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  • 特開-逆止弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077130
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
F16K15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190296
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】野原 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓也
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA05
3H058BB03
3H058BB32
3H058BB35
3H058CA06
3H058CA22
3H058CB06
3H058CB29
3H058CC02
3H058CC15
3H058CD05
3H058CD25
(57)【要約】
【課題】高い密封性を確保しながらも、大きな流体圧力が作用しても逆流防止機能が失われないようにした逆止弁を提供する。
【解決手段】逆止弁1は、流体通路10を画定する内周面12を有する流路部材14と、流体通路10内において、流体通路10を閉止する閉止位置と流体通路10を開放する開放位置との間で変位可能に配置された弁体16と、弁体16の上流側端部34に配置された補強部材36と、を備える。流路部材14の少なくとも係止面50が形成されている部分と補強部材36とは、弁体16よりも剛性が高い材料により形成されている。弁体16が、上流側への力を受けて弁座面32に係合する弁体16の当接部30を変形させながら閉止位置からさらに上流側に変位したときに、補強部材36が係止面50に係合して弁体16を流路部材14に対して支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側開口、下流側開口、及び前記上流側開口から前記下流側開口に延びる流体通路を画定する内周面を有し、前記内周面に弁座面と前記弁座面よりも径方向内側に位置する係止面とが形成された流路部材と、
前記流体通路内において、前記弁座面に係合して前記流体通路を閉止する閉止位置と、前記弁座面から下流側に離れて前記流体通路を開放する開放位置との間で変位可能に配置された弁体と、
前記弁体の上流側端部に配置された補強部材と、
を備え、
前記流路部材の少なくとも前記係止面が形成されている部分と前記補強部材とが、前記弁体よりも剛性が高い材料により形成されており、
前記弁体が上流側への力を受けて前記弁体の前記弁座面に係合する部分を変形させながら前記閉止位置からさらに上流側に変位したときに、前記補強部材が前記係止面に係合して前記弁体を前記流路部材に対して支持するようにされた、逆止弁。
【請求項2】
前記補強部材が前記係止面に係合したときに、前記補強部材が前記係止面において前記流体通路を塞ぐようにされた、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記弁体が、前記弁体の上流側端面の径方向中心位置から下流側に延びる取付穴を有し、
前記補強部材が、前記取付穴に挿入されて前記弁体に固定されるようにされた、請求項1又は2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁体が樹脂材料により形成され、前記流路部材と前記補強部材とが金属材料により形成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の逆流を防止するための逆止弁は、通常、流体通路を有する流路部材と、流体通路内において流体通路を閉止する閉止位置と流体通路を開放する開放位置との間で変位可能に配置された弁体とを備える。弁体は、スプリングによって上流側に付勢され、閉止位置においてはスプリングの付勢力によって流路部材の弁座面に押し付けられて密封係合した状態となる。また弁体は、下流側からの流体圧力によっても弁座面に押し付けられる。比較的に低い圧力の流体を対象とする逆止弁においては、ゴムなどの弾性材料で形成されたシールリングを弁体に取り付けて弁座面との間に挟まれるようにすることで、比較的に小さな押圧力でも弁体と弁座面との間が密封されるようにしている。しかしながら、高圧流体を対象とする逆止弁においては、高圧流体によってシールリングが外れたり強い力が作用してシールリングが破損したりする虞があるため、シールリングを使用せずに剛性の高い金属材料で形成された弁体と弁座面を直接当接させる、いわゆるメタルシール構造を採用することが多い(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-94962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剛性の高い金属同士を直接当接させるメタルシール構造は、高い耐圧特性を有するが、当接時に弾性変形が生じにくいため十分な密封性を実現するためには弁体と弁座面を高精度に形成する必要がある。また、弁体が弁座面に衝突した時に比較的に大きな音が生じやすく、特にチャタリングが生じた場合には騒音が問題となることがある。一方で、弁体を剛性の低い材料(例えば樹脂材料)により形成すれば、当接時に弁体が弁座面にならって弾性変形しやすくなって高い密封性を比較的に容易に実現することができ、また衝突時の音を軽減することもできる。しかしながら、弁体が剛性の低い材料により形成されていることにより、閉止状態において下流側から過大な流体圧力が作用したときに弁体が破損して逆流防止機能が失われ、高圧流体が上流側に勢いよく吹き出してしまう危険性が高くなる。
【0005】
そこで本発明は、高い密封性を確保しながらも、大きな流体圧力が作用しても逆流防止機能が失われないようにした逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
上流側開口、下流側開口、及び前記上流側開口から前記下流側開口に延びる流体通路を画定する内周面を有し、前記内周面に弁座面と前記弁座面よりも径方向内側に位置する係止面とが形成された流路部材と、
前記流体通路内において、前記弁座面に係合して前記流体通路を閉止する閉止位置と、前記弁座面から下流側に離れて前記流体通路を開放する開放位置との間で変位可能に配置された弁体と、
前記弁体の上流側端部に配置された補強部材と、
を備え、
前記流路部材の少なくとも前記係止面が形成されている部分と前記補強部材とが、前記弁体よりも剛性が高い材料により形成されており、
前記弁体が上流側への力を受けて前記弁体の前記弁座面に係合する部分を変形させながら前記閉止位置からさらに上流側に変位したときに、前記補強部材が前記係止面に係合して前記弁体を前記流路部材に対して支持するようにされた、逆止弁を提供する。
【0007】
当該逆止弁においては、閉止位置にある弁体に対して下流側から過大な流体圧力が作用するなどして大きな力が作用することにより弁体の弁座面に当接する部分が変形してしまった場合でも、補強部材が流路部材の係止面に係合して弁体を流路部材に対して支持するようになるため、弁体がそれ以上に変形しながら上流側に変位することを防止するこができる。これにより、弁体が破損して逆流防止機能が失われることを防止して、流体が上流側に逆流してしまうことを阻止することが可能となる。一方で、弁体は比較的に剛性の低い材料で形成することができるため、弁座面との間での高い密封性を容易に実現することができ、また剛性の高い金属で形成した場合に比べて、弁体が弁座面に衝突したときの音を小さくすることもできる。
【0008】
また、前記補強部材が前記係止面に係合したときに、前記補強部材が前記係止面において前記流体通路を塞ぐようにすることができる。
【0009】
補強部材が流体通路を塞ぐことにより、弁体が補強部材を越えて上流側に変形していくことをより確実に防止することが可能となる。
【0010】
また、前記弁体が、前記弁体の上流側端面の径方向中心位置から下流側に延びる取付穴を有し、前記補強部材が、前記取付穴に挿入されて前記弁体に固定されるようにすることができる。
【0011】
さらに、前記弁体が樹脂材料により形成され、前記流路部材と前記補強部材とが金属材料により形成されているようにすることができる。
【0012】
以下、本発明に係る逆止弁の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る逆止弁の閉止状態における断面図である。
図2】補強部材の側面図である。
図3図1の逆止弁の開放状態における断面図である。
図4図1の逆止弁において、弁体が変形して補強部材が流路部材の係止面に係合した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る逆止弁1は、図1に示すように、流体通路10を画定する内周面12を有する流路部材14と、流体通路10内において長手軸線Lの方向で変位可能に配置された弁体16とを備える。流体通路10は、上流側開口18から下流側開口20にまで長手軸線Lに沿って延びている。流体通路10内にはさらに、流路部材14の内周面12に取り付けられた支持部材22、及び弁体16と支持部材22との間に設定されたスプリング24が設けられている。支持部材22は、内周面12の環状凹部26に固定されたストップリング28によって保持されている。弁体16はスプリング24によって上流側に付勢されており、弁体16の当接部30が流路部材14の内周面12に形成された弁座面32に押し付けられる。弁体16の当接部30が弁座面32に密封係合することにより、流体通路10は閉止された状態となっている。なお、当該実施形態においては、流路部材14は、金属材料(例えば、ステンレススチール)により形成されており、弁体16は樹脂材料(例えば、高強度樹脂)により形成されている。弁体16が、金属材料に比べて剛性の低い樹脂材料により形成されていることにより、弁体16が弁座面32に押し付けられたときに弁体16が弁座面32にならって弾性変形し、これにより弁体16と弁座面32との間の密封性が高くなる。
【0015】
当該逆止弁1はさらに、弁体16の上流側端部34に配置された補強部材36を備える。補強部材36は、円柱状の本体部38と本体部38から延びる雄ネジ部40とを有する。弁体16には、その上流側端面42の径方向中心位置から下流側に延びる取付穴44が形成されており、この取付穴44の一部に雌ネジ部46が形成されている。補強部材36は、取付穴44内に挿入して雄ネジ部40を雌ネジ部46に螺合することにより弁体16に固定されている。なお、補強部材36の本体部38には、図2に示すように、上流側に突出するように設けられた工具係合部48が形成されており、レンチなど工具を工具係合部48に係合させて補強部材36を回転させることにより、補強部材36を弁体16に螺合させることができるようになっている。
【0016】
上流側開口18における流体圧力がスプリング24の付勢力と下流側開口20における流体圧力とを合わせた力よりも小さいときには、弁体16は、スプリング24の付勢力と下流側開口20の側からの流体圧力とによって流路部材14の弁座面32に押し付けられて流体通路10を閉止する閉止位置となる。上流側開口18の流体圧力がスプリング24の付勢力と下流側開口20における流体圧力とを合わせた力を超えると、図3に示すように、弁体16は弁座面32から下流側に離れて流体通路10を開放した開放位置に変位する。これにより、流体が上流側開口18から下流側開口20に向かって流れるようになる。
【0017】
上流側開口18からの流体の供給が停止するなどして上流側開口18での流体圧力が低下すると、弁体16はスプリング24の付勢力と下流側開口20の側からの流体圧力とによって上流側に押されて図1の閉止位置に戻り、流体通路10を再び閉止する。これにより、下流側開口20から上流側開口18に流体が逆流することが防止される。ここで、スプリング24及び下流側の流体から弁体16が受ける力は、弁座面32に当接している当接部30に集中することになる。下流側からの流体圧力が仕様範囲内であれば弁体16の当接部30が変形することはないはずであるが、何らかの原因によりそれを大きく超える過大な流体圧力が弁体16に作用すると、弁体16の当接部30が変形することが起こり得る。そうすると弁体16は図1の閉止位置からさらに上流側に変位する。弁体16の変形量が大きくなり上流側への弁体16の変位量が一定以上になると、図4に示すように、補強部材36が流路部材14の内周面12に形成された係止面50に当接する。この係止面50は、弁座面32よりも上流側の位置で径方向内側に形成されている。上述のように、補強部材36は弁体16の樹脂材料よりも剛性の高い金属材料により形成されているため、弁体16が変形するほどの力であっても補強部材36は変形しないようにできる。これにより、補強部材36が弁体16を流路部材14に対して支持する状態となり、弁体16が上流側にそれ以上に変位することが阻止される。特に、補強部材36は係止面50に係合したときに係止面50において流体通路10を塞いだ状態となるため、弁体16を構成する樹脂材料が補強部材36を越えて上流側に変形することがない。
【0018】
このように当該逆止弁1においては、閉止状態において下流側から過大な流体圧力が作用して弁体16が変形した場合でも、剛性の高い材料で形成された補強部材36が流路部材14の係止面50に係合して弁体16を支持するようになっているため、弁体16がさらに変形して破損することを防止することができる。これにより、非常に大きな流体圧力が作用しても逆止弁1の逆流防止機能は失われず、高圧流体が上流側に逆流してしまうことがないようにすることが可能となる。また、弁体16を比較的に剛性が低くて弾性が高い材料で形成することができるため、高い密封性を比較的に容易に実現することができ、また弁体16を剛性の高い金属材料で形成した場合に比べて弁体16の衝突時の音を低減することもできる。
【0019】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、流路部材及び補強部材と弁体とをそれぞれ構成する材料は、上述の金属材料と樹脂材料には限定されず、流体の種類や圧力、温度などの使用条件を考慮して他の金属材料や樹脂材料により構成することができる。また、流路部材及び補強部材は必ずしも金属材料により形成される必要はなく、例えばそれほど高い圧力の流体が流れないのであれば比較的に剛性の高い樹脂材料により形成し、弁体をそれよりも剛性の低い他の樹脂材料やゴム材料などで形成することもできる。すなわち、各部材を形成する材料は、流路部材及び補強部材が弁体よりも剛性の高い材料により形成されるのであれば、使用条件に合わせて適宜最適な材料を選択することができる。また、流路部材はその全体が弁体に比べて剛性の高い材料で形成される必要は必ずしもなく、少なくとも係止面が形成されている部分がそのような材料で形成されていることが重要である。本発明の逆止弁は、酸素や水素などの気体、水や化学薬品のような液体、又は気液混合流体など、種々の流体に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 逆止弁
10 流体通路
12 内周面
14 流路部材
16 弁体
18 上流側開口
20 下流側開口
22 支持部材
24 スプリング
26 環状凹部
28 ストップリング
30 当接部
32 弁座面
34 上流側端部
36 補強部材
38 本体部
40 雄ネジ部
42 上流側端面
44 取付穴
46 雌ネジ部
48 工具係合部
50 係止面
L 長手軸線
図1
図2
図3
図4