する。
【0057】
まず、姿勢測定部55にて架台本体21の姿勢を測定し、この測定結果に基づいて、制御ユニット18の姿勢制御部57によって、架台本体21の水平姿勢を保持するように、架台11の各脚部22の伸縮量(伸長量)を調整する(姿勢調整工程)。尚、この姿勢調整工程は、掘削機10が地盤2上に載置された直後に自動的に実施されることが好ましい。
【0058】
掘削機10が地盤2上に載置された状態、かつ、架台本体21の水平姿勢を保持した状態で、吊りワイヤー52を弛ませないでおけば、吊りワイヤー52の繰り出し長さを地上側で把握することにより、掘削機10が位置する深さ(例えば地面からの距離)を地上側で把握することができる。また、吊りワイヤー52の平面位置も地上側で把握することができるので、それに基づいて、掘削機10の平面的な位置も地上側で把握することができる。従って、地上側で、掘削機10の3次元位置を容易に把握することができる。
【0059】
次に、本体部12、アーム13、及び傾動装置15を作動させて、地盤掘削部14(カッタヘッド30)をケーソン躯体1の刃口部1bの下方位置まで移動させる。そして、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を地盤掘削部14(カッタヘッド30)によって掘削して、掘削孔3を形成する(掘削工程)。この掘削工程では、平面視で扇形状の掘削孔3を形成するために、本体部12、アーム13、及び傾動装置15が作動し得る。すなわち、本体部12が架台11に対して水平旋回し、油圧ジャッキ28の伸縮によってアーム13が伸縮し、傾動装置15の油圧ジャッキ33の伸縮によってアーム13の傾斜角度が変化し得る。
この掘削工程では、掘削孔3の形成に並行して、掘削土を排土装置16によって本体部12の後側から排出する。これにより、平面視でケーソン躯体1の中央部に掘削土が溜まり得る。
【0060】
次に、ケーソン躯体1の中央部に溜まった掘削土を、グラブバケット7を有する掘削装置6を用いて、ケーソン躯体1内からケーソン躯体1外に排土する(排土工程)。尚、この排土工程は、前述のバケット掘削工程と一体的に実施してもよい。
以上のようにして、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方が掘削されて、複数の掘削孔3が形成され得る。
【0061】
本実施形態によれば、掘削機10は、上下方向に延びて地中に沈設される筒状のケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を掘削するものである。掘削機10は、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2に載置される架台11と、架台11に支持されて架台11に対して水平旋回可能な本体部12と、本体部12の一側(前側)に上部(上端部)が枢支されてこの上部(上端部)から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアーム13と、アーム13の下端部13cに設けられて地盤2を掘削する地盤掘削部14と、アーム13の上部(上端部)の枢支軸Qを中心としてアーム13を傾動させる傾動装置15と、を備える。ゆえに、掘削機10は、地盤2から直接的に反力を取って、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方を掘削することができる。従って、掘削機10による刃口部1b下の地盤2の掘削時に、ケーソン躯体1から反力を取ることなく、簡易な構成で、刃口部1b下の地盤2の掘削を行うことができる。この刃口部1b下の地盤2は、前述のグラブバケット7を有する掘削装置6による掘削が困難である。この点、本実施形態では、掘削機10を用いて、容易に、刃口部1b下の地盤2の掘削を行うことができる。
【0062】
また本実施形態によれば、掘削機10は、地盤掘削部14による地盤掘削により発生した掘削土を吸引して本体部12の他側(後側)から排出するポンプ装置27を備える。ゆえに、簡素な構成で、掘削土を掘削孔3から遠ざけることができる。
【0063】
また本実施形態によれば、掘削機10は、架台11の姿勢を測定する姿勢測定部55と、姿勢測定部55からの姿勢測定信号60に基づいて架台11が所定の姿勢となるように姿勢制御する姿勢制御部57と、を備える。これにより、掘削機10の姿勢を最適化することができる。
【0064】
また本実施形態によれば、架台11は、各々の下端部22cが地盤面に接触可能な複数本の脚部22と、これら脚部22によって支持される架台本体21と、を含んで構成される。本体部12は、架台本体21に支持されて架台本体21に対して水平旋回可能である。脚部22が伸縮可能である。姿勢測定部55は、架台本体21の姿勢を測定する。姿勢制御部57は、姿勢測定部55からの姿勢測定信号60に基づいて架台本体21の水平姿勢を保持するように各脚部22の伸縮動作を制御する。ゆえに、各脚部22を伸縮させることで、簡易に、架台本体21及び本体部12の水平姿勢、ひいては、掘削機10全体の水平姿勢を保持することができる。
【0065】
また本実施形態によれば、ケーソン躯体1内に水Wが貯留されている。掘削機10は、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2の水中掘削を行う。ゆえに、掘削機10を用いて水中掘削作業を行うことができるので、その分、作業員による潜水作業を減らすことができる。
【0066】
また本実施形態によれば、掘削機10は、一端部(後端部)が架台11に連結されて架台11から水平方向外方(前方)に延びる延長部42a,42bと、延長部42a,42bの他端部(前端部)に設けられたシュー部材43a,43bと、を備える。シュー部材43a,43bがケーソン躯体1の内周面1aに接触可能である。ゆえに、掘削機10を地盤2上に設置する際にシュー部材43a,43bをケーソン躯体1の内周面1aに接触させつつ掘削機10を下降させることができるので、ケーソン躯体1の内周面1aに対する掘削機10のスライドを延長部42a,42b及びシュー部材43a,43bによってガイドすることができる。
【0067】
また本実施形態によれば、掘削機10は、地上のクレーンなどの揚重装置によって吊り下げられて昇降可能である。これにより、簡素な構成で、掘削機10を昇降させることができる。
【0068】
また本実施形態によれば、掘削機10を、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2上に設置する方法(掘削機10の設置方法)として、地上のクレーンなどの揚重装置によって掘削機10を吊り下げて、シュー部材43a,43bをケーソン躯体1の内周面1aに接触させつつ掘削機10を下降させることを含む。ゆえに、掘削機10を地盤2上に設置する際に、ケーソン躯体1の内周面1aに対する掘削機10のスライドを延長部42a,42b及びシュー部材43a,43bによってガイドすることができる。
【0069】
また本実施形態によれば、地盤掘削方法は、上下方向に延びて地中に沈設される筒状のケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を掘削する掘削機10を用いてケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を掘削する方法である。掘削機10は、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2に載置される架台11と、架台11に支持されて架台11に対して水平旋回可能な本体部12と、本体部12の一側(前側)に上部(上端部)が枢支されてこの上部(上端部)から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアーム13と、アーム13の下端部13cに設けられて地盤2を掘削する地盤掘削部14と、アーム13の上部(上端部)の枢支軸Qを中心としてアーム13を傾動させる傾動装置15と、地盤掘削部14による地盤掘削により発生した掘削土を吸引して本体部12の他側(後側)から排出するポンプ装置27と、を備える。地盤掘削方法は、本体部12、アーム13、及び傾動装置15を作動させて、地盤掘削部14をケーソン躯体1の刃口部1bの下方位置まで移動させ、ケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤2を地盤掘削部14によって掘削する掘削工程と、ポンプ装置27によって本体部12の他側(後側)から排出された掘削土を、開閉自在なグラブバケット7を有する掘削装置6を用いて、ケーソン躯体1内からケーソン躯体1外に排土する排土工程と、を含む。これにより、掘削装置6は、地盤2の掘削を行うという本来の機能に加えて、掘削孔3の形成時に発生した掘削土の排土を行うという機能を有することができる。それゆえ、掘削孔3の形成時に発生した掘削土を排土するための設備を大幅に簡素化することができる。
【0070】
また本実施形態によれば、地盤掘削方法は、前述の掘削工程に先立って、架台本体21の姿勢を測定し、この測定結果に基づいて、架台本体21の水平姿勢を保持するように各脚部22の伸縮量(伸長量)を調整する姿勢調整工程を更に含む。ゆえに、各脚部22の伸縮量(伸長量)を調整することで、簡易に、架台本体21及び本体部12の水平姿勢、ひいては、掘削機10全体の水平姿勢を保持することができる。
【0071】
また本実施形態によれば、前述の姿勢調整工程及び掘削工程に先立って、ケーソン躯体1内に水Wが導入される。これにより、ケーソン躯体1内の水圧と周辺地盤の地下水圧とをバランスさせることで、周辺地盤からケーソン躯体1内への地下水の流入を抑制することができる。
【0072】
また本実施形態によれば、平面視で、複数の掘削孔3が、ケーソン躯体1の周方向に沿って並ぶ。また、平面視で、複数の掘削孔3が、ケーソン躯体1の周方向に互いに間隔を空けて形成される。ゆえに、ケーソン躯体1の周方向における複数箇所にて、刃口部1b下の地盤2(硬質地盤)の強度を低下させることができる。
【0073】
また本実施形態によれば、複数の掘削孔3を形成した後に、開閉自在なグラブバケット7を有する掘削装置6を用いて、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2を掘削する。これにより、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2の大部分を、グラブバケット7を有する掘削装置6によって効率良く掘削することができる。
【0074】
また本実施形態によれば、複数の掘削孔3を形成した後に、ケーソン躯体1を圧入沈下させる。これにより、刃口部1b下の地盤2(硬質地盤)の強度を低下させた上でケーソン躯体1を圧入沈下させることができるので、硬質地盤であってもケーソン躯体1を効率良く圧入沈下させることができる。
【0075】
尚、本実施形態では、ケーソン躯体1の圧入沈下の後にバケット掘削工程を実施しているが、この他、ケーソン躯体1の圧入沈下と並行してバケット掘削工程を実施してもよい。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について図10及び図11を用いて説明する。
図10及び図11は、本実施形態におけるケーソン躯体1の下方の地盤2を掘削する方法を示す図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0077】
本実施形態では、前述のバケット掘削工程に先立って、中央部削孔工程として、図10に示すように、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2に、鉛直方向に延びる複数の掘削孔4を形成する。尚、本実施形態では、地盤2に4個の掘削孔4を形成しているが、掘削孔4の個数はこれに限らず、任意である。
【0078】
本実施形態では、地盤2に掘削孔4を形成するときに掘削機10が用いられる。掘削孔4の形成時には、傾動装置15の油圧ジャッキ33を最大限短縮させることでアーム13を直立状態とする。この状態で、アーム13に並設された油圧ジャッキ28を下方に伸長させることでアーム13を下方に伸長させつつ、カッタヘッド30を回転させて地盤2を掘削する。
尚、地盤2に掘削孔4を形成するときには、掘削機10の代わりに、別の削孔装置を用いてもよい。
【0079】
本実施形態では、複数の掘削孔4が、平面視でケーソン躯体1の中央部に形成される。また、本実施形態では、平面視で複数の掘削孔3に囲まれるように、複数の掘削孔4が地盤2に形成される。
【0080】
ここで、隣り合う掘削孔4同士の間隔L1(図10参照)は、グラブバケット7の最大開口幅L2(図11参照)よりも狭い。この間隔L1については、グラブバケット7による掘削土砂の搬送が効率良く行えるように適宜設定され得る。一例として、前記間隔L1は、以下の式を満たすように設定され得る。
0.5×L2<L1<L2
【0081】
中央部削孔工程の後、バケット掘削工程では、図11に示すように、グラブバケット7を有する掘削装置6を用いて、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2を掘削する。
このようにして、地盤2の掘削が行われる。
【0082】
特に本実施形態によれば、刃口下部掘削工程の後であって、かつ、バケット掘削工程に先立って、平面視でケーソン躯体1内に位置する地盤2に、鉛直方向に延びる複数の掘削孔4を形成する(中央部削孔工程)。これにより、硬質地盤である地盤2がグラブバケット7によって掴みやすくなり得る。ゆえに、バケット掘削工程での掘削の作業性を向上させることができる。ここにおいて、隣り合う掘削孔4同士の間隔L1が、グラブバケット7の最大開口幅L2よりも狭いことが好ましい。
【0083】
また本実施形態によれば、刃口下部掘削工程の後であって、かつ、中央部削孔工程及びバケット掘削工程に先立って、ケーソン躯体1を圧入沈下させる。これにより、刃口部1b下の地盤2(硬質地盤)の強度を低下させた上でケーソン躯体1を圧入沈下させることができるので、硬質地盤であってもケーソン躯体1を効率良く圧入沈下させることができる。
【0084】
また本実施形態によれば、掘削機10は、水中地盤(地盤2)を鉛直方向に掘削して掘削孔4を形成し得る。掘削機10については、別途の反力受け装置を設ける必要がないので、当該反力受けに関する水中作業を減らすことができ、特に水中地盤掘削に好適である。
【0085】
尚、本実施形態では、ケーソン躯体1の圧入沈下の後に中央部削孔工程及びバケット掘削工程を実施しているが、この他、ケーソン躯体1の圧入沈下と並行して中央部削孔工程及び/又はバケット掘削工程を実施してもよい。
【0086】
前述の第1及び第2実施形態において、シュー部材43a,43bがケーソン躯体1の内周面1aに接触しているか否かを検知する接触検知部(例えば圧電素子を含んで構成される)をシュー部材43a,43bに設置し、この検知信号を制御ユニット18を介して地上の操作室の操作パネル58に伝達し、シュー部材43a,43bがケーソン躯体1の内周面1aに接触しているか否かを操作パネル58のディスプレイに表示させるようにしてもよい。これにより、地上の操作室内の作業員が操作パネル58のディスプレイを監視することで、シュー部材43a,43bがケーソン躯体1の内周面1aに接触しているか否かを容易に把握することができる。
【0087】
前述の第1及び第2実施形態では、地盤2を掘削可能な地盤掘削部14がカッタヘッド30を含んで構成されているが、地盤掘削部14の構成はこれに限らない。例えば、地盤掘削部14は、カッタヘッド30以外のオーガーなどの回転掘削装置、ブレーカーなどの打撃装置、バイブロハンマーなどの振動装置のうちのいずれかを含んで構成されてもよい。
【0088】
前述の第1及び第2実施形態では、ケーソン躯体1の断面形状が円形であるが、ケーソン躯体1の断面形状は円形に限らず、例えば、楕円形、又は、矩形であってもよい。
【0089】
前述の第1及び第2実施形態におけるケーソン躯体1は、施工現場から離れた工場などで製造されたロット(いわゆるプレキャスト材からなるロット)を含んで構成されてもよく、又は、施工現場で構築される複数のロットを含んで構成されてもよい。
【0090】
前述の第1及び第2実施形態では掘削機10を水中で使用しているが、この他、掘削機10を陸上で使用してもよい。
前述の第1及び第2実施形態では掘削機10をケーソン躯体1の刃口部1bの下方の地盤の掘削に用いているが、この他、いわゆる透かし掘りに用いてもよい。
【0091】
前述の第1及び第2実施形態では、本発明に係る掘削機の設置方法及び地盤掘削方法を立坑の構築に適用した例を説明したが、本発明に係る掘削機の設置方法及び地盤掘削方法の適用例はこれに限らない。例えば、立坑以外の地下構造物の構築や、構造物の基礎の構築に、本発明に係る掘削機の設置方法及び地盤掘削方法を適用してもよい。
【0092】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、特願2019-073475号の出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
上下方向に延びて地中に沈設される筒状のケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を掘削する掘削機であって、
平面視で前記ケーソン躯体内に位置する地盤に載置される架台と、
前記架台に支持されて前記架台に対して水平旋回可能な本体部と、
前記本体部の一側に上部が枢支されて該上部から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアームと、
前記アームの下端部に設けられて地盤を掘削する地盤掘削部と、
前記アームの上部の枢支軸を中心として前記アームを傾動させる傾動装置と、
を備える、掘削機。
[請求項2]
前記地盤掘削部による地盤掘削により発生した掘削土を吸引して前記本体部の他側から排出するポンプ装置を更に備える、請求項1に記載の掘削機。
[請求項3]
前記架台の姿勢を測定する姿勢測定部と、前記姿勢測定部からの姿勢測定信号に基づいて前記架台が所定の姿勢となるように姿勢制御する姿勢制御部と、を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の掘削機。
[請求項4]
前記架台は、各々の下端部が地盤面に接触可能な複数本の脚部と、前記脚部によって支持される架台本体と、を含んで構成され、
前記本体部は、前記架台本体に支持されて前記架台本体に対して水平旋回可能であり、
前記脚部が伸縮可能であり、
前記姿勢測定部は、前記架台本体の姿勢を測定し、
前記姿勢制御部は、前記姿勢測定部からの姿勢測定信号に基づいて前記架台本体の水平姿勢を保持するように前記脚部の伸縮動作を制御する、請求項3に記載の掘削機。
[請求項5]
前記ケーソン躯体内に水が貯留されており、
前記掘削機は、前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤の水中掘削を行う、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の掘削機。
[請求項6]
一端部が前記架台に連結されて前記架台から水平方向外方に延びる延長部と、前記延長部の他端部に設けられたシュー部材と、を更に備え、
前記シュー部材が前記ケーソン躯体の内周面に接触可能である、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の掘削機。
[請求項7]
前記掘削機は、揚重装置によって吊り下げられて昇降可能である、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の掘削機。
[請求項8]
請求項6に記載の掘削機を、平面視で前記ケーソン躯体内に位置する地盤上に設置する方法であって、
前記掘削機を揚重装置によって吊り下げて、前記シュー部材を前記ケーソン躯体の内周面に接触させつつ前記掘削機を下降させることを含む、掘削機の設置方法。
[請求項9]
上下方向に延びて地中に沈設される筒状のケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を掘削する掘削機を用いて前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を掘削する方法であって、
前記掘削機は、
平面視で前記ケーソン躯体内に位置する地盤に載置される架台と、
前記架台に支持されて前記架台に対して水平旋回可能な本体部と、
前記本体部の一側に上部が枢支されて該上部から下方に延び、かつ、伸縮可能であるアームと、
前記アームの下端部に設けられて地盤を掘削する地盤掘削部と、
前記アームの上部の枢支軸を中心として前記アームを傾動させる傾動装置と、
前記地盤掘削部による地盤掘削により発生した掘削土を吸引して前記本体部の他側から排出するポンプ装置と、
を備え、
前記方法は、
前記本体部、前記アーム、及び前記傾動装置を作動させて、前記地盤掘削部を前記ケーソン躯体の刃口部の下方位置まで移動させ、前記ケーソン躯体の刃口部の下方の地盤を前記地盤掘削部によって掘削する掘削工程と、
前記ポンプ装置によって前記本体部の他側から排出された掘削土を、開閉自在なグラブバケットを有する掘削装置を用いて、前記ケーソン躯体内から前記ケーソン躯体外に排土する排土工程と、
を含む、地盤掘削方法。
[請求項10]
前記架台は、各々の下端部が地盤面に接触可能な複数本の脚部と、前記脚部によって支持される架台本体と、を含んで構成され、
前記本体部は、前記架台本体に支持されて前記架台本体に対して水平旋回可能であり、
前記脚部が伸縮可能であり、
前記方法は、前記掘削工程に先立って、前記架台本体の姿勢を測定し、この測定結果に基づいて、前記架台本体の水平姿勢を保持するように前記脚部の伸縮量を調整する姿勢調整工程を更に含む、請求項9に記載の地盤掘削方法。
[請求項11]
前記姿勢調整工程に先立って、前記ケーソン躯体内に水が導入される、請求項10に記載の地盤掘削方法。
[請求項12]
前記掘削工程に先立って、前記ケーソン躯体内に水が導入される、請求項9~請求項11のいずれか1つに記載の地盤掘削方法。
【符号の説明】
【0093】
1…ケーソン躯体、1a…内周面、1b…刃口部、2…地盤、3,4…掘削孔、6…掘削装置、7…グラブバケット、7a…シェル、10…掘削機、11…架台、12…本体部、13…アーム、13a…シリンダ、13b…ロッド、13c…下端部、14…地盤掘削部、15…傾動装置、16…排土装置、17…スライドガイド装置、18…制御ユニット、21…架台本体、22…脚部、22a…シリンダ、22b…ロッド、22c…下端部、23…突起、25…ベース部、26…ブーム部、27…ポンプ装置、28…油圧ジャッキ、28a…シリンダ、28b…ロッド、30…カッタヘッド、31…開口部、33…油圧ジャッキ、36…第1管部、37…第2管部、38…第4管部、39…第5管部、40…保護フレーム、42a,42b…延長部、43a,43b…シュー部材、45a,45b…柱部材、46a,46b…C字形部材、47…補強部材、50…滑車、51…吊り部、52…吊りワイヤー、55…姿勢測定部、56…掘削制御部、57…姿勢制御部、58…操作パネル、59…操作信号、60…姿勢測定信号、L1…間隔、L2…最大開口幅、P…仮想軸、Q…枢支軸、W…水
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