IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076805
(43)【公開日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ポリマー分散剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 226/06 20060101AFI20230526BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20230526BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20230526BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230526BHJP
   C08L 39/04 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C08F226/06
C09D17/00
C09D11/326
C08L101/00
C08L39/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175544
(22)【出願日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】17/533,193
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】コンコン、チー
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、チー
(72)【発明者】
【氏名】ランホイ、チャン
(72)【発明者】
【氏名】チーミン、チョン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J037
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002FD096
4J002FD312
4J002GH01
4J037AA02
4J037CB28
4J037CC25
4J037FF03
4J039AE07
4J039BA04
4J039BB01
4J039BE01
4J039BE22
4J039EA14
4J039GA24
4J100AG12P
4J100AL05Q
4J100AL08R
4J100BA06R
4J100CA03
4J100CA05
4J100DA36
4J100FA19
4J100JA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリマー分散剤、および該ポリマー分散剤を含む水性インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】ポリマー分散剤であって、コポリマーであって、塩基性部分と、約4個~約40個の炭素原子を有するアルキル基と、芳香族基と、立体親水性基と、を含む、コポリマーを含む、ポリマー分散剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー分散剤であって、
コポリマーであって、
塩基性部分と、
約4個~約40個の炭素原子を有するアルキル基と、
芳香族基と、
立体親水性基と、を含む、コポリマーを含む、ポリマー分散剤。
【請求項2】
前記塩基性部分が、芳香族アミン、脂肪族アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、オニウム塩基、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される、請求項1に記載のポリマー分散剤。
【請求項3】
前記コポリマーが、骨格を含み、前記塩基性部分が、前記骨格内に組み込まれるか、又は前記塩基性部分が、前記骨格に連結されたペンダント基である、請求項1に記載のポリマー分散剤。
【請求項4】
前記立体親水性基が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1に記載のポリマー分散剤。
【請求項5】
前記立体親水性基が、約500~約20,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載のポリマー分散剤。
【請求項6】
前記コポリマーが、以下の構造のものであり、
【化1】
式中、wが、1~約400の整数であり、
xが、0~約480の整数であり、
yが、1~約160の整数であり、
zが、1~約400の整数であり、
~Lが、任意選択的な連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、-(CH3-39CHであり、
が、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、
が、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mが、約10~約450であり、nが、約0~約80であり、Rが、H又はCHであり、
が、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、
’、R’、R’、及びR’が、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される、請求項1に記載のポリマー分散剤。
【請求項7】
前記ポリマー分散剤が、アルキルフェノールエトキシレートを含まない、請求項1に記載のポリマー分散剤。
【請求項8】

【数1】
が、前記分散剤成分を定義するために使用され、
式中、w、x、y、及びzが、整数であり、wが、1~約400の整数であり、xが、0~約480の整数であり、yが、1~約160の整数であり、zが、1~約400の整数であり、
R1が、R基の分子量であり、MR1’が、R’基の分子量であり、MR2が、R基の分子量であり、MR2’が、R’基の分子量であり、MR3が、R基の分子量であり、MR3’が、R’基の分子量であり、MR4が、R基の分子量であり、及びMR4’が、R’基の分子量である、請求項6に記載のポリマー分散剤。
【請求項9】
組成物であって、
粒子と、
ビヒクルと、
任意選択的な界面活性剤と、
以下の構造のコポリマーを含むポリマー分散剤と、を含み、
【化2】
式中、wが、1~約400の整数であり、
xが、0~約480の整数であり、
yが、1~約160の整数であり、
zが、1~約400の整数であり、
~Lが、任意選択的な連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、-(CH3-39CHであり、
が、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、
が、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mが、約10~約450であり、nが、約0~約80であり、Rが、H又はCHであり、
が、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、
’、R’、R’、及びR’が、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される、組成物。
【請求項10】

【数2】
が、前記分散剤成分を定義するために使用され、
式中、w、x、y、及びzが、整数であり、wが、1~約400の整数であり、xが、0~約480の整数であり、yが、1~約160の整数であり、zが、1~約400の整数であり、
R1が、R基の分子量であり、MR1’が、R’基の分子量であり、MR2が、R基の分子量であり、MR2’が、R’基の分子量であり、MR3が、R基の分子量であり、MR3’が、R’基の分子量であり、MR4が、R基の分子量であり、及びMR4’が、R’基の分子量である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が、黒色顔料、カーボンブラック顔料、白色顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、黄色顔料、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される顔料である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記ビヒクルが、水である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記ビヒクルが、水及び共溶媒を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記ビヒクルが、水及び共溶媒を含み、前記共溶媒が、前記組成物の総重量に基づいて、約30重量パーセントを上回る高い量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記任意選択的な界面活性剤が存在し、前記任意選択的な界面活性剤が、シロキサンポリエーテル、エトキシル化アセチレンジオール、アルコールエトキシレート、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
水性インクジェットインクであって、
水と、
共溶媒と、
任意選択的なワックス分散液と、
任意選択的なラテックス樹脂と、
界面活性剤と、
顔料と、
以下の構造のコポリマーを含むポリマー分散剤と、を含み、
【化3】
式中、wが、1~約400の整数であり、
xが、0~約480の整数であり、
yが、1~約160の整数であり、
zが、1~約400の整数であり、
~Lが、任意選択的な連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、
が、-(CH3-39CHであり、
が、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、
が、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mが、約10~約450であり、nが、約0~約80であり、Rが、H又はCHであり、
が、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、
’、R’、R’、及びR’が、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される、水性インクジェットインク。
【請求項17】

【数3】
が、前記分散剤成分を定義するために使用され、
式中、w、x、y、及びzが、整数であり、wが、1~約400の整数であり、xが、0~約480の整数であり、yが、1~約160の整数であり、zが、1~約400の整数であり、
R1が、R基の分子量であり、MR1’が、R’基の分子量であり、MR2が、R基の分子量であり、MR2’が、R’基の分子量であり、MR3が、R基の分子量であり、MR3’が、R’基の分子量であり、MR4が、R基の分子量であり、及びMR4’が、R’基の分子量である、請求項16に記載の水性インクジェットインク。
【請求項18】
前記インクが、アルキルフェノールエトキシレートを含まない、請求項16に記載の水性インクジェットインク。
【請求項19】
前記顔料が、カーボンブラックである、請求項16に記載の水性インクジェットインク。
【請求項20】
前記共溶媒が、前記インク組成物の総重量に基づいて、約30重量パーセントを上回る高い量で存在する、請求項16に記載の水性インクジェットインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
同一出願人による米国特許出願第17/533206号、名称「Self-Crosslinked Polymeric Dispersant」が同時に出願され、本明細書においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書で開示されるのは、ポリマー分散剤であって、塩基性部分と、約4個~約40個の炭素原子を有するアルキル基と、芳香族基と、立体親水性基と、を含む、コポリマーを含む、ポリマー分散剤である。
【0003】
また、本明細書に開示されるのは、粒子と、ビヒクルと、任意選択的な界面活性剤と、以下の構造のコポリマーを含むポリマー分散剤と、を含む、組成物であり、
【0004】
【化1】
式中、wは、1~約400の整数であり、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数であり、L~Lは、任意選択的な連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Rは、-(CH3-39CHであり、Rは、6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基であり、いくつかの実施形態では、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択され、Rは、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mは、約10~約450であり、nは、約0~約80であり、Rは、H又はCHであり、Rは、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、R’、R’、R’、及びR’は、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される。いくつかの実施形態では、式
【0005】
【数1】
が、分散剤成分を定義するために使用され、式中、w、x、y、及びzは、上記で定義された整数であり、
R1は、R基の分子量であり、MR1’は、R’基の分子量であり、
R2は、R基の分子量であり、MR2’は、R’基の分子量であり、
R3は、R基の分子量であり、MR3’は、R’基の分子量であり、
R4は、R基の分子量であり、及びMR4’は、R’基の分子量である。
【0006】
また本明細書で開示されるのは、水性インクジェットインクであり、水と、共溶媒と、任意選択的なワックス分散液と、任意選択的なラテックス樹脂と、界面活性剤と、顔料と、以下の構造のコポリマーを含むポリマー分散剤と、を含み、
【0007】
【化2】
式中、wは、1~約400の整数であり、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数であり、L~Lは、任意選択的な連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Rは、-(CH3-39CHであり、Rは、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、Rは、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mは、約10~約450であり、nは、約0~約80であり、Rは、H又はCHであり、Rは、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、R’、R’、R’、及びR’は、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される。いくつかの実施形態では、式
【0008】
【数2】
が、分散剤成分を定義するために使用され、式中、w、x、y、及びzは、上記で定義された整数であり、MR1は、R基の分子量であり、MR1’は、R’基の分子量であり、MR2は、R基の分子量であり、MR2’は、R’基の分子量であり、MR3は、R基の分子量であり、MR3’は、R’基の分子量であり、MR4は、R基の分子量であり、及びMR4’は、R’基の分子量である。
【0009】
信頼性の高い顔料分散液は、水性インクジェットインク用途にとって重要な要素である。カーボンブラック顔料は、顔料の高い比表面積及び低い表面電荷のために、水性媒体中に分散することが特に困難である。低分散顔料により、水性インク又はコーティングが、貯蔵不安定性、ジェット詰まり、低光学密度を有すること、及び被覆力の損失を示すことを引き起こし得る。市販の分散剤で作製された様々な黒色顔料分散液の水性インクジェットインクへの組み込みが試みられてきた。しかしながら、結果として得られるインクは、多くの場合、加速エージング試験において不安定である、又はインク配合物の変動、特に共溶媒型インク及び内容物に対する限定された耐性を有するなどの問題を示す。
【0010】
現在入手可能な分散剤は、分散剤の意図される目的に好適であり得る。しかしながら、改善された分散剤、特に水性インクジェットインク用の改善された分散剤に対する必要性が残る。
【0011】
上記の米国特許及び特許出願公開のそれぞれの適切な構成要素及びプロセスの態様は、その実施形態において本開示のために選択され得る。更に、本出願全体を通して、様々な刊行物、特許、及び公開された特許出願は、特定の引用によって参照される。本出願において参照される刊行物、特許、及び公開された特許出願の開示は、本発明が関係する最新技術をより完全に説明するために、参照により本開示に組み込まれる。
【発明の概要】
【0012】
説明されるのは、ポリマー分散剤であって、塩基性部分と、約4個~約40個の炭素原子を有するアルキル基と、芳香族基と、立体親水性基と、を含む、コポリマーを含む、ポリマー分散剤である。
【0013】
更に説明されるのは、粒子と、ビヒクルと、任意選択的な界面活性剤と、以下の構造のコポリマーを含むポリマー分散剤と、を含む、組成物であり、
【0014】
【化3】
式中、wは、1~約400の整数であり、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数であり、L~Lは、任意選択的な連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Rは、-(CH3-39CHであり、Rは、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、Rは、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mは、約10~約450であり、nは、約0~約80であり、Rは、H又はCHであり、Rは、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、R’、R’、R’、及びR’は、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される。
【0015】
更に記載されるのは、水性インクジェットインクであり、水と、共溶媒と、任意選択的なワックス分散液と、任意選択的なラテックス樹脂と、界面活性剤と、顔料と、以下の構造のコポリマーを含むポリマー分散剤と、を含み、
【0016】
【化4】
式中、wは、1~約400の整数であり、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数であり、L~Lは、任意選択的な連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Rは、-(CH3-39CHであり、Rは、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、Rは、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mは、約10~約450であり、nは、約0~約80であり、Rは、H又はCHであり、Rは、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、R’、R’、R’、及びR’は、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
水系及び水性インク用途のために、様々な顔料を分散させるために好適なポリマー分散剤、いくつかの実施形態では、カーボンブラックが説明される。分散剤ポリマーは、塩基性部分、アルキル基、及び立体親水性基を含む。塩基及びアルキル基は、顔料アフィンアンカーとして機能する。塩基性部分は、限定されるものではないが、芳香族アミン、脂肪族アミン、ピリジン、及びこれらの組み合わせを含み得る。塩基性部分は、ポリマー分散剤の骨格に組み込まれ得るか、又は分散剤の骨格に連結されたペンダント基であり得る。立体基は、約500~約20,000、又は約500~約5,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールを含み得、これは、分散媒体との相溶性を提供する。ポリマー分散剤は、製造可能な溶液重合プロセスによって合成することができる。分散剤は、設計によって多種多様なフィルム形成ポリマー樹脂及びラテックスと相溶性であるため、分散剤を使用して調製された顔料分散液は、水性インク又はコーティングが優れた貯蔵安定性、信頼性の高い噴射品質、及び強化された色強度を有することを可能にする。より具体的には、本分散剤で調製されたカーボンブラック分散液で調製された黒色インクは、異なる共溶媒、高共溶媒充填量、及び様々な界面活性剤を含有する様々なインク配合物において優れたエージング安定性を示した。印刷画像のより高い光学密度もまた、市販の分散剤で作製された顔料分散液を含むインクで作製された印刷画像で実証された。本分散剤は、環境に優しい非APE(alkyl phenol ethoxylate、アルキルフェノールエトキシレート)分散剤のカテゴリー内にある。
【0018】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散剤は、塩基性部分と、約4個~約40個の炭素原子を有するアルキル基と、芳香族基と、立体親水性基と、を含む、コポリマーを含んで説明される。
【0019】
ポリマー分散剤は、塩基性部分を含有する。いくつかの実施形態では、塩基性部分は、芳香族アミン、脂肪族アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、オニウム塩基、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される。いくつかの実施形態では、塩基部分は、芳香族アミン、脂肪族アミン、ピリジン、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、コポリマーポリマー分散剤は、骨格を含み、塩基性部分は、骨格内に組み込まれているか、又は塩基性部分は、骨格に連結されたペンダント基である。
【0021】
ポリマー分散剤は、アルキル基を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、約4個~約40個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0022】
ポリマー分散剤は、立体親水性基を含有する。いくつかの実施形態では、立体親水性基は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む。いくつかの実施形態では、立体親水性基は、ポリエチレングリコールを含む。具体的な実施形態では、立体親水性基は、約500~約20,000、又は約500~約5,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。
【0023】
ポリマー分散剤の分子量は、通常の方法に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって判定される。重量平均分子量は、ポリスチレン標準を使用するGPCによって判定され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散剤は、以下の構造のコポリマーであり、
【0025】
【化5】
式中、wは、1~約400の整数であり、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数であり、L~Lは、任意選択的な連結基であり、存在する場合、L~Lは、以下の通りであり、は、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Rは、-(CH3-39CHであり、Rは、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、Rは、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mは、約10~約450であり、nは、約0~約80であり、Rは、H又はCHであり、Rは、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、R’、R’、R’、及びR’は、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される。いくつかの実施形態では、式
【0026】
【数3】
が、分散剤成分を定義するために使用され、式中、w、x、y、及びzは、整数であり、MR1は、R基の分子量であり、MR1’は、R’基の分子量であり、MR2は、R基の分子量であり、MR2’は、R’基の分子量であり、MR3は、R基の分子量であり、MR3’は、R’基の分子量であり、MR4は、R基の分子量であり、及びMR4’は、R’基の分子量である。いくつかの実施形態では、wは、1~約400の整数であり、式中、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数である。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散剤は、アルキルフェノールエトキシレートを含まない、すなわち、アルキルフェノールエトキシレートを含有しない。
【0028】
本明細書のポリマー分散体は、任意の好適な又は所望の組成物のために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、粒子と、ビヒクルと、任意選択的な界面活性剤と、以下の構造のコポリマーを含むポリマー分散剤と、を含む組成物であり、
【0029】
【化6】
式中、wは、1~約400の整数であり、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数であり、L~Lは、任意選択的な連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Rは、-(CH3-39CHであり、Rは、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、Rは、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mは、約10~約450であり、nは、約0~約80であり、Rは、H又はCHであり、Rは、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、R’、R’、R’、及びR’は、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される。いくつかの実施形態では、式
【0030】
【数4】
が、分散剤成分を定義するために使用され、式中、w、x、y、及びzは、本明細書で定義される整数であり、MR1は、R基の分子量であり、MR1’は、R’基の分子量であり、MR2は、R基の分子量であり、MR2’は、R’基の分子量であり、MR3は、R基の分子量であり、MR3’は、R’基の分子量であり、MR4は、R基の分子量であり、及びMR4’は、R’基の分子量である。
【0031】
本明細書のポリマー分散剤は、限定されるものではないが、顔料を含む任意の好適な又は所望の粒子を分散させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、組成物が提供され、粒子と、ビヒクルと、任意選択的な界面活性剤と、本明細書に説明されるようなポリマー分散剤と、を含み、粒子は、顔料である。更なる実施形態では、粒子は、黒色顔料、白色顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、黄色顔料、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される顔料である。特定の実施形態では、粒子は、カーボンブラック顔料である。
【0032】
組成物は、任意の好適な又は所望のビヒクルを含み得る。いくつかの実施形態では、ビヒクルは、水である。更なる実施形態では、ビヒクルは、水及び共溶媒を含む。特定の実施形態では、ビヒクルは、水及び共溶媒を含み、共溶媒は、インク組成物などの組成物の総重量に基づいて、約30重量パーセントを上回る高い量で存在する。
【0033】
組成物は、界面活性剤を更に含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、シロキサンポリエーテル、エトキシル化アセチレンジオール、アルコールエトキシレート、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインクが説明され、水と、共溶媒と、任意選択的なワックス分散液と、任意選択的なラテックス樹脂と、界面活性剤と、顔料と、本明細書に記載のポリマー分散剤と、を含み、いくつかの実施形態では、ポリマー分散剤は、以下の構造のコポリマーを含み、
【0035】
【化7】
式中、wは、1~約400の整数であり、xは、0~約480の整数であり、yは、1~約160の整数であり、zは、1~約400の整数であり、L~Lは、任意選択的な連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Lは、エーテル、尿素、エポキシ、エステル、アミド、酸素、硫黄、及び1個~約6個の炭素原子のアルキル鎖からなる群のメンバーから選択される連結基であり、Rは、-(CH3-39CHであり、Rは、ベンジル、ナフタレニル、アントラセニル、テトラセニル、ペンタセニル、トリスチリルベンジル、及びピリジニルからなる群のメンバーから選択される芳香族基であり、Rは、-(CHCHO)(CHCHCHO)Rであり、mは、約10~約450であり、nは、約0~約80であり、Rは、H又はCHであり、Rは、アミン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、及びオニウム塩基からなる群のメンバーから選択される塩基群であり、R’、R’、R’、及びR’は、各々独立して、H、1個~約5個の炭素原子を有するアルキル基、及び6個~約30個の炭素原子を有する芳香族基からなる群のメンバーから選択される。いくつかの実施形態では、式
【0036】
【数5】
が、分散剤成分を定義するために使用され、式中、w、x、y、及びzは、整数であり、MR1は、R基の分子量であり、MR1’は、R’基の分子量であり、MR2は、R基の分子量であり、MR2’は、R’基の分子量であり、MR3は、R基の分子量であり、MR3’は、R’基の分子量であり、MR4は、R基の分子量であり、及びMR4’は、R’基の分子量である。
【0037】
本明細書のインク組成物は、水のみからなり得るか、又は水と、共溶媒、保湿剤、若しくは同様のもの(以下、共溶媒)、例えば、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、一級脂肪族アルコール、二級脂肪族アルコール、1,2-アルコール、1,3-アルコール、1,5-アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、メトキシル化グリセロール、エトキシル化グリセロール、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの高級同族体などを含み、具体的な例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-メトキシブタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,4-ヘプタンジオールなどを含む、アルコール及びアルコール誘導体と称される、水溶性又は水混和性成分との混合物を含み得、また、アミド、エーテル、尿素、置換尿素、例えば、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素、及びジアルキルチオ尿素など、カルボン酸及びこれらの塩、例えば、2-メチルペンタン酸、2-エチル-3-プロピルアクリル酸、2-エチル-ヘキサン酸、3-エトキシプロピオン酸など、エステル、有機硫化物、有機スルホキシド、スルホン(スルホランなど)、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ(cellusolve)、エーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エーテル誘導体、ヒドロキシエーテル、アミノアルコール、ケトン、N-メチルピロリドン、2-ピロリジノン、シクロヘキシルピロリドン、アミド、スルホキシド、ラクトン、高分子電解質、メチルスルホニルエタノール、イミダゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ベタイン、糖、例えば、1-デオキシ-D-ガラクチトール、マンニトール、イノシトールなど、置換及び非置換ホルムアミド、置換及び非置換アセトアミド、並びに他の水溶性物質又は水混和性物質、並びにこれらの混合物も好適である。いくつかの実施形態では、共溶媒は、エチレングリコール、N-メチルピロリドン、メトキシ化グリセロール、エトキシル化グリセロール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
水と水溶性又は水混和性有機溶媒液との混合物が液体ビヒクルとして選択される場合、水対有機共溶媒比の範囲は、任意の好適な又は所望の比であり得、いくつかの実施形態では約100:0~約30:70、又は約97:3~約40:60、又は約95:5~約60:40である。液体ビヒクルの非水成分は、概して、水の沸点(100℃)よりも高い沸点を有する保湿剤又は共溶媒として機能する。選択される共溶媒は、相分離せずに水と混合するものであり、それゆえ、水と適合する極性を有する共溶媒が選択される。インクビヒクルの有機成分はまた、インクの表面張力を変更させ、インクの粘度を変更させ、着色剤を溶解若しくは分散させ、及び/又はインクの乾燥特性に影響を与えるように機能し得る。いくつかの実施形態では、インクは、溶媒系インクなどの場合、プラスチック媒体よりも紙基材により引き付けられる。
【0039】
インク配合物中で使用される水溶性又は水混和性有機物は、表面張力、乾燥、レベリングなどを助けることができる。いくつかの実施形態では、水は、配合物の50%超を構成し、いくつかの実施形態では、水は、約60~約70%のインク組成物を含む。したがって、本明細書のインク組成物は、主に水性である。
【0040】
特定の実施形態では、共溶媒は、スルホラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、2-ピロリジノン、ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
液体ビヒクルの総量は、任意の好適な又は所望の量で提供され得る。いくつかの実施形態では、液体ビヒクルは、インク組成物の総重量に基づいて、約75~約97重量パーセント、約80~約95重量パーセント、又は約85~約95重量パーセントの量でインク組成物中に存在する。
【0042】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインクは、本明細書で説明されるような顔料及びポリマー分散剤を含み、顔料及びポリマー分散剤は、顔料分散液の形態でともに提供される。
【0043】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインクは、アルキルフェノールエトキシレートを含まない。
【0044】
水性インクジェットインクは、本明細書で説明された顔料を含む水性インクジェットインク技術分野で既知のような、任意の好適な又は所望の顔料を含むことができる。いくつかの実施形態では、顔料は、カーボンブラックである。
【0045】
粒径は、実際の顔料粒子と同じ体積を有する等価球の直径によって画定される。Dxは、分散液中の粒子のx%が、体積分布に基づくサイズよりも小さいことを表し、例えば、D10は、分散液中の粒子の10%がこのサイズよりも小さいことを表す。Mvは、インク中の顔料粒子の体積平均径である。
【0046】
粒子は、いくつかの実施形態では、顔料は、粒子状又は顔料分散液の形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、顔料分散体は、約20~約500ナノメートル(nm)、又は約20~約400nm、又は約30~約300nmの体積加重平均径を有する。いくつかの実施形態では、分散液は、粒子、いくつかの実施形態では、顔料、本明細書に説明されたポリマー分散剤、及び任意選択的な界面活性剤を含む。粒径(体積加重平均径)は、動的光散乱粒径分析器、例えば、NANOTRAC FLEX又はMalvern Mastersizerを介して室温で測定される。分析器を、173°の角度において後方散乱モードで動作させた。試料を、脱イオン水で希釈し、測定前に120秒間、25℃で均衡化した。
【0047】
好適な顔料の例としては、黒色顔料、白色顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、黄色顔料などが挙げられる。更に、顔料は、有機粒子又は無機粒子であり得る。好適な無機顔料としては、カーボンブラックが挙げられる。しかしながら、酸化チタン、コバルトブルー(CoO-Al)、クロムイエロー(PbCr0)、及び酸化鉄などの他の無機顔料が好適であり得る。好適な有機顔料としては、例えば、ジアゾ顔料及びモノアゾ顔料などアゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンなどフタロシアニン顔料)、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、ピラントロン顔料、及びキノフタロン顔料)、不溶性染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート及び酸性染料型キレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、PR168などアントアントロン顔料などが挙げられる。フタロシアニンブルー及びグリーンの代表例としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、及びそれらの誘導体(ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7、及びピグメントグリーン36)が挙げられる。キナクリドンの代表例としては、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19、及びピグメントバイオレット42が挙げられる。アントラキノンの代表例としては、ピグメントレッド43、ピグメントレッド194、ピグメントレッド177、ピグメントレッド216、及びピグメントレッド226が挙げられる。ペリレンの代表例としては、ピグメントレッド123、ピグメントレッド149、ピグメントレッド179、ピグメントレッド190、ピグメントレッド189、及びピグメントレッド224が挙げられる。チオインジゴイドの代表例としては、ピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36、及びピグメントバイオレット38が挙げられる。複素環イエローの代表例としては、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー90、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー155、及びピグメントイエロー213が挙げられる。このような顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation、及びSun Chemical Corporationなど多くの供給元から粉末又はプレスケーキの形態で市販されている。使用可能なブラック顔料の例としては、炭素顔料が挙げられる。炭素顔料は、許容可能な光学濃度及び印刷特性を提供する、任意の市販の炭素顔料であり得る。本系及び方法での使用に好適な炭素顔料は、カーボンブラック、グラファイト、ガラス状炭素、木炭、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このような炭素顔料は、チャンネル法、コンタクト法、ファーネス法、アセチレン法、又はサーマル法など種々の既知の方法で製造することができ、Cabot Corporation、Columbian Chemicals Company、Evonik、及びE.I.DuPont de Nemours and Companyなどから市販されている。好適なカーボンブラック顔料としては、限定するものではないが、MONARCH1400、MONARCH1300、MONARCH1100、MONARCH1000、MONARCH900、MONARCH880、MONARCH800、MONARCH700、CAB-O-JET200、CAB-O-JET300、REGAL、BLACK PEARLS、ELFTEX、MOGUL、及びVULCAN顔料などのCabot社製の顔料、RAVEN5000及びRAVEN3500などColumbian社製の顔料、カラーブラックFW200、FW2、FW2V、FW1、FW18、FW S160、FW S170、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4、PRINTEX U、PRINTEX 140U、PRINTEX V、及びPRINTEX 140VなどEvonik社製の顔料が挙げられる。上記の顔料リストは、未改質顔料微粒子、小分子付着顔料微粒子、及びポリマー分散型顔料微粒子を含む。他の顔料、並びにそれらの混合物も選択され得る。顔料の粒径は、液体ビヒクル中の粒子の安定したコロイド状懸濁を可能にし、かつインクがサーマルインクジェットプリンタ又は圧電インクジェットプリンタで使用されるときに、インクチャンネルの目詰まりを防止するために可能な限り小さいことが所望される。
【0048】
顔料などの粒子は、任意の所望の量又は有効な量でインク組成物中に存在し得、いくつかの実施形態では、顔料は、インク組成物の総重量に基づいて、約0.05~約15重量パーセント、又は約0.1~約10重量パーセント、又は約1~約5重量パーセントの量で存在し得る。
【0049】
開示するインクはまた、界面活性剤を含有し得る。好適な界面活性剤の例としては、イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤など、並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な界面活性剤の例としては、アルキルポリエチレンオキシド、アルキルフェニルポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、アセチレンポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキシド(ジ)エステル、ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミド、ジメチコンコポリオール、置換アミンオキシドなどが挙げられ、具体例としては、塩酸塩、ラウリルアミンの酢酸塩、ココナッツアミン、ステアリルアミン、ロジンアミンなどの一級、二級、及び三級アミン塩化合物;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなど四級アンモニウム塩タイプ化合物;塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウムなどピリジニウム塩タイプ化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アセチレンアルコール、アセチレングリコールなど非イオン性界面活性剤、並びに、2-ヘプタデセニル-ヒドロキシエチルイミダゾリン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、ステアリルジメチルベタイン、及びラウリルヒドロキシエチルベタインなど他の界面活性剤;フルオロ界面活性剤など、並びにこれらの混合物が挙げられる。非イオン性界面活性剤の更なる例としては、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールが挙げられ、Rhone-PoulencからIGEPAL CA-210(商標)、IGEPAL CA-520(商標)、IGEPAL CA-720(商標)、IGEPAL CO-890(商標)、IGEPAL C0-720(商標)、IGEPAL C0-290(商標)、IGEPAL CA-21OTM、ANTAROX 890(商標)、及びANTAROX 897(商標)として入手可能である。好適な非イオン性界面活性剤の他の例としては、SYNPERONIC(商標)PE/F、(例えばSYNPERONIC(商標)PE/F 108)として市販されているものを含む、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーが挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤の他の例としては、硫酸塩及びスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecylsulfate、SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルフェート、ジアルキルベンゼンアルキルスルフェート及びスルホネート、Sigma-Aldrichから入手可能なアブニット酸などの酸、Daiichi Kogyo Seiyakuから入手可能なNEOGEN R(商標)、NEOGEN SC(商標)、これらの組み合わせなどが挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤の他の例としては、DOWFAX(商標)2A1、Dow Chemical Companyからのアルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、及び/又はTayca Corporation(Japan)からの、分枝鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであるTAYCA POWER BN2060が挙げられる。通常、正電荷を持つ、好適なカチオン性界面活性剤の他の例としては、アルキルベンジルジメチル塩化アンモニウム、ジアルキルベンゼンアルキル塩化アンモニウム、ラウリルトリメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルジメチル臭化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、セチル臭化ピリジニウム、C 12、C15、C17、トリメチル臭化アンモニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、ドデシルベンジルトリエチル塩化アンモニウム、Alkaril Chemical Companyから入手可能であるMIRAPOL(商標)及びALKAQUAT(商標)、Kao Chemicalsから入手可能であるSANIZOL(商標)(塩化ベンザルコニウム)など、並びにこれらの混合物が挙げられる。任意の2つ以上の界面活性剤の混合物を使用することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、任意選択的な界面活性剤が存在し、シロキサンポリエーテル、エトキシル化アセチレンジオール、アルコールエトキシレート、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される。
【0051】
任意選択的な界面活性剤は、任意の所望の又は有効な量で存在することができ、実施形態では、界面活性剤は、インク組成物の総重量に基づいて約0.01~約5重量パーセントの量で存在する。界面活性剤は、場合によっては分散剤と称されることに留意されたい。
【0052】
インク組成物は、架橋剤を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、架橋剤は、有機アミン、ジヒドロキシ芳香族化合物、イソシアネート、過酸化物、金属酸化物など、並びにそれらの混合物である。架橋は、インク組成物から生成された画像の物理的特性を更に強化することができる。架橋剤は、いくつかの実施形態では、インク組成物の総重量に基づいて、約0.1~約20重量パーセント、又は5~約15重量パーセントの任意の所望の又は有効な量で存在することができる。
【0053】
インク組成物は、添加剤を更に含むことができる。インク組成物に含まれ得る任意選択的な添加剤としては、殺生物剤、殺真菌剤、酸又は塩基などのpH制御剤、リン酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩、アミン塩、緩衝液及び同等のもの、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)などの金属イオン封鎖剤、粘度調整剤、レベリング剤及び同等のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
実施形態では、インク組成物は、低粘度組成物である。「低粘度」という用語は、少なくとも1,000センチポアズ(cps)の粘度を有する傾向があるスクリーン印刷インクなどの従来の高粘度インクとは対照的に使用される。具体的な実施形態では、本明細書に開示されるインクは、粘度がこれらの範囲外である可能性があるが、約30℃の温度で、約100cps以下、約50cps以下、又は約20cps以下、又は約2~約30cpsの粘度を有する。インクジェット印刷用途で使用されるとき、インク組成物は、概して、当該インクジェット印刷プロセスにおける使用に好適な粘度である。例えば、熱インクジェット印刷用途の場合、室温(すなわち、約25℃)では、粘度がこれらの範囲外である可能性があるが、インク粘度は、少なくとも約1センチポアズ、約10センチポアズ以下、約7センチポアズ以下、又は約5センチポアズ以下である。圧電インクジェット印刷の場合、噴射温度では、粘度がこれらの範囲外である可能性があるが、インク粘度は、少なくとも約2センチポアズ、少なくとも約3センチポアズ、約20センチポアズ以下、約15センチポアズ以下、又は約10センチポアズ以下である。噴射温度はこれらの範囲外である可能性があるが、噴射温度は、約20~25℃の低さとなり得、及び約70℃の高さ、約50℃の高さ、又は約40℃の高さとなり得る。
【0055】
特定の実施形態では、本明細書のインク組成物は、約30℃の温度で約2~約20センチポアズの粘度を有する。
【0056】
インク組成物は、成分を単純に混合することによって、任意の好適なプロセスによって調製することができる。1つのプロセスでは、インクを得るには、インク成分の全てを一緒に混合し、混合物を濾過することが必要である。インクは、成分を混合し、所望される場合には加熱し、濾過し、続いて任意の所望の追加添加剤を混合物に添加し、均質な混合物が取得されるまで、いくつかの実施形態では、約5~約10分、室温で緩やかに振盪しながら混合することによって、調製することができる。代替的に、任意選択的なインク添加剤は、インク調製プロセス中に他のインク成分と混合することができ、このインク調製プロセスは、任意の所望の手順(例えば、全ての成分を混合し、所望される場合には加熱し、濾過する)によって行われる。
【0057】
本明細書に開示されるようなインク組成物を撮像パターンで基材に塗布することを含むプロセスもまた本明細書に開示される。本明細書に開示されるようなインク組成物をオーバーコートとして基材に塗布することを含むプロセスもまた本明細書に開示され、オーバーコートは、透明、着色、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0058】
インク組成物は、インク組成物をインクジェット印刷装置に組み込み、インクの液滴を基板上に撮像パターンで射出させることを伴うプロセスにおいて使用することができる。具体的な実施形態では、印刷装置は、サーマルインクジェットプロセスを用い、ノズル内のインクは、撮像パターンで選択的に加熱され、それによってインクの液滴が撮像パターンで射出される。別の実施形態では、印刷装置は、音響インクジェットプロセスを用い、インクの液滴は、音響ビームによって撮像パターンで射出される。更に別の実施形態では、印刷装置は、圧電インクジェットプロセスを用い、インクの液滴は、圧電振動要素の振動によって撮像パターンで射出される。任意の好適な基材が用いられ得る。
【0059】
具体的な実施形態では、本明細書のプロセスは、本明細書に開示されるように調製されたインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、インク液滴を中間転写部材上に撮像パターンで射出することと、溶媒を部分的又は完全に除去するために画像を加熱することと、中間転写部材から最終記録基材に撮像パターンでインクを転写することと、を含む。具体的な実施形態では、中間転写部材は、最終記録シートの温度を上回り、印刷装置内のインクの温度を下回る温度まで加熱される。オフセット又は間接印刷プロセスはまた、例えば、米国特許第5,389,958号に開示されており、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。ある具体的な実施形態では、印刷装置は、圧電印刷プロセスを用い、インクの液滴は、圧電振動要素の振動によって撮像パターンで射出される。
【0060】
任意の好適な基材又は記録シートは、XEROX(登録商標)4024紙、XEROX(登録商標)Image Series紙、Courtland4024DP紙、罫線入りノート紙、ボンド紙などの普通紙、Sharp Companyシリカコート紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT(登録商標)紙などのシリカコート紙、透明材料、布地、テキスタイル製品、プラスチック、ポリマーフィルム、金属及び木材などの無機基質を含む、最終記録シートとして用いられ得る。いくつかの実施形態では、基材は三次元基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、カテーテル、温度計、心臓ステント、プログラマブルペースメーカー、他の医療用装置、メニュー、食品包装材料、化粧用具及び化粧品、並びに任意の他の所望の三次元基材を含む。更なる実施形態では、基材は、カスタマイズ可能なデジタル印刷されたIDコード、短期印刷可能材料、三次元医療用基材及び任意の他の所望の三次元基材を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、インクが、NANOTRAC FLEXによって測定される際のインクの新鮮な顔料粒径及び60℃での3日間のエージング後のインクの顔料粒径によって特徴付けられるエージング安定性を示すインクを提供する。
【0062】
新鮮な顔料分散液又はインクは、室温で新たに調製された分散液又はインクを意味する。60℃での3日間のエージングは、顔料分散液又はインクを、60℃の温度で3日間、密閉されたガラス容器内に保持することを意味する。
【0063】
それゆえ、いくつかの実施形態では、本明細書におけるインクは、動的光散乱粒径分析装置、例えば、NANOTRAC FLEX又はMalver Mastersizerによって測定される際、新たに調製されたインクの粒径を、60℃で3日間のエージング後のインクの粒径と比較することによって特徴付けられたエージング安定性を示す。粒径は、実際の顔料粒子と同じ体積を有する等価球の直径によって画定される。Dxは、分散液中の粒子のx%が、体積分布に基づくサイズよりも小さいことを表し、例えば、D10は、分散液中の粒子の10%がこのサイズよりも小さいことを表す。Mvは、インク中の顔料粒子の体積平均径である。
【実施例0064】
以下の実施例は、本開示の様々な種類を更に定義するために提示される。これらの実施例は、例示のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。また、別途記載のない限り、割合及び百分率は重量による。
【0065】
実施例1
ポリマー分散剤の合成。0.8グラムのアスビシソブチロニトリルを、窒素下で82℃に予熱した500ミリリットルのフラスコ中の20グラムのイソプロパノールに溶解させた。8グラムの4-ビニルピリジン、6グラムのベヘニルメタクリレート、0.8グラムのアゾビス-イソブチロニトリル、及び72グラムのポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(水中50重量パーセント、重量平均分子量約3,600)を、100グラムのイソプロパノール及び20グラムのメチルエチルケトンの溶液中に溶解させた。取得されたモノマー溶液を、2ミリリットル/分の速度でフラスコ内に供給した。全てのモノマーを供給した後、モノマーを、82℃で4時間保持した。その後、溶媒を真空下で除去し、水を添加して、分散剤溶液の固形分を25重量パーセントに調整した。
【0066】
実施例2
顔料分散液の調製。20部の顔料(Birla Carbon製のRaven1180P)、20部の実施例1の分散剤溶液(20重量パーセント)、6部の1,2-ヘキサンジオール、及び54部の水を均質化した。結果として得られた分散液を、400部のジルコニアビーズ(0.3ミリメートル)と混合し、塗料シェーカを使用して、毎分820回転(rpm)で3時間粉砕して、顔料分散体を得る。
【0067】
実施例3
インクの調製。51部の実施例2の顔料分散液(11.33重量パーセントの顔料)、25部の1,2-プロパンジオール、5部の1,2-ヘキサンジオール、9部(44重量パーセントの固体)のラテックス樹脂(BASFから入手可能なJONCRYL(登録商標)541)、1部の界面活性剤(BYK-3451)、0.1部のProxel(登録商標)(イソチアゾリノン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、防腐剤)、1部のワックス分散液(035重量パーセントの固体)(Joncryl(登録商標)Wax-35)、及び6部の水を混合し、1マイクロメートルのガラス膜フィルタを通して濾過して、任意の粗粒子を除去した。取得されたインクを、様々なインク特性評価及び初期のDimatix印刷試験に供した。
【0068】
実施例4
インクの調製。51部(11.33重量パーセントの顔料)の実施例2の顔料分散液、25部の1,2-プロパンジオール、7部の1,2-ヘキサンジオール、4部(44重量パーセントの固体)のラテックス樹脂(BASFから入手可能なJONCRYL(登録商標)541)、1部の界面活性剤(BYK-3451)、0.1部のProxel(登録商標)、1部のワックス分散液(0.35重量パーセントの固体)(Joncryl(登録商標)Wax-35)、及び6部の水を混合し、1マイクロメートルのガラス膜フィルタを通して濾過して、任意の粗粒子を除去した。取得されたインクを、様々なインク特性評価及び初期のDimatix印刷試験に供した。
【0069】
実施例5
インクの調製。51部(11.33重量パーセントの顔料)の実施例2の顔料分散液、27部の1,2-プロパンジオール、9部の1,2-ヘキサンジオール、9部(44重量パーセントの固体)のラテックス樹脂(BASFから入手可能なJONCRYL(登録商標)541)、1部の界面活性剤(BYK-3451)、0.1部のProxel(登録商標)、1部のワックス分散液(0.35重量パーセントの固体)(Joncryl(登録商標)Wax-35)、及び6部の水を混合し、1マイクロメートルのガラス膜フィルタを通して濾過して、任意の粗粒子を除去した。取得されたインクを、様々なインク特性評価及び初期のDimatix印刷試験に供した。
【0070】
比較実施例6
市販のブロックコポリマー分散剤を使用するインクの調製。51部(11.33重量パーセントの顔料)の実施例2で調製された顔料分散液、DISPEX(登録商標)Ultra PX 4575(BASFから入手可能な水中のアクリルブロックコポリマー配合物)を除く、28.5部の1,2-プロパンジオール、2.5部の1,2-ヘキサンジオール、9部(44重量パーセントの固体)のラテックス樹脂(BASFから入手可能なJONCRYL(登録商標)541)、1部の界面活性剤(BYK-3451)、0.1部のProxel(登録商標)、1部のワックス分散液(0.35重量パーセントの固体)(Joncryl(登録商標)Wax-35)、及び6部の水を混合し、1マイクロメートルのガラス膜フィルタを通して濾過して、任意の粗粒子を除去した。取得されたインクを、様々なインク特性評価及び初期のDimatix印刷試験に供した。
【0071】
特性評価結果。
【0072】
インク安定性。インクを60℃のオーブン内に保持し、続いてNanotrac粒径分析装置を使用して、特定のエージング時間後に粒径を測定することによって、促進された貯蔵安定性を判定した。「Nanotrac」は、Microtracによって作製された粒子径分析装置のモデル名である。これは、動的光散乱技術を使用する。表1は、実施例3、4、及び5のカーボンブラック分散液で調製された黒色インクについての特性評価結果を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
比較例6の黒色インクの粒径は、表2に示される。
【0075】
【表2】
【0076】
このように、有利な特性を有するか又は提供する分散剤が説明され、これらの有利な特性としては、様々な顔料を分散させるために非常に効果的な非APE分散剤、分散剤を使用して調製されたインクが、優れた安定性及び印刷性能を示すこと、分散剤が、費用効果が高く、かつその合成が、製造可能であるということを含む。
【0077】
様々な上記で開示された及び他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わされ得ることが理解されるであろう。また、様々な現在予期されない、又は先行例のない代替、修正、変形、又は改善が、当業者によって行われ得、これらはまた、以下の「特許請求の範囲」によって包含されることが意図されている。特許請求の範囲に具体的に列挙されない限り、特許請求の範囲の工程又は構成要素は、本明細書又は任意の他の特許請求の範囲から、いかなる特定の順序、数、位置、サイズ、形状、角度、色、又は材料に関して、暗示又は意味されるべきではない。