(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076776
(43)【公開日】2023-06-02
(54)【発明の名称】車載用方位計
(51)【国際特許分類】
G01C 17/28 20060101AFI20230526BHJP
G01C 17/38 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
G01C17/28 D
G01C17/38 J
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189755
(22)【出願日】2021-11-23
(71)【出願人】
【識別番号】721007102
【氏名又は名称】関 尚代
(72)【発明者】
【氏名】関 賢司
(57)【要約】
【課題】運転者が進行方位を把握するための装置として、方位指示部材の示す方向と実際の方位の方向が一致し、かつ、方位指示部材の示す向きが運転者から見やすいかたちをした方位計を提供する。
【解決手段】方位を示す立体形状の部材を、車両の進行方位に基づいて電子制御により回動させることで、前記課題を解決することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方位指示部材によって方位を知らせるものであって、前記方位指示部材と、前記方位指示部材を回動させるためのモータと、前記方位指示部材の回転位置を取得する回転位置取得手段と、車両の進行方位を取得する方位検出手段と、前記取得した方位指示部材の回転位置と前記取得した車両の進行方位に基づいて前記モータを回動させるための制御信号を計算して出力する制御演算手段と、で構成され、前記方位指示部材は、5mm以上の厚みを有することを特徴とする車載用方位計。
【請求項2】
前記方位指示部材は、底面と垂直でない側面または、底面と平行でない上面または、その両方を有することを特徴とする請求項1に記載の車載用方位計。
【請求項3】
前記方位指示部材の上方、または外周方向、またはその両方に透明カバーを有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の車載用方位計。
【請求項4】
前記制御演算手段は、前記方位指示部材を回動させるための回転角を計算するものであって、前記回転角の計算において、1回のループ処理で回転させる方位指示部材の回転量に上限を設けることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の車載用方位計。
【請求項5】
前記制御演算手段は、前記方位指示部材の回転位置を取得または算出するとともに、前記方位検出手段より進行方位角を取得するものであり、前記取得または算出した方位指示部材の回転位置と、前記取得した進行方位角の差分をもとに、前記方位指示部材を回転させるための回転角を計算して前記モータに制御信号を出力するものであって、前記差分が-180°以下であるときは、前記差分に360°加算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算し、前記差分が180°以上であるときは、前記差分に360°減算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の車載用方位計。
【請求項6】
前記制御演算手段は、前記方位検出手段より進行方位角を取得し、前記取得した進行方位角の前回値と今回値の差分をもとに、前記方位指示部材を回転させるための回転角を計算して前記モータに制御信号を出力するものであって、前記差分が-180°以下であるときは、前記差分に360°加算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算し、前記差分が180°以上であるときは、前記差分に360°減算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の車載用方位計。
【請求項7】
前記回転角取得手段は、本体に固定される発光部と受光部を有する1対のフォトセンサと、前記方位指示部材に直接的あるいは間接的に接続されて同軸で回転する、前記一対のフォトセンサが遮光又は反射を検出するための検出面が円周方向に形成されている検知部材と、からなり、前記方位指示部材の回転動作によって前記フォトセンサが前記検知部材を検知することで、前記方位指示部材の回転位置を取得するものであり、前記制御演算手段は、前記取得した回転位置に基づいて前記方位指示部材の回転位置を補正するための回転角を計算して、前記モータに出力することを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の車載用方位計。
【請求項8】
前記方位指示部材は、前記検知部材に対し、円周方向の任意の向きに位置調整可能な構造であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の車載用方位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車の進行方向の方位を示す車載用方位計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用の方位計において、車両が向いている方位(以下、「進行方位」と言う。)を直感的かつ瞬時に把握できることは、運転者の負担低減による交通事故の抑制に一定の効果が期待できる。
一般に方位を把握する方法として、針が常に北を指し示すよう回動する、アナログ式の方位磁針が広く知られている。前記アナログ式の方位磁針は、ユーザーが向いている方向が、針が指し示す北に対して相対的にどの向きにあるかを視覚的に把握できる点で、直感性に優れている。しかしながら前記アナログ式方位磁針を車内のダッシュボードに設置した場合、走行時に発生する慣性力や車に搭載されるモータ等により発生する磁場の影響を受けて、針が正確な方向を示さないという問題があるため、車載用方位系としては使えない。
【0003】
そこで、運転者が運転中に進行方位を知るための装置として、従来より以下のものがある。
(1)透明なカプセルの中の液体に磁性を帯びた球体をうかべた、アナログ式の球体型方位磁石
(2)カーナビゲーション装置による進行方位表示機能
(3)電子制御で方位を指示する部材(以下、「方位指示部材」と言う。)を進行方位に応じて回動させる方式の方位計
しかし上記のものは、それぞれ以下の不都合を有している。
【0004】
(1)アナログ式の球体型方位磁石
球体上に記される東西南北を意味する文字表示により進行方位を知らせる方式である。運転者は進行方位を知るために文字を読み取る必要があるが、文字を読み取る行為は運転中の負担となる。また、前述の方位磁針と比較すると、進行方位が視覚的に示されない点で、直感性に欠ける。
【0005】
(2)カーナビゲーション装置による進行方位表示機能
進行方位が三角形等の図で視覚的に示される点で、前述の球体型方位磁石と比較すると視認性及び直感性に優れているが、前述の方位磁針と比較すると、表示される方向と実際の方位の方向に差がある点でやや直感性に欠ける。ここで、前述の方向差に関して
図1を用いて説明する。
図1は、カーナビゲーション装置におけるノースアップ表示の一例であり、進行方向(車両の前方)がN1の方向で、北に向かって進行している状態を表している。
図1の状態において、実際の進行方向および北はN1の方向であるのに対し、表示上の進行方向及び北はN2の方向となっており、表示される方向と実際の方向に差があることが分かる。ここで仮に、液晶画面をダッシュボード上に水平に設置できるのであれば、表示される方向と実際の方位の方向を一致させることができるが、その場合、運転者から画面表示が見づらくなる。よって一般的に、液晶画面は運転者から見やすいよう、ダッシュボードに垂直方向に設置されているので、前述のように、表示される方向と実際の方位の方向に差が生じてしまう。
また、カーナビゲーション装置は得てして高額であるため、普及率は伸びてはいるものの、まだ非搭載車も一定数存在する。
【0006】
(3)電子制御で方位指示部材を進行方位に応じて回動させる方式の方位計
電気的に進行方位を検知して、電子制御により方位指示部材を回動させることで方位を知らせるものである。特許文献1(実全昭54-040154)掲載の第2図のように、プレート上に描かれた図柄により方位を示す方式や、特許文献2(実公昭61-039924)掲載の第8図のように、外形から向きを判断できるように形成された板状の部材を用いて進行方位を知らせるものが、従来技術として知られている。
特許文献1のように、プレート上に描かれた図柄により方位を示す方式では、前述したカーナビゲーション装置同様、図柄の描かれた面をダッシュボード上に水平に設置すると視認性が損なわれるため、表示される方向と実際の方位の方向を一致させることが難しい。一方で特許文献2掲載の第8図のように、外形から向きを判断できるように形成された板状の部材であれば、水平に設置することで、方位指示部材の示す方向と実際の方位の方向を一致させた状態で、運転者から向きをある程度視認することができる。また、特許文献3(特開昭60-035213)では、小型・軽量化、信頼性向上を目的として、方位指示部材の向きを、ステッピングモータを用いて制御する方法が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実全昭54-040154
【特許文献2】実公昭61-039924
【特許文献3】特開昭60-035213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、運転者が進行方位を把握するための装置として、方位指示部材の示す方向と実際の方位の方向が一致し、かつ、方位指示部材の示す向きが運転者から見やすいかたちをしたものが望まれる。
ここで、特許文献2の第8図のように、板状に形成された方位指示部材が備えられた方位計を水平に設置することで、方位指示部材の示す方向と実際の方位の方向が一致し、かつ運転者からでも向きをある程度視認できるが、前記方位指示部材は板状に形成されているため、運転者は、方位指示部材の上面の輪郭や、上面に記された文字から方位指示部材の向きを視認する必要がある。しかしながら、方位計をダッシュボード上に設置する場合、方位計の設置高さが運転者の目線の高さに近い位置に設置されることがあり、このような場合においては、運転者から方位指示部材の上面が見えにくくなるため、方位指示部材の向きを視認しづらいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の基本目的である第一の目的は、進行方位に基づいて回動する方位指示部材によって方位を知らせるものにおいて、側方からでも方位指示部材の向きを容易に視認できるようにした車載用方位計を提供することである。
本発明の従的な目的である第2の目的は、側方からでも方位指示部材の向きを容易に視認できるようにした車載用方位計を、安価に提供することである。
本発明の2つの目的を記載したが、本発明は少なくとも第1の目的を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、請求項1にかかる第1の発明は以下のように構成されている。
方位指示部材によって方位を知らせるものであって、前記方位指示部材と、前記方位指示部材を回動させるためのモータと、前記方位指示部材の回転位置を取得する回転位置取得手段と、車両の進行方位を取得する方位検出手段と、前記取得した方位指示部材の回転位置と前記取得した車両の進行方位に基づいて前記モータを回動させるための制御信号を計算して出力する制御演算手段と、で構成され、前記方位指示部材は、5mm以上の厚みを有することを特徴とする車載用方位計である。
【0011】
請求項2にかかる第2の発明は、次ぎのように構成されている。
第1の発明において、前記方位指示部材は、底面と垂直でない側面または、底面と平行でない上面または、その両方を有することを特徴とする車載用方位計である。
【0012】
請求項3にかかる第3の発明は、次ぎのように構成されている。
第1または第2の発明において、前記方位指示部材の上方、または外周方向、またはその両方に透明カバーを有しないことを特徴とする車載用方位計である。
【0013】
請求項4にかかる第4の発明は、次ぎのように構成されている。
第1~第3の発明の何れかにおいて、前記制御演算手段は、前記方位指示部材を回転させるための回転角を計算するものであって、前記回転角の計算において、1回のループ処理で回転させる方位指示部材の回転量に上限を設けることを特徴とする車載用方位計である。
【0014】
請求項5にかかる第5の発明は、次ぎのように構成されている。
第1~第4の発明の何れかにおいて、前記制御演算手段は、前記方位指示部材の回転位置を取得または算出するとともに、前記方位検出手段より進行方位角を取得するものであり、前記取得または算出した方位指示部材の回転位置と、前記取得した進行方位角の差分をもとに、前記方位指示部材を回動させるための回転角を計算して前記モータに制御信号を出力するものであって、前記差分が-180°以下であるときは、前記差分に360°加算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算し、前記差分が180°以上であるときは、前記差分に360°減算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算することを特徴とする車載用方位計である。
【0015】
請求項6にかかる第6の発明は、次ぎのように構成されている。
第1~第4の発明の何れかにおいて、前記制御演算手段は、前記方位検出手段より進行方位角を取得し、前記取得した進行方位角の前回値と今回値の差分をもとに、前記方位指示部材を回転させるための回転角を計算して前記モータに制御信号を出力するものであって、前記差分が-180°以下であるときは、前記差分に360°加算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算し、前記差分が180°以上であるときは、前記差分に360°減算した値を今回の方位指示部材の回転角として計算することを特徴とする車載用方位計である。
【0016】
請求項7にかかる第7の発明は、次ぎのように構成されている。
第1~第6の発明の何れかにおいて、前記回転角取得手段は、本体に固定される発光部と受光部を有する1対のフォトセンサと、前記方位指示部材に直接的あるいは間接的に接続されて同軸で回転する、前記一対のフォトセンサが遮光又は反射を検出するための検出面が円周方向に形成されている検知部材と、からなり、前記方位指示部材の回転動作によって前記フォトセンサが前記検知部材を検知することで、前記方位指示部材の回転位置を取得するものであり、前記制御演算手段は、前記取得した回転位置に基づいて前記方位指示部材の回転位置を補正するための回転角を計算して、前記モータに出力することを特徴とする車載用方位計である。
【0017】
請求項8にかかる第8の発明は、次ぎのように構成されている。
第1~第7の発明の何れかにおいて、前記方位指示部材は、前記検知部材に対し、円周方向の任意の向きに位置調整可能な構造であることを特徴とする車載用方位計である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る第1の発明において、方位指示部材が、運転席から側面を充分に視認できるだけの厚みを有することにより、運転者は、上面と側面の双方から方位指示部材の向きを視認することができるようになる。これにより、方位計の設置高さが運転者の目線の高さに近い位置(即ちダッシュボード上)に設置された場合であっても、方位指示部材の向きを視認しやすくなる。よって本発明の基本目的である第1の目的を達成できる利点がある。
【0019】
請求項2に係る第2の発明において、方位指示部材が、底面と垂直でない側面または、底面と平行でない上面または、その両方を有することにより、上面が見えない位置からでも側面の形状のみで方位指示部材の向きを判断できるようになる。これにより、方位計の設置高さが運転者の目線の高さに近い位置(即ちダッシュボード上)に設置された場合であっても、方位指示部材の向きをよりいっそう視認しやすくなる。よって本発明の基本目的である第1の目的を達成できる利点がある。
【0020】
請求項3に係る第3の発明において、方位指示部材の上方、または外周方向、またはその両方に透明カバーを有しないことにより、透明カバーを設けた場合に視認の妨げとなる反射光が発生しなくなる。これにより、運転中の天候や方位計の設置位置に左右されることなく、運転者が方位指示部材の向きを容易に視認することができるようになる。よって本発明の基本目的である第1の目的を達成できる利点がある。
さらに、透明カバーを設けないことにより構成部品を少なくすることができることから、本発明の第2の目的を達成できる利点がある。
【0021】
請求項4に係る第4の発明において、基本的構成は第1~第3の発明と同一であるので、本発明の第一の目的を達成できる利点がある。
ここで、第1の発明または第2の発明で示したような立体形状の方位指示部材を安定して回動させるにあたり、或いは第3の発明で示したように方位指示部材がむき出しに配置された場合に不意な接触により回転してしまわないように、従来のものよりも方位指示部材の回転軸には駆動トルクが必要になる。
ギヤ比を大きくすることにより、容量の小さい安価なモータでも前記トルクを得ることができるが、その反面、方位指示部材の回転速度が遅くなり、車両の回転に追いつかなくなる場合がある。
そこで第4の発明では、1回のループ処理で回転させる方位指示部材の回転量に上限を設ける。これにより、容量の小さい安価なモータを用いてギヤ比を大きく設定した場合であっても、進行方位の回転方向が短時間で変化した際に、方位指示部材を所望の向きまで最短動作で回動させることが可能となり、追従性を向上させることができる。よって本発明の第2の目的を達成できる利点がある。
【0022】
請求項5に係る第5の発明および、請求項6に係る第6の発明において、基本的構成は第1~第3の発明と同一であるので、本発明の第一の目的を達成できる利点がある。
さらに、1回のループ処理における方位指示部材の回転量が180°を上回りそうな場合、回転角に360°を加算または減算することにより、方位指示部材を所望の向きまで遠回りさせることなく、最短動作で回動させることが可能となる。
これにより、方位指示部材を回転させられる速度が比較的遅い場合でも追従性を高めることができるので、小容量なモータを選択することが可能となり、第4の発明同様に、本発明の第2の目的を達成できる利点がある。
【0023】
請求項7に係る第7の発明において、基本的構成は第1~第3の発明と同一であるので、本発明の第一の目的を達成できる利点がある。
さらに、フォトセンサによって方位指示部材の回転位置を検知することで、方位指示部材が立体形状であることや、むき出しに配置されることに起因して、回転位置がずれた際に、適正な回転位置に戻すことができる。これにより、サーボモータや大容量のモータを用いることなく安価な構成で位置ずれのリスクを低減することができるので、本発明の第2の目的を達成できる利点がある。
【0024】
請求項8に係る第8の発明において、基本的構成は第1~第3の発明と同一であるので、本発明の第一の目的を達成できる利点がある。
さらに、方位指示部材を検知部材に対し、円周方向の任意の向きに位置調整可能な構造にすることで、設置方向に応じた補正値を入力するためのデバイスを別途設けることなく、本発明における方位計を自由な向きに設置することが可能になる。よって、本発明の第2の目的を達成できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】カーナビゲーション装置におけるノースアップ表示の一例である。
【
図2】本発明による方位計の一実施形態の外観図である。
【
図4】厚みがない方位指示部材10aと、厚みがある方位指示部材10bの、側方から見た際の見え方をそれぞれ示したものである。
【
図5】上方から見た、構成部品の位置関係を示したものである。
【
図6】制御演算手段5における処理の一例を示すフローチャートである(制御方法の実施例1)。
【
図7】回転量に上限を設ける処理を行った場合と行わなかった場合におけるレスポンスの違いを示した一例である。
【
図8】制御演算手段5における処理の一例を示すフローチャートである(制御方法の実施例2)。
【
図9】カバーを部分的に設けるようにした一例である。
【
図10】更に向きを把握し易くした方位指示部材10c(変形例)の形状を示したものである。
【
図11】方位指示部材10a(従来の薄板形状)と方位指示部材10b(実施形態)と方位指示部材10c(変形例)の、真横から見た際の見え方をそれぞれ示したものである。
【
図12】方位指示部材の別の形状を例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面とフローチャートに基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態や後述の変形例において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略されるものとする。
【0027】
図2は本発明による方位計の一実施形態の外観図である。本実施形態における方位計100は、ユーザーによって、表示71A(以降、基準方向という)が車両の前方を向く状態で、ダッシュボード上の水平な面に設置面71Bを下にして設置されるものである。運転者は方位指示部材10の向きを視認することで、進行方位を把握できるようになっている。通常、回動する立体部材の周囲には、不意に体や物と接触して状態が変化してしまうリスクを避けるためにカバーが設けられていて、例えば方位磁針であれば、針の周囲が透明カバーで覆われているものが一般的である。しかしながら方位指示部材10の周囲に透明カバーを設けた場合、太陽光が透明カバーに反射して視認性が損なわれることがある。よって本実施形態では、視認性を向上させる目的で、方位指示部材の上方および外周方向に透明カバーを有しない構成となっている。これにより、運転者が運転中に進行方位を瞬時に把握しやすくなる効果がある。
【0028】
【0029】
方位指示部材10は、運転者に進行方位を知らせるための部材である。本実施形態で方位指示部材10は、後述する検知部材32と、ステッピングモータ63の動力を受けるためのギヤ62とともに回転軸65に固定されている。回転軸65は本体71に軸受66を介して、設置面71Bに対し垂直に接続されている。また、方位指示部材10の向きから北方向が視覚的に分かるような形状となっていて、本実施形態では矢印の向く方向によって北方向を表現するものとなっている。以降、方位指示部材10の示す北方向の回転位置を、方位指示部材10の回転位置θ’と呼び、基準方向を基準に上方から見て半時計回りに0≦θ’<360の範囲で定義する。方位計100の電源がONの状態において、方位指示部材10はステッピングモータ63の動力によって矢印の方向が常に北を向くように回動する。前述したように方位計100を水平に設置することで、方位指示部材10で示される北と実際の北の向きを忠実に一致させることができるので、運転者が方位指示部材10を見ることで、進行方位が、方位指示部材10の示す北に対して相対的にどの向きにあるかを直感的に把握できるようになっている。
また、方位指示部材10は、運転者の位置から容易に側面が視認できるように、充分に厚みのある立体形状となっているため、運転者が上面と側面の双方から方位指示部材10の向きを視認できるようになっている。これにより、方位計100をダッシュボード上に設置するにあたり、設置高さが運転者の目線の高さに近い位置となった場合であっても、方位指示部材10の向きを視認しやすくなる。
図4は、従来の厚みがない方位指示部材10aと、本実施形態の厚みがある方位指示部材10bの、側方から見た際の見え方をそれぞれ示したものである(方位指示部材が左斜め前方を向いた状態)。厚みがあることで、側方から見た際に回転位置が判断しやすいことが分かる。ここで、方位指示部材の厚みは運転者の位置から容易に側面が視認できる程度が必要で、好適には5mm以上である。
【0030】
ステッピングモータ63は後述する制御演算部50から制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて方位指示部材10を所望の回転位置まで回動させるためのものである。ステッピングモータ63の回転軸には、前述の回転軸65に動力を伝えるためのギヤ61が備えられていている。
【0031】
回転位置取得手段3は、方位指示部材10の回転位置を取得するものであり、本実施形態では、本体71に固定される、1対の発光部と受光部からなる検知部が設けられたフォトセンサ31と、回転軸65に方位指示部材10と共に固定されて同軸で回転する、前記フォトセンサ31を遮光して検知させるための検出面が円周方向に形成されている検知部材32から成る。両部材は、検知部材32が回転した際に、フォトセンサ31の検知部が、検知部材32の検出面を検知できる位置関係で備えられている。また、
図5で示すように、フォトセンサ31の検知部中心位置は、基準方向に対し、角度S(上方から見て反時計回りを正とする)をなす位置で固定されている。
【0032】
方位検出手段4は車両の進行方位を検出するものであり、本実施形態ではGPS衛星から方位情報を受信するGPS受信機41を用いる。尚、方位検出手段4として前述の他に、GNSS(GPS以外の衛星測位システム)や、地磁気センサ、ジャイロセンサ等を用いる方法も広く知られており、これらのセンサを単体で用いるものであっても良いし、複数組み合わせてセンサフュージョンにより方位を算出するものであっても良い。また、方位検出手段4は方位計100に内蔵されても良いし、カーナビや車、スマートフォン等の外部に搭載されたものを利用しても良い。
【0033】
制御演算手段5は方位検出手段4から取得した進行方位をもとに、ステッピングモータ63に制御信号を出力するものであり、マイクロコントローラおよびその周辺回路から成る。制御演算手段5の構成は特に限定されないが、本実施形態では、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、後述するステッピングモータ63の駆動を制御するためのモータドライバと、を備えた、演算制御部50を用いる。尚、制御演算手段5は方位計100に内蔵されても良いし、カーナビや車、スマートフォン等のような、外部に搭載されたものを利用しても良い。
【0034】
本実施形態地おける方位計100は、ケーシング72によって前記構成部品が覆われている。
【0035】
[制御方法の実施例1]
図6は制御演算手段5における処理の一例を示すフローチャートであり、以下このフローチャートに基づいて制御方法の一例を説明する。ここで、車両の進行方位を表す角度を進行方位角θとして、北を基準に上方から見て時計回りに0≦θ<360の範囲で定義する。以降の処理により、ステッピングモータ63を用いて方位指示部材10の回転位置θ’を、進行方位角θと等しくなるように回動させる。これにより、方位指示部材10が、進行方位に関わらず常に北を示すように制御することができる。
【0036】
尚、制御演算手段5は、車両のACC(アクセサリー)電源から電力の供給を受けるように接続されており、ACC電源がONになったときに
図6の処理を開始する。
【0037】
まず、ステップS101で方位指示部材10の回転位置θ’t-1を取得する。本実施例におけるここでのθ’t-1は、前回の電源ON時の最後のループ処理で算出した回転位置であり、電源OFFの間は制御演算部50に備えられる不揮発性メモリに保存しておき、それをステップS101で読み出すこととする。ここで、添字t-1は前回のループにおける値を表し、添字tは今回のループにおける値を表すものであり、添字tに関しては適宜省略して記載する。
【0038】
次に、ステップS102で、方位検出手段4から進行方位角θを取得する。
【0039】
次に、ステップS103では、ステップS102で取得した進行方位角θと、前回のループ処理で算出した方位指示部材10の回転位置θ’t-1を用いて、方位指示部材10を回転させるための回転角θRotaを一旦、θRota=θ-θ’t-1と計算する。尚、θRotaは上方からみて半時計回りを正と定義する。
【0040】
ここで進行方位が、前回のループから今回のループにかけて北(進行方位角0°)を通過した場合において、方位指示部材10をθRota回転させようとすると、方位指示部材10の回転位置θ’が、車両の前方方向(回転位置0°)をよけて遠回りに回転してしまう問題がある。この問題を解消するにあたり、ステップS103~ステップS106にかけて、1回のステップで出力する方位指示部材10の回転量が180°以下(つまり、-180≦θRota≦180)となるように、360°を加算または減算する。具体的には、θRota≦-180であればθRota=θRota+360とし、θRota≧180であればθRota=θRota-360とする。
【0041】
進行方位が北(進行方位角0°)を横切る場合における、ステップS103~ステップS106による効果を、以下の例を用いて改めて説明する。例えば、方位指示部材10の回転位置θ’t-1が359°で、ステップS102で取得した進行方位角θが1°であった場合、所望の回転角はθRota=2となるのに対し、ステップS102時点での計算結果は、θRota=1-359=-358となる。ここで、上述の処理を行うことでθRota=2とすることができるので、所望の回転角を計算できたことになる。このように、上述の処理により、進行方位が北(進行方位角0°)を横切る際に、車両の回転に即した形で、最短動作で方位指示部材10を回転させることができる。
【0042】
次に、ステップS107~ステップS110にかけて、θRotaが予め設定した最大回転量Mを上回らないように処理を行う。具体的には、θRota≦-MであればθRota=-Mとし、θRota≧MであればθRota=Mと計算する。この処理により、進行方位の回転方向が短時間で変化するようなケースにおいて、レスポンスを高めることができる(これに関しては後の項で詳しく説明する)。ここで最大回転量Mは、CPUの処理速度やモータの回転速度やギヤ比を考慮して任意の値を設定すれば良い。
【0043】
次に、ステップS111で、方位指示部材10をθRota回転させるための回転信号を生成して、ステッピングモータ63に出力する。ここで、ギヤ61の歯数がG1、ギヤ62の歯数がG2のとき、ギヤ比をG=G2/G1と定義すると、ステッピングモータ63で回転させる回転角は、θRota×Gとなる。
【0044】
ステッピングモータ63への出力を終えた後、ステップS112で、方位指示部材10の回転位置θ’を、θ’t=θ’t-1+θRotaと計算して値を更新する。
【0045】
次に、ステップS113で検知部材32の検出面がフォトセンサ31の検知部に差し掛かったかどうかを判定して条件分岐処理を行う。具体的には、フォトセンサ31が検知部材32を今回のループで検知し、かつ、前回のループで検知しなかった場合は、差し掛かったと判定してS114へと進み、前記条件に該当しなかった場合は、ステップS102へ戻って次回のループ処理に移行する。尚初回のループは例外的に、前回のループで検知していたものとして処理する(つまり、ステップS102へ戻って次回のループ処理に移行する)。
【0046】
ステップS114~ステップS116では、方位指示部材10の向きが接触等によりずれた場合の補正を行うために、制御に用いている方位指示部材10の回転位置θ’を実際の(正確な)回転位置θSenceで上書きする。ここでθSenceは、検知部材32の検出面がフォトセンサ31の検知部に差し掛かった時点における方位指示部材10の回転位置であり、あらかじめ以下のように定めることができる。
ここで、θSenceの値は、検知部材32がフォトセンサ31の検知部に差し掛かった際に時計回りをしていたか反時計回りをしていたかによって異なる。反時計回りをしていた場合をθSence1とし、時計回りをしていた場合をθSence2とした場合に、検知部材32の検知面の幅に相当する角度Wkと、フォトセンサ31の検知部の幅に相当する角度Wsと、検知部材32の検出面中心位置に対する方位指示部材10が示す北方向の角度K(上方から見て反時計回りを正とする)を用いて、θSence1=S-Ws/2+K-Wk/2、θSence2=S+Ws/2+K+Wk/2と定めることができる。尚、0≦θSence1<360、0≦θSence2<360とする。
【0047】
最後にステップS102に戻り、次回のループ処理へと移行する。
【0048】
ここで、ステップS107~ステップS110によって方位指示部材の回転量に上限を設ける効果を詳しく説明する。進行方位の回転方向が短時間で変化するようなケースにおいてレスポンス良く制御を行うには、進行方位角を短い時間間隔で取得して都度回転位置に反映する必要があるが、ステップS111において方位指示部材がθ
Rota回転し終えてから次の処理に進むため、回転量|θ
Rota|が大きくなるにつれて進行方位角を取得する時間間隔が長くなるため、レスポンスが低下する。そこで、ステップS107~ステップS110の処理により、1回のループ処理で回転させる方位指示部材の回転量|θ
Rota|に上限を設けることで、前記時間間隔が短くなり、レスポンスを向上させることができる。
図7は、ステップS107~ステップS110の処理を行った場合と行わなかった場合におけるレスポンスの違いを示した一例であり、ステップS111の直前のタイミングにおける進行方位角θ、方位指示部材の回転位置θ’
t-1、及び、方位指示部材の回転量θ
Rotaを時系列で示した図である。
この例では、1回のループ処理におけるモータの回転処理(ステップS111)以外に要する時間が0.1秒、方位指示部材の回転速度が20°/sec、方位指示部材の最大回転量Mが6°、であるという前提で、経過時間0秒の時点での進行方位角と回転角が0°の状態から、進行方位角が1秒後に40°に変化し、その後1秒後に0°に戻り、その後0°の状態を維持するという状況を想定する。
図7で示すように、回転量に上限を設けない場合、進行方位角が0°に戻ってから方位指示部材が0°を示すのに2.1秒(4.1-2.0)遅延が発生するのに対し、上限を設けることにより、遅延が1.1秒(3.1-2.0)に短縮されることが分かる。
また、この処理を繰り返すなかで、進行方位角θと方位指示部材の回転位置θ’
t-1の差が蓄積されて180°以上となった場合には、前述のステップS103~ステップS106により、方位指示部材の回転方向を反転させて最短動作で制御位置まで回動させられるというメリットもある。
尚、レスポンスを向上させるための別の手段として、ステップS112以降の処理とステップS111の処理を並列で行う方法もあるが、並列処理に対応した演算装置が必要となるため、コストアップにつながる。よって本実施形態において、低コストな演算装置でもレスポンスを高められる方法として、ステップS107~ステップS110の処理を行うこととした。
【0049】
[制御方法の実施例2]
図8は制御演算手段5における処理の別の例(制御方法の実施例2)を示すフローチャートである。制御方法の実施例2として、制御演算手段5における処理の別の方法を、以下、
図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
まず、電源始動直後はステップS201で、方位検出手段4から進行方位角θtを取得する。
【0051】
次に、ステップS202で、ステップS201で取得した進行方位角θtと、前回のループで取得した進行方位角θt-1と、後述する回転位置を補正するための補正角θCを用いて、方位指示部材10を回転させるための回転角θRotaを一旦、θRota=θt-θt-1+θCと計算する。ここで、電源OFFの状態において車両は停車しているため、電源始動直後はθt-1=θtとする。また同様に、電源OFFの状態において方位指示部材も停止しているため、電源始動直後はθC=0とする。
【0052】
次に、制御方法の実施例1同様に、ステップS203~ステップS205にかけて、1回のステップで出力する方位指示部材10の回転量が180°以下(つまり、-180≦θRota≦180)となるように、360°を加算または減算する。この処理により、進行方位が北(進行方位角0°)を横切る際にも、車両の回転に即した形で方位指示部材10を回転させることができる。
【0053】
次に、ステップS206で、方位指示部材10をθRota回転させるための回転信号を生成して、ステッピングモータ63に出力する。
【0054】
ステッピングモータ63への出力を終えた後、ステップS207で検知部材32の検出面がフォトセンサ31の検知部に差し掛かったかどうかを判定して条件分岐処理を行う。具体的には、フォトセンサ31が検知部材32を今回のループで検知し、かつ、前回のループで検知しなかった場合は差し掛かったと判定してS209へと進み、前記条件に該当しなかった場合は、ステップS208で補正値θC=0としてから、ステップS201へと戻って次回のループ処理に移行する。尚初回のループは例外的に、前回のループで検知していたものとして処理する(つまり、ステップS208へ進む)。
【0055】
ステップS209~ステップS215では、方位指示部材10の回転位置が制御上の回転位置と等しくなるように、補正角θCを計算する。補正角θCは、次回のループのステップS202でθRotaを算出する際に加算するものであり、上方から見て反時計回りを正として定義する。補正角θCの算出は、検知部材32の検出面がフォトセンサ31の検知部に差し掛かる位置における方位指示部材10の回転位置θSenceと、方位指示部材10の制御上の回転位置θを用いて、θC=θ-θSenceと計算する。尚、上述の実施例1同様、θSenceはθSence1とθSence2の2種類が存在し、検知部材32がフォトセンサ31の検知部に差し掛かった際に時計回りをしていたか反時計回りをしていたかによって使い分ける。
この処理により計算したθCを、次回のステップS202で回転角θRotaに加算することで、方位指示部材10の回転位置θ’が接触等によりずれた場合のずれを補正することができる。
【0056】
ここで、次回のステップS206で方位指示部材10を遠回りさせることなく最短ルートで回転させるために、ステップS212~ステップS215の処理を行う。ステップS206で方位指示部材10を最短ルートで回転させるには、ステップS202~S205の処理で-180≦θRota≦180となる必要があり、そのためには、ステップS202の段階で-540≦θRota≦540である必要がある。θRota=θt-θt-1+θCの計算において、0≦θt<360、0≦θt-1<360、であるから、-180≦θC≦180であれば、-540<θRota<540(-540≦θRota≦540)となる。よって、ステップS212~ステップS215で、θC≧180であった場合θC=θC-360と計算し、θC≦-180であった場合θC=θC+360と計算する。この処理により-180≦θC≦180(-180<θC<180)とすることができる。
【0057】
最後にステップS201に戻り、次回のループ処理へと移行する。
【0058】
本実施例では、初回動作時に方位指示部材10の回転位置を取得する必要が無いため、上述の実施例1におけるステップS101で必要であった、回転位置を電源OFFの状態で保存しておくための不揮発性メモリが不要となるメリットがある。尚、本実施例では、説明を簡略化するために、1回のループ処理で回転させる方位指示部材10の回転量に上限を設ける処理を省略したが、上述の実施例1同様に、回転量に上限を設ける処理を追加することが可能であるのは言うまでもない。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0060】
上記実施形態における方位計は、ユーザーによって後付けで車内に設置するものであったが、車内のダッシュボード等の部品に予め備えられたものであっても良い。また、本発明品の設置位置は、車内であれば特に限定されない。
【0061】
上記実施形態では、ACC電源と連動して処理が開始する構成を例示したが、別途電源スイッチを設けて任意に処理を開始するように構成しても良い。また、電源はACC電源に限らず、例えば電池や、ソーラーパネルを用いても良い。
【0062】
上記実施形態では、視認性を向上させる目的で、方位指示部材の上方および外周方向に透明カバーを有しない構成を例示した。変形例として、方位指示部材の周辺にカバーを設けても良い。例えば、透明なカバーを方位指示部材の円周方向と上方を完全に覆う形で設けることで、不意な接触による回転部材の意図しない角度変化や、ほこり等の装置内部への侵入による故障を防ぐことができる。しかしその反面、反射光の影響で方位指示部材の視認性は低下するので、例えば
図9のように、部分的なカバー90を前方に設けるようにしても良い(図中のFは前方方向を表す)。こうすることで、接触によるリスクを低減しつつ、運転席からの視認性も保つことができる。尚、前述した部分的に設けるカバーは、透明であっても透明でなくても良い。
【0063】
上記実施形態では、方位指示部材の動力源にステッピングモータを用いた。変形例として、ステッピングモータの代わりにサーボモータを用いても良い。サーボモータには回転位置取得手段が備わっているので、上述の実施形態におけるフォトセンサ31と検知部材32が不要になると同時に、制御演算手段5における方位指示部材回転位置の補正処理が不要になる。一般的に、サーボモータはステッピングモータより高価なため、コストアップにはなるが、係る構成により構造および処理を簡略化できるとともに、小型化できる効果もある。
【0064】
上記実施形態では、基準方向(表示71A)が車輌の前方を向くように設置されることを前提とした制御となっているため、基準方向が車両の前方方向に対してずれた角度で設置された場合、方位指示部材10の示す方向が北方向からずれてしまうが、電源ケーブルの取り回しの都合等で、本発明品を前述した向きに設置できない場合がある。ここで例えば、基準方向を車両の前方方向に対し、設置角E(上方から見て反時計回りを正)の角度で設置した場合、上記実施形態(制御方法の実施例1)におけるステップS114~S116において、θSence1=S-Ws/2+K-Wk/2+E、θSence2=S+Ws/2+K+Wk/2+Eとすることで対応できるが、設置角Eを入力するための入力デバイスが別途必要になるため、コストアップに繋がる。よって、安価に対応するための変形例として、方位指示部材10を検知部材32に対し、円周方向に位置調整可能な構造を例示する。これにより、前述した向きに設置できない場合であっても、方位指示部材10の位置を調整することで、方位指示部材10が北を向くように動作させることができる。位置調整可能な構造の例として、方位指示部材10を回転軸65に対し中間ばめで接続する。これにより、ユーザーが方位指示部材10を付け外しながら任意の向きに位置調整することが可能となる。尚、位置調整するための構造は、前述の例に限定されない。
【0065】
上記実施形態では、ギヤを介してモータと方位指示部材10および検知部材32を接続した。変形例として、方位指示部材10と検知部材32をモータの回転軸に直接接続しても良い。また、上記実施形態や変形例に記載のモータは、ギヤが内蔵されたギヤードモータであっても良い。
【0066】
上記実施形態では、接地面71Bが回転軸65に対し垂直に構成される例を示した。変形例としては、接地面71Bを回転軸65に対し、90°以外の角度で配置する。こうすることで、接地面が水平でない場合であっても方位指示部材の示す方向と実際の方位の方向を一致させることができる。
【0067】
制御方法の実施例1では、初回の回転位置の取得方法(ステップS101)として、前回の電源ON時の最後に取得した回転位置を読み出すこととしたが、電源ON時の初期動作として、方位指示部材10および検知部材32を回転させて、フォトセンサ31で回転位置を検出させるようにしても良い。これにより、初回動作が必要にはなるが、回転位置を電源OFFの状態で保存しておくための不揮発性メモリが不要となるメリットがある。
【0068】
上記実施形態では、運転者の位置から向きを把握し易くする目的で、方位指示部材として10b(
図4)の形状を示した。変形例として、更に向きを把握し易くした方位指示部材10cの形状を
図10に示す。
図10において、(A)は斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)~(F)は側面図である。本変形例では、側面a及びbが底面fに対して100°の角度を成していて、側面c及びdが底面fに対して80°の角度を成していて、上面eが底面fに対し5°の角度を成している。このような形状にする効果を、
図11を用いて説明する。
図11は方位指示部材の回転位置が90°の状態における、運転者が真横から見た際の見え方の違いを、従来の薄板形状10aと、上記実施形態の形状10bと、本変形例の形状10cで比較したものである。
図11で示すように、従来の薄板形状や、上記実施形態で例示した、底面に対して平行及び垂直な面のみで構成される形状では、真横からみた際に方位指示部材の向きを判断できない場合があるのに対し、本変形例で示す形状にすることにより、真横からみた際にも向きを判断できるようになるので、運転者から向きを把握しやすくなる効果がある。尚、同様の効果を得るにあたり、方位指示部材の形状は10cに限定されるものではなく、底面と垂直でない側面または、底面と平行でない上面または、その両方を有していれば良い。また、側面や上面は、曲面を有していても良い。
図12は、方位指示部材の別の形状を例示したものであり、斜視図および、運転者が真横から見た際の見え方をそれぞれ示している。10dは上面のみに勾配が設けられているものであり、10eは側面のみに勾配が設けられているものであり、10fは車を模したの形となっていて、いずれも真横からでも向きを視認できることが分かる。尚、運転席から側面の形状を容易に視認できるよう、方位指示部材の厚みはいずれも最も厚い箇所において5mm以上あるものとする。
【0069】
上記実施形態や変形例では、形状のみから北方向が判断できるような方位指示部材を例示した。変形例として、方位指示部材の形状に加え、方位指示部材に文字や図柄を表示することで北方向を認識しやすくしても良い。
【0070】
尚、上記実施形態や変形例により本願に係る装置やプログラムは限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、フローチャートにおける処理の順序は、処理内容を矛盾させない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 方位指示部材、31 フォトセンサ、32 検知部材、41 GPS受信機、50 制御演算部、61 ギヤ(モータ側)、62 ギヤ(回転軸側)、63 ステッピングモータ、71 本体、71A 基準方向を示すための表示、71B 接地面、72 ケーシング 100 方位計