(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077158
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 21/00 20060101AFI20230529BHJP
B23B 3/26 20060101ALI20230529BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20230529BHJP
B23B 3/34 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
B23B21/00 C
B23B3/26
B23B3/30
B23B3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190338
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】風間 浩明
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 健児
(72)【発明者】
【氏名】酒井 淳一
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045BA04
3C045BA07
3C045BA13
3C045BA15
3C045BA19
3C045GA05
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で複雑な加工を可能にする工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械1は、ワークWを保持しつつ回転させる第1主軸ユニット10及び第2主軸ユニット20と、互いに独立に移動可能な第1刃物台15及び第2刃物台17と、を備え、第1主軸ユニット10は、軸方向に沿って移動し、第2主軸ユニット20は、軸方向及び軸方向に交わる奥行き方向に沿って移動し、第1刃物台15及び第2刃物台17は、それぞれ奥行き方向及び鉛直方向に沿って移動し、第1刃物台15には、第1主軸11に交わる向きに、鉛直方向に並べられた第1のくし刃状工具が設けられ、第2刃物台17には、第1のくし刃状工具に対向して鉛直方向に並べられた第2のくし刃状工具が設けられ、第1刃物台15及び第2刃物台17のいずれかに、ワークWの一端部を加工する回転工具18aと、ワークWの他端部を加工する回転工具18cと、が設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持しつつ回転させる第1主軸ユニット及び第2主軸ユニットと、
互いに独立に移動可能な第1刃物台及び第2刃物台と、
を備え、
前記第1主軸ユニットは、第1主軸の軸方向に沿って移動し、
前記第2主軸ユニットは、第2主軸の軸方向及び前記第2主軸の軸方向に交わる奥行き方向に沿って移動し、
前記第1刃物台及び前記第2刃物台は、それぞれ前記奥行き方向及び鉛直方向に沿って移動し、
前記第1刃物台には、前記第1主軸の軸方向に交わる向きに、複数本の工具が鉛直方向にくし刃状に並べられた第1のくし刃状工具が設けられ、
前記第2刃物台には、前記第1主軸の軸方向に交わる向きに、前記第1のくし刃状工具に対向して複数本の工具が鉛直方向にくし刃状に並べられた第2のくし刃状工具が設けられ、
前記第1刃物台及び前記第2刃物台のいずれかに、前記第1主軸に保持された前記ワークの一端部を加工する第1の回転工具と、前記第2主軸に保持された前記ワークの他端部を加工する第2の回転工具と、が設けられる、
工作機械。
【請求項2】
前記第1の回転工具及び前記第2の回転工具は、前記第1刃物台及び前記第2刃物台の内、作業者に近い側の刃物台に設けられる、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1の回転工具及び前記第2の回転工具は、1つのモータによりそれぞれ回転駆動される、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1刃物台及び前記第2刃物台の内、前記第1の回転工具を備える刃物台に対向する刃物台は、前記第1主軸の軸方向に交わる向きで前記ワークの前記第1の回転工具に対向する第3の回転工具を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第1刃物台と前記第2刃物台を2系統制御で数値制御し、前記第1のくし刃状工具及び前記第2のくし刃状工具によりワークを加工する数値制御装置を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第1のくし刃状工具又は前記第2のくし刃状工具は、前記第1の回転工具を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、非独立の対向くし刃刃物台と、背面刃物台と、を備える工作機械が開示されている。また、特許文献2には、独立した対向くし刃刃物台を備える自動旋盤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3228665号公報
【特許文献2】特開平06-246508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2等の主軸移動型旋盤で複雑な加工をするために、前刃物台と後刃物台との同時加工に加えて背面刃物台との同時加工を行う場合、独立対向刃物台、背面刃物台及び3系統制御のNC(数値制御)装置を搭載する必要がある。加えて、例えば背面刃物台に追加のモータを設ける必要がある。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で複雑な加工を可能にする工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、ワークを保持しつつ回転させる第1主軸ユニット及び第2主軸ユニットと、互いに独立に移動可能な第1刃物台及び第2刃物台と、を備え、前記第1主軸ユニットは、第1主軸の軸方向に沿って移動し、前記第2主軸ユニットは、第2主軸の軸方向及び前記第2主軸の軸方向に交わる奥行き方向に沿って移動し、前記第1刃物台及び前記第2刃物台は、それぞれ前記奥行き方向及び鉛直方向に沿って移動し、前記第1刃物台には、前記第1主軸の軸方向に交わる向きに、複数本の工具が鉛直方向にくし刃状に並べられた第1のくし刃状工具が設けられ、前記第2刃物台には、前記第1主軸の軸方向に交わる向きに、前記第1のくし刃状工具に対向して複数本の工具が鉛直方向にくし刃状に並べられた第2のくし刃状工具が設けられ、前記第1刃物台及び前記第2刃物台のいずれかに、前記第1主軸に保持された前記ワークの一端部を加工する第1の回転工具と、前記第2主軸に保持された前記ワークの他端部を加工する第2の回転工具と、が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で複雑な加工を可能にする工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の平面図である。
【
図4】(a)は
図3のB矢視図であり、(b)は(a)のC矢視図であり、(c)は(a)のD-D線断面図である。
【
図5】(a)~(e)は、本発明の一実施形態に係る工作機械による加工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る工作機械について、図面を参照して説明する。
図1~
図3に示すように、旋盤である工作機械1は、工作機械1の台であるベッドSと、第1主軸11を有する第1主軸ユニット10と、第2主軸21を有する第2主軸ユニット20と、第1主軸移動機構13Zと、第2主軸移動機構23Zと、第2主軸移動機構24Xと、第1刃物台15と、第1工具ユニット16と、第2刃物台17と、第2工具ユニット18と、第1刃物台移動機構31Xと、第1刃物台移動機構32Yと、第2刃物台移動機構41Xと、第2刃物台移動機構42Yと、を備える。
以下では、第1主軸11及び第2主軸21の回転軸に沿う軸線方向をZ軸方向と規定し、Z軸方向に直交する高さ方向をY軸方向と規定し、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向をX軸方向と規定する。
【0010】
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、ワークWを保持しつつ回転させる。具体的には、第1主軸ユニット10は、第1主軸11と、第1主軸11を回転可能に支持する第1主軸台12と、を備える。第1主軸11は、ワークWの一端を保持する。ワークWは、図示しない棒材供給装置によって供給される。第1主軸台12には、第1主軸11を回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
ワークWの第1主軸11の外の部分は、ワーク支承部14に回転可能に支持されている。具体的には、ワーク支承部14は、ワークWの外周部と接するガイドブッシュ14aを備え、ガイドブッシュ14aは、第1主軸11の回転と同期して回転し、ワークWがZ軸方向に移動してもガイドブッシュ14aで支持することで回転可能に支持する。
【0011】
第2主軸ユニット20は、Z軸方向に第1主軸ユニット10と向かい合う位置に設けられ、第1主軸ユニット10から受け取ったワークWを保持しつつ回転させる。第2主軸ユニット20は、ワークWの他端を保持する第2主軸21と、第2主軸21を回転可能に支持する第2主軸台22と、を備える。第2主軸台22には、第2主軸21を回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0012】
図1に示すように、第1主軸移動機構13Zは、第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。第2主軸移動機構23Zは、第2主軸ユニット20をZ軸方向に移動させる。
図2に示すように、第2主軸移動機構24Xは、第2主軸ユニット20をX軸方向に移動させて、第1主軸11並びに第2刃物台17及び第2工具ユニット18の工具類のそれぞれに対向可能とする。
【0013】
図1に示すように、第1主軸移動機構13Zは、支持台13aと、ボールねじ13bと、軸受13cと、軸受13dと、ナット13eと、モータ13Mと、を備える。
支持台13aは、ベッドSと一体に形成されており、ベッドSの広い平面部から上方に突出した部分である。支持台13aには、Z軸方向に沿って軸受13c及び軸受13dが配置されている。ボールねじ13bは、軸受13c及び軸受13dに回転可能に支持され、Z軸方向に延びて配置されている。ナット13eは、ボールねじ13bの外周に嵌め込まれるとともに、第1主軸台12の下面に固定されている。
モータ13Mは、支持台13aに取り付けられている。モータ13Mの出力軸がボールねじ13bの一端に同軸上で連結されており、モータ13Mは、制御部300による制御のもと、ボールねじ13bを軸回転させる。ボールねじ13bが軸回転することにより、ナット13eがボールねじ13bに沿って第1主軸台12とともにZ軸方向に移動する。
【0014】
第2主軸移動機構23Zは、モータ31Mの他、第1主軸移動機構13Zと同様に、支持台と、ボールねじと、軸受と、ナットと、を備える。第2主軸移動機構23Zは、第2主軸移動機構24Xの上に設けられる。
【0015】
第2主軸移動機構24Xは、支持台24aと、ボールねじ24bと、軸受24cと、軸受24dと、ナット24eと、レール24gと、ブロック24hと、モータ24Mと、を備える。
支持台24aは、ベッドSと一体に形成されており、ベッドSの広い平面部から上方に突出した板状の部分である。また、ベッドSには、X軸方向に沿って軸受24c及び軸受24dが配置されている。ボールねじ24bは、軸受24c及び軸受24dに回転可能に支持され、X軸方向に延びて配置されている。ナット24eは、ボールねじ24bの外周に嵌め込まれるとともに、第2主軸移動機構23Zの支持台の下面に固定されている。一対のレール24gは、それぞれ支持台24aに固定されている。一対のブロック24hは、レール24gに沿って摺動可能に設けられている。また、ブロック24hの摺動部と反対側の面が、第2主軸移動機構23Zの支持台の下面に固定されている。
モータ24Mは、ベッドSに取り付けられている。モータ24Mの出力軸がボールねじ24bの一端に同軸上で連結されており、モータ13Mは、制御部300による制御のもと、ボールねじ24bを軸回転させる。ボールねじ24bが軸回転することにより、ナット24eがボールねじ24bに沿って第2主軸移動機構23ZとともにX軸方向に移動する。
【0016】
第1刃物台移動機構31Xは、第1主軸移動機構13Zの支持台13a上であって第1主軸11の端部付近に設けられている。第1刃物台移動機構31Xは、第1刃物台移動機構32YをX軸方向に移動させる。これに伴って、第1刃物台15もX軸方向に移動する。
第1刃物台移動機構32Yは、第1刃物台移動機構31Xの第2主軸ユニット20側に取り付けられている。第1刃物台移動機構32Yは、第1刃物台15をY軸方向に移動させる。
【0017】
支持台13a上の第1主軸11付近には、ベース50が配置されている。ベース50は、第1主軸11を中心とする左右に一体型に構成されており、上述のガイドブッシュ14aが取り付けられるとともに、第1刃物台移動機構31X及び第2刃物台移動機構41Xの一部を構成する。
第1刃物台移動機構31Xは、モータ31Mの他、第2主軸移動機構24Xと同様に、支持台24aに相当するベース50、ボールネジ、軸受、ナット、レール及びブロック(図示せず)を備える。ベース50のレール取付面は、第2主軸ユニット20に対面している。X軸方向に延びる2つのレールは、鉛直方向に並んでそれぞれベース50に取り付けられている。また、モータ31Mは、ベース50の側部に取り付けられている。
第1刃物台移動機構32Yは、モータ32Mの他、第2主軸移動機構24Xと同様に、支持台、ボールネジ、軸受、ナット、レール及びブロック(図示せず)を備える。
第1刃物台15は、第1刃物台移動機構32Yの第2主軸ユニット20側に設けられている。
【0018】
第2刃物台移動機構41Xは、第1主軸移動機構13Zの支持台13a上に第1刃物台移動機構31Xと並んで設けられている。第2刃物台移動機構41Xは、第2刃物台移動機構42YをX軸方向に移動させる。これに伴って、第2刃物台17もX軸方向に移動する。
第2刃物台移動機構42Yは、第2刃物台移動機構41Xに取り付けられている。第2刃物台移動機構42Yは、第2刃物台17をY軸方向に移動させる。
【0019】
第2刃物台移動機構41Xは、モータ41Mの他、第1刃物台移動機構31Xと同様に、支持台24aに相当するベース50、ボールネジ、軸受、ナット、レール及びブロック(図示せず)を備える。第1刃物台移動機構31Xと同様に、第2刃物台移動機構41XのX軸方向に延びる2つのレールは、鉛直方向に並んでそれぞれベース50に取り付けられている。また、モータ41Mは、ベース50の側部に取り付けられている。
第2刃物台移動機構42Yは、モータ42Mの他、第1刃物台移動機構32Yと同様に、支持台、ボールネジ、軸受、ナット、レール及びブロック(図示せず)を備える。
第2刃物台17は、第2刃物台移動機構42Yの第2主軸ユニット20側に設けられている。
【0020】
第1刃物台15には、工具15b及び回転工具16aの各工具が取り付けられている。その内、回転工具16aは、第1刃物台15に取り付けられた第1工具ユニット16に含まれる。
【0021】
第1刃物台15には、Y軸方向にくし刃状に並べられた複数の工具15bが配置されている。複数の工具15bは、刃先がワークWを向くようにX軸方向に沿うように第1刃物台15に保持されている。工具15bは、例えばターニングバイトであり、第1主軸11に保持されたワークWの正面を加工する。加えて、第1刃物台15には、ワークWの正面を加工するドリルを取り付けるためのドリルホルダ15cが配置されている。
第1工具ユニット16は、工具15b、ドリルホルダ15cの上方に位置するクロスドリル装置である。第1工具ユニット16は、第2工具ユニット18にX軸方向に対応して位置する。第1工具ユニット16には、ワークWの正面の突き出した円筒部を加工する複数の回転工具16aが設けられている。複数の回転工具16aは、それぞれの先端部がX軸に沿ってワークWを向いており、鉛直方向にくし刃状に並べられている。
図3に示すように、第1刃物台15には、工具15bと回転工具16aとを含む第1のくし刃状工具15Tが取り付けられる。なお、本明細書において、くし刃状は工具が鉛直方向に並んでいることを指し、工具15bと回転工具16aとがZ軸方向に離間していてもよい。
また、第1工具ユニット16は、制御部300による制御のもと、回転工具16aを回転させるモータ16Mを備える。
【0022】
第2刃物台17には、工具17b、回転工具18a、固定工具18b及び回転工具18cの各工具が取り付けられている。その内、回転工具18a、固定工具18b及び回転工具18cは、第2刃物台17に取り付けられた第2工具ユニット18に含まれる。
【0023】
第2刃物台17には、Y軸方向にくし刃状に並べられた複数の工具17bが配置されている。複数の工具17bは、刃先がワークWを向くようにX軸方向に沿うように第2刃物台17に保持されている。工具17bは、例えばターニングバイトであり、第1主軸11に保持されたワークWの正面を加工する。複数の工具15bと複数の工具17bとは互いの刃先がX軸方向に対向するように配置されている。
第2工具ユニット18は、工具17bの上方に位置するクロスドリル装置である。第2工具ユニット18は、第1工具ユニット16にX軸方向に対応して位置する。第2工具ユニット18には、ワークWの正面の突き出した円筒部を加工する複数の回転工具18aが設けられている。複数の回転工具18aは、それぞれの先端部がX軸に沿ってワークWを向いており、鉛直方向にくし刃状に並べられている。
図3に示すように、第2刃物台17には、工具17bと回転工具18aとを含む第2のくし刃状工具17Tが取り付けられる。なお、工具17bと回転工具18aとがZ軸方向に離間していてもよい。
この他、例えばドリルである固定工具18b、及び、例えばドリルである回転工具18cは、それぞれの先端部が第2主軸ユニット20を向くようZ軸に沿って配置されている。固定工具18b及び回転工具18cは、ワークWが第1主軸11から第2主軸21に受け渡された後に、ワークWの背面の端面部を加工する。
正面加工用の回転工具18aと背面加工用の固定工具18b及び回転工具18cを備える第2工具ユニット18は、作業者に近く工具交換等の作業がしやすい側の刃物台に設けることが望ましい。
また、第2工具ユニット18は、制御部300による制御のもと、回転工具18a及び回転工具18cを回転させるモータ18Mを備える。従って、回転工具18a及び回転工具18cが1つのモータ18Mで回転駆動される。
【0024】
第1刃物台移動機構31X及び第1刃物台移動機構32Y、並びに、第2刃物台移動機構41X及び第2刃物台移動機構42Yにより、第1刃物台15及び第2刃物台17は、独立した対向刃物台として構成されている。
第1刃物台15及び第2刃物台17の移動方向をX軸及びY軸の2軸としたのは、第1主軸11を固定にして、第1刃物台15及び第2刃物台17をZ軸方向に移動させると、3軸に移動することになり、移動による誤差が累積されて、加工精度が低下するおそれがあるためである。
【0025】
図1~
図3に示すように、工作機械1の各部は、制御部300の制御によって動作する。制御部300は、第1主軸ユニット10、第2主軸ユニット20、第1主軸移動機構13Z、第2主軸移動機構23Z、第2主軸移動機構24X、第1刃物台15についての第1刃物台移動機構31X、第1刃物台移動機構32Y及び第1工具ユニット16、並びに、第2刃物台17についての第2刃物台移動機構41X、第2刃物台移動機構42Y及び第2工具ユニット18を制御する。工具に関する数値制御装置としては、第1刃物台15と第2刃物台17との2系統で機能する。
制御部300は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、CPUによる処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を備える。
プログラムとは、NCプログラムである。NCプログラムは、ワーク(主軸)の送り速度、回転速度、加工に使用する工具の種類の選択、工具の座標位置等の指令コードを含む。
【0026】
次に、
図4(a)~(c)を参照して、第2工具ユニット18のより詳細な構造を説明する。
【0027】
図4(c)に示すように、筐体部100にX軸に沿ってモータ18Mが取り付けられている。筐体部100には、軸107等の工具の保持部、ベベルギア102等のギアも取り付けられている。モータ18MのX軸に沿ったモータ軸103の外周面に平歯車のギア104が嵌合されている。同じくX軸に沿って延びる複数の回転工具18aが取り付けられ回転可能に支持された軸107には、それぞれ平歯車のギア105が嵌合されている。ギア104と複数のギア105の内の1つが噛合し、一列に並んだ軸107に対するギア105が隣接するギア105と噛合する。
【0028】
また、モータ18Mのモータ軸103と同じくX軸に沿って延びるベベルギア102は、一端の付近の平歯車においてギア104と噛合する。ベベルギア102の他端は傘歯車となっており、
図4(b)に示すように、Z軸に沿って延びるベベルギア101の一端の傘歯車と噛合する。ベベルギア101の長手方向中央部は平歯車となっており、
図4(a)に示すように、回転工具18cが取り付けられ回転可能に支持された軸108のそれぞれに嵌合された平歯車のギア106の1つと噛合する。一列に並んだ複数の軸108に対するギア106が隣接するギア106と噛合する。
【0029】
上記の構成による第2工具ユニット18において、制御部300の制御のもとモータ18Mを回転させると、ギア、軸を介して複数の回転工具18a及び複数の回転工具18cがそれぞれ回転する。このように、回転工具18a及び回転工具18cを1つのモータ18Mで回転駆動することにより、モータの個数を削減しコストを低減することができる。
【0030】
次に、
図5(a)~(e)を参照して、ワークWの各種加工方法について説明する。加工される第1ワークW1は、
図1の第1主軸11に保持され、第2ワークW2は、第2主軸21に保持されるものとする。なお、加工後の製品は、ワークセパレータ(図示せず)によって受けた後、ワークコンベア(図示せず)によって工作機械1の機外まで搬送される。
【0031】
図5(a)は、バランスターニング加工の例を示す。この加工では、第1主軸11によりワークWを回転させつつ、第1主軸移動機構13ZによりワークWをZ軸方向に送る。第1ワークW1に対して工具17bで荒加工を行い、同時に工具15bで仕上げ加工を行う。両方の加工を同時に行わないこととしてもよい。
【0032】
図5(b)は、同時クロス加工の例を示す。この加工では、第1主軸11によるワークWの回転が停止され、ワークWはZ軸方向に送られない。回転工具16a及び対向する回転工具18aによって、第1ワークW1に対してそれぞれ穴明け加工等を行う。対向する両方の回転工具で同時加工をすることにより、加工時間を短縮できる。
【0033】
図5(c)は、同時クロス加工の他の例を示す。この加工では、第1主軸11によるワークWの回転が停止され、ワークWはZ軸方向に送られる。また、この加工では、回転工具16a、回転工具18aはドリルではなく、エンドミルである。回転工具16a及び対向する回転工具18aによって、第1ワークW1に対してそれぞれミリング加工を行う。
【0034】
図5(d)は、オーバーラップ加工の例を示す。この加工では、第1ワークW1の加工については、第1主軸11により第1ワークW1を回転させつつ、第1主軸移動機構13Zにより第1ワークW1をZ軸方向に送り、工具15bによって第1ワークW1にターニング加工等を行う。
正面加工が完了すると、第2主軸21は第1主軸11から正面加工済みのワークWを受け取る。第2主軸21はワークWを受け取った後、XZ方向に移動して、第2ワークW2を18cに対向させる。ワークW2の加工については、回転工具18cを回転させつつ、第2主軸移動機構23Zで、第2主軸21をZ軸方向に移動させて、回転工具18cで第2ワークW2に背面加工を行う。
前刃物台と後刃物台のいずれかに、正面と背面加工用の回転工具を搭載した第2工具ユニット18が設けられている。そのため、第1主軸11でワークWを正面加工後に、ワークWを受け渡された第2主軸21は、直ちに背面加工ができるため、移動時間が短くなり、加工時間が短縮できる。また、刃物台ごとに異なる工具を使用して複雑な加工をすることができる。
【0035】
図5(e)は、第1ワークW1の加工については
図5(d)と同様であるが、第1ワークW1の加工をしない第2工具ユニット18が、第1ワークW1の加工中に矢印で示すX軸方向に移動することを示す。これにより、工具15bによる第1ワークW1の加工中に例えば
図5(b)のような回転工具18aの準備をすることができる。
第1刃物台15と第2刃物台17とが独立した対向刃物台であるため、上記のようにツールチェンジ時間のゼロ化を実現することが可能となる。一方、非独立である一体型の対向刃物台では、例えば、前刃物台の工具でワークW加工中に、次に加工する後刃物台の工具を移動させることができないので、ワークを加工後にツールチェンジするので、加工時間が長くなる。
【0036】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態では、従来の背面刃物台を廃止し、代わりに独立対向刃物台の前刃物台(第2刃物台17)に正面・背面加工用の回転工具(回転工具18a、回転工具18c)を搭載することとした。これにより、簡易な構成を実現可能な工作機械が得られる。特に、2系統制御の数値制御装置でも、前刃物台と後刃物台の同時加工、及び、後刃物台の正面加工と前刃物台の背面加工との同時加工が可能となる。
また、背面刃物台を廃止したことで、背面加工時の切粉が堆積しにくくなる。加えて、作業者からは主軸先端部(加工点)が見やすくなるとともに前刃物台及び後刃物台の工具のセット等がしやすくなる。
また、第1主軸移動機構13Zにより第1主軸11がZ軸方向に沿って移動することで、刃物台がZ軸方向にも移動することによる誤差の累積が防止されるとともに、長いワークWから短いワークWまで対応できる。
さらに、上記実施形態に示すように、豊富な種類の回転工具を使用することが可能なため、複雑形状のワークも短時間で加工できる。
【0037】
(2)上記実施形態では、正面及び背面加工用の回転工具を搭載した第2工具ユニット18が、前刃物台、すなわち作業者に近い側の刃物台に設けられる。
作業者から近い方に第2工具ユニット18があるため、工具交換等の作業がしやすい。
【0038】
(3)上記実施形態では、第2工具ユニット18において、正面加工用の回転工具18aと背面加工用の回転工具18cとが1つのモータ18Mによりそれぞれ回転駆動される。
従来は、正面用の回転工具と背面加工用の回転工具ちは別の場所にあり、回転工具を駆動するモータは2つであったが、上記実施形態では1つにすることができるため、コスト低減になる。
また、従来は、複雑な加工をするために、背面刃物台にY軸方向に移動する機能を搭載するが、上記実施形態では第2工具ユニット18のY軸機能を第2刃物台17のY軸機能と共用することにより、背面刃物台のY軸用モータを削減でき、コスト低減になる。
よって、合計2つのモータを削減できる。
【0039】
(4)上記実施形態では、前刃物台と後刃物台とに設けられた回転工具16a及び回転工具18aを設けることで、オーバーラップ加工(同時加工)ができて、加工時間を短縮できる。また、穴明け加工、ミリング加工等の複雑な加工ができる。
【0040】
(5)上記実施形態では、第1刃物台15と第2刃物台17を2系統制御で数値制御し、各工具でワークWを加工する数値制御装置としての制御部300を備える。
従来は、前刃物台、後刃物台及び背面刃物台の3つの刃物台ごとに加工する系統が必要で、3系統の数値制御装置が必要であった。そのため、刃物台ごとにプログラムが必要であり、従来のプログラム数は3つであった。
これに対し、本実施形態では、従来の背面刃物台に相当する機能が、正面と背面加工用の回転工具を搭載した第2工具ユニット18として、前刃物台である第2刃物台17に搭載されている。そのため、刃物台としては、前刃物台及び後刃物台の2つであり、数値制御装置は2系統としてよい。
刃物台ごとにプログラムが必要であるが、本実施形態ではプログラム数は2つでよいため、従来に比べてプログラム作成時間が短縮されるとともにプログラムのデバッグ時間も容易となる。
【0041】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0042】
(変形例)
第1工具ユニット16及び第2工具ユニット18には、上記実施形態のドリル、エンドミルの他に多くの種類の工具を取付けすることとしてもよい。また、第1工具ユニット16に固定工具18b及び回転工具18cに相当する工具を取り付けることとしてもよい。
【0043】
第1刃物台15及び第2刃物台17において、刃物台の工具の種類又は配置は上記実施形態以外であってもよく、任意である。
【0044】
第1工具ユニット16及び第2工具ユニット18には、上記実施形態の回転工具16a及び回転工具18aの他に、例えば固定工具を取り付けることとしてもよい。これにより、工具の本数が増えて、多数の種類の加工ができる。また、第2工具ユニット18の構成と同様の工具を第1工具ユニット16が備えることとしてもよい。
【0045】
ワークWと刃物は相対的に移動すればよい。従って、例えば第1主軸移動機構13Zの他に、第1刃物台15及び第2刃物台17をそれぞれZ軸方向に移動させる機構を用いることとしてもよい。
【0046】
上記の実施形態では、工具15bと回転工具16aとを含む第1のくし刃状工具15Tが第1刃物台15に設けられることと説明している。また、工具17bと回転工具18aとを含む第2のくし刃状工具17Tが第2刃物台17に設けられることと説明している。
ここで、第1のくし刃状工具15Tは、工具15bと回転工具16aとのいずれかのみで構成されることとしてもよく、工具15bと回転工具16aとの一方又は両方が1本の工具であることとしてもよい。
また、第2のくし刃状工具17Tについても、工具17bと回転工具18aとのいずれかのみで構成されることとしてもよく、工具17bと回転工具18aとの一方又は両方が1本の工具であることとしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…工作機械、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸、12…第1主軸台、13a…支持台、13b…ボールねじ、13c…軸受、13d…軸受、13e…ナット、13M…モータ、13Z…第1主軸移動機構、14…ワーク支承部、14a…ガイドブッシュ、15…第1刃物台、15b…工具、15c…ドリルホルダ、15T…第1のくし刃状工具、16…第1工具ユニット、16a…回転工具(第3の回転工具)、16M…モータ、17…第2刃物台、17b…工具、17T…第2のくし刃状工具、18…第2工具ユニット、18a…回転工具(第1の回転工具)、18b…固定工具、18c…回転工具(第2の回転工具)、18M…モータ、20…第2主軸ユニット、21…第2主軸、22…第2主軸台、23a…支持台、23b…ボールねじ、23c…軸受、23d…軸受、23e…ナット、23M…モータ、23Z…第2主軸移動機構、24a…支持台、24b…ボールねじ、24c…軸受、24d…軸受、24e…ナット、24g…レール、24h…ブロック、24M…モータ、24X…第2主軸移動機構、31M…モータ、31X…第1刃物台移動機構、32M…モータ、32Y…第1刃物台移動機構、41M…モータ、41X…第2刃物台移動機構、42M…モータ、42Y…第2刃物台移動機構、50…ベース、100…筐体部、101…ベベルギア、102…ベベルギア、103…モータ軸、104…ギア、105…ギア、106…ギア、107…軸、108…軸、300…制御部、S…ベッド、W…ワーク、W1…第1ワーク、W2…第2ワーク