(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077133
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】車両用空調装置の排水構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
B60H1/32 613K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190302
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】320014857
【氏名又は名称】ハイリマレリジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青鹿 誠
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】梁島 弘道
(72)【発明者】
【氏名】佃 隆治
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA14
3L211BA26
3L211DA09
(57)【要約】
【課題】蒸発器が駆動源室内に設けられ、凝縮水を外部に排出するための開口部がカバーに設けられた場合にも、車外騒音の車室内への侵入を抑制する。
【解決手段】エンジンが収容されるエンジンルーム2と乗員が乗車する車室3とを隔てる隔壁4と、エンジンルーム2に配置され、車室3内に供給される空気を冷媒との熱交換によって冷却する蒸発器11と、車室3の前方から隔壁4に取り付けられ、蒸発器11を収容するカバー30と、を備える車両1の空調装置5の排水構造100は、カバー30を挿通してカバー30の取り付け方向に延在し、蒸発器11にて生じる凝縮水を外部に排出するドレン管50を備え、ドレン管50は、下端部から延在方向に沿って徐々に上方に向かうように傾斜して形成されるスリット64を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源が収容される駆動源室と乗員が乗車する車室とを隔てる隔壁と、前記駆動源室に配置され、前記車室内に供給される空気を冷媒との熱交換によって冷却する蒸発器と、前記車室の前方から前記隔壁に取り付けられ、前記蒸発器を収容するカバーと、を備える車両の車両用空調装置の排水構造であって、
前記カバーを挿通して前記カバーの取り付け方向に延在し、前記蒸発器にて生じる凝縮水を外部に排出するドレン管を備え、
前記ドレン管は、下端部から延在方向に沿って徐々に上方に向かうように傾斜して形成されるスリットを有する、
ことを特徴とする車両用空調装置の排水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置の排水構造であって、
前記ドレン管は、先端に設けられ前記下端部から前記延在方向に沿って徐々に上方に向かうように傾斜する傾斜部を有し、
前記スリットは、前記傾斜部に設けられる、
ことを特徴とする車両用空調装置の排水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用空調装置の排水構造であって、
前記スリットは、通常状態では開口しておらず凝縮水が所定量溜まると当該凝縮水の圧力によって開口する、
ことを特徴とする車両用空調装置の排水構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用空調装置の排水構造であって、
前記ドレン管は、前記蒸発器にて生じる凝縮水を前記延在方向に導くガイド部と、
前記ガイド部の先端に取り付けられ、前記スリットが設けられる排水プラグと、
を有する、
ことを特徴とする車両用空調装置の排水構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置の排水構造であって、
前記排水プラグは、当該排水プラグと開口部との間をシールするフランジ部を有する、
ことを特徴とする車両用空調装置の排水構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の車両用空調装置の排水構造であって、
前記ドレン管は、前記蒸発器にて生じる凝縮水が供給される基端部よりも前記スリットが設けられる先端部が下方に位置するように水平面に対して第1所定角度だけ傾斜して設けられ、
前記スリットは、前記水平面に対して前記第1所定角度よりも大きな第2所定角度だけ傾斜するように設けられる、
ことを特徴とする車両用空調装置の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内空間を拡げるために送風機や蒸発器など車両用空調装置の構成部品の一部をエンジンルーム内に配置し、当該構成部品を収容するカバーを設けて車外騒音が車室内に侵入することを防止する車両用空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸発器をエンジンルーム(駆動源室)内に設ける際には、蒸発器にて生じる凝縮水を外部に排出するためにカバーに開口部を設ける必要があるが、開口部を設けると当該開口部を通じて車外騒音が車室内へ侵入するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、蒸発器が駆動源室内に設けられ、凝縮水を外部に排出するための開口部がカバーに設けられた場合にも、車外騒音の車室内への侵入を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、駆動源が収容される駆動源室と乗員が乗車する車室とを隔てる隔壁と、前記駆動源室に配置され、前記車室内に供給される空気を冷媒との熱交換によって冷却する蒸発器と、前記車室の前方から前記隔壁に取り付けられ、前記蒸発器を収容するカバーと、を備える車両の車両用空調装置の排水構造は、前記カバーを挿通して前記カバーの取り付け方向に延在し、前記蒸発器にて生じる凝縮水を外部に排出するドレン管を備え、前記ドレン管は、下端部から延在方向に沿って徐々に上方に向かうように傾斜して形成されるスリットを有する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様では、カバーを挿通してカバーの取り付け方向に延在して凝縮水を外部に排出するドレン管が設けられ、ドレン管は、延在方向に沿って下端部から斜め上方に向かって傾斜するスリットを有する。そのため、カバーを隔壁に取り付けるときに、ドレン管をカバーに挿通させる必要があるが、カバーにはドレン管が挿通する大きさの開口部が設けられていればよい。よって、カバーに設けられる開口部を小さくすることができる。したがって、蒸発器が駆動源室内に設けられ、凝縮水を外部に排出するための開口部がカバーに設けられた場合にも、車外騒音の車室内への侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る排水構造が適用される車両の要部の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、車両用空調装置における排水構造近傍の断面図である。
【
図3】
図3は、排水構造における排水部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る車両用空調装置の排水構造(以下、単に「排水構造」と称する。)100が適用される車両1について説明する。
【0010】
まず、
図1及び
図2を参照して、車両1の全体構成について説明する。
図1は、排水構造100が適用される車両1の要部の分解斜視図である。
図2は、車両1における排水構造100近傍の断面図である。
図1では、X軸は、車両長さ方向(前後方向)であり、Y軸は、車幅方向(左右方向)であり、Z軸は、車両高さ方向(上下方向)である。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。
【0011】
図1に示すように、車両1は、駆動源室としてのエンジンルーム(電気自動車の場合にはモータルーム)2と、車室3と、隔壁4と、車両用空調装置(以下、単に「空調装置」と称する。)5と、カバー30と、を有する。
【0012】
エンジンルーム2は、車両1の前部に設けられる。エンジンルーム2には、車両1の駆動輪(図示省略)を駆動するための駆動源としてのエンジン(図示省略)や電動モータ(図示省略)などが収容される。
【0013】
車室3は、エンジンルーム2の後ろに設けられる。即ち、エンジンルーム2と車室3とは、車両1の前後方向に並ぶように設けられる。車室3には、乗員が乗車する。
【0014】
隔壁4は、エンジンルーム2と車室3とを隔てる。隔壁4は、エンジンルーム2内の騒音や車両1の外部の騒音が車室3内に侵入することを防止する。隔壁4には、貫通部4aが設けられる。
【0015】
空調装置5は、HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット6と、冷凍サイクル回路10(
図2参照)と、排水構造100と、を有する。
【0016】
HVACユニット6は、空調に用いられる空気が通過するものである。HVACユニット6は、ケース7と、空調装置本体8と、内外気切替装置9と、送風機23と、を有する。
【0017】
一般的な空調装置では、HVACユニット6は、すべての構成部品が車室3内の前部(隔壁4の後部)に配置されており、インストルメントパネル(図示省略)によって上から覆われることで、車室3内の乗員から見えないように隠されている。
【0018】
これに対して、空調装置5では、HVACユニット6は、エンジンルーム2と車室3とに分割して配置され、隔壁4の貫通部4aを通じて連結されている。具体的には、空調装置5では、送風機23と冷凍サイクル回路10の後述する蒸発器11(
図2参照)とがエンジンルーム2内に設けられ、内外気切替装置9などの他の構成部品が車室3内に設けられている。このように、空調装置5では、構成部品の一部をエンジンルーム2内に配置することで、車室3内の空間を広くしている。
【0019】
ケース7は、送風機23と、蒸発器11(
図2参照)と、を収容する。ケース7は、空調に用いられる空気が通過する内部空間を画成する。
【0020】
送風機23は、電動モータ(図示省略)によって回転駆動される。送風機23は、車室3内の空気と外気とをHVACユニット6内に取り込む。
【0021】
空調装置本体8は、前側部分8aと、後側部分8bと、を有する。前側部分8aは、エンジンルーム2内に配置される。前側部分8aには、蒸発器11が収容される。後側部分8bは、車室3内に収容される。後側部分8bには、車室3内のどこの吹出口から空気を吹き出すかを切り換える吹出口切替装置(図示省略)が設けられる。
【0022】
内外気切替装置9は、内気取込口9aと、外気取込口9bと、フィルタ53と、を有する。内気取込口9aからは、車室3内の空気が取り込まれる。外気取込口9bからは、車両1の外の空気(外気)が取り込まれる。内外気切替装置9は、内気取込口9aと外気取込口9bとのどちらから空気を取り込むかを切り換える。
【0023】
フィルタ53は、内外気切替装置9内に着脱可能に取り付けられている。フィルタ53は、送風機23がHVACユニット6内に取り込んだ空気から微物を除去し、空気を浄化するものである。
【0024】
冷凍サイクル回路10は、圧縮機(図示省略)と、凝縮器(図示省略)と、膨張弁(図示省略)と、蒸発器11と、を有する。冷凍サイクル回路10では、圧縮機にて気相冷媒を圧縮して高温高圧にし、凝縮器にて外気との熱交換によって冷媒を凝縮して液化させ、膨張弁にて液相冷媒を減圧膨張させ、蒸発器11にて空調に用いられる空気との熱交換によって冷媒を蒸発させる。
【0025】
蒸発器11は、HVACユニット6内に設けられ、車室3内に供給される空気を冷媒との熱交換によって冷却及び除湿する。そのため、蒸発器11の表面には、空気中の水蒸気が凝縮した凝縮水が発生する。この凝縮水を外部に排出するために、空調装置5には排水構造100が設けられる。
【0026】
図2に示すように、排水構造100は、ドレン管50を備える。
【0027】
ドレン管50は、後述するカバー本体31の取り付け方向に沿って延在する。ドレン管50は、蒸発器11にて生じる凝縮水を外部に排出する。以下では、カバー本体31の「取り付け方向」のことを、ドレン管50が延在する方向である「延在方向」とも称する。ドレン管50は、先端に設けられ下端部から延在方向に沿って徐々に上方に向かうように傾斜する傾斜部63を有する。ドレン管50は、ガイド部51と、排水プラグ60と、を有する。
【0028】
ガイド部51は、円筒形状に形成される。ガイド部51の内周には、凝縮水が通過する凝縮水通路52が形成される。ガイド部51は、ケース7の内部と外部とを延在方向に連通させる。ガイド部51は、蒸発器11にて生じる凝縮水を延在方向に導く。
【0029】
排水プラグ60は、ガイド部51の先端に取り付けられる。排水プラグ60には、スリット64が設けられる。
【0030】
図2には、水平面Pと、ドレン管50(排水プラグ60)の中心線Qと、を示している。中心線Qは、取り付け方向(延在方向)と同じ向きに延びている。ドレン管50は、蒸発器11にて生じる凝縮水が供給される基端部50aよりもスリット64が設けられる先端部50bが下方に位置するように水平面Pに対して第1所定角度としての角度α[deg]だけ傾斜して設けられる。スリット64は、水平面Pに対して第2所定角度としての角度β[deg]だけ傾斜するように設けられる。角度αは、例えば5[deg]であり、角度βは、例えば40[deg]である。即ち、角度βは、角度αよりも大きい。角度α及び角度βをこのように設定することによって、排水プラグ60が大きくなることを抑制しながら、凝縮水の排水性を確保できる。排水プラグ60の具体的な構成については、
図3から
図7を参照しながら、後で詳細に説明する。
【0031】
図1に示すように、カバー30は、エンジンルーム2内に設けられて隔壁4に取り付けられる。カバー30は、車室3の前方から後ろに向かって取り付け方向(
図2参照)に沿って取り付けられる。カバー30は、送風機23や蒸発器11などのエンジンルーム2内に配置される空調装置5の構成部品を収容する。カバー30は、隔壁4に形成される貫通部4aをすべて隠すように覆う。カバー30は、エンジンルーム2内の騒音や車両1の外部の騒音が貫通部4aを通じて車室3内に侵入することを防止する。カバー30は、カバー本体31と、蓋部32と、を有する。
【0032】
カバー本体31は、上部開口部31aと、開口部としての挿通孔33と、を有する。上部開口部31aは、エンジンルーム2内にてカバー本体31の上部に開口する。上部開口部31aが設けられることによって、カバー30の上方から送風機23にアクセスできるので、送風機23のメンテナンスを容易にできる。
【0033】
挿通孔33は、カバー本体31の前面に円形に開口する。挿通孔33は、カバー30の内部と外部とを延在方向に連通させる。挿通孔33には、ドレン管50の排水プラグ60が挿通する。
【0034】
このように、カバー30を挿通してカバー30の取り付け方向に延在して凝縮水を外部に排出するドレン管50が設けられる。そのため、カバー30を隔壁4に取り付けるときに、ドレン管50をカバー30に挿通させる必要があるが、カバー30にはドレン管50が挿通する大きさの挿通孔33が設けられていればよい。よって、カバー30に設けられる挿通孔33を小さくすることができる。したがって、蒸発器11がエンジンルーム2内に設けられ、凝縮水を外部に排出するための挿通孔33がカバー30に設けられた場合にも、車外騒音の車室3内への侵入を抑制することができる。
【0035】
蓋部32は、カバー本体31の上部開口部31aを上部から閉塞する。蓋部32は、前方に向かって低くなるように傾斜する傾斜部34を有する。隔壁4には貫通部4aが開口しているが、蓋部32が取り付けられた状態では、隔壁4とカバー本体31と蓋部32とによって、エンジンルーム2と車室3とが完全に隔離される。
【0036】
次に、
図3から
図7を参照して、排水構造100における排水プラグ60について具体的に説明する。
図3は、排水構造100における排水プラグ60の正面図である。
図4は、
図3における左側面図である。
図5は、
図3における底面図である。
図6は、
図3におけるVI-VI断面図である。
図7は、
図5におけるVII-VII断面図である。
【0037】
図3に示すように、排水プラグ60は、直管部61と、排水部62と、傾斜部63と、スリット64と、フランジ部65と、傾斜面66と、を有する。排水プラグ60の基端部60aは、直管部61に取り付けられる。排水プラグ60の先端部60bは、ドレン管50の先端部50bを構成する(
図2参照)。排水プラグ60は、弾性を有するゴムや樹脂などのエラストマーによって形成される。
【0038】
直管部61は、排水プラグ60の基端部60aに設けられる。直管部61は、円形の断面形状を有する。直管部61は、ガイド部51の外周に嵌められる。
【0039】
排水部62は、直管部61から排水プラグ60の先端部60b側に連続して形成される、排水部62は、ガイド部51から車両1の前方に向かって突出する(
図2参照)。
図6及び
図7に示すように、排水部62は、直管部61よりも肉厚が小さく形成される。排水部62は、例えば0.5[mm]の肉厚に形成される。そのため、排水部62は、外部から水圧が作用したときに、直管部61よりも変形しやすい。排水部62には、傾斜部63と、スリット64と、傾斜面66と、が設けられる。
【0040】
傾斜部63は、排水部62の先端に設けられる。傾斜部63は、下端部から延在方向に沿って徐々に上方に向かうように直線的に傾斜する。
【0041】
図4に示すように、スリット64は、排水部62の左右方向中央に、上下方向に沿って形成される。スリット64は、傾斜部63に設けられる。
図3に示すように、スリット64は、下端部から延在方向に沿って徐々に上方に向かうように傾斜して形成される。スリット64は、開口幅を持たず、通常状態では開口していない。スリット64は、排水プラグ60内に凝縮水が所定量溜まると当該凝縮水の圧力によって排水部62が変形することで開口する。
【0042】
このように、排水構造100は、カバー30を挿通してカバー30の取り付け方向(前後方向)に延在して凝縮水を外部に排出するドレン管50を有する。そのため、例えばドレン管が上下方向に垂直に延在する場合と比較すると、凝縮水が排出されにくい。
【0043】
これに対して、ドレン管50には、延在方向に沿って下端部から斜め上方に向かうスリット64が設けられている。そのため、ドレン管50内に溜まった水の圧力は、スリット64の下部領域に作用し、凝縮水が所定量溜まると当該凝縮水の圧力によってスリット64が開口する。したがって、ドレン管50がカバー30の取り付け方向(前後方向)に延在している場合であっても、凝縮水の排水性を確保することができる。
【0044】
フランジ部65は、排水プラグ60の基端部60aに設けられる。フランジ部65は、直管部61の外周の全周から更に外周に向かって拡径されるように形成される。フランジ部65は、HVACユニット6のケース7とカバー30との間に挟持される(
図2参照)。これにより、排水プラグ60における直管部61の外周とカバー本体31における挿通孔33の内周との隙間がシールされる。よって、エンジンルーム2と車室3とを完全に隔離することができる。
【0045】
図4及び
図5に示すように、傾斜面66は、スリット64の左右に各々設けられる。傾斜面66は、排水部62における円形の断面形状を有する部分からスリット64に向かって傾斜する一対の平面である。傾斜面66が設けられることで、排水プラグ60が水中に入った場合に、水圧が傾斜面66に作用し、スリット64を閉じる方向の力が作用する。よって、排水プラグ60が水中に入った場合であっても、スリット64から排水プラグ60内に水が浸入することが防止される。
【0046】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0047】
エンジンが収容されるエンジンルーム2と乗員が乗車する車室3とを隔てる隔壁4と、エンジンルーム2に配置され、車室3内に供給される空気を冷媒との熱交換によって冷却する蒸発器11と、車室3の前方から隔壁4に取り付けられ、蒸発器11を収容するカバー30と、を備える車両1の空調装置5の排水構造100は、カバー30を挿通してカバー30の取り付け方向に延在し、蒸発器11にて生じる凝縮水を外部に排出するドレン管50を備え、ドレン管50は、下端部から延在方向に沿って徐々に上方に向かうように傾斜して形成されるスリット64を有する。
【0048】
この構成では、カバー30を挿通してカバー30の取り付け方向に延在して凝縮水を外部に排出するドレン管50が設けられる。そのため、カバー30を隔壁4に取り付けるときに、ドレン管50をカバー30に挿通させる必要があるが、カバー30にはドレン管50が挿通する大きさの挿通孔33が設けられていればよい。よって、カバー30に設けられる挿通孔33を小さくすることができる。したがって、蒸発器11がエンジンルーム2内に設けられ、凝縮水を外部に排出するための挿通孔33がカバー30に設けられた場合にも、車外騒音の車室3内への侵入を抑制することができる。
【0049】
また、ドレン管50には、延在方向に沿って下端部から斜め上方に向かうスリット64が設けられている。そのため、ドレン管50内に溜まった水の圧力は、スリット64の下部領域に作用し、凝縮水が所定量溜まると当該凝縮水の圧力によってスリット64が開口する。したがって、ドレン管50がカバー30の取り付け方向(前後方向)に延在している場合であっても、凝縮水の排水性を確保することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0051】
100 車両用空調装置の排水構造(排水構造)
1 車両
2 エンジンルーム(駆動源室)
3 車室
4 隔壁
4a 貫通部
5 車両用空調装置(空調装置)
11 蒸発器
30 カバー
33 挿通孔(開口部)
50 ドレン管
51 ガイド部
60 排水プラグ
60a 基端部
60b 先端部
62 排水部
63 傾斜部
64 スリット
65 フランジ部
P 水平面
α 第1所定角度
β 第2所定角度