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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007701
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】PC鋼材のコネクタ及び接続方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/12 20060101AFI20230112BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
E04C5/12
E04C5/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110707
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000163110
【氏名又は名称】極東鋼弦コンクリート振興株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔
(72)【発明者】
【氏名】菊池 厚
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164DA32
(57)【要約】
【課題】 第1のPC鋼材及び第2のPC鋼材を接続するときの作業効率を向上させる。
【解決手段】 第1のPC鋼材(C1)及び第2のPC鋼材(C2)を接続するためのコネクタ(1)は、コネクタ本体(10)及びコネクタ蓋(20)を有する。コネクタ本体(10)の一端部は、第1のPC鋼材(C1)に固定された定着具(30)に接続され、コネクタ本体(10)の他端部は、第2のPC鋼材(C2)に固定されたカプラ(40)を通過させる開口部(12)を有する。コネクタ蓋(20)は、コネクタ本体(10)の開口部(12)に着脱可能に接続される。コネクタ蓋(20)をコネクタ本体(10)の開口部(12)に接続した状態では、コネクタ本体(10)の内部にカプラ(40)が収容されるとともに、第2のPC鋼材(C2)がコネクタ蓋(20)を貫通する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のPC鋼材及び第2のPC鋼材を接続するためのコネクタであって、
一端部において、前記第1のPC鋼材に固定された定着具に接続されるとともに、他端部において、前記第2のPC鋼材に固定されたカプラを通過させる開口部を有するコネクタ本体と、
前記開口部に着脱可能に接続され、前記開口部に接続された状態において、前記コネクタ本体の内部に前記カプラを収容させるとともに、前記第2のPC鋼材を貫通させるコネクタ蓋と、
を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタ蓋は、前記開口部に形成されたネジ部と係合するネジ部を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記コネクタ蓋は、前記第2のPC鋼材の外周面に沿って形成された内周面と、前記第2のPC鋼材を前記内周面に導くための切欠き部とを有し、
前記コネクタ蓋の外周面が前記開口部に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタ本体は、前記一端部において、前記定着具に形成されたネジ部と係合するネジ部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタ本体は、前記一端部において、ウェッジを介して前記定着具に接続されており、
前記ウェッジは、前記定着具及び前記カプラによって挟まれる押え蓋によって押さえられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のコネクタ。
【請求項6】
第1のPC鋼材及び第2のPC鋼材を接続する接続方法であって、
前記第1のPC鋼材に固定された定着具にコネクタ本体の一端部を接続する接続工程と、
前記コネクタ本体の他端部に形成された開口部を介して、前記第2のPC鋼材に固定されたカプラを前記コネクタ本体の内部に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記第2のPC鋼材を貫通させるコネクタ蓋を前記開口部に接続する工程と、
を有することを特徴とするPC鋼材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのPC鋼材を接続するために用いられるコネクタと、2つのPC鋼材を接続する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PC(プレストレストコンクリート)鋼材を用いてコンクリート躯体にプレストレストを導入するPC構造物では、PC鋼材の両端部に定着具が固定される。ここで、PC構造物の拡幅工事等を行う場合には、既設のPC鋼材に対して新設のPC鋼材を接続することがある。以下、図12から図14を用いて、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法について説明する。
【0003】
図12は、既設のPC鋼材及び新設のPC鋼材を接続するために用いられるコネクタ100において、PC鋼材の長手方向に沿った断面図である。コネクタ100は、円筒状に形成されており、コネクタ100の一端部(図12の左側の端部)の内周面にはネジ部110が形成されている。また、コネクタ100の他端部(図12の右側の端部)には、ストッパ部120が一体的に形成されており、ストッパ部120には、新設のPC鋼材を通すための貫通孔121が形成されている。
【0004】
図13及び図14は、既設のPC鋼材C1に対して新設のPC鋼材C2を接続する方法を説明する図である。
【0005】
図13に示すように、既設のコンクリート躯体CSには、PC鋼材C1が埋設されており、PC鋼材C1の一端部には定着具200が固定されている。定着具200は、支圧板210と、スリーブ220と、複数のウェッジ230とを有する。複数のウェッジ230がPC鋼材C1とともにスリーブ220の貫通孔221に挿入されることにより、PC鋼材C1を定着具200に固定することができる。スリーブ220の外周面には、ネジ部222が形成されている。
【0006】
一方、新設のPC鋼材C2の一端部には、カプラ(圧着グリップ)300が固定されている。PC鋼材C1,C2を接続するときには、まず、カプラ300にコネクタ100を取り付ける。具体的には、PC鋼材C2の他端部をネジ部110の側からコネクタ100の内側に挿入して貫通孔121を通過させる。そして、コネクタ100に対してカプラ300を図13に示す矢印D10の方向に移動させることにより、コネクタ100の内部にカプラ300を収容させるとともに、カプラ300をストッパ部120に接触させる。
【0007】
次に、図14に示すように、コネクタ100のネジ部110をスリーブ220のネジ部222に係合させながら、定着具200に対してコネクタ100を図14に示す矢印D11の方向に移動させる。これにより、コネクタ100が定着具200に固定され、PC鋼材C1,C2を互いに接続することができる。ここで、PC鋼材C2の他端部(カプラ300とは反対側の端部)に緊張ジャッキ(不図示)を接続して、PC鋼材C2を引っ張れば、PC鋼材C1,C2に緊張力を与えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図13及び図14を用いて説明した方法では、コネクタ100を保持しながら、カプラ300をコネクタ100の内部に収容しなければならない。また、カプラ300をコネクタ100の内部に収容した状態において、コネクタ100を定着具200に固定しなければならない。これらの作業は煩雑であるため、作業効率を向上させる余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1の発明は、第1のPC鋼材及び第2のPC鋼材を接続するためのコネクタであって、コネクタ本体及びコネクタ蓋を有する。コネクタ本体の一端部は、第1のPC鋼材に固定された定着具に接続され、コネクタ本体の他端部は、第2のPC鋼材に固定されたカプラを通過させる開口部を有する。コネクタ蓋は、コネクタ本体の開口部に着脱可能に接続される。コネクタ蓋をコネクタ本体の開口部に接続した状態では、コネクタ本体の内部にカプラが収容されるとともに、第2のPC鋼材がコネクタ蓋を貫通する。
【0010】
コネクタ蓋にはネジ部を形成することができ、このネジ部をコネクタ本体の開口部に形成されたネジ部と係合させることができる。コネクタ蓋には、第2のPC鋼材の外周面に沿って形成された内周面と、第2のPC鋼材を内周面に導くための切欠き部とを設けることができる。そして、コネクタ蓋の外周面を開口部に接続することができる。
【0011】
コネクタ本体の一端部にはネジ部を形成することができ、このネジ部を定着具に形成されたネジ部と係合させることができる。これにより、コネクタ本体の一端部を第1のPC鋼材の定着具に接続することができる。一方、コネクタ本体の一端部を、ウェッジを介して第1のPC鋼材の定着具に接続することもできる。ここで、ウェッジは、定着具及びカプラによって挟まれる押え蓋によって押さえることができる。
【0012】
本願第2の発明は、第1のPC鋼材及び第2のPC鋼材を接続する接続方法である。この接続方法では、第1のPC鋼材に固定された定着具にコネクタ本体の一端部を接続する(接続工程)。また、コネクタ本体の他端部に形成された開口部を介して、第2のPC鋼材に固定されたカプラをコネクタ本体の内部に挿入させる(挿入工程)。そして、挿入工程の後に、第2のPC鋼材を貫通させるコネクタ蓋を、コネクタ本体の開口部に接続する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コネクタ本体を第1のPC鋼材の定着具に接続した状態において、コネクタ本体の開口部を介して、コネクタ本体の内部に第2のPC鋼材のカプラを収容することができる。そして、コネクタ本体にコネクタ蓋を接続することにより、コネクタを介して、第1のPC鋼材及び第2のPC鋼材を接続することができる。これにより、従来と比べて、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態におけるコネクタ本体の断面図である。
図2】第1実施形態におけるコネクタ本体の一端面を示す図である。
図3】第1実施形態におけるコネクタ蓋の外観図(A,B)である。
図4】第1実施形態において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
図5】第1実施形態において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
図6】第1実施形態において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
図7】第1実施形態において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
図8】第1実施形態において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
図9】第1実施形態において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
図10】第2実施形態において、PC鋼材の接続構造を示す図である。
図11】第2実施形態において、PC鋼材の接続構造を分解した図である。
図12】従来におけるコネクタの断面図である。
図13】従来において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
図14】従来において、既設のPC鋼材に新設のPC鋼材を接続する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
既設のPC鋼材(第1のPC鋼材)C1に対して新設のPC鋼材(第2のPC鋼材)C2を接続するために用いられるコネクタ1について、図1から図3を用いて説明する。コネクタ1は、図1及び図2に示すコネクタ本体10と、図3に示すコネクタ蓋20とを有する。図1は、コネクタ本体10において、PC鋼材C1,C2の長手方向に沿った断面図であり、図2は、コネクタ本体10を図1に示す矢印D1の方向から見たときの図である。
【0016】
コネクタ本体10は、円筒状に形成されている。コネクタ本体10の一端部(図1の左側の端部)の内周面には、ネジ部11が形成されており、コネクタ本体10の他端部(図1の右側の端部)の内周面には、ネジ部12が形成されている。
【0017】
また、コネクタ本体10には、複数の目視窓(貫通孔)13が形成されており、目視窓13は、コネクタ本体10の径方向においてコネクタ本体10を貫通している。図2に示すように、複数の目視窓13は、コネクタ本体10の周方向において、所定の間隔を空けて配置されている。目視窓13は、コネクタ本体10の内部に収容された部材(後述する定着具30の一部やカプラ40)をコネクタ本体10の外部から視認するために用いられる。
【0018】
コネクタ蓋20は、コネクタ本体10のネジ部12に取り付けられる。図3(A)に示すように、コネクタ蓋20は、略U字状に形成されており、切欠き部21を有する。図3(B)は、コネクタ蓋20を図3(A)に示す矢印D2の方向から見たときの図である。コネクタ蓋20の内周面22は、PC鋼材C2の外周面に沿って形成されており、内周面22によって囲まれたスペースは、PC鋼材C2を通過させるために用いられる。
【0019】
コネクタ蓋20の外周面には、ネジ部23が形成されており、ネジ部23は、コネクタ本体10のネジ部12と係合する。ここで、コネクタ蓋20の外周面(ネジ部23)は、コネクタ本体10のうち、ネジ部12が形成された内周面に沿った形状に形成されている。コネクタ本体10に対してコネクタ蓋20を回転させることにより、ネジ部12,23の係合によって、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に固定することができる。
【0020】
なお、コネクタ蓋20の形状は、図3に示す形状に限るものではない。後述するように、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に取り付けたときに、PC鋼材C2がコネクタ蓋20を貫通できればよい。例えば、コネクタ蓋20をリング状に形成することができ、このリング形状の開口部にPC鋼材C2を通すことができる。また、コネクタ蓋20を複数の蓋部品(例えば、半割の蓋部品)に分割しておき、これらの蓋部品をコネクタ本体10に取り付けるようにしてもよい。
【0021】
次に、上述したコネクタ1を用いて、PC鋼材C1,C2を互いに接続する方法について、図4から図9を用いて説明する。図4に示すように、既設のコンクリート躯体CSには、PC鋼材C1及び定着具30が設置されている。定着具30は、支圧板31と、スリーブ32と、複数のウェッジ33とを有する。
【0022】
PC鋼材C1の一端部は、支圧板31に形成された貫通孔31aを通過して、コンクリート躯体CSの外部に突出している。コンクリート躯体CSから突出したPC鋼材C1の端部の外周には、複数のウェッジ33が配置されており、各ウェッジ33の内周面33aがPC鋼材C1の外周面に接触している。ここで、ウェッジ33の内周面33aを平坦面で構成したり、PC鋼材C1の外周面に食い込む凹凸形状の食込み歯をウェッジ33の内周面33aに形成したりすることができる。
【0023】
複数のウェッジ33は、スリーブ32に形成された貫通孔32aに挿入されている。スリーブ32の貫通孔32aは、テーパ面を有しており、貫通孔32aの径は、スリーブ32の一端(図4の右端)からスリーブ32の他端(図4の左端)に向かって連続的に小さくなっている。ウェッジ33の外周面33bは、スリーブ32の貫通孔32a(すなわち、テーパ面)に沿って形成されている。複数のウェッジ33がPC鋼材C1とともにスリーブ32の貫通孔32aに挿入されることにより、PC鋼材C1の端部を定着具30に固定することができる。スリーブ32の外周面には、ネジ部32bが形成されている。
【0024】
まず、図4に示すように、コネクタ本体10を矢印D3の方向に移動させ、コネクタ本体10のネジ部11をスリーブ32のネジ部32bに係合させる。具体的には、スリーブ32に対して、ネジ部11,32bに沿ってコネクタ本体10を回転させることにより、図5に示すように、コネクタ本体10をスリーブ32に固定することができる。これにより、コネクタ本体10の内部にスリーブ32が収容される。
【0025】
次に、図6に示すように、コネクタ本体10に対して、新設のPC鋼材C2の一端部に固定されたカプラ(圧着グリップ)40を矢印D4の方向に移動させることにより、コネクタ本体10の内部にカプラ40を収容させる。カプラ40は、コネクタ本体10のうち、ネジ部12が形成された端部からコネクタ本体10の内部に進入する。ここで、ネジ部12が形成された内周面の径は、カプラ40の外径よりも大きい。
【0026】
カプラ40をコネクタ本体10の内部に収容した後、図7に示すように、PC鋼材C2の外周にコネクタ蓋20を配置する。上述したように、コネクタ蓋20は、切欠き部21を有しているため、切欠き部21にPC鋼材C2を通すことにより、PC鋼材C2の外周にコネクタ蓋20を配置させることができる。
【0027】
次に、コネクタ蓋20を図7に示す矢印D5の方向に移動させることにより、図8に示すように、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に取り付けることができる。具体的には、コネクタ蓋20の外周面に形成されたネジ部23を、コネクタ本体10の内周面に形成されたネジ部12に係合させることにより、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に固定することができる。ここで、コネクタ蓋20は、コネクタ本体10に対して、ネジ部23,12に沿って回転させる。
【0028】
次に、図9に示すように、コネクタ1(コネクタ本体10及びコネクタ蓋20)の外部にカプラシース50を配置して、カプラシース50によってコネクタ1を覆った後、カプラシース50の内部に充填剤を注入する。具体的には、カプラシース50に形成された注入口51に注入ポンプ(不図示)を接続し、注入口51からカプラシース50の内部に充填剤を注入する。これにより、コネクタ1を充填剤で覆うことができ、コネクタ1や、コネクタ1の内部に収容された部材(スリーブ32、ウェッジ33及びカプラ40等)を保護することができる。
【0029】
充填剤としては、PC鋼材C1,C2の周囲に充填される充填剤と同じものを用いることができる。PC鋼材C1,C2は、筒状のシース(不図示)によって覆うことができ、このシースの内部に、PC鋼材C1,C2を保護するための充填剤を充填することができる。充填剤としては、例えば、樹脂を用いることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、コネクタ1(コネクタ本体10及びコネクタ蓋20)の外部にカプラシース50を配置し、カプラシース50の内部に充填剤を注入しているが、カプラシース50を省略するとともに、カプラシース50内への充填剤の注入を省略してもよい。
【0031】
カプラシース50の内部に充填剤を注入した後、カプラシース50やPC鋼材C2の周囲にコンクリートを打設することにより、コンクリート躯体を増設することができる。そして、緊張ジャッキ等を用いて、PC鋼材C2の他端部(カプラ40が設けられた端部とは反対側の端部)を引っ張る。
【0032】
緊張ジャッキ等によってPC鋼材C2を引っ張ると、カプラ40がコネクタ蓋20に接触することにより、PC鋼材C2の引張り力(緊張力)がコネクタ1に伝達される。また、コネクタ本体10は定着具30のスリーブ32に固定されているため、コネクタ1に伝達されたPC鋼材C2の引張り力は、定着具30を介してPC鋼材C1に伝達される。これにより、PC鋼材C1,C2の両方を緊張することができる。
【0033】
PC鋼材C1,C2の両方を緊張した後、PC鋼材C2の他端部に定着具(不図示)を取り付けることにより、PC鋼材C1,C2が埋設されたコンクリート躯体に対してプレストレスを導入することができる。ここで、PC鋼材C2の他端部に取り付けられる定着具としては、本実施形態で説明した定着具30を用いることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、コンクリート躯体CSの拡幅工事において、コンクリート躯体CSに既設されたPC鋼材C1に対して新設のPC鋼材C2を接続するものであるが、これに限るものではない。すなわち、2つのPC鋼材C1,C2を接続する構造であれば、本実施形態のコネクタ1を用いることができる。例えば、コンクリート躯体CSを分割施工する場合において、一方のコンクリート躯体CSに埋設されるPC鋼材と、他方のコンクリート躯体CSに埋設されるPC鋼材とを接続する場合において、本実施形態のコネクタ1を用いることができる。
【0035】
本実施形態によれば、図6及び図7に示すように、コネクタ本体10を定着具30のスリーブ32に取り付けた状態において、コネクタ本体10の内部にカプラ40を収容することができる。これにより、従来(図13及び図14)のように、コネクタ100の内部にカプラ300を収容した状態において、コネクタ100を定着具200のスリーブ220に取り付ける必要が無くなり、作業性を向上させることができる。
【0036】
従来(図13及び図14)の方法では、コネクタ100をスリーブ200に接続するとき、コネクタ100の内部にカプラ300を収容した状態において、スリーブ200に対してコネクタ100の全体を回転させなければならない。本実施形態では、コネクタ本体10の内部にカプラ40を収容した後、コネクタ本体10に対してコネクタ蓋20を回転させるだけで良いため、作業性を向上させることができる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図10及び図11を用いて説明する。本実施形態において、第1実施形態で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。以下、第1実施形態と異なる点について、主に説明する。
【0038】
シースS1は、既設のPC鋼材C1を覆っており、シースS2は、新設のPC鋼材C2を覆っている。シースS1,S2の内部には上述した充填剤が充填されている。シースS1の外周面と支圧板31の貫通孔31aとの間には、スペーサ31bが配置されている。
【0039】
第1実施形態では、PC鋼材C2の一端部にカプラ(圧着グリップ)40が固定されているが、本実施形態では、PC鋼材C2の一端部にカプラ60が固定されている。カプラ60は、複数のウェッジ61及びスリーブ62を有する。複数のウェッジ61は、PC鋼材C2の外周面に配置されており、PC鋼材C2と共にスリーブ62の貫通孔(テーパ面を含む)62aに挿入される。これにより、PC鋼材C2にカプラ60が固定される。
【0040】
なお、第1実施形態において、カプラ(圧着グリップ)40の代わりに、本実施形態におけるカプラ60(ウェッジ61及びスリーブ62)を用いることができる。また、本実施形態において、カプラ60(ウェッジ61及びスリーブ62)の代わりに、第1実施形態におけるカプラ(圧着グリップ)40を用いることができる。
【0041】
本実施形態において、コネクタ本体10は、複数のウェッジ14を介してスリーブ32に接続されている。複数のウェッジ14は、スリーブ32の外周面に沿って配置されており、ウェッジ14の内周面14aがスリーブ32の外周面に接触している。なお、ウェッジ14の内周面14aとスリーブ32の外周面に対して、互いに係合するネジ部を形成することができる。コネクタ本体10の内周面15は、テーパ面で構成されており、ウェッジ14の外周面14bと接触する。
【0042】
コネクタ本体10の内部に形成されたスペースには、図10に示すように、押え蓋70が配置される。押え蓋70は、図10に示す組み立て状態において、ウェッジ14を押さえることにより、ウェッジ14がコネクタ本体10の内周面15から抜けてしまうことを防止する。ここで、図10に示すように、押え蓋70は、定着具30のウェッジ33及びカプラ60のウェッジ61によって挟まれている。押え蓋70の一端面(図10の左側の端面)は、ウェッジ33の端面に接触するとともに、押え蓋70の他端面(図10の右側の端面)は、ウェッジ61の端面に接触する。また、押え蓋70には貫通孔71が形成されており、貫通孔71にはPC鋼材C1,C2の端部がそれぞれ挿入される。
【0043】
コネクタ本体10は、ネジ部12が形成された開口部を有する。この開口部(ネジ部12)を介して、コネクタ本体10の外部からコネクタ本体10の内部にカプラ60を移動させることができる。コネクタ本体10の内部にカプラ60を収容した後、シースS2の外周にコネクタ蓋20を配置し、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に接続することができる。具体的には、第1実施形態と同様に、コネクタ蓋20の外周面に形成されたネジ部23をコネクタ本体10のネジ部12に係合させることにより、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に接続することができる。
【0044】
本実施形態においても、ウェッジ14を介してコネクタ本体10を定着具30のスリーブ32に取り付けた状態において、コネクタ本体10の内部にカプラ60を収容することができる。これにより、従来(図13及び図14)のように、コネクタ100の内部にカプラ300を収容した状態において、コネクタ100を定着具200のスリーブ220に取り付ける必要が無くなり、作業性を向上させることができる。
【0045】
また、従来(図13及び図14)の方法では、コネクタ100をスリーブ200に固定するとき、コネクタ100の内部にカプラ300を収容した状態において、スリーブ200に対してコネクタ100の全体を回転させなければならない。本実施形態では、コネクタ本体10の内部にカプラ60を収容した後、コネクタ本体10に対してコネクタ蓋20を回転させるだけで良いため、作業性を向上させることができる。
【0046】
第1実施形態及び第2実施形態では、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に着脱可能に接続するために、ネジ部23,12を用いているが、これに限るものではない。例えば、凸部を凹部に係合させる構造を用いて、コネクタ蓋20をコネクタ本体10に着脱可能に接続することができる。ここで、凸部及び凹部の一方をコネクタ蓋20に設けるとともに、凸部及び凹部の他方をコネクタ本体10に設けることができる。また、凸部を凹部に挿入することができるとともに、コネクタ本体10に対してコネクタ蓋20を回転させた後、凸部が凹部に接触してコネクタ蓋20がコネクタ本体10から外れることを防止することができればよい。
【符号の説明】
【0047】
1:コネクタ、10:コネクタ本体、11,12:ネジ部、13:目視窓、14:ウェッジ、20:コネクタ蓋、30:定着具、31:支圧板、32:スリーブ、33:ウェッジ、40:カプラ(圧着グリップ)、50:カプラシース、60:カプラ、61:ウェッジ、62:スリーブ、C1,C2:PC鋼材、CS:コンクリート躯体、S1,S2:シース
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