(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077058
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】外観検査装置及び外観検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190178
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】俵 京佑
(72)【発明者】
【氏名】趙 新亮
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AB02
2G051CA04
2G051EA14
2G051EB10
2G051ED04
(57)【要約】
【課題】実際にワークに想定される様々な欠陥状態を持つ学習用の不良品画像を自然に作り出せるようにして、不良品学習に要する時間を短縮する。
【解決手段】不良品画像の不良箇所を抽出する抽出処理と、抽出処理で抽出された不良箇所を参照画像に貼り付ける貼り付け処理と、貼り付け処理で貼り付けられた不良箇所と参照画像との境界を目立たなくする処理とを実行することにより、新たな不良品画像を生成する。記憶部に予め記憶された良品画像及び不良品画像と、新たな不良品画像とを機械学習ネットワークに学習させて推論モデルを生成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習ネットワークに検査対象のワークを撮影したワーク画像を入力し、入力された前記ワーク画像に基づいてワークの良否判定を行う外観検査装置であって、
良品に対応する良品画像と、不良品に対応する不良品画像とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に予め記憶された前記不良品画像の不良箇所を抽出する抽出処理と、抽出処理で抽出された不良箇所を、ワークを含む参照画像に貼り付ける貼り付け処理と、貼り付け処理で貼り付けられた前記不良箇所と前記参照画像との境界を目立たなくする処理とを実行することにより、新たな不良品画像を生成する画像処理部と、
前記記憶部に予め記憶された良品画像及び不良品画像と、前記画像処理部により生成された新たな不良品画像とを機械学習ネットワークに学習させて推論モデルを生成する学習部と、
前記学習部により生成された推論モデルに検査対象のワークを撮影したワーク画像を入力し、入力された前記ワーク画像に基づいてワークの良否判定を行う検査部と、を備える外観検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外観検査装置において、
前記画像処理部は、前記抽出処理において、前記記憶部に記憶されている不良品画像の特徴量を取得し、周囲の特徴量とは異なる特徴量を有する部位を前記不良箇所として抽出する外観検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の外観検査装置において、
前記画像処理部は、前記抽出処理において、抽出した前記不良箇所の範囲の修正を受け付ける外観検査装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の外観検査装置において、
前記画像処理部は、前記抽出処理において、前記記憶部に記憶されている不良品画像の中からユーザによる前記不良箇所の選択操作を受け付け、受け付けた選択操作に基づいて前記不良箇所を抽出する外観検査装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の外観検査装置において、
前記画像処理部は、前記抽出処理で抽出された不良箇所に画像変換を施した状態で当該不良箇所を前記参照画像に貼り付ける外観検査装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の外観検査装置において、
前記画像処理部は、前記参照画像に含まれるワーク部分を、前記不良箇所の貼り付け対象領域として特定し、特定した前記貼り付け対象領域に前記不良箇所を貼り付け、前記不良箇所の貼り付け処理後、前記不良箇所の前記貼り付け対象領域からはみ出た部分をトリミングするトリミング処理を実行する外観検査装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の外観検査装置において、
前記画像処理部が生成した新たな不良品画像を表示部に表示させる表示制御部を更に備えている外観検査装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の外観検査装置において、
前記画像処理部は、当該画像処理部が生成した新たな不良品画像に、不良品のワークを撮影した不良品画像と区別するための識別情報を付与する外観検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の外観検査装置において、
前記学習部は、前記識別情報が付与された前記不良品画像を学習対象から除外して不良品学習が可能に構成されている外観検査装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の外観検査装置において、
前記学習部は、前記識別情報が付与された前記不良品画像による学習の重みを、不良品のワークを撮影した不良品画像による学習の重みに比べて軽くすることが可能に構成されている外観検査装置。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1つに記載の外観検査装置において、
前記画像処理部は、所定の拘束条件にしたがって、前記参照画像に含まれるワーク部分に対し、不良箇所を貼り付ける外観検査装置。
【請求項12】
機械学習ネットワークに検査対象のワークを撮影したワーク画像を入力し、入力された前記ワーク画像に基づいてワークの良否判定を行う外観検査方法であって、
良品に対応する良品画像と、不良品に対応する不良品画像とを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで予め記憶された前記不良品画像の不良箇所を抽出する抽出処理と、抽出処理で抽出された不良箇所を、ワークを含む参照画像に貼り付ける貼り付け処理と、貼り付け処理で貼り付けられた前記不良箇所と前記参照画像との境界を目立たなくするぼかし処理とを実行することにより、新たな不良品画像を生成する画像処理ステップと、
前記記憶ステップで予め記憶された良品画像及び不良品画像と、前記画像処理ステップで生成された新たな不良品画像とを機械学習ネットワークに学習させて推論モデルを生成する学習ステップと、
前記学習ステップで生成された推論モデルに検査対象のワークを撮影したワーク画像を入力し、入力された前記ワーク画像に基づいてワークの良否判定を行う検査ステップと、を備える外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外観を検査する外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、コンピュータによる機械学習を用いて、ワークが良品であるか不良品であるかの判定を行う処理装置が開示されている。特許文献1の処理装置は、良品データを対象とした教師ありの機械学習を行って良品学習モデルを生成するとともに、不良品データを対象とした教師ありの機械学習を行って不良品学習モデルを生成した後、判定対象となるワークのデータを入力し、良品学習モデル及び不良品学習モデルによってワークが良品であるか不良品であるかの判定が行えるように構成されており、このような装置はワークの外観検査装置とも呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不良品データを対象とした教師あり学習を行う場合、例えば数十枚、数百枚の不良品画像が必要になる。しかし、ワークの生産現場では不良品が殆ど発生しないのでこれほどの枚数の不良品画像を収集しようとすると、長い時間がかかる。そこで、良品データを対象とした良品学習が解決手段として想定されるが、良品データのみで学習した機械学習ネットワークの場合、不良品の検出能力が不足し、難易度の高い検査では不良品学習に比べて性能が劣るので、不良品学習を行いたい。
【0005】
このことに対して、学習用の不良品画像を外観検査装置の内部で作り出せるようにすれば、比較的短い時間で多数の不良品画像を取得することができる。ところが、外観検査装置の内部で不良品画像を作り出すといっても、例えば、画像のコントラスト変換、単純な回転、縦横比を変化させる単純な変形等に留まり、幅広い不良品画像を作り出すことは困難であった。具体的には、例えばワークの「割れ」の検出を行う推論モデルを生成する場合を想定すると、実際のワークでは「割れ」の形状や位置、大きさが様々に想定されるので、幅広い不良品画像が要求されるのであるが、単にコントラストを変換した画像、回転した画像、縦横比を変化させた画像等では、対応が困難であった。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、実際にワークに想定される様々な欠陥状態を持つ学習用の不良品画像を自然に作り出せるようにして、不良品学習に要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、機械学習ネットワークに検査対象のワークを撮影したワーク画像を入力し、入力された前記ワーク画像に基づいてワークの良否判定を行う外観検査装置を前提することができる。外観検査装置は、良品に対応する良品画像と、不良品に対応する不良品画像とを記憶する記憶部と、前記記憶部に予め記憶された前記不良品画像の不良箇所を抽出する抽出処理と、抽出処理で抽出された不良箇所を、ワークを含む参照画像に貼り付ける貼り付け処理と、貼り付け処理で貼り付けられた前記不良箇所と前記参照画像との境界を目立たなくする処理とを実行することにより、新たな不良品画像を生成する画像処理部と、前記記憶部に予め記憶された良品画像及び不良品画像と、前記画像処理部により生成された新たな不良品画像とを機械学習ネットワークに学習させて推論モデルを生成する学習部とを備えている。さらに、外観検査装置は、前記学習部により生成された推論モデルに検査対象のワークを撮影したワーク画像を入力し、入力された前記ワーク画像に基づいてワークの良否判定を行う検査部も備えている。
【0008】
この構成によれば、不良品画像が有する不良箇所が抽出されると、抽出された不良箇所が参照画像に貼り付けられる。不良箇所を貼り付ける参照画像は、良品画像であってもよいし、不良品画像であってもい。これにより、不良箇所を有する不良品画像が新たに生成される。新たに生成された不良品画像では、貼り付けられた不良箇所と参照画像との境界が目立たなくなっているので、自然な不良品画像となる。これを繰り返すことで、実際にワークに想定される様々な欠陥状態を持つ学習用の不良品画像を複数取得できる。
【0009】
新たな不良品画像と、記憶部に予め記憶された良品画像及び不良品画像とを機械学習ネットワークに学習させることで、不良品の検出能力の高い推論モデルが生成される。よって、外観検査性能を高めることができる。
【0010】
他の態様に係る画像処理部は、前記抽出処理において、前記記憶部に記憶されている不良品画像の特徴量を取得し、周囲の特徴量とは異なる特徴量を有する部位を前記不良箇所として抽出することができる。
【0011】
この構成によれば、記憶部に記憶されている不良品画像の不良箇所が自動的に抽出されるので、ユーザの手間を省くことができる。
【0012】
他の態様に係る画像処理部は、前記抽出処理において、抽出した前記不良箇所の範囲の修正を受け付けることができる。
【0013】
すなわち、不良品画像の特徴量に基づいて自動的に抽出された不良箇所の範囲が誤っている場合が想定される。この場合には、ユーザが不良箇所の範囲の修正を行うと、その修正が受け付けられるので、不良箇所の範囲を適切に設定できる。
【0014】
他の態様に係る画像処理部は、前記抽出処理において、前記記憶部に記憶されている不良品画像の中からユーザによる前記不良箇所の選択操作を受け付け、受け付けた選択操作に基づいて前記不良箇所を抽出することができる。
【0015】
すなわち、不良品画像や不良箇所によっては、特徴量に基づく抽出が困難なケースも想定される。このような場合には、ユーザが不良品画像の中から不良箇所を選択すると、選択した不良箇所を抽出することができるので、不良箇所が誤って抽出され難くなる。
【0016】
他の態様に係る画像処理部は、前記抽出処理で抽出された不良箇所に画像変換を施した状態で当該不良箇所を前記参照画像に貼り付けることができる。
【0017】
この構成によれば、不良品画像全体のコントラストを変えたり、回転させたりするのではなく、不良箇所のみに対して画像変換を施すので、生成する新たな不良品画像のバリエーションを大幅に増やすことができる。
【0018】
他の態様に係る画像処理部は、前記参照画像に含まれるワーク部分を、前記不良箇所の貼り付け対象領域として特定し、特定した前記貼り付け対象領域に前記不良箇所を貼り付けることができるので、学習に適した不良品画像を生成できる。また、前記不良箇所の貼り付け処理後、前記不良箇所の前記貼り付け対象領域からはみ出た部分をトリミングするトリミング処理を実行することができる。
【0019】
この構成によれば、ワーク部分の外に不良箇所が位置するといった不自然な不良品画像が生成されなくなるので、学習の精度を高めることができる。
【0020】
他の態様に係る画像処理部が生成した新たな不良品画像を表示部に表示させる表示制御部を更に備えているので、不良箇所の貼り付け及びぼかし処理によってどのような不良品画像が生成されているかをユーザが見て確認できる。その結果、違和感のある画像であれば、学習に用いない等、ユーザが学習に使用するか否かを決定できる。
【0021】
他の態様に係る画像処理部は、当該画像処理部が生成した新たな不良品画像に、不良品のワークを撮影した不良品画像と区別するための識別情報を付与することができる。
この構成によれば、画像処理部が生成した不良品画像と、不良品のワークを撮影した不良品画像とを区別できるので、例えば、不良品のワークを撮影した不良品画像が多く蓄積された段階で、画像処理部が生成した不良品画像を学習対象から除外できる。また、画像処理部が生成した不良品画像を学習する際、不良品のワークを撮影した不良品画像に比べて学習の重みを軽くすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、不良品画像から抽出された不良箇所を参照画像に貼り付けた後、不良箇所と参照画像との境界を目立たなくすることにより、実際にワークに想定される様々な欠陥状態を持つ新たな不良品画像を自然に作り出すことができる。そして、新たな不良品画像と、記憶部に予め記憶された良品画像及び不良品画像とを機械学習ネットワークに学習させることで、不良品の検出能力の高い推論モデルを短時間で生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る外観検査装置の構成を示す模式図である。
【
図2】前記外観検査装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【
図3】学習処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】不良品画像の内部生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】FIG.5Aは実際の不良品を撮影した不良品画像を示し、FIG.5Bは不良品画像から不良箇所を抽出した画像を示す。
【
図6】FIG.6Aは参照画像を示し、FIG.6Bは貼り付け対象領域を特定した画像を示す。
【
図7】FIG.7Aはドーナツ状の不良品画像の例を示し、FIG.7B、7Cは不良箇所を貼り付けた様子を示す図である。
【
図8】FIG.8Aは長い形状の不良品画像の例を示し、FIG.8B、8Cは不良箇所を貼り付けた様子を示す図である。
【
図9】FIG.9Aは複雑な形状の不良品画像の例を示し、FIG.9B、9Cは不良箇所を貼り付けた様子を示す図である。
【
図10】FIG.10Aは不良箇所を貼り付け対象領域内に貼り付けた様子を示し、FIG.10Bは不良箇所を貼り付け対象領域からはみ出した状態で貼り付けた様子を示す。
【
図11】外観検査装置の運用時の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る外観検査装置1の構成を示す模式図である。外観検査装置1は、例えば各種部品や製品等のような検査対象であるワークを撮像して取得されたワーク画像の良否判定を行うための装置であり、工場等の生産現場等で使用することができる。具体的には、外観検査装置1の内部には機械学習ネットワークが構築されている。生成された機械学習ネットワークに、検査対象のワークを撮像したワーク画像を入力し、当該ワーク画像の良否判定を機械学習ネットワークによって行うことができるようになっている。
【0026】
ワークは、それ全体が検査対象であってもよいし、ワークの一部のみが検査対象であってもよい。また、1つのワークに複数の検査対象が含まれていてもよい。また、ワーク画像には、複数のワークが含まれていてもよい。
【0027】
外観検査装置1は、装置本体となる制御ユニット2と、撮像ユニット3と、表示装置(表示部)4と、パーソナルコンピュータ5とを備えている。パーソナルコンピュータ5は、必須なものではなく、省略することもできる。表示装置4の代わりにパーソナルコンピュータ5を使用して各種情報や画像を表示させることもできるし、パーソナルコンピュータ5の機能を制御ユニット2に組み込むことや、表示装置4に組み込むことができる。
【0028】
図1では、外観検査装置1の構成例の一例として、制御ユニット2、撮像ユニット3、表示装置4及びパーソナルコンピュータ5を記載しているが、これらのうち、任意の複数を組み合わせて一体化することもできる。例えば、制御ユニット2と撮像ユニット3を一体化することや、制御ユニット2と表示装置4を一体化することもできる。また、制御ユニット2を複数のユニットに分割して一部を撮像ユニット3や表示装置4に組み込むことや、撮像ユニット3を複数のユニットに分割して一部を他のユニットに組み込むこともできる。
【0029】
(撮像ユニット3の構成)
図2に示すように、撮像ユニット3は、カメラモジュール(撮像部)14と、照明モジュール(照明部)15とを備えており、ワーク画像の取得を実行するユニットである。カメラモジュール14は、撮像光学系を駆動するAF用モータ141と、撮像基板142とを備えている。AF用モータ141は、撮像光学系のレンズを駆動することにより、自動でピント調整を実行する部分であり、従来から周知のコントラストオートフォーカス等の手法によってピント調整を行うことができる。撮像基板142は、撮像光学系から入射した光を受光する受光素子としてCMOSセンサ143を備えている。CMOSセンサ143は、カラー画像を取得することができるように構成された撮像センサである。CMOSセンサ143の代わりに、例えばCCDセンサ等の受光素子を用いることもできる。
【0030】
照明モジュール15は、ワークを含む撮像領域を照明する発光体としてのLED(発光ダイオード)151と、LED151を制御するLEDドライバ152とを備えている。LED151による発光タイミング、発光時間、発光量は、LEDドライバ152によって任意に制御することができる。LED151は、撮像ユニット3に一体に設けてもよいし、撮像ユニット3とは別体として外部照明ユニットとして設けてもよい。
【0031】
(表示装置4の構成)
表示装置4は、例えば液晶パネルや有機ELパネル等からなる表示パネルを有している。制御ユニット2から出力されたワーク画像やユーザーインターフェース画像等は表示装置4に表示される。また、パーソナルコンピュータ5が表示パネルを有している場合、パーソナルコンピュータ5の表示パネルを表示装置4の代わりとして利用することができる。
【0032】
(操作機器)
外観検査装置1をユーザが操作するための操作機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ5が有するキーボード51やマウス52等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、ユーザによる各種操作を受付可能に構成された機器であればよい。例えば、表示装置4が有するタッチパネル41のようなポインティングデバイスも操作機器に含まれる。
【0033】
キーボード51やマウス52のユーザによる操作は制御ユニット2で検出可能になっている。また、タッチパネル41は、例えば感圧センサを搭載した従来から周知のタッチ式操作パネルであり、ユーザのタッチ操作は制御ユニット2で検出可能になっている。他のポインティングデバイスを用いた場合も同様である。
【0034】
(制御ユニット2の構成)
制御ユニット2は、メイン基板13と、コネクタ基板16と、通信基板17と、電源基板18とを備えている。メイン基板13には、プロセッサ13aが設けられている。プロセッサ13aは、接続されている各基板及びモジュールの動作を制御する。例えば、プロセッサ13aは、照明モジュール15のLEDドライバ152に対してLED151の点灯/消灯を制御する照明制御信号を出力する。LEDドライバ152は、プロセッサ13aからの照明制御信号に応じて、LED151の点灯/消灯の切替及び点灯時間の調整を行うとともに、LED151の光量等を調整する。
【0035】
また、プロセッサ13aは、カメラモジュール14の撮像基板142に、CMOSセンサ143を制御する撮像制御信号を出力する。CMOSセンサ143は、プロセッサ13aからの撮像制御信号に応じて、撮像を開始するとともに、露光時間を任意の時間に調整して撮像を行う。すなわち、撮像ユニット3は、プロセッサ13aから出力される撮像制御信号に応じてCMOSセンサ143の視野範囲内を撮像し、視野範囲内にワークがあれば、ワークを撮像することになるが、ワーク以外の物が視野範囲内にあれば、それも撮像することができる。例えば、外観検査装置1は、機械学習ネットワークの学習用の画像として、撮像ユニット3により、良品に対応する良品画像と不良品に対応する不良品画像とを撮像することができる。学習用の画像は、撮像ユニット3で撮像された画像でなくてもよく、他のカメラ等で撮像された画像であってもよい。
【0036】
一方、外観検査装置の運用時には、撮像ユニット3により、ワークを撮像することができる。また、CMOSセンサ143は、ライブ画像、即ち現在の撮像された画像を短いフレームレートで随時出力することができるように構成されている。
【0037】
CMOSセンサ143による撮像が終わると、撮像ユニット3から出力された画像信号は、メイン基板13のプロセッサ13aに入力されて処理されるとともに、メイン基板13のメモリ13bに記憶されるようになっている。メイン基板13のプロセッサ13aによる具体的な処理内容の詳細については後述する。尚、メイン基板13には、FPGAやDSP等の処理装置が設けられていてもよい。FPGAやDSP等の処理装置が統合されたプロセッサ13aであってもよい。
【0038】
メイン基板13には、表示制御部13cが設けられている。表示制御部13cは、表示画面を生成するとともに、表示装置4を制御し、表示画面を表示装置4に表示させる部分である。表示制御部13cの具体的な動作については後述する。
【0039】
コネクタ基板16は、電源インターフェース161に設けてある電源コネクタ(図示せず)を介して外部から電力の供給を受ける部分である。電源基板18は、コネクタ基板16で受けた電力を各基板及びモジュール等に分配する部分であり、具体的には、照明モジュール15、カメラモジュール14、メイン基板13、及び通信基板17に電力を分配する。電源基板18は、AF用モータドライバ181を備えている。AF用モータドライバ181は、カメラモジュール14のAF用モータ141に駆動電力を供給し、オートフォーカスを実現している。AF用モータドライバ181は、メイン基板13のプロセッサ13aからのAF制御信号に応じて、AF用モータ141に供給する電力を調整する。
【0040】
通信基板17は、メイン基板13と表示装置4及びパーソナルコンピュータ5との通信、メイン基板13と外部制御機器(図示せず)との通信等を実行する部分である。外部制御機器は、例えばプログラマブルロジックコントローラ等を挙げることができる。通信は、有線であってもよいし、無線であってもよく、いずれの通信形態も、従来から周知の通信モジュールによって実現することができる。
【0041】
制御ユニット2には、例えばソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等からなる記憶装置(記憶部)19が設けられている。記憶装置19には、後述する各制御及び処理を上記ハードウエアによって実行可能にするためのプログラムファイル80や設定ファイル等(ソフトウエア)が記憶されている。プログラムファイル80や設定ファイルは、例えば光ディスク等の記憶媒体90に格納しておき、この記憶媒体90に格納されたプログラムファイル80や設定ファイルを制御ユニット2にインストールすることができる。プログラムファイル80は、外部サーバから通信回線を利用してダウンロードされるものであってもよい。また、記憶装置19には、例えば、上記画像データ等を記憶させておくこともできるし、後述する学習処理後に得られた推論モデルを構築するためのパラメータ等も記憶させておくことができる。
【0042】
図2では、記憶装置19が制御ユニット2と一体化されたものとして表現しているが、記憶装置19は制御ユニット2とは別体のものであってもよい。そのような記憶装置19の例としては、ネットワーク対応ストレージ(NAS:Network Attached Storage)等を挙げることができる。NSAと制御ユニット2とは有線LANや無線LAN等の通信回線によって接続される。
【0043】
すなわち、外観検査装置1では、学習用の画像を使用して機械学習ネットワークを学習させることで、機械学習ネットワークのパラメータが調整されて推論モデルが生成される。推論モデルに検査対象のワークを撮影したワーク画像を入力し、入力されたワーク画像に基づいてワークの良否判定を行うことができる。この外観検査装置1を使用することで、ワーク画像に基づいてワークの良否判定を行う外観検査方法を実行できる。
【0044】
(プロセッサの構成)
図2に示すように、プロセッサ13aには、画像処理部13d、学習部13e及び検査部13fが設けられている。画像処理部13d、学習部13e及び検査部13fは、ハードウエアで構成された部分であってもよいし、ソフトウエアを実行することによって構成される部分であってもよい。また、画像処理部13d、学習部13e及び検査部13fは、必ずしもメイン基板13に設けられていなくてもよく、これらの一部または全部がメイン基板13以外の基板に設けられていてもよい。
【0045】
各部の詳細については後述するが、概略は以下のとおりである。画像処理部13dは後述する不良品画像を内部生成する部分である。また、学習部13eは、機械学習ネットワークに学習用データを入力して学習させ、入力画像の良否判定を行うための推論モデルを生成する部分である。学習部13eは、例えば制御ユニット2とは別の学習用計算機で構成されていてもよい。学習用計算機は、機械学習を高速で行うことが可能に構成されている。学習用計算機と制御ユニット2とを通信可能に接続しておくことで、学習用計算機で生成された推論モデルを構築するパラメータを記憶装置19に送信して記憶させることができる。これにより、制御ユニット2に推論モデルを構築できる。検査部13fは、ワーク画像を推論モデルに入力してワークの良否判定を行う部分である。
【0046】
(学習処理)
次に、機械学習ネットワークの学習処理について具体的に説明する。学習の種類として、不良品画像を学習させる不良品学習と、良品画像を学習させる良品学習とがある。ワークの生産現場では良品が殆どを占めているので、良品学習用の良品画像を多くする収集するのは容易であるが、良品画像のみで学習した機械学習ネットワークの場合、不良品の検出能力が不足し、難易度の高い検査では不良品学習に比べて性能が劣るので、不良品学習を行いたいという要求がある。ところが、ワークの生産現場では不良品の発生数は極めて少ないので、学習用の不良品画像を短時間で収集するのは困難である。本実施形態では、外観検査装置1の内部でバリエーションの豊富な不良品画像を自然に、しかも多数作り出すことができるように構成されている。以下、詳述する。
【0047】
図3のフローチャートは、学習処理の手順の一例を示している。スタート後のステップSA1では、学習部13eが、未学習の機械学習ネットワークを用意する。未学習の機械学習ネットワークは、例えば、パラメータの初期値が無作為に決定されたものである。ステップSA2では、機械学習ネットワークの学習に用いる学習用の良品画像と不良品画像とを記憶装置19に記憶させる。このステップSA2が記憶ステップである。記憶ステップは、ステップSA1よりも前にユーザにより実行されてもよい。また、学習用の良品画像と不良品画像は、ユーザが事前にワークを撮影して蓄積していた画像であってもよいし、学習のために新たにワークを撮像して取得した画像であってもよいし、外観検査装置1の運用中に撮像ユニット3で取得された画像であってもよい。また、記憶装置19以外の記憶装置(図示せず)に記憶されている良品画像及び不良品画像を、学習用の良品画像及び不良品画像として使用することもできる。
【0048】
不良品画像には、アノテーションを実行しておく。すなわち、不良品画像に、不良品画像であることを明示する処理、不良品画像の不良箇所を指定する処理等をユーザが事前に行っておく。アノテーションによって付与された情報は、該当する不良品画像と関連付けられた状態で記憶装置19に記憶されている。
【0049】
その後、ステップSA3に進む。ステップSA3では、不良品画像の内部生成処理が必要であるか否かを判定する。不良品画像の内部生成処理とは、詳細は後述するが、既存の不良品画像を使用して別の不良品画像を外観検査装置1の内部で作り出す処理のことである。ステップSA3の判定はユーザが行うことができる。例えば、不良品画像が1枚、または数枚程度しか収集できなかった場合には、不良品学習のための不良品画像の数が十分ではないので、ユーザは、不良品画像の内部生成処理が必要であると判定する。一方、不良品学習のための不良品画像の数が数十枚、数百枚程度収集されているのであれば、不良品学習のための不良品画像の数が十分であるので、ユーザは、不良品画像の内部生成処理が不要であると判定する。ユーザは、不良品画像の内部生成処理の要否をマウス52等の操作機器を使用して入力できる。例えば、表示制御部13cが、不良品画像の内部生成処理の要否選択が可能なユーザーインターフェース画面を生成して表示装置4に表示させることで、ユーザは不良品画像の内部生成処理の要否を容易に入力できる。ユーザによる入力は、学習部13eで受け付けられるので、外観検査装置1の内部では学習部13eがステップSA3を判定しているとして扱うことができる。
【0050】
ステップSA3でYESと判定されて不良品画像の内部生成処理が必要な場合には、ステップSA4に進む一方、ステップSA3でNOと判定されて不良品画像の内部生成処理が不要な場合には、ステップSA5に進む。
【0051】
ステップSA4では、学習用の不良品画像の数を増やすべく、不良品画像の内部生成処理を実行する。内部生成処理の手順の一例は、
図4に示すフローチャートに示している。
図4に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートのステップSA3でYESと判定されるとスタートする。
図4のフローチャートのスタート後のステップSB1では、学習部13eが記憶装置19に記憶されている良品画像及び不良品画像を読み出し、学習部13eが読み出した良品画像及び不良品画像を表示制御部13cが表示装置4に表示させる。表示装置4に表示させる画像の数は何枚であってもよいが、不良品画像については全てを表示させることが可能である。この場合、不良品画像を一覧形式で表示させることができる。これにより、様々な不良箇所をユーザに提示することができる。
【0052】
ステップSB2では、ユーザによる不良品画像の選択を学習部13eが受け付ける。例えば、前のステップSB1において、表示制御部13cが、不良品画像を一覧形式で表示可能なユーザーインターフェース画面を生成し、表示装置4に表示させる。そのユーザーインターフェース画面に選択ボタン等を組み込み、ユーザによるマウス52等の操作により、所望の不良品画像を選択可能にしておく。学習部13eはユーザの選択操作を検出すると、選択操作に対応する不良品画像が選択されたものとして一時的に記憶する。
【0053】
また、ステップSB3では、ユーザによる参照画像の選択を学習部13eが受け付ける。参照画像とは、内部生成の際に利用する元となる画像であり、多くの場合は良品画像が適しているが、不良品画像を利用してもよい。例えば、ステップSB1で表示されているユーザーインターフェース画面に選択ボタン等を組み込み、ユーザによるマウス52等の操作により、所望の画像を選択可能にしておく。学習部13eはユーザの選択操作を検出すると、選択操作に対応する画像が選択されたものとして一時的に記憶する。ステップSB2とステップSB3の順番は入れ替わってもよい。
【0054】
ステップSB4では、画像処理部13dが、ステップSB2で選択された不良品画像を読み込み、当該不良画像の不良箇所を抽出する抽出処理を実行する。不良箇所の抽出は、ルールベースのアルゴリズムを利用して行ってもよいし、ユーザが手動で行ってもよい。画像処理部13dは、不良箇所の抽出処理において、不良品画像の特徴量を取得し、周囲の特徴量とは異なる特徴量を有する部位を不良箇所として抽出するアルゴリズムを実行する。
【0055】
以下、
図5に基づいて不良箇所の抽出処理の具体例を説明する。
図5のFIG.5Aに、ステップSB2で選択された不良品画像200を示している。不良品画像200は、不良箇所W1を有するワークWを撮像することによって取得されたものである。
図5のFIG.5Bは、不良品画像200に対してルールベースのアルゴリズムを利用して不良箇所W1を抽出した抽出画像201である。不良箇所W1のみを抽出するアルゴリズムの例としては、例えば色抽出アルゴリズム、GrabCutアルゴリズム等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、他のアルゴリズムも利用可能である。
【0056】
色抽出アルゴリズムの場合、ユーザが不良品画像200上で不良箇所W1に対応する色を指定すると、その色を持った領域を不良箇所W1として自動抽出する。また、GrabCutアルゴリズムの場合、ユーザが不良品画像200上で不良箇所W1及びと当該不良箇所W1の周囲とを囲むと、その領域が指定され、指定された領域内で当該不良箇所W1を自動抽出する。つまり、画像処理部13dは、抽出処理において、不良品画像200の中からユーザによる不良箇所W1の選択操作を受け付け、受け付けた選択操作に基づいて不良箇所W1を抽出する。
【0057】
その後、ステップSB5では、画像処理部13dが、ステップSB4抽出した不良箇所W1の範囲の修正を受け付ける。色抽出アルゴリズムで色抽出した領域が不良箇所W1よりも大幅に広い領域である場合や狭い領域である場合には、ユーザが色指定をし直したり、閾値変更等の修正を行う。この修正を画像処理部13dが受け付けると、不良箇所W1が抽出し直される。GrabCutアルゴリズムの場合、ストローク修正を行うか、クリック修正を行うことにより、前景背景をユーザが細かく指定していき、その都度、不良箇所W1が抽出し直される。
【0058】
また、ユーザが不良品画像200上で不良箇所W1を手動で抽出する場合、例えばマウス52によって不良箇所W1を囲む操作、不良箇所W1を塗りつぶす操作等を挙げることができる。例えば、フリーハンドツール等を使用して不良箇所W1を囲む枠を生成し、この枠によって不良箇所W1を抽出できる。この場合、画像処理部13dは、囲まれた領域または塗りつぶされた領域が不良箇所W1であるとして抽出する。
【0059】
また、AI Assisted指定によって不良箇所W1を抽出してもよい。AI Assisted指定の場合、不良箇所W1の輪郭を大まかに指定して抽出した後、その抽出箇所の内部をFillツール等で指定する。これにより、不良箇所W1を自動抽出することができる。不良箇所W1を自動抽出した後、微修正することも可能である。
【0060】
不良箇所W1が狙い通りに抽出されたことをユーザが確認して次に進む操作を行うと、ステップSB6に進む。ステップSB6では、画像処理部13dがステップSB4及びSB5で抽出された不良箇所W1に後述する画像変換処理を施すか否かを判定する。例えば、画像変換処理の適用/非適用を選択するためのユーザーインターフェース画面を画像処理部13dが生成し、生成されたユーザーインターフェース画面を表示制御部13cが表示装置4に表示させる。ユーザは、マウス52等の操作により、ユーザーインターフェース画面上で画像変換処理の適用/非適用を選択する。画像処理部13dは、「適用」が選択されたことを検出すると、ステップSB7に進む一方、「非適用」が選択されたことを検出すると、ステップSB8に進む。
【0061】
ステップSB7では、画像処理部13dが、ステップSB4及びSB5で抽出された不良箇所W1に画像変換処理を施す。画像変換処理としては、例えば不良箇所W1の縦横比(アスペクト比)を変更するアスペクト比変更処理、不良箇所W1を回転させる回転処理、不良箇所W1を横方向(X方向)や縦方向(Y方向)に移動させる移動処理、不良箇所W1のコントラストを変換するコントラスト変換処理、不良箇所W1の色の変更する色変更処理等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、他の画像変換処理を適用してもよい。また、不良箇所W1に対し、任意の複数の画像変換処理を任意の順番で施してもよい。ステップSB7を経ることで、画像変換を施した状態の不良箇所W1を参照画像に貼り付けることができる。
【0062】
どの画像変換処理を施すかについては、ユーザによる選択を可能にすることもできる。例えば、画像変換処理を選択するためのユーザーインターフェース画面を画像処理部13dが生成し、生成されたユーザーインターフェース画面を表示制御部13cが表示装置4に表示させる。ユーザは、マウス52等の操作により、ユーザーインターフェース画面上で所望の画像変換処理を選択すると、画像処理部13dはそのことを検出し、検出した画像変換処理を不良箇所W1に施す。また、どの画像変換処理を施すかについては、外観検査装置1が自動的に設定してもよい。尚、ステップSB6及びSB7を省略してもよい。
【0063】
ステップSB7の後、またはステップSB6でNOと判定された後にステップSB8に進む。ステップSB8では、抽出された不良箇所W1を貼り付けるための貼り付け対象領域を参照画像の中から特定する。例えば、
図6のFIG.6Aに示すような参照画像202が選択されたとする。この参照画像202は良品のワークWを含む良品画像である。
図6のFIG.6Bは、貼り付け対象領域203を特定した後の領域特定画像204である。貼り付け対象領域203は、FIG.6Aに示す参照画像202に含まれるワークW部分を抽出することによって特定されている。ワークW部分を抽出する手法は、従来から画像処理の技術分野で用いられている手法を適用可能である。FIG.6Bでは、貼り付け対象領域203をその他の領域と区別するために、2値化マスク画像とし、白部分が貼り付け対象領域203、黒部分がその他の領域としている。
【0064】
その後、ステップSB9に進み、不良箇所W1を貼り付け対象領域203に貼り付けるときに後述するルールを適用するか否かを判定する。例えば、ルールの適用/非適用を選択するためのユーザーインターフェース画面を画像処理部13dが生成し、生成されたユーザーインターフェース画面を表示制御部13cが表示装置4に表示させる。ユーザは、マウス52等の操作により、ユーザーインターフェース画面上でルールの適用/非適用を選択する。画像処理部13dは、「適用」が選択されたことを検出すると、ステップSB10に進む一方、「非適用」が選択されたことを検出すると、ステップSB11に進む。
【0065】
ステップSB10では、不良箇所W1を貼り付け対象領域203に貼り付けるときにルールを適用して貼り付ける貼り付け処理を実行する。ルールとは、例えば貼り付け対象領域203に不良箇所W1を貼り付けるといったルールを挙げることができ、例えば
図7のFIG.7Aに示すような不良品画像200が選択され、ドーナツ状のワークWが検査対象であったとする。この場合、不良箇所W1は、ワークWの周方向のどこかに存在することは既知である。従って、
図7のFIG.7B及び7Cに示すように、貼り付け対象領域203を特定した後の画像204上で、不良箇所W1をワークWの周方向に対応する方向移動させて貼り付ける。つまり、不良箇所W1の貼り付け位置について周方向の拘束(所定の拘束条件の例)を加える。
【0066】
また、例えば
図8のFIG.8Aに示すような不良品画像200が選択され、直線状のワークWが検査対象であったとする。この場合、不良箇所W1は、ワークWの長手方向のどこかに存在することは既知である。従って、
図8のFIG.8B及び8Cに示すように、貼り付け対象領域203を特定した後の画像204上で、不良箇所W1をワークWの長手方向に対応する方向移動させて貼り付ける。つまり、不良箇所W1の貼り付け位置について長手方向の拘束(所定の拘束条件の例)を加える。
【0067】
また、例えば
図9のFIG.9Aに示すような不良品画像200が選択され、複雑な形状の環状ワークWが検査対象であったとする。この場合、不良箇所W1は、ワークWのどこかであるが、
図7や
図8に示す場合のように単純に特定するのは難しい。よって、例えば、ワークWの外周部のエッジと内周部のエッジとを検出してワークWを特定し、検出したエッジの法線方向を求めて不良箇所W1を法線方向に移動させて貼り付ける。
【0068】
例えば
図10のFIG.10Aに示すように、不良箇所W1を貼り付け対象領域203であるワークWに対応する部分に対して無作為に貼り付けてもよい。不良箇所W1を無作為に貼り付けると、
図10のFIG.10Bに示すように、不良箇所W1の一部が貼り付け対象領域203であるワークWに対応する部分からはみ出ることが考えられるが、はみ出た部分は後述するトリミング処理でトリミングすればよい。
【0069】
上記ステップSB9でルールを適用しないと判定されて進んだステップSB11では、ユーザが不良箇所W1を貼り付け対象領域203に貼り付ける。例えば、ユーザがマウス52等を操作して不良箇所W1の貼り付け位置を選択した後、貼り付け確定操作を行うことで、ユーザが所望する位置に不良箇所W1を貼り付けることができる。ステップSB11において、不良箇所W1を貼り付け対象領域203に対して無作為に貼り付けてもよい。
【0070】
不良箇所の貼り付け処理後、ステップSB12では、不良箇所W1の貼り付け対象領域203からはみ出た部分(
図10のFIG.10Bに示す)をトリミングするトリミング処理を実行する。具体的には、画像処理部13dは、貼り付け対象領域203の大きさ、形状及び位置を示す情報を取得するとともに、貼り付けられた不良箇所W1の大きさ、形状及び位置を示す情報を取得する。取得した情報に基づいて、不良箇所W1の全体が貼り付け対象領域203の内方に位置するか否かを判定する。不良箇所W1の全体が貼り付け対象領域203の内方に位置する場合にはトリミング処理が不要と判定する。一方、不良箇所W1の一部が貼り付け対象領域203の外方に位置する場合には、その外方に位置する部分がはみ出た部分であるとし、当該部分をトリミングする。これにより、内部生成した不良品画像が実際のワークの不良状態を反映したものになるので、学習効率が向上する。
【0071】
ステップSB13では、ステップSB10及びSB11の貼り付け処理で貼り付けられた不良箇所W1と参照画像202との境界を目立たなくする処理を画像処理部13dが実行する。すなわち、不良箇所W1を抽出した画像と、参照画像202とは異なる画像なので、不良箇所W1を参照画像202に貼り付けただけでは、不良箇所W1と参照画像202との境界が目立ってしまう場合がある。また、不良箇所W1が抽出された位置と、不良箇所W1を貼り付ける位置とは異なっているので、このことによっても不良箇所W1と参照画像202との境界が目立ってしまう場合がある。境界が目立ってしまうと、学習用の画像としては好ましくない。よって、ステップSB13のぼかし処理を実行する。目立たなくする処理としては、例えばぼかし処理等がある。
【0072】
ぼかし処理としては、例えばGAN(敵対的生成ネットワーク)、Deep Image Harmonization、あるいはその他のルールベース処理等を挙げることができ、どのようなぼかし処理であってもよい。ぼかし処理は、いわゆるディープラーニングのHarmonize処理ともいう。ぼかし処理を実行することで、不良箇所W1の縁の部分が参照画像202にきれいになじむ。以上のようにして、画像処理部13dが新たな不良品画像を内部生成する。この内部生成処理が画像処理ステップである。内部生成された不良品画像は、例えば記憶装置19に記憶させておくことができる。
【0073】
ステップSB10~SB13は複数回実行される。このとき、不良箇所W1の貼り付け位置が画像ごとに異なるようにする。これにより、不良箇所W1の貼り付け位置が互いに異なる複数の不良品画像を内部生成できる。また、画像変換が異なる不良箇所W1を参照画像に貼り付けるようにしてもよい。これにより、異なる不良箇所W1を有する複数の不良品画像を内部生成できる。
【0074】
ステップSB14では、内部生成された不良品画像を表示制御部13cが取得し、表示装置4に表示させる。具体的には、表示制御部13cは、内部生成された不良品画像を表示するためのユーザーインターフェース画面を生成する。ユーザーインターフェース画面には、内部生成された不良品画像を1枚または複数枚一覧表示可能な表示領域が設けられている。これにより、ユーザは内部生成された不良品画像を見て確認することができる。その結果、学習に使用しない方がよいと判断される不良品画像については学習に使用しないように設定できる。この設定は、ユーザーインターフェース画面上で、不良品画像ごとに設定可能になっている。「学習に使用しない」という情報も記憶装置19に記憶される。
【0075】
ステップSB15では、画像処理部13dが生成した新たな不良品画像に、不良品のワークを撮影した不良品画像と区別するための識別情報を付与する。内部生成された不良品画像に識別用のフラグを付与し、その付与情報と共に不良品画像を記憶装置19に記憶しておく。
【0076】
以上のようにして
図3のフローチャートのステップSA4が完了する。ステップSA6では、内部生成された不良品画像を学習に使用しないことの設定(除外設定)と、学習に使用する場合の重み付けを行う。
【0077】
例えば、内部生成された不良品画像を学習に使用する/使用しないを選択するためのユーザーインターフェース画面を学習部13eが生成し、生成されたユーザーインターフェース画面を表示制御部13cが表示装置4に表示させる。ユーザは、マウス52等の操作により、ユーザーインターフェース画面上で使用する/使用しないを選択する。この選択情報は例えばメモリ13b等に記憶される。
【0078】
また、このユーザーインターフェース画面では、内部生成された不良品画像を学習に使用する場合の重み付けの設定が行えるようになっている。内部生成された不良品画像は、実際に撮像された不良品画像とは異なっているので、学習に適しているとは言い難い場合も考えられる。このような場合には、
図4に示すステップSB15で識別情報が付与された不良品画像による学習の重みを、不良品のワークを撮影した不良品画像による学習の重みに比べて軽くした方がよいことがある。重み付けは、ユーザが自由に設定することができ、内部生成された不良品画像による学習の重みと、不良品のワークを撮影した不良品画像による学習の重みとを同じにしてもよい。
【0079】
ステップSA7では、学習部13eが、記憶装置19に予め記憶された良品画像及び不良品画像と、画像処理部13dにより内部生成された不良品画像とを機械学習ネットワークに入力する。その後、ステップSA8に進んで、入力した画像を機械学習ネットワークに学習させて推論モデルを生成する。ステップSA7及びSA8は学習ステップである。
【0080】
このとき、ステップSA6で設定された情報に基づいて学習を行う。例えば、内部生成された不良品画像を学習に使用するという設定がなされている場合には、上述したように内部生成された不良品画像も機械学習ネットワークに学習させるが、内部生成された不良品画像を学習に使用しないという設定がなされている場合には、内部生成された不良品画像を学習対象から除外して機械学習ネットワークに学習させない。例えば、不良品のワークを撮影した不良品画像が多く蓄積された段階で、内部生成された不良品画像を学習対象から除外できる。
【0081】
また、ステップSA6で設定された重み付けも機械学習ネットワークの学習に反映されるようになっており、内部生成された不良品画像による学習の重みを、不良品のワークを撮影した不良品画像による学習の重みに比べて軽くすることができる。
【0082】
また、ステップSA3でNOと判定されて不良品画像を内部生成していない場合にはステップSA5に進む。ステップSA5では、記憶装置19に予め記憶された良品画像及び不良品画像を機械学習ネットワークに入力する。その後、ステップSA8に進んで、入力した画像を機械学習ネットワークに学習させて推論モデルを生成する。
【0083】
ステップSA9は、学習が完了した推論モデルを構築するパラメータを記憶装置19に記憶する。
【0084】
上記機械学習ネットワークの学習の手法は特に限定されないが、例えば次の方法を利用することができる。すなわち、Loss関数を最小化することで機械学習ネットワークの学習を行うことができる。Lossの定義は様々であるが、Mean Square Error(MSE)を例して挙げることができる。
【0085】
【0086】
ここで、Tは目標異常度マップ、0は出力画像(異常度マップ)、nは画像Tが0の画素数、x、yは画素位置である。尚、Binary Cross EntropyなどのLoss関数も使用可能である。以上はあくまでも例示である。
【0087】
(外観検査装置1の運用時)
次に、外観検査装置1の運用時について、
図11に示すフローチャートに基づいて説明する。スタート後のステップSC1では、プロセッサ13aが、記憶装置19に記憶されているパラメータ等を読み込んで学習済みの機械学習ネットワークを用意する。これが学習部13eにより生成された推論モデルである。ステップSC2では、検査対象のワークを撮像ユニット3で撮像してワーク画像を取得する。その後、ステップSC3に進み、ステップSC2で取得したワーク画像を推論モデルに入力する。
【0088】
次いで、ステップSC4では、推論モデルがステップSC3で入力されたワーク画像の推論処理を実行する。その後、ステップSC5では、推論モデルが推論処理の結果としてマップ画像を出力する。
【0089】
しかる後、ステップSC6では、ステップSC5で出力されたマップ画像に基づいてワークの良否判定を行う。ステップSC2~SC6は、ワークが変わる都度、実行することができる。このフローチャートに示す処理は、検査部13fが実行する検査ステップに相当する。
【0090】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、不良品のワークを撮影して取得された不良品画像から不良箇所を抽出することができる。抽出された不良箇所は参照画像に貼り付けられるので、不良箇所を有する不良品画像が新たに生成される。不良箇所の貼り付け位置を変えた複数の不良品画像や、不良箇所に対する画像変換を変えた複数の不良品画像を自動でかつ短時間で内部生成できる。新たに生成された不良品画像では、貼り付けられた不良箇所と参照画像との境界が目立たないようにぼかし処理を実行しているので、自然な不良品画像となる。
【0091】
新たな不良品画像と、記憶装置19に予め記憶された良品画像及び不良品画像とを機械学習ネットワークに学習させることで、不良品の検出能力の高い推論モデルが生成される。よって、外観検査性能を高めることができる。
はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明は、ワークの外観を検査する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 外観検査装置
4 表示装置(表示部)
13a プロセッサ
13b メモリ
13c 表示制御部
13d 画像処理部
13e 学習部
13f 検査部