(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076854
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】ポリエチレンナフタレート樹脂組成物からなるブロー成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230529BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20230529BHJP
B29C 49/08 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L79/08 B
B29C49/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189830
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 良平
(72)【発明者】
【氏名】古木 雅嗣
【テーマコード(参考)】
4F208
4J002
【Fターム(参考)】
4F208AA26
4F208AA32
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR12
4F208LA04
4F208LA09
4F208LB01
4F208LG01
4J002CF081
4J002CM042
4J002FD070
4J002FD200
4J002GB00
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】透明性と耐熱性に優れ、かつ延伸過程でのネッキング現象が抑制された樹脂組成物からなるブロー成形体を提供する。
【解決手段】(A)ポリエチレンナフタレート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ポリエーテルイミド樹脂(B成分)を60~150重量部含有することを特徴とする樹脂組成物をブロー成形してなるブロー成形体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエチレンナフタレート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ポリエーテルイミド樹脂(B成分)を60~150重量部含有することを特徴とする樹脂組成物をブロー成形してなるブロー成形体。
【請求項2】
開口部となる口部、胴部および底部からなる容器形状であって、下記式(1)により算出される胴部の中間点における延伸倍率(A)が1.1~4であることを特徴とする請求項1に記載のブロー成形体。
A=T0/T1 (1)
(式(1)中、T0はプリフォーム胴部中央における厚み(mm)、T1はブロー成形後の容器胴部中央における厚み(mm)を表す。)
【請求項3】
医薬品貯蔵容器である請求項1または2に記載のブロー成形体。
【請求項4】
バイアル瓶である請求項1または2に記載のブロー成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性および耐熱性に優れ、かつ延伸過程におけるネッキング現象が抑制されたポリエチレンナフタレート樹脂組成物からなるブロー成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりポリエチレンナフタレート樹脂は機械特性、耐熱性、耐薬品性に優れ様々な用途に用いられている。またポリエチレンナフタレート樹脂はポリエチレンテレフタレート樹脂に比べ静置場での結晶化速度が遅いため、射出成形により容易に透明な成形品が得られる特徴があり、透明射出成形品用途に用いられている。また延伸することによりポリエチレンナフタレート樹脂が高度に配向結晶化するため、透明性を維持したまま機械強度や耐熱性が向上するため、消火器容器等の樹脂製耐圧容器にも用いられている。しかしながら、ポリエチレンナフタレート樹脂の配向結晶化は主鎖のナフタレン環の面配向を起点とし急速に成長するため、ネッキング現象と呼ばれる局所的なくびれが生じやすい傾向がある。このネッキング現象はブロー成形容器において容器肉厚のムラに直結するため肉厚ムラのない容器を成形することが難しく、容器全ての箇所でネッキング現象が完了するまで延伸倍率を大きくする必要があり、製品設計の面で制約が大きいという課題があった。また、延伸倍率を大きくしたことにより、容器に大きな残留ひずみが残るため、高温状態の内容物の充填や容器の加熱殺菌の工程で残留ひずみが緩和し容器が変形するという課題も生じていた。
【0003】
ポリエチレンナフタレート樹脂のネッキング現象の抑制に関しては、特許文献1にはポリエチレンナフタレート樹脂および特定構造を有する液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂組成物が例示されている。特許文献2にはポリエチレンナフタレート樹脂、特定構造を有する液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂および反応性官能基を有する化合物からなる樹脂組成物が例示されている。しかしながら、ネッキング現象による容器肉厚の改善はみられるものの、延伸倍率が大きな領域でのみの改善でありその改善効果は限定的であった。また、液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂とポリエチレンナフタレート樹脂は非相容であるため、透明性が著しく低下する問題もあった。特許文献3には、エチレンテレフタレート単位とエチレンナフタレート単位を含有する共重合ポリエステル樹脂およびポリエーテルイミド樹脂からなる樹脂組成物が開示されている。特許文献4には、ポリアルキレンナフタレート樹脂にポリエーテルイミド樹脂を添加することを特徴とするポリアルキレンナフタレート樹脂の蛍光防止方法が開示されている。また、特許文献5には、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリエーテルイミド樹脂のブレンド物からなる写真フィルムベースが例示されているが、いずれもネッキング現象抑制に関して検証なされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-222794号公報
【特許文献2】特開2018-188547号公報
【特許文献3】特開平7-228761号公報
【特許文献4】特開平10-101916号公報
【特許文献5】特開平9-179242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、透明性および耐熱性に優れ、かつ延伸過程でのネッキング現象が抑制された樹脂組成物からなるブロー成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成せんとして鋭意検討を重ねた結果、ポリエチレンナフタレート樹脂にポリエーテルイミド樹脂を特定量添加することにより、透明性と耐熱性に優れ、かつ延伸過程でのネッキング現象が抑制された樹脂組成物からなるブロー成形体を得られることを見出し、上記課題を解決するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、(A)ポリエチレンナフタレート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ポリエーテルイミド樹脂(B成分)を60~150重量部含有することを特徴とする樹脂組成物をブロー成形してなるブロー成形体により達成される。
【0008】
本発明によれば、透明性と耐熱性に優れ、かつ延伸過程でのネッキング現象が抑制された樹脂組成物からなるブロー成形体を提供することができ、本発明により得られたブロー成形体は、医薬品ボトルおよびバイアル瓶等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、更に本発明の詳細について説明する。
【0010】
<A成分について>
本発明のA成分であるポリエチレンナフタレート樹脂は、ナフタレンジカルボン酸および/またはナフタレンジカルボン酸のエステル形成誘導体を主とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするグリコール成分を用いて製造することができる。
【0011】
ナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸を主成分とするが、特性を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸を併用することができる。他のジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4′-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。他のジカルボン酸の使用量は全酸成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7-ナフタレンジカルボン酸ジメチルを主成分とするが、特性を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体を併用することができる。他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4′-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体の使用量は、全ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0012】
また、少量のトリメリット酸のような三官能性以上のカルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸のような酸無水物を少量用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル等を少量用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。
【0013】
グリコール成分としてはエチレングリコールを主成分とするが、特性を損なわない範囲で他のグリコール成分を併用することができる。他のグリコール成分としては、例えば、1、4ブタンジオール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリ(オキシ)テトラメチレングリコール、ポリ(オキシ)メチレングリコール等のアルキレングリコールの1種若しくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。さらに少量のグリセリンのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。他のグリコール成分の使用量は、全グリコール成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0014】
上記のポリエチレンナフタレート樹脂は、従来公知の製造方法によって製造することができる。すなわちジカルボン酸成分とジオール成分とを直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはジカルボン酸ジメチルエステルとジオール成分とを反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。更に極限粘度数を増大させるために固相重合を行うことができる。
【0015】
上記のエステル交換反応、エステル化反応および重縮合反応時には、触媒および安定剤を使用することが好ましい。エステル交換触媒としてはMg化合物、Mn化合物、Ca化合物、Zn化合物などが使用され、例えばこれらの酢酸塩、モノカルボン酸塩、アルコラート、および酸化物などが挙げられる。またエステル化反応は触媒を添加せずに、ジカルボン酸およびジオールのみで実施することが可能であるが、後述の重縮合触媒の存在下に実施することもできる。重縮合触媒としては、Ge化合物、Ti化合物、Sb化合物などが使用可能であり、例えば二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムアルコラート、チタンテトラブトキサイド、チタンテトライソプロポキサイド、および蓚酸チタンなどが挙げられる。安定剤としてはリン化合物を用いることが好ましい。好ましいリン化合物としては、リン酸およびそのエステル、亜リン酸およびそのエステル並びに次亜リン酸およびそのエステルなどが挙げられる。またエステル化反応時には、ジエチレングリコール副生を抑制するためにトリエチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウム、および炭酸ナトリウムなどの塩基性化合物を添加することもできる。また得られたポリエステル樹脂には、各種の安定剤および改質剤を配合することができる。
【0016】
A成分の固有粘度は0.5~1.0dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.55~0.85dl/gであり、さらに好ましくは0.60~0.68dl/gである。A成分の固有粘度が0.5dl/g未満ではネッキング抑制効果に劣る場合があり、1.0dl/gを超えるとポリエチレンナフタレート樹脂の粘度が高すぎるため射出成形時の噛み込み性が悪化する場合がある。
【0017】
<B成分について>
本発明のB成分であるポリエーテルイミド樹脂は、環状イミド構造を含有する樹脂であり、本発明の目的に使用できるものであれば特に限定されないが、脂肪族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリエーテルイミド樹脂が好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリイミドの主鎖に環状イミドおよびエーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されても良い。
【0018】
本発明で好ましく使用できるポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、下記式(1)で示されるポリエーテルイミド樹脂を挙げることができる。
【0019】
【0020】
(式(1)中、nは2以上の整数であり、R1は、6~30個の炭素原子を含有する2価の芳香族または脂肪族基、R2は6~30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2~20個の炭素原子を有するアルキレン基、2~20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2~8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R1、R2としては、例えば下記式(2)~(8)で示される芳香族残基およびアルキレン基を挙げることができる。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
(式(8)中、nは2以上の整数である。)
なお本発明では、ポリエチレンナフタレート樹脂との相容性の観点から下記式(9)で示されるポリエーテルイミド樹脂が好ましい。
【0029】
【0030】
(式(9)中、nは2以上の整数である。)
このポリエーテルイミド樹脂としては、SABICジャパン合同会社製の“ULTEM1010”等が挙げられる。
【0031】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し60~150重量部であり、好ましくは65~120重量部であり、より好ましくは70~100重量部である。B成分の含有量が60重量部未満の場合、耐熱性およびネッキングが改善されず、またブロー成形体の耐熱性も改善されない。一方、含有量が150重量部を超えると透明性が低下する。
【0032】
(その他の添加剤について)
なお、本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲で、酸化防止剤、離型剤等の各添加剤を含むことが出来る。
【0033】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物およびチオエーテル系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤を配合することにより、成形加工時の色相や流動性が安定するだけでなく、耐加水分解性の向上にも効果がある。
【0034】
ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。上記化合物の中でも、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく利用される。特にオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
ホスファイト系化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。さらに他のホスファイト系化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。好適なホスファイト系化合物は、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0036】
また、例えば2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン〔「スミライザーGP」(住友化学株式会社製)として市販されている。〕、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4,8,10-テトラ-t-ペンチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12-メチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ペンチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-12-メチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)-12-メチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10-ジエチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[2,2-ジメチル-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどを挙げることができる。これらはいずれも入手容易である。上記ホスファイト系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
ホスホナイト系化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト系化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト系化合物との併用可能であり好ましい。ホスホナイト系化合物としてはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、Sandostab P-EPQ(商標、Clariant社製)およびIrgafos P-EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されておりいずれも利用できる。上記ホスホナイト系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
チオエーテル系化合物の具体例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。上記チオエーテル系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
酸化防止剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01~2重量部が好ましく、より好ましくは0.03~1重量部、さらに好ましくは0.05~0.5重量部である。酸化防止剤の含有量が0.01重量部より少ない場合は酸化防止効果が不足し、成形加工時の色相や流動性が不安定になるだけでなく、耐加水分解性も悪化する場合がある。また、かかる含有量が2重量部よりも多い場合、酸化防止剤由来の反応成分などがかえって耐加水分解性を悪化させてしまう場合がある。
【0040】
また、前記ヒンダードフェノール系化合物とホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、チオエーテル系化合物のいずれか2種類以上を組み合わせて使用することが好ましい。ヒンダードフェノール系化合物とホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、チオエーテル系化合物のいずれか2種類以上を組み合わせて使用することで、安定剤としての相乗効果が発揮され、より成形加工時の色相、流動性の安定化、耐加水分解性の向上に効果がある。
【0041】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は離型剤を含むことができる。離型剤として具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルおよび変性シリコーン等を挙げることができる。これらを配合することで機械特性、成形性、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
【0042】
脂肪酸としては炭素数6~40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、モンタン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては炭素数6~40の脂肪酸のアルカリ(土類)金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム等が挙げられる。
【0043】
オキシ脂肪酸としては1,2-オキシステリン酸等が挙げられる。パラフィンとしては炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
【0044】
低分子量のポリオレフィンとしては例えば分子量5000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
【0045】
脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0046】
アルキレンビス脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0047】
脂肪族ケトンとしては炭素数6以上のものが好ましく、高級脂肪族ケトン等が挙げられる。
【0048】
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0049】
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジミリステート、ペンタエリスルトールモノステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリトリメチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0050】
変性シリコーンとしてはポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0051】
そのうち脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸部分鹸化エステル、アルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでもモンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックス、酸価ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0052】
離型剤は、1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。離型剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~3重量部、より好ましくは0.03~2重量部である。
【0053】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
【0054】
<プリフォームの成形>
本発明の樹脂組成物は、通常ペレットとして得られ、これを原料としてプリフォームを成形する。成形方法は、射出成形、プレス成形、押出成形など各種成形方法を選択出来るが、プリフォームを結晶化させずに急冷する観点から、射出成形、プレス成形が好ましい。射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、ホットランナー方式の成形法も可能である。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、急速加熱冷却金型成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。例えば、ブロー成形用のプリフォームの射出成形であれば、各ペレットを130~150℃の熱風乾燥機で7時間以上予備乾燥した後、シリンダー温度280~310℃で溶融し、射出成形するのが好ましい。予備乾燥温度が130℃未満では乾燥が不十分となり、ペレット中に残存した水分によって樹脂分解を起こし、固有粘度が安定しない場合があり、予備乾燥温度が150℃より高いとペレットが融着し塊状になり射出成形時の計量が不安定になる場合がある。成形する際の金型温度は40~140℃が好ましく、60~120℃が更に好ましい。金型温度が40℃未満では、成形品表面にフローマークなどの外観が生じる場合があり、金型温度が140℃を超えると成形品が離形変形し、ブロー成形の際に均一な容器が成形できない恐れがある。
【0055】
<ブロー成形>
本発明のブロー成形体の作製方法は、任意の方法が採用される。例えば、ダイレクトブロー成形 、押出ダイレクトブロー成形、1ステージの2軸延伸ブロー成形、2ステージの2軸延伸ブロー成形などを挙げることができる。2ステージにて2軸延伸ブローする場合、ブロー成形する前に予め加熱(予備加熱)しておくのが好ましい。予備加熱温度は、70~140℃が好ましく、90℃~130℃がより好ましく、100℃~110℃が特に好ましい。予備加熱温度が70℃未満では、後工程の本加熱時間に時間を要し、予備加熱温度が140℃を超えると樹脂組成物が軟化してしまいプリフォームが変形し均一なブロー成形容器が得られない恐れがある。予備加熱の方法は、熱風乾燥機内でのプリフォームの保管、赤外線ヒーター加熱など任意の方法を取ることができる。ブロー成形時の加熱(本加熱)は、プリフォーム内部からの加熱(内部加熱)、プリフォーム外部からの加熱(外部加熱)の両方から加熱しても良い。加熱方式は、加熱効率が良いため赤外線加熱方式が好ましい。ここで、樹脂温度は150~200℃程度に温める必要がある。かかる樹脂温度範囲でブロー成形することで、厚みムラが少なく、破れなどのない良好なブロー成形体を得ることが出来る。
【0056】
<ブロー成形体>
本発明のブロー成形体は開口部となる口部、胴部および底部からなる容器形状であって、下記式(1)により算出される胴部の中間点における延伸倍率(A)が1.1~4であることが好ましく、1.1~3であることがさらに好ましい。延伸倍率が4を超えると、高温の内容物を充填した際や加熱殺菌等の熱処理により容器が変形する恐れがある。一方、延伸倍率が1.1未満では金型への密着が不十分であり賦形が良好でない場合がある。
【0057】
A=T0/T1 (1)
(式(1)中、T0はプリフォーム胴部中央における厚み(mm)、T1はブロー成形後の容器胴部中央における厚み(mm)を表す。)
【実施例0058】
以下、実施例により本発明を実施する形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、諸物性の評価は以下の方法により実施した。
【0059】
[樹脂組成物の評価]
(1)透明性
下記の方法で得られたペレットを140℃で7時間乾燥した後に、射出成形機(東芝機械(株)製 EC130SXII―4Y)によりシリンダー温度310℃、金型温度90℃の条件にて長さ25mm、幅50mm、厚み1mmの試験片を成形し、日本分光(株)製紫外可視分光光度計V-560により450nmの波長における光線透過率を測定した。光線透過率は60%以上であることが必要である。
【0060】
(2)耐熱性
下記の方法で得られたペレットを140℃で7時間乾燥した後に、射出成形機(東芝機械(株)製 EC130SXII―4Y)によりシリンダー温度310℃、金型温度90℃にて試験片を作製し、ISO75-1および75-2に従い荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度は、1.8MPaの荷重条件にて120℃以上であることが必要である。
【0061】
(3)ガラス転移温度
下記の方法で得られたペレットを使用して、示差走査熱量計(TAインスツルメント・ジャパン(株)製:DSC-2910)により昇温速度20℃/minの条件でガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0062】
(4)ネッキング度
下記の方法で得られたペレットを140℃で7時間乾燥した後に、射出成形機(東芝機械(株)製 EC130SXII―4Y)によりシリンダー温度310℃、金型温度90℃にてISO527-1および527-2に準拠したダンベル片を作製した。引張試験条件は、ブロー成形を模擬し引張速度1000mm/min、引張温度は樹脂組成物のガラス転移温度より25℃高い温度に設定し、引張呼びひずみ100%になるまで引張試験を行った。ネッキング度はネッキング部位の断面積と理論的な断面積より以下の式より算出した。ここでいう理論的な断面積とは、体積収縮を考慮せず体積一定と仮定した際の断面積のことである。ネッキング度は小さい方がネッキング現象を抑制していることを意味しており20%以下であることが必要である。
ネッキング度(%)=[(理論的な断面積-ネッキング部の断面積)/理論的な断面積]×100
【0063】
(5)ブロー成形容器の耐熱性
下記の方法で得られたペレットを140℃、7時間熱風乾燥機で乾燥した後、東芝機械(株)製EC 160NII-4Yを使用し、シリンダ温度310℃、金型温度90℃にて成形を行い厚み2.5mmのプリフォームを得た。次に、フロンティア(株)製FDB-1Dをブロー機として用い、300ml容器形状のブロー金型(縦1.0倍、横2.2倍)を用いて、下記の要領で前記プリフォームの2軸延伸ブロー成形を行った。まず、100℃で1時間熱風乾燥機内で予備加熱を行ったプリフォームをブロー成形機内にセットし、プリフォーム表面温度がガラス転移温度より25℃高くなるようにIR加熱ヒーターの出力を設定し、本加熱を行った。続いて、ロッド延伸速度60%、1次ブロー遅延時間1秒、1次ブロー 時間0.3秒、1次ブロー圧3.4MPa、2次ブロー時間5秒、2次ブロー圧3. 4MPa、金型温度70℃の条件にてブロー成形を行った。ブロー成形した容器胴部中央部の厚みを測定し、下記式(1)より延伸倍率(A)を算出した。
【0064】
A=T0/T1 (1)
(式(1)中、T0はプリフォーム胴部中央における厚み(mm)、T1はブロー成形後の容器胴部中央における厚み(mm)を表す。)
【0065】
得られたブロー成形容器を沸騰した水中に10時間浸漬し、浸漬前後の内容量の変化率を下記式により算出した。内容量の変化率は3%以下が好ましい。
内容量の変化率(%)=[(沸騰水処理前の容量―沸騰水処理後の容量)/沸騰水処理前の容量]×100
【0066】
[実施例1-6、比較例1-3]
表1で示した含有量に従って、A成分およびB成分を第1供給口より別々に二軸押出機に供給し310℃の温度にて溶融混練押出してペレット化した。ここで第1供給口とは根元の供給口のことである。二軸押出機は、径30mmΦのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α-31.5BW-2V)を使用した。
【0067】
本発明の実施例および比較例には、以下の材料を使用した。
(A成分)
A-I:製造例Iで得られたポリエチレンナフタレート樹脂
<製造例I>
ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル100重量部およびエチレングリコール51重量部を酢酸コバルト四水和物0.003重量部(0.012mmol)、酢酸カルシウム一水和物0.014重量部(0.08mmol)および酢酸マンガン四水和物0.044重量部(0.0205mmol)をエステル交換触媒として用い、常法によりエステル交換反応させ、非晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール1%溶液1.5重量部(0.14mmol)添加したのちに、トリメチルフォスフェート0.0057重量部(0.41mmol)を添加しエステル交換反応を終了せしめた。次いで温度227℃、真空度0.5Torrの条件にて8時間固相重合を行い固有粘度が0.60dl/gのポリエチレンナフタレート樹脂を得た。
【0068】
(B成分)
B-I:SABICジャパン合同会社製 ULTEM1010(商品名)
【0069】
【0070】
<実施例1~6>
本請求の範囲内にある組成物であるため、透明性、耐熱性に優れ、ネッキングが改善され、耐熱性に優れたブロー成形体を得ることができた。
【0071】
<比較例1、2>
B成分の含有量が低いため、耐熱性、ネッキングが改善されず、またブロー成形体の耐熱性の向上も認められなかった。
【0072】
<比較例3>
B成分の含有量が上限を超えるため、透明性に劣る結果であった。