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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076893
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】電磁波送信・受信システム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/28 20060101AFI20230529BHJP
   H01Q 13/24 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H01Q13/28
H01Q13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189918
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】500541265
【氏名又は名称】大内 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】大内 和幸
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045HA07
5J045LA01
5J045LA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】導波路を含む送信・受信システムを提供する。
【解決手段】送信・受信システムは、電磁波を導波路外部に送信する送信装置及び外部からの電磁波を導波路で受信する受信装置からなる。送信装置及び受信装置は両側外方よりも大きい屈折率nの誘電体材料の導波路を含む。導波路は、導波路最大横幅が、tan(電磁波低速度領域の伝搬定数×導波路の横幅/2)=電磁波高速度領域の伝搬定数/電磁波低速度領域の伝搬定数、によって特定される寸法に形成され、電磁波が導波路両側の境界面で全反射されながら進行方向Zに正弦分布又は余弦分布の形式で導波される。導波路内部又は表面には、横幅方向に延びる複数の電極が電磁波進行方向に等間隔に配列され、導波路の電磁波進行方向には1つ又は2つの開放端面が形成される。開放端面は、導波路横幅方向の直線に平行、かつ、電磁波進行方向の直線に垂直な面をなすか又は電磁波進行方向の直線に傾斜した面をなす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発生させて導波路外部に放出して送信する送信装置と、外部から送信されてきた電磁波を導波路で受信して信号を取り出すようにした受信装置とから構成され、
上記送信装置及び受信装置は屈折率nが導波路横幅方向における導波路両側外方の屈折率より大きい誘電体材料によって構成される導波路を含み、該導波路は導波路最大横幅aが下記の数式1によって特定される寸法に形成されることによって電磁波が導波路横幅方向における導波路両側の境界面で全反射されながら進行方向Zに正弦分布又は余弦分布の形式で導波される一方、
上記送信装置及び受信装置の導波路内部又は表面には導波路横幅方向に延びる複数の電極が電磁波進行方向Zに等間隔に配列され、
上記送信装置及び受信装置の導波路の電磁波進行Z方向には1つ又は2つの開放端面が形成され、該開放端面は導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対して垂直な面をなすか、又は電磁波進行方向に延びる直線に対して傾斜した面をなしており、上記開放端面から外部に電磁波が放出されて送信され、外部から送信されてきた電磁波が上記開放端面から入力されて受信するようになっていることを特徴とする電磁波送信・受信システム。
(数1)
tan(ka/2)=k/k
又は
tan(ka/2)=-k/k
ここで、前式は余弦(cos)分布、後式は正弦(sin)分布のときの式であり、
:電磁波低速度領域の伝搬定数
:電磁波高速度領域の伝搬定数
a: 導波路の横幅
【請求項2】
上記傾斜した開放端面は上記導波路横幅方向及び電磁波運行方向Zの両方向に対して垂直な方向に延びる直線に対して平行か、又は上記導波路横幅方向に延びる直線及び上記導波路横幅方向に延びる直線の両直線に対して傾斜している請求項1記載の電磁波送信・受信システム。
【請求項3】
電磁波を発生させて導波路外部に放出して送信する送信装置であって、
屈折率nが導波路横幅方向における導波路両側外方の屈折率より大きい誘電体材料によって構成される導波路を含み、該導波路は導波路最大横幅aが下記の数式1によって特定される寸法に形成されることによって電磁波が導波路横幅方向における導波路両側の境界面で全反射されながら進行方向Zに正弦分布又は余弦分布の形式で導波される一方、
上記導波路内部又は表面には導波路横幅方向に延びる複数の電極が電磁波進行方向Zに等間隔に配列され、
上記導波路の電磁波進行Z方向には1つ又は2つの開放端面が形成され、該開放端面は導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対して垂直な面をなすか、又は電磁波進行方向に延びる直線に対して傾斜した面をなしており、上記開放端面から外部に電磁波が放出されて送信されるようになっていることを特徴とする電磁波送信装置。
(数1)
tan(ka/2)=k/k
又は
tan(ka/2)=-k/k
ここで、前式は余弦(cos)分布、後式は正弦(sin)分布のときの式であり、
:電磁波低速度領域の伝搬定数
:電磁波高速度領域の伝搬定数
a: 導波路の横幅
【請求項4】
上記傾斜した開放端面は上記導波路横幅方向及び電磁波運行方向Zの両方向に対して垂直な方向に延びる直線に対して平行か、又は上記導波路横幅方向に延びる直線及び上記導波路横幅方向に延びる直線の両直線に対して傾斜している請求項3記載の電磁波送信装置。
【請求項5】
外部から送信されてきた電磁波を導波路で受信して信号を取り出すようにした受信装置とから構成され、
屈折率nが導波路横幅方向における導波路両側外方の屈折率より大きい誘電体材料によって構成される導波路を含み、該導波路は導波路最大横幅aが下記の数式1によって特定される寸法に形成されることによって電磁波が導波路横幅方向における導波路両側の境界面で全反射されながら進行方向Zに正弦分布又は余弦分布の形式で導波される一方、
上記導波路内部又は表面には導波路横幅方向に延びる複数の電極が電磁波進行方向Zに等間隔に配列され、
上記導波路の電磁波進行Z方向には1つ又は2つの開放端面が形成され、該開放端面は導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対して垂直な面をなすか、又は電磁波進行方向に延びる直線に対して傾斜した面をなしており、外部から送信されてきた電磁波が上記開放端面から入力されて受信するようになっていることを特徴とする電磁波受信装置。
(数1)
tan(ka/2)=k/k
又は
tan(ka/2)=-k/k
ここで、前式は余弦(cos)分布、後式は正弦(sin)分布のときの式であり、
:電磁波低速度領域の伝搬定数
:電磁波高速度領域の伝搬定数
a: 導波路の横幅
【請求項6】
上記傾斜した開放端面は上記導波路横幅方向及び電磁波運行方向Zの両方向に対して垂直な方向に延びる直線に対して平行か、又は上記導波路横幅方向に延びる直線及び上記導波路横幅方向に延びる直線の両直線に対して傾斜している請求項5記載の電磁波受信装置。
【請求項7】
上記導波路の電磁波進行方向に1つの開放端面が1つ設けられるとともに、反対側に反射器が設けられている請求項1記載の電磁波送信・受信システム。
【請求項8】
上記導波路の電磁波進行方向に1つの開放端面が1つ設けられるとともに、反対側に反射器が設けられている請求項3記載の電磁波送信装置。
【請求項9】
上記導波路の電磁波進行方向に1つの開放端面が1つ設けられるとともに、反対側に反射器が設けられている請求項5記載の電磁波受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電磁波送信・受信システムに関し、特に両側外方の材料よりも大きい屈折率nの誘電体材料によって構成される導波路に、導波路を電磁波進行方向と垂直に切断し、あるいは角度をもって斜めに切断し、その断面の開口部から電磁波を放出し、入射するようにしたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
導波路の横モードは導波路側面で全反射を満足し、進行方向z方向に対して角度をもって伝搬している。導波路断面の開口部端面では電磁波は屈折して空中に放出されるが、空中への放出の場合、その角度は伝搬して来た角度よりやや大きくして導波路外部に放出される。
この放出角度は導波路を構成する誘電体の屈折率、導波路幅a、モード次数によって変えられ、広範囲に送受波できる、従来にはない送受信装置である。また導波路に内在するモードを利用するため、多数の周波数を同時に送受信できる。
【0003】
マイクロ波やミリ波を用いた衛星通信や情報通信などの分野において導波技術は重要な要素である。
【0004】
例えば、本件発明者は、導波路の中に入力電極及び/又は出力電極を備え、導波路に電磁波を入力して導波し、あるいは導波路を伝搬してきた電磁波から電気信号を出力するようにした導波路装置において、入力電極及び/又は出力電極を、導波路幅方向に延びる形状の2つ以上の電極を電磁波進行方向に並べて構成し、2つ以上の入力電極のうちの隣接する電極の間に高周波電流を印加し、2つ以上の出力電極のうちの隣接する電極の間から電気信号を出力する一方、入力電極及び/又は出力電極を、その電極配列の外周形状が導波路に内在し、所定の数式によって特定される形状の一部又は全部に対応した形状に配置することによって、電磁波を導波路内に精度よく効率よく、しかも雑音少なく発生させて導波でき、導波路を伝搬してきた電磁波から所望の周波数の信号を精度よく効率よく、しかも雑音少なく出力できる導波路装置を提案するに至った(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-108394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1記載の導波路装置は導波路内に電磁波を発生させて導波し、導波路を伝搬して来た電磁波の信号を出力するものであり、導波路から外部空間に電磁波を放出し、あるいは外部空間から導波路に電磁波を入射するというものではなかった。
つまり、導波路内に電磁波を閉じ込めて電磁波を導波し、電磁波信号を取り出すことについては有効な技術ではあるものの、導波路の外部に電磁波を送信し、あるいは外部から電磁波を導波路で受信することについてはどのように設計してよいか不明であった。
【0007】
本発明はかかる状況において、導波路で電磁波を発生させて導波路外部に放出して送信し、外部から送信されてきた電磁波を導波路で受信して信号を取り出すようにした電磁波送信・受信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る電磁波送信・受信システムは、電磁波を発生させて導波路外部に放出して送信する送信装置と、外部から送信されてきた電磁波を導波路で受信して信号を取り出すようにした受信装置とから構成され、上記送信装置及び受信装置は屈折率nが導波路横幅方向における導波路両側外方の屈折率より大きい誘電体材料によって構成される導波路を含み、該導波路は導波路最大横幅aが下記の数式1によって特定される寸法に形成されることによって電磁波が導波路横幅方向における導波路両側の境界面で全反射されながら進行方向Zに正弦分布又は余弦分布の形式で導波される一方、上記送信装置及び受信装置の導波路内部又は表面には導波路横幅方向に延びる複数の電極が電磁波進行方向Zに等間隔に配列され、上記送信装置及び受信装置の導波路の電磁波進行Z方向には1つ又は2つの開放端面が形成され、該開放端面は導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対して垂直な面をなすか、又は電磁波進行方向に延びる直線に対して傾斜した面をなしており、上記開放端面から外部に電磁波が放出されて送信され、外部から送信されてきた電磁波が上記開放端面から入力されて受信するようになっていることを特徴とする。
(数1)
tan(ka/2)=k/k
又は
tan(ka/2)=-k/k
ここで、前式は余弦(cos)分布、後式は正弦(sin)分布のときの式であり、
:電磁波低速度領域の伝搬定数
:電磁波高速度領域の伝搬定数
a: 導波路の横幅
【0009】
本件発明者は誘電体導波路における電磁波の導波路外部への放出及び導波路外部からの入射に関して鋭意研究を行ったところ、導波路横幅方向に延びる直線に平行にかつ電磁波進行方向に延びる直線に対して垂直に切断した開放端面を形成することにより、電磁波は開放端面から外部に出力できることを知見するに至った。
【0010】
誘電体導波路を伝搬する電磁波は導波路の側方境界面でモード次数によって異なる角度で全反射を繰り返しながら導波される。導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向に延びる直線に対して垂直に切断した面(開放端面)は、導波路側方境界面に対して直交し、導波路側方境界面と全反射を繰り返しながら進行する基本モードの電磁波との角度θは一般的に小さいので、導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向に延びる直線に対して垂直に切断した導波路開放端面と電磁波のなす角度は大きくなり、反射をすることなく屈折し、導波路開放端面から外部に放出される。
【0011】
導波路側方境界面と電磁波のなす角度は導波路を伝搬する電磁波のモード次数が大きくなるにつれ大きくなる。モード次数が大きくなると、導波路開放端面で全反射条件を満足し、開放部端面から電磁波を放出できないモードも存在する。
【0012】
図1ないし図6を用いて詳細に説明する。図において、10は導波路、11は導波路側方境界面、12、13は電極で、相互に所定の間隔P(導波路進行Z方向の速度と周波数とで決まる波長の半分の長さ)が設定され、一方の電極12が+の極性のとき、他方の電極13が-の極性となる。14、15は導波路10の開放端面、16は電磁波の伝搬を模式的に示す伝搬線である。
【0013】
電磁波の伝搬を図1及び図6に示すが、電磁波16は導波路10の側方境界面11に対して角度θでもって電磁波進行方向Zに導波される。導波路10の横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対して垂直に切断した開口端面14における電磁波16の角度は、図2及び図5から、π/2-θである。一般に、導波路導波
時における導波路10の側方境界面11に対する基本波モードの電磁波16の角度θは小さい。よって、開放端面14における電磁波の角度π/2-θは大きくなり、全反射条件は満足せず、屈折し、導波路10の開放端面14から放出される。
【0014】
また、図3及び図6に示されるように、導波路10の電磁波進行方向Zの側方境界面11の長さが、導波路10の横幅方向に延びる直線に平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対してX-側がX+側よりPだけ長くなるように斜めに切断された場合(Δ=P)、電磁波16は図3及び図6に示されるように放射される。開放端面15における電磁波16の角度は、斜め切断の角度δから、π/2-θ+δとなる。垂直切断の場合より角度が大きくなるので、開放端面15では電磁波16は屈折し開放端面15から放出される。
【0015】
導波路10中の電磁波モードの電磁波16は導波路10の側方境界面11と角度θで全反射を繰り返しながらZ方向へ進行している。研究の結果、電磁波モードの電磁波16と導波路10の側方境界面11のなす角度は、モードの角θ,θ2・・・θ
:最大次数Mの角度) 、屈折率nεのときの全反射を満足する最大角θc
の関係は、
θ < θ ・・・ θ < θc
である。
【0016】
導波路10の開放端面14は導波路10と垂直に切断しているが、導波路10の開放端面14と電磁波16のなす角度はπ/2-θで、導波路10と外部の速度で決まる屈折率に対する全反射最大角度θ以上の角度になるので、屈折し、開放端面14から放出される。空中への放出の場合、速度が大きい空間に放出されるため、Snellの理論より導波路1
0の中心から角度θより少し角度を大きくし(図中、角Φ)開放端面14から放出される。
【0017】
一般的に、θは小さいので、開放端面14における電磁波16と壁面との角度
π/2-θは大きく、全反射角θ以上となり、屈折し放射される。
モードの次数によってはπ/2-θがθより小さく、全反射となって開放端14
より屈折放射できないモードもある。
【0018】
また、受波については上記した放出の逆で、θより少し大きい角度Φで入射して来る電磁波は導波路10の電磁波モードとなり、導波路10を伝搬される。
【0019】
開放端面14を導波路横幅方向に延びる直線に対して平行で電磁波進行方向に延びる直線に対して垂直に切断した場合、電磁波は開放端面(以下、単に垂直開放端面ということがある)14から左右対称に放出され、導波路10の外に放出された左右の電磁波の強度は同じになる。
【0020】
導波路10を導波路横幅方向及び電磁波進行方向の両方に垂直な方向に延びる直線に対して平行で、磁波進行方向に延びる直線に対して斜めに切断した(角度δで切断)場合、電磁波と開放端面と角度はπ/2-θ+δとなり、垂直切断の場合より大きく、θ以上となり、開放端面(以下、単に傾斜開放端面ということがある)15より屈折し放出される。
【0021】
傾斜開放端面15の導波路10の電磁波Z方向の長さは違っている。差がZ方向の電極間隔Pより大きい場合、長い導波路10側方境界面11で反射された電磁波16は全て
短い導波路の長さの方向(X+側)に反射し放出される。短い導波路長の方の反射は導波路側方境界面がないため反射されることがないので、電磁波16の全ては短い導波路長の方向(X+側)に放出される。つまり、長い導波路長の方へは電磁波は放出されず、短い
導波路長の方に放出される。
【0022】
また、導波路10の左右差に応じた左右の強度の電磁波が放出される。電極間隔P以上の差がある場合はX+方向側しか電磁波は放出されない。それ以下の差の場合、その差に応じて左右の強度の差がある放出分布になる。つまり、左右強度が違う送信機が可能となる。
また、斜めに切断した開放端面は導波路横幅方向に延びる直線及び導波路横幅方向に延びる直線の両直線に対して傾斜させるようにしてよい。
受信についても、送信と同じで左右受信範囲が異なる受信機が構成できる。
【0023】
また、導波路長の左右差がZ方向の電極間隔P以下の場合、導波路長の左右差に応じて電磁波が反射されるため、導波路長に差に応じた電磁波が反射され、導波路長が短い方向に放出される。電極間隔以上の差がある場合は+方向しか電磁波は放出されない。それ以下の差の場合、その差に応じて左右の強度の差がある放出分布になる。左右強度が違う送信機が可能となる。
受信についても、送信と同じで左右受信範囲が異なる受信機が構成できる。
【0024】
本発明の第1の特徴はかかる知見に基づきなされたもので、第1の課題は簡単な構成で電磁波を精度よく効率よく、しかも雑音を少なく送信しまたは受信できるようにした導波路装置を利用した送受信装置を提供することにある。
第2の特徴は電極構成を変えることにより、伝搬周波数を近接した周波数に変えることができる導波路を利用し、近接した周波数の電磁波を、しかも多くの周波数を同時に送信し受信することができるようにした送受信装置を提供することにある。
第3の特徴は導波路幅、電極構成、モード次数を変えることにより、送受信可能角度を変えることができ、送信受信可能範囲を狭くも広くもすることを可能にした送受信装置を提供することにある。
第4の特徴は開口部を2つ設けることにより、導波路方向の前後、電磁波進行Z+、Z-方向へ電磁波の送受信が可能。しかも正方形断面にすると前後左右上下に可能な電磁波の送受信装置を提供することにある。
【0025】
〔正方形断面の導波路〕
導波路断面を正方形にし、X方向Y方向に同じ導波路を構成し、X、Y方向に放出できる送信装置及び受信できる受信装置を構成することが可能で、斜め切断で左右上下強度の違う送信装置及び受信できる受信装置を構成することができる。
【0026】
〔円形断面の導波路〕
断面円形にした導波路の場合、導波路断面の周囲に放出できる送信装置及び導波路断面の周囲から電磁波を受信できる受信装置が構成できる。
【0027】
〔反射器〕
電磁波進行方向と直角の断面を金属で覆って反射器を構成する。電磁波進行方向と直角に配置した電極(導波の入力電極または信号取り出しの出力電極)と同様に、Z方向に多数並べる。その場合、電極の断面積を小さくすることで特性インピーダンスがより大きくなり、効果が大である。
【0028】
また、上記電磁波送信・受信システムに用いられる送信装置及び受信装置も斬新である。すなわち、本発明によれば、電磁波を発生させて導波路外部に放出して送信する送信装置であって、屈折率nが導波路横幅方向における導波路両側外方の屈折率より大きい誘電体材料によって構成される導波路を含み、該導波路は導波路最大横幅aが数式1によって特定される寸法に形成されることによって電磁波が導波路横幅方向における導波路両側の
境界面で全反射されながら進行方向Zに正弦分布又は余弦分布の形式で導波される一方、上記導波路内部又は表面には導波路横幅方向に延びる複数の電極が電磁波進行方向Zに等間隔に配列され、上記導波路の電磁波進行Z方向には1つ又は2つの開放端面が形成され、該開放端面は導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対して垂直な面をなすか、又は導波路横幅方向に延びる直線及び電磁波進行方向に延びる直線に対して傾斜した面をなしており、上記開放端面から外部に電磁波が放出されて送信されるようになっていることを特徴とする電磁波送信装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、外部から送信されてきた電磁波を導波路で受信して信号を取り出すようにした受信装置とから構成され、屈折率nが導波路横幅方向における導波路両側外方の屈折率より大きい誘電体材料によって構成される導波路を含み、該導波路は導波路最大横幅aが数式1によって特定される寸法に形成されることによって電磁波が導波路横幅方向における導波路両側の境界面で全反射されながら進行方向Zに正弦分布又は余弦分布の形式で導波される一方、上記導波路内部又は表面には導波路横幅方向に延びる複数の電極が電磁波進行方向Zに等間隔に配列され、上記導波路の電磁波進行Z方向には1つ又は2つの開放端面が形成され、該開放端面は導波路横幅方向に延びる直線に対して平行でかつ電磁波進行方向Zに延びる直線に対して垂直な面をなすか、又は導波路横幅方向に延びる直線及び電磁波進行方向に延びる直線に対して傾斜した面をなしており、外部から送信されてきた電磁波が上記開放端面から入力されて受信するようになっていることを特徴とする電磁波受信装置を提供することができる。
【0030】
さらに、導波路の電磁波進行方向に1つの開放端面が1つ設けられるとともに、反対側に反射器が設けられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】誘電体導波路における電磁波の伝搬を模式的に示す図である。
図2】本発明における垂直な開放端面からの電磁波放出の原理を説明するための図である。
図3】本発明における傾斜した開放端面からの電磁波放出の原理を説明するための図である。
図4】本発明における傾斜した開放端面からの電磁波放出の原理を説明するための他の図である。
図5】垂直な開放端面からの電磁波放出の原理を説明するための図である。
図6】傾斜した開放端面からの電磁波放出の原理を説明するための図である。
図7】本発明に係る電磁波送信・受信システムの好ましい実施形態の例を示す図である。
図8】実施形態の他の例を示す図である。
図9】電極の構成例を示す図である。
図10】電極の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
【0033】
周波数が10GHzの基本モード利用による導波について説明する。基本モードを利用して導波する場合、導波路の誘電体(光学ガラス)の大きさを、横幅a(x方向)=104.480mm、厚みd(y方向)=3mmとし、電磁波進行方向長さ(z方向)=106.480mmとし、電極材料は銅を使用し、電極断面形状は円形状、全体形状は円柱状とし、電極寸法は直径2mm、最大横幅104.480mm、導波方向の電極間隔Pを10.448mm、電極総長さ106.480mmとした。
【0034】
送信周波数が1GHzの場合について、送信・受信システムの実施例を示す。
導波路の誘電体(光学ガラス)の大きさを、横幅a(x方向)=1044.80mm、厚みd(y方向)=30mmとし、電極材料は銅を使用し、電極断面形状は円形状、全体形状は円柱状とし、電極寸法は直径20mm、最大横幅1044.80mm、導波方向の電極間隔Pを104.48mm、電極総長さ1064.80mmとした。
【0035】
図7(a)は導波路10に、側方境界方向の延びる直線に平行で、かつ電磁波進行方向Zに延びる直線に垂直に切断した垂直開放端面14を1つ設けた送信装置又は受信装置の構造を示す。導波路10には電極12又は13が設けられている。
【0036】
図7(b)は導波路10に、導波路10の横幅方向に延びる直線及び電磁波進行方向Zに延びる直線に対して斜めに切断した垂直開放端面12を2つ設けた送信装置又は受信装置の構造を示す。
【0037】
図7(c)は導波路10に、導波路横幅方向の延びる直線及び電磁波進行方向Zに延びる直線に対して斜めに切断した傾斜開放端面15を1つ設けた送信装置又は受信装置の構造を示す。
【0038】
図8(a)は導波路10に、導波路横幅方向の延びる直線及び電磁波進行方向Zに延びる直線に対して傾斜して切断した傾斜開放端面15を2つ設けた送信装置又は受信装置の構造を示す。
【0039】
図8の(b)は導波路10に、側方境界方向の延びる直線に平行で、かつ電磁波進行方向Zに延びる直線に垂直に切断した垂直開放端面14を1つ設けるとともに、反対側に反射器17を設けた送信装置又は受信装置の構造を示す。
【0040】
図8(c)は導波路10に、導波路横幅方向の延びる直線及び電磁波進行方向Zに延びる直線に対して傾斜して切断した傾斜開放端面15を1つ設けるとともに、反対側に反射器17を設けた送信装置又は受信装置の構造を示す。
【0041】
導波路10を斜めに切断する代わりに、電磁波を反射する金属やガラスなどの板を斜め切断で導波路幅を大きくする導波路側面に張り付けてもよい。導波路10は立方体、直方体、円柱体であってもよい。
【0042】
図9及び図10は電極12、13の例を示す。図9に示されるように、導波路10側部にリード線18を設置した電極12、13を導波路10に設けることができる。
【0043】
また、図10に示されるように、導波路10の中心部に2本のリード線18を設置した電極12、13を導波路10に設けることもできる。
【符号の説明】
【0044】
10 導波路
11 境界面
12、13 電極
14、15 開放端面
17 反射器
18 リード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10