(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076908
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】半導体スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20230529BHJP
H03K 17/73 20060101ALI20230529BHJP
H03K 17/722 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H02M1/08 C
H03K17/73 E
H03K17/73 A
H03K17/722
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189937
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】720007752
【氏名又は名称】株式会社パルスパワー技術研究所
(72)【発明者】
【氏名】森 均
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA01
5H740BB01
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK04
(57)【要約】
【課題】主回路給電方式の半導体スイッチ装置において制御電力を供給する回路を個別安定化制御した場合に直列接続される各段の電圧が均等にならないこと。
【解決手段】半導体スイッチ素子駆動回路がスイッチングコンバータおよびこれを駆動する信号を受信する光信号受信器を有し、共通の光信号送信器からの駆動信号を伝送する手段を有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体スイッチ素子を直列接続し、各々の半導体スイッチ素子に並列接続された半導体スイッチ素子駆動回路を有する半導体スイッチ装置であって、前記半導体スイッチ素子駆動回路がスイッチングコンバータおよびこれを駆動する信号を受信する光信号受信器を有し、共通の光信号送信器からの駆動信号を伝送する手段を有することを特徴とする半導体スイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の半導体スイッチ装置であって前記スイッチングコンバータを操作する電源を得るための定電流回路を有し、前記スイッチングコンバータの出力電流の一部を前記定電流回路に合流させる回路を有することを特徴とする半導体スイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧電気回路を開閉する半導体スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体スイッチ素子は一素子の制御可能電圧は高々数キロボルトであり、数十キロボルト以上の高電圧電気回路を開閉する半導体スイッチ装置は必然的に複数の半導体スイッチ素子を直列接続して構成する必要がある。
【0003】
直列接続された複数の半導体スイッチ素子を同時に制御する方法としては、パルストランスにより制御電力を供給するのが一般的であるが、パルストランスは、特に高い耐電圧を要求される場合に、絶縁を確保するために大型、大質量化するという問題点があった。
【0004】
これに対し、開閉制御対象である主回路から制御電力を供給する「主回路給電方式」は原理的に制御電力を供給する部分には半導体スイッチ素子に印加されるのと同程度の数キロボルトの電圧が印加されるだけで、パルストランスによる給電を行う場合に必要となる数十キロボルト以上の高電圧に対する絶縁は必要とされないという利点があり、下記の特許文献1および特許文献2に示されるように、主に半導体スイッチ素子に印加される直流電圧を、抵抗器や定電流回路により電流を制限して利用する方法が実用化されてきた。
【0005】
図2は従来例の主回路給電方式における半導体スイッチ素子制御回路の一例を示す構成図であり、201は電流制限回路、202は定電圧回路、203は光信号受信器である。半導体スイッチ素子の陽極Pと陰極Nの間に印加される主回路高電圧から電流制限回路201により制御電力を得るのに必要な電流に制限し、定電圧回路202で安定化された制御電源電圧を生成し、光信号受信器203により半導体スイッチ素子の開閉を制御する。
【0006】
半導体スイッチ素子に印加される直流電圧から、電流制限回路201として抵抗器を用いて電流を制限して制御電力を供給する主回路給電方式の半導体スイッチ装置において、主回路の電圧が変化する幅が大きい場合には、主回路電圧が低い場合に対応した低い抵抗値の抵抗器を介して制御電力を供給する必要があるが、他方、主回路電圧が高くなると電圧の二乗に比例して抵抗器での損失が増えるという問題点があった。
【0007】
半導体スイッチ素子に印加される直流電圧から、電流制限回路201として定電流回路を用いて電流を制限して制御電力を供給する主回路給電方式の半導体スイッチ装置においては、
図3のグラフに示すように電圧に概ね比例して定電流回路での損失が増えるという問題点があった。
【0008】
図3において、横軸Vpnは半導体スイッチ素子に印加される直流電圧を、また縦軸IinおよびPinは各々制御電源回路入力電流、制御電源回路入力電力を示す。
【0009】
上記の問題に対し、
図1の構成図に示すように直列接続される各段の半導体スイッチ素子の各々に並列に効率の高いスイッチングコンバータを配置する方法を試したところ、個々のスイッチングコンバータが各々独立にその電圧を安定化しようとする制御の競合により、直列接続される各段の電圧が均等にならないという問題点が生じていた。
【0010】
図1において、1は半導体スイッチ素子、2はスイッチングコンバータと光信号受信器を含む半導体スイッチ素子制御回路、3は半導体スイッチ全体を開閉制御する光信号送信器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする第一の問題点は、主回路給電方式において制御電力を供給する回路を個別安定化制御した場合に直列接続される各段の電圧が均等にならないということである。
【0014】
解決しようとする第二の問題点は、主回路給電方式において制御電力を供給する回路の電力損失が大きいことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、主回路給電方式において制御電力を供給する回路を安定化するのに、直列接続された全段を同一信号により制御することを最も主要な特徴とする。
【0016】
本発明は、主回路給電方式において制御電力を供給する回路として、定電流回路と、定電圧回路と、スイッチングコンバータ回路と、スイッチングコンバータの出力電流の一部を定電流回路に合流させる整流器を有することを特徴とする。
【0017】
本発明は、主回路給電方式において制御電力を供給する回路を安定化するのにパルス周波数制御を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体スイッチ装置は、制御電力を供給する回路を同一制御信号で制御することにより、直列接続した各段の電圧が均等化されるという利点がある。
【0019】
本発明の半導体スイッチ装置は、制御電力を供給する回路の電力損失が小さく、使用する回路部品や放熱機構が小型化されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は従来例の半導体スイッチ装置の一例を示した構成図である。
【
図2】
図2は従来例の半導体スイッチ素子制御回路の一例を示した構成図である。
【
図3】
図3は従来例の主回路給電方式の回路の入力電圧-入力電流特性および入力電圧-入力電力特性の一例を示したグラフである。
【
図4】
図4は本発明の半導体スイッチ装置の一例を示した構成図である。
【
図5】
図5は本発明の半導体スイッチ素子制御回路中の制御電源生成部の一例を示した構成図である。
【
図6】
図6は本発明の半導体スイッチ素子制御回路の一例を示した回路図である。
【
図7】
図7は本発明の半導体スイッチ装置の他の一例を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
主回路給電方式において制御電力を供給する回路を個別安定化制御した場合に直列接続される各段の電圧が均等にならないという問題を、各段に設けたスイッチングコンバータの制御を各段に共通の制御信号を用いることで解決した。
【0022】
主回路給電方式において制御電力を供給する回路の電力損失が大きいという問題点を、主回路から制御電力を得るための定電流回路に、スイッチングコンバータの出力からの電流を合流させることにより、主回路からの電流を削減することで解決した。
【実施例0023】
図4は本発明装置の第一の実施例の構成図である。
図4において、1は半導体スイッチ素子である。また、4は半導体スイッチ素子制御回路であり、スイッチングコンバータと光信号受信器を含む。また、5は制御電源電圧を安定化するためのフィードバック制御回路、6および7は前記のフィードバック制御回路に半導体スイッチ素子に印加される電圧信号を生成する分圧抵抗器であり、8は各段の半導体スイッチ素子制御回路のスイッチングコンバータおよびゲート回路の各々に制御信号を送信するための光信号送信器である。
【0024】
図4において、半導体スイッチ装置の陽極Pと陰極Nとの間に直流電圧が印加されると、直列接続された半導体スイッチ素子1の各々に並列に接続された半導体スイッチ素子制御回路4には、入力電圧-入力電流特性が揃っているので均等に電圧が印加される。
【0025】
半導体スイッチ素子制御回路4に印加される電圧は、分圧抵抗器6および7によりフィードバック制御回路5にアナログ電圧信号として入力され、この電圧が半導体スイッチ素子制御回路4の動作に必要な値を超えた時点でフィードバック制御回路5は半導体スイッチ素子制御回路4内のスイッチングコンバータを作動させるスイッチング信号を生成し、光信号送信器8を介して半導体スイッチ素子制御回路4内のスイッチングコンバータ用光信号受信器Rconへ送る。
【0026】
図5は本発明の半導体スイッチ素子制御回路中の制御電源生成部の一例の構成図である。
図5において、41は定電流回路、42は定電圧回路、43はスイッチングコンバータ用の光信号受信器、44はスイッチングコンバータ駆動回路、45はスイッチングコンバータの出力電流の一部を定電流回路に合流させる整流器。46は制御電源Vconを供給するスイッチングコンバータである。
【0027】
スイッチングコンバータ46の出力電流の一部を整流器45により定電流回路41に合流させることにより、スイッチングコンバータの作動時には、半導体素子の陽極Vpから定電流回路41に流入する電流を大幅に低減することができるので、定電流回路41での電力損失が大幅に低減される。
【0028】
図6は本発明の半導体スイッチ素子制御回路の一例を示した回路図である。
図6において、41は定電流回路、42は定電圧回路、43はスイッチングコンバータ用の光信号受信器、44はスイッチングコンバータ駆動回路、45はスイッチングコンバータの出力電流の一部を定電流回路に合流させる整流器、46は制御電源Vconを供給するスイッチングコンバータ、47は半導体スイッチ素子開閉制御信号用の光信号受信器、48は半導体スイッチ素子駆動回路である。
【0029】
本例において定電流回路41は、バイアス抵抗器411、定電流制御用FET412、ツェナーダイオード413、電流検出用抵抗器414、合流電流調整用抵抗器415から構成されている。
【0030】
また、定電圧回路41は、ツェナーダイオード421、平滑コンデンサ422から構成されている。
【0031】
また、スイッチングコンバータ46は、FET461、コンバータトランス462、コンバータ整流器463、第一の平滑コンデンサ464、電圧安定化回路465、第二の平滑コンデンサ466から構成されている。
【0032】
定電流回路41において、半導体素子の陽極Vpに電圧が印加されるとバイアス抵抗器411からの電流でツェナーダイオード413の両端にはほぼ一定のツェナー電圧が現れ、定電流制御用FET412が導通し始めるゲート-ソース間電圧と電流検出用抵抗器414の電圧降下の和がツェナーダイオード413のツェナー電圧に等しくなるように、定電流制御用FET412のソース電流が制御される。
【0033】
スイッチングコンバータ46が動作している状態では、整流器45および合流電流調整用抵抗器415を介してスイッチングコンバータ46の出力電流の一部が電流検出用抵抗器414に合流することで、電流検出用抵抗器414の電圧降下が一定になるよう、定電流制御用FET412のソース電流が抑制されて、定電流制御用FET412の損失が低減される。
【0034】
スイッチングコンバータ46が動作している状態で光信号受信器47に半導体スイッチ素子開閉制御信号が伝送されると、半導体スイッチ素子駆動回路48から半導体スイッチ素子を導通させるトリガパルスが出力される。
また、9は絶縁増幅器回路であり、半導体スイッチ装置の陽極P側に最も近い半導体スイッチ素子制御回路4の制御電源電圧Vconの値をフィードバック制御回路5に絶縁伝送する。
本実施例においては、半導体スイッチ装置の陽極P側を接地電位とし、陰極N側を高電圧としているので、接地電位に置くフィードバック制御回路5と電位が最も近い半導体スイッチ素子制御回路4から制御電源電圧Vconのアナログ信号を伝送する。この場合でも半導体スイッチ素子制御回路4は、通常は半導体スイッチ素子1の陰極側に置くので、接地電位に置くフィードバック制御回路5とは半導体スイッチ素子1段分の電位差があり、この電位差を超えて制御電源電圧Vconのアナログ信号を伝送するために、絶縁増幅器回路9を使用する必要がある。
本実施例は、第一の実施例と絶縁増幅器回路9を有することの相違はあるが、他の構成は同一であるので、第一の実施例と同様に、直列接続した各段の電圧が均等化され、また制御電力を供給する回路の電力損失が小さいという利点を有する。