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特開2023-7709難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法
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  • 特開-難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007709
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/12 20060101AFI20230112BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20230112BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20230112BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20230112BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20230112BHJP
   B29C 48/55 20190101ALI20230112BHJP
   B29C 48/57 20190101ALI20230112BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230112BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20230112BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20230112BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20230112BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B29B9/12
B29B9/06
B29B7/48
B29C48/345
B29C48/40
B29C48/55
B29C48/57
C08J3/20 Z CFD
C08L69/00
C08L27/18
C08L55/02
C08K5/521
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110725
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
(72)【発明者】
【氏名】吉野 崇史
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA50
4F070AB08
4F070AB11
4F070AB22
4F070AC55
4F070AC79
4F070AE07
4F070AE30
4F070FA01
4F070FC06
4F201AA13
4F201AA16
4F201AA28
4F201AA50
4F201AB05
4F201AR15
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC12
4F201BC37
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK42
4F201BL08
4F201BL43
4F207AA13
4F207AA16
4F207AA28
4F207AA50
4F207AB05
4F207AR15
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK13
4F207KL04
4F207KL05
4F207KL17
4F207KL26
4F207KL64
4J002BD153
4J002BD15Y
4J002BN152
4J002BN15X
4J002CG011
4J002CG01W
4J002EW046
4J002GG01
4J002GN00
4J002GP01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】均一で優れた難燃性と、熱滞留しても衝撃強度が低下し難い、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~85質量%、リン系難燃剤(B)5質量%以上25質量%未満、ポリテトラフルオロエチレン(C)0.1から1.0質量%、他からなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを二軸押出機で製造する方法であって、前記(A)、(B)、(C)を二軸押出機で混練する際、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが6.0D~13.5D(Dはシリンダー径)の構成よりなる混練部で混練する、難燃性ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mw/Mnが2.7以上3.4以下のポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~85質量%、リン系難燃剤(B)5質量%以上25質量%未満、ポリテトラフルオロエチレン(C)0.1から1.0質量%、ポリカーボネート樹脂フレーク(D)0~50質量%、ABS樹脂(E)0~30質量%、及び(B)、(C)以外の他の添加剤(F)0~15質量%[ただし、(A)~(F)の合計は100質量%]からなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを二軸押出機で製造する方法であって、
前記(A)、(B)、(C)を二軸押出機で混練する際、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが6.0D~13.5D(Dはシリンダー径)の構成よりなる混練部で混練し、押出機からストランド状で押出し、カッティングする難燃性ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
樹脂ペレット(A)の平均重量が13mg以上35mg以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
樹脂ペレット(A)がリサイクルペレットである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
リン系難燃剤(B)が縮合リン酸エステル化合物である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
リン系難燃剤(B)が室温で液状の縮合リン酸エステル化合物である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、および機械的物性に優れた樹脂であることから、例えば電気機器、電子機器、自動車等の車両、プリンターや複写機等のOA機器、住宅、建築、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。
これらの製品は、高温による火災防止を目的とした安全上の観点から難燃性が要求され、特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、プリンターや複写機等のOA機器、パソコン、各種携帯端末、バッテリー等の筐体等として好適に使用されている。
【0003】
一方、近年、環境保護意識の高まりから樹脂を再生利用することが社会的に強く要請されており、また、各種法制度により規制も強化されつつある。そして、例えばOA機器や電子機器等の外装、筐体等には特にリサイクル樹脂の使用要求があり、リサイクル樹脂を所定量配合したポリカーボネート樹脂組成物が要求されるケースが多くなってきている。
【0004】
使用済製品から熱可塑性プラスチックを再生するには、例えば特許文献1にあるように、機器部品から回収された熱可塑性プラスチック部材を粉砕し、洗浄液で洗浄し、粉砕混合物から熱可塑性プラスチック粉砕物を分離することが行われる。
【0005】
ポリカーボネート樹脂のリサイクル材(再生材)の原料としては、例えばCDやDVD等の光学ディスク、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが挙げられ、これらを粉砕、洗浄、分離回収したものをペレット化されたペレットが利用されている。また、成形時のスプルーやランナー等の副生物もリペレットされて用いられる。
【0006】
このような再生材を特にOA機器等に採用するためには高い難燃性が必要である。
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する手段としては、従来、有機臭素化合物等のハロゲン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合する手法が広く知られているが、近年はハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することが提案され、現在ではリン系難燃剤が主体になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-198116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リン系難燃剤、特にリン酸エステル系難燃剤等は、溶融温度が低く、ポリカーボネート樹脂ペレット、或いはポリカーボネート樹脂を含む樹脂ペレットと溶融混練する場合、リン系難燃剤とペレットが混ざりにくく、ポリカーボネート樹脂ペレットや、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂ペレットの未溶融物が発生し易い。これは溶融したリン系難燃剤が潤滑剤の役割を果たし、押出機からペレットにかかる剪断等の力を弱くするからである。これにより、ベント開口部にベントアップが発生したり、吐出量が上がらなかったり、ストランドの引き取りが出来なかったりしやすく、また、得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットの難燃性が不十分となりやすく、成形時の熱滞留により衝撃強度が低下し易い。
本発明の目的(課題)は、上記問題点を解決する難燃性ポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、分子量分布が特定の範囲にあるポリカーボネート樹脂を含む樹脂ペレットに、リン系難燃剤及びポリテトラフルオロエチレンを添加して二軸押出機で製造する際、これらを特定の混練部で混練し、未溶融物の発生やベントアップが起こらず、高い吐出量で安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と、熱滞留しても衝撃強度が低下し難い、優れたポリカーボネート樹脂組成物ペレットが製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法に関する。
【0010】
1.Mw/Mnが2.7以上3.4以下のポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~85質量%、リン系難燃剤(B)5質量%以上25質量%未満、ポリテトラフルオロエチレン(C)0.1から1.0質量%、ポリカーボネート樹脂フレーク(D)0~50質量%、ABS樹脂(E)0~30質量%、及び(B)、(C)以外の他の添加剤(F)0~15質量%[ただし、(A)~(F)の合計は100質量%]からなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを二軸押出機で製造する方法であって、
前記(A)、(B)、(C)を二軸押出機で混練する際、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが6.0D~13.5D(Dはシリンダー径)の構成よりなる混練部で混練し、押出機からストランド状で押出し、カッティングする難燃性ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。2.樹脂ペレット(A)の平均重量が13mg以上35mg以下である上記1に記載の製造方法。
3.樹脂ペレット(A)がリサイクルペレットである上記1または2に記載の製造方法。4.リン系難燃剤(B)が縮合リン酸エステル化合物である上記1~3のいずれかに記載の製造方法。
5.リン系難燃剤(B)が室温で液状の縮合リン酸エステル化合物である上記1~4のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、Mw/Mnが2.7~3.4と分子量分布の広いポリカーボネート樹脂を、特定の構成からなり長さが6.0D~13.5D(Dはシリンダー径)のスクリューにより混練することにより、高い吐出量で安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と、熱滞留しても衝撃強度が低下し難いポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができる。
Mw/Mnが2.7~3.4と分子量分布の広いポリカーボネート樹脂は、低剪断速度領域の粘度が上昇し易い。これは高い分子量成分のポリカーボネートポリマー鎖の絡み合いが解けにくく、応力緩和が進まないためと考えられ、このため、燃焼時に垂れ落ちが抑制され、難燃性が向上するものと考察している。
また、分子量分布が上記の広いポリカーボネート樹脂を作る場合は、ポリカーボネート樹脂に熱履歴を加えたり、高分子量ポリカーボネートと低分子量ポリカーボネートを溶融混練する必要があるが、高分子量ポリカーボネートと低分子量ポリカーボネートを溶融混練する場合、両者の粘度差は大きく、均一に溶融混練するために強い混練が必要であり、また、混練時の温度も上昇し易い。これにより高分子量ポリカーボネートがダメージを受けやすくなる。これにより滞留成形衝撃強度が低下し易いと考えられるが、本発明の方法によれば滞留成形衝撃強度を高いレベル達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例又は比較例で使用した押出機のスクリュー構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態および例示物を示して詳細に説明するが、本発明は当該実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
【0014】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法で用いる原料は、(A)~(F)の合計100質量%基準で、Mw/Mnが2.7以上3.4以下のポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~85質量%、リン系難燃剤(B)5質量%以上25質量%未満、ポリテトラフルオロエチレン(C)0.1から1.0質量%、ポリカーボネート樹脂フレーク(D)0~50質量%、ABS樹脂(E)0~30質量%、及び(B)、(C)以外の他の添加剤(F)0~15質量%である。
【0015】
[樹脂ペレット(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法は、Mw/Mnが2.7~3.4のポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)を使用する。
樹脂ペレット(A)としては、Mw/Mnが2.7~3.4の範囲にあるポリカーボネート樹脂が、樹脂ペレット(A)として、40質量%超含まれていればよく、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂等を含んでいる混合物やアロイも好ましく使用できる。Mw/Mnが2.7~3.4のポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)は、上記分子量分布のポリカーボネート樹脂と、例えばそれと非相溶の樹脂や添加剤からなる樹脂ペレットであり、ポリカーボネート樹脂と、具体的に好ましくはABS樹脂や、AS樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂や、ポリカーボネート樹脂と非相溶のエラストマー、フィラー等からなる樹脂ペレットで、Mw/Mnが2.7~3.4のポリカーボネート樹脂が40質量%超含むものである。当然ながらポリカーボネート樹脂そのもの(つまり100質量%)であっても構わない。樹脂ペレット(A)中、Mw/Mnが2.7~3.4のポリカーボネート樹脂ペレットは、50質量%超であることが好ましい。
【0016】
ポリカーボネート樹脂ペレットのMw/Mnの測定は、GPCによりポリスチレン換算で求められる。その測定方法の詳細は、実施例に詳記する通りである。
【0017】
ポリカーボネート樹脂ペレットのMw/Mnは、好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上であり、好ましくは3.4以下、より好ましくは3.3以下である。
【0018】
なお、ここでいうペレットとは一旦溶融し、均一に粒状に成形したものである。ペレットの好ましい平均重量は10mg~40mgの範囲であり、好ましくは13mg~35mg、より好ましくは15mg~30mgである。平均重量が小さいと押出機の中で溶融が早まり、樹脂温度が高くなりやすく、ポリカーボネート樹脂やポリテトラフルオロエチレンがダメージを受けて、難燃性が低下したり、滞留衝撃強度が低下し易くなる。また重量が大きいと、溶融が不十分となり、ベントアップやストランドの破断が発生し易い。
【0019】
樹脂ペレット(A)は、未使用のいわゆるバージンのペレットであってもよいし、リサイクル材(再生材)ペレット、あるいはリサイクル材ペレットを含むものであってもよい。リサイクル材ペレットの原料としては、例えば、CDやDVD等の光学ディスク、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、成形時の不適合品、スプルーまたはランナーなどから得られた粉砕品、これらを粉砕、洗浄、分離回収したものをリペレットしたものであってもよい。以下、これらリサイクル材、再生材、リペレット等を併せて、リサイクル材あるいはリサイクルペレットともいう。
【0020】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法は、特にリサイクル材のペレットを使用することが好ましい。リサイクル材のペレットの使用はLCA(ライフサイクルアセスメント)が低くなるので好ましい。
リサイクル材には、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂、各種の添加剤を含んでいることが多いが、ポリカーボネート樹脂が、樹脂ペレット(A)として、40質量%超となっていればいずれも使用できる。ポリカーボネート樹脂のリサイクル材のペレットは、リサイクル材の製造者から購入して使用することも可能である。
【0021】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族-脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0022】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0023】
ポリカーボネート樹脂の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールA又はビスフェノールAと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC又はビスフェノールCと他の芳香族ジヒドロキシ化合物(特にビスフェノールA)とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0024】
ポリカーボネート樹脂は、1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0025】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、制限はないが、粘度平均分子量(Mv)は、通常は10,000~100,000程度であり、好ましくは12,000~35,000程度である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることによりポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて薄肉成形も容易に行うこともできる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0026】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値である。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0027】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
使用済みの製品としては、光学ディスク(CD、DVD)などの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、再生ポリカーボネート樹脂としては、成形時の不適合品、スプルー、またはランナーなどから得られた粉砕品、またはそれらを溶融して得たペレット化したもの等も使用可能である。
【0028】
[リン系難燃剤(B)]
本発明におけるリン系難燃剤(B)としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、熱安定性の面から、例えば、下記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物や一般式(2)および(3)で表されるホスファゼン化合物が好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
<縮合リン酸エステル化合物>
上記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。kは、通常0~5の整数であり、異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは0.5~2、より好ましくは0.6~1.5、さらに好ましくは0.8~1.2、特に好ましくは0.95~1.15の範囲である。
【0033】
また、Xは、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、レゾルシノール、ビスフェノールA、3,3’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
【0034】
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、中でも1であることが好ましい。
また、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基、p-クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
【0035】
一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート(EHDP)、tert-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(tert-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(tert-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル類;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート(RDP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート(RDX)、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BDP)、ビフェニルビス-ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類;等が挙げられる。
【0036】
一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.1mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能である。一方、ハーフエステルの含有量は1.1質量部以下がより好ましく、0.9質量部以下がさらに好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合やハーフエステル含有量が1.5mgを超える場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性や耐加水分解性の低下を招く。
【0037】
リン酸エステル化合物としては、上述のものの他に、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,3-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、リン酸エステル部位を含有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはエポキシ樹脂も当然含まれる。
【0038】
<ホスファゼン化合物>
一般式(2)及び(3)で表されるホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、(ポリ)トリルオキシホスファゼン(例えば、o-トリルオキシホスファゼン、m-トリルオキシホスファゼン、p-トリルオキシホスファゼン、o,m-トリルオキシホスファゼン、o,p-トリルオキシホスファゼン、m,p-トリルオキシホスファゼン、o,m,p-トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)キシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C1-6アルキルC6-20アリールオキシホスファゼンや、(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン(例えば、フェノキシo-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm-トリルオキシホスファゼン、フェノキシp-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p-トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C6-20アリールC1-10アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン等が例示できる。
これらのうち、好ましくは、環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C1-3アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン、C6-20アリールオキシC1-3アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又は鎖状トリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等)である。
【0039】
一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、中でもR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
【0040】
このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120~130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。
【0041】
また、式(2)中、tは3~25の整数を表すが、中でもtが3~8の整数である化合物が好ましく、tの異なる化合物の混合物であってもよい。中でも、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10~40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
【0042】
式(3)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、R及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
【0043】
このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220~250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3~10,000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。
また、Rは、-N=P(OR基、-N=P(OR基、-N=P(O)OR基、-N=P(O)OR基から選ばれる少なくとも1種を示し、R10は、-P(OR基、-P(OR基、-P(O)(OR基、-P(O)(OR基から選ばれる少なくとも1種を示す。
また、式(3)中、uは3~10,000の整数を示し、好ましくは3~1,000、より好ましくは3~100、さらに好ましくは3~25である。
【0044】
また、ホスファゼン化合物は、その一部が架橋された架橋ホスファゼン化合物であってもよい。このような架橋構造を有することで耐熱性が向上する傾向にある。
このような架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(4)で表わされる架橋基、例えば、4,4’-スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2-(4,4’-ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’-ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
【0045】
これらの中でより好ましいものは縮合リン酸エステル化合物であり、難燃性が高く滞留衝撃強度が高い。縮合リン酸エステル化合物には室温で個体状のものと液体状のものがあるが、室温で液状の縮合リン酸エステル化合物の方がさらに好ましい。これを液添ポンプ等の液体添加装置を用いて供給することで、室温で液状の縮合リン酸エステル化合物を均一に添加可能で、均一な添加量のペレットが得られ、粉原料混合起因による分級の懸念もなく、安定した難燃性を発現することができる。
【0046】
リン系難燃剤(B)の含有量は、(A)~(F)の合計100質量%基準で、5質量%以上25質量%未満であり、好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、好ましくは22質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0047】
[ポリテトラフルオロエチレン(C)]
ポリテトラフルオロエチレン(C)は、フィブリル形成能を有するものが好ましく、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上させる傾向にある。ポリテトラフルオロエチレンは懸濁重合法、乳化重合法で作られたものがあり、乳化重合品はファインパウダーと呼ばれる粉体状のものや懸濁液(ディスパージョン)として存在するものがある。
【0048】
ポリテトラフルオロエチレン(C)として、有機重合体で被覆されたポリテトラフルオロエチレンも好適に使用することができる。有機重合体被覆ポリテトラフルオロエチレンを用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。
ポリテトラフルオロエチレンを被覆する有機系重合体を生成するための単量体としては、ポリカーボネート樹脂に配合する際の分散性の観点から、ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましく、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体がより好ましい。
【0049】
ポリテトラフルオロエチレン(C)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリテトラフルオロエチレン(C)の含有量は、(A)~(F)の合計100質量%基準で、0.1~1.0質量%である。
【0050】
[ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造]
本発明の製造方法は、上記した樹脂ペレット(A)、リン系難燃剤(B)及びポリテトラフルオロエチレン(C)、並びにその他成分を二軸押出機に入れ、混練部で混練し、押出機からストランド状で押出し、カッティングして難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得る。
【0051】
本発明の製造方法では二軸押出機が使用される。二軸押出機は各種のものを使用することが出来、スクリューの回転方式は、同方向回転式でも、逆方向回転式でもよいが、同方向噛み合い型二軸押出機が好ましい。また、二軸押出機には、減圧或いは大気に開放されたベント口を設けることが好ましい。
【0052】
図1は、本発明の実施例あるいは比較例で使用した押出機のスクリュー構成を示す横断面図であり、図1中、Sc2とSc3が本発明の方法を満たすスクリュー構成であり、Sc1とSc4は本発明で規定する構成を満たさない、比較例で使用したスクリュー構成である。
以下、図1のスクリュー構成Sc2も参照しながら、本発明の方法を説明する。
【0053】
原料の樹脂ペレット(A)、リン系難燃剤(B)及びポリテトラフルオロエチレン(C)、並びに、その他成分(D)~(F)は、二軸押出機の根元にあるシリンダー位置C1にある供給口から押出機に供給され、樹脂ペレット(A)等は、押出機バレルの加熱およびスクリューの回転により、図中、右端の吐出口の方に、溶融混練されながら運ばれ、吐出口から吐出されたストランドは造粒機にてカッティングしてペレット化される。
【0054】
供給口から供給された樹脂ペレット(A)等は、搬送、予熱される。搬送用のスクリューとしては、通常のフライト状スクリューエレメント(図中、斜めハッチングが付されたエレメント)から構成されることが好ましい。
リン系難燃剤(B)が液状である場合には、例えば、図中、C2に設けた液体添加装置1(液体供給ポンプ等)から添加される。
【0055】
次いで、混練部にて樹脂ペレット(A)等は溶融されるが、混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが6.0D~13.5D(Dはスクリュー径)の構成からなる。
【0056】
混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上が連続していてもよいし、複数に分割されていてもよい。Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上の合計の長さが6.0D~13.5Dであればよく、混練作用を有しない通常の送り用フライトは、混練部の長さに含めない。例えば、複数のニーディングディスクの間に通常の送り用のフライト状エレメントを入れてもよく、このような送り用フライト状エレメントは6.0D~13.5Dの長さには含めない。
【0057】
Rニーディングディスク(以下Rと称することもある)は、順送りニーディングディスクともよばれ、通常羽根が2枚以上でその羽根のねじれ角度Θは10度から75度である。このように羽根を所定角度ずらして設置することにより、樹脂を送ることができ、かつ強い剪断力を加えることができる。
Nニーディングディスク(以下Nと称することもある)は、直交ニーディングディスクともよばれ、通常羽根が2枚以上で、かつ羽根のねじれ角度Θが75度から105度である。羽根が略90度ずらして設置されているために樹脂を送る力は殆どないが混練力は強い。
Lニーディングディスク(以下Lと称することもある)は、逆送りニーディングディスクともよばれ、通常羽根が2枚以上でその羽根のねじれ角度Θは-10度から-75度である。Lニーディングディスクは送られてくる樹脂を堰き止めたり、送られた樹脂を送り戻す方向に働く昇圧能力のあるエレメントである。混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰き止め、強力な混練効果を発揮させるものである。
Lスクリューは、逆送りスクリューともよばれ、通常の送りスクリューに対して、反対の方向に螺旋しているスクリューであり、樹脂を堰き止めたり、送られた樹脂を戻す方向に昇圧能力のあるエレメントである。Lニーディングディスクと同じく、混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰き止め、強力な混練効果を発揮させるものである。
【0058】
上記の羽根は通常楕円状であり、楕円状の2つの頂点に平坦部が施されている。この羽根のことをディスクとも称し、各ニーディングディスクは通常、ディスク3~7枚により構成されている。このディスクは略三角状で3つの頂点をもつ場合もあり三条ニーディングディスクともいう。同じく、R、N、Lのタイプがある。こちらも同様に使用することができる。ニーディングディスクの中には頂点をスクリュー軸方向にツイストしたツイストニーディングディスク等もあり、同様な混練効果が得られる。
【0059】
シールリングは、スクリューに嵌合されるリング状のものであって、流路の70~90%程度を閉塞し樹脂の流れを滞留させ、これにより樹脂圧力を高めることができる。Lニーディングと同じく、混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰き止め、強力な混練効果を発揮できる。
ミキシングスクリューは、スクリューフライトの山の部分を削ってできたものであり、一条または二条の送り、あるいは逆送りスクリューであって、強い剪断分散力を有するエレメントである。順送り切欠き型ミキシングスクリュー、逆送り切欠き型ミキシングスクリューがある。
ロータスクリューは、楕円形状(2翼構造)もしくは三角形状のロータ翼を形成しているもので、ロータとバレル内壁面間の隙間(チップクリアランス)により強力なせん断力を発現できる。
【0060】
混練部は上記したもののうちの2種以上を組み合わせるが、好ましくは、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスクを組み合わせたものが好ましく、例えば、複数のRのあとに複数のNを配置してLの構成、例えば特にRRNNNNNNL、RRRNNNNNNNNL等が好ましい。
【0061】
また、混練部のディスク構成は長さが6.0D~13.5Dの構成からなるが、好ましくは7.0D以上、より好ましくは8.0D以上であり、好ましくは13.0D以下、より好ましくは12.0D以下が好ましい。
混練部をこのようなスクリュー構成とすることにより、安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と優れた滞留衝撃強度を示すポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【0062】
混練部の後、好ましくは混練部の下流部でベントを減圧にして脱揮し、押出部により、ポリカーボネート樹脂組成物は押出機先端の吐出部にある押出ダイからストランド状に押し出される。
【0063】
なお、樹脂ペレット(A)、リン系難燃剤(B)、ポリテトラフルオロエチレン(C)の添加方法は複数あり、既に記載したように、(A)(B)(C)を一括で根本にフィードする方法の他、(B)を押出機の下流に液添することも可能である。また、(A)(B)(C)をサイドフィード等により、別々にフィードすることも可能である。重要なのは(A)(B)(C)が上記6.0~13.5Dの長さの混練部により混練されることである。従って、例えば、(A)(C)を押出機の根本にフィードし、弱い混練部で予備混練し、(B)をフィードし、上記長さの混練部で混練することも可能である。この際の予備混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが0~1.5D(Dはシリンダー径)であることが好ましい。1.5Dより長いと、混練が強くなりすぎポリテトラフルオロエチレン(C)にダメージが発生し難燃性が低下しやすい。さらに樹脂ペレット(A)が過混練になり滞留衝撃強度が低下しやすい。
【0064】
二軸押出機のスクリューの回転数は500~900rpm程度であることが好ましい。
本発明の方法では、吐出量は、好ましくは350kg/hr以上、より好ましくは380kg/hr以上、さらに好ましくは400kg/hr以上、中でも450kg/hr以上、特に好ましくは500kg/hr以上を達成することが可能となる。
【0065】
押出機における好ましい吐出量は、単位秒あたりの押出重量Q(g/秒)をシリンダー径D(cm)の3乗で割った値が、0.5g/cm・秒から2g/cm・秒の範囲である。より好ましくは0.7~1.7g/cm・秒の範囲であり、さらに好ましくは0.9~1.4g/cm・秒の範囲である。少ないと、ポリカーボネート樹脂やポリテトラフルオロエチレンがダメージを受けやすく、難燃性や滞留衝撃強度が低下しやすい。多いとポリカーボネートの溶融が不足しやすく、ベントアップやストランド切れが発生しやすい。TEX44αIIのシリンダー径Dは4.7cmなので、この場合0.5g/cm・秒は51.9g/秒、吐出量187kg/hに相当し、2g/cm・秒は748kg/hに相当する。また、0.7g/cm・秒は262kg/hに、1.7g/cm・秒は635kg/hに相当する。
【0066】
そして、押し出されたポリカーボネート樹脂組成物のストランド状の溶融物は、水中冷却等で冷却して、カッティングされペレットとなる。
押出ダイの形状は特に制限はなく、公知のものが使用される。吐出ノズルのダイの直径は、押出し圧、所望するペレットの寸法にもよるが、通常2~5mm程度である。押し出された直後のポリカーボネート樹脂の温度は、好ましくは260~300℃、より好ましくは270~290℃程度である。
【0067】
本発明の方法において、樹脂ペレット(A)、リン系難燃剤(B)、ポリテトラフルオロエチレン(C)以外に、ポリカーボネート樹脂フレーク(D)、ABS樹脂(E)、及び(B)、(C)以外の他の添加剤(F)を配合することも好ましい。各成分の配合量は、(A)~(F)の合計は100質量%基準で、ポリカーボネート樹脂フレーク(D)0~50質量%、ABS樹脂(E)0~30質量%、及び.(B)、(C)以外の他の添加剤(F)0~15質量%である。
このような(D)~(F)成分は、特にサイドフィードすることが好ましい場合を除き、樹脂ペレット(A)と一緒にまたは別フィードにて、二軸押出機の根元の供給口から供給される。
【0068】
ポリカーボネート樹脂フレーク(D)は、平均粒径は2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。フレーク状のポリカーボネート樹脂を供給することにより、未溶融物の発生や添加剤の凝集等を抑制し、均質なポリカーボネート樹脂組成物ペレットが得られやすくなる。
ポリカーボネート樹脂フレーク(D)を使用する場合の配合量は、5~45質量%であることが好ましい。
【0069】
ABS樹脂(E)は、芳香族ビニル単量体成分、シアン化ビニル単量体成分、ジエン系ゴム質重合体成分からなることが好ましく、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体が好ましい。ABS樹脂(E)はペレット状のものを、樹脂ペレット(A)と共に二軸押出機の根元の供給口1から供給することが好ましい。ABS樹脂(E)を使用する場合の配合量は、5~25質量%であることが好ましい。
【0070】
リン系難燃剤(B)、ポリテトラフルオロエチレン(C)以外の他の添加剤(F)としては、各種エラストマー(耐衝撃性改良剤)、離型剤、安定剤、フィラー(充填材)、強化剤、他の樹脂成分、リン系難燃剤(B)以外の他の難燃剤、着色材(染顔料)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が好ましく挙げられる。(B)、(C)以外の他の添加剤(F)を使用する場合の配合量は、15質量%以下であり、好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、中でも11質量%以下、とりわけ10質量%以下であることが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法で得られた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットは、樹脂ペレット(A)由来の樹脂30~85質量%、好ましくは30~80質量%、リン系難燃剤(B)5質量%以上25質量%未満、ポリテトラフルオロエチレン(C)0.1~1.0質量%、ポリカーボネート樹脂フレーク(D)由来のポリカーボネート樹脂0~50質量%、ABS樹脂(E)0~30質量%、及び(B)、(C)以外の他の添加剤(E)0~15質量%[ただし、(A)~(E)の合計は100質量%]からなる。
【0072】
得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットから成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネート樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、多色射出成形法、ガスアシスト射出成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱冷却金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などを採用することができる。
【0073】
得られた成形品は、プリンターや複写機等のOA機器、電気機器、電子機器、自動車等の車両、プリンターや複写機等のOA機器、住宅、建築、その他の部品として好適に使用でき、特に、プリンターや複写機等のOA機器、コンピューター、パソコン、各種携帯端末、バッテリー等の筐体等として好適に使用できる。
【実施例0074】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0075】
<混練部の構成例:Sc1~Sc4>
実施例および比較例に使用した押出機のスクリュー構成は、図1に記載したSc1~Sc4であり、混練部は以下の構成からなる。なお、Sc1~Sc4の各ニーディングディスクは5枚で、ディスク長さは1Dである。
Sc1: RRNNNL 長さ 5.62D
Sc2: RRNNNNNNL 長さ 8.43D
Sc3: RRRNNNNNNNNL 長さ 11.23D
Sc4: RRRRNNNNNNNNNNL 長さ 14.04D
【0076】
実施例および比較例に使用した原料は、以下の表1の通りである。
【表1】
【0077】
<ポリカーボネート樹脂ペレットの製造(分子量分布の調整)>
PC-2:
上記7022Rを47.5質量%、7025Rを47.5質量%、AL071は5質量%を押出機(日本製鋼所社製「TEX44αII」)のC1にフィードし、スクリュー構成Sc3を用いて、吐出量400kg/h,スクリュー回転600rpm、シリンダー設定温度280℃で均一でコンパウンドし、ストランドを押出し、冷却し、ペレタイザーでカットし、ペレット(以下、「PC-2」)を得た。この時のストランドの温度は345℃であった。ペレットの平均重量は20mgであった。
【0078】
PC-2S:
上記PC-2と同じ方法でストランドを押出し、ペレタイザーの回転速度を上げて、平均重量11mgのペレット「PC-2S」を得た。
PC-2L:
上記PC-2と同じ方法でストランドを押出し、ペレタイザーの回転速度を下げ、平均重量37mgのペレット「PC-2L」を得た。
【0079】
PC-3:
7025Rを90質量%、AL071は10質量%を、上記PC-2と同様の方法でコンパウンドし、ペレット「PC-3」を得た。ストランドの温度は352℃であった。ペレットの平均重量は19mgであった。
【0080】
PC-5:
M7027BFを80質量%、AL071は20質量%を、上記PC-2と同様な方法でコンパウンドし、ペレット「PC-5」を得た。ストランドの温度は361℃であった。ペレットの平均重量は20mgであった。
【0081】
PC-1:
7022Rペレットを「PC-1」とした。ペレット重量は19mgであった。
PC-4:
リサイクルポリカーボネート樹脂2010ANCペレットを「PC-4」とした。ペレットの平均重量は20mgであった。
【0082】
<単位時間あたりの流出量:Q値(単位:×10-2cm/sec)の測定>
上記ペレットPC-1~4を、80℃で5時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、島津製作所社製「フローテスターCFT-500D」を用いて、280℃、160kg/cmの荷重を加え、ノズル直径1mm,ノズル長さ10mmのノズルから樹脂を押し出し、1秒間に流れる樹脂の体積(単位:×10-2cm/sec)を測定し、流動性の指標とした。
【0083】
<分子量分布(Mw/Mn)の測定>
上記ペレットPC-1~4のMw及びMnをポリスチレン換算で求め、以下の装置と測定条件で測定し、Mw/Mnを算出した。
装置:HLC-8320GPC/EcoSEC(TOSOH)
カラム:Shodex KF-805L 3本(8.0mmI.D.、300mm)
検出器:UV-8320
検出波長:254nm
カラム温度:40℃
流量:1.2mL/min 注入量:200μL
溶離液:テトラヒドロフラン 検量線用:標準ポリスチレン(8点使用)
試料溶液濃度:0.3%
【0084】
上記ポリカーボネート樹脂ペレットのMw/Mn、Q値(単位:×10-2cm/sec)、ペレット重量(mg)を以下の表2に纏めて記す。
【0085】
【表2】
【0086】
<実施例A1>
ポリカーボネート樹脂ペレット(PC-2)を200kg/h(50質量%)、ポリカーボネート樹脂フレーク(D1)を126.4kg/h(31.6質量%)、耐衝撃改良剤(F1)を24kg/h(6質量%)、ポリテトラフルオロエチレン(C1)を1.6kg/h(0.4質量%)を、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44αII」、シリンダー径D:47mm)にC1から供給し、C2からリン系難燃剤(B1)を液体供給ポンプから48kg/h(12質量%)で添加し、スクリュー構成Sc2で混練し、その後、ベントで減圧に引き、吐出口から押し出してストランド化し、水槽で冷却後にペレタイザーによりポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。スクリュー回転数は600rpmとし、シリンダー設定温度は260℃とした。
【0087】
得られたペレットについて、UL94試験を行い、以下により合計有炎燃焼時間を求めた。また、以下の滞留成形を行い、滞留成形衝撃強度を測定した。
【0088】
<難燃性評価 UL94試験>
上述の方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製SE100DU型射出成形機を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ0.8mmのUL試験用試験片を成形した。
難燃性の評価は、上記で得られたUL試験用試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行い、5個の試験片に合計10回の接炎を行い、合計有炎燃焼時間を求めた。
難燃性ポリカーボネートにおいては、合計有炎燃焼時間は50秒以下が必要である。更に安定的に難燃性を発現するには合計有炎燃焼時間は40秒以下が好ましい。更により安定的に難燃性を発現するには合計有炎燃焼時間は30秒以下が好ましい。
【0089】
<滞留成形衝撃強度の測定>
試験片の作製
上記で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機「SG75MII」を用い、シリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で、3mm厚さのISO多目的試験片を成形サイクル5分で7ショット成形した。
ISO179-1、ISO179-2に従い、ISO多目的試験片を用いて、23℃の条件で、ノッチ付シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。7本の平均を滞留成形衝撃強度とした。
滞留成形シャルピー衝撃強度は、耐衝撃改良剤添加系では30kJ/m以上は必要であり、好ましくは40kJ/m以上である。また耐衝撃強度改良剤無添加系では8J/m以上は必要であり、好ましくは9kJ/m以上である。
【0090】
結果を表3に示した。
ベントアップはなく、ストランド引き取りも安定であり生産性良好であった。合計有炎燃焼時間も50秒以下で良好で、滞留成形耐衝撃強度も40kJ/m以上であり良好であった。
【0091】
<実施例A2>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-3とした以外は、実施例A1と同様に試験した。<実施例A3>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-4のリサイクルペレットとした以外は実施例A1と同様に試験した。
<実施例A4>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は、実施例A1と同様に試験した。<実施例A5>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は、実施例A2と同様に試験した。<実施例A6>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例A3と同様に試験した。
<実施例A7>
ペレットをPC-2からPC-2Sに変更した以外は実施例A1と同様に試験した。
<実施例A8>
ペレットをPC-2からPC-2Lに変更した以外は実施例A1と同様に試験した。僅かにベント金物の淵にベントアップが見られ、ストランドも8分に1回ほど切れたが、生産ができない程ではなかった。
【0092】
<比較例A1>
スクリュー構成をSc2からSc1に変更した以外は実施例A1と同様に試験した。然しながらベントアップが発生し、ストランド破断し、ペレットを採取することができなかった。
<比較例A2>
スクリュー構成をSc2からSc4に変更した以外は実施例A1と同様に試験した。然しながら合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。恐らくスクリュー構成が強くポリテトラフルオロエチレンにダメージが発生し、難燃性が低下したと考えられる。
<比較例A3>
スクリュー構成をSc2からSc1に変更した以外は実施例A2と同様に試験した。然しながらベントアップが発生し、ストランド破断し、ペレットを採取することができなかった。
<比較例A4>
スクリュー構成をSc2からSc4に変更した以外は実施例A2と同様に試験した。然しながら合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。恐らくスクリュー構成が強くポリテトラフルオロエチレンにダメージが発生し、難燃性が低下したと考えられる。
<比較例A5>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-1とした以外は実施例A1と同様に試験を行った。計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。ポリカーボネート樹脂ペレットの分子量分布が狭く、燃焼時のたれ落ち速度が速く、難燃性が悪化したと考えられる。
<比較例A6>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-5とした以外は実施例A1と同様に試験を行った。難燃性は良好なものの、滞留成形シャルピー衝撃強度が低下した。分子量分布の広いポリカーボネート樹脂ペレット中の高分子量成分が混練過程でダメージを受け、滞留成形衝撃強度が低下したと考えている。
【0093】
以上の結果を以下の表3に示す。
表中、「燃焼性&滞留衝撃強度」の欄の判定は、合計有炎燃焼時間が50秒以下で、且つ滞留成形衝撃強度が30kJ/m以上のものを「〇」とし、その他は「×」とした。
また、生産性の評価(〇、△、×)は、以下の基準で判定し、表3及び後記表に記した。
〇:ベントアップはなく、ストランド引き取りも安定であり生産性良好である。
△:僅かにベントアップが見られ、ストランドも時々切れたが、生産ができない程ではない。
×:ベントアップが発生し、ストランドが破断し、ペレットを採取することができなかった。
【0094】
【表3】
【0095】
<実施例B1>
ポリカーボネート樹脂ペレット(PC-2)を328kg/h(82質量%)、ポリテトラフルオロエチレン(C1)を1.2kg/h(0.3質量%)を、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44αII」、シリンダー径D:47mm)にC1から供給し、C2からリン系難燃剤(B1)を液体供給ポンプから70.8kg/h(17.7質量%)で添加し、スクリュー構成Sc2で混練し、その後、ベントで減圧に引き、吐出口から押し出してストランド化し、水槽で冷却後にペレタイザーによりポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。スクリュー回転数は600rpmとし、シリンダー設定温度は260℃とした。
前記と同様に、合計有炎燃焼時間と滞留成形衝撃強度を測定した。
結果を表4に記載した。ベントアップはなく、ストランド引き取りも安定であり生産性良好であった。合計有炎燃焼時間も50秒以下で良好であり、且つ滞留成形耐衝撃強度も耐衝撃改良剤無添加系としては高く10kJ/m以上であり良好であった。
【0096】
<実施例B2>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-3とした以外は実施例B1と同様に試験した。<実施例B3>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-4のリサイクルペレットとした以外は実施例B1と同様に試験した。
<実施例B4>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例B1と同様に試験した。
<実施例B5>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例B2と同様に試験した。
<実施例B6>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例B3と同様に試験した。
<実施例B7>
ペレットをPC-2からPC-2Sに変更した以外は実施例B1と同様に試験した。
<実施例B8>
ペレットをPC-2からPC-2Lに変更した以外は実施例B1と同様に試験した。僅かにベント金物の淵にベントアップが見ら、ストランドも5分に1回ほど切れたが、生産ができない程ではなかった。
【0097】
<比較例B1>
スクリュー構成をSc2からSc1に変更した以外は実施例B1と同様に試験した。ベントアップが発生し、ストランド破断し、ペレットを採取することができなかった。
<比較例B2>
スクリュー構成をSc2からSc4に変更した以外は実施例B1と同様に試験した。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。恐らくスクリュー構成が強くポリテトラフルオロエチレンにダメージが発生し、難燃性が低下したと考えられる。
<比較例B3>
スクリュー構成をSc2からSc1に変更した以外は実施例B2と同様に試験した。ベントアップが発生し、ストランド破断し、ペレットを採取することができなかった。
<比較例B4>
スクリュー構成をSc2からSc4に変更した以外は実施例B2と同様に試験した。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。恐らくスクリュー構成が強くポリテトラフルオロエチレンにダメージが発生し、難燃性が低下したと考えられる。
<比較例B5>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-1とした以外は実施例B1と同様に試験を行った。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。ポリカーボネート樹脂ペレットの分子量分布が狭く、燃焼時のたれ落ち速度が速く、難燃性が悪化したと考えられる。
<比較例B6>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-5とした以外は実施例B1と同様に試験を行った。難燃性は良好なものの、滞留成形衝撃強度が低下した。分子量分布の広いポリカーボネート樹脂ペレット中の高分子量成分が混練過程でダメージを受け、滞留成形衝撃強度が低下したと考えている。
【0098】
以上の結果を以下の表4に示す。
表中、「燃焼性&滞留衝撃強度」の欄の判定は、合計有炎燃焼時間が50秒以下で、且つ滞留成形衝撃強度が8kJ/m以上のものを「〇」とし、その他は「×」とした。
【0099】
【表4】
【0100】
<実施例C1>
ポリカーボネート樹脂ペレット(PC-2)を240kg/h(60質量%)、ポリカーボネート樹脂フレーク(D1)を22.4kg/h(5.6質量%)、ABS樹脂(E1)を60kg/h(15質量%)、耐衝撃改良剤(F1)を16kg/h(4質量%)、ポリテトラフルオロエチレン(C1)を1.6kg/h(0.4質量%)を、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44αII」、シリンダー径D:47mm)にC1から供給し、C2からリン系難燃剤(B1)を液体供給ポンプから60kg/h(15質量%)で添加し、スクリュー構成Sc2で混練し、その後、ベントで減圧に引き、吐出口から押し出してストランド化し、水槽で冷却後にペレタイザーによりポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。スクリュー回転数は600rpmとし、シリンダー設定温度は260℃とした。
前記と同様に、合計有炎燃焼時間と滞留成形衝撃強度を測定した。
結果を表5に記載した。ベントアップはなく、ストランド引き取りも安定であり生産性良好であった。合計有炎燃焼時間も50秒以下で良好、滞留成形耐衝撃強度も40kJ/m以上であり良好であった。
【0101】
<実施例C2>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-3とした以外は実施例C1と同様に試験した。<実施例C3>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-4のリサイクルペレットとした以外は実施例C1と同様に試験した。
<実施例C4>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例C1と同様に試験した。
<実施例C5>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例C2と同様に試験した。
<実施例C6>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例C3と同様に試験した。
<実施例C7>
ペレットをPC-2からPC-2Sに変更した以外は実施例C1と同様に試験した。
<実施例C8>
ペレットをPC-2からPC-2Lに変更した以外は実施例C1と同様に試験した。僅かにベント金物の淵にベントアップが見ら、ストランドも4分に1回ほど切れたが、生産ができない程ではなかった。
【0102】
<比較例C1>
スクリュー構成をSc2からSc1に変更した以外は実施例C1と同様に試験した。ベントアップが発生し、ストランド破断し、ペレットを採取することができなかった。
<比較例C2>
スクリュー構成をSc2からSc4に変更した以外は実施例C1と同様に試験した。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。恐らくスクリュー構成が強くポリテトラフルオロエチレンにダメージが発生し、難燃性が低下したと考えられる。
<比較例C3>
スクリュー構成をSc2からSc1に変更した以外は実施例C2と同様に試験した。ベントアップが発生し、ストランド破断し、ペレットを採取することができなかった。
<比較例C4>
スクリュー構成をSc2からSc4に変更した以外は実施例C2と同様に試験した。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。恐らくスクリュー構成が強くポリテトラフルオロエチレンにダメージが発生し、難燃性が低下したと考えられる。
<比較例C5>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-1とした以外は実施例C1と同様に試験を行った。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。ポリカーボネート樹脂ペレットの分子量分布が狭く、燃焼時のたれ落ち速度が速く、難燃性が悪化したと考えられる。
<比較例C6>
ポリカーボネート樹脂ペレットをPC-5とした以外は実施例C1と同様に試験を行った。難燃性は良好なものの、滞留成形シャルピー衝撃強度が低下した。分子量分布の広いポリカーボネート樹脂ペレット中の高分子量成分が混練過程でダメージを受け、滞留成形衝撃強度が低下したと考えている。
【0103】
以上の結果を表5に記す。
表中、「燃焼性&滞留衝撃強度」の欄の判定は、合計有炎燃焼時間が50秒以下で、且つ滞留成形衝撃強度が30kJ/m以上のものを「〇」とし、その他は「×」とした。
【0104】
【表5】
【0105】
<ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ペレットの製造>
PC/ABS-1:
7022Rを85.7質量%、ABS樹脂(E1)を14.3質量%をTEX44αIIの根本にフィードし、スクリュー構成Sc3を用い、シリンダー設定温度を280℃とし、吐出量400kg/h、スクリュー回転数600rpmでコンパウンドし、ストランドを押出し、冷却し、ペレタイザーでカットし、ペレット(PC/ABS-1)を得た。この時のストランド温度は337℃であった。ペレットの平均重量は19mgであった。
【0106】
PC/ABS-2:
7025Rを77.13質量%、AL071を8.57質量%、ABS樹脂(E1)14.3質量%を、上記PC/ABS-1と同様な方法でコンパウンドし、ペレット(PC/ABS-2)を得た。ストランド温度は345℃であった。ペレットの平均重量は20mgであった。
【0107】
PC/ABS-2S:
上記と同じ方法でストランドを押し出した後、ペレタイザーの回転速度を上げ、平均重量11mgのペレット(PC/ABS-2S)を得た。
PC/ABS-2L:
上記と同じ方法でストランドを押し出した後、ペレタイザーの回転速度を下げ、平均重量37mgのペレット(PC/ABS-2L)を得た。
【0108】
PC/ABS-3:
2010ANCを85.7質量%、ABS樹脂(E1)14.3質量%を、同様にしてコンパウンドしペレット(PC/ABS-3)を得た。ストランド温度は342℃であった。ペレットの平均重量は19mgであった。
【0109】
PC/ABS-4:
M7027BFを68.56質量%、AL071を17.14質量%、ABS樹脂(E1)14.3質量%を、同様にしてコンパウンドし、ペレット(PC/ABS-4)を得た。ストランド温度は354℃であった。ペレットの平均重量は20mgであった。
【0110】
これらのPC/ABSペレットのQ値を測定した。ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ペレット中のポリカーボネート樹脂の分子量分布は、THF可溶分をろ過により取り出し、これから前述の方法でMw及びMnを求め、Mw/Mnを算出した。
上記PC/ABSペレットのMw/Mn、Q値、ペレット重量を以下の表6に纏めて記載した。
【0111】
【表6】
【0112】
<実施例D1>
PC/ABS樹脂ペレット(PC/ABS-2)を280kg/h(70質量%)、ポリカーボネート樹脂フレーク(D1)を22.4kg/h(5.6質量%)、ABS樹脂(E1)を20kg/h(5質量%)、耐衝撃改良剤(F1)を16kg/h(4質量%)、ポリテトラフルオロエチレン(C1)を1.6kg/h(0.4質量%)を、同方向二軸押出機(「TEX44αII」、シリンダー径D:47mm日本製鋼所社製)にC1から供給し、C2からリン系難燃剤(B1)を液体供給ポンプから60kg/h(15質量%)で添加し、スクリュー構成Sc2で混練し、その後、ベントで減圧に引き、吐出口から押し出してストランド化し、水槽で冷却後にペレタイザーによりポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。スクリュー回転数は600rpmとし、シリンダー設定温度は260℃とした。
得られたペレットを、UL94試験の合計有炎燃焼時間を求めた。滞留成形衝撃試験を実施した。
結果を表7に記載した。ベントアップはなく、ストランド引き取りも安定であり生産性良好であった。合計有炎燃焼時間も50秒以下で良好で、滞留成形耐衝撃強度も40kJ/m以上であり良好であった。
【0113】
<実施例D2>
PC/ABS-2ペレットをPC/ABS-3ペレットに変更した以外は実施例D1と同様に実験した。
<実施例D3>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例D1と同様に実験した。
<実施例D4>
スクリュー構成をSc2からSc3に変更した以外は実施例D2と同様に実験した。
<実施例D5>
ペレットをPC/ABS-2からPC/ABS-2Sに変更した以外は実施例D1と同様に試験した。
<実施例D6>
ペレットをPC/ABS-2からPC/ABS-2Lに変更した以外は実施例D1と同様に試験した。僅かにベント金物の縁にベントアップが見られ、ストランドも6分に1回ほど切れたが、生産ができない程ではなかった。
【0114】
<比較例D1>
スクリュー構成をSc2からSc1に変更した以外は実施例D1と同様に実験した。ベントアップが発生し、ストランド破断し、ペレットを採取することができなかった。
<比較例D2>
スクリュー構成をSc2からSc4に変更した以外は実施例D1と同様に実験した。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。恐らくスクリュー構成が強くポリテトラフルオロエチレンにダメージが発生し、難燃性が低下したと考えられる。
<比較例D3>
PC/ABS-2ペレットをPC/ABS-1ペレットに変更した以外は実施例D1と同様に実験した。合計有炎燃焼時間は50秒を超え、難燃性は悪化した。UL94ではV-0でない結果となった。
<比較例D4>
PC/ABS-2ペレットをPC/ABS-4ペレットに変更した以外は実施例D1と同様に実験した。難燃性は良好なものの、滞留成形シャルピー衝撃強度が低下した。分子量分布の広いポリカーボネート樹脂ペレット中の高分子量成分が混練過程でダメージを受け、滞留成形衝撃強度が低下したと考えている。
【0115】
以上の結果を以下の表7に記す。
表中、「燃焼性&滞留衝撃強度」の欄の判定は、合計有炎燃焼時間が50秒以下で、且つ滞留成形衝撃強度が30kJ/m以上のものを「〇」とし、その他は「×」とした。
【0116】
【表7】
【0117】
上記の全ての実施例において、リサイクルポリカーボネート樹脂2010ANCからなるPC-4ペレットや、それを使用したPC/ABS-3を使って製造された樹脂組成物ペレットの難燃性が良好であることが分かる。リサイクルペレットは成形、粉砕、再混練と多くの熱履歴を受ける。そのために架橋構造が発達し、燃焼時にたれ落ち難く、難燃性が向上したと考察している。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の方法によれば、未溶融物の発生やベントアップが起こらず、高い吐出量で安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と、熱滞留しても衝撃強度が低下し難い、優れたポリカーボネート樹脂組成物ペレットが製造でき、得られたポリカーボネート樹脂ペレットは、プリンターや複写機等のOA、電気機器、電子機器、自動車等の車両、住宅、建築、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用でき、産業上の利用性は非常に高い。
図1