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  • 特開-異常判定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076913
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】異常判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/48 20220101AFI20230529BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230529BHJP
【FI】
G01J5/48 C
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189945
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 友朋
【テーマコード(参考)】
2G066
5L096
【Fターム(参考)】
2G066AC07
2G066AC09
2G066BA08
2G066BC15
2G066CA02
2G066CA04
2G066CA16
5L096BA02
5L096DA03
5L096FA02
5L096FA18
5L096HA11
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】判定対象の構成が変更されても、手間をかけることなく、異常の判定を継続して実施する。
【解決手段】特定部102は、例えばカメラ201で撮像した画像から特徴を抽出し、抽出した特徴に基づいて画像における複数の機器の各々区画および複数の機器の各々の種類を特定し、領域決定部102は、特定部102が特定した複数の機器の各々の区画に対応する熱画像における各々の区画を決定し、温度算出部104は、領域決定部102が求めた熱画像の区画の各々における温度を算出し、判定部105は、温度算出部104が算出した温度と設定されている基準温度との比較により機器の異常を判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる複数の機器を含む判定領域の熱画像を取得する熱画像センサと、
撮像された前記判定領域の画像から特徴を抽出し、抽出した特徴に基づいて前記画像における前記複数の機器の各々区画および前記複数の機器の各々の種類を特定するように構成された特定回路と、
前記特定回路が特定した前記複数の機器の各々の区画に対応する前記熱画像における各々の区画を決定するように構成された領域決定回路と、
前記領域決定回路が求めた前記熱画像の区画の各々における温度を算出するように構成された温度算出回路と、
前記温度算出回路が算出した温度と設定されている基準温度との比較により機器の異常を判定するように構成された判定回路と
を備える異常判定装置。
【請求項2】
請求項1記載の異常判定装置において、
撮像された前記判定領域の画像は、カラー画像であることを特徴とする異常判定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の異常判定装置において、
前記判定回路は、前記特定回路が特定できる機器の種類毎に設定されている基準温度との比較を実施することを特徴とする異常判定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の異常判定装置において、
前記特定回路は、深層学習による物体検出アルゴリズムまたはセグメンテーションアルゴリズムを用いて、機器に関するデータを教師データとした教師あり学習によって構築された学習モデルを参照して、前記画像における機器を特定する
ことを特徴とする異常判定装置。
【請求項5】
請求項4記載の異常判定装置において、
前記物体検出アルゴリズムまたはセグメンテーションアルゴリズムは、 前記画像を単一のニューラルネットワーク系に入力することで、回帰問題的に、前記画像における機器の区画の抽出を属性の分類とともにまとめて行うことを特徴とする異常判定装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の異常判定装置において、
前記判定領域を撮像するカメラをさらに備えることを特徴とする異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントや建物では、空調設備、防犯設備、照明設備、防災設備など複数の設備が用いられている。これらの設備では、設備に対して電力を供給するために、受電設備や配電盤などが用いられている。安定した電力供給のためには、受電設備や配電盤における不具合を迅速に検出することが重要となる。このために、受電設備や配電盤で用いられている機器の温度状態を、サーモパイルで監視する技術がある(特許文献1)。この技術では、サーモパイルで測定できる監視対象領域に存在する部材の放射エネルギーにもとづいて、受電設備や配電盤で用いられている機器の異常を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-38277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機器の異常を監視する際に監視領域や異常判定の基準を予め決定しておく必要がある場合は、受電設備や配電盤の構成が変更される毎に、設定を変更する必要があり、手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、判定対象の構成が変更されても、手間をかけることなく、異常の判定が継続して実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る異常判定装置は、対象となる複数の機器を含む判定領域の熱画像を取得する熱画像センサと、撮像された前記判定領域の画像から特徴を抽出し、抽出した特徴に基づいて画像における複数の機器の各々区画および複数の機器の各々の種類を特定するように構成された特定部と、特定部が特定した複数の機器の各々の区画に対応する熱画像における各々の区画を決定するように構成された領域決定部と、領域決定部が求めた熱画像の区画の各々における温度を算出するように構成された温度算出部と、温度算出部が算出した温度と設定されている基準温度との比較により機器の異常を判定するように構成された判定部とを備える。
【0007】
上記異常判定装置の一構成例において、撮像された判定領域の画像は、カラー画像である。
【0008】
上記異常判定装置の一構成例において、判定部は、特定部が特定できる機器の種類毎に設定されている基準温度との比較を実施する。
【0009】
上記異常判定装置の一構成例において、特定部は、深層学習による物体検出アルゴリズムまたはセグメンテーションアルゴリズムを用いて、機器に関するデータを教師データとした教師あり学習によって構築された学習モデルを参照して、画像における機器を特定する。
【0010】
上記異常判定装置の一構成例において、物体検出アルゴリズムまたはセグメンテーションアルゴリズムは、 画像を単一のニューラルネットワーク系に入力することで、回帰問題的に、画像における機器の区画の抽出を属性の分類とともにまとめて行う。
【0011】
上記異常判定装置の一構成例において、判定領域を撮像するカメラをさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、カメラなどにより撮像された画像をもとに複数の機器の各々の種類を特定し、特定した複数の機器の各々の区画に対応する熱画像における各々の区画を決定し、区画の各々における温度をもとに異常を判定するので、判定対象の構成が変更されても、手間をかけることなく、異常の判定が継続して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る異常判定装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る異常判定装置の動作例を説明するフローチャートである。
図3図3は、カメラ201により撮像された画像の例を示す写真である。
図4図4は、特定部103により区画が特定された状態を説明するための説明図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る異常判定装置の一部のハードウエア構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る異常判定装置について図1を参照して説明する。この異常判定装置は、熱画像センサ101、特定部102、領域決定部103、温度算出部104、および判定部105を備える。また、異常判定装置は、カメラ201を備えることができる。
【0015】
熱画像センサ101は、判定領域の熱画像を取得する。熱画像センサ101は、判定領域の表面温度分布を2次元的に取得(測定)する。熱画像センサ101は、例えば、2次元に配列された複数のサーモパイルから構成されたサーモパイルアレイセンサとすることができる。サーモパイルは、熱電対より構成された熱電変換素子(赤外線センサ)であり、熱画像センサ101において1つの画素を構成する。
【0016】
特定部102は、撮像された判定領域の画像から特徴を抽出し、抽出した特徴に基づいて画像における複数の機器の各々区画および複数の機器の各々の種類を特定する。撮像された判定領域の画像は、カメラ201で撮像した画像とすることができる。また、撮像された判定領域の画像は、他のカメラなどにより予め撮像されている画像とすることができる。カメラ201は、対象となる複数の機器を含む判定領域を撮像する。カメラ201は、例えば、カラー画像を出力することができる。
【0017】
特定部102は、深層学習による物体検出アルゴリズムまたはセグメンテーションアルゴリズムを用いて、機器に関するデータを教師データとした教師あり学習によって構築された学習モデルを参照して、画像における機器を特定する。物体検出アルゴリズムまたはセグメンテーションアルゴリズムは、 画像を単一のニューラルネットワーク系に入力することで、回帰問題的に、画像における機器の区画の抽出を属性の分類とともにまとめて行う。 物体検出アルゴリズムは、YOLOまたはSSDとすることができる。セグメンテーションアルゴリズムとしては、例えば、インスタンスセグメンテーションもしくはパノプティックセグメンテーションを用いることができる。セグメンテーションアルゴリズムは、ケーブルの様な不定形な物も領域が正確に求められるため、画像における機器特定の精度を向上させることができる。
【0018】
領域決定部103は、特定部102が特定した複数の機器の各々の区画に対応する熱画像における各々の区画を決定する。温度算出部104は、領域決定部103が求めた熱画像の区画の各々における温度を算出する。判定部105は、温度算出部104が算出した温度と設定されている基準温度との比較により機器の異常を判定する。判定部105は、特定部102が特定できる機器の種類毎に設定されている基準温度との比較を実施する。
【0019】
判定部105により異常が判定されると、通知装置202が、所定の通知を実施する。通知装置202は、例えば、警報装置であり、判定部105により異常が判定されると、警報を発令する。また、通知装置202は、通信機器であり、判定部105により異常が判定されると、設定されているメールアドレスに対し、異常の旨のメールを送信する。また、判定部105は、図示しない表示装置などに、判定結果を表示することができる。
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る異常判定装置の動作例(異常判定方法)について、図2を参照して説明する。
【0021】
まず、ステップS101で、カメラ201が、対象となる複数の機器を含む判定領域を撮像する。次に、ステップS102で、熱画像センサ101が、判定領域の表面温度分布を2次元的に測定する。
【0022】
次に、ステップS102で、特定部102が、カメラ201で撮像した画像から特徴を抽出し、抽出した特徴に基づいて画像における複数の機器の各々区画および複数の機器の各々の種類を特定する。例えば、図3に例示する画像から、図4に例示するように、複数の機器の各々区画が決定される。次に、ステップS103で、領域決定部103が、特定部102が特定した複数の機器の各々の区画に対応する熱画像における各々の区画を決定する。
【0023】
次に、ステップS104で、温度算出部104が、領域決定部103が求めた熱画像の区画の各々における温度を算出する。
【0024】
次に、ステップS105で、判定部105が、温度算出部104が算出した温度と設定されている基準温度との比較により、機器に異常が発生しているか否かを判定する。判定部105は、特定部102が特定できる機器の種類毎に設定されている基準温度との比較を実施する。例えば、表1に示すように、機器の種別毎に、相対温度指定や、温度範囲(下限、上限)が設定されている。算出された温度が、このような基準の範囲の中にあるか否かにより、異常を判定することができる。
【0025】
【表1】
【0026】
判定部105により異常が判定されると(ステップS105のyes)、ステップS107で、通知装置202が、警報を発令する。一方、判定部105により異常が判定されない場合(ステップS105のno)、ステップS108で、終了の指示が受け付けられているか否かを判定する。終了の指示がない場合(ステップS108のno)、ステップS101に戻る。終了の指示が受け付けられている場合(ステップS108のyes)、一連の動作を停止する。
【0027】
なお、上述した実施の形態に係る異常判定装置の特定部102、領域決定部103、温度算出部104、および判定部105は、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)301と主記憶装置302と外部記憶装置303とネットワーク接続装置304となどを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置302に展開されたプログラムによりCPU301が動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能(異常判定方法)が実現されるようにすることもできる。なお、CPUはGPU(Graphics Processing Unit)を含むものとすることができる。上記プログラムは、上述した実施の形態で示した異常判定方法をコンピュータが実行するためのプログラムである。ネットワーク接続装置304は、ネットワーク305に接続する。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。また、ネットワーク305を介して接続されている熱画像センサ101より判定領域の熱画像を取得することができる。また、ネットワーク305を介して接続されているカメラ201より判定領域の画像を取得することができる。
【0028】
また、上述した実施の形態に係る異常判定装置の特定部102、領域決定部103、温度算出部104、および判定部105は、FPGA(field-programmable gate array)などのプログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)により構成することも可能である。例えば、FPGAのロジックエレメントに、記憶部、特定部102、領域決定部103、温度算出部104、および判定部105の各々を回路として備えることで、異常判定装置として機能させることができる。記憶回路、特定回路、領域決定回路、温度算出回路、および判定回路の各々は、所定の書き込み装置を接続してFPGAに書き込むことができる。また、FPGAに書き込まれた上記の各回路は、FPGAに接続した書き込み装置により確認することができる。
【0029】
以上に説明したように、本発明によれば、カメラなどにより撮像された画像をもとに複数の機器の各々の種類を特定し、特定した複数の機器の各々の区画に対応する熱画像における各々の区画を決定し、区画の各々における温度をもとに異常を判定するので、判定対象の構成が変更されても、手間をかけることなく、異常の判定が継続して実施できるようになる。
【0030】
従来技術では、予めエリアごとの温度閾値を設定する必要があり、対象機器毎に合否判定値を設定できず、また、巡回点検には使えないなどの問題があった。本発明によれば、巡回点検の様な使い方でも、見落としや合格基準の判定ミスを低減でき、検査時間の削減が可能となる。また、定点監視だけでなく、巡回点検にも使えるため導入コストを削減できる。
【0031】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0032】
102…熱画像センサ、102…特定部、103…領域決定部、104…温度算出部、105…判定部、201…カメラ、202…通知装置。
図1
図2
図3
図4
図5