IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特開2023-76900トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム
<>
  • 特開-トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム 図1
  • 特開-トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム 図2
  • 特開-トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム 図3
  • 特開-トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム 図4
  • 特開-トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム 図5
  • 特開-トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076900
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230529BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189928
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】持田 芳典
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA52
3C100AA56
3C100AA62
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB15
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC04
5E353CC17
5E353CC21
5E353CC22
5E353CC26
5E353EE53
5E353EE54
5E353GG01
5E353JJ02
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353KK11
5E353LL04
5E353LL06
5E353NN18
5E353QQ01
5E353QQ11
5E353QQ30
(57)【要約】
【課題】生産設備のトラブル状態をより忠実かつ容易に再現可能なトラブル解析支援方法等を提供する。
【解決手段】トラブル解析支援方法は、生産設備におけるトラブル発生時の稼働履歴を含む第1稼働ログから、1以上のユニットに発行された第1コマンドに対する応答である第1コマンド応答を取得するステップ(S12)と、第1コマンド応答に基づいて生産設備の動作をシミュレートするステップ(S13~S17)とを含む。シミュレートするステップは、1以上のユニットに対応するシミュレーション上の1以上の仮想ユニットに対して第1コマンドに対応する第2コマンドを発行するステップ(S13)と、1以上の仮想ユニットにおいて第2コマンドを実行するステップ(S15)と、取得した第1コマンド応答を、第2コマンドに対する1以上の仮想ユニットの応答である第2コマンド応答として発行するステップ(S17)とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のユニットから構成される生産設備の動作をシミュレートすることで、前記生産設備のトラブル解析を支援するトラブル解析支援方法であって、
前記生産設備におけるトラブル発生時の稼働履歴を含む第1稼働ログから、前記1以上のユニットに発行された第1コマンドに対する前記1以上のユニットの応答である第1コマンド応答を取得するコマンド応答取得ステップと、
取得した前記第1コマンド応答に基づいて、前記生産設備の動作をシミュレートするシミュレーションステップとを含み、
前記シミュレーションステップは、
前記1以上のユニットに対応するシミュレーション上の1以上の仮想ユニットに対して前記第1コマンドに対応する第2コマンドを発行するコマンド発行ステップと、
前記1以上の仮想ユニットにおいて前記第2コマンドを実行するコマンド実行ステップと、
前記第2コマンドに対する前記1以上の仮想ユニットの応答である第2コマンド応答を発行するコマンド応答発行ステップとを含み、
前記コマンド応答発行ステップでは、取得した前記第1コマンド応答を、前記第2コマンド応答として発行する、
トラブル解析支援方法。
【請求項2】
さらに、
前記1以上の仮想ユニットそれぞれの前記第2コマンド応答を含む第2稼働ログを生成する稼働ログ生成ステップと、
前記第1稼働ログと前記第2稼働ログとが一致するか否かを判定する第1判定ステップとを含む、
請求項1に記載のトラブル解析支援方法。
【請求項3】
前記第1判定ステップにおいて前記第1稼働ログと前記第2稼働ログとが一致しないと判定される場合、前記第1稼働ログを編集し、編集された前記第1稼働ログに基づいて、前記シミュレーションステップを再度実行する、
請求項2に記載のトラブル解析支援方法。
【請求項4】
前記1以上の仮想ユニットは、第1仮想ユニット及び第2仮想ユニットを有し、
前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち一方のみに対応する第1コマンド応答を含み、
編集された前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち他方の仮想ユニットに対応する第1コマンド応答であって、追加で取得された第1コマンド応答を含む、
請求項3に記載のトラブル解析支援方法。
【請求項5】
前記1以上の仮想ユニットは、第1仮想ユニット及び第2仮想ユニットを有し、
前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち一方のみの第1コマンド応答を含み、
編集された前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち他方の仮想ユニットの第1コマンド応答のダミー値を含む、
請求項3に記載のトラブル解析支援方法。
【請求項6】
さらに、取得した前記第2コマンドのタイプを判定する第2判定ステップを含み、
前記コマンド応答発行ステップでは、判定された前記第2コマンドのタイプに応じて前記第1稼働ログから当該ユニットに応じた第1コマンド応答を抽出し、抽出した前記第1コマンド応答を前記第2コマンド応答として発行する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のトラブル解析支援方法。
【請求項7】
前記第1コマンド、及び、前記第2コマンドは、前記生産設備においてトラブルが発生したときの生産に関する生産データ、及び、前記1以上のユニットの設定条件に基づいて生成されたコマンドである、
請求項1~6のいずれか1項に記載のトラブル解析支援方法。
【請求項8】
1以上のユニットから構成される生産設備の動作をシミュレートすることで、前記生産設備のトラブル解析を支援するトラブル解析支援装置であって、
前記生産設備におけるトラブル発生時の稼働履歴を含む第1稼働ログから、前記1以上のユニットに発行された第1コマンドに対する前記1以上のユニットの応答である第1コマンド応答を取得する取得部と、
取得した前記第1コマンド応答に基づいて、前記生産設備の動作をシミュレートするシミュレーション処理部とを備え、
前記シミュレーション処理部は、
前記1以上のユニットに対応するシミュレーション上の1以上の仮想ユニットに対して前記第1コマンドに対応する第2コマンドを発行し、
前記1以上の仮想ユニットにおいて前記第2コマンドを実行し、
前記第2コマンドに対する前記1以上の仮想ユニットの応答である第2コマンド応答を発行し、
前記第2コマンド応答の発行では、取得した前記第1コマンド応答を、前記第2コマンド応答として発行する、
トラブル解析支援装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のトラブル解析支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置等の生産設備においてトラブルが発生した場合、生産設備を稼働させるのに使用した生産データ、各種設定条件等の稼働条件を利用して、生産設備のトラブル状態を再現させた上で検証、対応等を検討することが行われている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-018830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、トラブル発生時までの生産設備に対するコマンド発行の流れを再現することに着目しているが、コマンド発行の流れを再現するだけでは生産設備のトラブル状態が忠実に再現できないことがある。また、トラブル状態の再現を、容易に行えることが望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、生産設備のトラブル状態をより忠実に、かつ、より容易に再現可能なトラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るトラブル解析支援方法は、1以上のユニットから構成される生産設備の動作をシミュレートすることで、前記生産設備のトラブル解析を支援するトラブル解析支援方法であって、前記生産設備におけるトラブル発生時の稼働履歴を含む第1稼働ログから、前記1以上のユニットに発行された第1コマンドに対する前記1以上のユニットの応答である第1コマンド応答を取得するコマンド応答取得ステップと、取得した前記第1コマンド応答に基づいて、前記生産設備の動作をシミュレートするシミュレーションステップとを含み、前記シミュレーションステップは、前記1以上のユニットに対応するシミュレーション上の1以上の仮想ユニットに対して前記第1コマンドに対応する第2コマンドを発行するコマンド発行ステップと、前記1以上の仮想ユニットにおいて前記第2コマンドを実行するコマンド実行ステップと、前記第2コマンドに対する前記1以上の仮想ユニットの応答である第2コマンド応答を発行するコマンド応答発行ステップとを含み、前記コマンド応答発行ステップでは、取得した前記第1コマンド応答を、前記第2コマンド応答として発行する。
【0007】
本開示の一態様に係るトラブル解析支援装置は、1以上のユニットから構成される生産設備の動作をシミュレートすることで、前記生産設備のトラブル解析を支援するトラブル解析支援装置であって、前記生産設備におけるトラブル発生時の稼働履歴を含む第1稼働ログから、前記1以上のユニットに発行された第1コマンドに対する前記1以上のユニットの応答である第1コマンド応答を取得する取得部と、取得した前記第1コマンド応答に基づいて、前記生産設備の動作をシミュレートするシミュレーション処理部とを備え、前記シミュレーション処理部は、前記1以上のユニットに対応するシミュレーション上の1以上の仮想ユニットに対して前記第1コマンドに対応する第2コマンドを発行し、前記1以上の仮想ユニットにおいて前記第2コマンドを実行し、前記第2コマンドに対する前記1以上の仮想ユニットの応答である第2コマンド応答を発行し、前記第2コマンド応答の発行では、取得した前記第1コマンド応答を、前記第2コマンド応答として発行する。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、上記のトラブル解析支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、生産設備のトラブル状態をより忠実かつ容易に再現可能なトラブル解析支援方法等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係るトラブル解析支援システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る現実の製造システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る第1稼働ログの一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る解析支援装置における、ソフトウェアシミュレータ上の製造システムの機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態に係る解析支援装置の動作を示すシーケンス図である。
図6図6は、実施の形態に係る解析支援装置の各ユニットの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本願に至った経緯)
特許文献1は、部品実装装置(部品実装機)に生産モードと動作再現モードとを設け、生産モード中に保存したトラブル発生時の稼働条件を利用して、動作再現モードでトラブル発生時の動作を再現することが開示されている。つまり、特許文献1では、トラブルが発生した部品実装装置そのものを用いて、トラブル状態の再現が行われる。また、特許文献1では、生産モード中のトラブル発生時の稼働条件に基づいて動作再現モードでのトラブル状態の再現時に用いるコマンドを生成し、生成したコマンドを用いて、トラブル発生時の動作を再現する。
【0012】
しかしながら、同一の部品実装装置を使ってトラブル発生時のコマンド発行の流れを再現したからといって、発行されたコマンドに応じた各ユニットのコマンド応答までを完全に再現できるわけではない。
【0013】
また、特許文献1の技術では、トラブルが発生した部品実装装置を用いて再現を行うので、当該部品実装装置によるトラブルの再現中には生産を行うことができない。つまり、特許文献1の技術では、生産に影響なくトラブルの再現を行うことができない。
【0014】
そこで、本開示では、生産設備のトラブル状態をより忠実かつ容易に再現可能なトラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラムについて鋭意検討を行い、以下に示す、トラブル解析支援方法、トラブル解析支援装置、及び、プログラムを創案した。
【0015】
本開示の一態様に係るトラブル解析支援方法は、1以上のユニットから構成される生産設備の動作をシミュレートすることで、前記生産設備のトラブル解析を支援するトラブル解析支援方法であって、前記生産設備におけるトラブル発生時の稼働履歴を含む第1稼働ログから、前記1以上のユニットに発行された第1コマンドに対する前記1以上のユニットの応答である第1コマンド応答を取得するコマンド応答取得ステップと、取得した前記第1コマンド応答に基づいて、前記生産設備の動作をシミュレートするシミュレーションステップとを含み、前記シミュレーションステップは、前記1以上のユニットに対応するシミュレーション上の1以上の仮想ユニットに対して前記第1コマンドに対応する第2コマンドを発行するコマンド発行ステップと、前記1以上の仮想ユニットにおいて前記第2コマンドを実行するコマンド実行ステップと、前記第2コマンドに対する前記1以上の仮想ユニットの応答である第2コマンド応答を発行するコマンド応答発行ステップとを含み、前記コマンド応答発行ステップでは、取得した前記第1コマンド応答を、前記第2コマンド応答として発行する。
【0016】
これにより、従来であれば用いられていない第1稼働ログを用いることで、シミュレーション上における各仮想ユニットのふるまいを現実の各ユニットのふるまいに近づけることができる。つまり、シミュレーション上において生産設備のトラブル状態をより忠実に再現することができる。これは、例えば、生産設備においてトラブルが発生したときのトラブルの原因解析、データ分析及び対応検討を効率的に行うことに寄与する。また、トラブル状態の再現にトラブルが発生した生産設備を用いないので、生産に影響することなくトラブル状態を再現可能である。よって、生産設備のトラブル状態をより忠実に、かつ、より容易に再現可能なトラブル解析支援方法を実現することができる。
【0017】
また、例えば、さらに、前記1以上の仮想ユニットそれぞれの前記第2コマンド応答を含む第2稼働ログを生成する稼働ログ生成ステップと、前記第1稼働ログと前記第2稼働ログとが一致するか否かを判定する第1判定ステップとを含んでもよい。
【0018】
これにより、第1稼働ログと第2稼働ログとが一致するか否かが判定されるので、ユーザに現実の各ユニットのふるまいを各仮想ユニット上において完全に再現できているか否かを知らせることができる。
【0019】
また、例えば、前記第1判定ステップにおいて前記第1稼働ログと前記第2稼働ログとが一致しないと判定される場合、前記第1稼働ログを編集し、編集された前記第1稼働ログに基づいて、前記シミュレーションステップを再度実行してもよい。
【0020】
これにより、第1稼働ログと第2稼働ログとが一致しない場合、第1稼働ログと第2稼働ログとの一致度合いを高くすることができるので、シミュレーション上において生産設備のトラブル状態をさらに忠実に再現することができる。
【0021】
また、例えば、前記1以上の仮想ユニットは、第1仮想ユニット及び第2仮想ユニットを有し、前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち一方のみに対応する第1コマンド応答を含み、編集された前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち他方の仮想ユニットに対応する第1コマンド応答であって、追加で取得された第1コマンド応答を含んでもよい。
【0022】
これにより、現実のユニットが発行した第1コマンド応答を第1稼働ログに追加することができるので、現実の各ユニットのふるまいを各仮想ユニット上においてより一層再現することができる。
【0023】
また、例えば、前記1以上の仮想ユニットは、第1仮想ユニット及び第2仮想ユニットを有し、前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち一方のみの第1コマンド応答を含み、編集された前記第1稼働ログは、前記第1仮想ユニット及び前記第2仮想ユニットのうち他方の仮想ユニットの第1コマンド応答のダミー値を含んでもよい。
【0024】
これにより、現実のユニットが発行した第1コマンド応答を取得できていないユニットの第1コマンド応答としてダミー値を第1稼働ログに追加することができるので、現実の各ユニットのふるまいを各仮想ユニット上において容易に再現することができる。
【0025】
また、例えば、さらに、取得した前記第2コマンドのタイプを判定する第2判定ステップを含み、前記コマンド応答発行ステップでは、判定された前記第2コマンドのタイプに応じて前記第1稼働ログから当該ユニットに応じた第1コマンド応答を抽出し、抽出した前記第1コマンド応答を前記第2コマンド応答として発行してもよい。
【0026】
これにより、各仮想ユニットは、当該仮想ユニットに応じた第1コマンド応答を第1稼働ログから自動で取得するので、第1コマンド応答の取得から第2コマンド応答の発行までの処理を自動で行うことができる。
【0027】
また、例えば、前記第1コマンド、及び、前記第2コマンドは、前記生産設備においてトラブルが発生したときの生産に関する生産データ、及び、前記1以上のユニットの設定条件に基づいて生成されたコマンドであってもよい。
【0028】
これにより、第1コマンドと第2コマンドとが同一のコマンドとなるので、生産設備のトラブル状態をより一層忠実に再現することができる。
【0029】
また、本開示の一態様に係るトラブル解析支援装置は、1以上のユニットから構成される生産設備の動作をシミュレートすることで、前記生産設備のトラブル解析を支援するトラブル解析支援装置であって、前記生産設備におけるトラブル発生時の稼働履歴を含む第1稼働ログから、前記1以上のユニットに発行された第1コマンドに対する前記1以上のユニットの応答である第1コマンド応答を取得する取得部と、取得した前記第1コマンド応答に基づいて、前記生産設備の動作をシミュレートするシミュレーション処理部とを備え、前記シミュレーション処理部は、前記1以上のユニットに対応するシミュレーション上の1以上の仮想ユニットに対して前記第1コマンドに対応する第2コマンドを発行し、前記1以上の仮想ユニットにおいて前記第2コマンドを実行し、前記第2コマンドに対する前記1以上の仮想ユニットの応答である第2コマンド応答を発行し、前記第2コマンド応答の発行では、取得した前記第1コマンド応答を、前記第2コマンド応答として発行する。また、本開示の一態様に係るプログラムは、上記のトラブル解析支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0030】
これにより、上記のトラブル解析支援方法と同様の効果を奏する。
【0031】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0033】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0034】
また、本明細書において、「部」又は「装置」は単にハードウェアによって機械的に実現される物理的構成に限定されず、その構成が有する機能の少なくとも一部をプログラムなどのソフトウェアにより実現されるものも含む。
【0035】
また、本明細書において、一致などの要素間の関係性を示す用語、並びに、数値、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度(例えば、10%程度)の差異をも含むことを意味する表現である。
【0036】
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係る解析支援装置を備えるトラブル解析支援システムについて、図1図6を参照しながら説明する。
【0037】
[1.トラブル解析支援システムの構成]
まず、本実施の形態に係るトラブル解析支援システムの構成について、図1図4を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係るトラブル解析支援システム1の全体構成を示す図である。
【0038】
図1に示すように、トラブル解析支援システム1は、製造システム10と、解析支援装置100と、表示装置200とを備える。トラブル解析支援システム1は、製造システム10で発生したトラブルを、解析支援装置100を用いたシミュレーションにより再現するための情報処理システムである。なお、製造システム10(例えば、制御装置20)と、解析支援装置100とは、通信可能に接続されている。通信方法は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0039】
製造システム10は、工場内等に配置される現実の製造システムであり、制御装置20と、1以上の部品実装装置30とを備える。1以上の部品実装装置30は、製造ラインを構成する。
【0040】
制御装置20は、製造システム10における生産を管理する。制御装置20は、例えば、生産データ及び設定条件に基づいて、製造ラインの1以上の部品実装装置30を制御する。制御装置20は、外部から入力される生産データ、及び、部品実装装置30を構成する各ユニットの設定条件等に基づいて、各ユニットを制御するためのコマンドを生成し、生成したコマンドを各ユニットに発行する。つまり、制御装置20は、コマンドを各ユニットに出力する。また、制御装置20は、各ユニットからコマンドに対する応答であるコマンド応答を取得する。制御装置20が部品実装装置30の各ユニットに発行するコマンドは、第1コマンドの一例である。
【0041】
生産データは、生産に関するデータであり、生産を行う対象の基板及び実装する部品に関する情報、生産数、生産時間等を含む。
【0042】
設定条件は、部品実装装置30の各ユニットの設定条件であり、各ユニットが有する構成部の条件(例えば、吸着ノズルの条件)、部品の実装位置等の情報を含む。
【0043】
コマンドは、各ユニットを制御するための動作内容又は処理内容に関する指示であり、例えば各ユニットに所定の動作を行わせることであってもよいし、センサ等による計測値を取得することであってもよいし、計測値が正常であるか否かの判定結果を出力させることであってもよい。ユニットが部品装着ヘッドユニット32である場合、所定の動作は、例えば、吸着動作、補正動作、実装動作等であり、計測値は、流量値、位置の補正値等であってもよい。また、判定結果は、流量値又は実装位置が正常であるか否かの結果であってもよい。
【0044】
コマンド応答は、コマンドに対する各ユニットの応答であり、ユニットが部品装着ヘッドユニット32である場合、流量値、又は、吸着エラー、装着エラー等のステータス情報を含む。
【0045】
トラブルは、制御装置20が発行したコマンドに対してユニットが正常に動作しないことであり、例えば、本来の生産が行えないことである。トラブルは、ユニットが部品装着ヘッドユニット32である場合、例えば、流量値エラー、装着エラー等である。トラブルは、部品実装装置30の動作が停止するエラーであってもよい。
【0046】
また、各ユニットのコマンド応答をまとめた情報を稼働ログとも記載する。
【0047】
制御装置20は、トラブルが発生した前後の生産データ、設定条件及び稼働ログを解析支援装置100に出力する。生産データ、設定条件及び稼働ログは、解析支援装置100において部品実装装置30の動作を再現するための情報である。本実施の形態では、制御装置20が部品実装装置30の動作を再現するための情報として稼働ログ(後述する第1稼働ログ50)を解析支援装置100に出力する。
【0048】
部品実装装置30は、製造ラインを構成する生産設備の一例であり、基板等の対象物(ワーク)に部品を実装する実装設備である。部品実装装置30の構成は、図2を用いて後述する。
【0049】
なお、部品は電子部品であり、例えば、抵抗、コンデンサ等であるがこれに限定されない。また、対象物は、基板に限定されず、所定の加工を行い得る被加工物であればよい。
【0050】
解析支援装置100は、生産データ、設定条件及び稼働ログに基づいて、部品実装装置30の動作をシミュレーション上で再現する。解析支援装置100は、部品実装装置30の動作(処理)を模擬する。本実施の形態では、解析支援装置100は、部品実装装置30においてトラブルが発生したときの当該部品実装装置30の動作をシミュレーション上で再現する。
【0051】
解析支援装置100は、パーソナルコンピュータ等により実現されるが、タブレット端末等の携帯端末により実現されてもよい。
【0052】
表示装置200は、解析支援装置100から出力される画像を表示する。表示装置200は、シミュレーション上で再現されている部品実装装置30の動作に関する情報を表示する。表示装置200は、例えば、液晶ディスプレイ等により実現されるが、これに限定されない。
【0053】
また、トラブル解析支援システム1は、ユーザからの入力を受け付ける受付装置(図示しない)を備えていてもよい。トラブル解析支援システム1は、解析支援装置100に対する指示を、受付装置を介して受け付けてもよい。受付装置は、キーボード、ボタン、タッチパネル等を含んで構成されてもよいし、音声を受け付けるマイクロフォン等を含んで構成されてもよい。
【0054】
なお、解析支援装置100及び表示装置200の少なくとも1つは、製造システム10が配置される工場の外部に設けられてもよい。
【0055】
ここで、製造システム10の構成について、さらに図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態に係る現実の製造システム10の機能構成を示すブロック図である。図2では、制御装置20が部品実装装置30の各ユニットに発行するコマンドを実線の矢印で示しており、各ユニットから制御装置20に発行されるコマンド応答を破線の矢印で示している。
【0056】
図2に示すように、製造システム10は、制御装置20と、部品実装装置30と、記憶部40とを備える。図2では、制御装置20が制御する部品実装装置30を便宜上1つとしているが、複数であってもよい。制御装置20が制御する部品実装装置30の数は、特に限定されない。
【0057】
制御装置20は、外部から取得した生産データD1及び設定条件D2に基づいて、部品実装装置30が有する各ユニットのそれぞれにコマンドを発行する。制御装置20は、例えば、部品装着ヘッドユニット32に部品の吸着を行わせる場合、部品装着ヘッドユニット32に流量値のチェックコマンドを発行する。
【0058】
また、制御装置20は、発行されたコマンドに対する応答であるコマンド応答を各ユニットのそれぞれから取得する。制御装置20は、例えば、流量値のチェックコマンドに対する応答として、流量値又は流量値の判定結果を含むコマンド応答を部品装着ヘッドユニット32から取得する。制御装置20は、各ユニットから取得したコマンド応答を第1稼働ログ50として記憶部40に記憶してもよい。第1稼働ログ50は、部品実装装置30の各ユニットのコマンド応答をまとめた情報であり、部品実装装置30の稼働履歴を記録したログである。第1稼働ログ50は、部品実装装置30でトラブルが発生したときの部品実装装置30の各ユニットのコマンド応答をまとめた情報を含む。
【0059】
部品実装装置30は、複数のユニットにより構成される。本実施の形態では、部品実装装置30は、部品供給部ユニット31と、部品装着ヘッドユニット32と、部品認識ユニット33と、軸制御ユニット34と、基板搬送制御ユニット35とを含んで構成される。各ユニットは、CPU等のコマンドを処理する処理部(ソフトウェア処理部)と、コマンドに基づいて動作する物理的構成(ハードウェア)とを含んで構成される。
【0060】
部品供給部ユニット31は、1以上のフィーダが並んで配置されており、部品装着ヘッドユニット32による取り出し位置に部品を供給する。フィーダは例えばテープフィーダであるが、例えば、バルクフィーダであってもよい。部品供給部ユニット31に対するコマンドは、取り出し位置に部品を供給すること等であり、コマンド応答は、部品を供給したフィーダを特定する情報、又は、部品の供給が正常に完了したか否かを示す情報等であるがこれに限定されない。
【0061】
部品装着ヘッドユニット32は、部品供給部ユニット31の取り出し位置に配置された部品を基板に装着(実装)する。部品装着ヘッドユニット32は、フィーダからの部品を吸着し個別に昇降可能な部品吸着ノズル(ノズル)が装着された装着ヘッド(ヘッド)等を含んで構成される。ヘッドには、例えば、複数のノズルが装着されている。また、部品装着ヘッドユニット32は、ノズルの内部を流れる空気の流量を計測する流量センサ等のセンサを有していてもよい。部品装着ヘッドユニット32に対するコマンドは部品供給部ユニット31から部品を吸着すること(部品吸着コマンド)、部品を基板に装着すること、流量値をチェックすること等であり、コマンド応答は、部品の吸着又は部品の装着が正常に完了したか否かを示す情報、計測された流量値等であるがこれに限定されない。
【0062】
部品認識ユニット33は、カメラ等の撮像装置を含んで構成されており、部品を撮像することで部品を認識する。部品認識ユニット33は、部品供給部ユニット31に配置されたフィーダから部品を取り出した装着ヘッドがカメラの上方を移動する際に、カメラは装着ヘッドに保持された状態の部品を撮像する。部品認識ユニット33は、この撮像結果を処理部(図示しない)の画像認識によって認識処理することにより、部品の識別及び位置の検出を行う。部品認識ユニット33は、例えば、ノズルが部品を吸着したか否かの判定、及び、吸着した部品の吸着位置のずれ量を検出するためのセンサとして機能してもよい。部品認識ユニット33に対するコマンドは、部品を認識することであり、コマンド応答は、部品の認識結果(例えば、位置ズレ)等であるがこれに限定されない。
【0063】
軸制御ユニット34は、サーボモータの駆動を制御することによって、部品装着ヘッドユニット32を移動させる。これにより、部品装着ヘッドユニット32に搭載されているノズルの位置が制御される。軸制御ユニット34に対するコマンドは、ノズルを所定位置に移動させることであり、コマンド応答は、ノズルの移動が正常に完了したか否かを示す情報、ノズルを支持するブロック番号等であるがこれに限定されない。
【0064】
基板搬送制御ユニット35は、上流側から搬入された基板を製造システム10に沿った方向に搬送し、部品実装作業を実行するために設定された実装ステージに位置決めして保持する。基板搬送制御ユニット35は、例えば、1以上の搬送レーンを含んで構成される。基板搬送制御ユニット35に対するコマンドは、基板を搬送すること等であり、コマンド応答は、基板の搬送が正常に完了したか否かを示す情報、又は、位置ズレ等であるが、これに限定されない。
【0065】
また、各ユニットには、当該ユニットの動作を検出する各種センサが設けられている。各ユニットには、当該ユニットのトラブルを検出可能な各種センサが設けられている。
【0066】
なお、部品実装装置30が有するユニットの数は特に限定されず、1以上であればよい。また、部品実装装置30の構成は、上記に限定されず、対象物及び部品の種類、形状、並びに、加工方法等に応じて適宜決定される。
【0067】
記憶部40は、製造システム10において製造を行うための各種情報、及び、製造中に計測された計測値等を記憶する記憶装置である。本実施の形態では、記憶部40は、第1稼働ログ50を記憶する。第1稼働ログ50は、各ユニットから発行されるコマンド応答と同じ情報が含まれている。第1稼働ログ50は、例えば、各ユニットのコマンド応答の時系列データであってもよい。
【0068】
また、記憶部40は、例えば、制御装置20が発行した各ユニットへのコマンドを記憶してもよいし、生産データD1及び設定条件D2を記憶してもよい。
【0069】
図3は、本実施の形態に係る第1稼働ログ50の一例を示す図である。図3に示す第1稼働ログ50は、例えば、共通の生産データD1及び設定条件D2に基づくコマンド応答である。
【0070】
図3に示すように、第1稼働ログ50は、軸制御ユニットデータ値と、部品供給ユニットデータ値と、部品装着ヘッドユニットデータ値と、ステータス情報データ値と、部品認識ユニットデータ値とを含む。軸制御ユニットデータ値は、軸制御ユニット34のコマンド応答に基づく値であり、図3の例では、ブロック番号、座標のID番号、ターン番号、装着順序、及び、吸着順序が含まれる。部品供給ユニットデータ値は、部品供給部ユニット31のコマンド応答に基づく値であり、図3の例では、物理フィーダのアドレス番号、及び、フィーダの製造番号が含まれる。
【0071】
部品装着ヘッドユニットデータ値、及び、ステータス情報データ値は、部品装着ヘッドユニット32のコマンド応答に基づく値であり、部品装着ヘッドユニットデータ値は、図3の例では、ノズルホルダのアドレス番号、及び、ノズルの製造番号を含み、ステータス情報データ値は、装着ステータス、及び、流量値を含む。装着ステータスは、装着エラーが発生したか否かを示し、流量値は流量センサの計測値を示す。部品認識ユニットデータ値は、部品認識ユニット33のコマンド応答に基づく値であり、図3の例では、認識補正量X1、Y1及びAと、吸着補正量X2及びY2と、吸着学習量X3及びY3とを含む。認識補正量X1、Y1及びAはそれぞれ、部品供給位置における部品の基準からの位置ずれ(ノズルによる吸着時の吸着位置の補正量)を示しており、部品のX軸方向、Y軸方向及び回転方向のずれを示す。吸着補正量X2及びY2はそれぞれ、ノズルによる部品の吸着時の吸着位置の基準からの位置ずれ(部品装着位置に対するノズルの位置の補正量)を示しており、ノズルのX軸方向及びY軸方向の位置ずれを示す。
【0072】
第1稼働ログ50は、例えば、所定期間における時系列データであってもよい。所定期間は、部品実装装置30においてトラブルが発生した時刻を含む期間であり、当該時刻を含む前後の期間であってもよいし、当該時刻を含む過去の期間であってもよい。例えば、流量値を例に説明すると、第1稼働ログ50は、流量値の時間変化を含んでいてもよい。第1稼働ログ50は、コマンド応答時のふるまいの詳細情報(例えば、流量値の時間変化)を含むとも言える。ふるまいとは、実測値に基づく各ユニットの状態又は状態の変化であり、例えば、ユニットが部品装着ヘッドユニット32である場合、流量値又は流量値の経時変化であるが、これに限定されない。
【0073】
なお、図3の例では、第1稼働ログ50に基板搬送制御ユニット35のコマンド応答に基づく値が含まれていないが、これに限定されず、基板搬送制御ユニット35のコマンド応答に基づく値が含まれてもよい。
【0074】
なお、図2では、第1稼働ログ50は、制御装置20により生成され記憶部40に記憶される例について説明したが、これに限定されず、例えば、各ユニットから直接取得されてもよい。第1稼働ログ50は、制御装置20を介さずに、各ユニットから直接取得されたコマンド応答に基づいて作成されてもよい。
【0075】
次に、解析支援装置100の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る解析支援装置100における、ソフトウェアシミュレータ上の製造システム10の機能構成を示すブロック図である。
【0076】
図4に示すように、解析支援装置100は、制御部120と、部品実装装置130とを備える。制御部120と、部品実装装置130とは、ソフトウェアシミュレータ上の機能構成を示す。
【0077】
制御部120は、製造システム10の制御装置20に相当する処理をシミュレータ上で行う。具体的には、制御部120は、外部から取得した生産データD1及び設定条件D2に基づいて、部品実装装置130が有する各ユニットのそれぞれにコマンドを発行する。制御部120は、制御装置20と同一の生産データD1及び設定条件D2が入力された場合、制御装置20と同一のコマンドを発行するように形成されている。制御部120は、例えば、制御装置20と同一の順序及びタイミングで各ユニットに制御装置20と同一のコマンドを発行するように形成されてもよい。制御部120に入力される生産データD1及び設定条件D2は、実際に部品実装装置30を稼働させるのに使用した生産データD1及び設定条件D2であり、例えば、製造システム10においてトラブルが発生したときの生産データD1及び設定条件D2と同一であるが、これに限定されない。
【0078】
部品実装装置130は、部品実装装置30の動作をシミュレートするための部品実装装置30に対応するシミュレーションモデルである。部品実装装置130は、1以上のユニット(モデル化されたユニットである仮想ユニット)を備える。図4の例では、部品実装装置130は、部品供給部ユニット131と、部品装着ヘッドユニット132と、部品認識ユニット133と、軸制御ユニット134と、基板搬送制御ユニット135とを備える。部品供給部ユニット131、部品装着ヘッドユニット132、部品認識ユニット133、軸制御ユニット134、及び、基板搬送制御ユニット135のうち1つのユニットは第1仮想ユニットの一例であり、他の1つのユニットは第2仮想ユニットの一例である。
【0079】
部品供給部ユニット131は、部品供給部ユニット31に対応するモデル化されたユニットであり、部品供給部ユニット31のソフトウェア処理部に相当する機能を有する。また、部品装着ヘッドユニット132は、部品装着ヘッドユニット32に対応するモデル化されたユニットであり、部品装着ヘッドユニット32のソフトウェア処理部に相当する機能を有する。また、部品認識ユニット133は、部品認識ユニット33に対応するモデル化されたユニットであり、部品認識ユニット33のソフトウェア処理部に相当する機能を有する。また、軸制御ユニット134は、軸制御ユニット34に対応するモデル化されたユニットであり、軸制御ユニット34のソフトウェア処理部に相当する機能を有する。また、基板搬送制御ユニット135は、基板搬送制御ユニット35に対応するモデル化されたユニットであり、基板搬送制御ユニット35のソフトウェア処理部に相当する機能を有する。なお、部品実装装置130には、第1稼働ログ50が入力される。当該第1稼働ログ50は、制御部120に入力される生産データD1及び設定条件D2に対応するコマンド応答を含む。
【0080】
従来であれば、シミュレーション上の各ユニットは、定常状態で動作するように形成される。例えば、各ユニットは、コマンドが入力されると、正常を示すコマンド応答を発行する。例えば、各ユニットは、部品実装装置30においてトラブルが発生したときの生産データD1及び設定条件D2に基づくコマンドが入力されても、正常を示すコマンド応答を発行する。このように、従来であれば、制御部120が発行するコマンドを制御装置20が発行するコマンドと一致させることは可能であるが、各ユニットが発行するコマンド応答までを一致させることはできていない。言い換えると、従来であれば、各ユニットのふるまいをシミュレーション上で再現できていない。例えば、シミュレーション上では、エラー時の吸着状態、装着状態は再現できない。
【0081】
しかしながら、部品実装装置30で発生したトラブルの原因解析を容易に行う観点から、各ユニット又はセンサのシミュレーション上でのふるまいを、現実の部品実装装置30の各ユニット又はセンサのふるまいと一致させることが望まれる。
【0082】
そこで、本実施の形態では、シミュレーション上の各ユニットは、コマンドが入力されると、当該コマンドに応じたコマンド応答を第1稼働ログ50から抽出し、抽出されたコマンド応答を制御部120に発行する。各ユニットは、制御部120からのコマンドが入力されると、正常を示すコマンド応答に置き換えて第1稼働ログ50から抽出されたコマンド応答を制御部120に発行する。これにより、各ユニットのシミュレーション上でのふるまいを、現実の部品実装装置30の各ユニットのふるまいと一致させることができる。例えば、トラブル発生時の現実の部品実装装置30の各ユニット又はセンサのふるまいと、各ユニット又はセンサのシミュレーション上でのふるまいとを、一致させることができる。例えば、流量値を例に説明すると、シミュレーション上の部品装着ヘッドユニット132のコマンド応答である流量値の経時変化を、現実の部品装着ヘッドユニット32のコマンド応答である流量値のトラブルが発生するまでの経時変化と一致させることができる。
【0083】
なお、ここでの一致は完全一致に限定されず、少なくとも一部のふるまいは異なっていてもよい。例えば、第1稼働ログ50に基板搬送制御ユニット35のコマンド応答が含まれていないので、シミュレーション上の基板搬送制御ユニット135のコマンド応答は、基板搬送制御ユニット35のコマンド応答と一致しないことがある。また、図2及び図4に示す各ユニット以外のユニット(図示しない)が存在し、当該ユニットの影響によりシミュレーション上のコマンド応答が現実の部品実装装置30のコマンド応答と一致しないことがある。
【0084】
また、部品実装装置130の各ユニット(仮想ユニット)から発行されるコマンド応答をまとめた情報を第2稼働ログ150と記載する。第2稼働ログ150は、トラブル解析支援システム1において製造システム10で取得される第1稼働ログ50に相当するログであり、部品実装装置130の稼働履歴を記録したログである。第2稼働ログ150は、部品実装装置30でトラブルが発生したときの部品実装装置130の各ユニット(各仮想ユニット)のコマンド応答をまとめた情報を含む。トラブルの原因解析を容易に行う観点から、第2稼働ログ150は、第1稼働ログ50と一致するとよい。
【0085】
[2.解析支援装置の動作]
続いて、上記のように構成される解析支援装置100における動作について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る解析支援装置100の動作を示すシーケンス図である。図5に示すステップS13~S17は、第1稼働ログ50から取得したコマンド応答(第1コマンド応答の一例)に基づいて、部品実装装置30の動作をシミュレートするシミュレーションステップの一例である。
【0086】
図5に示すように、現実の部品実装装置30においてトラブルが発生すると、制御装置20は第1稼働ログ50を部品実装装置130に出力し、部品実装装置130は、当該第1稼働ログ50を取得する(S11)。
【0087】
次に、部品実装装置130は、第1稼働ログ50からコマンド応答を抽出する(S12)。部品実装装置130の各ユニットは、当該ユニットに発行されたコマンドに応じたコマンド応答を第1稼働ログ50から抽出する。また、部品実装装置130の各ユニットは、当該ユニットに応じたコマンド応答を第1稼働ログ50から抽出する。部品実装装置130の各ユニットは、各ユニットに発行されたコマンド(第2コマンドの一例)に対する各ユニットそれぞれの応答であるコマンド応答(第2コマンド応答の一例)を第1稼働ログ50から取得するとも言える。ステップS12は、コマンド応答取得ステップの一例である。
【0088】
次に、制御部120は、部品実装装置30においてトラブルが発生したときの生産データD1及び設定条件D2に基づいて部品実装装置130の各ユニット(各仮想ユニット)を制御するコマンドを生成し(S13)、生成されたコマンドが各ユニット(各仮想ユニット)から発行される。ステップS13では、シミュレーション上の各ユニット(各仮想ユニット)に対して第1コマンドに対応する第2コマンドが発行されるとも言える。第1コマンド及び第2コマンドは、部品実装装置30においてトラブルが発生したときの生産データD1、及び、設定条件D2に基づいて生成されたコマンドであってもよい。第1コマンド及び第2コマンドとは、同一のコマンドであってもよい。ステップS13は、コマンド発行ステップの一例である。
【0089】
次に、制御部120は、生成したコマンドを各ユニットに発行し、各ユニットは、発行されたコマンドを取得する(S14)。
【0090】
次に、部品実装装置130は、取得したコマンドを実行する(S15)。具体的には、部品実装装置130の各ユニットは、当該ユニットに応じたコマンドを実行する。部品実装装置130の各ユニットは、例えば、擬似的にハードウェアを動かす処理を実行する。ステップS15は、コマンド実行ステップの一例である。
【0091】
次に、部品実装装置130は、ステップS15で実行したコマンドに対するコマンド応答に、ステップS12で抽出されたコマンド応答を設定する(S16)。部品実装装置130は、第2コマンド応答にステップS12で抽出されたコマンド応答を設定するとも言える。これにより、部品実装装置130は、部品実装装置30で発生したトラブルを再現することができる。
【0092】
次に、部品実装装置130は、コマンド応答を発行し、制御部120は当該コマンド応答を取得する(S17)。ステップS17では、第2コマンドに対する各ユニット(各仮想ユニット)それぞれの応答である第2コマンド応答として第1コマンド応答が発行されるとも言える。ステップS17は、コマンド応答発行ステップの一例である。
【0093】
次に、制御部120は、第2稼働ログ150を生成する(S18)。制御部120は、各ユニットがステップS17で制御部120に発行したコマンド応答を含む第2稼働ログ150を生成する。ステップS18は、稼働ログ生成ステップの一例である。
【0094】
次に、制御部120は、第2稼働ログ150を部品実装装置130に出力し、部品実装装置130は、当該第2稼働ログ150を取得する(S19)。
【0095】
次に、部品実装装置130は、第1稼働ログ50と第2稼働ログ150とが一致するか否かを判定する(S20)。ステップS20は、第1判定ステップの一例である。
【0096】
部品実装装置130は、第1稼働ログ50と第2稼働ログ150とが一致する場合(S20でYes)、トラブルの原因解析を継続し、第1稼働ログ50と第2稼働ログ150とが一致しない場合(S20でNo)、第1稼働ログ50を編集し(S21)、ステップS12に戻り、編集された第1稼働ログ50を用いて処理を継続する。部品実装装置130は、ステップS21において、第1仮想ユニット及び第2仮想ユニットのうち他方の仮想ユニットに対応する第1コマンド応答であって、ステップS20の後に追加で取得された第1コマンド応答を、第1稼働ログ50に追加してもよい。また、部品実装装置130は、ステップS21において、第1仮想ユニット及び第2仮想ユニットのうち他方の仮想ユニットの第1コマンド応答のダミー値を取得し、当該ダミー値を第1稼働ログ50に追加してもよい。ダミー値は、部品実装装置30において発行されたコマンド応答ではなく、ユーザ等により設定された値である。ダミー値は、予め設定されている値であってもよいし、ユーザ等の入力により取得された値であってもよい。
【0097】
なお、図5では、制御部120により第2稼働ログ150が生成される例について説明したが、部品実装装置130により第2稼働ログ150が生成されてもよい。
【0098】
図6は、本実施の形態に係る解析支援装置100の各ユニットの動作(トラブル解析支援方法)を示すフローチャートである。図6は、1以上のユニットから構成される部品実装装置30の動作をシミュレートすることで、部品実装装置30のトラブル解析を支援するトラブル解析支援方法を示すとも言える。なお、以下では、部品装着ヘッドユニット132を例に説明する。制御部120には、現実の部品実装装置30においてトラブルが発生したときの生産データD1及び設定条件D2が入力されているとする。
【0099】
図6に示すように、部品装着ヘッドユニット132は、制御部120からコマンドを受信したか否かを判定する(S101)。
【0100】
部品装着ヘッドユニット132は、コマンドを取得したと判定した場合(S101でYes)、コマンドのタイプを判定し(S102)、コマンドを受信していないと判定した場合(S101でNo)、コマンドを受信するまで待機する。ステップS102は、第2判定ステップの一例である。
【0101】
次に、部品装着ヘッドユニット132は、ステップS102で判定したコマンドのタイプに基づいて、第1稼働ログ50から該当するコマンド応答を抽出する(S103)。部品装着ヘッドユニット132は、例えば、判定されたコマンドのタイプに応じて第1稼働ログ50から当該ユニットに応じたコマンド応答(第1コマンド応答)を抽出し、抽出したコマンド応答を第2コマンド応答として発行してもよい。ステップS103は、図5に示すステップS12に相当する。
【0102】
次に、部品装着ヘッドユニット132は、ステップS101で取得したコマンドを実行する(S104)。ステップS104は、図5に示すステップS15に相当する。
【0103】
次に、部品装着ヘッドユニット132は、抽出したコマンド応答から、取得したコマンドに対するコマンド応答を生成する(S105)。部品装着ヘッドユニット132は、コマンド応答を、定常状態におけるコマンド応答から、ステップS103で抽出したコマンド応答に置き換えることで、当該コマンド応答を生成する。
【0104】
次に、部品装着ヘッドユニット132は、ステップS105で生成したコマンド応答を制御部120に発行する(S106)。
【0105】
上記は部品装着ヘッドユニット132の動作を示したが、他のユニットも同様に、図6に示す処理を実行する。
【0106】
上記の解析支援装置100によれば、部品実装装置30においてトラブルが発生したときに、製造システム10においてどのようなコマンドが発行され、かつ、当該コマンドに対してどのようなコマンド応答が発行されたかを、シミュレーション上で再現することができる。ユーザは、いずれかのユニットの第2コマンド応答にエラーが含まれる場合、当該第2コマンド応答が発行された前後のタイミングで各ユニットに発行されたコマンド等を確認することで、部品実装装置30におけるトラブルがソフトウェアのバグであるか否かを容易に確認することができる。また、解析支援装置100によれば、トラブルに対する対応策に効果があるか否かの確認をシミュレーション上で行うことができるので、対応検討を効率的に行うことができる。つまり、解析支援装置100は、ユーザにおけるトラブルの原因解析を支援することができる。
【0107】
(その他の実施の形態)
以上、一つ又は複数の態様に係るトラブル解析支援方法等について、実施の形態等に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態等に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示に含まれてもよい。
【0108】
例えば、上記実施の形態等では、生産設備として部品実装装置を例示したが、生産設備は部品実装装置に限定されない。生産設備は、対象物に所定の加工、又は、所定の作業を行う装置であればよい。生産設備は、例えば、はんだ塗布装置であってもよいし、検査装置であってもよいし、その他の装置であってもよい。
【0109】
また、上記実施の形態等において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0110】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、上記ステップの一部は実行されなくてもよい。
【0111】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0112】
また、上記実施の形態等に係るトラブル解析支援装置は、単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置により実現されてもよい。トラブル解析支援装置が複数の装置によって実現される場合、当該トラブル解析支援装置が有する各構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。トラブル解析支援装置が複数の装置で実現される場合、当該複数の装置間の通信方法は、特に限定されず、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。また、装置間では、無線通信及び有線通信が組み合わされてもよい。
【0113】
また、これらの全般的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の非一時的記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。プログラムは、記録媒体に予め記憶されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態等で説明した各構成要素は、ソフトウェアとして実現されても良いし、典型的には、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。これらは、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路(専用のプログラムを実行する汎用回路)又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)又は、LSI内部の回路セルの接続若しくは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて構成要素の集積化を行ってもよい。
【0115】
システムLSIは、複数の処理部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0116】
また、本開示の一態様は、図5及び図6のいずれかに示されるトラブル解析支援方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。
【0117】
また、例えば、プログラムは、コンピュータに実行させるためのプログラムであってもよい。また、本開示の一態様は、そのようなプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。例えば、そのようなプログラムを記録媒体に記録して頒布又は流通させてもよい。例えば、頒布されたプログラムを、他のプロセッサを有する装置にインストールして、そのプログラムをそのプロセッサに実行させることで、その装置に、上記各処理を行わせることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本開示は、生産設備のトラブルを解析する解析装置等に有用である。
【符号の説明】
【0119】
1 トラブル解析支援システム
10 製造システム
20 制御装置
30、130 部品実装装置
31、131 部品供給部ユニット
32、132 部品装着ヘッドユニット
33、133 部品認識ユニット
34、134 軸制御ユニット
35、135 基板搬送制御ユニット
40 記憶部
50 第1稼働ログ
100 解析支援装置
120 制御部
150 第2稼働ログ
200 表示装置
D1 生産データ
D2 設定条件
図1
図2
図3
図4
図5
図6