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  • 特開-圧力センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076912
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/02 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
G01L13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189944
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】徳田 智久
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE13
2F055FF07
2F055FF43
2F055GG12
2F055HH08
(57)【要約】
【課題】複数の測定レンジのうちの少なくとも1つを容易に変更できるようにする。
【解決手段】圧力センサ10は、被測定流体の第1圧力P1を受圧することにより変形する第1ダイアフラム21と、被測定流体の第2圧力P2を受圧することにより変形する第2ダイアフラム22と、それぞれが第1圧力P1と第2圧力P2との差圧を検出するように構成され、かつ、測定レンジの異なる複数の差圧センサチップ61~63と、を備える。圧力センサ10は、さらに、第1圧力P1を複数の差圧センサチップ61~63のそれぞれに伝達する第1圧力伝達流体F1が封入された第1伝達路30Aと、第2圧力P2を複数の差圧センサチップ61~63に伝達する第2圧力伝達流体F2が封入された第2伝達路30Bと、を備える圧力伝達部材30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体の第1圧力を受圧することにより変形する第1ダイアフラムと、
前記被測定流体の第2圧力を受圧することにより変形する第2ダイアフラムと、
それぞれが前記第1圧力と前記第2圧力との差圧を検出するように構成され、かつ、測定レンジの異なる複数の差圧センサチップと、
前記第1ダイアフラムが受圧した前記第1圧力を前記複数の差圧センサチップそれぞれに伝達する第1圧力伝達流体が封入された第1伝達路と、前記第2ダイアフラムが受圧した前記第2圧力を前記複数の差圧センサチップそれぞれに伝達する第2圧力伝達流体が封入された第2伝達路と、を備える圧力伝達部材と、
を備える圧力センサ。
【請求項2】
前記第1伝達路は、
前記第1ダイアフラムが面する受圧室を第1端に有する第1-1伝達路と、
前記第1-1伝達路の前記第1端と反対の第2端から延びて途中で分岐し、前記複数のセンサチップのそれぞれに至る第1-2伝達路と、を備え、
前記第2伝達路は、
前記第2ダイアフラムに面する受圧室を第1端に有する第2-1伝達路と、
前記第2-1伝達路の前記第1端と反対の第2端から延びて途中で分岐し、前記複数のセンサチップのそれぞれに至る第2-2伝達路と、を備え、
前記圧力伝達部材は、
前記第1-1伝達路及び前記第2-1伝達路を形成している第1部材と、
前記第1部材に接続され、前記第1-2伝達路及び前記第2-2伝達路を形成している第2部材と、を備える、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記複数の差圧センサチップのそれぞれは、前記差圧により変形するセンサダイアフラムと、前記センサダイアフラムの変形を検出する検出素子と、を備え、
前記複数の差圧センサチップのそれぞれの前記センサダイアフラムの大きさ、形状、厚さ、及び、材料のうちの少なくとも1つが前記複数の差圧センサチップ間で異なることで、複数の差圧センサチップの各測定レンジが異なり、
前記複数の差圧センサチップは、最も高差圧側の測定レンジを有する第1差圧センサチップと、当該第1差圧センサチップの測定レンジよりも低差圧側の測定レンジを有する1以上の第2差圧センサチップと、からなり、
前記1以上の第2差圧センサチップのうちの少なくとも1つは、前記差圧により変形した前記センサダイアフラムが接触することで当該センサダイアフラムをそれ以上変形させないようにする過大圧保護機構を備える、
請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の測定レンジを有する圧力センサが開示されている。この圧力センサでは、1つの差圧センサチップ内に複数のダイアフラムが設けられており、測定に使用するダイアフラムが切り替えられることで、測定レンジが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-13996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧力センサでは、1つの差圧センサチップ内に複数のダイアフラムが形成されているため、例えば、圧力センサの製造段階において、一部の測定レンジを変更したいときであったときには、差圧センサチップ全体の設計のし直しが必要となる。ここで、圧力センサで測定される圧力の測定レンジは、当該圧力センサの使用先に応じて異なることが多く、圧力センサの測定レンジは、当該圧力センサの納入先に応じて容易に変更可能とすることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、複数の測定レンジのうちの少なくとも1つを容易に変更できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明に係る圧力センサは、被測定流体の第1圧力を受圧することにより変形する第1ダイアフラムと、前記被測定流体の第2圧力を受圧することにより変形する第2ダイアフラムと、それぞれが前記第1圧力と前記第2圧力との差圧を検出するように構成され、かつ、測定レンジの異なる複数の差圧センサチップと、前記第1ダイアフラムが受圧した前記第1圧力を前記複数の差圧センサチップそれぞれに伝達する第1圧力伝達流体が封入された第1伝達路と、前記第2ダイアフラムが受圧した前記第2圧力を前記複数の差圧センサチップそれぞれに伝達する第2圧力伝達流体が封入された第2伝達路と、を備える圧力伝達部材と、を備える。
【0007】
前記第1伝達路は、前記第1ダイアフラムが面する受圧室を第1端に有する第1-1伝達路と、前記第1-1伝達路の前記第1端と反対の第2端から延びて途中で分岐し、前記複数のセンサチップのそれぞれに至る第1-2伝達路と、を備え、前記第2伝達路は、前記第2ダイアフラムに面する受圧室を第1端に有する第2-1伝達路と、前記第2-1伝達路の前記第1端と反対の第2端から延びて途中で分岐し、前記複数のセンサチップのそれぞれに至る第2-2伝達路と、を備え、前記圧力伝達部材は、前記第1-1伝達路及び前記第2-1伝達路を形成している第1部材と、前記第1部材に接続され、前記第1-2伝達路及び前記第2-2伝達路を形成している第2部材と、を備える、ようにしてもよい。
【0008】
前記複数の差圧センサチップのそれぞれは、前記差圧により変形するセンサダイアフラムと、前記センサダイアフラムの変形を検出する検出素子と、を備え、前記複数の差圧センサチップのそれぞれの前記センサダイアフラムの大きさ、形状、厚さ、及び、材料のうちの少なくとも1つが前記複数の差圧センサチップ間で異なることで、複数の差圧センサチップの各測定レンジが異なり、前記複数の差圧センサチップは、最も高差圧側の測定レンジを有する第1差圧センサチップと、当該第1差圧センサチップの測定レンジよりも低差圧側の測定レンジを有する1以上の第2差圧センサチップと、からなり、前記1以上の第2差圧センサチップのうちの少なくとも1つは、前記差圧により変形した前記センサダイアフラムが接触することで当該センサダイアフラムをそれ以上変形させないようにする過大圧保護機構を備える、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、差圧センサチップの交換のみで圧力センサの測定レンジが変更可能となっており、複数の測定レンジのうちの少なくとも1つを容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る圧力センサの概略構成を示す一部断面図である。
図2】差圧センサチップの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る圧力センサを、図面を参照しながら説明する。なお、図面に設定されている上下方向は説明の便宜上設定されているものであり、実際の天地方向とは異なることがある。例えば、圧力センサは、図1の上方が天地方向の地面側に向く向きで設置されてもよい。
【0012】
図1に示す本実施の形態に係る圧力センサ10は、被測定流体が流れる配管の第1位置における被測定流体の第1圧力P1と、この配管の第2位置における被測定流体の第2圧力P2と、の差圧を検出する。被測定流体は、液体でも気体でもよい。圧力センサ10は、検出した差圧を外部に発信する。圧力センサ10は、ここでは差圧発信器として構成されている。発信される差圧は、例えば、被測定流体の流量の測定に使用される。圧力センサ10は、第1圧力P1を低圧側の圧力とし、第2圧力P2を高圧側の圧力とするように配置される。
【0013】
図1に示すように、圧力センサ10は、第1ダイアフラム21と、第2ダイアフラム22と、圧力伝達部材30と、回路部40と、回路収容部材50と、差圧センサチップ61~63と、を備える。なお、図1では、断面図として描かれるべき、後述の第2部材32、後述のピン部材42、差圧センサチップ61~63が、図1の紙面の手前から見た立面図として描かれている。
【0014】
第1ダイアフラム21は、所定の流路91により引き込まれた第1圧力P1を有する被測定流体に接し、第1圧力P1を受圧することにより変形する。第2ダイアフラム22は、所定の流路92により引き込まれた第2圧力P2を有する被測定流体に接し、第2圧力P2を受圧することにより変形する。各ダイアフラム21及び22は、圧力伝達部材30の四角柱状の詳細は後述する第1部材31の4つの外側面のうちの互いに反対に向いた第1面31A及び第2面31Bにそれぞれ固定されている。
【0015】
圧力伝達部材30は、ダイアフラム21及び22がそれぞれ受圧した圧力P1及びP2を、差圧センサチップ61~63のそれぞれに伝達する。圧力伝達部材30は、四角柱状の第1部材31、及び、第1部材31に接続された三又のパイプ32A及び32Bを含んで構成されている第2部材32を備える。第1部材31は、受圧ボディとも呼ばれる。このような第1部材31は、上述のようにダイアフラム21及び22が固定され、第1圧力P1及び第2圧力P2を後述の受圧室S1及びS2により受圧する。
【0016】
圧力伝達部材30は、第1部材31により形成された第1-1伝達路30AAと、第2部材32のパイプ32Aにより形成された第1-2伝達路30ABとを含む第1伝達路30Aを備える。第1伝達路30Aには、第1ダイアフラム21が受圧した第1圧力P1を差圧センサチップ61~63のそれぞれに伝達する第1圧力伝達流体F1が封入されている。
【0017】
第1-1伝達路30AAは、第1ダイアフラム21の被測定流体に接する面と反対の面が面する受圧室S1を第1端として備える。受圧室S1は、第1部材31の第1面31Aに開口した凹部からなる。受圧室S1は、第1ダイアフラム21により封止されている。第1-1伝達路30AAの受圧室S1以外の部分は、第1部材31内を通る孔からなる。第1-1伝達路30AAの第1端と反対の第2端は、第1部材31の上面に開口している。この第1-1伝達路30AAの第2端には、第1-2伝達路30ABを形成している第2部材32のパイプ32Aの一端が挿入され接続されている。
【0018】
第1-2伝達路30ABは、第2部材32の途中で3つに分岐する三又のパイプ32Aの中空部からなる。パイプ32Aの分岐していない方の一端は、上述のように第1部材31に接続されている。パイプ32Aの分岐している方の3つの他端は、差圧センサチップ61~63の各低圧側の圧力入力部にそれぞれ接続されている。このような構成により、第1-2伝達路30ABは、第1-1伝達路30AAの第2端から延びて途中で分岐し、差圧センサチップ61~63のそれぞれに至る。
【0019】
圧力伝達部材30は、第1部材31により形成された第2-1伝達路30BAと、第2部材32のパイプ32Bにより形成された第2-2伝達路30BBとを含む第2伝達路30Bを備える。第2伝達路30Bには、第2ダイアフラム22が受圧した第2圧力P2を差圧センサチップ61~63のそれぞれに伝達する第2圧力伝達流体F2が封入されている。
【0020】
第2-1伝達路30BAは、第2ダイアフラム22の被測定流体に接する面と反対の面が面する受圧室S2を第1端として備える。受圧室S2は、第1部材31の第2面31Bに開口した凹部からなる。受圧室S2は、第2ダイアフラム22により封止されている。第2-1伝達路30BAの受圧室S2以外の部分は、第1部材31内を通る孔からなる。第2-1伝達路30BAの第1端と反対の第2端は、第1部材31の上面に開口している。この第2-1伝達路30BAの第2端には、第2-2伝達路30BBを形成している第2部材32のパイプ32Bの一端が挿入され接続されている。
【0021】
第2-2伝達路30BBは、第2部材32の途中で3つに分岐する三又のパイプ32Bの中空部からなるパイプ32Bの分岐していない方の一端は、上述のように第1部材31に接続されている。パイプ32Bの分岐している方の3つの他端は、差圧センサチップ61~63の各高圧側の圧力入力部にそれぞれ接続されている。このような構成により、第2-2伝達路30BBは、第2-1伝達路30BBの第2端から延びて途中で分岐し、差圧センサチップ61~63のそれぞれに至る。
【0022】
回路部40は、圧力センサ10の動作を制御する。回路部40は、差圧センサチップ61~63が実装された回路基板41と、外部接続ためのピン部材42と、回路基板41とピン部材42とを接続する配線43と、を備える。ピン部材42は、配線43に接続された複数の接続ピン42Aと、接続ピン42Aが埋設されて接続ピン42Aを支持する支持部42Bとを備える。
【0023】
回路収容部材50は、回路部40を収容している。回路収容部材50は、圧力伝達部材30の第1部材31に固定されている。回路収容部材50は、第2部材32、回路基板41、及び、差圧センサチップ61~63を内部に収容する筒状部材51と、筒状部材51内に配置され、回路基板41及び差圧センサチップ61~63などを覆う蓋体52と、を備える。蓋体52は、回路部40のピン部材42を支持している。筒状部材51と蓋体52とは、接続ピン42Aに接続される、外部配線のコネクタを受け入れる空間S11を形成している。
【0024】
差圧センサチップ61~63は、回路基板41の上面に配置されている。差圧センサチップ61~63にそれぞれ接続されている第2部材32のパイプ32A及び32Bは、回路基板41に形成されている3つの貫通孔を通って、回路基板41の下面側から上面側に引き回されている。
【0025】
第1ダイアフラム21が第1圧力P1を受圧して図面右側に膨らむように変形した場合、第1ダイアフラム21が面している受圧室S1の体積が減少する。これにより、受圧室S1を含む第1伝達路30Aに封入されている第1圧力伝達流体F1が、差圧センサチップ61~63側に押される。これにより、第1ダイアフラム21で受圧された第1圧力P1が差圧センサチップ61~63のそれぞれに伝達される。
【0026】
第2ダイアフラム22が第2圧力P2を受圧して図面左側に膨らむように変形した場合、第2ダイアフラム22が面している受圧室S2の体積が減少する。これにより、受圧室S2を含む第2伝達路30Bに封入されている第2圧力伝達流体F2が、差圧センサチップ61~63側に押される。これにより、第2ダイアフラム22で受圧された第2圧力P2が差圧センサチップ61~63のそれぞれに伝達される。
【0027】
差圧センサチップ61~63のそれぞれは、第1圧力伝達流体F1を介して伝達された第1圧力P1と、第2圧力伝達流体F2を介して伝達された第2圧力P2との差圧を検出するように構成されている。差圧センサチップ61~63は、互いに異なる測定レンジを有する。
【0028】
差圧センサチップ61は、比較的低差圧の測定レンジである低差圧測定レンジを有する。つまり、差圧センサチップ61は、感度の高いセンサチップとして形成されている。差圧センサチップ62は、差圧センサチップ61の低差圧測定レンジよりも高差圧側の測定レンジである中差圧測定レンジを有する。差圧センサチップ63は、差圧センサチップ62の中差圧測定レンジよりも高差圧側の測定レンジである高差圧測定レンジを有する。差圧センサチップ61~63を総称して差圧センサチップ60ともいう。測定レンジは、その測定値の信頼性が担保されたレンジなどであればよい。低差圧測定レンジに含まれる高差圧側の一部と、中差圧測定レンジに含まれる低差圧側の一部とは重複していてもよい。低差圧測定レンジに含まれる高差圧側の一部と、中差圧測定レンジに含まれる低差圧側の一部とは重複していてもよい。このように、互いに異なる測定レンジは、一部重複があってもよい。
【0029】
差圧センサチップ61~63の構造は任意である。ここでは、これら構造の一例を、差圧センサチップ60の構造として図2を参照して説明する。差圧センサチップ60は、例えば、図2に示すように、第1層60A、第2層60B、及び第3層60Cからなる積層構造を有する。
【0030】
第1層60Aは、その上面に形成された凹部60AAと、凹部60AA及び図1に示す第1伝達路30Aの第1-2伝達路30ABと連通し、第1圧力伝達流体F1を凹部60AAに導入している導入路60ABとを有する。第1層60Aは、例えば、シリコンなどを材料として形成されている。
【0031】
第2層60Bは、第1層60A上に形成され、第1層60Aの凹部60AAを覆っている。第2層60Bの凹部60AAを覆っている部分は、センサダイアフラムSDとなっている。第2層60Bには、センサダイアフラムSDの変位を検出する検出素子Dが形成されている。検出素子Dは、半導体ピエゾ抵抗素子を用いた歪みゲージなどからなる。第2層60Bは、例えば、シリコンなどからなる主層と、この主層の所定領域に不純物を添加して形成された、検出素子Dを構成する活性層と、この活性層を覆うように主層に形成された、酸化シリコンなどからなる絶縁保護層と、を有する(図2では、主層と絶縁保護層とが1つの層として描かれている)。
【0032】
第3層60Cは、第2層60B上に形成されている。第3層60Cは、第2層60Bにより覆われた凹部60CAと、凹部60CA及び第2伝達路30Bの第2-2伝達路30BBと連通し、第2圧力伝達流体F2を凹部60CAに導入している導入路60CBとを有する。導入路60CBは、第2層60Bを介して第1層60Aを貫通し、これにより、第1層60A側に位置する第2-2伝達路30BBと接続されている。第3層60Cは、例えば、シリコンなどを材料として形成されている。
【0033】
第2層60BのセンサダイアフラムSDには、第1層60Aの凹部60AA内に導入されている第1圧力伝達流体F1により第1圧力P1が加わる。センサダイアフラムSDには、第3層60Cの凹部60CA内に導入されている第2圧力伝達流体F2により第2圧力P2が加わる。このため、センサダイアフラムSDは、第1圧力P1と第2圧力P2との差圧により変形する。上述のように、ここでは、第1圧力P1が第2圧力P2よりも低圧となるので、センサダイアフラムSDは、第1層60A側(図2の下側)に膨らむように変形する。検出素子Dは、このセンサダイアフラムSDの変形度に応じた電気信号を不図示の配線などにより、図1に示す回路基板41に出力する。この電気信号は、例えば、センサダイアフラムSDの変形度に応じた電圧値を持つ電圧信号である。このようにして、検出素子Dは、センサダイアフラムSDの変形を検出する。
【0034】
図2に戻り、第1層60Aの凹部60AAの内面Yは、当該凹部60AA側に膨らむようにある変形したセンサダイアフラムSDがそれ以上変形しないようにセンサダイアフラムSDに接触する。従って、内面Yは、過大な差圧によるセンサダイアフラムSDの過度な変形を機械的に抑制することができる。このように、内面Yは、許容される上限の変形度合いまで変形したセンサダイアフラムSDをそれ以上変形させないようにする過大圧保護機構として機能する。以下、この内面Yを過大圧保護機構Yともいう。
【0035】
上述のように、差圧センサチップ61~63は、互いに異なる測定レンジを備える。異なる測定レンジは、センサダイアフラムSDの大きさ、形状、厚さ、及び、材料のうちの少なくとも1つが差圧センサチップ61~63の間で異なることで実現される。なお、センサダイアフラムSDの形状には、アスペクト比も含まれる。過大圧保護機構Yつまり内面Yの形状は、当然センサダイアフラムSDの形状などに応じて適宜変更される。
【0036】
差圧センサチップ61~63のうち、最も高差圧側の測定レンジを有する差圧センサチップ63の第1層60Aの凹部60AAは、変形したセンサダイアフラムSDが内面Yに接触しない形状に形成されてもよい。つまり、差圧センサチップ63は、過大圧保護機構Yを備えなくてもよい。これは、差圧センサチップ63が最も高差圧側の測定レンジを有し、当該差圧センサチップ63にとって過大な差圧は発生し難いからである。例えば、凹部60AAは、図2の一点鎖線に示すように立方体形状としてもよい。
【0037】
図1の回路基板41は、第1圧力P1と第2圧力P2との差圧を測定する際、まず、差圧センサチップ61の検出素子Dからの電気信号の電圧値などの値が第1閾値以上であるかを判別する。第1閾値は、差圧センサチップ61の測定レンジの上限値に対応する電気信号の値として予め設定されている。
【0038】
回路基板41は、上記の判別結果が肯定であれば、上記値に基づいて差圧を導出する。回路基板41は、この判別結果が否定であれば、差圧センサチップ62の検出素子Dからの電気信号の電圧値などの値が第2閾値以上であるかを判別する。第2閾値は、差圧センサチップ62の測定レンジの上限値に対応する電気信号の値として予め設定されている。第1閾値及び第2閾値は、差圧センサチップ61又は62の第1層60Aの凹部60AAの内面Yに、変形したセンサダイアフラムSDが接触する直前に検出素子Dにより出力される電気信号の値などとしてもよい。
【0039】
回路基板41は、上記の差圧センサチップ62についての判別結果が肯定であれば、上記値に基づいて差圧を導出する。回路基板41は、この判別結果が否定であれば、差圧センサチップ63の検出素子Dからの電気信号の電圧値などの値に基づいて差圧を導出する。
【0040】
回路基板41は、上記のいずれかの判別結果を受けて導出した差圧を、例えば、4~20mAの直流電気信号のかたちで配線43及びピン部材42を介して外部、例えば上位装置に出力する。
【0041】
以上説明したように、この実施の形態では、複数の差圧センサチップ61~63により複数の測定レンジが実現されている。従って、予め複数種類の差圧センサチップを用意しておき、圧力センサ10に搭載する差圧センサチップを変更するだけで、これから製造しようとする圧力センサ10の測定レンジを変更できる。従って、圧力センサが有する複数の測定レンジのうちの少なくとも1つが容易に変更される。これにより、出荷先が求める測定レンジを有する圧力センサを容易に製造できる。また、1の圧力センサ10に複数の測定レンジを搭載させたので、圧力センサを測定レンジごとに複数台用意する必要がなくなり、圧力センサの導入の低コスト化、省スペース化も実現される。
【0042】
また、この実施の形態では、ダイアフラム21及び22の圧力P1及びP2をそれぞれ伝達する伝達路30A及び30Bを複数の差圧センサチップ60に対応して分岐させている。そして、分岐前の第1-1伝達路30AA及び第2-1伝達路30BAを構成する部材を第1部材31とし、第1-2伝達路30AB及び第2-2伝達路30BBを構成する部材を第2部材32としている。このように、第1-1伝達路30AA及び第2-1伝達路30BAを形成する部材と、第1-2伝達路30AB及び第2-2伝達路30BBを形成する部材とを分けることで、第1-1伝達路30AA及び第2-1伝達路30BAを形成する第1部材31については、従来の差圧発信器で使用される受圧ボディなどを利用することができる。これにより、従来構造からの少ない変更により本実施の形態に係る構造を得ることができる。
【0043】
また、上記実施の形態では、複数の差圧センサチップ61~63は、最も高差圧側の測定レンジを有する差圧センサチップ63である第1差圧センサチップと、この第1差圧センサチップの測定レンジよりも低差圧側の測定レンジを有する2つの差圧センサチップ61及び62である1以上の第2差圧センサチップと、からなる。そして、この1以上の第2差圧センサチップのうちの少なくとも1つが、センサダイアフラムSDが接触することで当該センサダイアフラムをそれ以上変形させないようにする過大圧保護機構(内面)Yを備える。センサダイアフラムSDによる測定レンジつまり差圧の測定感度と、耐圧性とは、トレードオフの関係がある。比較的低差圧の測定レンジを有する第2差圧センサチップについて、過大圧保護機構Yを設けることにより、差圧の測定感度を高くしつつ耐圧性も確保される。さらに、センサダイアフラムSDの過度な変形が抑制され、過度な変形でセンサダイアフラムSDが恒常的に撓み、差圧の測定精度が低下するといった不都合が抑制される。従って、本実施の形態の圧力センサにより、精度の良い差圧測定が可能となる。
【0044】
上記で説明した実施の形態については、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態で説明した各部材の形状などは任意である。上記実施の形態では、圧力センサ10が3つの差圧センサチップ61~63を有しているが、本発明に係る圧力センサは、複数の差圧センサチップを備えるものであればよい。差圧センサチップは、ダイアフラム以外の形式で差圧を検出するチップであってもよい。複数の差圧センサチップは、互いに別個の部品として構成されたものであればよい。第2部材32は、第1部材31と同様に、立方体形状に形成されてもよい。そして、立方体形状に形成された孔を、第1-2伝達路30AB及び第2-2伝達路30BBとしてもよい。第1部材31及び第2部材32の代わりに、第1伝達路30Aの全部を形成する部材と第2伝達路30Bの全部を形成する部材との組み合わせ、第1伝達路30A及び第2伝達路30Bの全部それぞれを形成する部材などが採用されてもよい。各ダイアフラム21及び22は、例えば、上下方向に向くように配置されてもよい。過大圧保護機構Yの構成も任意である。過大圧保護機構Yは、例えば、センサダイアフラムSDの過度な変形を機械的に抑制する任意の構成であればよい。
【符号の説明】
【0045】
10…圧力センサ、21…第1ダイアフラム、22…第2ダイアフラム、30…圧力伝達部材、30A…第1伝達路、30AA…第1-1伝達路、30AB…第1-2伝達路、30B…第2伝達路、30BA…第2-1伝達路、30BB…第2-2伝達路、31…第1部材、31A…第1面、31B…第2面、32…第2部材、32A,32B…パイプ、40…回路部、41…回路基板、42…ピン部材、42A…接続ピン、42B…支持部、43…配線、50…回路収容部材、51…筒状部材、52…蓋体、60…差圧センサチップ、60A…第1層、60AA…凹部、60AB…導入路、60B…第2層、60C…第3層、60CA…凹部、60CB…導入路、61~63…差圧センサチップ、91,92…流路、D…検出素子、F1…第1圧力伝達流体、F2…第2圧力伝達流体、P1…第1圧力、P2…第2圧力、S1,S2…受圧室、S11…空間、SD…センサダイアフラム、Y…内面(過大圧保護機構)。
図1
図2