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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077152
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】害獣捕獲具
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/34 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
A01M23/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190329
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】515027439
【氏名又は名称】工藤 まほ
(71)【出願人】
【識別番号】515027048
【氏名又は名称】河野 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三重野 丈一
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA32
2B121BA51
2B121BA58
(57)【要約】
【課題】害獣の脚体を捕縛する括り罠形式の害獣捕獲具であって、捕獲用ワイヤで害獣の脚体を捕縛する際に害獣の体勢を崩すことにより捕獲率を上げると共に、害獣の脚体を捕縛するための捕獲ワイヤの縮径作動をより円滑に行えることとした害獣捕獲具を提供する。
【解決手段】略方形状の捕獲フレームの左右の中央部に略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部をそれぞれ枢支し、捕獲フレーム内側に害獣の脚体の踏み込み作動により落下する踏板を左右一側のワイヤガイドに離反自在に係止すると共に、地上面に掘削した落し穴周縁部に捕獲フレームを係止支持するための突設片を捕獲フレームの周縁部の所定位置に突設し、しかも、略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部に左右側ワイヤガイドが相互に左右側同調して跳ね上げ作動するような跳ね上げ同調機構を介在することを特徴としたことで解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略方形状の捕獲フレームの左右の中央部に略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部をそれぞれ枢支し、
捕獲フレーム内側に害獣の脚体の踏み込み作動により落下する踏板を左右一側のワイヤガイドに離反自在に係止すると共に、
地上面に掘削した落し穴周縁部に捕獲フレームを係止支持するための突設片を捕獲フレームの周縁部の所定位置に突設し、
しかも、略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部に左右側ワイヤガイドが相互に左右側同調して跳ね上げ作動するような跳ね上げ同調機構を介在することを特徴とする落し穴周縁部に載置固定可能な害獣捕獲具。
【請求項2】
跳ね上げ同調機構は踏板と係合した左右一側のワイヤガイドの基端部を下半部突片とし、
左右他側のワイヤガイドの基端部を上半部突片として互いに左右の各突片をそれぞれ同調可能に係合させて構成したことを特徴とする請求項1に記載の落し穴周縁部に載置固定可能な害獣捕獲具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害獣が踏板を踏むことにより作動し、害獣の脚体を捕縛することができる害獣捕獲具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々様々な害獣捕獲具があり、その中で害獣の脚体をワイヤで縛ることで捕獲する括り罠と呼ばれるものがある。この括り罠の多くが、跳ね上げ式でありその主な構成として、ばねの張力を用いて環状に形成したワイヤを縮径せんとする罠本体と罠本体のワイヤを係止することで縮径動作を規制するガイド体を備えたフレームと害獣が踏み込むことでガイド体を跳ね上げワイヤへの規制を解除する踏板とからなる。
【0003】
この跳ね上げ式の括り罠の具体的な作動としては、地面に載置することで設置された括り罠の踏板を害獣が踏むことにより、ガイド体によるワイヤ縮径用のばねの規制を解除しばねの張力によって環状のワイヤの縮径が行われることで、害獣の脚体を捕縛することができる。
このような括り罠の先行技術として特許文献1や特許文献2に記載されるような括り罠装置がある。
【0004】
特許文献1の括り罠装置は、ワイヤの縮径を規制する跳ね上げフレーム(ガイド体)に突設させたワイヤ止めにより、ワイヤを引っ掛けて係止しており、害獣が踏板を踏むことで規制が解除されワイヤの縮径動作に伴い跳ね上げフレームが跳ね上げられることで害獣の脚体のより高い位置で捕縛し捕獲率を上げることを目的としている。
【0005】
また、ワイヤの縮径動作を規制する円弧状中央部(ガイド体)に跳ね上げ付勢のばねを設け踏板を害獣が踏み抜いた際に円弧状中央部の跳ね上げ速度を速めてワイヤの縮径動作がスムーズに行われるのように構成された括り罠に関する技術が特許文献2には開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-089294号公報
【特許文献2】実用新案登録3233888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及に記載された括り罠装置は、ワイヤの縮径作動の位置を跳ね上げフレームの跳ね上げ作動により害獣の脚体のより上方で行えるようにしたことで、捕獲率を高める効果がある。
しかしながら、括り罠装置の設置状態において跳ね上げフレームに地面と水平方向に突設したワイヤ止めにより、ワイヤを引っ掛けるようにして係止しているため、踏板を害獣が踏み抜き跳ね上げ作動した際に、ワイヤ止めにワイヤが引っかかり縮径動作を妨げる恐れがあり、妨げられたワイヤは縮径動作が遅れ捕獲率を下げる要因となる。
【0008】
また、従来の括り罠の多くが踏板の下方に位置する地面に穴を掘り害獣がそこへ踏み込むと穴に落ち込むように構成されていた。
特許文献1では、その穴を掘ることにより人の存在を害獣が感じやすくなることが捕獲率を下げる要因となるため、穴を掘らずとも害獣の脚体のより上方を捕縛できるようにしている旨が記載されている。
しかしながら、踏板の下方に穴が存在しないことで踏板を踏み抜いた害獣は地面に脚が付いた状態のままであることから地面による踏ん張りが効く状態にあり、上方へ抜け出る動作が速く行われる虞があるため、必ずしも捕獲率が高くなるとは云えない。
【0009】
特許文献2に記載された括り罠は、跳ね上げ付勢のばねを備えることで跳ね上げ作動が速くワイヤの縮径作動時の妨げとならないようにする効果がある。
しかしながら、括り罠の作動起点となる踏板は、4本の爪楊枝等の棒体により保持させており、害獣が踏むことでその棒体が折れ踏板を踏み抜くように構成されている。
そのため、踏み抜かれた踏板は、踏板下方に掘られた穴へほぼ地面と水平に落下することとなり害獣の足を真っ直ぐに下方へ落ち込ませることとなる。
すなわち、踏板を踏み抜いた害獣は、体勢を大きく崩されることが無いため動きの素早い個体はワイヤの縮径よりも速く足を上方へ引き抜きワイヤに捕縛されない虞がある。
【0010】
また、特許文献1及び特許文献2に記載された括り罠装置は、罠の作動時に跳ね上げられるワイヤ係止のガイド体(特許文献1では跳ね上げフレームと記載、特許文献2では円弧状中央部と記載。)が左右に分かれており、作動時に確実にワイヤの規制を解除できるように構成されている。
しかしながら、左右のガイド体は、それぞれが完全に独立した形状となっており、左右ガイド体の跳ね上げに係る速度が必ずしも同じとはならず、ガイド体の跳ね上げ速度のばらつきにより、ワイヤ縮径動作がスムーズに行うことができない要因となる虞がある。
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、害獣が踏板を踏んだ際に体勢を崩すことができると共に、踏板を踏むことで跳ね上げ作動する左右のワイヤガイドの跳ね上げ速度を同じとし罠本体のワイヤ縮径作動を妨げることがない害獣捕獲具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係る害獣捕獲具は、略方形状の捕獲フレームの左右の中央部に略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部をそれぞれ枢支し、捕獲フレーム内側に害獣の脚体の踏み込み作動により落下する踏板を左右一側のワイヤガイドに離反自在に係止すると共に、地上面に掘削した落し穴周縁部に捕獲フレームを係止支持するための突設片を捕獲フレームの周縁部の所定位置に突設し、しかも、略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部に左右側ワイヤガイドが相互に左右側同調して跳ね上げ作動するような跳ね上げ同調機構を介在することに特徴を有する。
【0013】
また、跳ね上げ同調機構は踏板と係合した左右一側のワイヤガイドの基端部を下半部突片とし、左右他側のワイヤガイドの基端部を上半部突片として互いに左右の各突片をそれぞれ同調可能に係合させて構成したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明係る害獣捕獲具によれば、跳ね上げ作動の左右側ワイヤガイドと害獣の踏み込み動作により落下する踏板との係止をワイヤガイドの左右一側としたことにより、踏板が落し穴へ落下する際に傾斜状態となり、踏板と共に落下する害獣の脚体も真っ直ぐに落下することができず害獣の体勢がより崩れることで、害獣の捕獲率を上昇させることができる。
【0015】
また、ワイヤ縮径作動を規制する左右側ワイヤガイドに跳ね上げ同調機構を備えることにより、左右側ワイヤガイドの跳ね上げ速度を確実に左右揃って行うことができ、ワイヤガイドから規制解除されたワイヤの縮径動作をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る害獣捕獲具の構成を示す模式的平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る捕獲フレームの構成を示す模式的平面図及び模式的正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るワイヤガイドの跳ね上げ状態を示す模式的正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る踏板の構成及び踏板の落下状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の要旨は、略方形状の捕獲フレームの左右の中央部に略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部をそれぞれ枢支し、捕獲フレーム内側に害獣の脚体の踏み込み作動により落下する踏板を左右一側のワイヤガイドに離反自在に係止すると共に、地上面に掘削した落し穴周縁部に捕獲フレームを係止支持するための突設片を捕獲フレームの周縁部の所定位置に突設し、しかも、略U字状の左右側ワイヤガイドの基端部に左右側ワイヤガイドが相互に左右側同調して跳ね上げ作動するような跳ね上げ同調機構を介在することにある。
【0018】
また、跳ね上げ同調機構は踏板と係合した左右一側のワイヤガイドの基端部を下半部突片とし、左右他側のワイヤガイドの基端部を上半部突片として互いに左右の各突片をそれぞれ同調可能に係合させて構成したことにも特徴を有する。
【0019】
[1.害獣捕獲具の構成について]
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る害獣捕獲具の一実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る害獣捕獲具の構成を示す模式的平面図であり本発明の要旨に含まないワイヤ縮径機構は省略して図示している。図2は、本実施形態の要旨である捕獲フレームの構成を示す図であり、(a)は捕獲フレームの模式的平面図を(b)は捕獲フレームの模式的正面図をそれぞれ表している。図3は、捕獲フレームを構成するワイヤガイドが害獣捕獲具の作動により跳ね上がった状態を示す模式的正面図である。図4は、捕獲フレームを構成する踏板の詳細と害獣捕獲具の作動により落し穴へ落下する状態を示す図であり、(a)は踏板の模式的正面図を(b)は踏板の落下状態を模式的正面図としてそれぞれ表している。
【0021】
本実施形態に係る害獣捕獲具Mは、図1に示すように、主に害獣捕獲具Mの作動時に捕獲ワイヤ110を縮径作動させ害獣の脚体を捕縛するよう構成されたワイヤ縮径機構100と、ワイヤ縮径機構100の捕獲ワイヤ110縮径動作を規制するワイヤガイド220を備えた捕獲フレーム200とから構成される。
【0022】
ワイヤ縮径機構100は、環状の捕獲ワイヤ110を縮径させ害獣の脚体を捕縛できるものであればどのような構成のものでもよく、例えば図1に示すように、環状の捕獲ワイヤ110と、捕獲ワイヤ110の縮径作動に付勢する縮径付勢ばね120と、縮径付勢ばね120の付勢力を規制する規制ストッパ130と、を最低限備えたものであればよい。
【0023】
捕獲フレーム200は、図1及び図2に示すように、主に略方形状のフレーム基台210と、フレーム基台210の上部に設けられた略コ字状で左右一対としたワイヤガイド220と、フレーム基台210に固定されると共にワイヤガイド220を回動自在に枢支する支持プレート250と、左右一対のワイヤガイド220に取付けワイヤガイド220の両端を上方へ向け跳ね上げるように付勢する跳ね上げ付勢ばね260と、フレーム基台210とワイヤガイド220とを挟み込むようにワイヤガイド220の跳ね上げ作動を規制する係止部232を備えた踏板230と、からなる。
【0024】
フレーム基台210は、図1及び図2に示すように、周縁部の所定位置(本実施形態では、図1の平面視において上下に2つずつ設けている)に害獣捕獲具Mを地面に載置して設置を行うための突設片240を備えている。
【0025】
突設片240は、フレーム基台210に一体に設けられる突設部241と突設部241にボルトナット等の固定具を用いて回動可能に設けられる載置足部242とからなる。
載置足部242は、回動可能に設けられることにより、害獣捕獲具Mを使用しない際には、図1の実線で示すように折畳んだ状態として収納時の邪魔とならないようにすることができる。また、害獣捕獲具Mの使用時には、固定具を緩めて図1の一点鎖線に示すように、回動させることにより、害獣捕獲具M設置時に掘削された落し穴Pの周縁部に係止させることができる。
また、載置足部242は、地面に対して杭を打ち込むことで害獣捕獲具Mをよりしっかりと固定することも考えられる。その際には、載置足部242に杭を打ち込むための挿通孔を穿設するとよい。
【0026】
フレーム基台210は、図2(b)の正面視に示すように、中央上部を略円弧状に切欠部211を設けている。
この切欠部211は、後述するワイヤガイド220の跳ね上げ同調機構221が作動する際の妨げにならないように設けられている。
【0027】
フレーム基台210に設けた切欠部211の裏側面、すなわちフレーム基台210の内縁にはビス等の固定具により支持プレート250が固定されている。
支持プレート250は、図2および図3に示すように、方形状の薄板材であり、フレーム基台210の中央2箇所(図1及び図2参照。)に支持プレート250の下部2箇所を固定具により固定されている。支持プレート250の上部2箇所には、それぞれ後述するワイヤガイド220を枢支するための枢軸251を備えている。
【0028】
ワイヤガイド220は略コ字状の右ガイド体220aと左ガイド体220bの2つをフレーム基台210に固定された支持プレート250の枢軸251により、フレーム基台210の中央付近で基端部を枢支されている。
右ガイド体220aは、フレーム基台210の中央付近で枢支されていることにより、図2(b)及び図3の正面視において反時計回りに回動可能としている。
左ガイド体220bは、右ガイド体220aと反対に図2(b)及び図3の正面視において時計回りに回動可能としている。
【0029】
コ字状のワイヤガイド220の角部にはワイヤ縮径機構100の捕獲ワイヤ110を係止するためのワイヤ係止溝212を設けている。
そのため、害獣捕獲具Mの作動前の状態、すなわち図1に示すように、ワイヤ縮径機構100を捕獲フレーム200に組付けた状態のときに、捕獲ワイヤ110が滑りワイヤガイド220から脱落しないように係止することができる。
また、ワイヤ係止溝212はワイヤガイド220に4か所(右ガイド体220aと左ガイド体220bとに2箇所ずつ)、すなわちワイヤガイド220全体に設けられるものではなく分散させて設けていることで、ワイヤガイド220の跳ね上げ作動時にワイヤガイド220と共に捕獲ワイヤ110も跳ね上げ作動前よりも、上方でワイヤガイド220から規制が解除されることとなる。
【0030】
また、ワイヤガイド220の基端部には、跳ね上げ同調機構221を形成している。
跳ね上げ同調機構221は、右ガイド体220a又は左ガイド体220bのどちらかを下半部突片221aとし、もう片方を上半部突片221bとしたものであり、互いに係合させることで跳ね上げ作動時に右ガイド体220aと左ガイド体220bとが同調するように構成されている。
本実施例では、左ガイド体220bに下半部突片221aを右ガイド体220aに上半部突片221bをそれぞれ形成したものとして説明を行う。
【0031】
下半部突片221aは、図2(b)に示すように、左ガイド体220bの基端部の下半部分を右方向へ延出させ形成される。
上半部突片221bは、下半部突片221aと対応するように、右ガイド体220aの基端部の上半部分を左方向へ延出させ形成される。
【0032】
下半部突片221aと上半部突片221bとは、図2(b)に示すように、互いに上下でかみ合うように係合している。
そのため、ワイヤガイド220の跳ね上げ作動に際して、上半部突片221bが下半部突片221aを上方から押し下げるような力が加わり右ガイド体220aと左ガイド体220bとが同調して跳ね上がり作動が常に一定の動きとなる。
【0033】
跳ね上げ付勢ばね260は、図1及び図2に示すように、コイルばね261とコイルばね261の両端部に設けられた取付け環体262とからなる。
跳ね上げ付勢ばね260は、ワイヤガイド220の跳ね上げ先端部(図2(b)における左右端部近傍)に穿設した取付け孔222に両端部の取付け環体262を連接して設けられる。すなわち、跳ね上げ付勢ばね260は、図1及び図2に示すように、右ガイド体220aと左ガイド体220bとを跨ぐようにして、害獣捕獲具Mの正面側と背面側の2箇所に設けられる。
【0034】
跳ね上げ付勢ばね260は、ワイヤガイド220が跳ね上げ作動前の状態、すなわち図1及び図2に示すような右ガイド体220aと左ガイド体220bとが水平状態にあるときに張力が働くように設けられる。
具体的には、図1及び図2に示すような右ガイド体220aと左ガイド体220bとが水平状態にあるとき、中央へ向かってばねが縮もうとする力が加わるように設けられる。
【0035】
ワイヤガイド220は、略中央で回動可能に枢支されているため、この跳ね上げ付勢ばね260の張力は取付け基端となるワイヤガイド220の跳ね上げ先端部に対して、斜め上に働くこととなる。すなわち、ワイヤガイド220を跳ね上げる方向へ付勢する力を働かせることができる。
【0036】
踏板230は、後述する係止部232により、ワイヤガイド220及びフレーム基台210に係止されると共に、ワイヤガイドの跳ね上げ作動を規制することができる。
また、この係止部232は、図(b)に示すように、ワイヤガイド220の跳ね上げ同調機構221の係止状態から下半部突片221aを備えた左ガイド体220b側、すなわち係り合う下半部突片221aと上半部突片221bとは同調しているため、下半部突片221aを形成した一側のみを係止するだけでもう一側の跳ね上げ作動を妨げ規制することができる。
【0037】
より具体的に踏板230は、図1図2及び図4(a)に示すように、方形状の薄板からなる踏板本体231と、踏板本体231をフレーム基台210及びワイヤガイド220に係止させるための係止部232とより構成される。
【0038】
踏板本体231は、ワイヤガイド220の内側(右ガイド体220aと左ガイド体220bとが向き合ってできる長方形の内側)に設けられ、尚且つ、害獣捕獲具Mの捕獲作動時には、害獣が踏み抜くことで下方へ落下するような構成とするため、ワイヤガイド220の内側及びフレーム基台210の内側よりも小さい方形状としている。
【0039】
係止部232は、踏板本体231の周縁部付近(本実施形態では図1に示すように、左縁部略中央)に設けられる。係止部232は、踏板本体231の上側に配設される上係止体233と、踏板本体231の下側に配設される下係止体234と、からなる。
上係止体233と下係止体234とは、踏板本体231を挟み込みボルトナット等の固定具により踏板本体231と一体となるように設けられる。
【0040】
上係止体233は、細板状に形成され、図4(a)に示すように、踏板本体231の外側へ突出させた突出部233aを備えている。
【0041】
下係止体234は、略L字の薄板状に形成され、図4に示すように、逆さにして直角部分を踏板本体231の外向きに取付けられる。また、下係止体234の下端部には、踏板本体231の外側へ向け延出させた延出部234aを備えている。
【0042】
すなわち、上係止体233と下係止体234とは、図4(b)に示すように、それぞれ踏板本体231の外側へ突出した突出部233aと延出部234aとが一定間隔をあけて平行に配設された状態となる。
この、突出部233aと延出部234aとにより、ワイヤガイド220及びフレーム基台210を上下で挟み込むようにして、踏板230をワイヤガイド220及びフレーム基台210に係止させることができる。また、突出部233aと延出部234aとが形成する上下の一定間隔は、フレーム基台210の高さとワイヤガイド220の高さの和とほぼ同じ広さとなっており、係止部232により踏板230を係止させる際に、同時に跳ね上げ付勢ばね260やワイヤ縮径機構100の応力により跳ね上げられようとするワイヤガイド220の動きを規制することができる。
【0043】
[2.害獣捕獲具の使用について]
次に、本実施形態に係る害獣捕獲具の使用状態と作動時の特徴について図面に基づいて説明する。
【0044】
まずは、本実施形態に係る害獣捕獲具Mの設置方法について説明する。
害獣捕獲具Mは図1に示すような、踏板230を係止させた状態を作動前として設置する。
具体的な設置方法としては、害獣捕獲具Mの設置場所に落し穴Pを掘削する。この落し穴Pは、図2(b)に示す正面視において、横幅は害獣捕獲具Mの横幅と同じほどの幅からやや大きい幅、奥行きは害獣捕獲具Mの奥行と同じほどもしくは少し小さめに掘削する。
【0045】
次に、害獣捕獲具Mを図4(b)に示すように、落し穴Pの上に載置する。載置する際には、フレーム基台210に設けた突設片240の載置足部242を任意の角度に開き落し穴Pの近傍の地面に対して載置させることにより、害獣捕獲具Mを係止支持させる。
本実施形態を示す図4(b)では、作動後の害獣捕獲具Mを図示しているが、このとき害獣捕獲具Mは図1に示すように、作動前の状態で載置させる。
【0046】
最後に、落し穴Pの上に載置させた状態の害獣捕獲具Mの上から落ち葉や砂等を被せて害獣捕獲具Mを隠したら設置が完了となる。
【0047】
次に、害獣捕獲具Mの作動状態について説明する。
上述したように設置が完了した害獣捕獲具Mは、イノシシ等の害獣が踏板230を踏むことにより、跳ね上げ作動の規制が解除される。跳ね上げ作動の規制が解除された害獣捕獲具Mは、ワイヤ縮径機構100と跳ね上げ付勢ばね260とが作用しワイヤガイド220を上方へ跳ね上げ、捕獲ワイヤ110が縮径し害獣の脚体を捕縛することとなる。
【0048】
より具体的には、害獣は落ち葉や砂等で隠された害獣捕獲具Mの踏板230部分を踏む。害獣に踏まれた踏板230は、害獣の荷重に係止部232が耐えることができずにワイヤガイド220及びフレーム基台210から外れ害獣捕獲具Mの下方に掘削した落し穴Pへ落下することとなる。
【0049】
この踏板230は、上述した害獣捕獲具Mの構成で述べたように、ワイヤガイド220の跳ね上げ同調機構221の特徴から右ガイド体220a又は左ガイド体220bのどちらか一方側にのみ係止されている(図1を参照。)ため、害獣が踏んだ際に確実に係止が解除されることとなる。
【0050】
また、踏板230は、右ガイド体220a又は左ガイド体220bのどちらか一方側にのみ係止されているため、係止状態が解除されると、図4(b)に示すように真っ直ぐに落し穴Pへ落下するのではなく係止部232側が最後に落下していくため傾斜した状態となる。
そのため、踏板230を踏んだ害獣は、落し穴Pへ脚体が落下していく際に支えとなっていた踏板230が傾斜することで体勢がより大きく崩れることとなる。
【0051】
すなわち、本発明に係る害獣捕獲具Mは、害獣を捕縛する捕獲ワイヤ110の縮径作動の起点となる踏板230の固定を、従来までの括り罠のように全体を支える形状とせず、あえて一点でのみ係止させることにより、弱い力でも係止を解除させ害獣捕獲具Mの作動をより確実なものとすると共に、害獣の脚体を踏板230と一緒に傾斜状態で落下させ害獣の体勢を大きく崩し捕獲率を上げることができる。
【0052】
害獣が踏板230を踏んだことで害獣捕獲具Mは、ワイヤガイド220が跳ね上がることを規制する手段を無くすこととなる。踏板230の係止部232により規制が解除されたワイヤガイド220は図3に示すように、跳ね上げ付勢ばね260の付勢力により上方へ跳ね上げ作動することとなる。
【0053】
跳ね上げ作動に際しては、上述した害獣捕獲具Mの構成で述べたように、ワイヤガイド220の右ガイド体220aと左ガイド体220bとに形成される跳ね上げ同調機構221により、図3に示すように、跳ね上げ動作が同調し右ガイド体220aと左ガイド体220bとが同時に跳ね上がることとなる。
【0054】
従来までの害獣捕獲用の括り罠では、右のガイド体と左のガイド体とが独立し、同調するような機構を備えてはいなかった。そのため、踏板を害獣が踏みことで捕獲ワイヤの縮径規制を解除し、各ガイド体を跳ね上げるに際して左右に均等に跳ね上がらないことがあった。左右のガイド体が均等に跳ね上がらないことにより、捕獲ワイヤがガイド体より外れるタイミングが左右で異なることとなりワイヤの縮径作動がスムーズに行うことができず捕獲率を下げる要因となっていた。
【0055】
しかしながら、本発明に係る害獣捕獲具Mは、図2及び図3に示すように、ワイヤガイド220に跳ね上げ同調機構221を形成することにより右ガイド体220aと左ガイド体220bとが同時に跳ね上がるため捕獲ワイヤ110のワイヤガイド220から外れるタイミングが均等に行われワイヤ縮径動作をスムーズに行い捕獲率の低下を可及的に抑えることが可能となる。
【0056】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る害獣捕獲具Mは上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、あくまで例示に過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
M 害獣捕獲具
P 落し穴
100 ワイヤ縮径機構
110 捕獲ワイヤ
120 縮径付勢ばね
130 規制ストッパ
200 捕獲フレーム
210 フレーム基台
211 切欠部
212 ワイヤ係止溝
220 ワイヤガイド
220a 右ガイド体
220b 左ガイド体
221 跳ね上げ同調機構
221a 下半部突片
221b 上半部突片
222 取付け孔
230 踏板
231 踏板本体
232 係止部
233 上係止体
233a 突出部
234 下係止体
234a 延出部
240 突設片
241 突設部
242 載置足部
250 支持プレート
251 枢軸
260 跳ね上げ付勢ばね
261 コイルばね
262 取付け環体
図1
図2
図3
図4