(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076993
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】車両のワイヤーハーネス配索構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20230529BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190063
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大熊 渓介
【テーマコード(参考)】
5G363
【Fターム(参考)】
5G363AA15
5G363AA20
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】外装材の構成を考慮して、ワイヤーハーネスを、車両ボディの外面の適所に配索しておくことにある。
【解決手段】車両ボディ3の外面には、第一の外装材が取付けられる第一の領域31と、第二の外装材が取付けられる第二の領域32とが隣接するように設定されていると共に、第二の領域32と、第一の領域を除く第二の領域の周囲の周辺領域33との少なくとも一方に電装部品(5,20)が備えられるようになっており、ワイヤーハーネス(60,70)が第一の領域31を通って電装部品(5,20)に向かうように配索されていると共に、ワイヤーハーネス(60,70)の一部を保持可能な保持部50が第一の領域31に備えられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のワイヤーハーネスを、複数の外装材が取付けられている車両ボディの外面に沿わせるように配索する車両のワイヤーハーネス配索構造において、
前記車両ボディの外面には、第一の外装材が取付けられる第一の領域と、第二の外装材が取付けられる第二の領域とが隣接するように設定されていると共に、
前記第二の領域と、前記第一の領域を除く前記第二の領域の周囲の周辺領域との少なくとも一方に電装部品が備えられるようになっており、
前記ワイヤーハーネスが前記第一の領域を通って前記電装部品に向かうように配索されていると共に、前記ワイヤーハーネスの一部を保持可能な保持部が前記第一の領域に備えられている車両のワイヤーハーネス配索構造。
【請求項2】
前記保持部は、前記ワイヤーハーネスの結線部を保持可能な第一保持部位と、前記ワイヤーハーネスの結線部を除く一部を引掛け状態で保持可能な第二保持部位との少なくとも一方を有する請求項1に記載の車両のワイヤーハーネス配索構造。
【請求項3】
前記保持部は、前記車両ボディの外面と前記第一の外装材間に設けられた取付け部に取付けられている請求項1又は2に記載の車両のワイヤーハーネス配索構造。
【請求項4】
前記保持部は、前記第一の外装材が取付けられた前記車両ボディの外面部分を補強する補強部位を有している請求項1~3のいずれか一項に記載の車両のワイヤーハーネス配索構造。
【請求項5】
前記第二の外装材に備えられた前記電装部品としてのランプと、前記周辺領域に備えられた別の電装部品とを有している請求項1~4のいずれか一項に記載の車両のワイヤーハーネス配索構造。
【請求項6】
車両前後方向又は車幅方向における前記車両の平面視において、前記電装部品と前記保持部とは、同一平面内に位置する前記車両ボディの外面側に備えられている請求項1~5のいずれか一項に記載の車両のワイヤーハーネス配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のワイヤーハーネスを、複数の外装材が取付けられている車両ボディの外面に沿わせるように配索する車両のワイヤーハーネス配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の構造が特許文献1に記載されている。特許文献1の車両では、車両ボディの後面にドア開口部が設けられており、このドア開口部が、上下回動式のバックドアによって開閉可能に構成されている。またドア開口部の車両下側には、車幅方向に延びるリヤバンパカバーが取付けられている。またリヤバンパカバーの車幅方向の側部には、車両上側に延びるリヤバンパフィラー(第一の外装材)が取付けられている。そして、リヤバンパカバーの車両上側には、車両上下に延びるリヤランプ(第二の外装材)が、ドア開口部の側縁に沿うように取付けられている。このリヤランプは、各種のランプが一体となった大型のリヤコンビネーションランプであり、リヤバンパフィラーの上端から車両のルーフ部分に向けて延びている。
【0003】
ところで上記車両では、電装部品用のワイヤーハーネスが車両ボディの外面に沿うように配索されている。例えばバックドアは電動で操作されることがあり、このバックドア用のワイヤーハーネスが車両ボディの外面に沿うように配索される。そしてバックドア用のワイヤーハーネスは、上記したリヤバンパフィラーの裏側を通ってバックドアに向かうように配索されている。また車両には、電装部品であるリヤランプ用のワイヤーハーネスとして、リヤランプから延びるランプ側ワイヤーハーネスと、車両ボディ側から延びる車両側ワイヤーハーネスとを備えている。そして、ランプ側ワイヤーハーネスの結線部は、リヤランプの裏面に備え付けられている。また車両側ワイヤーハーネスは、車両ボディの孔部を通じて外面に配索されており、この車両ボディの孔部は、取付け状態のリヤランプで隠されるようにその裏側位置に形成されている。このため、リヤランプの取付けに際しては、大型のリヤランプを持ちながら両ワイヤーハーネスの結線部同士を結線したのち、このリヤランプを車両ボディの外面に取付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで上記車両では、外装材の構成を考慮して、ワイヤーハーネスを車両ボディの外面の適所に配索したいとの要請がある。例えばバックドア用のワイヤーハーネスは、上記したようにリヤバンパフィラーの裏側を通ってバックドアに向かうように配索される。このときバックドア用のワイヤーハーネスの一部が車両上側に過度にはみ出すなどして、リヤランプと車両ボディ間に挟まれることは極力回避すべきである。またリヤランプを結線する場合、上記したようにリヤランプを持ちながらの結線作業となるが、当該作業はリヤランプが大きくなるほど負担が増す。このためリヤランプ用のワイヤーハーネスの配索位置、特に各結線部の配置位置を調整するなどして、リヤランプの取付け作業の手間を軽減することが望まれている。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、外装材の構成を考慮して、ワイヤーハーネスを、車両ボディの外面の適所に配索しておくことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両のワイヤーハーネス配索構造は、車両用のワイヤーハーネスを、複数の外装材が取付けられている車両ボディの外面に沿わせるように配索する構造である。この種の構造では、外装材の構成を考慮して、ワイヤーハーネスを、車両ボディの外面の適所に配索しておくことが望ましい。ここで本発明の車両ボディの外面には、第一の外装材が取付けられる第一の領域と、第二の外装材が取付けられる第二の領域とが隣接するように設定されていると共に、第二の領域と、第一の領域を除く第二の領域の周囲の周辺領域との少なくとも一方に電装部品が備えられるようになっている。そこで本発明の車両のワイヤーハーネス配索構造では、ワイヤーハーネスが第一の領域を通って電装部品に向かうように配索されていると共に、ワイヤーハーネスの一部を保持可能な保持部が第一の領域に備えられている。
【0007】
本発明では、第一の領域に備えられた保持部によって、電装部品に向かうワイヤーハーネスの一部を保持できるようになる。例えば周辺領域に備えられた電装部品に向かうワイヤーハーネスの一部を第一の領域内に保持することで、このワイヤーハーネスの一部を第二の領域側にはみ出さないように配索することができる。また電装部品の備えられた第二の外装材を第二の領域に取付ける場合、この電装部品に向かうワイヤーハーネスの一部(結線部)を第一の領域内に保持することで、第二の外装材の取付け作業の手間を軽減できるようになる。
【0008】
第2発明の車両のワイヤーハーネス配索構造は、第1発明の車両のワイヤーハーネス配索構造において、保持部は、ワイヤーハーネスの結線部を保持可能な第一保持部位と、ワイヤーハーネスの結線部を除く一部を引掛け状態で保持可能な第二保持部位との少なくとも一方を有する。本発明では、車両に配索されるワイヤーハーネスに応じて、第一保持部位と第二保持部位を選択して又は一緒に設けることができる。これにより、第一保持部位によってワイヤーハーネスの結線部を保持したり、第二保持部位によって結線部を除くワイヤーハーネスの一部を保持したりできるようになる。
【0009】
第3発明の車両のワイヤーハーネス配索構造は、第1発明又は第2発明の車両のワイヤーハーネス配索構造において、保持部は、車両ボディの外面と第一の外装材間に設けられた取付け部に取付けられている。本発明では、車両ボディの外面と第一の外装材間に配索されるワイヤーハーネスの一部を、同じく車両ボディの外面と第一の外装材間に取付けられた保持部で保持できるようになる。
【0010】
第4発明の車両のワイヤーハーネス配索構造は、第1発明~第3発明のいずれかの車両のワイヤーハーネス配索構造において、保持部は、第一の外装材が取付けられた車両ボディの外面部分を補強する補強部位を有している。本発明では、ワイヤーハーネスの一部を保持する保持部を、第一の外装材が取付けられている車両ボディ部分を補強する補強部材として兼用することができる。そして車両ボディの外面に保持部が取付けられているため、第一の外装材を取外した状態で電装部品に向かうワイヤーハーネスの一部を保持させられるようになる。
【0011】
第5発明の車両のワイヤーハーネス配索構造は、第1発明~第4発明のいずれかの車両のワイヤーハーネス配索構造において、第二の外装材に備えられた電装部品としてのランプと、周辺領域に備えられた別の電装部品とを有している。本発明では、例えば周辺領域の別の電装部品に向かうワイヤーハーネスの一部を、保持部によって、ランプの備えられた第二の外装材側に極力はみ出さないように配索することができる。また第二の外装材に備えられたランプ側ワイヤーハーネスの結線部(一部)と、車両ボディ側に配索された車両側ワイヤーハーネスの結線部とを、保持部の設けられた第一の領域内で結線(接続)できるようになる。
【0012】
第6発明の車両のワイヤーハーネス配索構造は、第1発明~第5発明のいずれかの車両のワイヤーハーネス配索構造において、車両前後方向又は車幅方向における車両の平面視において、電装部品と保持部とは、同一平面内に位置する車両ボディの外面側に備えられている。本発明では、電装部品と保持部とが同一平面内の車両ボディ部分に備えられているため、異なる平面に分かれている場合に比して、保持部と電装部品間のワイヤーハーネスの配索距離が短くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る第1発明によれば、外装材の構成を考慮して、ワイヤーハーネスを、車両ボディの外面の適所に配索しておくことができる。また第2発明によれば、ワイヤーハーネスを、より適切に配索しておくことができる。また第3発明によれば、ワイヤーハーネスを、更に適切に配索しておくことができる。また第4発明によれば、外装材の取付け性を確保しつつ、ワイヤーハーネスを、車両ボディの外面の適所に配索しておくことができる。また第5発明によれば、ランプの備えられた外装材等を考慮して、ワイヤーハーネスを、車両ボディの外面の適所に配索しておくことができる。そして第6発明によれば、ワイヤーハーネスを、一層適切に配索しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】車両ボディの第一の領域を示す車両の右側の斜視図である。
【
図4】
図2のIV-IV線断面に相当する車両の横断面図である。
【
図5】車両ボディの第二の領域を示す車両の右側の正面図である。
【
図6】第一保持部位を示す保持部の拡大平面図である。
【
図7】第二保持部位を示す保持部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図8を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。そして各図に示す車両では、便宜上、車両の右側の各部材にのみ対応する符号を付す。
【0016】
[車両の後部構造]
車両のワイヤーハーネス配索構造について説明する前に、先ず、
図1に示す車両2の後部構造を説明する。この車両2の後面(車両ボディ3)にはドア開口部4が設けられており、このドア開口部4が、上下回動式のバックドア5によって開閉可能に構成されている。またドア開口部4の車両下側には、車幅方向に延びるリヤバンパカバー6が取付けられている。このリヤバンパカバー6の車幅方向の両端部には、そのリヤバンパカバー6の延長部材であるリヤバンパフィラー10が取付けられている。このリヤバンパフィラー10は、バックドア5(ドア開口部4)の車幅方向の縁部に沿って上側に延びていると共に、その車両上側にリヤランプ20が取付けられている。このリヤランプ20は、リヤバンパフィラー10の上端からルーフ部分9に向かって延びるように形成されていると共に、バックドア5(ドア開口部4)の車幅方向の縁部に沿うように配置されている。そして、リヤランプ20は、複数のランプを備えたリヤコンビネーションランプであり、通常サイズのものと比べて大形で重量の大きいものとなっている。
【0017】
また車両2には、
図2に示すように、バックドア用のワイヤーハーネス60と、リヤランプ用のワイヤーハーネス70とが車両ボディ3の外面側に配索されている。ここでバックドア5は電動で開閉操作されるように構成されていると共に、このバックドア用のスイッチ部7が車両2の右側面に設けられている。即ち、スイッチ部7は、車両2の右側面に配設されたサイドメンバ8の上面に設けられており、このサイドメンバ8の車両後側には上記したリヤバンパフィラー10が配設されている。そして、バックドア用のワイヤーハーネス60は、サイドメンバ8からリヤバンパフィラー10の裏側を通ってバックドア5に向かうように配索されている。またリヤランプ用のワイヤーハーネス70は、リヤランプ20の裏面から延びるランプ側ワイヤーハーネス71と、車両ボディ3側に配索された車両側ワイヤーハーネス72とを有している。そして、ランプ側ワイヤーハーネス71の結線部710と、車両側ワイヤーハーネス72の結線部720とが接続されることで、リヤランプ用のワイヤーハーネス70が構成されるようになっている。
【0018】
[車両のワイヤーハーネス配索構造]
車両のワイヤーハーネス配索構造は、
図3を参照して、上記した各ワイヤーハーネス60,70を、リヤバンパフィラー10やリヤランプ20等が取付けられている車両ボディ3の外面に沿わせるように配索する構造である。そして
図2及び
図3を参照して、リヤバンパフィラー10は、本発明の第一の外装材に相当し、後述する車両ボディ3の第一の領域31の外面を覆うように取付けられている。また
図2及び
図5を参照して、リヤランプ20は、本発明の第二の外装材に相当し、後述する車両ボディ3の第二の領域32の外面を覆うように取付けられている。
【0019】
そして上記構成の車両2では、
図2及び
図3を参照して、リヤバンパフィラー10とリヤランプ20等(外装材)の構成を考慮して、各ワイヤーハーネス60,70を配索したいとの要請がある。即ち、バックドア用のワイヤーハーネス60は、上記したようにリヤバンパフィラー10の裏側を通って配索されるが、このリヤバンパフィラー10の車両上側にはリヤランプ20が取付けられている。このため、バックドア用のワイヤーハーネス60の一部が、リヤバンパフィラー10から車両上側に過度にはみ出して、リヤランプ20と車両ボディ3間に挟まれることは極力回避すべきである。またリヤランプ20は大型であるため、その取付け作業を考慮してリヤランプ用のワイヤーハーネス70を配索したいとの要請があり、そのために各結線部(710,720)の位置に配慮する必要がある。そこで車両のワイヤーハーネス配索構造では、後述する保持部50を用いることにより、各ワイヤーハーネス60,70を車両ボディ3の外面の適所に配索しておくこととした。以下、車両のワイヤーハーネス配索構造を、その基本構成(リヤバンパフィラー10、リヤランプ20、車両ボディ3)と保持部50の順に説明する。
【0020】
[リヤバンパフィラー]
先ず、リヤバンパフィラー10は、
図2に示すように車両上下方向に長い角形に形成されており、上記したようにバックドア5の車幅方向の右縁に沿って延びている。またリヤバンパフィラー10は、
図4に示す横断面視において、右側に向かうにつれて緩やかに車両前方に傾斜している。そしてリヤバンパフィラー10の右端部11が、車両2の右側面に位置するサイドメンバ8に係止されている。即ち、サイドメンバ8は、その後端部80が車両内側(
図4の左側)に略直角に曲げられており、このサイドメンバ8の曲げられた後端部80に被係止部81が車両後側に突出するように形成されている。そしてリヤバンパフィラー10の右端部11には、車両内側(
図4の左側)に突出する矢尻状の係止部12が形成されており、この矢尻状の係止部12が、サイドメンバ8の被係止部81に係止されている。またリヤバンパフィラー10の左端部13は、バックドア5の右位置で車両前側に曲げられており、その曲げられた左端部13の前端部分(図示省略)が、ドア開口部側の車両ボディ部分に連結具(図示省略)を介して連結されている。
【0021】
[リヤランプ]
また
図1に示すリヤランプ20は、車両上下方向に長い角形に形成されており、上記したようにリヤバンパフィラー10の上端からルーフ部分9に向けて延びている。このリヤランプ20には、バックランプとブレーキランプと方向指示器(いずれも電装部品)とが備えられており、リヤランプ20の裏側には、
図2及び
図3に示すようにランプ側ワイヤーハーネス71が取付けられている。このランプ側ワイヤーハーネス71は、リヤランプ20の裏面側から車両下側に垂れ下げられており、その下端部にはコネクタ状の結線部710が設けられている。なおリヤランプ20は、上記した連結具等の適宜の取付け手法で、後述する車両ボディ3の第二の領域32に取付けておくことができる。
【0022】
[車両ボディ]
そして車両2では、その後面の車両ボディ3に、
図3及び
図5を参照して、リヤバンパフィラー10の取付けられる第一の領域31と、リヤランプ20の取付けられる第二の領域32とが隣接するように設定されている。
図3に示す第一の領域31は、上記したバックドア5の車幅方向の端部(
図3の右側)に位置する車両ボディ3部分であり、車両上下方向に延びるように形成されている。そして第一の領域31には、車両側ワイヤーハーネス72を外面側に引き出すための貫通孔311が形成されている。この貫通孔311は、第一の領域31の左上側に形成されており、この貫通孔311を通じて車両側ワイヤーハーネス72の結線部720が車両ボディ3の外面側に引き出されている。
【0023】
また第一の領域31は、
図4に示すように、横断面視において車幅方向に延びるように形成されている。この第一の領域31では、その車両ボディ3の右側がクランク状に車両後側に曲げられており、この曲げられた右側部310に、上記したサイドメンバ8の後端部80が重ねられている。そして、車両ボディ3の右側部310とサイドメンバ8の後端部80とによって取付け部40が形成され、この取付け部40に、後述する保持部50を取付けられるようになっている。この取付け部40は、
図3に示すように、車両上下方向に延びるように形成されていると共に、連結具42を挿設するための複数の挿設部41が、車両上下方向に所定の間隔をあけて形成されている。
【0024】
また
図5を参照して、車両2の後面の車両ボディ3には、リヤランプ20の取付けられる第二の領域32が形成されている。この第二の領域32は、リヤバンパフィラー10(第一の領域31)の車両上側に隣接する車両ボディ3部分であり、バックドア5の車幅方向の縁部に沿うように車両上側に延びている。また第二の領域32には、その左隣にバックドア5が配設されており、このバックドア5の配置された箇所が、本発明の第一の領域を除く第二の領域の周囲の周辺領域に相当する。そして、
図5に示す車両2を後方から見た平面視において、リヤランプ20が取付けられる第二の領域32と、バックドア5が備えられる周辺領域33とが、上記した第一の領域31と共に同一平面内に配置されるようになっている。
【0025】
[保持部]
つづいて
図1~
図4に示す保持部50について説明する(
図3では、便宜上、保持部を透視して車両ボディを図示するため、保持部を点線で図示している)。この保持部50は、
図3に示す各ワイヤーハーネス(60,70)の一部を保持可能な部材であり、その本体をなす補強部位500を有している。ここで補強部位500は、車両上下方向に延びるように形成されており、取付け部40に沿わせられるようになっている。そして補強部位500には、
図4を参照して、連結具42を挿通可能な挿通孔Hが、取付け部40の挿設部41に合わせられるように形成されている。また補強部位500の右縁部501と左縁部502とは、車両上下方向における適宜の位置で車両後側に略直角に曲げられている。
【0026】
そして補強部位500は、いわゆるリテーナーリアバンパーサイドとしての機能を有し、
図3に示す取付け部40(リヤバンパフィラー10が取付けられる車両ボディ3の外面部分)を補強できるように構成されている。即ち、
図4に示すように、保持部50の補強部位500を取付け部40に沿うように配置する。つづいて連結具42を、保持部50の挿通孔Hに通して、取付け部40の挿設部41に挿設する。これにより、取付け部40を構成する車両ボディ3の右側部310とサイドメンバ8の後端部80とが保持部50にて補強された状態で接合されるようになる。そして、保持部50(補強部位500)の働きで、車両走行時の振動等によってリヤバンパフィラー10が垂れ下がるような事態を極力回避でき、その取付け性の確保に資する構成となる。また取付け部40(第一の領域31)に取付けられた保持部50は、
図2に示す車両2を後方から見た平面視において、第二の領域32及び周辺領域33と同一平面内に配置されるようになる。
【0027】
[保持部位]
また保持部50の左側には、
図6に示すように、上下一対の第一保持部位51a,51bが形成されている。この上下の第一保持部位51a,51bは、各々、リヤランプ用のワイヤーハーネス70の各結線部(710,720)を保持できるように構成されている。上側の第一保持部位51aは、補強部位500の左縁から車両内側(
図6の左側)に張り出す板状に形成されている。そして上側の第一保持部位51aは、その左側が車両前側にクランク状に曲げられており、その曲げられた先端部分に、ランプ側ワイヤーハーネス71の結線部710を着脱可能に保持できるようになっている。また下側の第一保持部位51bは、上側の第一保持部位51aの車両下側に形成されている。この下側の第一保持部位51bも、補強部位500の左縁から車両内側に張り出す板状に形成されており、その先端部分に、車両側ワイヤーハーネス72の結線部720を着脱可能に保持できるようになっている。そして、各第一保持部位51a,51bでは、対応する結線部を着脱可能に保持する構造として、結線部を掛止又は係止する構造や、結線部を嵌合する構造や、結線部を磁気的に吸着する構造を採用できる。
【0028】
また保持部50の上側には、
図7に示すように、第二保持部位52が形成されている。この第二保持部位52は、バックドア用のワイヤーハーネス60の一部(結線部を除く)を引掛け状態で保持できるように構成されている。なおバックドア用のワイヤーハーネス60の一部(結線部を除く)とは、主として導線を絶縁被膜で被覆した部分であり、適度な可撓性を備えている。そして第二保持部位52は、保持部50の補強部位500の上縁から車両上側に突出する爪形状に形成されており、その上部側が車両前側且つ下側に曲げられている。これにより、バックドア用のワイヤーハーネス60の一部は、後述するように第二保持部位52に引っ掛けられることで、車両上側への移動が阻止された状態で保持部50に保持されるようになる。そして第二保持部位52においても、対応するワイヤーハーネスの一部を保持する構造として、上記爪形状のほか、掛止又は係止構造や、嵌合構造を採用できる。
【0029】
[ワイヤーハーネスの配索作業(保持部の働き)]
車両2では、
図2及び
図3を参照して、リヤランプ20とリヤバンパフィラー10とをこの順で車両ボディ3に取付けることができる。そしてリヤバンパフィラー10を取付ける前に、バックドア用のワイヤーハーネス60と、リヤランプ用のワイヤーハーネス70とを車両ボディ3の外面に沿うように配索する。このとき各ワイヤーハーネス60,70を、上記したように、リヤランプ20とリヤバンパフィラー10の構成を考慮して、車両ボディ3の外面の適所に配索しておくことが望まれる。
【0030】
そこで車両のワイヤーハーネス配索構造では、
図3を参照して、各ワイヤーハーネス60,70が車両ボディ3の第一の領域31を通って電装部品(バックドア5,リヤランプ20)に向かうように配索されている。そして
図6及び
図7に示すように、各ワイヤーハーネス60,70の一部を保持可能な保持部50が第一の領域31に備えられている。この保持部50は、リヤランプ用のワイヤーハーネス70の各結線部(710,720)を保持可能な第一保持部位51a,51bと、バックドア用のワイヤーハーネス60の一部を引掛け状態で保持可能な第二保持部位52とを有している。上記構成によれば、第一の領域31に設けられた保持部50によって、電装部品(5,20)に向かうワイヤーハーネスの一部を保持できるようになる。そこで保持部50の働きを、バックドア用のワイヤーハーネス60とリヤランプ用のワイヤーハーネス70の順に説明する。
【0031】
先ず、
図3及び
図7に示すバックドア用のワイヤーハーネス60は、リヤバンパフィラー10の裏側を通ってバックドア5に向かうように配索される。そしてバックドア用のワイヤーハーネス60の配索時には、上記したようにリヤバンパフィラー10はまだ取付けられていないため、第一の領域31の保持部50が外部に露出した状態となっている。そこでバックドア用のワイヤーハーネス60の一部を、保持部50の第二保持部位52に掛止させて、車両上側に移動しないように第一の領域31内に保持しておく。これにより、バックドア用のワイヤーハーネス60の一部を、リヤランプ20の取付けられる第二の領域32側に過度にはみ出さないように配索することができるようになる。
【0032】
[リヤランプの取付け作業]
つづいて
図2に示すリヤランプ20の取付け作業、即ち、リヤランプ用のワイヤーハーネス70の結線時における保持部50の働きについて説明する。このリヤランプ20を第二の領域32に取付ける際には、
図3に示すように、リヤバンパフィラー10は取付けられておらず、第一の領域31の保持部50が外部に露出した状態となっている。そこでリヤランプ20の裏面から垂れ下げられているランプ側ワイヤーハーネス71の結線部710を、
図6に示すように、保持部50の上側の第一保持部位51aに保持させておく。また保持部50の下側の第一保持部位51bに、車両側ワイヤーハーネス72の結線部720を保持させておく。そしてこの状態でリヤランプ20を車両ボディ3の第二の領域32に取付けたのち、各ワイヤーハーネス60,70の結線部同士を結線することで、リヤランプ20の取付け作業を完了させることができる。上記構成によれば、リヤランプ20の取付け作業と結線作業とを別に行うことができ、リヤランプ20を持ちながら結線する必要がないことから、リヤランプ20の取付け作業の手間を軽減できるようになる。なおリヤランプ用のワイヤーハーネス70の各結線部(710,720)は、その結線状態を維持した状態で上下の第一保持部位51a,51bのいずれかに保持させておくことができる。そして車両2を後方から見た場合、リヤランプ20(電装部品)と保持部50とは同一平面内に配置されている。このためリヤランプ20と保持部50間のワイヤーハーネスの配索距離を、別の平面に保持部50が配置される場合(後述する変形例を参照)に比して短くすることができる。
【0033】
[リヤバンパフィラーの取付け作業]
そして
図4に示すリヤバンパフィラー10を取付けるに際しては、このリヤバンパフィラー10を車両後側から第一の領域31に合わせていく。つづいてリヤバンパフィラー10の右端部11を、上記したサイドメンバ8に係止し、リヤバンパフィラー10の左端部13を車両ボディ3に連結することで、このリヤバンパフィラー10を車両ボディ3に取付けられるようになる。このようにリヤバンパフィラー10を取付けることで、リヤバンパフィラー10と車両ボディ3間に配索された各ワイヤーハーネス60,70が、同じくリヤバンパフィラー10と車両ボディ3間に取付けられた保持部50によって保持された状態となる。そしてリヤバンパフィラー10を車両後側から取付ける構成では、このリヤバンパフィラー10の右端部11が車両後面側に配置されるようになる。これにより、リヤバンパフィラー10とサイドメンバ8間の見切り線Xが車両の右側面に現れ難くなり、リヤバンパフィラー10とサイドメンバ8の色合わせの手間を省けるようになる。
【0034】
[変形例]
ここで第一の領域の構成及びリヤバンパフィラーの取付け手法は、上記の構成に限定されず、各種の構成を取り得る。例えば
図8に示す変形例の第一の領域31では、その車両ボディ3の右側部310に、サイドメンバ8の後端部80aが重ねられている。このサイドメンバ8の後端部80aは、車両内側にクランク状に曲げられて車両前後方向に延びていると共に、その後端側が車両内側に曲げられて車両ボディ3の右側部310に重ねられている。そしてサイドメンバ8の車両前後方向に延びる後端部80a(取付け部40a)に、縦向きの保持部50が右側を向くように取付けられている。この変形例では、保持部50は、車両2の右側面(別の平面)に配置されているため、図示しないバックドア及びリヤランプ(電装部品)と同一平面内に配置されるわけではない。そしてこのような場合においても、各ワイヤーハーネスの一部を保持部50に保持することが可能である。
【0035】
つぎに本実施例の構成と変形例の構成を比較して説明する。
図8に示す変形例では、車両前後方向に延びる取付け部40aに、縦向きの保持部50が右側を向くように取付けられている。このため、縦向きの保持部50を覆うように、リヤバンパフィラー10Aの右端部11aが車両前側に大きく張り出し、その前後の幅寸法L1が大きくとられている。そして車両2の意匠上、リヤバンパフィラー10Aの幅寸法を大きくとる方がよい場合には、変形例の構成を採用することが望ましい。また
図4に示す実施例では、車幅方向に延びる取付け部40に対して、横向きの保持部50が後側を向くように取付けられている。このため、横向きの保持部50を覆うように、リヤバンパフィラー10の前後の幅寸法L2が小さくされて細幅化されている。そして車両の意匠上、リヤバンパフィラー10の幅寸法が小さい方がよい場合には、実施例の構成を採用することが望ましい。また実施例の構成では、リヤバンパフィラー10の細幅化と共に、サイドメンバ8の車両前側に曲げられた部分を省略できるため、車両の軽量化やコストアップ抑制に資する構成となる。
【0036】
以上説明した通り、本実施例では、第一の領域31に備えられた保持部50によって、電装部品(5,20)に向かうワイヤーハーネス(60,70)の一部を保持できるようになる。例えば本実施例では、バックドア5(別の電装部品)が周辺領域33に備えられている。そしてバックドア5に向かうバックドア用のワイヤーハーネス(60)の一部を、保持部50によってリヤランプ20側に極力はみ出さないように配索することができる。またリヤランプ20(第二の外装材)には、バックランプとブレーキランプと方向指示器(電装部品)が備えられている。そしてリヤランプ20に向かうワイヤーハーネスの一部(結線部710)を第一の領域31内に保持することで、リヤランプ20の取付け作業の手間を軽減できるようになる。即ち、保持部50によって、ランプ側ワイヤーハーネス71の結線部710と、車両ボディ3側に配索された車両側ワイヤーハーネス72の結線部720とを、第一の領域31内で結線できるようになる。このため本実施例によれば、上記外装材の構成を考慮して、各ワイヤーハーネス(60,70)を、車両ボディ3の外面の適所に配索しておくことができる。
【0037】
更に本実施例では、車両ボディ3の外面とリヤバンパフィラー10間に配索されるワイヤーハーネス(60,70)の一部を、同じく車両ボディ3の外面とリヤバンパフィラー10間に取付けられた保持部50で保持できるようになる。また本実施例では、ワイヤーハーネスの一部を保持する保持部50を、リヤバンパフィラー10が取付けられている車両ボディ部分(取付け部40)を補強する補強部材として兼用することができる。そして車両ボディ3の外面に保持部50が取付けられているため、リヤバンパフィラー10を取外した状態で電装部品(5,20)に向かうワイヤーハーネス(60,70)の一部を保持させられるようになる。そして本実施例では、電装部品(5,20)と保持部50とが同一平面内の車両ボディ3部分に備えられているため、異なる平面に分かれている場合に比して、保持部50と電装部品間のワイヤーハーネスの配索距離が短くなる。
【0038】
本実施形態の車両のワイヤーハーネス配索構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、保持部の構成を例示したが、保持部の構成を限定する趣旨ではない。保持部には、第一保持部位と第二保持部位の少なくとも一つを設けることができ、外装材の構成に応じて両保持部位のいずれかを選択することもできる。なお第一保持部位は、少なくとも一つ設けられておればよく、また一つの保持部位に複数の結線部を保持させるように構成することもできる。また保持部に第二保持部位を複数設けることもできる。そして複数の第二保持部位にて、ワイヤーハーネスを、第二の領域を迂回させるように配索することができる。
【0039】
また取付け部は、車両ボディにて形成されていてもよく、車両ボディに取付けられた別部材で構成されていてもよい。そして取付け部に対する保持部の取付け手法も適宜選択可能であり、上記した連結具のほか、ボルト締結や溶接などの各種手法を採用できる。なお保持部は、必ずしも補強部位を有する必要はない。なお第一の外装材を先に取付ける場合、この第一の外装材の裏側に保持部を設けておくこともできる。そして保持部にワイヤーハーネスの一部を保持させた状態で第二の外装材を取付けることにより、このワイヤーハーネスの一部が、第二の外装材と車両ボディ間に挟まれることを回避できる。
【0040】
また本実施形態では、外装材としてリヤバンパフィラーとリヤランプを例示し、電装部品としてリヤランプとバックドアを例示したが、外装材と電装部品の構成を限定する趣旨ではない。この種の外装材として、車両の適宜の位置(前面、後面、右側面、左側面等)に取付けられた外装材を想定でき、外装材の形状や寸法も適宜設定される。そして第一の領域と第二の領域とは、外装材の構成に応じて、車両上下方向や前後方向や車幅方向に隣接して設定でき、周辺領域も、第二の領域の周囲の適宜の位置に設定できる。また電装部品として、ランプやドアのほか、センサや、ワイパーやドアミラーなどの各種可動部材を例示できる。そして上記した電装部品の少なくとも一つが第二の領域又は周辺領域に備えられ、この電装部品用のワイヤーハーネスの少なくとも一つが第一の領域を通るように配索される。そして電装部品が、車両の側面に取付けられている場合、車両を車幅方向から見た平面視において、電装部品と保持部とは同一平面内に配置されていてもよく、別の平面に分かれていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
2 車両
3 車両ボディ
4 ドア開口部
5 バックドア(本発明の別の電装部品)
6 リヤバンパカバー
7 スイッチ部
8 サイドメンバ
80 (サイドメンバの)後端部
81 被係止部
9 ルーフ部分
10 リヤバンパフィラー(本発明の第一の外装材)
11 (リヤバンパフィラーの)右端部
12 係止部
13 (リヤバンパフィラーの)左端部
20 リヤランプ(本発明の第二の外装材、電装部品)
31 第一の領域
310 (第一の領域の車両ボディの)右側部
311 貫通孔
32 第二の領域
33 周辺領域
40 取付け部
41 挿設部
42 連結具
50 保持部
500 補強部位
501 (補強部位の)右縁部
502 (補強部位の)左縁部
51a 上側の第一保持部位
51b 下側の第一保持部位
52 第二保持部位
60 バックドア用のワイヤーハーネス
70 リヤランプ用のワイヤーハーネス
71 ランプ側ワイヤーハーネス
72 車両側ワイヤーハーネス
710 (ランプ側ワイヤーハーネスの)結線部
720 (車両側ワイヤーハーネスの)結線部
X 見切り線
10A (変形例の)リヤバンパフィラー
11a (変形例のリヤバンパフィラーの)右端部
40a (変形例の)取付け部
80a (変形例のサイドメンバの)後端部