IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社HPC沖縄の特許一覧

特開2023-76782コンクリート用細骨材及びコンクリートの製造方法
<>
  • 特開-コンクリート用細骨材及びコンクリートの製造方法 図1
  • 特開-コンクリート用細骨材及びコンクリートの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076782
(43)【公開日】2023-06-02
(54)【発明の名称】コンクリート用細骨材及びコンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 14/28 20060101AFI20230526BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230526BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20230526BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C04B14/28
C04B28/02
C04B40/02
C01F11/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189761
(22)【出願日】2021-11-23
(71)【出願人】
【識別番号】717001145
【氏名又は名称】株式会社HPC沖縄
(72)【発明者】
【氏名】阿波根 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】西薗 博美
(72)【発明者】
【氏名】多田 修二
(72)【発明者】
【氏名】細矢 仁
(72)【発明者】
【氏名】喜屋武 盛次
(72)【発明者】
【氏名】有賀 俊二
【テーマコード(参考)】
4G076
4G112
【Fターム(参考)】
4G076AA16
4G076AB02
4G076AB11
4G076BA34
4G076BC08
4G076BD01
4G076BD06
4G076DA30
4G112PA10
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】 本発明は、コンクリートに二酸化炭素を固定化できるコンクリート用細骨材及びコンクリートの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 有機分子アミンと陽イオンである金属イオンを含む溶液中に二酸化炭素を含む気体を吹き込み、二酸化炭素由来の架橋性配位子による多孔性金属錯体を生成すると共に、該生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含む気体による炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させてなることを特徴とするコンクリート用細骨材であり、その細骨材を用いたコンクリートの製造方法である。また、コンクリート原料に有機分子アミンと金属イオンとβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含有するウルトラファインバブルによる練り混ぜ水を用いたコンクリートの製造方法である。

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機分子アミンと陽イオンである金属イオンを含む溶液中に二酸化炭素を含む気体を吹き込み、二酸化炭素由来の架橋性配位子による多孔性金属錯体を生成すると共に、該生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含む気体による炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させてなることを特徴とするコンクリート用細骨材。
【請求項2】
前記の有機分子アミンがピペラジンであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート用細骨材。
【請求項3】
前記の陽イオンである金属イオンがβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)によるカルシウムイオンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート用細骨材。
【請求項4】
前記の吹き込む二酸化炭素を含む気体は、泡の直径が1μm以上で100μm未満であるマイクロバブルであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材。
【請求項5】
前記の吹き込む二酸化炭素を含む気体は、泡の直径が1μm未満であるウルトラファインバブルであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材。
【請求項6】
炭酸カルシウム組成物を生成させるための反応槽と、有機アミンを該反応槽に投入するための投入手段と、陽イオンである金属イオンを含む溶液を該反応槽に投入するための溶液投入手段と、気泡水製造手段により製造した二酸化炭素を含む気体からなる気泡を含む水を反応槽に注入するための注入手段と、反応槽内の液体を攪拌するための攪拌手段が設けられ、有機アミンと金属イオンと二酸化炭素の反応により多孔性金属錯体を生成すると共に、
β型珪酸二カルシウム投入手段により、反応層に投入されたβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と、該注入手段により注入された二酸化炭素を含む気体からなる気泡を含む水により、該生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素による炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させ、
該多孔質金属錯体及び炭酸カルシウム組成物を混合水と共に反応槽から排出する排出手段が設けられ、排出された該多孔質金属錯体と該炭酸カルシウム組成物を含む混合水を固液分離手段により、個体部を分離して細骨材を製造することを特徴とするコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項7】
前記の有機分子アミンがピペラジンであることを特徴とする請求項6に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項8】
前記の陽イオンである金属イオンがβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)によるカルシウムイオンであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項9】
前記の二酸化炭素を含む気体からなる気泡は、泡の直径が1μm以上で100μm未満であるマイクロバブルであることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項10】
前記の二酸化炭素を含む気体からなる気泡は、泡の直径が1μm未満であるウルトラファインバブルであることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項11】
前記の反応槽に有機分子アミンの計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項12】
前記の反応槽に金属イオンの計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項11までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項13】
前記の反応槽にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)の計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項12までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項14】
前記の反応槽に多孔質金属錯体の計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項13までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項15】
前記の反応槽に炭酸カルシウム組成物の計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項14までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項16】
前記の反応槽にpH計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項15までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項17】
前記の反応槽に電導率測定手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項16までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項18】
前記の固液分離手段により分離された分離水を前記の気泡水製造手段に送水するための送水手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項17までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項19】
前記の反応槽内での多孔性金属錯体と炭酸カルシウム組成物の生成反応の進行状況を前記の請求項11から請求項17までのいずれか1項又は複数の項に記載の計測手段により判断し、反応速度が変化した場合には、有機分子アミン、金属イオン溶液、β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)を反応槽に適量、追加して反応を制御するための反応制御手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項16までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法。
【請求項20】
コンクリート原料として、前記請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材を含有することを特徴とするコンクリート。
【請求項21】
コンクリート原料に、前記請求項6から請求項19までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法により製造されたコンクリート用細骨材を混合することを特徴とするコンクリートの製造方法。
【請求項22】
コンクリート原料に、有機分子アミンと、金属イオン含有溶液と、二酸化炭素を含む気体によるウルトラファインバブルを含有するコンクリート用練混ぜ水を混合し、二酸化炭素由来の架橋性配位子による多孔性金属錯体を生成すると共に、該生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含む気体によるウルトラファインバブルとの炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させることを特徴とするコンクリートの製造方法。
【請求項23】
前記の有機分子アミンがピペラジンであることを特徴とする請求項22に記載のコンクリートの製造方法。
【請求項24】
前記の金属イオンがβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)によるカルシウムイオンであることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載のコンクリートの製造方法。
【請求項25】
コンクリート原料に、前記のコンクリート用細骨材を混合するスラリー調合工程において、
混合直後のpHが11.0以上となる質量比で混合することを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のコンクリートの製造方法。
【請求項26】
コンクリート原料に、前記の有機分子アミンと、前記の金属イオン含有溶液と、β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と、ウルトラファインバブルを含有するコンクリート用練混ぜ水とを混合するスラリー調合工程において、
混合直後のpHが11.0以上となる質量比で混合することを特徴とする請求項22から請求項24までのいずれか1項に記載のコンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 コンクリート用細骨材及びコンクリートの製造方法に関するものに関し、特に二酸化炭素が固定化された細骨材及び二酸化炭素を固定化するコンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)の排出量を低減することは、地球温暖化対策の緊急の課題となっており、日本政府は、地球温暖化対策推進本部で、2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減とすることを目標に掲げています。
【0003】
コンクリートの原材料として使用されているセメントの製造には、1トン製造するに当たり758KgのCO2を排出するとされ、CO2排出量の大きい材料であるとされている。
【0004】
これは、セメントの生産過程で、燃焼エネルギーを得るために化石燃料を多量に使用することに加え、石灰石の脱炭酸反応(CaCO3→CaO+CO2)が生じることによるとされている。
【0005】
コンクリートに由来するCO2の発生量を抑制するために、コンクリート結合材を構成するセメント材料として、従来、広く用いられてきたポルトランドセメントに代えて、鉄鋼産業の副産物である高炉スラグを適量ポルトランドセメントと混合した結合材を用いることにより、CO2発生量を大幅に抑制することができることが知られている(特開2013-203635号公報)。
【0006】
製鋼スラグには未反応のCaO(フリーライム)が含まれており、これがCO2に起因する炭酸イオンと反応してCaCO3を生成する。
【0007】
高炉スラグを用いたコンクリート(以下、「高炉セメントコンクリート」と言う)は、 上記の通り、CO2低減に大きく寄与することから、RC造建築構造物への適用が期待されている。
【0008】
また、近年、セメント質硬化体の養生過程において二酸化炭素を吸収させることにより、セメント質硬化体を得るまでに排出される二酸化炭素の総量を低減する方法が知られている。
【0009】
例えば、特許文献2には、粉体成分として、γ-C2S(記号γ)、製鋼スラグ粉末(記号B)の1種または2種と、ポルトランドセメント(記号C)を含有し、上記γ、B、Cの合計含有量に占めるγ、Bの合計が25~95質量%であり、水セメント比W/Cが80~250%である配合のコンクリート混練物を硬化させたプレキャストコンクリートであって、硬化過程で炭酸化養生を経ることにより、表面から深さ20mm以上の部位(ただし肉厚が20mm未満の部分は肉厚全体)に炭酸化領域を形成してなるCO2吸収プレキャストコンクリートが記載されている。
【0010】
該プレキャストコンクリートは、炭酸化養生による二酸化炭素の吸収を利用することで、コンクリート製品を製造する際に排出される二酸化炭素の総量(トータル量)を大幅に低減することができるものである。
【0011】
また、上記の炭酸化養生では、60℃の温度条件となり、熱源が必要であることから、特許文献2では、セメント質硬化体は、ポルトランドセメント以外の粉末材料(特に、ポルトランドセメントに比べて、粉末の製造時の二酸化炭素の排出量が少ないもの)を含むものを使用し、常温(20℃程度)で養生を行った場合であっても、養生過程において二酸化炭素を吸収するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013-203635号公報
【特許文献2】特開2011-168436号公報
【特許文献3】特開2016-153357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の特許文献1では、セメントに代えて高炉スラグを用いるが、その配合量はひび割れ等の問題から限定されている。
【0014】
特許文献2、3では、硬化過程で炭酸化養生により、コンクリートの表面層にCO2を固定化するものである。このため、二酸化炭素を固定化するコンクリート部材を養生する為の大型設備が必要である。特許文献2では、さらに60℃の温度条件をクリアする加熱設備も必要となる。
【0015】
コンクリートに由来する二酸化炭素の発生量を抑制する方法として、上記の特許文献2、3のように、発生した二酸化炭素を再度コンクリートに固定化することは有効である。
【0016】
本発明は、コンクリートの表面層への二酸化炭素の固定化ではなく、コンクリート内部へもCO2を固定化するものである。
【0017】
コンクリートの原料となる、コンクリート用細骨材に予め二酸化炭素を固定化するものであり、また、コンクリートの硬化時に二酸化炭素由来の多孔質金属錯体を生成させることで、コンクリート内部に二酸化炭素を固定化するものである。
【0018】
コンクリートの内部に二酸化炭素を固定化できるコンクリート用細骨材及びコンクリートの内外部に二酸化炭素を固定化できるコンクリートの製造方法を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、有機分子アミンと陽イオンである金属イオンを含む溶液中に二酸化炭素を含む気体を吹き込み、二酸化炭素由来の架橋性配位子による多孔性金属錯体を生成すると共に、該生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含む気体による炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させてなることを特徴とするコンクリート用細骨材である。
【0020】
該有機分子アミンと陽イオンである金属イオンは、水和反応により、二酸化炭素由来の架橋性配位子による多孔性金属錯体を生成するものであればいずれでも良い。
【0021】
該二酸化炭素由来の架橋性配位子は、該有機分子アミンの水和反応により二酸化炭素と結合して生成される。
【0022】
該二酸化炭素由来の架橋性配位子を該金属イオンによって連結し、配位結合により多孔性金属錯体が作られるものである。
【0023】
該多孔性金属錯体とは、金属イオンを有機配位子が架橋することによって得られる高分子状の金属錯体であり,均一かつ多様な形状・サイズの細孔や柔軟な構造を利用した混合物分離,貯蔵,触媒反応などの基礎研究が精力的に展開されている。
【0024】
該多孔性金属錯体に含まれる金属イオンは、周期表の1~13族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンである。
【0025】
周期表1族に属する金属のイオンとは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン及びフランシウムイオンである。
【0026】
周期表2族に属する金属のイオンとはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン及びラジウムイオンである。
【0027】
周期表3族に属する金属のイオンとは、スカンジウムイオン、イットリウムイオン、ランタノイドのイオン及びアクチノイドのイオンである。
【0028】
周期表4族に属する金属のイオンとは、チタンイオン、ジルコニウムイオン、ハフニウムイオン及びラザホージウムイオンである。
【0029】
周期表5族に属する金属のイオンとは、バナジウムイオン、ニオブイオン、タンタルイオン及びドブニウムイオンである。
【0030】
周期表6族に属する金属のイオンとは、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン及びシーボーギウムイオンである。
【0031】
周期表7族に属する金属のイオンとは、マンガンイオン、テクネチウムイオン、レニウムイオン及びボーリウムイオンである。
【0032】
周期表8族に属する金属のイオンとは、鉄イオン、ルテニウムイオン、オスミウムイオン及びハッシウムイオンである。
【0033】
周期表9族に属する金属のイオンとは、コバルトイオン、ロジウムイオン、イリジウムイオン及びマイトネリウムイオンである。
【0034】
周期表10族に属する金属のイオンとは、ニッケルイオン、パラジウムイオン、白金イオン及びダームスタチウムイオンである。
【0035】
周期表11族に属する金属のイオンとは、銅イオン、銀イオン、金イオン及びレントゲニウムイオンである。
【0036】
周期表12族に属する金属のイオンとは、亜鉛イオン、カドミウムイオン、水銀イオン及びウンウンビウムイオンである。
【0037】
周期表13族に属する金属のイオンとは、ホウ素イオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、タリウムイオン及びウンウントリウムイオンである。
【0038】
該多孔性金属錯体に用いられる周期表の1~13族に属する金属のイオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、スカンジウムイオン、ランタノイドイオン(ランタンイオン、テルビウムイオン、ルテチウムイオンなど)、アクチノイドイオン(アクチニウムイオン、ローレンシウムイオンなど)、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン及びアルミニウムイオンなどを使用することができ、中でもマンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン及び亜鉛イオンが好ましく、銅イオンがより好ましい。
【0039】
該多孔性金属錯体に用いられる金属イオンは、単一の金属イオンでも、2種類以上の金属イオンを含んでいてもよい。また、本発明に用いる多孔性金属錯体は、単一の金属イオンからなる金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。
【0040】
該有機分子アミンは、アンモニアの水素原子を炭化水素基または芳香族原子団で置換した化合物の総称である。
【0041】
主な化合物は、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、アミン誘導体である。
【0042】
該多孔性金属錯体に用いられるアミンは、二酸化炭素由来の架橋配位子を形成するものが好ましい。
【0043】
複素環式アミンなどでも良い。例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン (DABCO)、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、4-ジメチルアミノピリジンなどである。
【0044】
該β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)は、セメント化学の分野では、ビーライトを2CaO・SiO(C2S)として示す。けい酸二カルシウムには、結晶構造が異なる多型(α,β,γなど)があるが、低熱ポルトランドセメントに含まれるものは、主としてβ型(β-2CaO・SiO(β-C2S))である。
【0045】
該β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)は、水和反応で以下のように水和物を析出する。
β-2CaO・SiO→ 水酸化カルシウム+けい酸カルシウム水和物
2CaO・SiO2+H2O → Ca(OH)2 +CaO-SiO2-H2O
【0046】
そして、水酸化カルシウムは、二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムを析出する。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
【0047】
該析出する炭酸カルシウムは、該多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺に析出する。該細孔部に析出する事で、細孔部を埋めて緻密にし、多孔質金属錯体は、強度が向上する。
【0048】
このように、二酸化炭素が、多孔質金属錯体の形成過程で固定化され、コンクリート用細骨材としてコンクリートに使用することにより、コンクリート内部への二酸化炭素の固定化を実現し、二酸化炭素の貯留に貢献するものである。
【0049】
請求項2では、前記の有機分子アミンがピペラジンであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート用細骨材である。
【0050】
該ピペラジンは、分子式 C4H10N2、分子量 86.14の複素環式アミンの1つである。シクロヘキサンの向かい合わせになった2つのメチレン基をNHで置換した構造をもつ。
【0051】
ピペラジンのクエン酸塩、リン酸塩、二硫化炭素及びアジピン酸塩でも良い。例えば、クエン酸ピペラジン、リン酸ピペラジン、二硫化炭素ピペラジン、アジピン酸ピペラジン、ピペラジン二塩酸塩、ピペラジン六水和物、リン酸ピペラジン塩酸塩、ピペラジンスルトシレート、ピペラジンジチオカルボン酸、ピペラジン水和物、リンゴ酸ピペラジン、ピペラジン六水和物、ピペラジンクエン酸ナトリウム、N-モノニトロソピペラジン(水溶性)、1,4-ジニトロソピペラジン(脂溶性)等でも良い。
【0052】
請求項3では、前記の陽イオンである金属イオンがβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)によるカルシウムイオンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート用細骨材である。
【0053】
該β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)は、水溶液中でイオン化し、カルシウムイオンが溶出する。
β型珪酸二カルシウム+水→カルシウムイオン+水酸イオン+けい酸カルシウム水和物
2CaO・SiO2+H2O → Ca2+ + 2OH- + CaO-SiO2-H2O
【0054】
該カルシウムイオンは、前記の二酸化炭素由来の架橋性配位子を該金属イオンによって連結し、配位結合により多孔性金属錯体を作る時の金属イオンとして機能する。
【0055】
請求項4では、前記の吹き込む二酸化炭素を含む気体は、泡の直径が1μm以上で100μm未満であるマイクロバブルであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材である。
【0056】
該マイクロバブルは、水中では非常にゆっくり上昇し、徐々に小さくなり、気泡内の気体は水中に溶解する。水中ではマイクロバブル群は白濁を示す。
【0057】
請求項5では、前記の吹き込む二酸化炭素を含む気体は、泡の直径が1μm未満であるウルトラファインバブルであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材である。
【0058】
該ウルトラファインバブルは、水中では全く浮上せず、主としてブラウン運動で移動する。気泡内の気体は、刺激を受けると水中に溶解する。水中では、ウルトラファインバブル群は透明である、
【0059】
請求項6では、炭酸カルシウム組成物を生成させるための反応槽と、有機アミンを該反応槽に投入するための投入手段と、陽イオンである金属イオンを含む溶液を該反応槽に投入するための溶液投入手段と、気泡水製造手段により製造した二酸化炭素を含む気体からなる気泡を含む水を反応槽に注入するための注入手段と、反応槽内の液体を攪拌するための攪拌手段が設けられ、有機アミンと金属イオンと二酸化炭素の反応により多孔性金属錯体を生成すると共に、該生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含む気体による炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させ、該多孔質金属錯体及び炭酸カルシウム組成物を混合水と共に反応槽から排出する排出手段が設けられ、排出された該多孔質金属錯体と該炭酸カルシウム組成物を含む混合水を固液分離手段により、個体部を分離して細骨材を製造することを特徴とするコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0060】
該反応槽は、有機アミンと金属イオンを含む溶液と二酸化炭素を含む気体からなる気泡を含む水を収納でき、攪拌手段が設置でき、多孔性金属錯体の生成反応と、多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含む気体による炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させることができるものであればいずれでも良い。
【0061】
該有機アミンを該反応槽に投入するための投入手段は、有機アミンを粉末状、顆粒状、液体状などいずれの形態でも反応層に投入できるものであればいずれでも良い。
【0062】
該溶液注入手段は、金属イオンを含む溶液を該反応槽に投入できるものであればいずれでも良い。
【0063】
該気泡水製造手段は、二酸化炭素を含む気体からなる気泡を水中に発生させることができるものであればいずれでも良い。製造した気泡水は注入手段により反応層に注入される。
【0064】
該攪拌手段は、反応槽内の液体を攪拌出来るものであればいずれでも良い。スクリュー羽根や水流噴射などでも良い。
【0065】
該β型珪酸二カルシウム投入手段は、反応層内にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)を投入できるものであればいずれでも良い。
【0066】
該排出手段は、該反応層で生成された多孔質金属錯体及び炭酸カルシウム組成物を混合水と共に反応槽から排出する事ができるものであればいずれでも良い。反応層の底部にドレンバルブを設けた物でも良い。
【0067】
該固液分離手段は、排出手段から排出された該多孔質金属錯体と該炭酸カルシウム組成物を含む混合水の個体部を分離できるものであればいずれでも良い。遠心分離装置や濾過装置などでも良い。
【0068】
請求項7では、前記の有機分子アミンがピペラジンであることを特徴とする請求項6に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0069】
該ピペラジンは、粉末状でも良く、ピペラジンの塩類でも良く、水溶液に溶かした物でも良い。
【0070】
請求項8では、前記の陽イオンである金属イオンがβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)によるカルシウムイオンであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0071】
該β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)を水溶液に溶かしてイオン化したものでも良い。
【0072】
請求項9では、前記の二酸化炭素を含む気体からなる気泡は、泡の直径が1μm以上で100μm未満であるマイクロバブルであることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0073】
二酸化炭素を含む気体からなる気泡がマイクロバブルであると、気泡の浮上速度は遅く、水中への二酸化炭素の溶解が早く、反応も早くなる。また、多孔質金属錯体の細孔部に吸い寄せられるため、細孔の周辺でβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と炭酸化反応で炭酸カルシウムが生成される。
【0074】
請求項10では、前記の二酸化炭素を含む気体からなる気泡は、泡の直径が1μm未満であるウルトラファインバブルであることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0075】
二酸化炭素を含む気体からなる気泡がウルトラファインバブルであると、気泡がマイナスイオン化されており、分散が良く、攪拌装置の刺激により、高気圧の気泡が破壊され、二酸化炭素と素早く反応する。また、多孔質金属錯体の細孔の径が数μmであるので、ウルトラファイルバブルはその内部へも分散でき、該細孔内部で炭酸化し、細孔を埋め、緻密な金属錯体となる。
【0076】
請求項11では、前記の反応槽に有機分子アミンの計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0077】
該有機分子アミンの計測手段は、反応層内の有機分子アミンの含有量を計測できるものであればいずれでも良い。
【0078】
請求項12では、前記の反応槽に金属イオンの計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項11までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0079】
該金属イオンの計測手段は、反応層内の金属イオンの含有量を計測できるものであればいずれでも良い。
【0080】
請求項13では、前記の反応槽にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)の計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項12までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0081】
該β型珪酸二カルシウムの計測手段は、反応層内のβ型珪酸二カルシウムの含有量を計測できるものであればいずれでも良い。
【0082】
請求項14では、前記の反応槽に多孔質金属錯体の計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項13までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0083】
該多孔質金属錯体の計測手段は、反応層内の多孔質金属錯体の含有量を計測できるものであればいずれでも良い。
【0084】
請求項15では、前記の反応槽に炭酸カルシウム組成物の計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項14までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0085】
該炭酸カルシウム組成物の計測手段は、反応層内の炭酸カルシウム組成物の含有量を計測できるものであればいずれでも良い。
【0086】
請求項16では、前記の反応槽にpH計測手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項15までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0087】
該pH計測手段は、反応層内のpHを計測できるものであればいずれでも良い。
【0088】
請求項17では、前記の反応槽に電導率測定手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項16までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0089】
該電導率測定手段は、反応層内の電導率を計測できるものであればいずれでも良い。
【0090】
請求項18では、前記の固液分離手段により分離された分離水を前記の気泡水製造手段に送水するための送水手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項17までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0091】
該送水手段は、固液分離手段により分離された分離水を前記の気泡水製造手段に送水することができるものであればいずれでも良い。
【0092】
請求項19では、前記の反応槽内での多孔性金属錯体と炭酸カルシウム組成物の生成反応の進行状況を前記の請求項11から請求項17までのいずれか1項又は複数の項に記載の計測手段により判断し、反応速度が変化した場合には、有機分子アミン、金属イオン溶液、β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)を反応槽に適量、追加して反応を制御するための反応制御手段が設けられていることを特徴とする請求項6から請求項16までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法である。
【0093】
該反応速度が低下した場合には、その反応に対応する投入量を増やし、反応が早すぎる場合には、その反応に対応する投入量を減らすものである。安定した反応を維持することができ、細骨材を安定して製造できる。
【0094】
請求項20では、コンクリート原料として、前記請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材を含有することを特徴とするコンクリートである。
【0095】
前記のコンクリート用細骨材を含有することにより、二酸化炭素をコンクリート内部に固定化できる。
【0096】
請求項21では、コンクリート原料に、前記請求項6から請求項19までのいずれか1項に記載のコンクリート用細骨材の製造方法により製造されたコンクリート用細骨材を混合することを特徴とするコンクリートの製造方法である。
【0097】
前記のコンクリート用細骨材を混合してコンクリートを製造することにより、二酸化炭素をコンクリート内部に固定化できる。
【0098】
請求項22では、コンクリート原料に、有機分子アミンと、金属イオン含有溶液と、二酸化炭素を含む気体によるウルトラファインバブルを含有するコンクリート用練混ぜ水を混合し、二酸化炭素由来の架橋性配位子による多孔性金属錯体を生成すると共に、該生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺にβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と二酸化炭素を含む気体によるウルトラファインバブルとの炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物を生成させることを特徴とするコンクリートの製造方法である。
【0099】
該ウルトラファインバブルを含有するコンクリート用練混ぜ水は、高速旋回液流式、加圧溶解式、界面活性剤添加微細孔式、超音波キャビテーション式のいずれの方法で製造しても良い。
【0100】
請求項23では、前記の有機分子アミンがピペラジンであることを特徴とする請求項22に記載のコンクリートの製造方法である。
【0101】
請求項24では、前記の金属イオンがβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)によるカルシウムイオンであることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載のコンクリートの製造方法である。
【0102】
請求項25では、コンクリート原料に、前記のコンクリート用細骨材を混合するスラリー調合工程において、
混合直後のpHが11.0以上となる質量比で混合することを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のコンクリートの製造方法
である。
【0103】
該スラリー調合工程は、混合直後のpHが11.0以上となる質量比で混合することができればいずれの調合でも良い。pH調整材を混合しても良い。
【0104】
請求項26では、コンクリート原料に、前記の有機分子アミンと、前記の金属イオン含有溶液と、β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)と、ウルトラファインバブルを含有するコンクリート用練混ぜ水とを混合するスラリー調合工程において、混合直後のpHが11.0以上となる質量比で混合することを特徴とする請求項22から請求項24までのいずれか1項に記載のコンクリートの製造方法である。
【0105】
該スラリー調合工程は、混合直後のpHが11.0以上となる質量比で混合することができればいずれの調合でも良い。pH調整材を混合しても良い。
コンクリート原料は概ねpHが13.0以上であり、有機分子アミンは中性であり、金属イオン含有溶液は、酸性であり、β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)は強アルカリであり、ウルトラファインバブルを含有するコンクリート用練混ぜ水はpHが5.0程度である。
【発明の効果】
【0106】
本発明は以下の効果を奏する。
1)多孔質金属錯体の製造過程において二酸化炭素を固定化できる細骨材を実現できる。
【0107】
2)作成された多孔質金属錯体の細孔内部に二酸化炭素を固定化できる細骨材を実現できる。
【0108】
3)ピペラジンを活用することにより、二酸化炭素由来の架橋性配位子を構成でき、金属イオンと配位結合により多孔性金属錯体を作成でき、製造過程での多くの二酸化炭素の固定化ができる。
4)β型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)を用いることにより、多孔質金属錯体の製造過程の金属イオンとしての利用とともに、多孔質金属錯体の細孔部に生成させる炭酸カルシウムの反応原料としても同時活用できる。
【0109】
6)二酸化炭素としてマイクロバブル又はウルトラファインバブルを使用する事により、気泡が大気中に解放されずに、溶液中に溶解する為、有機分子アミンとの反応が早くなり、多孔質金属錯体も早く生成される。
【0110】
7)二酸化炭素としてマイクロバブル又はウルトラファインバブルを使用する事により、生成した多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺でのβ型珪酸二カルシウム(β-2CaO・SiO)との炭酸化反応性も高められる。
【0111】
8)配位結合による多孔質金属錯体の生成と、生成された多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺での炭酸化反応による炭酸カルシウムの生成が一つの反応層内で、同時に進行させることができるコンクリート用細骨材の製造方法を提供できる。
【0112】
9)反応層に計測手段を設けることにより、反応層内の反応状況に応じて反応速度を調整することができるコンクリート用細骨材の製造方法を提供できる。
【0113】
10)固液分離手段により分離された分離水を気泡水製造手段に戻して循環させることにより、未反応の二酸化炭素を含むファインバブルを再活用できる。
【0114】
11)二酸化炭素を固定化した細骨材を使用する事により、コンクリート内部に二酸化炭を固定化することができる。
【0115】
12)コンクリート原料の混合時に、多孔質金属錯体を生成する為の有機分子と、金属イオン含有溶液と、ウルトラファインバブルを含有するコンクリート用練混ぜ水を用いることにより、直接、二酸化炭素をコンクリート内に注入でき、細骨材となる多孔質金属錯体として固定化できる。
【0116】
13)コンクリート製造時のスラリー調合行程直後のpHが11.0以上となる質量比で混合する事により、一般的な鉄筋コンクリートでの使用が可能となる。pHが11.0となると、鉄筋が錆びるため、使用できない。
【0117】
14)コンクリートに由来するCO2の発生量を抑制するために、セメントの使用量を減らしたり、コンクリートの表面層に養生設備を用いて二酸化炭素を固定化するような従来の方法ではなく、コンクリートの内外部に二酸化炭素を固体化するコンクリートの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】本発明によるコンクリート用細骨材の製造装置の概要を示す図である。
図2】本発明によるコンクリート用細骨材の製造過程の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明の一つの実施の形態について説明する。
【0120】
図1は、本実施例のコンクリート用細骨材の製造装置の概略を示す図である。
【0121】
本コンクリート用細骨材の製造装置は、反応層1と、反応層1に投入するピペラジン投入装置2と、β-CS投入装置3と、ウルトラファインバブル水製造装置4と、反応層内の上部pH計6と排出口pH計7と、制御装置8と、排出装置9と、固液聞知装置11とで構成されている。
【0122】
反応層1内には、反応溶液となる水が貯留されている。製造手順を以下に示す。
【0123】
(1)ピペラジンの投入
ピペラジン投入装置2よりバルブ16を開き、ピペラジンを規定量投入する。
【0124】
(2)β型珪酸二カルシウムの投入
β型珪酸二カルシウム投入装置3よりバルブ15を開き、β型珪酸二カルシウムを規定量投入する。
【0125】
(3)ウルトラファインバブル水の注入
ウルトラファインバブル製造装置4により、排ガスの二酸化炭素を用いたウルトラファインバブル水を製造し、注入配管10より、反応層1内に噴射注入する。
【0126】
(4)二酸化炭素由来の架橋性配位子の生成
上記のピペラジンとウルトラファインバブル内の二酸化炭素が反応し、架橋性配位子が生成される。(図2(1)参照)
【0127】
(5)多孔質金属錯体の生成
上記の架橋性配位子とβ型珪酸二カルシウムのカルシウムイオンとの配位結合により、多孔質金属錯体が生成される。(図2(2)参照)
【0128】
(6)炭酸カルシウムの生成
上記のβ型珪酸二カルシウムとウルトラファインバブルの二酸化炭素の炭酸化反応により、炭酸カルシウム組成物が生成される。このとき、多孔質金属錯体の細孔部は、ガスを吸着する作用があり、二酸化炭素によるウルトラファインバブルが吸着される。同時にβ型珪酸二カルシウムと炭酸化反応して、細孔部内に炭酸カルシウム組成物を閉じ込め、多孔質金属錯体は緻密な構造となり、強度が向上する。
【0129】
(7)反応生成物の排出
反応層1内で生成した反応生成物5(緻密化した多孔質金属錯体、炭酸カルシウム組成物)は、反応層1の下部の排出装置9から混合水と共に固液分離装置11に送水される。
【0130】
(8)固液分離処理
反応生成物5の含有した混合水は、固液分離装置11で分離されてコンベアなどの移送手段12により移送され、細骨材として利用させる。
【0131】
(9)分離水の再利用
固液分離装置11で分離された分離水は、未反応の二酸化炭素が溶けているので、送水配管13によりウルトラファインバブル製造装置4に送水される。ウルトラファインバブル水の処理水として使用する。
【0132】
(10)反応制御
反応層1には、上部のウルトラファインバブル製造装置4側のpH計6と排出口のpH計7が設けられており、制御装置により、両者のpHを監視している。
未反応のウルトラファインバブルが多く含まれた溶液は、pHが低く(pH:5程度)、β型珪酸二カルシウムのpHは11以上である為、反応後の溶液のpHは、高い(pH:9~10程度)となる。
【0133】
このバランスが崩れ、出口側のpH計7の値が低下した場合には、炭酸化反応が不十分と判断し、β型珪酸二カルシウム投入装置3のバルブ15を開き、適量投入する。
【0134】
逆に、出口側のpH計7の値が高くなった場合は、ピペラジンは中性である事から配位結合が不十分と判断し、ピペラジン投入装置2のバルブ16を開き、適量投入する。
【0135】
以上のように、本コンクリート用細骨材の製造装置を操作することにより、安定してコンクリート用細骨材を製造する事ができる。
【0136】
本発明においては、コンクリートに由来する二酸化炭素の発生量を抑制するために、細骨材の製造過+程で二酸化炭素を固定化し、更に、多孔質金属錯体の細孔部及びその周辺部に炭酸カルシウムを生成させて、緻密な多孔質金属錯体によるコンクリート細骨材を提供するものである。また、この細骨材を用いてコンクリートを製造することにより、コンクリート内部に二酸化炭素を固定化する事ができる。更に、この技術により、直接コンクリート原料に有機分子アミンと金属イオンと二酸化炭素を含有するウルトラファインバブルによる練り混ぜ水を用いることにより、内外部に二酸化炭素を固定化することができるものである。
【符号の説明】
【0137】
1 反応層
2 ピペラジン投入装置
3 β型珪酸二カルシウム投入装置
4 ウルトラファインバブル製造装置
5 反応生成物
6 上部pH計
7 排出口pH計
8 制御装置
9 排出装置
10 ウルトラファインバブル水注入配管
11 固液分離装置
12 移送装置
13 分離水送水配管
14 二酸化炭素(排ガス)送気配管
15 バルブ
16 バルブ
図1
図2