(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077009
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】演算装置及び支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 40/216 20200101AFI20230529BHJP
【FI】
G06F40/216
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190082
(22)【出願日】2021-11-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「プロトタイプ基幹部分の製作」(平成28年度~平成31年度)委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】服部 宏充
(72)【発明者】
【氏名】吉添 衛
【テーマコード(参考)】
5B091
【Fターム(参考)】
5B091AA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数グループを構成する複数のユーザ間で情報を共有するために、あるグループに対して、他グループの情報を有効に利用できるように出力させる演算装置及び支援方法を提供する。
【解決手段】演算装置1は、グループを区別してテキストデータの入力を受け付ける入力部と、テキストデータを用いた演算処理を実行するプロセッサと、を備える。プロセッサは、第1グループに区別されたテキストデータに対して自然言語処理を施すことで第1特徴パラメータを算出し、第1特徴パラメータを、第2グループに区別されたテキストデータから得られた第2特徴パラメータと比較することによって、第2特徴パラメータのうちの第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、提示用特徴パラメータを出力装置から、第1グループに関連付けて出力させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループを区別してテキストデータの入力を受け付ける入力部と、
前記テキストデータを用いた演算処理を実行するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
第1グループに区別された前記テキストデータに対して自然言語処理を施すことで第1特徴パラメータを算出し、
前記第1特徴パラメータを、第2グループに区別されたテキストデータから得られた第2特徴パラメータと比較することによって、前記第2特徴パラメータのうちの前記第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、
前記提示用特徴パラメータを出力装置から、前記第1グループに関連付けて出力させる、よう構成されている
演算装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記入力部に前記テキストデータが入力されるごとに前記演算処理を実行する、よう構成されている
請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第1グループを含む複数のグループそれぞれに区別された前記テキストデータから、前記複数のグループそれぞれについての特徴パラメータを算出し、複数の前記特徴パラメータそれぞれの第1指標に基づいて、前記第1グループ以外の複数の他のグループの中から前記第2グループを決定する、よう構成されている
請求項1又は2に記載の演算装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第2特徴パラメータのうちの前記第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータの、第2指標に基づいて前記提示用特徴パラメータを抽出する、よう構成されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項5】
前記特徴パラメータは、前記テキストデータから得られた単語であって、
前記提示用特徴パラメータを出力させることは、
前記第1特徴パラメータである単語を前記テキストデータに対する前記自然言語処理によって得られた共起情報に基づいて提示し、
前記提示用特徴パラメータである前記第2グループに区別されたテキストデータから得られた単語を、前記第1特徴パラメータである単語とともに提示する、ことを含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項6】
前記第1特徴パラメータである単語とともに表示することは、前記提示用特徴パラメータである単語を、前記第1特徴パラメータである単語とは区別して提示することを含む
請求項5に記載の演算装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記入力部に前記テキストデータが入力されるごとに前記演算処理を実行し、
前記プロセッサは、さらに、
前記提示用特徴パラメータが抽出されるごとに、前記提示用特徴パラメータの更新情報を提示する、よう構成されている
請求項1~6のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項8】
複数ユーザでの情報の共有を支援する方法であって、
それぞれ、前記複数ユーザのうちの1以上のユーザで構成される複数グループについて、各グループを構成する前記1以上のユーザそれぞれの発言内容を入力し、
前記発言内容を表したテキストに対して自然言語処理を施すことで、前記複数のグループそれぞれにおける情報について特徴パラメータを算出し、
前記複数グループのうちの1つの前記グループについての前記特徴パラメータを、前記複数のグループのうちの他のグループについての前記特徴パラメータと比較することによって、前記他のグループについての特徴パラメータのうちの前記1つのグループについての特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、
前記提示用特徴パラメータを、前記1つのグループを構成する前記1以上のユーザに対して提示する、ことを含む
支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、演算装置及び支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グループを構成する複数のユーザ間で、情報を共有したい場合がある。特開2005-267266号公報(特許文献1)は、メールサーバに対してデータの送受信を行う通信制御手段と、グループ内の各ユーザ端末のアドレスデータと共有データとを記憶する共有情報記憶手段と、これらデータを管理する共有情報管理手段と、を備え、この共有情報管理手段が、外部から入力された共有情報記憶手段に記憶されるデータの内容を変更する変更要求データを受け付けてこれに基づいて当該共有情報記憶手段内のデータ内容を変更する共有情報変更機能と、変更要求データに基づいて共有情報記憶手段内のデータの変更内容を表す変更内容データを生成する変更内容データ生成機能と、共有情報記憶手段から各ユーザ端末のアドレスデータ読み出して当該アドレスデータ宛に変更内容データを通信制御手段を介してデータ配信サーバに送信する変更内容データ送信機能と、を備えたグループ間情報共有システムを開示している。このグループ間情報共有システムは、グループを構成するユーザがファイアウォールの内外に存在している場合にファイアウォール外に専用のサーバを用意しなくても情報共有が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
グループを構成する複数のユーザ間で、情報を共有したいシチュエーションの1つとして、複数のユーザが、各々1以上のユーザからなる複数のグループに分かれて議論している場合がある。この場合に他グループと情報を共有することは、自グループでの議論に新たな話題を加え、議論をより活発にすることが期待される。
【0005】
しかしながら、複数のグループに分かれて議論している場合、他グループの情報に接する機会が少ない。そのため、他グループの情報を共有できない場合がある。また、他グループの情報を、自グループにとって有効に利用できるように共有したいという要望もある。したがって、あるグループに対して、他グループの情報を有効に利用できるように出力させる演算装置及び支援方法が望まれる。
【0006】
ある実施の形態に従うと、演算装置は、グループを区別してテキストデータの入力を受け付ける入力部と、テキストデータを用いた演算処理を実行するプロセッサと、を備え、プロセッサは、第1グループに区別されたテキストデータに対して自然言語処理を施すことで第1特徴パラメータを算出し、第1特徴パラメータを、第2グループに区別されたテキストデータから得られた第2特徴パラメータと比較することによって、第2特徴パラメータのうちの第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、提示用特徴パラメータを出力装置から、第1グループに関連付けて出力させる、よう構成されている。
【0007】
ある実施の形態に従うと、支援方法は複数ユーザでの情報の共有を支援する方法であって、それぞれ、複数ユーザのうちの1以上のユーザで構成される複数グループについて、各グループを構成する1以上のユーザそれぞれの発言内容を入力し、発言内容を表したテキストに対して自然言語処理を施すことで、複数のグループそれぞれにおける情報について特徴パラメータを算出し、複数グループのうちの1つのグループについての特徴パラメータを、複数のグループのうちの他のグループについての特徴パラメータと比較することによって、他のグループについての特徴パラメータのうちの1つのグループについての特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、提示用特徴パラメータを、1つのグループを構成する1以上のユーザに対して提示する、ことを含む。
【0008】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る支援システムの構成の一例を表した概略図である。
【
図2】
図2は、支援システムに含まれるサーバと及び末装置それぞれ構成を表す概略ブロック図である。
【
図3】
図3は、サーバでの、自然言語処理及び頻出単語リスト生成処理を説明するための図である。
【
図4】
図4は、サーバでの、共起ネットワーク生成処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、サーバでの、提示元グループ決定処理及び提示語抽出処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、支援システムにおける、複数ユーザでの情報の共有を支援する支援方法の流れの一例を表した図である。
【
図7】
図7は、端末装置のディスプレイに表示される表示画面の概略図である。
【
図8】
図8は、端末装置のディスプレイに表示される表示画面の概略図である。
【
図9】
図9は、発明者らによる実験の結果を表した図である。
【
図10】
図10は、発明者らによる実験の結果を表した図である。
【
図11】
図11は、発明者らによる実験の結果を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1.演算装置及び支援方法の概要>
【0011】
(1)本実施の形態に係る演算装置は、グループを区別してテキストデータの入力を受け付ける入力部と、テキストデータを用いた演算処理を実行するプロセッサと、を備え、プロセッサは、第1グループに区別されたテキストデータに対して自然言語処理を施すことで第1特徴パラメータを算出し、第1特徴パラメータを、第2グループに区別されたテキストデータから得られた第2特徴パラメータと比較することによって、第2特徴パラメータのうちの第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、提示用特徴パラメータを出力装置から、第1グループに関連付けて出力させる、よう構成されている。
【0012】
特徴パラメータは、グループでの情報の特徴を表す指標であって、例えば、テキストデータから得られた単語、類似語などの概念語、テキストデータが示す文章から抽出される意味概念などである。
【0013】
第2特徴パラメータのうちの第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、提示用特徴パラメータを出力装置から、第1グループに関連付けて出力させることによって、第1グループにおいて第2グループの情報を有効に利用できるように提示用特徴パラメータが出力されるようになる。これにより、複数ユーザの間において情報が共有されるようになる。
【0014】
(2)好ましくは、プロセッサは、入力部にテキストデータが入力されるごとに演算処理を実行する、よう構成されている。これにより、リアルタイムに提示用特徴パラメータが第1グループに関連付けて出力されるようになる。
【0015】
(3)好ましくは、プロセッサは、第1グループを含む複数のグループそれぞれに区別されたテキストデータから、複数のグループそれぞれについての特徴パラメータを算出し、複数の特徴パラメータそれぞれの第1指標に基づいて、第1グループ以外の複数の他のグループの中から第2グループを決定する、よう構成されている。第1指標は、第1特徴パラメータと第2特徴パラメータとの相違を表す指標を指す。第1指標は、例えば、第1グループで用いられている単語と第2グループで用いられている単語との相違などである。
【0016】
(4)好ましくは、プロセッサは、第2特徴パラメータのうちの第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータの、第2指標に基づいて提示用特徴パラメータを抽出する、よう構成されている。第2指標は、第1グループに関連付けて出力する提示用特徴パラメータ第2特徴パラメータから抽出するために用いる基準である。一例として、特徴パラメータは単語であり、第2指標は、第2グループでの単語の出現頻度であってよい。
【0017】
(5)好ましくは、特徴パラメータはテキストデータから得られた単語であって、提示用特徴パラメータを出力させることは、第1特徴パラメータである単語をテキストデータに対する自然言語処理によって得られた共起情報に基づいて提示し、提示用特徴パラメータである第2グループに区別されたテキストデータから得られた単語を、第1特徴パラメータである単語とともに提示する、ことを含む。これにより、一例として議論などの、言語での情報が共有されるようになる。
【0018】
(6)好ましくは、第1特徴パラメータである単語とともに表示することは、提示用特徴パラメータである単語を、第1特徴パラメータである単語とは区別して提示することを含む。これにより、提示用特徴パラメータを把握しやすくなる。
【0019】
(7)好ましくは、プロセッサは、入力部にテキストデータが入力されるごとに演算処理を実行し、プロセッサは、さらに、提示用特徴パラメータが抽出されるごとに、提示用特徴パラメータの更新情報を提示する、よう構成されている。これにより、リアルタイムに提示用特徴パラメータが提示され、提示用パラメータが更新されたことが把握しやすくなる。
【0020】
(8)本実施の形態に係る支援方法は複数ユーザでの情報の共有を支援する方法であって、それぞれ、複数ユーザのうちの1以上のユーザで構成される複数グループについて、各グループを構成する1以上のユーザそれぞれの発言内容を入力し、発言内容を表したテキストに対して自然言語処理を施すことで、複数のグループそれぞれにおける情報について特徴パラメータを算出し、複数グループのうちの1つのグループについての特徴パラメータを、複数のグループのうちの他のグループについての特徴パラメータと比較することによって、他のグループについての特徴パラメータのうちの1つのグループについての特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出し、提示用特徴パラメータを、1つのグループを構成する1以上のユーザに対して提示する、ことを含む。このようにして各グループのグループを構成する1以上のユーザに対して提示用特徴パラメータを提示することによって、複数ユーザの間において情報が共有されるようになる。
【0021】
<2.演算装置及び支援方法の例>
【0022】
図1は、本実施の形態に係る支援システム100の構成の一例を表した概略図である。支援システム100は、複数ユーザでの情報の共有を支援するためのシステムである。情報の共有は、一例として、複数ユーザが議論をおこなっているときの情報の共有であってよい。
【0023】
複数ユーザは、それぞれ1人以上のユーザで構成される複数グループA~Nに分かれて議論を行っている。各グループには1台以上の端末装置5が配置されている。好ましくは、ユーザごとに端末装置5が配置されている。
【0024】
複数のユーザそれぞれの形態する端末装置5は、通信線3によってサーバ1に接続されて、サーバ1と相互に通信可能である。通信線3は、端末装置5とサーバ1とを物理的に接続する通信線であってもよいし、無線通信を概念的に通信線として表したものであってもよい。また、端末装置5とサーバ1との通信は、インターネットなどの図示しない通信網を介したり、ルータなどの他の装置を経由したりして実現されてもよい。
【0025】
図2は、支援システム100に含まれるサーバ1と及び端末装置5それぞれ構成を表す概略ブロック図である。
図2を参照して、サーバ1は、プロセッサ11とメモリ12とを有するコンピュータで構成される。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。メモリ12は、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、RAMなどを含む。または、メモリ12は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。
【0026】
メモリ12は、プロセッサ11で実行されるコンピュータプログラム121を記憶している。メモリ12は、グループごとの単語を記憶する領域である、単語データベース(DB)122を有する。単語DB122については後述する。
【0027】
プロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによって演算処理を実行する。演算処理は、後述する端末装置5から入力されたテキストデータを用いた演算処理である。
【0028】
サーバ1は、通信部13を含む。通信部13は、一例として、通信モジュールである。通信部13は、通信線3を介して端末装置5と通信する。通信部13は、プロセッサ11の制御信号に従って指示された情報を端末装置5に送信する。また、サーバ1は、通信部13から受信した電気信号をプロセッサ11に入力する。
【0029】
端末装置5は、例えばタブレットやパーソナルコンピュータなどであって、ユーザインタフェースとして用いられる。
図2を参照して、端末装置5は、プロセッサ51と、メモリ52と、を有する一般的なコンピュータなどで構成される。プロセッサ51は、例えば、CPUである。
【0030】
メモリ52は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。メモリ52は、プロセッサ51によって実行されるコンピュータプログラム521を記憶している。メモリ52は、グループ情報を記憶する領域である、グループ情報記憶部522を有する。グループ情報は、グループごとの識別情報を含む。
【0031】
端末装置5は、通信部53を含む。通信部53は、一例として、通信モジュールである。通信部53は、通信線3を介してサーバ1と通信する。通信部53は、プロセッサ51の制御信号に従って指示された情報をサーバ1に送信する。また、通信部53は、サーバ1から受信した電気信号をプロセッサ51に入力する。
【0032】
端末装置5は、ディスプレイ54を有する。ディスプレイ54は、情報を出力することによってユーザに情報を提供する出力装置の一例である。ディスプレイ54は、プロセッサ51の制御信号に従って指示された情報をする。
【0033】
端末装置5は、マイク55を含む。マイク55は、議論の内容であるユーザの発言内容を表すテキストデータをプロセッサ11に入力するための入力装置の一部を構成する装置の一例である。マイク55は、音声を取得しことで音声信号をプロセッサ51に入力する。マイク55は、好ましくは、ユーザの口元に近い位置に設置可能なピンマイクである。これにより、後述の音声認識の精度を向上させることができる。
【0034】
プロセッサ51は、メモリ52に記憶されているコンピュータプログラム521を実行することで演算処理を実行する。演算処理は、テキスト化処理511を含む。テキスト化処理511は、マイク55から入力された音声信号に対して音声認識処理を実行することによって、音声信号をテキスト化することを含む。
【0035】
プロセッサ51は、テキスト化処理511において、得られたテキストデータを通信部53に渡し、サーバ1に送信させる。このため、テキスト化処理511を実行するプロセッサ51は、議論の内容であるユーザの発言内容を表すテキストデータをプロセッサ11に入力するための入力装置の一部を構成すると言える。
【0036】
議論の内容であるユーザの発言内容を表すテキストデータをプロセッサ11に入力するための入力装置は、他の例として、キーボードやタッチパネルなどのテキスト入力部であってもよい。この場合、ユーザの発言はキーボードやタッチパネルの操作での文字によって行われる。テキスト入力部はユーザ操作を示す操作信号をプロセッサ51に入力する。プロセッサ51は、操作信号からテキストデータを生成する。
【0037】
プロセッサ51は、テキストデータとともにグループ情報記憶部522に記憶されているグループの識別情報もサーバ1に送信させる。これにより、プロセッサ11には、ユーザごとの発言内容を表すテキストデータが、そのユーザの属するグループの識別情報に関連付けて入力される。そのため、プロセッサ11は、テキストデータを用いた演算処理が可能になる。
【0038】
プロセッサ51の実行する演算処理は、表示処理512を含む。表示処理512は、サーバ1から送信された情報に基づくディスプレイ54に表示を行わせることを含む。ディスプレイ54の表示については後述する。
【0039】
プロセッサ11の実行する演算処理は、自然言語処理111を含む。また、プロセッサ11の実行する演算処理は、ネットワーク化処理112を含み、ネットワーク化処理112は、頻出単語リスト生成処理113を含む。
図3は、自然言語処理111及び頻出単語リスト生成処理113を説明するための図である。
図3を参照して、自然言語処理111は、形態素解析(ステップS1)を含む。形態素解析は、端末装置5から入力されたテキストデータを形態素に分割することを含む。形態素は、言語上の意味を有する最小単位を指す。
【0040】
図3の例では、端末装置5から「りんごは赤くて甘い果物です」なるテキスト20が、端末装置5のユーザの属するグループAの識別情報21とともに入力されている。これは、グループAに属するユーザが発言し、その内容をそのユーザの携帯する端末装置5がテキスト化したテキストデータであるテキスト20がプロセッサ11に入力されたことを意味している。
図3の例では、テキスト20は、「りんご」「は」「赤く」「て」「甘い」「果物」「です。」の形態素群22に分割される(ステップS1)。
【0041】
自然言語処理111は、機能語を除去すること(ステップS2)を含む。機能語は、名詞や動詞などの内容語と共に用いられ、それらの文法的機能を示す語を指す。機能語は、具体的には、助動詞・冠詞・指示詞・前置詞・接続詞などである。
図3の例では、形態素群22から機能語「は」「て」「です。」が除去される(ステップS2)。これにより、テキスト20から内容語である「りんご」「赤い」「甘い」「果物」が抽出され、これら単語群23が得られる。
【0042】
グループに対応付けて所定期間に入力されたテキストデータから抽出された単語は、そのグループでの議論に用いられた単語を表している。そのため、抽出された単語は、そのグループでの情報の特徴を表す指標(特徴パラメータ)の一例と言える。特徴パラメータは、テキストデータから抽出された単語そのものに限定されず、他の例として、類似語などの概念語や、テキストデータが示す文章から抽出される意味概念を表す語、などであってもよい。
【0043】
自然言語処理111は、単語ごとの共起を分析すること(ステップS3)を含む。ここでの共起は、2つの異なる単語が1文で同時に用いられる現象を指す。
図3の例では、テキスト20から抽出された単語群23の単語ごとに共起関係が解析される(ステップS3)。具体的には、「りんご」については「赤い」「甘い」「果物」が共起関係を有する単語と解析される。「赤い」については「りんご」「甘い」「果物」が共起関係を有する単語と解析される。
【0044】
共起関係は、1文ずつ解析される。発言内容が端末装置5に音声で入力される場合、1文は、プロセッサ51のテキスト化処理511によって得られるものである。1文は、例えば、音声データの、閾値以上の長さの無音期間で挟まれた部分である。この場合、端末装置5からサーバ1のプロセッサ11に、1文ずつテキストデータが入力されるなど、分ごとに区別してテキストデータが入力される。これにより、プロセッサ11は1文ずつ、単語ごとの共起を解析することができる。
【0045】
プロセッサ11は、テキスト20から抽出された単語群23の単語ごとに、単語について得られた共起関係を表す共起情報とともにメモリ12に保存する(ステップS4)。
図3の例では、「りんご」についての情報24A、「赤い」についての情報24B、…を単語DB122に保存する。
【0046】
単語DB122は、グループ別に第1特徴パラメータとしての単語を保存する。一例として、単語DB122は、
図3に表されたようにグループA用単語DB122A、グループB用単語DB122B、…を有する。この場合、プロセッサ11は、テキスト20に付加された識別情報21に示されるグループAの単語DB122Aに情報24A,24B,…を保存する。
【0047】
頻出単語リスト生成処理113は、単語DB122にグループ別に保存されている、所定期間に入力されたテキストデータから抽出された単語を用いて頻出単語リスト25を生成すること(ステップS5)を含む。頻出単語リスト25は、単語DB122に保存された単語の中で抽出された回数の多いもの、つまり、あるグループに対応付けられたテキストデータにおける出現頻度の高いものから順に所定数の単語を示した情報の一例である。
図3の例では、頻出単語リスト25は、グループA用単語DB122Aに保存された単語の中で出現頻度の高いものから順に10単語を、出現頻度の高い順に並べて、それぞれの抽出回数と共に表したリストである。
【0048】
ある単語について、出現頻度が高いほどそのグループの議論における関心が高く、低いほどそのグループの議論における関心が低いことを表している。言い換えると、ある単語について、出現頻度が高いほどそのグループにおける情報での重要度が高く、低いほどそのグループの議論における情報での重要度が低いことを表している。
【0049】
ネットワーク化処理112は、共起ネットワーク生成処理114を含む。
図4は、共起ネットワーク生成処理114を説明するための図である。共起ネットワーク生成処理114は、単語DB122に保存されている単語について、単語に関連付けて保存されている共起情報を用いてネットワーク型データモデル26を生成すること(ステップS6)を含む。
図4を参照して、ネットワーク型データモデル26は、単語DB122に保存されている単語間の関係を、共起情報に基づいて表した情報を指す。
【0050】
ネットワーク化処理112は、ネットワーク型データモデル26と頻出単語リスト25とを用いて、共起ネットワーク27を生成すること(ステップS7)を含む。
図4を参照して、共起ネットワーク27は、対象のグループについての、出現頻度の高い単語をノード71とし、ノード71間を、対応する単語間の共起関係をエッジ72として結んだグラフである。
【0051】
ノード71は、対応する単語の出現頻度を有し、一例として、出現頻度に応じた表示態様を有する。例えば、
図4の例において、ノード71は、出現頻度が高いほど大きく、出現頻度が低いほど小さい。また、ノード71は、出現頻度が所定頻度より高いものが赤く、所定頻度以下のものが黒く表示されてもよい。
【0052】
エッジ72は単語間の共起性の度合を有し、一例として、共起性に応じた太さを有する。例えば、
図4の例において、エッジ72は、共起性が高いほど太く、共起性が低いほど細い。このような共起ネットワーク27が生成されることによって、あるグループの議論において用いられた複数の単語、及び、それらの共起関係が表されるようになる。
【0053】
好ましくは、自然言語処理111は、抽出した単語ごとにポジティブ、ネガティブを判定することを含む。ポジティブ、ネガティブを判定することは、例えば、判定用の辞書を予め記憶しておき、又は、判定用の辞書を他の装置から読みこみ、その辞書に基づいて判定することであってよい。この場合、ノード71は、判定結果に応じた表示態様を有してもよい。例えば、
図4の例において、共起ネットワーク27は、ネガティブな単語を表す色(例えば青色)で表されるノード71Aを含む。これにより、あるグループの議論において用いられた複数の性質も表されるようになる。
【0054】
プロセッサ11の実行する演算処理は、提示処理115を含む。提示処理115は、提示元グループ決定処理116を含む。また、提示処理115は、提示語抽出処理117を含む。
【0055】
提示元グループ決定処理116は、対象のグループ(第1グループ)の端末装置5に出力させる提示用特徴パラメータを得る、他のグループ(第2グループ)を決定する処理である。提示用特徴パラメータは、第2グループの特徴パラメータ(第2特徴パラメータ)のうちの第1グループの特徴パラメータ(第1特徴パラメータ)と対応しない特徴パラメータを指す。具体的には、第2グループの単語DBに記憶された単語のうちの第1グループの単語DBに記憶された単語と対応しない単語(提示語)を指す。提示語抽出処理117は、提示語を抽出する処理を指す。
【0056】
提示元グループ決定処理116は、グループA~Nについて得られた特徴パラメータそれぞれの第1指標に基づいて、第1グループ以外の複数の他のグループの中から第2グループを決定することを含む。第1指標は、グループごとの特徴パラメータの相違を表す指標、つまり、グループごとの議論で用いられている単語の相違を表す指標を指す。特徴パラメータの第1グループの第1特徴パラメータからの相違が大きいグループほど第1グループとは異なる議論を行っている可能性が高いため、情報共有のためには、そのようなグループを第2グループとして情報を提示した方が有効であると考えられる。そのため、提示元グループ決定処理116は、好ましくは、第1指標として表される、グループごとの特徴パラメータの相違が大きいグループを第2グループと決定することを含む。
【0057】
第1指標は、例えば、第1グループの単語DBに保存された単語のうちの出現頻度が高い単語(上位語)の、他のグループの単語DBに保存された単語における出現頻度の割合Rであってよい。この場合、割合Rが低いほど第1グループの特徴パラメータからの相違が大きいと言える。
【0058】
図5は、提示元グループ決定処理116及び提示語抽出処理117を説明するための図である。
図5を参照して、提示元グループ決定処理116は、第1グループの頻出単語リスト25の出現頻度が高い順に予め規定したk個の単語を上位語とし、他のグループの頻出単語リスト25B~25Nそれぞれから上位語を抽出すること(ステップS11)を含む。
【0059】
図5の例ではk個は3個であって、頻出単語リスト25から得られる「人工知能」「経済」「発展」の3つの上位語が、頻出単語リスト25B~25Nそれぞれから抽出されている。頻出単語リスト25Bからは「経済」「発展」の2単語が抽出され、頻出単語リスト25Nからは「人工知能」の1単語が抽出されている。
【0060】
提示元グループ決定処理116は、第1グループ以外の他のグループについての割合Rを算出すること(ステップS12)を含む。割合Rは、一例として、他のグループの頻出単語リスト25B~25Nにおける上位語の割合であってよい。
【0061】
割合Rは、一例として、頻出単語リスト25B~25Nそれぞれの出現頻度が高い順に予め規定したm個の単語の抽出回数の合計に対する上位語の抽出回数の割合である。
図5の例ではm個は4個であって、グループBの上位語の割合RBは0.59、グループNの上位語の割合RNは0.31である。
【0062】
提示元グループ決定処理116は、第1グループ以外の他のグループそれぞれについて算出された上位語の割合Rを用いて、第2グループを決定すること(ステップS13)を含む。
図5の例では、割合Rが最も小さいグループNが第2グループに決定される。割合Rが小さいほど、特徴パラメータの第1特徴パラメータからの相違が大きいためである。そのため、割合Rが最も小さいグループを第2グループとして第2特徴パラメータの中から提示語を抽出することで、効率的に複数ユーザ間の情報共有が図られるようになる。
【0063】
提示元グループ決定処理116は、決定された第2グループの単語DBに保存された単語の中から提示語を抽出すること(ステップS14)を含む。提示用特徴パラメータの抽出は、第2特徴パラメータのうちの第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータの、第2指標に基づいて提示用特徴パラメータを抽出することを含む。第2指標は、第1グループに提示する単語を抽出するために用いる基準であればよく、一例として、出現頻度であってよい。他の例として、単語ごとのネガティブ、ポジティブの判定が行われる場合、その判定結果であってもよいし、出現頻度との組み合せであってもよい。
【0064】
図5の例では、第2グループに決定されたグループNの頻出単語リスト25Nに示される単語であって第1特徴パラメータに含まれていない単語のうちの、抽出回数の最も多い単語「環境」が抽出されている。このようにして抽出された提示語が第1グループに提示されることにより、議論に用いられている単語が一番異なるグループ(第2グループ)での関心の高い単語が提示語とされるようになる。
【0065】
提示処理115は、提示情報生成処理118を含む。提示情報生成処理118は、提示用特徴パラメータを第1グループに関連付けて出力させるための処理を含み、一例として、第1グループの識別情報を付加したテキストデータを入力した端末装置5に表示させるための情報を生成することを含む。端末装置5での具体的な画面表示については、具体例を挙げて後述する。
【0066】
図6は、支援システム100における、複数ユーザでの情報の共有を支援する支援方法の流れの一例を表した図である。
図7及び
図8は、端末装置5のディスプレイ54に表示される表示画面40,47の概略図である。
【0067】
図7の表示画面40は、端末装置5において処理を開始するとディスプレイ54に表示される画面である。表示画面40は、処理の開始、つまり、発言内容の音声入力の開始を指示するボタン41と、処理の終了、つまり、発言内容の音声入力の終了を指示するボタン42と、グループを選択するボタン46と、を含む。
図6の処理は、ボタン46によってグループが選択され、ボタン41が押されると、開始される。
【0068】
端末装置5は、
図1に表されたように、複数ユーザそれぞれに対して用意されている。複数ユーザは、それぞれが1以上のユーザからなる複数のグループを構成している。端末装置5のマイク55は、それぞれのユーザの発言内容を取得する。
【0069】
図6を参照して、マイク55が取得したユーザの発言内容に応じた音声信号は、端末装置5のプロセッサ51に入力される(ステップS31)。プロセッサ51は、音声信号に対して音声認識処理を実行することによってテキスト化し、テキストデータを生成する(ステップS33)。プロセッサ51は、生成したテキストデータを、表示画面40のボタン46によって設定されたグループの識別情報とともにサーバ1に送信する(ステップS35)。これにより、各グループを構成する前記1以上のユーザそれぞれの発言内容を表すテキストデータがサーバ1のプロセッサ11に入力される。
【0070】
マイク55からは、ユーザの音声が得られるたびに音声信号がプロセッサ51に入力される。プロセッサ51は、音声信号が入力されるたびに、ステップS33,S35を繰り返す。一例として、プロセッサ51は、音声信号を解析することによって閾値以上の無音期間の間の音声を1文として、その期間の音声信号をテキスト化したものを1文のテキストデータとして生成する。これにより、サーバ1には、1文ずつテキストデータが入力されるようになる。
【0071】
サーバ1には、複数の端末装置5それぞれから、グループの識別情報と共にテキストデータが入力される。サーバ1のプロセッサ11は、テキストデータに対して自然言語処理を実行することによって(ステップS37)、テキストデータから単語を抽出し、グループごとに単語DB122に保存する。テキストデータから単語を抽出することは、複数のグループそれぞれにおける情報について特徴パラメータを算出することを指す。ステップS37の処理は、
図3のステップS1~S4の処理を含む。これにより、複数のグループそれぞれについての議論において用いられた単語が、対応するグループの単語DB122に保存されていく。
【0072】
プロセッサ11は、各グループの単語DB122から頻出単語リストを生成する(ステップS39)。頻出単語リストの生成は、
図3のステップS5で説明された処理を含む。これにより、各グループについての頻出単語リスト25が生成される。
【0073】
プロセッサ11は、各グループの共起ネットワークを生成する(ステップS41)。グループごとの共起ネットワークの生成は、
図4のステップS6,S7で説明された処理をグループごとに実行することを含む。これにより、各グループについての共起ネットワーク27が生成される。
【0074】
プロセッサ11は、第1グループについての提示元グループとなる第2グループを、複数グループのうちの第1グループ以外のグループの中から決定する(ステップS43)。提示元グループの決定は、
図5のステップS11~S13で説明された処理を含む。これにより、第1グループに対して提示元グループとなる第2グループが決定される。プロセッサ11はステップS43において、複数のグループそれぞれを第1グループとしてそれぞれに対して
図5のステップS11~S13を行うことによって、各グループについて提示元グループを決定することができる。
【0075】
プロセッサ11は、提示語を抽出する(ステップS45)。提示語は提示用特徴パラメータであって、提示語を抽出することは、第1グループについての第1特徴パラメータを、第2グループについての第2特徴パラメータと比較することによって、第2特徴パラメータのうちの第1特徴パラメータと対応しない特徴パラメータを提示用特徴パラメータとして抽出することを指す。提示語を抽出することは、
図5のステップS14で説明された処理を含む。一例として、プロセッサ11は、第2特徴パラメータとして得られた単語であって、第1特徴パラメータである出現頻度の高い単語群に含まれていない単語のうちの、抽出回数の最も多い単語を提示語として抽出する。
【0076】
プロセッサ11は、提示情報を生成する(ステップS47)。提示情報を生成することは、提示用特徴パラメータを、第1グループを構成する1以上のユーザに対して提示するため処理であって、一例として、第1グループを構成するユーザの端末装置5に表示させるための情報を生成することを含む。そのため、プロセッサ11は、ステップS47で生成した提示情報を、第1グループを構成するユーザの端末装置5に送信する(ステップS49)。
【0077】
表示画面40は、複数ユーザの議論において使用されている単語を表示する表示部45を含む。端末装置5のプロセッサ51は、表示部45に、サーバ1から受信した提示情報に基づく表示を行う(ステップS51)。
【0078】
提示情報は、第1特徴パラメータである単語を共起情報に基づいて提示すると共に、提示用特徴パラメータである提示語を、第1特徴パラメータである単語と共に表示部45に表示させるための情報である。これにより、提示用特徴パラメータである提示語は、共起情報に基づいて提示された第1特徴パラメータである単語と共に表示部45に表示されるようになる。
【0079】
一例として、プロセッサ11は、第1グループ及び第2グループそれぞれについて生成した共起ネットワークを用い、第1グループの共起ネットワークに提示語を、第2グループでの共起関係に応じた共起関係で加えて表示させるための情報を提示情報として生成する。具体的に、プロセッサ11は、第1グループについて生成された
図4の共起ネットワーク27に対して第2グループから抽出された提示語を、第2グループについて生成された共起ネットワークに基づく位置に配置した、
図7の表示部45に表示された共起ネットワーク27Aを生成する。
図7の表示部45では、共起ネットワーク27に対して、「傾向」「人数」「増やす」「教員」「家庭」「環境」などの提示語を表すノード73が加わった共起ネットワーク27Aが表示されている。
【0080】
なお、表示部45に表示される共起ネットワーク27Aの形状は
図7に表されたネットワーク形状に限定されない。他の例として、
図8の表示画面47において表示部45に表されたように、ツリー形状であってもよい。ツリー表示において、プロセッサ11は、一例として、エッジ72によって接続されている他のノード71,73の数が最も多いノード71を基準とし、基準とするノード71から順に他のノードを配置する。これにより、第1グループを構成するユーザは、自グループでの議論の遷移や構造が把握しやすくなる。
【0081】
さらに、表示部45に表示される共起ネットワーク27Aは、ネットワーク形状とツリー形状とが切替可能であってもよい。その場合、サーバ1からの提示情報は、ネットワーク形状とツリー形状と両形状の提示用の情報を含む。表示画面40,47は、ネットワーク形状とツリー表示との切替を指示するボタン44を含む。表示画面40においてボタン44が押されると、端末装置5のプロセッサ51は、表示画面40を表示画面47に切り替える。すなわち、表示部45での表示を、ネットワーク形状からツリー形状に切り替える。また、表示画面47においてボタン44が押されると、プロセッサ51は、表示画面47を表示画面40に切り替える。すなわち、表示部45での表示を、ツリー形状からネットワーク形状に切り替える。これにより、第1グループを構成するユーザは、状況に応じて表示を切り替えることができ、自グループでの議論の遷移や構造が把握しやすくなる。
【0082】
共起ネットワーク27Aを生成する際、プロセッサ11は、第2グループの共起ネットワークにおいて提示語がエッジで接続されていた単語を、共起ネットワーク27から抽出する。プロセッサ11は、共起ネットワーク27から抽出する単語に、提示語をエッジ72で接続する。
【0083】
これにより、第1グループを構成するユーザは表示部45に表示された共起ネットワーク27Aによって、第2グループでの議論において出現頻度の高い単語を把握することができる。さらに、第2グループでの議論において出現頻度の高い単語を、自グループ(第1グループ)での議論において用いられている単語に対する共起性とともに把握することができる。そのため、第1グループのユーザに対して、第2グループでの情報が共有されるようになる。また、第1グループのユーザは、自グループでの議論において第2グループでの議論に応じた新たな発想を得ることができ、第1グループでの議論を支援することができる。
【0084】
好ましくは、共起ネットワーク27Aにおいて、ノード73はノード71とは異なる形態で表示される。これにより、表示部45において、提示語が第1グループにおける単語とは区別して表示される。異なる形態は、一例として、表示色が異なることである。
図7では、ノードの色が、ポジティブ、ネガティブ、いずれでもない(通常語)の判定結果や、新規に追加された単語であることや、提示語(他グループ語)によって異なる例が示されている。これにより、第1グループを構成するユーザは表示部45に表示された共起ネットワーク27Aによって、提示語が第1グループの単語とともに提示されていても提示語を容易に識別することができる。
【0085】
好ましくは、ノード73を接続するエッジ72は、第2グループの共起ネットワークにおける共起性の度合を保持したものとする。これにより、第1グループを構成するユーザは表示部45に表示された共起ネットワーク27Aによって、提示語の第2グループでの共起性の度合を把握することができる。
【0086】
好ましくは、サーバ1のプロセッサ11は、ステップS37~S39を、端末装置5からテキストデータが入力されるごとに実行する。すなわち、プロセッサ11は、各グルプにおいて1文が発言される度にステップS37~S39を実行する。これにより、ユーザが発言するたびに、その発言内容に応じて共起ネットワークが生成されるようになる。
【0087】
好ましくは、サーバ1のプロセッサ11は、ステップS43~S49を、所定のタイミングで実行する。所定のタイミングは、例えば、第1グループの共起ネットワーク27に新たな単語が所定数(例えば10語)、加わったタイミングなどである。これにより、議論の進行に応じて第2グループが決定され、第2グループにおける出現頻度の高い単語が提示語として提示されるようになる。これにより。議論の進行に伴ってリアルタイムに議論の関連性が低いグループと情報が共有されることが繰り返される。そのため、複数ユーザが全体として情報を共有できるようになる。
【0088】
好ましくは、端末装置5のプロセッサ51は、サーバ1から提示情報を受信し、表示部45を更新する際に更新情報を提示する。言い換えると、プロセッサ11は、提示用特徴パラメータが抽出されるごとに、提示用特徴パラメータの更新情報を提示させる。更新情報は、一例として、更新したことを報知する表示である。
【0089】
図7の例において、表示画面40は、更新を報知する表示43を含む。表示43は、表示部45が更新されたときに点滅するなどして、更新を報知する表示である。表示43は、文字であってもよいし、キャラクタなどの画像であってもよい。表示43がなされることにより、第1グループを構成するユーザは、単語が多く表示されていても、共起ネットワーク27Aが更新されたこと、つまり、新たな第2グループから抽出された新たな提示語が表示されたことを把握できる。
【0090】
表示43は、表示部45に更新があることを報知するように表示が変更するボタンであってもよい。その場合、表示43のボタンが押されるとプロセッサ51は表示部45を更新してもよい。これにより、第1グループを構成するユーザは、共起ネットワーク27Aが更新されること、つまり、新たな第2グループから抽出された新たな提示語が表示されることを把握でき、操作によって表示させることができる。
【0091】
更新情報は、他の例として、音声であってもよいし、音声と表示との組み合せであってもよい。これにより、第1グループを構成するユーザは、端末装置5のディスプレイ54から目を離していても共起ネットワーク27Aが更新されたこと、つまり、新たな第2グループから抽出された新たな提示語が表示されたことを把握できる。
【0092】
発明者らは、支援システム100による他グループからの提示語の提示の有無が自グループにおける議論に与える影響を評価するための実験を行った。実験は、大学生の参加者20人を各4人からなる5グループに分け、同一テーマの議論を同時に行う形式で実施した。5グループのうちの3つのグループaに対しては提示語の提示を行い、2つのグループbに対しては提示を提示せずに自グループの単語のみを提示した。
【0093】
実験では、下のテーマ1,2に沿った30分間の議論をグループa,bの参加歴で偏りが起こらないようにメンバーを入れ替えて、合計3回行った。なお、実験に先立ち、議論練習テーマを用いた議論を行った。
議論練習テーマ:「研究室内における連絡手段の使い分けについて」
テーマ1:「小中学校のいじめ対策にAIを導入する試みについて」
テーマ2:「人工知能と安全保障について」
【0094】
評価指標には、単語の複雑度を用いた。単語の複雑度は、単語の繰り返しの程度を示す指標であり、議論中の全単語数に対する単語種類数の割合で表される。単語数や単語種類数による指標は、人の主観が介入しない比較的容易に解析できる発言内容の自動評価指標として有効であることが知られている。
【0095】
単語の複雑度の算出においては、発話文を形態素解析器MeCabによって分割した単位トークンを1単語とした。単位トークンの異なる種類の数(異なり語数)を、単語種類数とした。複数のグループそれぞれでの議論において出現した単語を対象として単語の複雑度を算出した。
【0096】
図9~
図11は、実験結果を表した図であって、
図9は各グループにおける出現単語数、異なり語数、及び、提示された他グループ語数の計数結果、
図10はテーマ1の議論における単語の複雑度の時系列推移、並びに、
図11はテーマ2の議論における単語の複雑度の時系列推移を表している。
【0097】
図9より、出現単語数及び異なり語数は、テーマ1,2ともに、概ねグループaの方がグループbよりも高い。テーマ1,2それぞれのグループaの出現単語数及び異なり語数を比較すると、提示語が多く提示されたテーマ1の方が、出現単語数及び異なり語数ともに、提示語の提示が少ないテーマ2よりも多い傾向にある。これより、多く提示語を提示した方が出現単語数及び異なり語数が多くなる傾向と言える。
【0098】
図10及び
図11においては、グループbがいずれも、議論の時間経過に沿って単語の複雑度が低くなっている。それに対して、グループaは、いずれも、グループbより単語の複雑度の低下が小さい。例えば、議論終了後(議論時間30分経過時)における各グループの単語の複雑度を比較すると、
図10及び
図11のいずれも、グループaがグループbの単語の複雑度を上回っている。これより、提示語を提示したグループ(グループa)の方が、しなかったグループ(グループb)より複雑度の減衰が抑えられていると言える。
【0099】
これは、提示語を提示しなかったグループbでは、議論が進むにつれて特定の論点(単語やトピックなどの話題の対象)に対して深掘りするような議論の流れになっていたのに対し、提示語を提示したグループaでは、他のグループで出てきた議論テーマに対する視点を自分のグループの議論にも取り入れ、より多くの論点から議論を行っていたことが要因であると推察される。従ってこの実験より、支援システム100が他グループからの提示語の提示を行うことによって、自グループと他グループとの間で情報が共有されるようになり、複数ユーザにおける情報の共有が効果的に進められることが検証された。また、この支援システム100を複数グループでの議論に用いた場合は、各グループにおいて多論点からの議論が促進され、活発な議論を支援できることが検証された。
【0100】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 :サーバ
2 :テーマ
3 :通信線
5 :端末装置
11 :プロセッサ
12 :メモリ
13 :通信部
20 :テキスト
21 :識別情報
22 :形態素群
23 :単語群
24A :情報
24B :情報
25 :頻出単語リスト
25B :頻出単語リスト
25N :頻出単語リスト
26 :ネットワーク型データモデル
27 :共起ネットワーク
27A :共起ネットワーク
40 :表示画面
41 :ボタン
42 :ボタン
43 :表示
44 :ボタン
45 :表示部
46 :ボタン
47 :表示画面
51 :プロセッサ
52 :メモリ
53 :通信部
54 :ディスプレイ
55 :マイク
71 :ノード
71A :ノード
72 :エッジ
73 :ノード
100 :支援システム
111 :自然言語処理
112 :ネットワーク化処理
113 :頻出単語リスト生成処理
114 :共起ネットワーク生成処理
115 :提示処理
116 :提示元グループ決定処理
117 :提示語抽出処理
118 :提示情報生成処理
121 :コンピュータプログラム
511 :テキスト化処理
512 :表示処理
521 :コンピュータプログラム
522 :グループ情報記憶部
122 :単語DB
122A :グループA用単語DB
122B :グループB用単語DB
R :割合
RB :割合
RN :割合