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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076815
(43)【公開日】2023-06-02
(54)【発明の名称】蛍光顕微鏡システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022186269
(22)【出願日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】21209766
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カイ リッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ダイスラー
(72)【発明者】
【氏名】デニス イェーネルト
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043GB21
2G043HA01
2G043HA02
2G043JA02
2G043LA03
2G043NA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少なくとも2つのそれぞれ異なる蛍光体を含む試料を撮像する蛍光顕微鏡システムおよび方法において、高品質の像を取得できるようにする。
【解決手段】蛍光体を励起するための照射光を放出するように構成された照射システム104と、励起された蛍光体により放出された蛍光に基づき、試料102の像を生成するように構成された光学検出システム112と、を含む。さらに、試料を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを、蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、かつ光学検出システムの少なくとも1つのパラメータおよび/または照射システムの少なくとも1つのパラメータに基づき、決定するように構成された制御ユニット124を含む。同時撮像モードでは、蛍光体が同時に撮像される。逐次撮像モードでは、蛍光体が第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けられ、これらの蛍光体とが相前後して撮像される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのそれぞれ異なる蛍光体を含む試料(102)を撮像する蛍光顕微鏡システム(100)であって、前記蛍光顕微鏡システム(100)は、
前記蛍光体を励起するための照射光を放出するように構成された照射システム(104)と、
励起された前記蛍光体により放出された蛍光に基づき前記試料(102)の像を生成するように構成された光学検出システム(112)と、
前記試料(102)を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを、それぞれ異なる前記蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、かつ前記光学検出システム(112)の少なくとも1つのパラメータおよび/または前記照射システム(104)の少なくとも1つのパラメータに基づき、決定するように構成された制御ユニット(124)と、
を含み、
前記同時撮像モードでは、それぞれ異なる前記蛍光体が同時に撮像され、
前記逐次撮像モードでは、それぞれ異なる前記蛍光体が第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けられて、前記第1のグループの前記蛍光体と前記第2のグループの前記蛍光体とが相前後して撮像される、
蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項2】
前記制御ユニット(124)は、それぞれ異なる前記蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、前記それぞれ異なる蛍光体を前記第1のグループと少なくとも1つの前記第2のグループとに分けるように構成されている、
請求項1記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項3】
前記制御ユニット(124)は、各グループ内のそれぞれ異なる前記蛍光体の発光スペクトルが最小のオーバーラップを有するように、それぞれ異なる前記蛍光体を前記第1のグループと少なくとも1つの前記第2のグループとに分けるように構成されている、
請求項2記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項4】
前記制御ユニット(124)は、
前記照射システム(104)の少なくとも1つの光源(106)の出力の最小値および/または最大値を、それぞれ異なる前記蛍光体の各々の少なくとも1つの特性および/または前記試料(102)の少なくとも1つの特性に基づき決定し、
前記光源(106)の出力の動作範囲を前記最小値および/または前記最大値と比較することによって、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定する、
ように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項5】
前記制御ユニット(124)は、それぞれ異なる前記蛍光体の励起スペクトルに基づき、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項6】
前記制御ユニット(124)は、前記照射システム(104)により放出された励起光のスペクトルに基づき、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項7】
前記制御ユニット(124)は、それぞれ異なる前記蛍光体の励起スペクトルを前記照射システム(104)により放出された励起光のスペクトルと比較することによって、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項8】
前記制御ユニット(124)は、それぞれ異なる前記蛍光体の発光スペクトルに基づき、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項9】
前記制御ユニット(124)は、それぞれ異なる前記蛍光体の発光スペクトルのオーバーラップを前記光学検出システム(112)の検出スペクトルと比較することによって、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項10】
前記制御ユニット(124)は、それぞれ異なる前記蛍光体のうち少なくとも2つの蛍光体の輝度値を比較することによって、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項11】
前記制御ユニット(124)は、前記光学検出システム(112)の少なくとも1つの検出器のダイナミックレンジに基づき、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項12】
前記逐次撮像モードでは、前記照射システム(104)は、前記第1のグループの前記蛍光体を励起するための第1の照射光と、前記第2のグループの前記蛍光体を励起するための少なくとも1つの第2の照射光と、を相前後して放出し、
前記同時撮像モードでは、前記照射システム(104)は、それぞれ異なる前記蛍光体を同時に励起するための第3の照射光を放出する、
請求項1から11までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項13】
前記制御ユニット(124)は、前記試料(102)の少なくとも1つの特性に基づき、前記試料(102)を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項14】
前記制御ユニット(124)は、それぞれ異なる前記蛍光体の各々の少なくとも1つの特性および/または前記試料(102)の少なくとも1つの特性に基づき、前記光学検出システム(112)の少なくとも1つのパラメータおよび/または前記照射システム(104)の少なくとも1つのパラメータを設定するように構成されている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項15】
前記制御ユニット(124)は、前記試料(102)を前記逐次撮像モードで撮像すべきであることを前記制御ユニット(124)が決定したならば、ユーザにフィードバックを与えるように構成されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の蛍光顕微鏡システム(100)。
【請求項16】
蛍光顕微鏡システム(100)を用いて、少なくとも2つのそれぞれ異なる蛍光体を含む試料(102)を撮像する方法であって、前記方法は、
前記試料(102)を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを、それぞれ異なる前記蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、かつ前記蛍光顕微鏡システム(100)の光学検出システム(112)の少なくとも1つのパラメータおよび/または前記蛍光顕微鏡システム(100)の照射システム(104)の少なくとも1つのパラメータに基づき、決定するステップと、
前記試料(102)を前記同時撮像モードで撮像すべきであることが決定されたならば、それぞれ異なる前記蛍光体を同時に撮像するステップと、
前記試料(102)を前記逐次撮像モードで撮像すべきであることが決定されたならば、それぞれ異なる前記蛍光体を第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けて、前記第1のグループの前記蛍光体と前記第2のグループの前記蛍光体とを相前後して撮像するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を撮像する蛍光顕微鏡システムに関する。本発明はさらに、蛍光顕微鏡システムを用いて少なくとも2つのそれぞれ異なる蛍光体を含む試料を撮像する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの試料が2つ以上の蛍光体によって調製される場合には、蛍光体の各々が個別に記録されることが多い。それぞれ異なる蛍光体を撮像するためには、フィルタの交換、光源の変更または切り替えが必要とされる場合があるため、それぞれ異なる像の取得の合間にかなりの時間が経過する。しかしながら、これは多くの用途において望ましいことではない。そのため、複数の励起光源および検出器を用いることで、2つ以上の蛍光体を同時に励起および検出できる公知の顕微鏡システムが存在している。ただし、蛍光体同士の交差励起、そして中でも高い強度の照射に起因する退色といった非線形作用によって、像品質に深刻な影響が及ぼされるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の課題は、少なくとも2つのそれぞれ異なる蛍光体を含む試料を撮像する蛍光顕微鏡システムおよび方法において、高品質の像を取得できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の課題は、独立請求項の保護対象によって達成される。従属請求項および以下の説明には、有利な実施形態が明示されている。
【0005】
少なくとも2つのそれぞれ異なる蛍光体を含む試料を撮像する提案された蛍光顕微鏡システムは、蛍光体を励起するための照射光を放出するように構成された照射システムと、励起された蛍光体により放出された蛍光に基づき試料の像を生成するように構成された光学検出システムと、を含む。この蛍光顕微鏡システムはさらに、試料を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを、それぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、かつ光学検出システムの少なくとも1つのパラメータおよび/または照射システムの少なくとも1つのパラメータに基づき、決定するように構成された制御ユニットを含む。同時撮像モードでは、それぞれ異なる蛍光体が同時に撮像される。逐次撮像モードでは、それぞれ異なる蛍光体が第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けられ、これら第1のグループの蛍光体と第2のグループの蛍光体とが相前後して撮像される。
【0006】
それぞれ異なる蛍光体の各々の特性を、特に以下のうちの1つとすることができる。すなわち、試料内部の蛍光体の励起スペクトル、発光スペクトル、輝度および濃度。光学検出システムのパラメータを、特に以下のうちの1つとすることができる。すなわち、倍率、開口数、検出器利得、検出器露光時間、スキャン速度、ピンホールサイズ、検出器平均量、検出器指向性、検出スペクトル、検出フィルタ設定および撮像モダリティ、例えば共焦点撮像または広視野撮像など。照射システムのパラメータを、特に以下のうちの1つとすることができる。すなわち、光源出力、光源スペクトルおよび励起フィルタ設定。
【0007】
制御ユニットは、試料を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを決定する目的で、これらのパラメータのうち任意の個数のパラメータを考慮することによって、試料の撮像に際して蛍光顕微鏡システムのユーザを支援する。特に制御ユニットは、例えば交差励起、過剰励起および発光スペクトルのオーバーラップなど、蛍光体を同時に励起して撮像する際に生じるエラーの一般的な原因についてチェックする。制御ユニットは、取得された像データを、例えばスペクトル分離によって、自動的に処理できるようにする撮像モードが選択される、ということも保証する。さらに、試料の調製および染色、蛍光体の曝露時間、または試料における特定のタンパク質の発現さえもが全て、蛍光体の挙動に作用を及ぼす。したがって、撮像モードを、顕微鏡システムの特定の試料および目下の撮像パラメータに適応化することによって、ユーザの側で特別なノウハウを必要とすることなく、高品質の像を取得することができる。
【0008】
1つの好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、それぞれ異なる蛍光体を第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けるように構成されている。この実施形態によれば、それぞれ異なる蛍光体はそれぞれ異なるグループに分けられる。それぞれ異なるグループ内の蛍光体は同時に励起されるのに対し、それぞれ異なるグループは相前後して励起される。少なくとも1つの特性に基づき蛍光体を分けることで、この実施形態によれば、像品質に悪影響を及ぼす望ましくない作用、例えば交差励起および過剰励起、が阻止される。例えば、蛍光体の励起および発光スペクトルに基づき、それらの蛍光体をグルーピングすることによって、望ましくない交差励起が阻止される。同様に、蛍光体がそれらの輝度によってグルーピングされているならば、輝度があまり高くない蛍光体が打ち消されてしまうのを阻止することができる。この実施形態によれば、できるかぎり多くの蛍光体が一緒に撮像されて、高い像品質を保証しながら像取得期間が短縮される。
【0009】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、各グループ内のそれぞれ異なる蛍光体の発光スペクトルが最小のオーバーラップを有するように、それぞれ異なる蛍光体を第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けるように構成されている。この実施形態によれば、各グループ内のそれぞれ異なる蛍光体を、スペクトル分離によって容易に分離することができる。これにより、それぞれ異なる蛍光体間のクロストークが最小化される。このようにして、試料を高いスペクトル品質で撮像することができる。
【0010】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、照射システムの少なくとも1つの光源の出力の最小値および/または最大値を、それぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性および/または試料の少なくとも1つの特性に基づき決定し、光源の出力の動作範囲をこれらの最小値および/または最大値と比較することによって、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。最小値を、例えばそれぞれ異なる蛍光体を励起するために必要とされる最小出力から、決定することができる。最大値を、それぞれ異なる蛍光体のうち1つまたは複数の蛍光体を退色させるのに必要とされる出力に基づき、決定することができる。
【0011】
例えば試料は、それぞれ異なる光源によって励起可能な2つの蛍光体AおよびBを含む。染色におけるエラーに起因して、蛍光体Aは極めて弱くしか染色されておらず、励起のために多くのエネルギーを必要とするのに対し、蛍光体Bは極めて強く染色されており、励起に対し極めて良好に応答する。ユーザは共焦点撮像を選び、自動照射設定を使用する。自動照射設定は、複数の蛍光体の大きく異なるダイナミクスに起因して、1つの光源が最大に設定され、他の光源が最小に設定される結果となる。交差励起の結果、蛍光体AおよびBのいずれも最適には励起されず、制御ユニットは逐次撮像モードを提案することになる。
【0012】
この実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体を励起するが退色させないために必要とされる出力が、使用される1つまたは複数の光源の動作範囲内にあるのか否かを判定する。換言すれば、制御ユニットは、照射システムの少なくとも1つの光源のダイナミックレンジに基づき、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。
【0013】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体の励起スペクトルに基づき、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。例えば、それぞれ異なる蛍光体の励起スペクトルが大きくオーバーラップしているならば、それぞれ異なる蛍光体を同じ励起光によって励起することができ、したがって同時に励起することができる。それぞれ異なる蛍光体の励起スペクトルが著しく異なっているならば、2つ以上の光源が必要とされる場合がある。ただし、特に蛍光体の発光スペクトルが大きくオーバーラップしていても、多数の蛍光体の励起が望ましくない場合もある。これが望ましくない理由は、このようにしたならば、スペクトル分離の間に、またはフィルタ設定を使用して、それぞれ異なる蛍光体を分離するのが難しくなるからである。したがってこの実施形態の場合、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体のスペクトルを比較することによって、例えばオーバーラップの積分、ユークリッド距離またはスペクトル角を計算し、その結果を予め定められた閾値と比較することによって、強いオーバーラップが発生する可能性があるのかをチェックすることもできる。かくしてこの実施形態によれば、スペクトル分離が容易になり、そのため像品質がさらに高められる。
【0014】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、照射システムにより放出された励起光のスペクトルに基づき、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。励起光のスペクトルは、特に光源および/または励起フィルタ設定によって決定される。励起光のスペクトルにより、それぞれ異なる蛍光体のうちのいずれを励起することができるかが決定される。励起光のスペクトルと、特定の蛍光体の励起スペクトルと、の間に十分なオーバーラップがなければ、その特定の蛍光体を励起光によって励起することができない。したがって、蛍光体の各々について適正な励起光源および/または励起フィルタ設定を選択する必要がある。よって、同時に行われる像取得の合間に励起光源および/または励起フィルタ設定を変更する目的で、それぞれ異なる蛍光体のうちの一部を相前後して撮像することが必要とされる場合もある。
【0015】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体の励起スペクトルを照射システムにより放出された励起光のスペクトルと比較することによって、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。この実施形態の場合、制御ユニットは、1つまたは複数の光源が蛍光体のうちの1つまたは複数を「過剰励起」しているのかをチェックする。この「過剰励起」は、非線形作用および検出器飽和に起因して試料の退色を引き起こす可能性があるため、考慮しなければ、像品質を急速に劣化させてしまう可能性がある。
【0016】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体の発光スペクトルに基づき、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。一部の蛍光体の発光スペクトルにおいて大きなオーバーラップがあると、特にこれらの特定の蛍光体が互いに近くに配置されている場合に、それらの分離が難しくなってしまう。これらの特定の蛍光体を相前後して撮像することによって、蛍光体を明確に識別することができ、それによって像品質が高められる。
【0017】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体の発光スペクトルのオーバーラップを光学検出システムの検出スペクトルと比較することによって、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。検出スペクトルは特に、使用される検出器のタイプおよび/または検出フィルタ設定によって決定される。光学検出システムの検出スペクトル内で、それぞれ異なる蛍光体の2つ以上の発光スペクトルが大きくオーバーラップしていると、交差励起が発生する。このため、スペクトル分離を容易にし、像品質を高める目的で、それぞれ異なる蛍光体の一部を相前後して撮像することが必要とされる場合がある。
【0018】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体のうち少なくとも2つの蛍光体の輝度値を比較することによって、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。輝度値を例えば、蛍光体チャネルごとの最大値、蛍光体チャネルごとのパーセンタイルスコア、または蛍光体チャネルごとの平均値とすることができる。輝度があまり高くない蛍光体は、輝度がもっと高い蛍光体によって簡単に打ち消されてしまう可能性がある。この実施形態の場合、制御ユニットは、1つまたは複数の蛍光体の輝度が他の蛍光体よりも著しく低いかをチェックし、それに応じて撮像モードを決定する。
【0019】
特に制御ユニットは、光学検出システムによって測定された測定輝度値に基づき、輝度値を決定するように構成されている。換言すれば、この実施形態の場合、特定の蛍光体の輝度がin-situで決定される。一部の蛍光体の輝度は、試料調製および蛍光体濃度のようなファクタによって大きく変化する。よって、in-situでの輝度の決定は、予め定められた値を使用するよりも大幅に信頼性が高い。
【0020】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、光学検出システムの少なくとも1つの検出器のダイナミックレンジに基づき、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。ダイナミックレンジは、検出器のタイプによって、部分的には検出フィルタ設定によって決定される。したがってダイナミックレンジは、光学検出システムによりそれぞれ異なる蛍光体のうちいずれの蛍光体を、光学検出システムのいかなる検出器も飽和させることなく、全ての蛍光体が十分な信号輝度、信号対ノイズ比を有するように検出できるのか、を決定するものである。このため蛍光体の各々について、または蛍光体グループについて、適正な検出器および/または検出フィルタ設定を選択する必要がある。よって、同時に行われる像取得の合間に検出器および/または検出器フィルタ設定を変更する目的で、それぞれ異なる蛍光体のうちの一部を相前後して撮像することが必要とされる場合もある。
【0021】
別の好ましい実施形態によれば、逐次撮像モードでは照射システムは、第1のグループの蛍光体を励起するための第1の照射光と、第2のグループの蛍光体を励起するための少なくとも1つの第2の照射光と、を相前後して放出し、同時撮像モードでは照射システムは、それぞれ異なる蛍光体を同時に励起するための第3の照射光を放出する。この実施形態の場合、それぞれ異なる撮像モードは、それぞれ異なる照射によっても、すなわち照射波長または照射強度のそれぞれ異なる組み合わせによっても、特徴づけられる。逐次撮像モードでは、第1のグループの蛍光体と第2のグループの蛍光体とを励起するために、それぞれ異なる照射光が使用される。同時撮像モードでは、第1のグループの蛍光体と第2のグループの蛍光体とが同じ照射光によって励起される。
【0022】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、試料の少なくとも1つの特性に基づき、試料を逐次撮像モードで撮像するのか同時撮像モードで撮像するのかを決定するように構成されている。試料の特性を、特に以下のうちの1つとすることができる。すなわち、試料のタイプおよび試料内部の蛍光体の濃度。中でもこれらの特性は、蛍光体の挙動、特に輝度、励起スペクトルおよび発光スペクトルに作用を及ぼす。これらのファクタを考慮することにより、どの撮像モードを使用するかの決定をいっそう確実に行うことができる。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性および/または試料の少なくとも1つの特性に基づき、光学検出システムの少なくとも1つのパラメータおよび/または照射システムの少なくとも1つのパラメータを設定するように構成されている。この実施形態の場合、制御ユニットは、可能であるならばそれぞれ異なる蛍光体を同時に撮像できるように、パラメータの設定に際してユーザを支援するように構成されている。これが可能でなければ、制御ユニットは、それぞれ異なる蛍光体をできるかぎり僅かに相前後する取得で撮像できるように、パラメータを設定することになる。ユーザを支援することによって、顕微鏡システムは、必ずしも熟練ユーザでなくても高い像品質を保証する。
【0024】
別の好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、例えばユーザによって入力された撮像設定、例えば輝度または信号対ノイズ比の目標値、に基づき、試料を逐次撮像モードで撮像すべきであることをこの制御ユニットが決定したならば、ユーザにフィードバックを与えるように構成されている。この実施形態の場合、撮像設定すなわち光学検出システムのパラメータおよび/または照射システムのパラメータでは、試料を同時撮像モードで撮像すべきではない、ということがユーザに通知される。その後、ユーザは、同時撮像モードで撮像を続けるか、逐次撮像モードでの撮像に切り替えるか、または撮像設定を変更することができる。
【0025】
本発明はさらに、蛍光顕微鏡システムを用いて少なくとも2つのそれぞれ異なる蛍光体を含む試料を撮像する方法に関し、この方法は以下のステップを含む。すなわち、試料を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを、それぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、かつ蛍光顕微鏡システムの光学検出システムの少なくとも1つのパラメータおよび/または蛍光顕微鏡システムの照射システムの少なくとも1つのパラメータに基づき、決定するステップ。試料を同時撮像モードで撮像すべきであることが決定されたならば、それぞれ異なる蛍光体を同時に撮像するステップ。試料を逐次撮像モードで撮像すべきであることが決定されたならば、それぞれ異なる蛍光体を第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けて、第1のグループの蛍光体と第2のグループの蛍光体とを相前後して撮像するステップ。
【0026】
この方法は、蛍光顕微鏡システムと同じ利点を有しており、試料担体および撮像システムに関する従属請求項の特徴を用いて補うことができる。
【0027】
以下では、図面を参照しながら特定の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】1つの実施形態による、試料を撮像する蛍光顕微鏡システムの概略図である。
図2図1による蛍光顕微鏡システムを用いて、試料を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを決定する方法のフローチャートである。
図3】上述の方法の第1のサブプロセスのフローチャートである。
図4】上述の方法の第2のサブプロセスのフローチャートである。
図5】上述の方法の第3のサブプロセスのフローチャートである。
図6】それぞれ異なる蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、1つの実施形態による、試料102を撮像する蛍光顕微鏡システム100の概略図である。
【0030】
蛍光顕微鏡システム100の照射システム104は、試料102の内部に配置されたそれぞれ異なる蛍光体を励起するために、それぞれ異なる励起光を生成するように構成されている。本実施形態による照射システム104は、白色光源106と、第1の交換式フィルタユニット108と、を含む。白色光源106は、第1の交換式フィルタユニット108に向けて照射ビーム路110へと白色光を放出する。第1の交換式フィルタユニット108は、それぞれ異なる励起光を生成する目的で、単一の波長または所定の波長範囲を除き、白色光の全ての波長を阻止する2つ以上のフィルタを含む。それらのフィルタのうち一度に1つのフィルタが、第1の交換式フィルタユニット108によって照射ビーム路110へと動かされ、これによって特定の励起光が生成され、この励起光はさらに照射ビーム路110に沿って案内される。励起フィルタ設定によって、いずれのフィルタが目下、照射ビーム路110へと動かされるのか、つまりいずれの特定の励起光が生成されるのか、が規定される。
【0031】
択一的な実施形態によれば、照射システム104は、2つ以上のそれぞれ異なる光源を含むことができる。それぞれ異なる光源各々は、特定の励起光を生成し、この特定の励起光を照射ビーム路110へと案内するように構成されている。この択一的な実施形態の場合には、第1の交換式フィルタユニット108を省略することができる。
【0032】
蛍光顕微鏡システム100の光学検出システム112は、励起された蛍光体により放出された蛍光に基づき、試料102の像を生成するように構成されている。本実施形態による光学検出システム112は、試料102に向けられた対物レンズ114と、第2の交換式フィルタユニット116と、検出器素子118と、を含む。対物レンズ114は、励起された蛍光体により放出された蛍光を受光し、その蛍光を検出ビーム路120へと案内する。第2の交換式フィルタユニット116は、それぞれ異なる検出光を生成する目的で、単一の波長または所定の波長範囲を除き、蛍光の全ての波長を阻止する2つ以上のフィルタを含む。それらのフィルタのうち一度に1つのフィルタが、第2の交換式フィルタユニット116によって検出ビーム路120へと動かされ、これによって特定の検出光が生成され、この検出光はさらに検出ビーム路120に沿って、検出器素子118に向けて案内される。検出フィルタ設定によって、いずれのフィルタが目下、検出ビーム路120へと動かされるのかが規定される。蛍光の不所望な波長を阻止することによって、単一の蛍光体または蛍光体グループによって放出された蛍光だけが検出器素子118によって検出される、ということを保証することができる。
【0033】
択一的な実施形態によれば、光学検出システム112は、2つ以上のそれぞれ異なる検出器素子を含むことができる。検出器素子各々は、単一の蛍光体または蛍光体グループによって放出された蛍光を検出する目的で、単一の波長または波長範囲に対し感応性である。この択一的な実施形態によれば、第2の交換式フィルタユニット116を省略することができ、かつ/または各々がそれぞれ異なる検出器素子の前に位置するそれぞれ異なるフィルタによって置き換えることができる。
【0034】
本実施形態によれば、照射ビーム路110と検出ビーム路120との交差点にビームスプリッタ122が配置されており、本実施形態によればこれらのビーム路は互いに垂直である。ビームスプリッタ122は、励起光が対物レンズ114を介して試料102に案内されるように構成されている。ビームスプリッタ122はさらに、対物レンズ114によって受光された蛍光が第2の交換式フィルタユニット116に向けて案内されるように構成されている。
【0035】
蛍光顕微鏡システム100はさらに、制御ユニット124と、入力ユニット126と、出力ユニット128と、を含む。制御ユニット124は、照射システム104、光学検出システム112、入力ユニット126および出力ユニット128に接続されている。制御ユニット124は、例えば入力ユニット126を介したユーザ入力に基づき、照射システム104および光学検出システム112のパラメータを設定するように構成されている。制御ユニット124は、出力ユニット128を介して、励起された蛍光体により放出された蛍光に基づき生成された試料102の1つまたは複数の像を出力するようにも構成されている。制御ユニット124はさらに、試料102が同時撮像でいっそう良好に撮像されるのか逐次撮像モードでいっそう良好に撮像されるのかを決定し、出力ユニット128を介してその決定結果を出力するように構成されている。同時撮像モードでは、それぞれ異なる蛍光体が同時に撮像される。逐次撮像モードでは、それぞれ異なる蛍光体が第1のグループと少なくとも1つの第2のグループとに分けられ、これら第1のグループの蛍光体と第2のグループの蛍光体とが相前後して撮像される。試料102を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを決定する方法の例示的な実施形態について、図2図6を参照しながら以下で説明する。
【0036】
図2は、上述の蛍光顕微鏡システム100を用いて、試料102を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを決定する方法のフローチャートである。
【0037】
ステップS200においてプロセスがスタートする。ステップS202において、制御ユニット124は、決定の基礎となるパラメータセットを受信する。このパラメータセットは、試料102内部に配置されたそれぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性、試料102自体の少なくとも1つの特性、光学検出システム112の少なくとも1つのパラメータおよび/または照射システム104の少なくとも1つのパラメータを含むことができる。これらのパラメータを、ユーザが制御ユニット124に入力することができ、または制御ユニット124が、例えば照射システム104および/または光学検出システム112から受信することができる。
【0038】
ステップ204において、第1のサブプロセスが実行される。第1のサブプロセスにおいて、制御ユニット124は、照射システム104の少なくとも1つのパラメータに基づき、試料102を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを決定する。第1のサブプロセスについては、図3を参照しながら後でさらに詳しく説明する。
【0039】
ステップ206において、第2のサブプロセスが実行される。第2のサブプロセスにおいて、制御ユニット124は、光学検出システム112の少なくとも1つのパラメータに基づき、試料102を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを決定する。第2のサブプロセスについては、図4を参照しながら後でさらに詳しく説明する。
【0040】
ステップ208において、第3のサブプロセスが実行される。第3のサブプロセスにおいて、制御ユニット124は、それぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性に基づき、試料102を同時撮像モードで撮像するのか逐次撮像モードで撮像するのかを決定する。第3のサブプロセスについては、図5を参照しながら後でさらに詳しく説明する。
【0041】
ステップS204、S206およびS208を、任意の順序で、または同時に実行することができる。制御ユニット124が、ステップS204、S206またはS208のいずれかにおいて、試料102が逐次撮像モードで最良に撮像されると決定したならば、制御ユニット124は、ユーザに通知する目的で、ステップS210において出力ユニット128を介してこの結果を出力する。そうでなければ、制御ユニット124は、同時撮像モードで試料102を撮像できることを、出力ユニット128を介して出力し、かつ/またはステップ212において同時撮像モードで試料102の撮像を続ける。このプロセスは、ステップS214において終了する。
【0042】
図3は、上述の方法の第1のサブプロセスのフローチャートである。
【0043】
ステップ300において、第1のサブプロセスがスタートする。ステップ302において、制御ユニット124は、照射システム104の光源106の出力の最小値および最大値を、それぞれ異なる蛍光体の各々の少なくとも1つの特性および/または試料102の少なくとも1つの特性に基づき決定する。ステップ304において、制御ユニット124は、これらの最小値および最大値を光源106の動作範囲と比較する。最大値および最小値のいずれかが光源106の動作範囲外にあるならば、制御ユニット124は、逐次撮像モードで試料102を撮像すると決定する。換言すれば、どの撮像モードを使用するかの決定は、光源106のダイナミックレンジに基づく。蛍光顕微鏡システム100が2つ以上の光源106を含むならば、ステップ304は光源106ごとに繰り返される。
【0044】
ステップ306において、制御ユニット124は、照射システム104により目下放出されている励起光によって、それぞれ異なる蛍光体を全て励起できるのかを判定する。それぞれ異なる蛍光体を全て、同じ励起光によって励起できなければ、つまりそれぞれ異なる励起フィルタ設定または光源106を使用しなければならないのであれば、制御ユニット124は、試料102を逐次撮像モードで撮像しなければならない、と決定する。
【0045】
ステップ302、304および306を、任意の順序で、または同時に実行することができる。第1のサブプロセスは、ステップS308において終了する。
【0046】
図4は、上述の方法の第2のサブプロセスのフローチャートである。
【0047】
ステップ400において、第2のサブプロセスがスタートする。ステップ402において、制御ユニット124は、それぞれ異なる蛍光体の発光スペクトルに基づき、1つまたは複数の検出器素子118のダイナミックレンジのうちどのくらいが使用されるのかを決定する。使用されるダイナミックレンジが閾値を超えているならば、制御ユニット124は、逐次撮像モードで試料102を撮像しなければならない、と決定する。
【0048】
ステップ404において、制御ユニット124は、使用される1つまたは複数の励起光の波長スペクトルと、それぞれ異なる蛍光体の励起スペクトルと、に基づき、交差励起が発生するのかを判定する。著しい交差励起が発生するならば、制御ユニット124は、逐次撮像モードで試料102を撮像しなければならない、と決定する。
【0049】
2つ以上の光源が使用されるならば、制御ユニット124は、ステップ406において、使用される光源がそれぞれ異なる蛍光体のうちの1つまたは複数を過剰に励起するのかを判定する。過剰励起が発生するならば、制御ユニット124は、逐次撮像モードで試料102を撮像しなければならない、と決定する。
【0050】
ステップ402、404および406を、任意の順序で、または同時に実行することができる。第2のサブプロセスは、ステップS408において終了する。
【0051】
図5は、上述の方法の第3のサブプロセスのフローチャートである。
【0052】
ステップ500において、第3のサブプロセスがスタートする。ステップ502において、制御ユニット124は、使用される検出器素子118の検出スペクトル内で、それぞれ異なる蛍光体のうち2つ以上の蛍光体の発光スペクトルがオーバーラップしているのかを判定する。検出スペクトル内で大きなオーバーラップが発生しており、かつ蛍光体が別々に励起される可能性があるならば、制御ユニット124は、逐次撮像モードで試料102を撮像しなければならない、と決定する。ステップ502については、図6を参照しながら後でさらに詳しく説明する。
【0053】
ステップ504において、制御ユニット124は、それぞれ異なる蛍光体の各々について輝度ヒストグラムを求める。その後、制御ユニット124は輝度ヒストグラムを比較し、それぞれ異なる蛍光体のうち2つ以上の蛍光体について輝度の差が閾値を超えているならば、制御ユニット124は、逐次撮像モードで試料102を撮像しなければならない、と決定する。
【0054】
ステップ502および504を、任意の順序で、または同時に実行することができる。第3のサブプロセスは、ステップS506において終了する。
【0055】
図6は、それぞれ異なる蛍光体の発光スペクトルを示すグラフ600である。
【0056】
グラフ600の横座標602(グラフには示されていない)は、波長をnm単位で表している。グラフ600の縦座標604(グラフには示されていない)は、相対強度をパーセントで表している。3つの異なる例示的な蛍光体の発光スペクトル606、608、610が実線で示されている。3つの例示的な検出器の3つの検出波長範囲612、614、616が、塗りつぶされた矩形によって示されている。図6から見て取れるように、第1の蛍光体の発光最大値618は、第1の検出器の検出波長範囲612内にあり、第2の蛍光体の発光最大値620は、第2の検出器の検出波長範囲614内にあり、第3の蛍光体の発光最大値622は、第3の検出器の検出波長範囲616内にある。しかしながら、第3の検出器の検出波長範囲616内において、第2の蛍光体の発光スペクトル608と第3の蛍光体の発光スペクトル610との間に大きなオーバーラップが生じている。特に、第2の蛍光体の信号が第3の蛍光体の信号よりも弱いと、例えばスペクトル分離によってさらに処理するのが難しい可能性がある。このケースであれば、制御ユニット124は、第1の蛍光体および第3の蛍光体を第1の像に撮像し、その後、第2の蛍光体を第2の像に撮像することにより、逐次撮像で試料102を撮像する、ということを決定することになる。この実施形態の場合、第1の蛍光体および第3の蛍光体は第1のグループに属しているのに対し、第2の蛍光体は第2のグループに属している。
【0057】
同一の要素または同様に作用する要素は、全ての図において同じ参照符号で示されている。本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0058】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【符号の説明】
【0059】
100 顕微鏡システム
102 試料
104 照射システム
106 光源
108 交換式フィルタユニット
110 照射ビーム路
112 光学検出システム
114 対物レンズ
116 第2の交換式フィルタユニット
118 検出器素子
120 検出ビーム路
122 ビームスプリッタ
124 制御ユニット
126 入力ユニット
128 出力ユニット
600 グラフ
602 横座標
604 縦座標
606、608、610 発光スペクトル
612、614、616 検出波長範囲
618,620、622 発光最大値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】