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  • 特開-ポリウレタンフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077164
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20230529BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20230529BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230529BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230529BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230529BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K5/5415
C08G18/00 F
C08G18/08 038
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190345
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 莉緒菜
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002EX026
4J002EX076
4J002FD206
4J002GC00
4J002GL00
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF27
4J034DG03
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034QB19
4J034RA03
4J034RA10
(57)【要約】
【課題】従来の銀化合物等の抗菌剤を含むポリウレタンフォームと比べ、環境への影響を低減することができるポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【解決手段】植物を原料とする植物由来の抗菌剤を含むポリウレタンフォームである。植物由来の抗菌剤は、第四級アンモニウム塩系抗菌剤が好ましい。ポリウレタンフォームは、植物を原料とする植物由来の抗菌剤を含むポリウレタン形成用組成物から形成されたものであり、ポリウレタン形成用組成物には、ポリオールとして石油由来のポリエーテルポリオール単独又は石油由来のポリエーテルポリオールと植物を原料とする植物由来のポリオールが含まれている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を原料とする植物由来の抗菌剤を含むポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記植物由来の抗菌剤は、第四級アンモニウム塩系抗菌剤であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームは、前記植物由来の抗菌剤を含むポリウレタン形成用組成物から形成されたものであり、
前記ポリウレタン形成用組成物には、ポリオール100重量部中にポリエーテルポリオールが15~100重量部含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記ポリウレタンフォームは、前記植物由来の抗菌剤を含むポリウレタン形成用組成物から形成されたものであり、
前記ポリウレタン形成用組成物には、植物を原料とする植物由来のポリオールが含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
植物を原料とする植物由来のポリオールと、第四級アンモニウム塩系抗菌剤とを含むポリウレタン形成用組成物から形成されたことを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項6】
AMS法によるバイオマス度が1%以上であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤を含むポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
台所用、衣料用、寝具用、家具用、建設資材用等、種々の用途にポリウレタンフォームが利用されている。
台所用スポンジ等のような抗菌性が求められる用途には、銀化合物等の抗菌剤を含むポリウレタンフォームがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-180078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年、環境に与える影響が重要視されるようになり、ポリオウレタンフォームについても環境への影響がより少ないものが求められるようになった。
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、環境への影響がより少ない抗菌剤を含むポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、植物を原料とする植物由来の抗菌剤を含むポリウレタンフォームである。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記植物由来の抗菌剤は、第四級アンモニウム塩系抗菌剤であることを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ポリウレタンフォームは、前記植物由来の抗菌剤を含むポリウレタン形成用組成物から形成されたものであり、前記ポリウレタン形成用組成物には、ポリオール100重量部中にポリエーテルポリオールが15~100重量部含まれていることを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記ポリウレタンフォームは、前記植物由来の抗菌剤を含むポリウレタン形成用組成物から形成されたものであり、前記ポリウレタン形成用組成物には、植物を原料とする植物由来のポリオールが含まれていることを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、植物を原料とする植物由来のポリオールと、第四級アンモニウム塩系抗菌剤とを含むポリウレタン形成用組成物から形成されたことを特徴とするポリウレタンフォームである。
【0011】
第6の発明は、第1から第5の発明の何れか一において、AMS法によるバイオマス度が1%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレタンフォームは、植物由来の抗菌剤を含むため、従来の銀化合物等の抗菌剤を含むポリウレタンフォームと比べ、環境への影響を低減することができる。
また、ポリオールに植物由来のポリオールを含む場合は、ポリウレタンフォームのバイオマス度(植物由来度)が高くなり、地球環境負荷低減効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】トリメトキシ基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤の構造式である。
図2】本発明の比較例及び各実施例の配合及び物性等の測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の植物由来の抗菌剤を含むポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、植物油来の抗菌剤を含むポリウレタン形成用組成物を撹拌し、ポリオールとイソシアネートを反応させ、発泡させることにより得られる。本発明のポリウレタンフォームは、軟質、硬質の何れでもよく、台所用、衣料用、寝具用、家具用等には、軟質ポリウレタンフォームが好適である。
【0015】
ポリオールとしては、ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、植物を原料とする植物由来のポリオール等があり、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。それらの中でも、ポリウレタンフォームを加水分解のし難いものとするため、ポリエーテルポリオール単独あるいはポリエーテルポリオールと植物由来のポリオールの併用が好ましい。ポリオールにおける水酸基の平均官能基数は1.0を超えればよい。ポリオールにおける水酸基の平均官能基数の好ましい範囲として1.5~5.0、1.8~4.5、2~4.0を例示できる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加した石油由来のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールの水酸基価(OHV)は15~100mgKOH/g(より好適には30~80mgKOH/g)、官能基数は2.0~3.5、分子量は100~10000(より好適には1000~5000)が好ましい。
ポリエーテルポリオールの配合量は、ポリオール100重量部中に10~100重量部が好ましく、15~90重量部がより好ましく、20~85重量部がさらに好ましい。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られた石油由来のポリエステルポリオールを挙げることできる。
ポリエステルポリオールの水酸基価(OHV)は15~100mgKOH/g、官能基数は2~3。5、分子量は100~10000(より好適には1000~5000)が好ましい。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0018】
植物を原料とする植物由来のポリオールとしては、大豆油系、ヤシ油系、菜種油系、ココナッツ油系、ひまわり油系、ひまし油系等のポリオールが挙げられる。それらの中でも、ひまし油ポリオールは、入手の容易さ等から好適な植物由来ポリオールである。
ひまし油ポリオールには、未変性ひまし油ポリオールと変性ひまし油ポリオールとがあり、何れも使用可能であり、併用がより好ましい。
【0019】
未変性ひまし油ポリオールは、精製ひまし油ポリオール、半精製ひまし油ポリオール、未精製ひまし油ポリオールの何れでもよく、それらの中でも精製ひまし油ポリオールが好ましい。
また、未変性(精製)ひまし油ポリオールは、官能基数が2.7、水酸基価が155~165mgKOH/gが好ましい。
変性ひまし油ポリオールは、例えば、ひまし油とカルボン酸等の有機酸によりエステル化させたエステル変性ひまし油ポリオールが挙げられる。また、変性ひまし油ポリオールは、官能基数が2.0~3.5、水酸基価が40~180mgKOH/生成が好ましい。
【0020】
植物由来のポリオールの配合量は、ポリオール100重量部中に5~85重量部含まれるのが好ましく、下限については10重量部以上がより好ましく、15重量部以上がさらに好ましい。環境に対する影響を考慮すると、植物由来のポリオールの配合量を30重量部以上、40重量部以上とすることもできる。
また、未変性(精製)ひまし油ポリオールと変性ひまし油ポリオールとを併用する場合の重量比は、未変性(精製)ひまし油ポリオール:変性ひまし油ポリオール=1:1~4:1が好ましく、1.5:1~3:1がより好ましい。
【0021】
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0022】
イソシアネートインデックスは70~140が好ましく、より好ましくは80~130であり、90~120がさらに好ましい。イソシアネートインデックスが70未満になると、良好なフォームができなくなる。一方、イソシアネートインデックスが150を超えるとフォームが硬くなりすぎて脆くなり、耐久性が劣るようになる。また、イソシアネートインデックスが120を超えると、内部の発熱温度が高くなり大きなスケールの発泡が難しくなる。イソシアネートインデックスは、[(ポリウレタン形成用組成物中のイソシアネート当量/ポリウレタン形成用組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0023】
触媒としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。
【0024】
発泡剤としては、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等を挙げることができ、これらの中から1種類でもよく、2種類以上でもよい。炭化水素としては、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等を挙げることができる。また、ハロゲン系化合物としては、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも発泡剤として水が特に好適である。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水等の何れでもよい。発泡剤としての水の配合量は、ポリオール100重量部に対して、0.5~10重量部が好ましく、1~8重量部がより好ましく、1.5~5重量部がさらに好ましい。
【0025】
植物を原料とする植物油来の抗菌剤としては、例えば、ココナッツ油、オリーブ油、しその実油、紅花油、ごま油、大豆油、菜種油、ヒバ油等を精製した植物由来の脂肪酸からの誘導体等が挙げられる。
それらの中でも、好適な植物油来の抗菌剤として、第四級アンモニウム塩系抗菌剤が挙げられる。
第四級アンモニウム塩系抗菌剤として、シリル基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤、アルコキシ基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤、アルコキシシリル基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤、トリメトキシシリル基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤、トリエトキシシリル基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤等が挙げられる。
【0026】
第四級アンモニウム系抗菌剤の一例として、図1には、トリメトキシシリル基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤の構造式を示す。図1の構造式において、nは8~20が好ましい。
トリメトキシシリル基を有する第四級アンモニウム塩系抗菌剤の例として、n=17である[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチル(オクタデシル)アンモニウムクロリドを挙げる。
第四級アンモニウム塩系抗菌剤は、グリコール等の溶剤に溶解して用いてもよい。
【0027】
植物油来の抗菌剤の含有量は、ポリオール100重量部当たり0.2~3.0重量部が好ましく、0.25~2.5重量部がより好ましく、0.3~1.5重量部がさらに好ましい。なお、植物油来の抗菌剤が溶剤や架橋剤や可塑剤等に溶解した状態で配合される場合、その溶剤等の割合を考慮して前記含有量の範囲よりも多く配合される。
【0028】
ポリウレタン形成用組成物には、その他適宜助剤が配合される。その他の助剤としては、架橋剤、整泡剤、難燃剤、着色剤、安定剤、可塑剤等を挙げることができる。
架橋剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1-4ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0029】
整泡剤としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。
【0030】
難燃剤としては、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、あるいはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤等を挙げることができる。
【0031】
本発明のポリウレタンフォームは、ASTM D6866-20に規定されるAMS法(加速器質量分析法)で測定されるバイオマス度が1%以上であるのが好ましい。
バイオマス度は、製品に含まれる天然由来原料の割合を意味し、天然由来の物質にしか含まれていない放射性炭素C14が製品にどのくらい含まれているかを測定することで、その製品のバイオマス度を測ることができる。具体的には、AMS法でポリウレタンフォームのC14濃度を測定し、現在における100%天然由来物質のC14濃度に対する割合(%)を計算することにより求められる。
【実施例0032】
この発明の実施例を、比較例と共に具体的に説明する。以下の原料を図2の表に示す配合とした比較例及び各実施例のポリウレタン形成用組成物を撹拌混合し、発泡させて比較例及び各実施例の軟質ポリウレタンフォームを作成した。
【0033】
<ポリオール>
・石油由来ポリオール;ポリエーテルポリオール、官能基数3、水酸基価56.1mgKOH/g、分子量3000、品名:GP-3050NS、三洋化成工業株式会社製
・植物由来ポリオール1;精製ひまし油ポリオール(エステル系ポリオール)、本ポリオール中の植物由来物質の割合(植物度)100%、官能基数2.7、水酸基価155mgKOH/g、分子量977、品名:H-30、伊藤製油株式会社製
・植物由来ポリオール2;変性ひまし油ポリオール(エステル系ポリオール)、本ポリオール中の植物由来物質の割合(植物度)100%、官能基数3.5、水酸基価90mgKOH/g、分子量2181
【0034】
<触媒>
・触媒1;N,N-ジメチルアミノヘキサノール、品名:カオーライザーNo.25、花王株式会社製
・触媒2;脂肪族3級アミン組成物、品名:DABCO 33LSI、エボニックジャパン社製
・触媒3;スタナスオクトエート、品名:MRH-110、城北化学工業株式会社製
<整泡剤>
・整泡剤1;シリコーン系、品名:L-595、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
・整泡剤2;シリコーン系、品名:SZ-1136、東レ・ダウコーニング株式会社製
<抗菌剤>
植物由来の抗菌剤、[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチル(オクタデシル)アンモニウムクロリド50%ジプロピレングリコール、品名:EF4850(HF)、Fresche Bioscience社製
<発泡剤>
・水
<ポリイソシアネート>
2,4-TDI/2,6-TDI=80/20のトルエンジイソシアネート、品名:コロネートT-80、東ソ-株式会社製
【0035】
比較例及び各実施例のポリウレタンフォームについて、バイオマス度、発泡性、抗菌性、密度、伸び、通気、歪を測定あるいは観察した。それらの結果を図2に示す。
【0036】
バイオマス度は、ASTM D6866-20に基づくAMS法で求めた。
なお、ASTM D6866-20には、現在の大気中の炭素14濃度は、年々増加しているため、補正のために係数をかけると規定されており、2020年の大気補正係数であるREF(pMC)=100.0を用いてバイオマス度の算出をした。
また、図2には、AMS法によるバイオマス度と共に、次式の計算式で算出したバイオマス度(植物由来物質の割合、重量%)についても示した。なお、実施例2~4のバイオマス度(AMS法)の欄には、植物由来の抗菌剤を配合せず、他の原材料は図2に記載の配合で製造したポリウレタンフォームについて測定した値を参考値として掲載した。
バイオマス度(植物由来物質の割合)=植物由来のポリオール添加部数/(ポリウレタン形成用組成物の全添加部数-ガスロス)×100
ガスロス=水添加部数/18×44により算出した。
上記のガスロス算出式における「18」は水の分子量、「44」は二酸化炭素の分子量である。
【0037】
発泡性は、目視でポリウレタンフォームの外観を観察し、セル荒れやパンク等が存在する場合発泡状態「×」、セル荒れやパンク等が無く正常に発泡した場合発泡状態「〇」とした。
抗菌性は、黄色ぶどう球菌について、JIS K 6400-9に基づき抗菌活性値を測定した。なお、一部の実施例については、大腸菌についても測定した。
黄色ぶどう球菌と大腸菌に対する測定結果は、何れも抗菌活性値が1.0以上であるのが好ましく、2.0以上がさらに好ましい。抗菌性の評価は、黄色ぶどう球菌の抗菌活性値が1.0未満の場合に「×」、1.0以上の場合に「〇」、2.0以上の場合に「◎」とした。
【0038】
密度はJIS K 6400、伸びはJIS K 6400-55、通気はJIS K 6400-7、歪はJIS K6400-4 4.5.2A法に基づいて測定した。
伸び及び通気性は、ポリウレタンフォームの用途が洗浄用スポンジの場合に重要な物性である。歪はポリウレタンフォームの用途がマットレス等のような荷重の加わる用途の場合に重要な物性である。
伸びの評価は、120%未満の場合に「×」、120%以上の場合に「〇」とした。
通気の評価は、50l/minの場合に「×」、50l/min以上の場合に「〇」とした。
歪の評価は、10%以上の場合に「×」、10%未満の場合に「〇」とした。
【0039】
以下、比較例及び各実施例の配合及び結果について説明する。
・比較例
比較例は、ポリオール中の植物由来ポリオールを0重量部とし、植物由来の抗菌剤を0重量部とした例である。
比較例の結果は、バイオマス度(AMS法)が1%、バイオマス度(植物由来物質の割合)が0重量%であり、抗菌剤を含まないために抗菌性が得られず、抗菌性の評価が「×」であった。発泡性、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0040】
・実施例1
実施例1は、ポリオール中の植物由来ポリオールを0重量部にし、植物由来の抗菌剤を0.65重量部にした例である。
実施例1の結果は、バイオマス度(植物由来物質の割合)が0重量%、抗菌性の評価「◎」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0041】
・実施例2
実施例2は、ポリオール中の植物由来ポリオールを80.0重量部にし、植物由来の抗菌剤を0.65重量部にした例である。
実施例2の結果は、バイオマス度(AMS法)が57%(抗菌剤を配合しないで製造したポリウレタンフォームの参考値)、バイオマス度(植物由来物質の割合)が53重量%、抗菌性の評価「〇」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0042】
・実施例3
実施例3は、ポリオール中の植物由来ポリオールを80.0重量部にし、植物由来の抗菌剤を0.50重量部にした例である。
実施例3の結果は、バイオマス度(AMS法)が57%(抗菌剤を配合しないで製造したポリウレタンフォームの参考値)、バイオマス度(植物由来物質の割合)が53重量%、抗菌性の評価「〇」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0043】
・実施例4
実施例4は、ポリオール中の植物由来ポリオールを80.0重量部にし、植物由来の抗菌剤を1.00重量部にした例である。
実施例4の結果は、バイオマス度(AMS法)が57%(抗菌剤を配合しないで製造したポリウレタンフォームの参考値)、バイオマス度(植物由来物質の割合)が53重量%、抗菌性の評価「◎」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0044】
・実施例5
実施例5は、ポリオール中の植物由来ポリオールを40.0重量部にし、植物由来の抗菌剤を0.65重量部にした例である。
実施例5の結果は、バイオマス度(植物由来物質の割合)が28重量%、抗菌性の評価「◎」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0045】
・実施例6
実施例6は、ポリオール中の植物由来ポリオールを40.0重量部にし、植物由来の抗菌剤を1.00重量部にした例である。
実施例6の結果は、バイオマス度(植物由来物質の割合)が28重量%、抗菌性の評価「◎」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0046】
・実施例7
実施例7は、ポリオール中の植物由来ポリオールを15.0重量部にし、植物由来の抗菌剤を0.65重量部にした例である。
実施例7の結果は、バイオマス度(植物由来物質の割合)が11重量%、抗菌性の評価「◎」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0047】
・実施例8
実施例8は、ポリオール中の植物由来ポリオールを15.0重量部にし、植物由来の抗菌剤を1.00重量部にした例である。
実施例8の結果は、バイオマス度(植物由来物質の割合)が11重量%、抗菌性の評価「◎」、発泡状態、伸び、通気及び歪の評価は何れも「〇」であった。
【0048】
このように、本発明のポリウレタンフォームは、植物由来の抗菌剤を含むために抗菌性を有し、従来の銀化合物等の抗菌剤を含むポリウレタンフォームと比べて環境への影響を低減することができる。
また、ポリオールに植物由来のポリオールを含むポリウレタンフォームにあっては、地球環境負荷低減効果を高めることができる。
なお、本発明は実施例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
図1
図2