(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077047
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】ロータリーエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 53/00 20060101AFI20230529BHJP
F02B 55/02 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
F02B53/00 K
F02B55/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190157
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】516172329
【氏名又は名称】共栄製作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 英人
(57)【要約】
【課題】さらなる性能の改善を図ることができるロータリーエンジンを提供する。
【解決手段】本発明のロータリーエンジンは、ハウジング内に収容された第一のローターと第二のローターとを備える。そして、第一のローターは、燃焼室を形成し、外周側から中心に向かって凹む凹部を有し、第二のローターは、凹部に挿抜される凸部を有し、第一のローターと第二のローターとの回転に伴い、凸部が凹部に対して挿抜されるよう構成されており、凹部に凸部が挿入される前に凹部内に燃焼ガスを吸気させる吸気機構を備えることで、凹部に凸部が挿入された際に凹部内で燃焼ガスの圧縮爆発が生じるよう構成されている。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に収容された第一のローターと第二のローターとを備えたロータリーエンジンであって、
前記第一のローターは、燃焼室を形成し、外周側から中心に向かって凹む凹部を有し、
前記第二のローターは、前記凹部に挿抜される凸部を有し、
前記第一のローターと前記第二のローターとの回転に伴い、前記凸部が前記凹部に対して挿抜されるよう構成されており、
前記凹部に前記凸部が挿入される前に前記凹部内に燃焼ガスを吸気させる吸気機構を備えることで、前記凹部に前記凸部が挿入された際に前記凹部内で燃焼ガスの圧縮爆発が生じるよう構成されている、
ロータリーエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリーエンジンであって、
前記第二のローターの外周側に、さらに外側に向かって突出する前記凸部が形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、それぞれの外周側において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう、前記第一のローターと前記第二のローターとが並置されている、
ロータリーエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載のロータリーエンジンであって、
前記第一のローターに、前記凹部が複数形成されており、
前記第二のローターに、前記凸部が複数形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとの回転に伴い、順次、前記第一のローターに形成された前記凹部に対して前記第二のローターに形成された前記凸部が挿抜されるよう構成されている、
ロータリーエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載のロータリーエンジンであって、
前記第二のローターの前記凸部が挿抜される、外周側から中心に向かって凹む他の凹部を複数有する第三のローターを、前記ハウジング内に収容して備え、
前記第二のローターと前記第三のローターとが回転することにより、それぞれの外周側において前記第三のローターの前記他の凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう、前記第二のローターと前記第三のローターとが並置されており、
前記第三のローターの前記他の凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿入された際に、前記他の凹部から前記第一のローターの前記凹部内における圧縮爆発により生じた排気ガスを排気する排気機構を備える、
ロータリーエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載のロータリーエンジンであって、
前記第一のローターと前記第二のローターと前記第三のローターとの回転に伴い、順次、前記第一のローターの前記凹部に対して挿抜された後の前記第二のローターの前記凸部が、前記第三のローターの前記他の凹部に対して挿抜されるよう構成されている、
ロータリーエンジン。
【請求項6】
請求項1に記載のロータリーエンジンであって、
前記第二のローターの表面上に前記凸部が形成され、
前記第二のローターの表面上の一部に前記第一のローターの一部が重なって配置されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、前記第二のローターの表面上において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう構成されている、
ロータリーエンジン。
【請求項7】
請求項6に記載のロータリーエンジンであって、
前記第二のローターの表面上に前記凸部が複数形成され、
前記第一のローターを複数備えると共に、前記第一のローターのそれぞれの一部が前記第二のローターの表面上の一部に重なって配置されており、
複数の前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、前記第二のローターの表面上において、前記第二のローターの複数の前記凸部のそれぞれが、それぞれ異なる前記第一のローターの前記凹部に挿抜されるよう構成されている、
ロータリーエンジン。
【請求項8】
請求項6に記載のロータリーエンジンであって、
前記第二のローターの表面上に形成された前記凸部が、当該第二のローターの表面上において当該第二のローターの回転軸と平行の回転軸を中心に回転可能なよう形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、前記第二のローターの表面上において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜される際に、当該第二のローターの前記凸部が前記第一のローターの前記凹部の開口部の形状に対応した向きとなるよう前記第二のローターの表面上で回転するよう構成されている、
ロータリーエンジン。
【請求項9】
請求項1に記載のロータリーエンジンであって、
前記第一のローターに、前記凹部が複数形成されており、
前記第二のローターの外周側に、さらに外側に向かって突出する前記凸部が複数形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとは、それぞれの外周側において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう配置され、
前記第二のローターは、自転しつつ前記第一のローターの周囲を公転する遊星歯車として形成されている、
ロータリーエンジン。
【請求項10】
請求項9記載のロータリーエンジンであって、
前記第一のローターの外周側に、当該第一のローターの周囲を遊星歯車として公転する前記第二のローターを複数配置した、
ロータリーエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
往復運動を回転運動に変換する通常のレシプロ(往復ピストン)エンジンに対し、爆発によってローターを直接回転させて動力を取り出すロータリーエンジンが開発されてきた。さらに近年では、特許文献1に示すような様々な構造のロータリーエンジンが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリーエンジンでは、高精度な機密性や圧縮率の問題が生じ、さらなる改善が望まれている。このため、本発明の目的は、さらなる性能の改善を図ることができるロータリーエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態であるロータリーエンジンは、
ハウジング内に収容された第一のローターと第二のローターとを備えたロータリーエンジンであって、
前記第一のローターは、燃焼室を形成し、外周側から中心に向かって凹む凹部を有し、
前記第二のローターは、前記凹部に挿抜される凸部を有し、
前記第一のローターと前記第二のローターとの回転に伴い、前記凸部が前記凹部に対して挿抜されるよう構成されており、
前記凹部に前記凸部が挿入される前に前記凹部内に燃焼ガスを吸気させる吸気機構を備えることで、前記凹部に前記凸部が挿入された際に前記凹部内で燃焼ガスの圧縮爆発が生じるよう構成されている、
という構成をとる。
【0006】
そして、上記ロータリーエンジンでは、
前記第二のローターの外周側に、さらに外側に向かって突出する前記凸部が形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、それぞれの外周側において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう、前記第一のローターと前記第二のローターとが並置されている、
という構成をとる。
【0007】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第一のローターに、前記凹部が複数形成されており、
前記第二のローターに、前記凸部が複数形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとの回転に伴い、順次、前記第一のローターに形成された前記凹部に対して前記第二のローターに形成された前記凸部が挿抜されるよう構成されている、
という構成をとる。
【0008】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第二のローターの前記凸部が挿抜される、外周側から中心に向かって凹む他の凹部を複数有する第三のローターを、前記ハウジング内に収容して備え、
前記第二のローターと前記第三のローターとが回転することにより、それぞれの外周側において前記第三のローターの前記他の凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう、前記第二のローターと前記第三のローターとが並置されており、
前記第三のローターの前記他の凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿入された際に、前記他の凹部から前記第一のローターの前記凹部内における圧縮爆発により生じた排気ガスを排気する排気機構を備える、
という構成をとる。
【0009】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第一のローターと前記第二のローターと前記第三のローターとの回転に伴い、順次、前記第一のローターの前記凹部に対して挿抜された後の前記第二のローターの前記凸部が、前記第三のローターの前記他の凹部に対して挿抜されるよう構成されている、
という構成をとる。
【0010】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第二のローターの表面上に前記凸部が形成され、
前記第二のローターの表面上の一部に前記第一のローターの一部が重なって配置されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、前記第二のローターの表面上において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう構成されている、
という構成をとる。
【0011】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第二のローターの表面上に前記凸部が複数形成され、
前記第一のローターを複数備えると共に、前記第一のローターのそれぞれの一部が前記第二のローターの表面上の一部に重なって配置されており、
複数の前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、前記第二のローターの表面上において、前記第二のローターの複数の前記凸部のそれぞれが、それぞれ異なる前記第一のローターの前記凹部に挿抜されるよう構成されている、
という構成をとる。
【0012】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第二のローターの表面上に形成された前記凸部が、当該第二のローターの表面上において当該第二のローターの回転軸と平行の回転軸を中心に回転可能なよう形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとが回転することにより、前記第二のローターの表面上において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜される際に、当該第二のローターの前記凸部が前記第一のローターの前記凹部の開口部の形状に対応した向きとなるよう前記第二のローターの表面上で回転するよう構成されている、
という構成をとる。
【0013】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第一のローターに、前記凹部が複数形成されており、
前記第二のローターの外周側に、さらに外側に向かって突出する前記凸部が複数形成されており、
前記第一のローターと前記第二のローターとは、それぞれの外周側において前記第一のローターの前記凹部に前記第二のローターの前記凸部が挿抜されるよう配置され、
前記第二のローターは、自転しつつ前記第一のローターの周囲を公転する遊星歯車として形成されている、
という構成をとる。
【0014】
また、上記ロータリーエンジンでは、
前記第一のローターの外周側に、当該第一のローターの周囲を遊星歯車として公転する前記第二のローターを複数配置した、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成されることにより、さらなる性能の改善を図ることができるロータリーエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本発明の実施形態1におけるロータリーエンジンの構成の概要を示す図である。
【
図1B】本発明の実施形態1におけるロータリーエンジンの動作を示す図である。
【
図1C】本発明の実施形態1の第1の変形例におけるロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示す図である。
【
図1D】本発明の実施形態1の第2の変形例におけるロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態2におけるロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態3におけるロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態4におけるロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、
図1A,Bを参照して説明する。
図1Aは、ロータリーエンジンの構成を説明するための図であり、
図1Bは動作を説明するための図である。
【0018】
図1Aは、本実施形態におけるロータリーエンジンの構成の概要を示している。
図1Aに示すように、ロータリーエンジンは、ハウジング1に収容された、第一のローター10と、第二のローター20と、第三のローター30と、を備えている。なお、第一のローター10、第二のローター20、第三のローター30は、それぞれ所定の厚みを有して構成されている。そして、ハウジング1は、3つのローター10,20,30の周囲を覆うと共に、図示していないが、3つのローター10,20,30の表面側(上面側)と裏面側(底面側)も覆うよう構成されている。特に、ハウジング1は、3つのローター10,20,30をすべて密閉して収容している。このため、ハウジング1と各ローター10,20,30との間には、必要に応じてシール部材が設けられている。
【0019】
第一のローター10は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。第一のローター10の外周には、外周側から中心に向かって凹む凹部11が複数形成されている。本実施形態では、6つの椀状の凹部11(11a,11b等)が形成されている。なお、これら凹部は、後述するように、燃焼室を形成することとなる。
【0020】
第一のローター10の中心は、所定の径を有する空洞の円柱形状に形成されている。具体的に、第一のローター10の中心は、各凹部11の底部付近に外周が位置する外径を有する空洞の円柱形状に形成されている。そして、第一のローター10の中心に位置する空洞の円柱形状の内側面には、各凹部11と連通する吸気穴12(12a,12b等)が形成されている。つまり、各凹部11の底部は、第一のローター10の中心に位置する円柱形状の空洞部分に貫通して形成されている。
貫通しており、
【0021】
さらに、第一のローター10の中心に位置する空洞の円柱形状の内部には、当該円柱形状構造に内接する外径を有する円筒形状の吸気通路13が形成されている。この吸気通路13は、第一のローター10と共に回転せず、例えば、ハウジング1に固定された状態となっている。そして、吸気通路13には、一か所にだけ内部から外部に通ずる吸気口13aが形成されている。例えば、吸気通路13の吸気口13aは、
図1Aに示すように、回転中の第一のローター10の1つの凹部11(11a)が特定の回転位置に位置したときに、当該凹部11(11a)の底部に形成された吸気穴12(12a)と連通する位置に形成されている。このため、吸気通路13の吸気口13aは、当該吸気口13aの形成位置に凹部11の底部の吸気穴12が位置したときにのみ、当該吸気穴12を介してその凹部11と連通することとなり、それ以外は、第一のローター10の中心に位置する空洞の円柱形状の内壁で塞がれた状態となる。
【0022】
そして、上述した吸気通路13の内部には、ロータリーエンジンの燃料となるガソリンと空気が混合された燃焼ガスが流入している。このため、
図1Bの矢印に示すように、吸気通路13の吸気口13aの位置に、回転中の第一のローター10の1つの凹部11(11a)の吸気穴12(12a)が位置したときに、吸気通路13の吸気口13aから吸気穴12(12a)を通じて凹部11(11a)に対して燃焼ガスが吸気されることとなる。このように、第一のローター10の凹部11に形成された吸気穴12、吸気通路13及び吸気口13aは、燃焼ガスの吸気を行う吸気機構として機能することとなる。
【0023】
第二のローター20は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。なお、第二のローター20の中心には、駆動軸が連結されることとなる。第二のローター20の外周には、さらに外周側に向かって突出する凸部21が複数形成されている。本実施形態では、6つの凸部21(21a,21b,21d等)が形成されている。例えば、凸部21は球形状に形成されており、その外径は、第一のローター10の凹部11の開口部の外径とほぼ同一である。そして、第二のローター20は、第一のローター10に対して、それぞれの回転軸が所定の距離だけ離れて平行に配置された状態で、第一のローター10の凹部11と第二のローター20の凸部21とが歯車のように相互に噛み合うよう並置されている。これにより、第一のローター10と第二のローター20とが相互に噛み合って回転する際には、それぞれの外周側において第一のローター10の凹部11に第二のローター20の凸部21が挿抜されるようになる。
【0024】
一例として、
図1Bに示すような場合において、第一のローター10が時計回りに回転し、第二のローター20が反時計回りに回転する場合には、第一のローター10の符号11aに示す凹部11(11a)に、第二のローター20の符号21aに示す凸部21(21a)が挿入されることとなる。このとき、吸気通路13の吸気口13aの位置に、第一のローター10の凹部11(11a)の底部に形成された吸気穴12(12a)が位置することとなり、これらが連通し、吸気通路13から吸気穴12(12a)を介して凹部11(11a)内に燃焼ガスが吸気されることとなる。なお、第一のローター10の凹部11に第二のローター20の凸部21が挿入されると、当該凸部21にて開口側が塞がれて内部が密閉状態となる。このため、さらに第一のローター10と第二のローター20との回転が進むと、第一のローター10の凹部11(11a)に第二のローター20の凸部21(21a)がさらに挿入することとなり、凹部11(11a)内の燃焼ガスが圧縮状態となる。このとき、図示しないが、ハウジング1には、第一のローター10の凹部11内に連通して当該凹部11内にスパークを発生させる点火プラグが装備されており、凹部11内の圧縮された燃焼ガスに点火するよう構成されている。すると、凹部11(11a)内の燃焼ガスが圧縮爆発し、かかる爆発により、
図1Bの符号11bの凹部に示すように、第一のローター10の凹部11b内から第二のローター20の凸部21bを押し出す力が付勢され、当該凸部21bが凹部11b内から抜かれるように作用する。これにより、第二のローター20には、反時計回りの回転力が付勢される。
【0025】
なお、第一のローター10と第二のローター20とが回転することで、順次、
図1Bの符号11aの位置に回転してきた第一のローター10の凹部11に対して、同じ位置に回転してきた第二のローター20の凸部21が挿入されることとなる。そして、
図1Bの符号11aと符号11bの間の箇所において、第一のローター10の凹部11内で燃焼ガスの圧縮爆発が生じ、順次、第二のローター20の凸部21に押し出される力が付勢され、回転力が継続することとなる。
【0026】
第三のローター30は、第一のローター10とほぼ同一形状に構成されている。つまり、第三のローター30は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。第三のローター30の外周には、外周側から中心に向かって凹む排気用凹部31(他の凹部)が複数形成されている。本実施形態では、6つの椀状の排出用凹部31(31d等)が形成されている。なお、これら排出用凹部は、後述するように、排気ガスを排出する排出室を形成することとなる。
【0027】
第三のローター30の中心は、所定の径を有する空洞の円柱形状に形成されている。具体的に、第三のローター30の中心は、各排出用凹部31の底部付近に外周が位置する外径を有する空洞の円柱形状に形成されている。そして、第三のローター30の中心に位置する空洞の円柱形状の内側面には、各排気用凹部31と連通する排気穴32(32d等)が形成されている。つまり、各排気用凹部31の底部は、第三のローター30の中心に位置する円柱形状の空洞部分に貫通して形成されている。
【0028】
さらに、第三のローター30の中心に位置する空洞の円柱形状の内部には、当該円柱形状に内接する外径を有する円筒形状の排気通路33が形成されている。この排気通路33は、第三のローター30と共に回転せず、例えば、ハウジング1に固定された状態となっている。そして、排気通路33には、一か所にだけ内部から外部に通ずる排気口33aが形成されている。例えば、排気通路33の排気口33aは、
図1Bに示すように、回転中の第三のローター30の1つの排気用凹部31(31d)が特定の回転位置に位置したときに、当該排気用凹部31(31a)の底部に形成された排気穴32(32d)と連通する位置に形成されている。このため、排気通路33の排気口33aは、当該排気口33aの形成位置に排気用凹部31の底部の排気穴32が位置したときにのみ、当該排気穴32と連通することとなり、それ以外は、第三のローター30の中心に位置する空洞の円柱形状の内壁で塞がれた状態となる。
【0029】
そして、上述した排気通路33は、燃焼後の排気ガスが外部に排出される通路となる。具体的に、
図1Bに示すように、排気通路33の排気口33aの位置に、回転中の第三のローター30の1つの排気用凹部31(31d)の排気穴32(32d)が位置したときに、当該排気用凹部31(31d)から排気穴32(32d)及び排気口33aを通じて排気通路33に排気ガスが排気されることとなる。このように、第三のローター30の排気用凹部31に形成された排気穴32、排気通路33及び排気口33aは、排気ガスの排気を行う排気機構として機能することとなる。
【0030】
具体的に、上述した排気ガスの排気動作について、
図1Bを参照して説明する。まず、第一のローター10の凹部11内による燃焼ガスの圧縮爆発により、当該凹部11内から押し出された第二のローター20の凸部21の後方側には、排気ガスが存在する状態となる。つまり、第一のローター10の凹部11から押し出された後の第二のローター20の凸部21と、この凸部21の回転後方側の凸部21と、の間には、排気ガスが収容されることとなる。その後、第二のローター20が回転して、回転後方側の凸部21(ここでは符号21dを参照)が第三のローター30の排気用凹部31(31d)に挿入される際には、当該回転後方側の凸部21の回転前方側に収容された排気ガスが排気用凹部31(31d)内に押し込まれる状態となる。これにより、排気用凹部31内から排気穴32(32d)及び排気口33aを通じて排気通路33に排気ガスが排気されることとなる。
【0031】
その後は、第二のローター20と第三のローター30とが回転することで、順次、
図1Bの符号31dの位置に回転してきた第三のローター30の排気用凹部31に対して、同じ位置に回転してきた第二のローター20の凸部21dが挿入されることとなる。そして、
図1Bの符号31dの位置からさらに第三のローター30が回転した位置において、第三のローター30の排気用凹部31内から排気ガスが排気される。さらにその後は、第三のローター30の排気用凹部31内から第二のローター20の凸部21が抜き出され、第二のローター20と第三のローター30との回転が継続される。
【0032】
なお、上述した第一のローター10に装備された吸気機構や、第三のローター30に装備された排気機構は、必ずしも上述した構成であることに限定されず、いかなる構成であってもよい。例えば、吸気機構は、ハウジング1の上面側に第一のローター10の特定の凹部11(11a)に対して燃焼ガスを吸気する機構を設けて構成されてもよい。また、排気機構は、ハウジング1の上面に第三のローター30の特定の排気用凹部31(31d)から排気ガスを排気する機構を設けて構成されてもよい。
【0033】
また、上記では、ロータリーエンジンの燃料がガソリンである場合を例示したが、液化石油ガス、圧縮天然ガス、水素、軽油など、いかなる燃料を使用してもよい。そして、本発明のロータリーエンジンには、使用される燃料に応じて、その燃焼や吸気及び排気に必要な構成が装備されうる。なお、以下に説明する変形例や他の実施形態におけるロータリーエンジンも同様に、いかなる燃料を使用してもよい。
【0034】
[第1の変形例]
ここで、上述した第1の実施形態におけるロータリーエンジンの第1の変形例を、
図1Cを参照して説明する。
図1Cは、ロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示している。
【0035】
本変形例におけるロータリーエンジンは、
図1Cに示すように、上述した
図1Aに示す構成に加えて、第四のローター40を備えており、これに応じて、ハウジング1Aの構造が異なる。さらに、本変形例では、第一のローター10及び第三のローター30の中心には、上述した吸気通路13及び排気通路33が形成されておらず、これに応じて第一のローター10及び第三のローター30の周囲に形成された凹部11,31の底部には、吸気穴12及び排気孔32は形成されていない。以下、主に上述した実施形態の構成とは異なる構成について説明する。
【0036】
図1Cに示すように、第四のローター40は、第二のローター20とほぼ同一形状に構成されている。つまり、第四のローター40は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。第四のローター40の外周には、さらに外周側に向かって突出する凸部が6つ形成されている。例えば、凸部は球形状に形成されており、その外径は、第一のローター10の凹部11の開口部の外径とほぼ同一である。そして、第四のローター40は、第一のローター10に対して、第二のローター20側とは反対側において、それぞれの回転軸が所定の距離だけ離れて平行に配置された状態で、第一のローター10の凹部と第四のローター40の凸部とが歯車のように相互に噛み合うよう並置されている。これにより、第一のローター10と第四のローター40とが相互に噛み合って回転する際には、それぞれの外周側において第一のローター10の凹部に第二のローター40の凸部が挿抜されるようになる。
【0037】
本変形例におけるハウジング1Aは、
図1Cに示すように、4つのローター10,20,30,40の周囲を覆うと共に、図示していないが、4つのローター10,20,30,40の表面側(上面側)と裏面側(底面側)も覆うよう構成されている。特に、ハウジング1Aは、4つのローター10,20,30,40をすべて密閉して収容している。さらに、ハウジング1Aには、第一のローター10の凹部と第二のローター20の凸部とが相互に噛み合う箇所のうち、
図1Cにおける上側には吸気路1Aaが形成されており、下側には排気路1Abが形成されている。そして、吸気路1Aa内には、
図1Cの矢印に示すように、ロータリーエンジンの燃料となるガソリンと空気が混合された燃焼ガスが流入している。このため、
図1Cに示すように、第一のローター10が時計回りに回転し、第二のローター20が反時計回りに回転することで、第一のローター10と第二のローター20とが相互に噛み合う箇所において、第一のローター10の凹部内に燃焼ガスが吸気され、かかる凹部内に第二のローター20の凸部が挿入されることで、凹部内で燃焼ガスの圧縮爆発が生じる。これにより、第二のローター20には、上述同様に反時計回りの回転力が付勢されることとなる。このとき、図示しないが、ハウジング1Aには、第一のローター10の凹部内に連通して当該凹部内にスパークを発生させる点火プラグが装備されている。
【0038】
そして、第一のローター10の凹部と第二のローター20の凸部とが相互に噛み合う箇所のうち、
図1Cにおける下側では、第一のローター10の凹部内の排気ガスが、矢印に示すようにハウジング1Aに形成された排気路1Abから排気されることとなる。このとき、ハウジング1Aには、さらに
図1Cの点線で示すように、各ローター10,20,30,40の上面側を覆う蓋部分の内面に、当該各ローター10,20,30,40の上面との隙間を形成する溝部1Adが形成されており、かかる溝部1Adは排気路1Abに連通している。これにより、第一のローター10の凹部に第四のローター40の凸部が挿入されたり、第三のローター30の凹部に第二のローター20の凸部が挿入されることにより、各凹部内の排気ガスが溝部1Ad内に押し出され、かかる排気ガスは溝部1Adを通じて排気路1Abに排気されることとなる。
【0039】
[第2の変形例]
次に、上述した第1の実施形態におけるロータリーエンジンの第2の変形例を、
図1Dを参照して説明する。
図1Dは、ロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示している。
【0040】
本変形例におけるロータリーエンジンは、
図1Dに示すように、上述した
図1Cに示すロータリーエンジンの構成とほぼ同様の構成を有している。但し、本変形例では、ハウジング1Bの構造が異なり、また、燃焼室となる凹部の位置も異なる。以下、主に上述した第1の変形例とは異なる構成について説明する。
【0041】
本変形例におけるハウジング1Bには、
図1Dに示すように、第二のローター20の凸部と第三のローター30の凹部とが相互に噛み合う箇所のうち、
図1Dにおける下側には吸気路1Bbが形成されており、同様に、第一のローター10の凹部と第四のローター40の凸部とが相互に噛み合う箇所のうち、
図1Dにおける下側には吸気路1Bcが形成されている。加えて、第一のローター10の凹部と第二のローター20の凸部とが相互に噛み合う箇所のうち、
図1Dにおける上側には排気路1Baが形成されている。そして、2つの吸気路1Bb,1Bc内には、
図1Dの矢印に示すように、ロータリーエンジンの燃料となるガソリンと空気が混合された燃焼ガスが流入している。
【0042】
このため、
図1Dに示すように、第一のローター10が時計回りに回転し、第四のローター40が反時計回りに回転することで、第一のローター10と第四のローター40とが相互に噛み合う箇所において、第一のローター10の凹部内に燃焼ガスが吸気され、かかる凹部内に第四のローター40の凸部が挿入されることで、凹部内で燃焼ガスの圧縮爆発が生じる。このとき、図示しないが、ハウジング1Bには、第一のローター10の凹部内に連通して当該凹部内にスパークを発生させる点火プラグが装備されている。同様に、第二のローター20が反時計回りに回転し、第三のローター30が時計回りに回転することで、第二のローター20と第三のローター30とが相互に噛み合う箇所において、第三のローター30の凹部内に燃焼ガスが吸気され、かかる凹部内に第二のローター20の凸部が挿入されることで、凹部内で燃焼ガスの圧縮爆発が生じる。このとき、図示しないが、ハウジング1Bには、第三のローター30の凹部内に連通して当該凹部内にスパークを発生させる点火プラグが装備されている。
【0043】
そして、第一のローター10と第二のローター20とが相互に噛み合う箇所のうち、
図1Dにおける上側では、第一のローター10及び第三のローター30の凹部内の排気ガスが、矢印に示すように排気路1Baから排気されることとなる。このとき、ハウジング1Bには、さらに
図1Dの点線で示すように、各ローター10,20の上面側を覆う蓋部分の内面に、当該各ローター10,20の上面との隙間を形成する溝部1Bdが形成されており、かかる溝部1Bdは排気路1Baに連通している。これにより、第一のローター10の凹部に第二のローター20の凸部が挿入されることにより、凹部内の排気ガスが溝部1Bdに押し出され、かかる排気ガスが溝部1Bdを通じて排気路1Baに排気されることとなる。
【0044】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態におけるロータリーエンジンの構成の概要及び動作を示している。
図2に示すように、本実施形態におけるロータリーエンジンは、ハウジング(図示せず)に収容された、第一のローター110と、第二のローター120と、を備えている。なお、第一のローター110、第二のローター120は、それぞれ所定の厚みを有して構成されている。そして、ハウジングは、図示しないが、各ローター110,120の周囲を覆うと共に、各ローターの表面側(上面側)と裏面側(底面側)も覆うよう構成されている。特に、ハウジングは、各ローター110,120をすべて密閉して収容している。このため、ハウジングと各ローター110,120との間には、必要に応じてシール部材が設けられている。
【0045】
第一のローター110は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。ここで、本実施形態では、第一のローター110(110A,110B等)は、4つ設けられている。そして、第一のローター110の外周には、外周側から中心に向かって凹む凹部111が複数形成されている。本実施形態では、90度の間隔で4つの凹部111(111Aa,111Ba等)が形成されている。なお、これら凹部111は、後述するように、燃焼室を形成することとなる。
【0046】
第二のローター120は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。なお、第二のローター120の中心には、駆動軸が連結されることとなる。第二のローター120の表面上(上面上)には、さらに上方に向かって突出する凸部121が複数形成されている。本実施形態では、第二のローター120の中心から外周方向に所定の距離だけ離れて位置する同心円上に、90度の間隔で4つの円柱形状の凸部121(121a等)が形成されている。なお、凸部121の高さは、第一のローター110の厚みとほぼ同等に形成されている。
【0047】
そして、第二のローター120の表面上には、上述した4つの第一のローター110(110A,110B等)の一部が重なって配置されている。具体的に、まず、第二のローター120の外径は、その半径が第一のローター110の半径よりも大きく形成されており、第二のローター120の外周よりも外側の同心円上に、90度の間隔で4つの第一のローター110(110A,110B等)の回転軸が位置するよう当該第一のローター110(110A,110B等)が配置されている。このとき、第二のローター120の表面上に、各第一のローター110の一部、例えば、略半分が重なるよう配置される。これにより、第一のローター110と第二のローター120とが回転する際には、第二のローター120の表面上において、各第一のローター110の凹部111に、第二のローター120の各凸部121が挿抜されるようになる。
【0048】
一例として、
図2の場合において、各第一のローター110(110A,110B等)が時計回りに回転し、第二のローター120が反時計回りに回転する場合には、符号110Aに示す第一のローター110の1つの凹部111(111Aa)には、第二のローター120の1つの凸部121(121a)が挿抜されると共に、符号110Bに示す別の第一のローター110の1つの凹部111(111Ba)には、第二のローター120の別の1つの凸部121(121b)が挿抜されることとなる。そして、第二のローター120の凸部121が各第一のローター110の凹部111に挿入される際には、かかる凹部111内に吸気機構(図示せず)から燃焼ガスが吸気され、当該凹部111内にさらに凸部121が挿入されることで、燃焼ガスの圧縮爆発が生じることとなり、第二のローター120に回転力が付勢されることとなる。例えば、
図2の例におけるその後は、符号110Aの第一のローター110(110A)の凹部111(111Aa)内から抜き出された凸部121(121a)は、隣に位置する符号110Bの第一のローター110(110B)の凹部111(111Bb)内に挿入されることとなる。
【0049】
なお、
図2においては、吸気機構や点火プラグは図示していないが、例えば、回転中の第一のローター110の凹部111に対して、つまり、第二のローター120の凸部121が挿入される前の凹部111に対して、燃焼ガスの吸気を行うことが可能なよう、ハウジングの上面側などに吸気機構や点火プラグなどを設けてもよい。同様に、回転中の第一のローター110の凹部111から排気ガスの排気を行ことが可能なよう、ハウジングの上面側に排気機構を設けてもよい。
【0050】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態におけるロータリーエンジンの構成の概要を示している。
図3に示すように、本実施形態におけるロータリーエンジンは、ハウジング(図示せず)に収容された、第一のローター210と、第二のローター220と、を備えている。なお、第一のローター210、第二のローター220は、それぞれ所定の厚みを有して構成されている。そして、ハウジングは、図示しないが、各ローター210,220の周囲を覆うと共に、各ローターの表面側(上面側)と裏面側(底面側)も覆うよう構成されている。特に、ハウジングは、各ローター210,220をすべて密閉して収容している。このため、ハウジングと各ローター210,220との間には、必要に応じてシール部材が設けられている。
【0051】
第一のローター210は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。そして、第一のローター210の外周には、外周側から中心に向かって凹む凹部211が複数形成されている。本実施形態では、開口部が矩形形状であって、中空の四角柱で形成された凹部211が6つ形成されている。なお、これら凹部211は、後述するように、燃焼室を形成することとなる。
【0052】
第二のローター220は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。なお、第二のローター220の中心には、駆動軸が連結されることとなる。第二のローター220の表面上(上面上)には、さらに上方に向かって突出する凸部221が複数形成されている。本実施形態では、第二のローター220の中心から外周方向に所定の距離だけ離れて位置する同心円上に、120度の間隔で3つの直方体形状の凸部221が形成されている。なお、凸部221の高さは、第一のローター210の厚みとほぼ同等に形成されている。具体的に、凸部221は、平面形状が長方形形状に形成されており、その長手方向が第一のローター210に形成された矩形の凹部211の開口部の幅とほぼ同じ長さに形成されている。さらに、凸部221は、
図2の矢印に示すように、第二のローター220の表面上において当該第二のローター220の回転軸と平行な回転軸を中心に回転可能なよう形成されている。
【0053】
そして、第二のローター220の表面上には、上述した第一のローター210の一部が重なって配置されている。具体的に、まず、第二のローター220の外径は、その半径が第一のローター210の半径よりも大きく形成されており、第二のローター220の外周よりも外側に第一のローター210の回転軸が位置するよう当該第一のローター210が配置されている。このとき、第二のローター220の表面上に、第一のローター210の一部、例えば、略半分が重なるよう配置される。これにより、第一のローター210と第二のローター220とが回転する際には、第二のローター220の表面上において、第一のローター210の凹部211に、第二のローター220の凸部221が挿抜されるようになる。
【0054】
一例として、
図3の場合において、第一のローター210が時計回りに回転し、第二のローター220が反時計回りに回転する場合には、第二のローター220の表面上において、第一のローター210の1つの凹部211に第二のローター220の1つの凸部221が挿抜されることとなる。特に、第一のローター210の凹部211に第二のローター220の凸部221が挿入される際には、第一のローター210の凹部211の開口部の形状に対応して、第二のローター220の凸部221が当該第二のローター220の表面上で回転することで、凹部211の開口側が凸部221にて塞がれるよう挿入されることとなる。本実施形態では、
図3に示すように、凹部211の開口部の幅方向に、平面形状が長方形状である凸部221の長手方向が位置するよう当該凸部221が回転して挿入される。
【0055】
そして、第二のローター220の凸部221が第一のローター210の凹部211に挿入される際には、かかる凹部211内に吸気機構から燃焼ガスが吸気され、当該凹部211内にさらに凸部221が挿入されることで、燃焼ガスの圧縮爆発が生じることとなり、第二のローター220に回転力が付勢されることとなる。なお、本実施形態においても、実施形態1,2で説明した方法で、吸気機構や点火プラグ、排気機構などを設けることができる。
【0056】
<実施形態4>
次に、本発明の第4の実施形態を、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態におけるロータリーエンジンの構成の概要を示している。
図4に示すように、本実施形態におけるロータリーエンジンは、ハウジング(図示せず)に収容された、第一のローター310と、第二のローター320と、を備えている。なお、第一のローター310、第二のローター320は、それぞれ所定の厚みを有して構成されている。そして、ハウジングは、図示しないが、各ローター310,320の周囲を覆うと共に、各ローターの表面側(上面側)と裏面側(底面側)も覆うよう構成されている。特に、ハウジングは、各ローター310,320をすべて密閉して収容している。このため、ハウジングと各ローター310,320との間には、必要に応じてシール部材が設けられている。
【0057】
第一のローター310は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されており、その中心を回転中心として回転するよう構成されている。なお、第一のローター310の中心には、他の実施形態とは異なり、駆動軸が連結されることとなる。そして、第一のローター310の外周には、外周側から中心に向かって凹む凹部311が複数形成されている。本実施形態では、6つの凹部311が形成されている。なお、これら凹部311は、後述するように、燃焼室を形成することとなる。
【0058】
第二のローター320は、所定の厚みを有する略円盤状に形成されている。第二のローター20の外周には、さらに外周側に向かって突出する凸部321が複数形成されており、本実施形態では6つの凸部321が形成されている。ここで、本実施形態では、第二のローター320は遊星歯車であり、一例として3つ設けられている。具体的に、第二のローター320は、上述した第一のローター310を太陽歯車とし、当該第一のローター310を中心として、自身が自転しながら公転するよう構成されている。このため、本実施形態におけるロータリーエンジンは、図示しないが、第二のローター320の公転運動を拾う遊星キャリアと、第二のローター320の凸部321と外側で噛み合う最外周に位置する内歯車と、を備えて構成されている。
【0059】
そして、太陽歯車である第一のローター310と、遊星歯車である第二のローター320とが相互に噛み合って回転する際には、第一のローター310の凹部311に第二のローター320の凸部321が挿抜されるようになる。そして、各第二のローター320の凸部321が第一のローター310の各凹部311に挿入される際には、かかる凹部311内に吸気機構から燃焼ガスが吸気され、当該凹部311内にさらに凸部321が挿入されることで、燃焼ガスの圧縮爆発が生じることとなり、第一のローター310に回転力が付勢されることとなる。
【0060】
そして、第一のローター310と第二のローター320とが回転することで、順次、第一のローター310の各凹部311に対して、各第二のローター320の凸部321が挿入されることとなる。このため、第一のローター310の各凹部311内で、順次、燃焼ガスの圧縮爆発が生じ、回転力が継続することとなる。なお、本実施形態においても、実施形態1,2で説明した方法で、吸気機構や点火プラグ、排気機構などを設けることができる。
【0061】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ハウジング
10,110,210,310 第一のローター
11,111,211,311 凹部
12 吸気穴
13 吸気通路
13a 吸気口
20,120,220,320 第二のローター
21,121,221,321 凸部
31 排気用凹部
32 排気穴
33 排気通路
33a 排気口
40 第四のローター
1A,1B ハウジング
1Aa,1Bb,1Bc 吸気路
1Ab,1Ba 排気路