(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076808
(43)【公開日】2023-06-02
(54)【発明の名称】アクリル繊維を生産するための高速プロセス及び関連装置
(51)【国際特許分類】
D01D 5/06 20060101AFI20230526BHJP
D01F 6/18 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
D01D5/06 104
D01F6/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178432
(22)【出願日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】102021000029576
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】518090672
【氏名又は名称】モンテフィブレ マエ テクノロジーズ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランコ フランカランチ
(72)【発明者】
【氏名】ピエルルイージ ゴッツォ
(72)【発明者】
【氏名】アナ パウラ ヴィディガル
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ロヴェッリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルタル グアルディアーニ
【テーマコード(参考)】
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4L035BB03
4L035BB11
4L035BB17
4L035BB22
4L035BB66
4L035BB72
4L035BB89
4L045AA02
4L045BA03
4L045CA25
4L045CA29
4L045DA05
4L045DA32
4L045DA34
4L045DA36
4L045DA41
4L045DB02
(57)【要約】
【課題】アクリル繊維の生産のための紡糸プロセス、及び関連装置の提供。
【解決手段】アクリル繊維の生産のためのプロセス、特に、有機溶媒中のポリマー溶液の湿式紡糸による、炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸プロセス、及び関連装置が説明される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体繊維を生産するための、有機溶媒(例えば、DMAC又はDMSO)中のアクリルコポリマーの均一溶液の紡糸プロセスであって、
前記プロセスは、150~400m/分の紡糸速度での湿式紡糸工程を含み、ここで、
有機溶媒中又はドープ中の前記アクリルコポリマーの均一溶液は、孔径が150~300ミクロンの範囲の1又は複数の紡糸口金に供給され、
前記紡糸口金は、5~40℃の範囲の温度で、混合物の総重量に対して有機溶媒の濃度が78~85重量%(例えば、78~84重量%)の範囲である有機溶媒と非溶媒溶媒との混合物からなる凝固浴に浸漬されており;
前記1又は複数の紡糸口金の吐出口における前記ドープは前記凝固浴に接触し、凝固してトウ又はフィラメント束を形成し、前記紡糸口金から前記凝固浴への前記ドープの出口速度と凝固後の回収速度との間の比であるドラフト比(jet stretch)は5~15の範囲であり;
前記トウ又はフィラメント束はその後一連の洗浄又は洗浄及び延伸工程に供給され、ここで各洗浄又は洗浄及び延伸工程は、洗浄液の移動方向が前記トウ又はフィラメント束の移動方向と一致する並流で行われ、前記各洗浄又は洗浄及び延伸工程における洗浄液の供給及び排出は前記トウ又はフィラメント束の移動方向に対して向流で行われる、
紡糸プロセス。
【請求項2】
前記凝固浴の前記非溶媒溶媒が水である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記洗浄液が水である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アクリルコポリマーの均一溶液の前記有機溶媒が、前記凝固浴で使用される有機溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド(DMAC)又はジメチルスルホキシド(DMSO))と同じである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記凝固浴が水/ジメチルアセトアミド混合物又は水/ジメチルスルホキシド混合物からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記凝固浴が水/ジメチルスルホキシド混合物からなり、前記凝固浴の温度が5~15℃の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記アクリルコポリマーが、アクリロニトリルと、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリル酸、イタコン酸、又はスルホン化スチレンを含む群より選択される1又は複数のコモノマーと、のコポリマーであり、
前記ポリマーの総重量に対して、前記アクリロニトリルは90~99重量%の範囲の量で存在し、前記コモノマーは1~10重量%の範囲の量で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
少なくとも1つの洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを含むことを特徴とする湿式紡糸装置であって、前記ユニットUは、
洗浄液(8)を格納するのに適した洗浄槽(6)であって、ここで、前記液(8)は、第1の温度T1で前記槽(6)の第一端で供給されるのに適し、前記液(8)は、第2の温度T2で前記槽(6)の第二端で排出されるのに適し、前記温度T1は前記温度T2より高い、前記洗浄槽(6);及び
前記槽(6)の前記第一端から前記第二端にトウ又はフィラメント束(7)を移動させるのに適した機械的手段(例えば、ローラー(5、2’))、
を含み、
前記洗浄槽(6)において、前記洗浄液(8)の移動方向は前記トウ又はフィラメント束(7)の移動方向に対して並流である、湿式紡糸装置。
【請求項9】
前記洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUが、
前記第2の温度T2で前記洗浄槽(6)の前記第二端で排出されるのに適した前記液(8)が、排水管(11)及びフィルター(12)を通して補助リサイクル槽(9)に供給され、ここで前記液(8)の第一の部分がポンプ(13)で熱交換器(14)を備える補助加熱槽(10)に供給され、前記補助加熱槽(10)は前記洗浄液(8)を前記第1の温度T1で前記洗浄槽(6)の前記第一端に供給するのに適する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、順に配置され互いに流体連結した2以上の洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを備える、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、順に配置され互いに流体連結した2以上の洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを備え、
各洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの前記補助リサイクル槽(9)は、前記洗浄槽(6)の前記トウ又はフィラメント束(7)の移動に対して下流側に配置された洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの補助リサイクル槽(9’)からの前記洗浄液(8)の残りの部分が供給されることに適しており、
前記補助リサイクル槽(9)はまた、前記第2の温度T2で前記洗浄槽(6)の前記第二端で抜き取られた洗浄液(8)の残りの部分を、前記洗浄槽(6)の前記トウ又はフィラメント束(7)の移動に対して上流側に配置された洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの補助リサイクル槽に供給するのに適している、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記洗浄液の供給は、前記洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの連続配置に対し、前記トウ又はフィラメント束の移動方向に対して向流で行われる、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル繊維の生産のためのプロセス、特に、有機溶媒中のポリマー溶液の湿式紡糸による、炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸プロセス、及び関連装置に関する。
【0002】
本発明は、アクリロニトリルから出発するポリマー、又は主にアクリロニトリル(ポリマーの総重量に対して90~99重量%)と通常ポリマーの総重量に対して1~10重量%の範囲の量の1又は複数の他のコモノマーとからなるコポリマーの調製を提供する、アクリル繊維及び炭素繊維前駆体の生産に関連する分野に属する。
【0003】
好ましいコモノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリルアミド、及び類似体などの中性ビニル分子、並びに、アクリル酸、イタコン酸、スルホン化スチレン、及び類似体などの1又は複数の酸基を有する分子の両方、又は、得られる物質に種々の化学的-物理的特性を付与可能なその他のコモノマーである。
【0004】
このように調製されたポリマー及びコポリマーは、次に紡糸に供されて、繊維製品的利用及び工業的利用の両方のための様々な加工技術を用いたその後の製品化に適した、トウの状態で回収される繊維を生成する。
【0005】
炭素繊維「前駆体」繊維は特定の種類のアクリル繊維である。これらは、アクリロニトリルと、上記に記載されるものから選択されポリマーの総重量に対して通常1~5重量%の範囲の量である1又は複数のコモノマーと、の高分子量コポリマーである。その後、ポリアクリロニトリルをベースとしたこれらの「前駆体」繊維の適切な熱処理により、炭素繊維が得られる。
【背景技術】
【0006】
様々な重合方法及び紡糸方法を用いるアクリル繊維の調製のための多様な産業プロセスが存在する。
重合方法について、従来技術は以下のように分類及び体系化され得る。
【0007】
A.バッチプロセス(2ステップ)
2ステップのバッチプロセスでは、ポリマーは一般的に水性懸濁液中で製造され、単離され、続いて、適切な溶媒中に溶解され、紡糸され、繊維、又は炭素繊維の場合は繊維前駆体に変換される。紡糸溶液の調製のために最も一般的に用いられる溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びチオシアン酸ナトリウム水溶液(NaSCN)である。
【0008】
B.連続的プロセス(1ステップ)
一方、連続的プロセスでは重合は溶媒中で行われ、得られた溶液が、ポリマーの中間単離を伴わずに紡糸に直接使用される。これらのプロセスに最も一般的に用いられる溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化亜鉛(ZnCl2)の水溶液、及びチオシアン酸ナトリウム(NaSCN)の水溶液である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
使用するプロセスに関わらず、ポリマー溶液は適切な溶媒中に得られ、これは湿式紡糸プロセスによりテキスタイル繊維又は炭素繊維前駆体に変換する必要がある。産業的にこの湿式紡糸を行うには基本的に以下の2つの技術がある。
・溶媒及び非溶媒(一般的には水)の混合物からなる凝固浴に浸漬した紡糸口金に溶媒中のポリマーの溶液(「ドープ」)が供給される湿式紡糸。紡糸口金の吐出口でドープは凝固浴と接するとすぐに凝固し、その後、一連の洗浄操作(残留溶媒を除くため)及び延伸(所望の機械特性を付与するため)を通して最終的な繊維に変換される。
・紡糸浴の数mm上に浮かされた紡糸口金にドープが供給される、ドライジェット湿式紡糸又はエアギャップ湿式紡糸。この場合、紡糸口金から吐出されたドープの糸は浴槽と接してもすぐに凝固せず、空気中で若干の距離を通過し、ここで、凝固が生じる浴槽に入って溶媒が除去され繊維が形成される前に、最初の延伸プロセス(ジェット延伸:jet stretch)が生じる。またこの場合、生産プロセスは、所望の特性を有する最終的な繊維を得るための洗浄及び延伸工程により完了する。
【0010】
両紡糸技術は、優れた機械特性を有し、炭素繊維の生産に適した繊維の生産を可能にする。ドライジェット湿式紡糸は、前駆体が例えば航空宇宙分野で用いられるものなどの高性能炭素繊維の生産を目的としている場合に一般的に用いられる。一方、湿式紡糸は、必要な機械の複雑性がより低くコストが低いことから、工業用繊維の生産に好まれる技術である。
【0011】
紡糸ラインの複雑性の違いに加えて、生産される前駆体トウのサイズ及びこれによる最終的な炭素繊維のサイズに起因する、これらの2つの技術を選択するための基準がある。この観点からも、湿式紡糸は大きいトウ、指標としては48~60K及びこれより大きいトウの炭素繊維の生産により適しているのに対して、ドライジェット湿式紡糸は小さいトウ、指標としては1K~12K(単位Kは1,000フィラメントに相当;3Kは糸が3,000本の一次フィラメントからなることを意味する。)の炭素繊維の生産により適していることにより、大まかな差別化ができる。24Kカウント(count)の炭素繊維は、上述の2つの技術の間での紡糸技術の選択がケースバイケースで評価されなければならない繊維とみなすことができる。
【0012】
技術的観点から、2つの紡糸プロセス又は技術の間の実質的な差異は、上述したように、凝固浴の内部に浸漬された又は外部の紡糸口金の位置にある。また、紡糸口金自身も、主にこれが有しうる孔の数において異なる。一般的に湿式紡糸の紡糸口金はトウ又は前駆体の束を形成する糸、したがって炭素繊維フィラメントの数と同数の孔を有し、したがって24,000個の孔を有する紡糸口金からは24Kトウが得られ、48,000個の孔を有する紡糸口金からは48Kトウが得られる。
【0013】
一方、ドライジェット湿式紡糸の場合、紡糸口金上で用いうる最大孔数は、一般的には、3,000~4,000個の範囲である。これは、より大きい孔数では、凝固前に液体ドープの噴出物が互いに接触し、前駆体の紡糸及び炭素繊維の質の双方において非常に重大な結果を伴う、接着した糸を発生させてしまうおそれがあるためである。この場合、3Kカウントは単一の3,000孔の紡糸口金を用いて得られるが、例えば、6Kカウントは2つの3Kトウを組み合わせることにより得られ、12Kは4つの3Kトウを共に組み合わせることにより得られる。
【0014】
エアギャップ紡糸口金の孔の密度の低さは、当然、ラインの生産能力の顕著な減少を伴い、これは紡糸口金をより多数使用すること(装置の複雑さ)、及びボビン上のトウの回収速度を高めることにより埋め合わされる。有機溶媒を用いた湿式紡糸の場合の紡糸速度は典型的には60~100m/分の範囲であり、エアギャップ紡糸の場合には、使用する溶媒によって、250~400m/分の速度が得られる。
【0015】
さらなる差異点は、生産される繊維の質に関し、一般的に、緻密性(compactness)、クラックがないこと、及び機械特性の観点において、エアギャップ紡糸のほうが優れている。
【0016】
速度及び表面の緻密性の両観点における利点を可能にする主な理由のひとつは、ドラフト比(jet stretch;紡糸延伸比)によるものである。紡糸口金から凝固浴へのドープの出口速度と凝固後の回収速度との間の比として測定されるこの現象は、典型的には湿式紡糸の場合は1又は1未満であり、一方エアギャップの場合には、凝固モーメントの違いにより、1.5から10超まで変化しうる。
【0017】
湿式紡糸においても1より顕著に大きいドラフト比(jet stretch)を得れば、よりシンプルで廉価な紡糸機器の利点を享受しながら、エアギャップ紡糸に関連する利点のいくつかをこの技術にも拡張することができるであろう。
【0018】
公知技術において、これらの目的を達成するために様々な試みがなされてきたが、いずれの場合も、全体として目的が達成されていない。
【0019】
例えば、欧州特許出願公開(A2)第0372622号明細書では、緻密でクラックがなく優れた機械特性を有する繊維を得るのに適した紡糸条件が記載されている。本文献に記載される紡糸条件は、120~180ミクロンの範囲、好ましくは150ミクロンの大孔径の紡糸口金の使用、15~35℃の温度における、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)に富んだ(指標としては80重量%)凝固浴の、ボビン回収速度80m/分での使用を提供しており、1.5~5の範囲、好ましくは2.4のドラフト比(jet stretch)を得ている。
【0020】
再び公知技術を参照すると、炭素繊維前駆体の生産のための有機溶媒中での湿式紡糸では、洗浄及び延伸ラインは一般的には一連の容器(1、1’、1''、1''')と3つ/4つのローラー(2~2'''、3~3'''、4~4'''、5~5''')、その前及び/又は後の槽(6、6’、6'')からなる(
図1に示す)。
【0021】
最初及び最後の容器(1、1''')を除いて、第1の下部ローラー(2’)は容器(1’)に先行する槽(6)に浸漬しており、第2の下部ローラー(5’)は容器(1’)に引き続く槽(6’)に浸漬している。
【0022】
新鮮な洗浄液は、洗浄及び延伸されたトウ又はフィラメント束が出ていく最終の槽(6'')に供給される。槽(6、6’6'')は有利に互いに流体連結しており、洗浄液の排液は、まだ溶媒に浸っている洗浄及び延伸されるべきトウが入る最初の槽(6)から出ていく。
【0023】
このようにして、同じ性能でも、使用する洗浄液量を最低限として、溶媒濃度が最大となる排液を得ることが可能な向流洗浄システムが創出される。
【0024】
しかしながら、槽内のトウが100m/分超の速度に達すると、以下の難点が浮上する。
1.トウに伴う洗浄液又は液跡(fluid trail)(「ひきずられた水(water drag)」)により、洗浄並びに洗浄及び延伸槽中の洗浄液レベルが、引出しローラーが位置する端部近くまで上昇し、槽壁と浸漬したローラーの間に位置するシール部からの洗浄液のオーバーフローの原因となる。
2.遠心効果により、浸漬されたローラーは洗浄液の激しいしぶきを生じ、槽から噴き出す。
【0025】
これらの難点は、紡糸ラインの管理を複雑なものとし、作業者らを熱い液体のしぶきに露出させる。次に、ローラー5、5''のシャフト近傍における熱い液体のオーバーフローは、洗浄液とローラーベアリングの滑剤との間の互いの汚染を引き起こす可能性がある。
【0026】
前記槽は洗浄槽のみであってもよく(ローラー5及び2’の速度は同じ)、ローラー2’の速度がローラー5’の速度よりも速い場合には、洗浄及び延伸槽であってもよい。
【0027】
しかしながら、洗浄及び延伸が行われる槽中の繊維の速度が100m/分よりも非常に速い場合には、既に上述したように、オーバーフローとしぶきの現象が浮上する。
【0028】
したがって、本発明に係るプロセスと装置の目的は、先に示唆された先行技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
したがって、本発明は、前駆体繊維を生産するための、有機溶媒中、好ましくはDMAC又はDMSO中のアクリルコポリマーの均一溶液の紡糸プロセスであって、前記プロセスは、150~400m/分の紡糸速度での湿式紡糸工程を含み、ここで、
有機溶媒中又はドープ中の前記アクリルコポリマーの均一溶液は、孔径が150~300ミクロンの範囲の1又は複数の紡糸口金に供給され、
前記紡糸口金は、5~40℃の範囲の温度で、混合物の総重量に対して有機溶媒の濃度が78~85重量%、好ましくは78~84重量%の範囲である有機溶媒と非溶媒溶媒(non-solvent solvent)との混合物からなる凝固浴に浸漬されており;
前記1又は複数の紡糸口金の吐出口における前記ドープは前記凝固浴に接触し、凝固してトウ又はフィラメント束を形成し、前記紡糸口金から前記凝固浴への前記ドープの出口速度と凝固後の回収速度との間の比であるドラフト比(jet stretch)は5~15の範囲であり;
前記トウ又はフィラメント束はその後一連の洗浄又は洗浄及び延伸工程に供給され、ここで各洗浄又は洗浄及び延伸工程は、洗浄液の移動方向が前記トウ又はフィラメント束の移動方向と一致する並流で行われ、前記各洗浄又は洗浄及び延伸工程における洗浄液の供給及び排出は前記トウ又はフィラメント束の移動方向に対して向流で行われる、紡糸プロセスに関する。
【0030】
前記凝固浴の前記非溶媒溶媒は、好ましくは水である。
【0031】
前記洗浄液は、好ましくは水である。
【0032】
好ましくは、前記アクリルコポリマーの均一溶液の前記有機溶媒は、前記凝固浴で使用される有機溶媒と同じであり、好ましくは、前記有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAC)又はジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0033】
前記凝固浴は、好ましくは、水/ジメチルアセトアミド混合物又は水/ジメチルスルホキシド混合物からなる。
【0034】
前記凝固浴が水/ジメチルスルホキシド混合物からなる場合、前記凝固浴の温度は、好ましくは、5~15℃の範囲である。
【0035】
前記アクリルポリマーは、好ましくは、アクリロニトリルと、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリル酸、イタコン酸、又はスルホン化スチレンを含む群より選択される1又は複数のコモノマーと、のコポリマーであり、
前記ポリマーの総重量に対して、前記アクリロニトリルは90~99重量%の範囲の量で存在し、前記コモノマーは1~10重量%の範囲の量で存在する。
【0036】
本発明に係るプロセスによれば、表面の緻密性、及びエアギャップ紡糸により得られるものと同様の優れた機械特性を有し、クラックがない前駆体繊維を得ることが可能となる。
【0037】
本発明に係るプロセスのさらなる利点は、エアギャッププロセスで得られるものと同様の紡糸速度(150~400m/分)に達する可能性があることである。
【0038】
上述したように、紡糸速度とは、ボビン上の繊維の回収速度を表し、ドラフト比(jet stretch)は、紡糸口金から凝固浴へのドープの出口速度と凝固後の回収速度との間の比を表す。
【0039】
本発明の目的はまた、上述のプロセスの実施を可能にしうる紡糸装置を定めることである。
【0040】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも1つの洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを含むことを特徴とする湿式紡糸装置であって、前記ユニットUは、
洗浄液(8)を格納するのに適した洗浄槽(6)であって、ここで、前記液(8)は、第1の温度T1で前記槽(6)の第一端で供給されるのに適し、前記液(8)は、第2の温度T2で前記槽(6)の第二端で排出されるのに適し、前記温度T1は前記温度T2より高い、前記洗浄槽(6);及び
前記槽(6)の前記第一端から前記第二端にトウ又はフィラメント束(7)を移動させるのに適した機械的手段、好ましくはローラー(5、2’)、を含み、
前記洗浄槽(6)において、前記洗浄液(8)の移動方向は前記トウ又はフィラメント束(7)の移動方向に対して並流である、
湿式紡糸装置に関する。
【0041】
前記洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUは、好ましくは、前記第2の温度T2で前記洗浄槽(6)の前記第二端で排出されるのに適した前記液(8)が、排水管(11)及びフィルター(12)を通して補助リサイクル槽(9)に供給され、ここで前記液(8)の第一の部分がポンプ(13)で熱交換器(14)を備える補助加熱槽(10)に供給され、前記補助加熱槽(10)は前記洗浄液(8)を前記第1の温度T1で前記洗浄槽(6)の前記第一端に供給するのに適する、ことを特徴とする。
【0042】
本発明に係る湿式紡糸装置は、好ましくは、順に配置され互いに流体連結した2以上の洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを備える。
【0043】
好ましくは、各洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの前記補助リサイクル槽(9)は、前記洗浄槽(6)の前記トウ又はフィラメント束(7)の移動に対して下流側に配置された洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの補助リサイクル槽(9’)からの前記洗浄液(8)の残りの部分が供給されることに適しており、
前記補助リサイクル槽(9)はまた、前記第2の温度T2で前記洗浄槽(6)の前記第二端で抜き取られた洗浄液(8)の残りの部分を、前記洗浄槽(6)の前記トウ又はフィラメント束(7)の移動に対して上流側に配置された洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの補助リサイクル槽に供給するのに適している。
【0044】
したがって、2以上の洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを備える前記湿式紡糸装置は、洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの連続的配置に関し、洗浄液の供給はトウ又はフィラメント束の移動方向に対して向流であることに特徴付けられる。
【0045】
本発明に係る装置によれば、流体力学的理由により100m/分よりも速い速度でスムーズに運転できなかった有機溶媒中での湿式紡糸のための従来技術による装置では達成できなかった速度の面で、新規紡糸プロセスの可能性が十分に活用されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【発明を実施するための形態】
【0047】
添付の
図1及び2において、上述のように、
図1は従来技術による装置の典型例を表し、
図2は本発明に係る装置の典型例を表す。
本明細書において、図面の説明のため、同一の符号又は文字は同一の機能を有する構成要素を表すために使用される。また、明確性及び説明のため、いくつかの符号は全図で繰り返さないことがある。
【0048】
本発明に係る装置は添付の
図2の概略図に示されており、ここで、注入口に位置するローラー容器から出されるトウ(7)は、ローラー(5)を離れて槽(6)に浸漬されたローラー(2’)に移動する。ローラー(2’)はトウを洗浄液(8)から引き出し、引き続くローラー(3’、4’、及び5’、
図2に図示せず)にともに送り、これは次の槽(6’)に供給される。
【0049】
槽(6)は補助槽(9、10)を備える。洗浄液は補助槽(9)又はリサイクル槽で回収され、排水管(11)を通して槽(6)から出て、フィルター(12)を通して濾過される。当該フィルターは洗浄のため取り外すことができる。ポンプ(13)は濾過された洗浄液を補助槽(9)又はリサイクル槽から抜き出して、通常蒸気を動力とする熱交換器が備えられた補助槽(10)又は加熱槽に供給する。
【0050】
濾過され加熱された洗浄液は特別の分配スロット(15)を通してメインの槽(6)に戻り、トウの移動方向に対して並流でその内部を流れる。
【0051】
したがって、上述のように、洗浄液の流れとトウ又はフィラメント束の流れは各洗浄ユニット内において並流であり、一方、紡糸ラインに存在する一連の異なる洗浄ユニットを考慮すると、全体構成は全体的な洗浄プロセスの効率化を可能とする配置である向流である。
【0052】
本発明に係る装置の構成は以下の利点に特徴付けられる。
【0053】
1.これにより、ローラーのシール部を介したオーバーフロー及び漏出を避けるために、調整可能な排水管(11)に作用することで、槽(6)の第二端又は出口近傍の洗浄液のレベル上昇を相殺することができる。
【0054】
2.これにより、トウ(7)に伴う洗浄液の液跡が、逆流を起こすことなく出口において排水管(11)に向かって移動することができ、洗浄液のレベルの低下につながる。
【0055】
3.これにより、ローラー自体の浸漬量が少なくしぶきの発生する角度がより水平になるため、ローラー(2’)から放出される洗浄液のしぶきの量が低減される。
【0056】
洗浄及び延伸の段階で存在するトウ又はフィラメント束は、その後脱塩水の噴流ですすがれ、加圧ローラーで圧縮される。
【実施例0057】
本発明の非限定的な実施例により、本発明のプロセスのいくつかの実施形態例及びいくつかの比較例が以下に提供される。
【0058】
〔例1〕
100kg/hのアクリロニトリル、1kg/hのアクリル酸メチル、5重量%の水に溶解した2kg/hのイタコン酸;水に溶解した0.4kg/hの過硫酸アンモニウム、水に溶解した0.5kg/hの重亜硫酸アンモニウム、水に溶解した2g/hの硫酸鉄、及び、反応pHを2.0~3.5の範囲の値に維持するのに十分な硫酸を含む250kg/hの水を、62℃の温度で、撹拌機と排水管を備えるアルミニウム反応器に連続的に添加した。これらの成分は90分の滞留時間が可能となる流速で供給した。90分後に排水管にEDTA水溶液を添加して反応を停止し、スラリーを、未反応のアクリロニトリル及びアクリル酸メチルが除去される除去カラムに供給し、水中の底にポリマースラリーを得た。ポリマーを濾過、洗浄、乾燥し、その後DMACに溶解した。得られた20重量%のポリマーを含む溶液を、40μmから5μmまで徐々に変化させた選択性布(selectivity cloths)を備える一連の濾過プレスで濾過し、キャピラリー径250ミクロンの12,000孔の紡糸口金を有する湿式紡糸ラインに供給した。
【0059】
50cc/回転(すなわち、ポンプは回転毎に50ccを投入する)の紡糸ポンプを用いて、80℃の温度に維持された紡糸溶液を凝固浴に浸漬させた紡糸口金に供給した。凝固浴は20℃の温度で82重量%のDMACを含む水とDMACの混合物からなるものである。生成直後の繊維の束を、引き続き、40℃の温度で32重量%のDMACを含む水とDMACの混合物からなる後凝固浴に移した。
【0060】
第1の回収ローラーの速度は26.42m/分であり、これはドラフト比(jet stretch)8.9に相当する。
【0061】
繊維の束をその後一連の洗浄及び延伸工程に供給した。3工程に分けられる全延伸(total stretching)は、10.06×であり、すなわち初期長が10.06倍増加した。洗浄操作は
図2に示されるように槽を用いて行った。
このように生産されたトウを最終的に250.7m/分でボビン上に回収した。
紡糸プロセスの最後には、炭素繊維の生産に適する以下の特性を有する12Kの前駆体ボビンが得られた。
・タイター:1.1dtex;
・破壊強度:68.1cN/tex;
・最終伸度:15.2%
【0062】
〔例2〕
例1に記載のように調製されたDMAC中の紡糸溶液を、キャピラリー径300ミクロンの24,000孔の紡糸口金を有する湿式紡糸ラインに供給した。
【0063】
100cc/回転の紡糸ポンプを用いて、80℃の温度に維持された紡糸溶液を凝固浴に浸漬させた紡糸口金に供給した。凝固浴は20℃の温度で82重量%のDMACを含む水とDMACの混合物からなるものである。生成直後の繊維の束を、引き続き、40℃で33重量%のDMACを含む水とDMACの混合物からなる後凝固浴に移した。
【0064】
凝固浴の後の第1の回収ローラーの速度は31.6m/分であり、これはドラフト比(jet stretch)12.8に相当する。
【0065】
繊維の束をその後一連の洗浄及び延伸工程に供給した。3工程に分けられる全延伸(total stretching)は、10.06×であった。洗浄操作は
図2に示されるように槽を用いて行った。
このように生産されたトウを最終的に300.1m/分でボビン上に回収した。
紡糸プロセスの最後には、炭素繊維の生産に適する以下の特性を有する24Kの前駆体ボビンが得られた。
・タイター:1.1dtex;
・破壊強度:66.8cN/tex;
・最終伸度:14.9%
【0066】
〔例3〕
溶媒としてDMACの代わりにDMSOを用い、溶液中のポリマー濃度を19重量%として、例1に記載のように調製した紡糸溶液を、キャピラリー径250ミクロンの12,000孔の紡糸口金を有する湿式紡糸ラインに供給した。
【0067】
50cc/回転の紡糸ポンプを用いて、80℃の温度に維持された紡糸溶液を凝固浴に浸漬させた紡糸口金に供給した。凝固浴は5℃の温度で81重量%のDMSOを含む水とDMSOの混合物からなるものである。生成直後の繊維の束を、引き続き、35℃で31重量%のDMSOを含む水とDMSOの混合物からなる後凝固浴に移した。
【0068】
凝固浴の後の第1の回収ローラーの速度は31.7m/分であり、これはドラフト比(jet stretch)8.6に相当する。
【0069】
繊維の束をその後一連の洗浄及び延伸工程に供給した。3工程に分けられる全延伸(total stretching)は、10.06×であった。洗浄操作は
図2に示されるように槽を用いて行った。
このように生産されたトウを最終的に300.8m/分でボビン上に回収した。
紡糸プロセスの最後には、炭素繊維の生産に適する以下の特性を有する12Kの前駆体ボビンが得られた。
・タイター:1.25dtex;
・破壊強度:70.1cN/tex;
・最終伸度:14.2%
【0070】
〔例4〕
溶媒としてDMACの代わりにDMSOを用い、溶液中のポリマー濃度を19重量%として、例1に記載のように調製した紡糸溶液を、キャピラリー径300ミクロンの24,000孔の紡糸口金を有する湿式紡糸ラインに供給した。
【0071】
100cc/回転の紡糸ポンプを用いて、80℃の温度に維持された紡糸溶液を凝固浴に浸漬させた紡糸口金に供給した。凝固浴は5℃の温度で81重量%のDMSOを含む水とDMSOの混合物からなるものである。生成直後の繊維の束を、引き続き、35℃で32重量%のDMSOを含む水とDMSOの混合物からなる後凝固浴に通した。
【0072】
凝固浴の後の第1の回収ローラーの速度は31.6m/分であり、これはドラフト比(jet stretch)12.5に相当する。
【0073】
繊維の束をその後一連の洗浄及び延伸工程に供給した。3工程に分けられる全延伸(total stretching)は、10.06×であった。洗浄操作は
図2に示されるように槽を用いて行った。
このように生産されたトウを最終的に300.2m/分でボビン上に回収した。
紡糸プロセスの最後には、炭素繊維の生産に適する以下の特性を有する24Kの前駆体ボビンが得られた。
・タイター:1.24dtex;
・破壊強度:71.2cN/tex;
・最終伸度:14.0%
【0074】
〔例5〕比較例
50cc/回転の紡糸ポンプを用いて、80℃の温度に維持された、例3に記載のように調製された紡糸溶液を、凝固浴に浸漬させたキャピラリー径250ミクロンの紡糸口金に供給した。凝固浴は5℃で75重量%のDMSOを含む水とDMSOの混合物からなるものである。生成直後の繊維の束を、引き続き、35℃で32重量%のDMSOを含む水とDMSOの混合物からなる後凝固浴に通した。
【0075】
凝固浴の後の第1の回収ローラーの速度は31.6m/分であり、これはドラフト比(jet stretching)8.5に相当する。これらの条件では、凝固浴中の生成直後の繊維の束が頻繁に切断されてしまい紡糸ができなかった。
【0076】
〔例6〕比較例
50cc/回転の紡糸ポンプを用いて、80℃の温度に維持された、例3に記載のように調製された紡糸溶液を、凝固浴に浸漬させたキャピラリー径250ミクロンの紡糸口金に供給した。凝固浴は20℃の温度で86重量%のDMSOを含む水とDMSOとの混合物からなるものである。これらの条件では、生成直後の繊維が紡糸口金から吐出された直後に凝固浴中で溶解してしまい、線維の束を回収することができなかった。
【0077】
凝固浴の後の第1の回収ローラーの速度は31.6m/分であり、これはドラフト比(jet stretch)8.5に相当する。これらの条件では、凝固浴中の生成直後の繊維の束が頻繁に切断されてしまい紡糸ができなかった。
【0078】
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
[1]前駆体繊維を生産するための、有機溶媒中、好ましくはDMAC又はDMSO中の、アクリルコポリマーの均一溶液の紡糸プロセスであって、
前記プロセスは、150~400m/分の紡糸速度での湿式紡糸工程を含み、ここで、
有機溶媒中又はドープ中の前記アクリルコポリマーの均一溶液は、孔径が150~300ミクロンの範囲の1又は複数の紡糸口金に供給され、
前記紡糸口金は、5~40℃の範囲の温度で、混合物の総重量に対して有機溶媒の濃度が78~85重量%、好ましくは78~84重量%の範囲である有機溶媒と非溶媒溶媒との混合物からなる凝固浴に浸漬されており;
前記1又は複数の紡糸口金の吐出口における前記ドープは前記凝固浴に接触し、凝固してトウ又はフィラメント束を形成し、前記紡糸口金から前記凝固浴への前記ドープの出口速度と凝固後の回収速度との間の比であるドラフト比(jet stretch)は5~15の範囲であり;
前記トウ又はフィラメント束はその後一連の洗浄又は洗浄及び延伸工程に供給され、ここで各洗浄又は洗浄及び延伸工程は、洗浄液の移動方向が前記トウ又はフィラメント束の移動方向と一致する並流で行われ、前記各洗浄又は洗浄及び延伸工程における洗浄液の供給及び排出は前記トウ又はフィラメント束の移動方向に対して向流で行われる、
紡糸プロセス。
[2]前記凝固浴の前記非溶媒溶媒が水である、[1]に記載のプロセス。
[3]前記洗浄液が水である、[1]又は[2]に記載のプロセス。
[4]前記アクリルコポリマーの均一溶液の前記有機溶媒が、前記凝固浴で使用される有機溶媒と同じであり、前記有機溶媒は好ましくはジメチルアセトアミド(DMAC)又はジメチルスルホキシド(DMSO)である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のプロセス。
[5]前記凝固浴が水/ジメチルアセトアミド混合物又は水/ジメチルスルホキシド混合物からなる、[1]~[4]のいずれか1項に記載のプロセス。
[6]前記凝固浴が水/ジメチルスルホキシド混合物からなり、前記凝固浴の温度が5~15℃の範囲である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のプロセス。
[7]前記アクリルポリマーが、アクリロニトリルと、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリル酸、イタコン酸、又はスルホン化スチレンを含む群より選択される1又は複数のコモノマーと、のコポリマーであり、
前記ポリマーの総重量に対して、前記アクリロニトリルは90~99重量%の範囲の量で存在し、前記コモノマーは1~10重量%の範囲の量で存在する、[1]~[6]のいずれか1項に記載のプロセス。
[8]少なくとも1つの洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを含むことを特徴とする湿式紡糸装置であって、前記ユニットUは、
洗浄液(8)を格納するのに適した洗浄槽(6)であって、ここで、前記液(8)は、第1の温度T1で前記槽(6)の第一端で供給されるのに適し、前記液(8)は、第2の温度T2で前記槽(6)の第二端で排出されるのに適し、前記温度T1は前記温度T2より高い、前記洗浄槽(6);及び
前記槽(6)の前記第一端から前記第二端にトウ又はフィラメント束(7)を移動させるのに適した機械的手段、好ましくは、ローラー(5、2’)、
を含み、
前記洗浄槽(6)において、前記洗浄液(8)の移動方向は前記トウ又はフィラメント束(7)の移動方向に対して並流である、湿式紡糸装置。
[9]前記洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUが、
前記第2の温度T2で前記洗浄槽(6)の前記第二端で排出されるのに適した前記液(8)が、排水管(11)及びフィルター(12)を通して補助リサイクル槽(9)に供給され、ここで前記液(8)の第一の部分がポンプ(13)で熱交換器(14)を備える補助加熱槽(10)に供給され、前記補助加熱槽(10)は前記洗浄液(8)を前記第1の温度T1で前記洗浄槽(6)の前記第一端に供給するのに適する、
ことを特徴とする、[8]に記載の装置。
[10]前記装置が、順に配置され互いに流体連結した2以上の洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUを備える、[8]又は[9]に記載の装置。
[11]各洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの前記補助リサイクル槽(9)は、前記洗浄槽(6)の前記トウ又はフィラメント束(7)の移動に対して下流側に配置された洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの補助リサイクル槽(9’)からの前記洗浄液(8)の残りの部分が供給されることに適しており、
前記補助リサイクル槽(9)はまた、前記第2の温度T2で前記洗浄槽(6)の前記第二端で抜き取られた洗浄液(8)の残りの部分を、前記洗浄槽(6)の前記トウ又はフィラメント束(7)の移動に対して上流側に配置された洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの補助リサイクル槽に供給するのに適している、[10]に記載の装置。
[12]前記洗浄液の供給は、前記洗浄又は洗浄及び延伸ユニットUの連続配置に対し、前記トウ又はフィラメント束の移動方向に対して向流で行われる、[10]に記載の装置。