(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077118
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
B41J2/335 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190277
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JF02
2C065JF11
2C065JF14
2C065JF21
(57)【要約】
【課題】 記録媒体との摩擦抵抗を低減しつつ、印字効率の向上を図ることが可能なサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】 サーマルプリントヘッドA10は、基板と、主走査方向に配列された複数の発熱部を含むとともに、当該基板の上に配置された抵抗体層30と、当該複数の発熱部に導通し、かつ抵抗体層30に接して配置された配線層20と、当該複数の発熱部を覆う保護層40とを備える。保護層40には、第1基材401および第2基材402が含有されている。第1基材401の組成は、二酸化ケイ素である。第2基材402の熱伝導率は、第1基材401の熱伝導率よりも高い。保護層40に対する重量パーセントは、第1基材401よりも第2基材402の方が高い。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
主走査方向に配列された複数の発熱部を含むとともに、前記基板の上に配置された抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、
前記複数の発熱部を覆う保護層と、を備え、
前記保護層には、第1基材および第2基材が含有されており、
前記第1基材の組成は、二酸化ケイ素であり、
前記第2基材の熱伝導率は、前記第1基材の熱伝導率よりも高く、
前記保護層に対する重量パーセントは、前記第1基材よりも前記第2基材の方が大きい、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記保護層は、前記配線層の少なくとも一部を覆っている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記第2基材の組成は、ケイ素である、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第2基材のビッカース硬さは、前記第1基材のビッカース硬さよりも高い、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記第2基材の組成は、炭化ケイ素である、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記保護層に対する前記第2基材の重量パーセントは、50%以上95%以下である、請求項2ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記基板の厚さ方向において前記基板と前記配線層との間に位置するグレーズ層をさらに備え、
前記配線層は、前記グレーズ層に接している、請求項1ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記保護層は、前記グレーズ層に接している、請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記基板は、前記グレーズ層に対向する主面を有し、
前記主面は、前記グレーズ層に接している、請求項7または8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記グレーズ層は、前記主面の全体を覆っている、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記グレーズ層の熱伝導率は、前記第2基材の熱伝導率よりも低い、請求項7ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記配線層は、共通配線、および複数の個別配線を含み、
前記共通配線は、前記抵抗体層に対して副走査方向に離れて位置し、かつ前記主走査方向に延びる連結部と、前記連結部から前記抵抗体層に向けて延びる複数の第1帯状部と、を有し、
前記複数の個別配線は、前記副走査方向に延びる第2帯状部を有し、
前記第2帯状部は、前記複数の第1帯状部のうち前記主走査方向において隣り合う2つの第1帯状部の間に位置する、請求項1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記抵抗体層は、前記複数の第1帯状部、および前記第2帯状部に交差している、請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記抵抗体層は、前記複数の第1帯状部、および前記第2帯状部を跨いでいる、請求項13に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記基板の厚さ方向において前記基板に対して前記抵抗体層とは反対側に位置する放熱部材をさらに備え、
前記基板は、前記放熱部材に接合されている、請求項1ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、感熱紙などの記録媒体に印字するサーマルプリンタの主たる構成要素である。特許文献1には、サーマルプリントヘッドの一例が開示されている。当該サーマルプリントヘッドは、基板と、基板の上に配置された共通電極、および複数の個別電極と、共通電極、および複数の個別電極に導通する発熱抵抗体とを備える。共通電極、および複数の個別電極を介した通電により発熱抵抗体が選択的に発熱することによって、記録媒体にドット印字がされる。
【0003】
特許文献1に開示されているサーマルプリントヘッドは、発熱抵抗体を覆う保護層をさらに備える。これにより、外部から発熱抵抗体を保護しつつ、当該サーマルプリントヘッドに対する記録媒体の摩擦抵抗を低減することができる。しかし、発熱抵抗体から発した熱が保護層を伝導する際、当該保護層において熱の損失が生じる。したがって、サーマルプリントヘッドの使用環境によっては、保護層が印字効率の低下の要因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上述の事情に鑑み、記録媒体との摩擦抵抗を低減しつつ、印字効率の向上を図ることが可能なサーマルプリントヘッドを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、主走査方向に配列された複数の発熱部を含むとともに、前記基板の上に配置された抵抗体層と、前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、前記複数の発熱部を覆う保護層と、を備え、前記保護層には、第1基材および第2基材が含有されており、前記第1基材の組成は、二酸化ケイ素であり、前記第2基材の熱伝導率は、前記第1基材の熱伝導率よりも高く、前記保護層に対する重量パーセントは、前記第1基材よりも前記第2基材の方が大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドによれば、記録媒体との摩擦抵抗を低減しつつ、印字効率の向上を図ることが可能となる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの底面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの部分拡大平面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程を説明する断面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程を説明する断面図である。
【
図11】
図11は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程を説明する断面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造工程を説明する断面図である。
【
図14】
図14は、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1~
図8に基づき、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA10について説明する。サーマルプリントヘッドA10は、基板11、グレーズ層12、配線層20、抵抗体層30および保護層40を備える。さらにサーマルプリントヘッドA10は、駆動IC71、封止樹脂72、コネクタ73および放熱部材74をさらに備える。ここで、
図4および
図5は、理解の便宜上、保護層40の図示を省略している。
【0012】
これらの図に示すサーマルプリントヘッドA10は、抵抗体層30に含まれる複数の発熱部31(詳細は後述)を選択的に発熱させることによって、
図3に示すように、感熱紙などの記録媒体81に印字を施す電子デバイスである。抵抗体層30は、印刷および焼成により形成される。したがって、サーマルプリントヘッドA10は、いわゆる厚膜型と呼ばれる。
【0013】
ここで、説明の便宜上、サーマルプリントヘッドA10の主走査方向を「x方向」と呼ぶ。サーマルプリントヘッドA10の副走査方向を「y方向」と呼ぶ。基板11の厚さ方向を「z方向」と呼ぶ。z方向は、x方向およびy方向の双方に対して直交している。
【0014】
基板11は、
図1および
図2に示すように、x方向に延びる帯状である。基板11の組成は、アルミナ(Al
2O
3)を含む。基板11は、アルミナおよび樹脂バインダなどを含む材料からなるセラミックスである。基板11の材料は、これらに加えて遮光材料を含めてもよい。当該遮光材料は、たとえば炭素(C)である。
【0015】
グレーズ層12は、
図6および
図7に示すように、z方向において基板11と配線層20との間に位置する。グレーズ層12は、非晶質ガラスを含む材料からなる。当該非晶質ガラスは、たとえばSiO
2-BaO-Al
2O
3-SnO-ZnO系ガラスである。このため、グレーズ層12は、透明または白色を呈する。
【0016】
図6および
図7に示すように、基板11は、主面111を有する。主面111は、グレーズ層12に対向している。グレーズ層12は、主面111に接しており、かつ主面111の全体を覆っている。
【0017】
配線層20は、
図1および
図4に示すように、基板11の上に配置されている。配線層20は、抵抗体層30に通電するための導電経路を構成している。配線層20は、グレーズ層12に接している。配線層20は、共通配線21および複数の個別配線22を含む。サーマルプリントヘッドA10においては、共通配線21から抵抗体層30を経由して複数の個別配線22に向けて電流が流れる。したがって、共通配線21が正極であり、かつ複数の個別配線22が負極である。配線層20の材料の一例として、金(Au)を主成分とするレジネートペーストが挙げられる。配線層20の厚さの範囲の一例は、0.6μm以上1.2μm以下である。
【0018】
図4および
図5に示すように、共通配線21は、連結部212、および複数の第1帯状部211を有する。連結部212は、抵抗体層30に対してy方向に離れて位置し、かつx方向に延びる帯状である。
【0019】
図4および
図5に示すように、複数の第1帯状部211は、連結部212から抵抗体層30に向けて延びている。複数の第1帯状部211は、x方向において等間隔に配列されている。複数の第1帯状部211は、基部211Aおよび延出部211Bを有する。基部211Aは、矩形状である。基部211Aのy方向の一方側が連結部212につながっている。延出部211Bは、基部211Aのy方向の他方側から抵抗体層30に向けて延びている。延出部211Bの幅(x方向における寸法)は、基部211Aの幅(x方向における寸法)よりも小さい。延出部211Bの幅は、25μm以下とされている。
【0020】
図4および
図5に示すように、複数の個別配線22は、y方向に延びている。複数の個別配線22は、基板11の上において、個々の駆動IC71に対応した束となって配置されている。複数の個別配線22は、個別に選択された抵抗体層30の部分に電圧を印加する。複数の個別配線22は、x方向に配列されている。複数の個別配線22は、第2帯状部221、中間部222および接続部223を有する。
【0021】
図4および
図5に示すように、第2帯状部221は、y方向に延びる帯状である。共通配線21の複数の共通配線21のうちx方向において隣り合う2つの第1帯状部211の間に第2帯状部221が位置する。第2帯状部221は、基部221Aおよび延出部221Bを有する。基部221Aは、矩形状である。基部221Aのy方向の一方側が中間部222につながっている。延出部221Bは、基部221Aのy方向の他方側から抵抗体層30に向けて延びている。延出部221Bの幅(x方向における寸法)は、基部221Aの幅(x方向における寸法)よりも小さい。延出部221Bの幅は、25μm以下とされている。
【0022】
図4および
図5に示すように、中間部222は、第2帯状部221と接続部223とを連結している。中間部222は、平行部222Aおよび斜行部222Bを有する。平行部222Aは、y方向の一方側において接続部223につながり、かつy方向に沿っている。平行部222Aの幅(x方向における寸法)は、20μm以下とされている。斜行部222Bは、y方向に対して傾斜している。斜行部222Bは、y方向の一方側において第2帯状部221の基部221Aにつながり、かつy方向の他方側において平行部222Aにつながっている。
図4に示すように、個々の駆動IC71に対応した束となって配置された複数の個別配線22において、平行部222Aと斜行部222Bとの境界位置は、x方向の両端で対比するとy方向のずれΔLが生じている。
【0023】
図4に示すように、接続部223は、y方向において中間部222に対して第2帯状部221とは反対側に位置する。接続部223は、中間部222の平行部222Aにつながっている。接続部223は、第1接続部223Aおよび第2接続部223Bを含む。第2接続部223Bは、第1接続部223Aよりもy方向に離れて位置する。これにより、複数の個別配線22の第1接続部223Aと、複数の個別配線22の第2接続部223Bとは、x方向において千鳥配置されている。第2接続部223Bにつながり、かつ隣り合う2つの第1接続部223Aの間に位置する平行部222Aの幅(x方向における寸法)は、10μm以下とされている。複数の個別配線22の接続部223には、複数のワイヤ50が個別に接続されている。複数のワイヤ50の組成は、たとえば金を含む。
【0024】
抵抗体層30は、
図1および
図4に示すように、x方向に延びる帯状である。抵抗体層30は、グレーズ層12に接している。抵抗体層30は、共通配線21の複数の第1帯状部211と、複数の個別配線22の第2帯状部221とに交差している。抵抗体層30は、複数の第1帯状部211、および複数の個別配線22の第2帯状部221のそれぞれ一部ずつを覆っている。サーマルプリントヘッドA10においては、抵抗体層30は、複数の第1帯状部211と、複数の第2帯状部221とを跨いでいる。
【0025】
抵抗体層30のうち、複数の第1帯状部211のいずれかを覆う部分と、x方向において当該部分の隣に位置する複数の個別配線22の第2帯状部221のいずれかを覆う部分とにより挟まれた領域が発熱部31とされている。これにより、抵抗体層30は、x方向に配列され、かつ配線層20に導通する複数の発熱部31を含む構成をとる。配線層20により選択的に通電されることにより、複数の発熱部31は、選択的に発熱する。これにより、
図3に示す記録媒体81にドット印字が施される。抵抗体層30の材料は、配線層20よりも電気抵抗率が高い材料が選択される。抵抗体層30の材料の一例は、酸化ルテニウム(RuO
2)粒子およびガラスフリットを含む導電性ペーストである。抵抗体層30の最大厚さは、6μm以上10μm以下である。
【0026】
保護層40は、
図6および
図7に示すように、グレーズ層12に接している。保護層40は、抵抗体層30を覆っている。保護層40は、配線層20の少なくとも一部を覆っている。サーマルプリントヘッドA10においては、保護層40は、接続部223を含む複数の個別配線22の一部を除き、配線層20を覆っている。
【0027】
保護層40は、グレーズ層12と同じく非晶質ガラスを含む材料からなる。
図8に示すように、保護層40には、第1基材401および第2基材402が含有されている。第1基材401の組成は、二酸化ケイ素(SiO
2)である。第1基材401は、保護層40を構成する非晶質ガラスの一部をなす。
【0028】
第2基材402の熱伝導率は、第1基材401の熱伝導率よりも高い。保護層40に対する重量パーセント(wt%)は、第1基材401よりも第2基材402の方が大きい。このような性質を有する第2基材402の組成は、たとえばケイ素(Si)である。保護層40に対する第2基材402の重量パーセントは、50%以上95%以下である。第2基材402は、非晶質ガラスに溶け込んだ状態となっている。したがって、
図8においては、第2基材402を概念として想像線にて示している。
【0029】
第2基材402の組成の選択によって、熱伝導率およびビッカース硬さの両者が第1基材401よりも第2基材402の方を高く設定することができる。この場合の第2基材402の組成は、たとえば炭化ケイ素(SiC)である。第2基材402の組成が炭化ケイ素である場合、第2基材402は、非晶質ガラスに混合された状態となっている。しかし、第2基材402は、視認が困難な程度の微細な粒子状態で分散している。
【0030】
サーマルプリントヘッドA10においては、グレーズ層12の熱伝導率は、第2基材402の熱伝導率よりも低く設定されている。
【0031】
駆動IC71は、
図1および
図3に示すように、抵抗体層30に対してy方向の他方側に位置する。駆動IC71は、基板11の上に搭載されている。駆動IC71の上面には、複数のパッド(図示略)が設けられている。複数のパッドのいくつかには、駆動IC71に対応する複数の個別配線22の接続部223に接続された複数のワイヤ50が接続されている。これにより、駆動IC71は、これに対応する複数の個別配線22に導通している。他の複数の当該パッドには、基板11に配置された配線に接続された複数のワイヤ50が接続されている。駆動IC71は、複数のワイヤ50を介して複数の個別配線22を選択的に通電させる。これにより、抵抗体層30に含まれる複数の発熱部31が選択的に発熱する。この他、駆動IC71は、y方向において基板11とは分離され、かつ放熱部材74に支持された配線基板に搭載される構成でもよい。当該配線基板は、たとえばフレキシブル基板である。
【0032】
封止樹脂72は、
図3に示すように、駆動IC71および複数のワイヤ50を覆っている。これらに加え、封止樹脂72は、保護層40に覆われていない複数の個別配線22の一部の領域(複数の接続部223など)をさらに覆っている。封止樹脂72は、たとえばアンダーフィルに用いられる黒色かつ軟質の樹脂である。
【0033】
コネクタ73は、
図1~
図3に示すように、y方向において駆動IC71に対して抵抗体層30とは反対側に位置する基板11の端部に配置されている。コネクタ73は、サーマルプリントヘッドA10をサーマルプリンタに接続するために用いられる。コネクタ73は、基板11に配置された配線に接続されている。これにより、コネクタ73は、当該配線、駆動IC71および複数のワイヤ50を介して複数の個別配線22に導通している。さらにコネクタ73は、当該配線を介して共通配線21の連結部212に導通している。
【0034】
放熱部材74は、
図3に示すように、z方向において基板11に対して抵抗体層30とは反対側に位置する。基板11は、接合材(図示略)を介して放熱部材74に接合されている。放熱部材74の組成は、たとえばアルミニウム(Al)を含む。
【0035】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作動について説明する。
【0036】
図3に示すように、サーマルプリントヘッドA10の複数の発熱部31は、サーマルプリンタに組み込まれたプラテンローラ82に保護層40を介して対向している。複数の発熱部31を覆う保護層40の領域と、プラテンローラ82との間に、記録媒体81が挟み込まれている。サーマルプリンタの作動時は、プラテンローラ82が回転することにより、記録媒体81が一定速度で送られる。その際、複数の発熱部31が選択的に発熱すると、熱が保護層40を介して記録媒体81に伝わることにより、記録媒体81に印字が施される。同時に、複数の発熱部31から発生した熱は、グレーズ層12にも伝わる。当該熱の一部は、グレーズ層12に蓄えられる。当該熱の残りは、基板11および放熱部材74を介してサーマルプリントヘッドA10の外部に放出される。
【0037】
次に、
図9~
図13に基づき、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の一例について説明する。
図9~
図12の断面位置は、
図7の断面位置と同一である。
【0038】
最初に、
図9に示すように、基板11の上にグレーズ層12を形成する。グレーズ層12の形成にあたっては、非晶質ガラスのペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより行う。これにより、基板11の主面111がグレーズ層12に覆われる。
【0039】
次いで、
図10に示すように、グレーズ層12の上に配線層20を形成する。配線層20の形成にあたっては、まず、金を主成分とするレジネートペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより導電体層を形成する。その後、導電体層にエッチングによるパターニングを施すことにより、配線層20が形成される。
【0040】
次いで、
図11に示すように、配線層20に導通する複数の発熱部31を含む抵抗体層30を形成する。抵抗体層30の形成にあたっては、まず、金属元素を含むペーストをx方向に延びる帯状に厚膜印刷する。当該ペーストは、酸化ルテニウム粒子およびガラスフリットを含む。当該ペーストの厚膜印刷にあたっては、グレーズ層12および配線層20に当該ペーストが接するようにする。その後、当該ペーストを焼成する。最後に、当該ペーストの焼成物に対して抵抗値を調整するためのトリミングを適宜行うことにより、抵抗体層30が形成される。
【0041】
次いで、
図12に示すように、グレーズ層12に接するとともに、抵抗体層30、および配線層20の一部を覆う保護層40を形成する。保護層40は、第1基材401を含む非晶質ガラスと、粉体の第2基材402とが含有されたペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより形成される。
【0042】
図13は、焼成する前の保護層40の状態を示している。この状態においては、粉体である第2基材402が保護層40において離散している。
【0043】
保護層40を形成した後、グレーズ層12の上に駆動IC71をダイボンディングにより搭載する。次いで、複数のワイヤ50をワイヤボンディングにより形成し、その後、封止樹脂72を形成する。次いで、y方向に沿って基板11を切断する。最後に、基板11にコネクタ73および放熱部材74を取り付けることによって、サーマルプリントヘッドA10が得られる。
【0044】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作用効果について説明する。
【0045】
サーマルプリントヘッドA10の保護層40は、抵抗体層30の複数の発熱部31を覆うとともに、第1基材401および第2基材402を含む。第1基材401の組成は、二酸化ケイ素である。第2基材402の熱伝導率は、第1基材401の熱伝導率よりも高い。さらに保護層40に対する重量パーセントは、第1基材401よりも第2基材402の方が大きい。本構成をとることにより、サーマルプリントヘッドA10に対する記録媒体81(
図3参照)の摩擦抵抗を低減しつつ、複数の発熱部31から記録媒体81に伝導する熱の損失をより小さくすることができる。したがって、サーマルプリントヘッドA10によれば、記録媒体81との摩擦抵抗を低減しつつ、印字効率の向上を図ることが可能となる。
【0046】
保護層40が上述の作用効果を発揮するためには、保護層40に対する第2基材402の重量パーセントが50%以上95%以下であることが好ましい。保護層40に対する第2基材402の重量パーセントが50%未満である場合、サーマルプリントヘッドA10が使用される環境においては、保護層40における熱の損失を十分に小さくするという効果が発揮し難くなるおそれがある。
【0047】
保護層40は、配線層20の少なくとも一部を覆っている。これにより、電流に起因した配線層20の熱抵抗の増加を抑制しつつ、サーマルプリントヘッドA10に対する記録媒体81の摩擦抵抗をより低減できる。
【0048】
保護層40においては、第2基材402のビッカース硬さを第1基材401のビッカース高さよりも高く設定することができる。これにより、記録媒体81の繰り返し接触に起因した保護層40の摩耗を抑制することができる。
【0049】
グレーズ層12は、抵抗体層30の複数の発熱部31から発した熱の一部を蓄熱する機能を有する。たとえばサーマルプリントヘッドA10を寒冷地において使用する場合、グレーズ層12の蓄熱機能により複数の抵抗体層30の急激な温度低下を抑制できる。これにより、印字効率の悪化を防止できる。本構成においては、グレーズ層12が基板11の主面111の全体を覆っていることが好ましい。
【0050】
さらに、グレーズ層12が上述の作用効果を発揮するためには、グレーズ層12の熱伝導率が第2基材402の熱伝導率よりも低いことが好ましい。
【0051】
〔第2実施形態〕
図14および
図15に基づき、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA20について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図14の断面位置は、サーマルプリントヘッドA10を示す
図6の断面位置と同一である。
図15の断面位置は、サーマルプリントヘッドA10を示す
図7の断面位置と同一である。
【0052】
サーマルプリントヘッドA20においては、配線層20および抵抗体層30の構成が、先述したサーマルプリントヘッドA10の当該構成と異なる。
【0053】
図14および
図15に示すように、サーマルプリントヘッドA20においては、抵抗体層30は、z方向においてグレーズ層12と配線層20との間に位置する。したがって、抵抗体層30は、共通配線21の複数の第1帯状部211と、複数の個別配線22の第2帯状部221との下を潜っている。サーマルプリントヘッドA20は、
図10に示す配線層20を形成する工程の前に、
図11に示す抵抗体層30を形成する工程を設定することによって得られる。
【0054】
次に、サーマルプリントヘッドA20の作用効果について説明する。
【0055】
サーマルプリントヘッドA20の保護層40は、抵抗体層30の複数の発熱部31を覆うとともに、第1基材401および第2基材402を含む。第1基材401の組成は、二酸化ケイ素である。第2基材402の熱伝導率は、第1基材401の熱伝導率よりも高い。さらに保護層40に対する重量パーセントは、第1基材401よりも第2基材402の方が大きい。したがって、サーマルプリントヘッドA10によっても、記録媒体81との摩擦抵抗を低減しつつ、印字効率の向上を図ることが可能となる。さらに、サーマルプリントヘッドA20は、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成を具備することにより、サーマルプリントヘッドA10と同等の作用効果を奏する。
【0056】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0057】
本開示によって提供されるサーマルプリントヘッドの技術的構成について、以下に付記する。
[付記1]
基板と、
主走査方向に配列された複数の発熱部を含むとともに、前記基板の上に配置された抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、
前記複数の発熱部を覆う保護層と、を備え、
前記保護層には、第1基材および第2基材が含有されており、
前記第1基材の組成は、二酸化ケイ素であり、
前記第2基材の熱伝導率は、前記第1基材の熱伝導率よりも高く、
前記保護層に対する重量パーセントは、前記第1基材よりも前記第2基材の方が大きい、
[付記2]
前記保護層は、前記配線層の少なくとも一部を覆っている、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記3]
前記第2基材の組成は、ケイ素である、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記4]
前記第2基材のビッカース硬さは、前記第1基材のビッカース硬さよりも高い、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記5]
前記第2基材の組成は、炭化ケイ素である、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記6]
前記保護層に対する前記第2基材の重量パーセントは、50%以上95%以下である、付記2ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記7]
前記基板の厚さ方向において前記基板と前記配線層との間に位置するグレーズ層をさらに備え、
前記配線層は、前記グレーズ層に接している、付記1ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記8]
前記保護層は、前記グレーズ層に接している、付記7に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記9]
前記基板は、前記グレーズ層に対向する主面を有し、
前記主面は、前記グレーズ層に接している、付記7または8に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記10]
前記グレーズ層は、前記主面の全体を覆っている、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記11]
前記グレーズ層の熱伝導率は、前記第2基材の熱伝導率よりも低い、付記7ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記12]
前記配線層は、共通配線、および複数の個別配線を含み、
前記共通配線は、前記抵抗体層に対して副走査方向に離れて位置し、かつ前記主走査方向に延びる連結部と、前記連結部から前記抵抗体層に向けて延びる複数の第1帯状部と、を有し、
前記複数の個別配線は、前記副走査方向に延びる第2帯状部を有し、
前記第2帯状部は、前記複数の第1帯状部のうち前記主走査方向において隣り合う2つの第1帯状部の間に位置する、付記1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記13]
前記抵抗体層は、前記複数の第1帯状部、および前記第2帯状部に交差している、付記12に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記14]
前記抵抗体層は、前記複数の第1帯状部、および前記第2帯状部を跨いでいる、付記13に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記15]
前記基板の厚さ方向において前記基板に対して前記抵抗体層とは反対側に位置する放熱部材をさらに備え、
前記基板は、前記放熱部材に接合されている、付記1ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【符号の説明】
【0058】
A10,A20:サーマルプリントヘッド
11:基板
111:主面
12:グレーズ層
20:配線層
21:共通配線
211:第1帯状部
211A:基部
211B:延出部
212:連結部
22:個別配線
221:第2帯状部
221A:基部
221B:延出部
222:中間部
222A:平行部
222B:斜行部
223:接続部
223A:第1接続部
223B:第2接続部
30:抵抗体層
31:発熱部
40:保護層
401:第1基材
402:第2基材
50:ワイヤ
71:駆動IC
72:封止樹脂
73:コネクタ
74:放熱器
81:記録媒体
82:プラテンローラ