(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077093
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】反応炉
(51)【国際特許分類】
C01B 32/977 20170101AFI20230529BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230529BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C01B32/977
C23C16/455
C23C16/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190241
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公美
【テーマコード(参考)】
4G146
4K030
【Fターム(参考)】
4G146MA14
4G146NA04
4G146NA07
4G146NA13
4G146NB05
4G146NB14
4G146QA04
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA37
4K030CA08
4K030EA06
4K030FA10
4K030HA15
4K030JA05
4K030JA09
4K030KA09
4K030KA39
4K030KA41
(57)【要約】
【課題】原料ガスの漏れを抑制すること。
【解決手段】反応炉100は、原料ガスg1が流れる第1の流路20と、基材を設置するための基材エリア30と、を含む内筒11と、内筒11を囲う中筒12であって、中筒12と内筒11との間に第2の流路21を含む中筒12と、中筒12を囲う外筒13であって、外筒13と中筒12との間に不活性ガスg3が流れる第3の流路22を含む外筒13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスが流れる第1の流路と、基材を設置するための基材エリアと、を含む内筒と、
前記内筒を囲う中筒であって、当該中筒と前記内筒との間に第2の流路を含む中筒と、
前記中筒を囲う外筒であって、当該外筒と前記中筒との間に不活性ガスが流れる第3の流路を含む外筒と、
を備える、反応炉。
【請求項2】
前記原料ガスは、
前記第1の流路を流れる第1の原料ガスと、
前記第2の流路を流れる第2の原料ガスと、
を含み、
前記内筒は、前記第1の流路に沿って配置されかつ前記第2の流路を前記第1の流路に接続する、複数の開口を含む、
請求項1に記載の反応炉。
【請求項3】
前記複数の開口の断面積は、前記第1の流路に沿って変化する、
請求項2に記載の反応炉。
【請求項4】
第2の不活性ガスが、前記第2の流路を流れ、
前記内筒は、前記原料ガスの流れにおいて前記基材エリアの下流に設けられかつ前記第2の流路を前記第1の流路に接続する、開口を含む、
請求項1に記載の反応炉。
【請求項5】
前記第1の流路内の第1圧力を調整する第1の圧力調整手段と、
前記第2の流路内の第2圧力を調整する第2の圧力調整手段と、
前記第3の流路内の第3圧力を調整する第3の圧力調整手段と、
前記第1、第2および第3の圧力調整手段と通信可能に接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2圧力が前記第1圧力よりも高く、かつ、前記第3圧力が前記第2圧力よりも高くなるように、前記第1、第2および第3の圧力調整手段を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応炉。
【請求項6】
前記第1、第2および第3の圧力調整手段の各々は、バルブまたはポンプの少なくとも一方を含む、請求項5に記載の反応炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反応炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばSiC等の材料を形成するための反応炉が知られている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-250183号公報
【特許文献2】特開平9-260364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような反応炉では、例えば腐食性を有する原料ガスが使用される場合がある。このような原料ガスが反応炉の外部に漏れると、反応炉の炉体等の金属部品が、原料ガスによって腐食されるおそれがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を考慮して、原料ガスの漏れを抑制することができる、反応炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る反応炉は、原料ガスが流れる第1の流路と、基材を設置するための基材エリアと、を含む内筒と、内筒を囲う中筒であって、中筒と内筒との間に第2の流路を含む中筒と、中筒を囲う外筒であって、外筒と中筒との間に不活性ガスが流れる第3の流路を含む外筒と、を備える。
【0007】
原料ガスは、第1の流路を流れる第1の原料ガスと、第2の流路を流れる第2の原料ガスと、を含んでもよく、内筒は、第1の流路に沿って配置されかつ第2の流路を第1の流路に接続する、複数の開口を含んでもよい。
【0008】
複数の開口の断面積は、第1の流路に沿って変化してもよい。
【0009】
第2の不活性ガスが、第2の流路を流れてもよく、内筒は、原料ガスの流れにおいて基材エリアの下流に設けられかつ第2の流路を第1の流路に接続する、開口を含んでもよい。
【0010】
反応炉は、第1の流路内の第1圧力を調整する第1の圧力調整手段と、第2の流路内の第2圧力を調整する第2の圧力調整手段と、第3の流路内の第3圧力を調整する第3の圧力調整手段と、第1、第2および第3の圧力調整手段と通信可能に接続された制御装置と、を備えてもよく、制御装置は、第2圧力が第1圧力よりも高く、かつ、第3圧力が第2圧力よりも高くなるように、第1、第2および第3の圧力調整手段を制御してもよい。
【0011】
第1、第2および第3の圧力調整手段の各々は、バルブまたはポンプの少なくとも一方を含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、原料ガスの漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る反応炉を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態に係る反応炉を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態に係る反応炉を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態に係る反応炉を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第5実施形態に係る反応炉を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る反応炉100を示す概略図である。反応炉100は、例えば、複合材料または半導体等の材料の形成に使用される。例えば、反応炉100は、化学蒸着法(CVD)または化学気相浸透法(CVI)法を使用する。例えば、反応炉100は、複合材料として、炭化ケイ素(SiC)の形成に使用されてもよい。例えば、反応炉100は、SiCを含むCMC(Ceramic Matrix Composites)の製造に使用されてもよい。
【0016】
反応炉100は、炉本体10と、制御装置50と、を備える。また、炉本体10は、内筒11と、中筒12と、外筒13と、を含む。例えば、内筒11、中筒12および外筒13は、概ね円筒形状を有する。他の実施形態では、内筒11、中筒12および外筒13は、円筒以外の他の中空形状を有してもよい
【0017】
内筒11は、その内部に第1の流路20を含む。第1の流路20は、反応室として機能する。第1の流路20は、基材エリア30を含む。
図1において、基材エリア30は、ハッチングが付されている。基材エリア30には、材料の製造に使用される基材が配置される。例えば、CMCを製造する場合、基材として、繊維を成形することによって得られる多孔体が使用されてもよい。例えば、基材エリア30には、第1の流路20に沿って複数の基材が配列されてもよい。
【0018】
本実施形態では、内筒11は、第1の流路20に沿って、すなわち、後述する第1の原料ガスg1の流れに沿って、複数の開口11hを含む。内筒11は、内筒11の周方向にも、複数の開口11hを含んでもよい。複数の開口11hは、基材エリア30に沿って配置される。開口11hは、内筒11の外表面から内表面まで貫通する。開口11hは、第1の流路20と、後述する第2の流路21と、を接続する。本実施形態では、複数の開口11hの断面積は、互いに同じまたは概ね同じである。
【0019】
内筒11は、例えば、カーボンを含む材料で形成される。内筒11は、入口配管11aと、出口配管11bと、に接続される。
【0020】
例えば、入口配管11aは、内筒11の一方の端部に接続される。例えば、入口配管11aは、後述する中筒12の入口配管12aの内側を通ってもよい。他の実施形態では、入口配管11aは、入口配管12aの外側を通ってもよい。本実施形態では、入口配管11aには、不図示の供給源から第1の原料ガスg1が供給される。本実施形態では、第1の原料ガスg1は、Siを含む。例えば、第1の原料ガスg1は、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化ケイ素またはシランを含む。これらのガスは、例えば腐食性等の特性を有し得る。入口配管11aは、この第1の原料ガスg1を第1の流路20に供給する。
【0021】
入口配管11aには、バルブV1が設けられる。バルブV1は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、バルブV1の開度を調整し、入口配管11aを通る第1の原料ガスg1の流量を制御する。
【0022】
入口配管11aには、圧力センサS1が設けられる。圧力センサS1は、入口配管11a内の圧力、すなわち第1の流路20内の圧力を測定する。圧力センサS1は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、測定データを制御装置50に送信する。なお、圧力センサS1は、圧力センサS1が第1の流路20内の圧力が測定できる限りにおいて、別の場所に設けられてもよい。代替的にまたは追加的に、入口配管11aには、不図示の流量計が設けられてもよく、制御装置50は、流量計によって測定される第1の原料ガスg1の流量が、所定の流量に調整されるように、バルブV1の開度を制御してもよい。
【0023】
例えば、出口配管11bは、入口配管11aと反対側の内筒11の端部に接続される。出口配管11bは、後述する反応ガスg4を反応室20から排出する。
【0024】
出口配管11bには、バルブV2が設けられる。バルブV2は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、バルブV2の開度を調整し、出口配管11bを通る反応ガスg4の流量を制御する。
【0025】
出口配管11bには、ポンプP1が設けられる。ポンプP1は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、ポンプP1の出力を制御し、反応室20から吸引される反応ガスg4の流量を制御する。出口配管11bには、不図示の流量計が設けられてよく、制御装置50は、流量計によって測定される反応ガスg4の流量が、所定の流量に調整されるように、バルブV2の開度およびポンプP1の出力を制御してもよい。
【0026】
本実施形態では、第1の流路20内の圧力(第1圧力)は、バルブV1,V2およびポンプP1を含む、第1圧力調整手段によって制御される。制御装置50は、圧力センサS1によって測定される圧力が、所定の負圧に調整されるように、バルブV1,V2およびポンプP1を制御する。なお、第1圧力調整手段は、追加のバルブまたはポンプ等、追加の要素をさらに含んでもよい。また、例えば、バルブV2は設けられなくてもよい。
【0027】
中筒12は、内筒11を囲う。例えば、中筒12は、内筒11と同心状に配置される。中筒12は、中筒12と内筒11との間に第2の流路21を含む。中筒12は、例えば、カーボンを含む材料で形成される。中筒12は、入口配管12aに接続される。
【0028】
例えば、入口配管12aは、中筒12の一方の端部に接続される。例えば、入口配管12aは、内筒11の入口配管11aの一部を囲う。本実施形態では、入口配管12aには、不図示の供給源から第2の原料ガスg2が供給される。本実施形態では、第2の原料ガスg2はCを含む。例えば、第2の原料ガスg2は、炭化水素を含む。入口配管12aは、この第2の原料ガスg2を第2の流路21に供給する。第2の原料ガスg2は、開口11hを介して、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込む。
【0029】
入口配管12aには、バルブV3が設けられる。。バルブV3は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、バルブV3の開度を調整し、入口配管12aを通る第2の原料ガスg2の流量を制御する。
【0030】
入口配管12aには、圧力センサS2が設けられる。圧力センサS2は、入口配管12a内の圧力、すなわち第2の流路21内の圧力を測定する。圧力センサS2は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、測定データを制御装置50に送信する。なお、圧力センサS2は、圧力センサS2が第2の流路21内の圧力が測定できる限りにおいて、別の場所に設けられてもよい。代替的にまたは追加的に、入口配管12aには、不図示の流量計が設けられてもよく、制御装置50は、流量計によって測定される第2の原料ガスg2の流量が、所定の流量に調整されるように、バルブV3の開度を制御してもよい。
【0031】
本実施形態では、第2の流路21内の圧力(第2圧力)は、バルブV3、および、上記のバルブV2およびポンプP1を含む、第2圧力調整手段によって制御される。制御装置50は、圧力センサS2によって測定される圧力が所定の負圧に調整されるように、バルブV3,V2およびポンプP1を制御する。なお、第2圧力調整手段は、他のバルブまたはポンプ等、追加の要素をさらに含んでもよい。
【0032】
外筒13は、中筒12を囲う。例えば、外筒13は、内筒11および中筒12と同心状に配置される。外筒13は、外筒13と中筒12との間に第3の流路22を含む。外筒13は、例えば、金属を含む材料で形成される。外筒13は、入口配管13aと、出口配管13bと、に接続される。
【0033】
例えば、入口配管13aは、外筒13の一方の端部に接続される。本実施形態では、入口配管13aには、不図示の供給源から不活性ガス(第1の不活性ガス)g3が供給される。例えば、不活性ガスg3は、窒素、アルゴンまたはヘリウムを含む。入口配管13aは、この不活性ガスg3を第3の流路22内に供給する。
【0034】
入口配管13aには、バルブV4が設けられる。バルブV4は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、バルブV4の開度を調整し、入口配管13aを通る不活性ガスg3の流量を制御する。
【0035】
入口配管13aには、圧力センサS3が設けられる。圧力センサS3は、入口配管13a内の圧力、すなわち第3の流路22内の圧力を測定する。圧力センサS3は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、測定データを制御装置50に送信する。なお、圧力センサS3は、圧力センサS3が第3の流路22内の圧力が測定できる限りにおいて、別の場所に設けられてもよい。代替的にまたは追加的に、入口配管13aには、不図示の流量計が設けられてもよく、制御装置50は、入口配管13aを通る不活性ガスg3の流量が、所定の流量に調整されるように、バルブV4の開度を制御してもよい。
【0036】
例えば、出口配管13bは、入口配管13aと反対側の外筒13の端部に接続される。出口配管13bは、不活性ガスg3を、第3の流路22から排出する。
【0037】
出口配管13bには、バルブV5が設けられる。バルブV5は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、バルブV5の開度を調整し、出口配管13bを通る不活性ガスg3の流量を制御する。
【0038】
出口配管13bには、ポンプP2が設けられる。ポンプP2は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、ポンプP2の出力を制御し、第3の流路22から吸引される不活性ガスg3の流量を制御する。
【0039】
本実施形態では、第3の流路22内の圧力(第3圧力)は、バルブV4,V5およびポンプP2を含む、第3圧力調整手段によって制御される。制御装置50は、圧力センサS3によって測定される圧力が所定の負圧に調整されるように、バルブV4,V5およびポンプP2を制御する。なお、第3圧力調整手段は、追加のバルブまたはポンプ等、追加の要素をさらに含んでもよい。また、例えば、バルブV5は設けられなくてもよい。
【0040】
外筒13には、ヒータ40が設けられる。ヒータ40は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、ヒータ40の出力を制御し、基材エリア30の温度を所定の温度に調整する。
【0041】
制御装置50は、反応炉100の全体または一部を制御する。制御装置50は、例えば、プロセッサ50a、記憶装置50bおよびコネクタ50c等の構成要素を含み、これらの構成要素はバスを介して互いに接続される。例えば、プロセッサ50aは、CPU(Central Processing Unit)等を含む。例えば、記憶装置50bは、ハードディスク、プログラム等が格納されるROM、および、ワークエリアとしてのRAM等を含む。制御装置50は、コネクタ50cを介して反応炉100の各構成要素と通信する。例えば、制御装置50は、液晶ディスプレイまたはタッチパネル等の表示装置、および、キーボード、ボタンまたはタッチパネル等の入力装置等、他の構成要素を更に含んでもよい。例えば、以下に示される制御装置50の動作は、記憶装置50bに記憶されるプログラムをプロセッサ50aに実行することによって、実現されてもよい。
【0042】
続いて、反応炉100を用いた複合材料の製造について説明する。
【0043】
基材エリア30に、複数の基材が配列される。ヒータ40によって、基材エリア30の温度が所定の温度に調整される。第1の原料ガスg1が、入口配管11aを介して、第1の流路20に供給される。また、第2の原料ガスg2が、入口配管12aを介して、第2の流路21に供給される。第2の原料ガスg2は、複数の開口11hを介して、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込む。
【0044】
第1の原料ガスg1および第2の原料ガスg2は、第1の流路20内で混合され、反応ガスg4が生成される。反応ガスg4の一部は、基材エリア30に配列された基材に堆積または浸透する。これによって、基材上にまたは基材内にSiCが形成される。反応ガスg4の残りは、出口配管11bを介して第1の流路20から排出される。
【0045】
上記の反応の間、不活性ガスg3が、入口配管13aを介して、第3の流路22に供給される。不活性ガスg3は、出口配管13bを介して、第3の流路22から排出される。
【0046】
上記の動作の間、制御装置50は、第2の流路21内の第2圧力が、第1の流路20内の第1圧力よりも高くなるように、バルブV1,V2,V3およびポンプP1を制御する。また、制御装置50は、第3の流路22内の第3圧力が、第2の流路21内の第2圧力よりも高くなるように、バルブV4,V5およびポンプP2を制御する。すなわち、制御装置50は、外側の流路内の圧力が内側の流路内の圧力よりも高くなるように、第1、第2および第3の圧力調整手段を制御する。
【0047】
以上のような反応炉100は、第1の原料ガスg1が流れる第1の流路20と、基材を設置するための基材エリア30と、を含む内筒11と、内筒11を囲う中筒12であって、中筒12と内筒11との間に第2の流路21を含む中筒12と、中筒12を囲う外筒13であって、外筒13と中筒12との間に不活性ガスg3が流れる第3の流路22を含む外筒13と、を備える。このような構成によれば、第1の原料ガスg1の流れは、内筒11、中筒12、および、外筒13によって囲われる。また、第1の原料ガスg1の流れは、不活性ガスg3によって囲われる。したがって、腐食性等の特性を含む第1の原料ガスg1の漏れを抑制することができる。
【0048】
また、反応炉100では、原料ガスは、第1の流路20を流れる第1の原料ガスg1と、第2の流路21を流れる第2の原料ガスg2と、を含み、内筒11は、第1の流路20に沿って配置されかつ第2の流路21を第1の流路20に接続する、複数の開口11hを含む。このような構成によれば、第2の原料ガスg2は、複数の開口11hを介して分散して、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込む。したがって、第2の原料ガスg2を基材エリア30により均一に供給することができる。よって、例えば基材エリア30に大きな基材または多数の基材が配置される場合に、基材エリア30内の反応ガスg4の分布を改善することができる。
【0049】
また、反応炉100は、第1の流路20内の第1圧力を調整する第1の圧力調整手段V1,V2,P1と、第2の流路21内の第2圧力を調整する第2の圧力調整手段V3,V2,P1と、第3の流路22内の第3圧力を調整する第3の圧力調整手段V4,V5,P2と、第1、第2および第3の圧力調整手段V1,V2,V3,V4,V5,P1,P2と通信可能に接続された制御装置50と、を備え、制御装置50は、第2圧力が第1圧力よりも高く、かつ、第3圧力が前記第2圧力よりも高くなるように、第1、第2および第3の圧力調整手段V1,V2,V3,V4,V5,P1,P2を制御する。このような第1、第2および第3の圧力調整手段の各々は、バルブまたはポンプの少なくとも一方を含む。このような構成によれば、外側の流路内の圧力が、内側の流路内の圧力よりも高くなる。したがって、第1の原料ガスg1の漏れをさらに抑制することができる。
【0050】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0051】
図2は、第2実施形態に係る反応炉200を示す概略図である。反応炉200は、内筒11の開口11hのサイズ(断面積)が第1の流路20に沿って変化する点で、
図1の反応炉100と異なる。反応炉200は、他の点においては反応炉100と同様であってもよい。
【0052】
例えば、開口11hのサイズは、第2の原料ガスg2を内筒11内にどのように分布させるか、に応じて決定されてもよい。例えば、
図2では、複数の開口11hのサイズは、第1の原料ガスg1の流れにおいて下流に行くにしたがって増加する。したがって、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込む第2の原料ガスg2の量は、下流に行くにしたがって増加する。このような構成によれば、
図1の反応炉100に比して、下流における第2の原料ガスg2の量を増加することができる。
【0053】
対照的に、複数の開口11hのサイズは、第1の原料ガスg1の流れにおいて下流に行くにしたがって減少してもよい。この場合、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込む第2の原料ガスg2の量は、下流に行くにしたがって減少する。このような構成によれば、
図1の反応炉100に比して、下流における第2の原料ガスg2の量を減少することができる。
【0054】
以上のような反応炉200は、反応炉100と同様な効果を奏し得る。特に、反応炉200では、複数の開口11hの断面積は、第1の流路20に沿って変化する。したがって、内筒11内に流れ込む第2の原料ガスg2の分布を調整することができる。
【0055】
図3は、第3実施形態に係る反応炉300を示す概略図である。反応炉300は、内筒11の開口11hがノズル11nを含む点で、
図1の反応炉100と異なる。反応炉300は、他の点においては反応炉100と同様であってもよい。
【0056】
ノズル11nは、内筒11の内表面から内側に突出する。ノズル11nは、内筒11の内表面から基材エリア30に向かって突出する。例えば、ノズル11nは、内筒11の内表面に対して垂直に突出してもよい。代替的に、例えば、ノズル11nは、下流に向かって突出するように、内筒11の内表面に対して傾斜してもよい。例えば、ノズル11nは、
図3に示されるように、最内側部分に開口を有してもよい。代替的にまたは追加的に、ノズル11nは、側面に開口を有してもよい。例えば、ノズル11nは、第2の原料ガスg2を内筒11内に噴霧するように、複数の小さな開口を有してもよい。
【0057】
以上のような反応炉300は、反応炉100と同様な効果を奏し得る。特に、反応炉300では、開口11hが、内筒11の内表面から内側に突出するノズル11nを含む。したがって、第2の原料ガスg2を基材エリア30により近く供給することができる。
【0058】
図4は、第4実施形態に係る反応炉400を示す概略図である。反応炉400は、第2の原料ガスg2に代えて、不活性ガス(第2の不活性ガス)g6が第2の流路21を流れ、原料ガスが第1の流路20のみを流れる点、および、開口11hの位置が異なる点で、
図1の反応炉100と異なる。反応炉400は、他の点においては反応炉100と同様であってもよい。
【0059】
本実施形態では、原料ガスg5が、入口配管11aから第1の流路20に供給される。例えば、原料ガスg5は、メチルトリクロロシランやトリクロロシランを含む。他の実施形態では、例えば、原料ガスg5は、複数の原料ガスの予混合ガスであってもよい。
【0060】
本実施形態では、不活性ガスg6が、入口配管12aから第2の流路21に供給される。例えば、不活性ガスg6は、窒素、アルゴンまたはヘリウムを含む。例えば、不活性ガスg6は、第3の流路22を流れる不活性ガスg3と同じであってもよい。他の実施形態では、不活性ガスg6は、不活性ガスg3と異なってもよい。
【0061】
本実施形態では、開口11hは、原料ガスg5の流れにおいて、基材エリア30の下流に設けられる。複数の開口11hが、第1の流路20に沿って設けられてもよい。また、複数の開口11hが、内筒11の周方向に沿って設けられてもよい。不活性ガスg6は、開口11hを介して、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込む。
【0062】
本実施形態では、原料ガスg5は、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込んだ不活性ガスg6と混合される。したがって、原料ガスg5は、不活性ガスg6によって希釈される。よって、原料ガスg5および不活性ガスg6の混合ガスg7が、出口配管11bから排出される。
【0063】
以上のような反応炉400は、
図1の反応炉100と同様、腐食性等の特性を含む原料ガスg5の漏れを抑制することができる。
【0064】
また、反応炉400では、不活性ガスg6が、第2の流路21を流れ、内筒11は、原料ガスg5の流れにおいて基材エリア30の下流に設けられかつ第2の流路21を第1の流路20に接続する、開口11hを含む。このような構成によれば、腐食性等の特性を含む原料ガスg5の流れは、第2の流路21の不活性ガスg6と、第3の流路22の不活性ガスg3と、の双方で囲われる。よって、反応炉100の安全性を向上することができる。また、不活性ガスg6は、基材エリア30の下流に位置する開口11hを介して、第2の流路21から第1の流路20内に流れ込む。したがって、基材エリア30の下流では、原料ガスg5が不活性ガスg6によって希釈される。基材エリア30の下流では、原料ガスg5はもはや必要とされない。したがって、不活性ガスg6によって希釈された混合ガスg7を出口配管11bから排出することによって、反応炉100の安全性をより向上することができる。
【0065】
図5は、第5実施形態に係る反応炉500を示す概略図である。反応炉500は、内筒11が開口を含まず、不活性ガスg6が内筒11に流れ込まない点で、
図4の反応炉400と異なる。反応炉500は、他の点においては反応炉400と同様であってもよい。
【0066】
本実施形態では、中筒12は、出口配管12bに接続される。例えば、出口配管12bは、入口配管12aと反対側の中筒12の端部に接続される。出口配管13bは、不活性ガスg6を第2の流路21から排出する。
【0067】
出口配管12bには、バルブV6が設けられる。バルブV6は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、バルブV6の開度を調整し、出口配管12bを通る不活性ガスg6の流量を制御する。
【0068】
出口配管12bには、ポンプP3が設けられる。ポンプP3は、有線または無線で制御装置50と通信可能に接続されており、制御装置50によって制御される。制御装置50は、ポンプP3の出力を制御し、第2の流路21から吸引される不活性ガスg6の流量を制御する。
【0069】
本実施形態では、第2の流路21内の第2圧力は、バルブV3,V6およびポンプP3を含む、第2圧力調整手段によって制御される。制御装置50は、圧力センサS2によって測定される圧力が所定の負圧に調整されるように、バルブV3,V6およびポンプP3を制御する。なお、第2圧力調整手段は、追加のバルブまたはポンプ等、追加の要素をさらに含んでもよい。また、例えば、バルブV6は設けられなくてもよい。
【0070】
以上のような反応炉500は、
図1の反応炉100と同様、腐食性等の特性を含む原料ガスg5の漏れを抑制することができる。
【0071】
また、反応炉500では、不活性ガスg6が、第2の流路21を流れる。このような構成によれば、腐食性等の特性を含む原料ガスg5の流れは、第2の流路21の不活性ガスg6と、第3の流路22の不活性ガスg3と、の双方で囲われる。よって、反応炉100の安全性を向上することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
例えば、上記の実施形態では、反応炉は、複合材料としてSiCの形成に使用される。他の実施形態では、反応炉は、例えばシリコンなどの半導体の製造に使用されてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、反応炉の内部は負圧に調整される。すなわち、反応炉は負圧で使用される。しかしながら、本願発明は、正圧で使用される反応炉に適用されてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、ポンプP1,P2,P3が使用される。しかしながら、他の実施形態では、単一のポンプが使用されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
11 内筒
11h 開口
12 中筒
13 外筒
20 第1の流路
21 第2の流路
22 第3の流路
30 基材エリア
50 制御装置
100 反応炉
200 反応炉
300 反応炉
400 反応炉
500 反応炉
g1 第1の原料ガス
g2 第2の原料ガス
g3 不活性ガス(第1の不活性ガス)
g5 原料ガス
g6 不活性ガス(第2の不活性ガス)
P1 ポンプ(圧力調整手段)
P2 ポンプ(圧力調整手段)
P3 ポンプ(圧力調整手段)
V1 バルブ(圧力調整手段)
V2 バルブ(圧力調整手段)
V3 バルブ(圧力調整手段)
V4 バルブ(圧力調整手段)
V5 バルブ(圧力調整手段)
V6 バルブ(圧力調整手段)