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  • 特開-とろみ測定器およびとろみ測定方法 図1
  • 特開-とろみ測定器およびとろみ測定方法 図2
  • 特開-とろみ測定器およびとろみ測定方法 図3
  • 特開-とろみ測定器およびとろみ測定方法 図4
  • 特開-とろみ測定器およびとろみ測定方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076941
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】とろみ測定器およびとろみ測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/02 20060101AFI20230529BHJP
   G01N 11/06 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
G01N33/02
G01N11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189988
(22)【出願日】2021-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第2回世界嚥下サミット予稿集、2021年8月21日 〔刊行物等〕 第2回世界嚥下サミット、2021年8月20日~22日
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勢井 洋史
(72)【発明者】
【氏名】保田 和則
(57)【要約】
【課題】衛生的に短時間で飲食物のとろみ度合を測定できるとろみ測定器を提供する。
【解決手段】とろみ測定器AAは、流動性を有する飲食物が注入される縦筒10と、縦筒10の下端に設けられ飲食物が流出する第1流出口を有するノズル20と、第1流出口から流出した飲食物を回収する容器Cの上にノズル20を支持する台座30とを有する。縦筒10は飲食物の液位を示す目盛を有する。流出した飲食物を容器Cに回収するので衛生的である。縦筒10から飲食物を流出させてとろみ度合いを測定する方式であるので、測定に要する時間が比較的短時間である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する飲食物が注入される縦筒と、
前記縦筒の下端に設けられ前記飲食物が流出する第1流出口を有するノズルと、
前記第1流出口から流出した前記飲食物を回収する容器の上に前記ノズルを支持する台座と、を備え、
前記縦筒は前記飲食物の液位を示す目盛を有する
ことを特徴とするとろみ測定器。
【請求項2】
前記台座は第2流出口を有し、
前記第1流出口および前記第2流出口は前記ノズルの中心から偏った位置に配置されており、
前記ノズルを前記台座に対して回転することで、前記第1流出口と前記第2流出口との接続/非接続が切り替わる
ことを特徴とする請求項1記載のとろみ測定器。
【請求項3】
前記台座の底面には前記第2流出口の周囲に液切リングが設けられている
ことを特徴とする請求項2記載のとろみ測定器。
【請求項4】
前記縦筒に設けられたハンドルを備える
ことを特徴とする請求項2または3記載のとろみ測定器。
【請求項5】
前記縦筒の上端に設けられた漏斗を備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のとろみ測定器。
【請求項6】
前記縦筒、前記ノズルおよび前記台座は、それぞれ取り外し可能である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のとろみ測定器。
【請求項7】
前記縦筒の高さ寸法は15~25cmである
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のとろみ測定器。
【請求項8】
前記縦筒の内径は15~25mmである
ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のとろみ測定器。
【請求項9】
前記第1流出口の内径は2~6mmである
ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のとろみ測定器。
【請求項10】
流動性を有する飲食物を縦筒に注入する工程と、
前記縦筒の下端に設けられたノズルの第1流出口から前記飲食物を流出させ、容器に回収する工程と、
前記縦筒内の前記飲食物の液位が、予め定められた測定開始時の液位から測定終了時の液位まで低下するのに要する時間を計測する工程と、を備える
ことを特徴とするとろみ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とろみ測定器およびとろみ測定方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、医療および介護の現場において飲食物のとろみ度合を測定するためのとろみ測定器、および飲食物のとろみ度合を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下とは口の中の飲食物を飲み込んで胃に送る過程をいい、飲み込む動作がうまくできない状態を嚥下障害という。嚥下障害が起きると、飲食物をうまく飲み込めず、誤嚥によって肺炎を引き起こすことがある。そこで、嚥下障害患者に飲料を提供する場合には、飲料にとろみ剤を混ぜてとろみを付けることが行なわれる。飲料のとろみ度合は嚥下障害の重症度に合わせて調整する必要がある。ところが、とろみ剤は各社から販売されており性能が少しずつ違う。そのため、医療および介護の現場ではとろみ付き飲料を調製する都度、とろみを測定している。
【0003】
液体の粘度を正確に測定するためには、回転式粘度計などの粘度測定装置が必要である。しかし、この種の装置は高価であり、すべての病院および高齢者施設に設置することは現実的ではない。そのため、多くの場合、より簡便な測定方法が選択される。例えば、日本摂食嚥下リハビリテーション学会は、粘度測定装置がなくても可能な簡便な測定方法として、ラインスプレッドテスト(LST)を提示している(非特許文献1)。
【0004】
ラインスプレッドテストは以下の手順で行なわれる。目盛のついたプラスチック測定板の上に内径30mmの金属製リングを置く。リング内に試料を20mL注入し、30秒間静置して試料の流動を止める。リングを持ち上げて30秒後の試料の広がり距離を6点測定し、その平均値をLST値とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」、日摂食嚥下リハ会誌25(2)、2021、p.135-149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラインスプレッドテストでは飲食物が測定板の上に広がり、特にとろみが薄い場合には測定板から溢れ出ることがあるため、衛生的ではない。また、液体は温度が低くなるほど粘度が増すため、とろみを正確に測定するためには測定時間が短いほうがよい。しかし、ラインスプレッドテストは測定に少なくとも1分を要する。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、衛生的に短時間で飲食物のとろみ度合を測定できるとろみ測定器およびとろみ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明のとろみ測定器は、流動性を有する飲食物が注入される縦筒と、前記縦筒の下端に設けられ前記飲食物が流出する第1流出口を有するノズルと、前記第1流出口から流出した前記飲食物を回収する容器の上に前記ノズルを支持する台座と、を備え、前記縦筒は前記飲食物の液位を示す目盛を有することを特徴とする。
第2発明のとろみ測定器は、第1発明において、前記台座は第2流出口を有し、前記第1流出口および前記第2流出口は前記ノズルの中心から偏った位置に配置されており、前記ノズルを前記台座に対して回転することで、前記第1流出口と前記第2流出口との接続/非接続が切り替わることを特徴とする。
第3発明のとろみ測定器は、第2発明において、前記台座の底面には前記第2流出口の周囲に液切リングが設けられていることを特徴とする。
第4発明のとろみ測定器は、第2または第3発明において、前記縦筒に設けられたハンドルを備えることを特徴とする。
第5発明のとろみ測定器は、第1~第4発明のいずれかにおいて、前記縦筒の上端に設けられた漏斗を備えることを特徴とする。
第6発明のとろみ測定器は、第1~第5発明のいずれかにおいて、前記縦筒、前記ノズルおよび前記台座は、それぞれ取り外し可能であることを特徴とする。
第7発明のとろみ測定器は、第1~第6発明のいずれかにおいて、前記縦筒の高さ寸法は15~25cmであることを特徴とする。
第8発明のとろみ測定器は、第1~第7発明のいずれかにおいて、前記縦筒の内径は15~25mmであることを特徴とする。
第9発明のとろみ測定器は、第1~第8発明のいずれかにおいて、前記第1流出口の内径は2~6mmであることを特徴とする。
第10発明のとろみ測定方法は、流動性を有する飲食物を縦筒に注入する工程と、前記縦筒の下端に設けられたノズルの第1流出口から前記飲食物を流出させ、容器に回収する工程と、前記縦筒内の前記飲食物の液位が、予め定められた測定開始時の液位から測定終了時の液位まで低下するのに要する時間を計測する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、流出した飲食物を容器に回収するので衛生的である。また、縦筒から飲食物を流出させてとろみ度合いを測定する方式であるので、測定に要する時間が比較的短時間である。
第2発明によれば、ノズルを回転させることで、飲食物の流出の開始/停止を切り替えられるので、測定が容易である。
第3発明によれば、第2流出口から流出した飲食物が台座の底面に付着することが抑制されるので、流出時間が安定し、とろみ度合の測定精度が高くなる。
第4発明によれば、ハンドルを手で操作することで、ノズルを容易に回転できる。
第5発明によれば、漏斗により縦筒への飲食物の注入が容易になる。
第6発明によれば、個々の部材を取り外すことで、容易に洗浄でき、とろみ測定器を清潔に保つことができる。
第7発明によれば、縦筒の高さ寸法が15cm以上であるので、飲食物の水頭が高く、飲食物の流出速度を速くできる。その結果、とろみ度合の測定時間を短くできる。また、縦筒の高さ寸法が25cm以下であるので、縦筒の容積を小さくでき、測定に必要な飲食物の量を少なくできる。
第8発明によれば、縦筒の内径が15mm以上であるので、縦筒内部の洗浄が容易である。また、縦筒の内径が25mm以下であるので、縦筒の容積を小さくでき、測定に必要な飲食物の量を少なくできる。
第9発明によれば、第1流出口の内径が2~6mmであるので、飲食物の流出速度が適度になり、測定精度を保ちつつ、測定時間を短くできる。
第10発明によれば、流出した飲食物を容器に回収するので衛生的である。また、縦筒から飲食物を流出させてとろみ度合いを測定する方式であるので、測定に要する時間が比較的短時間である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るとろみ測定器の正面図である。
図2】図(A)は縦筒の平面図である。図(B)は縦筒の正面図である。
図3】図(A)はノズルの平面図である。図(B)はノズルの縦断面図である。
図4】図(A)は台座の平面図である。図(B)は台座の縦断面図である。図(C)は台座の底面図である。
図5】図(A)は測定開始時のとろみ測定器の正面図である。図(B)は測定終了時のとろみ測定器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係るとろみ測定器AAは、流動性を有する飲食物のとろみ度合の簡易的な測定に用いられる。飲食物として、水、お茶、栄養剤などの飲料、スープなどの食料が挙げられる。飲食物には流動性に大きな影響を与えない程度の微細な固形分が含まれてもよい。典型的には、飲食物は、とろみ剤(とろみ調整食品ともいう。)、片栗粉、くず粉などが添加され、とろみが調整されている。
【0012】
図1に示すように、とろみ測定器AAは、縦筒10、ノズル20および台座30からなる。後述のごとく、縦筒10の内部に測定対象の飲食物を注入し、縦筒10からの飲食物の流出時間から、とろみ度合を測定する。とろみ度合の測定時には、とろみ測定器AAは容器Cの上に配置される。そのため、縦筒10から流出した飲食物は容器Cに回収される。なお、容器Cは飲食物を収容できるものであれば特に限定されず、コップ、椀などを用いることができる。
【0013】
図2(A)および図2(B)に示すように、縦筒10は上端および下端が開口した筒材である。縦筒10として円筒が好適に用いられるが、断面が多角形の筒を用いてもよい。とろみ度合の測定時には、縦筒10はその中心軸が鉛直方向に沿うよう縦に配置される。
【0014】
縦筒10には内部の飲食物の液位を示す目盛11が付されている。目盛11は液位をcm、inchなど所定の単位で示す複数の線で構成されている。目盛11は予め定められた基準となる液位を示す1つまたは複数の線または印で構成されてもよい。例えば、目盛11を、飲食物の流出時間の測定開始時および測定終了時の液位を示す2つの線としてもよい。また、飲食物の流出時間の測定開始時の液位を縦筒10の上端とし、目盛11として測定終了時の液位を示す1つの線を付してもよい。なお、測定開始時と測定終了時との液位の差は、測定に適した流出時間となるように予め設定される。
【0015】
縦筒10内の飲食物の液面の位置を視認できるようにするため、縦筒10は透明な素材で形成されている。とろみ度合の測定に必要な範囲で飲食物の液面を視認できればよく、縦筒10の一部を透明とし、他の部分を不透明としてもよい。
【0016】
必要に応じて、縦筒10の上端には漏斗12が設けられる。漏斗12により縦筒10への飲食物の注入が容易になる。また、必要に応じて、縦筒10にはハンドル13が設けられる。
【0017】
図3(A)および図3(B)に示すように、ノズル20は、全体として、有底の円筒体である。ノズル20は縦筒10の下端に設けられる。ノズル20は縦筒10の下端部が挿入される凹部21を有する。また、ノズル20は凹部21と底面とを連通する第1流出口22を有する。縦筒10に注入された飲食物は第1流出口22から流出する。とろみが濃い飲食物でも滞らずに流れるように、凹部21の内周面から第1流出口22にかけて下窄まりの傾斜面23を有することが好ましい。
【0018】
第1流出口22の位置は特に限定されず、ノズル20の中央部でもよいし、外周部でもよい。本実施形態では、第1流出口22がノズル20の中心Oから偏った位置(偏心位置)に配置されている。また、ノズル20の外周面には凸部24が設けられている。これらの機能については後述する。
【0019】
図4(A)、図4(B)および図4(C)に示すように、台座30は容器Cの縁に係止する支持体31を有する。図示の支持体31は円盤形であるがこれに限定されない。例えば、支持体31は放射状に配置された複数のアームで構成されてもよい。
【0020】
支持体31の中央部にはノズル20を収容する収容部32が設けられている。収容部32はノズル20が挿入される円形の凹部33を有する。収容部32にノズル20を挿入した台座30を容器Cの上に置くことで、容器Cの上にノズル20を支持することができる(図1参照)。そのため、第1流出口22から流出した飲食物は容器Cに回収される。
【0021】
収容部32は凹部33と底面とを連通する第2流出口34を有する。第2流出口34は第1流出口22と接続可能な位置に配置される。本実施形態では、収容部32に収容されたノズル20の中心Oから偏った位置(偏心位置)に第2流出口34が配置されている。ここで、第2流出口34の偏心距離は第1流出口22の偏心距離と略同一である。また、凹部33の内径はノズル20の外径と略同一であり、ノズル20が中心軸周りに回転可能となっている。凹部33の内周面の一部は外方に拡張されており、この拡張部35にノズル20の凸部24が挿入される。凸部24が拡張部35に位置する範囲においてノズル20が回転する。すなわち、ノズル20の回転範囲が制限されている。
【0022】
凸部24が拡張部35の一方の端部に達するまでノズル20を回転させると、第1流出口22と第2流出口34とが接続する(図4(B)の状態)。この状態からノズル20を回転させて、凸部24が拡張部35の他方の端部に達すると、第1流出口22と第2流出口34との接続が解消され、第1流出口22が台座30で閉塞される。このように、ノズル20を台座30に対して回転することで、第1流出口22と第2流出口34との接続/非接続が切り替わる。
【0023】
第1流出口22と第2流出口34とを接続すると、縦筒10内の飲食物が第1流出口22および第2流出口34から流出する。すなわち、飲食物は台座30の底面の開口部から排出される。粘性を有する液体が開口部から流出する際には、液体が開口部の周囲に付着する。開口部の周囲に付着した液体は開口部からの液体の流れに影響する。これに起因して、縦筒10からの飲食物の流出時間が測定のたびに変化し、とろみ度合の測定精度が低くなる。
【0024】
この点について、本実施形態の台座30の底面には第2流出口34の周囲に液切リング36が設けられている。液切リング36により第2流出口34から流出した飲食物が台座30の底面に付着することが抑制される。そのため、飲食物の流出時間が安定し、とろみ度合の測定精度が高くなる。
【0025】
つぎに、とろみ測定器AAを用いた飲食物のとろみ度合の測定方法を説明する。
まず、図5(A)に示すように、縦筒10、ノズル20および台座30を連結してとろみ測定器AAを組み立て、容器Cの上に配置する。
【0026】
つぎに、ノズル20の第1流出口22と台座30の第2流出口34との接続を解除した状態(第1流出口22を閉塞した状態)で、縦筒10の内部に測定対象物の飲食物を注入する。ここで、飲食物は予め定められた液位となるまで注入される。例えば、縦筒10の上端まで飲食物を注入する。
【0027】
つぎに、図5(B)に示すように、ノズル20を回転させて第1流出口22と第2流出口34とを接続する。この際、ハンドル13を手で操作して、縦筒10とともにノズル20を回転させればよい。そうすれば、ノズル20を容易に回転できる。
【0028】
ノズル20を回転させると飲食物の流出が開始する。飲食物の流出に伴い縦筒10内の液位が低下していく。この流出に要する時間を測定する。流出時間の測定開始時および測定終了時の液位は予め定められている。例えば、測定開始時の液位は縦筒10の上端、測定終了時の液位は縦筒10の上端から下方に5cmと定められる。飲食物の液位が測定開始時の液位から測定終了時の液位まで低下するのに要する時間(流出時間)をストップウォッチなどで計測する。ノズル20を回転させることで飲食物の流出の開始/停止が切り替わるので、飲食物の流出開始とストップウォッチによる計測開始とを同時に行なうことが容易である。
【0029】
飲食物は内径が大きい縦筒10から内径が小さい第1流出口22に流れ込む。流路の縮小化による局所損失は液体の粘度と相関し、液体の粘度が高いほど局所損失が大きくなる。また、局所損失が大きいほど流出速度が遅くなり、流出時間が長くなる。したがって、飲食物の流出時間はとろみ度合と相関する。そのため、流出時間を指標としてとろみ度合を評価できる。
【0030】
以上のように、とろみ測定器AAは、縦筒10から飲食物を流出させてとろみ度合いを測定する方式である。そのため、従来のラインスプレッドテストなどに比べて、測定に要する時間が短い。測定時間が短いため、飲食物の温度が下がりにくく、とろみを正確に測定することができる。
【0031】
また、縦筒10から流出した飲食物は容器Cに回収されるので衛生的である。しかも、縦筒10、ノズル20および台座30は、それぞれ取り外し可能である。個々の部材を取り外すことで、容易に洗浄できる。そのため、とろみ測定器AAを清潔に保つことができる。
【0032】
とろみ測定器AAの各部位の寸法は以下のとおりとすることが好ましい。
縦筒10の高さ寸法H1(図2(B)参照)は15~25cmが好ましく、17~23cmがより好ましい。縦筒10の高さ寸法H1を15cm以上とすれば、飲食物の水頭が高く、飲食物の流出速度を速くできる。その結果、とろみ度合の測定時間を短くできる。また、縦筒10の高さ寸法H1を25cm以下とすれば、縦筒10の容積を小さくでき、測定に必要な飲食物の量を少なくできる。
【0033】
流出時間の測定開始時の液位と測定終了時の液位の差H2(図2(B)参照)は、飲食物のとろみ度合の範囲に鑑みて、流出時間が適した範囲となるように設定される。液位の差H2は2~7cmが好ましく、3~5cmがより好ましい。液位の差を2cm以上とすれば、流出時間が短すぎず、測定が容易である。また、液位の差を7cm以下とすれば、流出時間が長くなりすぎず、測定時間を短くできる。
【0034】
縦筒10の内径D1(図2(A)参照)は15~25mmが好ましく、17~23mmがより好ましい。縦筒10の内径D1を15mm以上とすれば、縦筒10内部の洗浄が容易である。また、縦筒10の内径D1を25mm以下とすれば、縦筒10の容積を小さくでき、測定に必要な飲食物の量を少なくできる。
【0035】
縦筒10の内径D1に対する高さ寸法H1の比率は5~15が好ましく、7~13がより好ましい。このようにすれば、飲食物の水頭を確保しつつ、縦筒10の容積を抑えることができる。
【0036】
第1流出口22の内径は2~6mmが好ましく、3~5mmがより好ましい。第1流出口22の内径を2~6mmとすれば、飲食物の流出速度が適度になり、測定精度を保ちつつ、測定時間を短くできる。なお、第2流出口34の内径は第1流出口22の内径と略同か、それより大きければよい。
【実施例0037】
つぎに、実施例を説明する。
縦筒の下端にノズルを設けたとろみ測定器を作製した。なお、台座は用意しなかった。縦筒の高さ寸法は20cm、内径は20mmである。第1流出口の内径は5mmである。
【0038】
水にとろみ剤(株式会社クリニコ製、つるりんこQuickly)を混ぜて、粘度が50、150、300、500mPa・sの試料を調製した。なお、粘度の測定にはレオメーター(Anton Paar社製、Physica MCR301)を用いた。
【0039】
温度20±1℃の試料を縦筒の上端まで注入した後、縦筒からの流出を開始し、液位が5cm低下するまでに要する時間をストップウォッチで測定した。各試料につき8回の測定を行ない、その平均値を求めた。
【0040】
その結果を表1に示す。
【表1】
【0041】
測定結果を学会分類2021(非特許文献1参照)に合わせて記載すると表2のとおりである。
【表2】
【0042】
粘度500mPa・sの試料でも測定時間は約23秒である。ラインスプレッドテストは測定に少なくとも1分を要するため、これと比較すると短時間でとろみ度合を測定できることが確認された。
【符号の説明】
【0043】
AA とろみ測定器
10 縦筒
11 目盛
12 漏斗
13 ハンドル
20 ノズル
22 第1流出口
30 台座
31 支持体
34 第2流出口
36 液切リング
図1
図2
図3
図4
図5