(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077167
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】処理回路、無線通信回路及び半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/08 20060101AFI20230529BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20230529BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H03M1/08 A
H04B1/10 N
H03M1/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190349
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】有賀 健太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 敬史
(72)【発明者】
【氏名】木村 大亮
(72)【発明者】
【氏名】間島 保洋
(72)【発明者】
【氏名】正木 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊介
【テーマコード(参考)】
5J022
5K052
【Fターム(参考)】
5J022AA01
5J022BA02
5K052BB02
5K052DD23
5K052FF26
(57)【要約】
【課題】クロック信号に基づく雑音を低減できるようにする。
【解決手段】処理回路は、参照クロック信号と分周比に基づいて、参照クロック信号より高い周波数を有する第1のクロック信号を生成するクロック生成回路と、位相シフト設定信号と分周比に基づいて、第1のクロック信号を分周し、かつ、遅延させることにより、参照クロック信号と第1の位相差を有するように、第1のクロック信号より低い周波数を有する第2のクロック信号を生成する分周及び遅延回路と、第1のクロック信号と、サンプリング期間と変換期間を示す変換トリガ信号に基づいて、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、第2のクロック信号に基づいて、デジタル信号に応じた処理を実行するデジタル信号処理回路と、分周比と第1のクロック信号に基づいて、第2のクロック信号と同じ周期を有するように、変換トリガ信号を生成する制御回路とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照クロック信号と周波数設定信号に基づいて、前記参照クロック信号より高い周波数を有する第1のクロック信号を生成するクロック生成回路と、
位相シフト設定信号と前記周波数設定信号に基づいて、前記第1のクロック信号を分周し、かつ、遅延させることにより、前記参照クロック信号と第1の位相差を有するように、前記第1のクロック信号より低い周波数を有する第2のクロック信号を生成する分周及び遅延回路と、
前記第1のクロック信号と、サンプリング期間と変換期間を示す変換トリガ信号に基づいて、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記第2のクロック信号に基づいて、前記デジタル信号に応じた処理を実行するデジタル信号処理回路と、
前記周波数設定信号と前記第1のクロック信号に基づいて、前記第2のクロック信号と同じ周期を有するように、前記変換トリガ信号を生成する制御回路と
を有する処理回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記周波数設定信号に基づいて、前記第2のクロック信号と同じ周期を維持しながら、前記サンプリング期間と前記変換期間の比率を変更させることにより、前記変換トリガ信号を生成する請求項1に記載の処理回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記位相シフト設定信号に基づいて、前記参照クロック信号と第2の位相差を有するように、前記変換トリガ信号を生成する請求項1又は2に記載の処理回路。
【請求項4】
前記第2の位相差は、前記第1の位相差と同じである請求項3に記載の処理回路。
【請求項5】
前記分周及び遅延回路は、前記位相シフト設定信号に基づいて、前記第1の位相差を設定する第1の位相シフト設定回路を有し、
前記制御回路は、前記位相シフト設定信号に基づいて、前記第2の位相差を設定する第2の位相シフト設定回路を有し、
前記第1及び第2の位相シフト設定回路は、前記分周及び遅延回路及び前記制御回路によって共有される回路として設けられる請求項3又は4に記載の処理回路。
【請求項6】
前記クロック生成回路は、分周回路を有する位相ロックループ回路であり、
前記周波数設定信号は、前記分周回路の分周比を示す信号である請求項1~5のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項7】
前記分周回路は、前記第1のクロック信号に基づいて、カウント値をカウントし、
前記分周及び遅延回路は、前記カウント値に基づいて、前記第2のクロック信号を生成し、
前記制御回路は、前記カウント値に基づいて、前記変換トリガ信号を生成する請求項6に記載の処理回路。
【請求項8】
前記第1の位相差は、180°である請求項1~7のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項9】
前記変換期間のサイクル数は、前記周波数設定信号にかかわらず、一定である請求項1~8のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項10】
前記第1のクロック信号の周波数は、前記周波数設定信号に応じて変化し、
前記第2のクロック信号の周波数は、前記周波数設定信号にかかわらず、一定である請求項1~9のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項11】
前記デジタル信号処理回路は、前記デジタル信号に対して復調処理を行う復調回路である請求項1~10のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項12】
受信信号と、参照クロック信号に基づいて生成された第3のクロック信号をミキシングするミキサ回路と、
前記ミキサ回路の出力信号に基づくアナログ信号を入力する処理回路とを有し、
前記処理回路は、
前記参照クロック信号と周波数設定信号に基づいて、前記参照クロック信号より高い周波数を有する第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成回路と、
位相シフト設定信号と前記周波数設定信号に基づいて、前記第1のクロック信号を分周し、かつ、遅延させることにより、前記参照クロック信号と第1の位相差を有するように、前記第1のクロック信号より低い周波数を有する第2のクロック信号を生成する分周及び遅延回路と、
前記第1のクロック信号と、サンプリング期間と変換期間を示す変換トリガ信号に基づいて、前記アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記第2のクロック信号に基づいて、前記デジタル信号に応じた処理を実行するデジタル信号処理回路と、
前記周波数設定信号と前記第1のクロック信号に基づいて、前記第2のクロック信号と同じ周期を有するように、前記変換トリガ信号を生成する制御回路とを有する無線通信回路。
【請求項13】
前記参照クロック信号に基づいて、前記参照クロック信号より高い周波数を有するように、前記第3のクロック信号を生成する第2のクロック生成回路をさらに有する請求項12に記載の無線通信回路。
【請求項14】
前記第2のクロック生成回路は、前記アナログデジタル変換回路及び前記デジタル信号処理回路の少なくとも一方と異なる位相で駆動されるデルタシグマ変調回路を有する、小数分周型または分数分周型の位相ロックループ回路である請求項13に記載の無線通信回路。
【請求項15】
前記制御回路は、前記周波数設定信号に基づいて、前記第2のクロック信号と同じ周期を維持しながら、前記サンプリング期間と前記変換期間の比率を変更させることにより、前記変換トリガ信号を生成する請求項12~14のいずれか1項に記載の無線通信回路。
【請求項16】
前記制御回路は、前記位相シフト設定信号に基づいて、前記参照クロック信号と第2の位相差を有するように、前記変換トリガ信号を生成する請求項12~15のいずれか1項に記載の無線通信回路。
【請求項17】
前記第1のクロック生成回路は、分周回路を有する位相ロックループ回路であり、
前記周波数設定信号は、前記分周回路の分周比を示す信号である請求項12~16のいずれか1項に記載の無線通信回路。
【請求項18】
前記変換期間のサイクル数は、前記周波数設定信号にかかわらず、一定である請求項12~17のいずれか1項に記載の無線通信回路。
【請求項19】
前記第1のクロック信号の周波数は、前記周波数設定信号に応じて変化し、
前記第2のクロック信号の周波数は、前記周波数設定信号にかかわらず、一定である請求項12~18のいずれか1項に記載の無線通信回路。
【請求項20】
受信信号と第3のクロック信号をミキシングするミキサ回路と、
前記ミキサ回路の出力信号に基づくアナログ信号を入力する第1の処理回路と、
前記第1の処理回路の出力信号を処理する第2の処理回路とを有し、
前記第1の処理回路は、
参照クロック信号と周波数設定信号に基づいて、前記参照クロック信号より高い周波数を有する第1のクロック信号を生成するクロック生成回路と、
位相シフト設定信号と前記周波数設定信号に基づいて、前記第1のクロック信号を分周し、かつ、遅延させることにより、前記参照クロック信号と第1の位相差を有するように、前記第1のクロック信号より低い周波数を有する第2のクロック信号を生成する分周及び遅延回路と、
前記第1のクロック信号と、サンプリング期間と変換期間を示す変換トリガ信号に基づいて、前記アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記第2のクロック信号に基づいて、前記デジタル信号に応じた処理を実行するデジタル信号処理回路と、
前記周波数設定信号と前記第1のクロック信号に基づいて、前記第2のクロック信号と同じ周期を有するように、前記変換トリガ信号を生成する制御回路とを有する半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理回路、無線通信回路及び半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、狭域通信用の電波を送受信可能な通信部と、第1の基準信号に基づいて、狭域通信用の電波の受信に応じて生成された受信信号を中間周波数に変換する変換部とを有する無線通信装置が記載されている。生成部は、第1の基準信号とは異なる周波数の第2の基準信号に基づいて、狭域通信用の電波の送信に用いられる送信信号を生成する。供給部は、変換部への第1の基準信号の供給、及び生成部への第2の基準信号の供給を切替可能である。
【0003】
特許文献2には、サンプリングしたアナログ信号とデジタルコードとに基づいてアナログ電圧を生成する第1回路と、第1クロック信号を生成するクロック生成回路とを有するアナログ/デジタル変換回路が記載されている。比較回路は、第1回路が出力するアナログ電圧が入力され、第1クロック信号に基づいてデジタル出力する。DAC制御回路は、比較回路のデジタル出力に基づいて、デジタルコードを生成する。クロック生成回路は、アナログ信号のサンプリングが終了してから第1クロック信号の生成を開始するまでの遅延期間を、アナログ信号のサンプリング毎に可変にさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/207499号
【特許文献2】特開2018-152768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信装置は、微弱な電波を受信するので、わずかな雑音にも敏感であり、雑音に基づく受信感度の劣化を生じやすい。
【0006】
本発明の目的は、クロック信号に基づく雑音を低減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
処理回路は、参照クロック信号と周波数設定信号に基づいて、前記参照クロック信号より高い周波数を有する第1のクロック信号を生成するクロック生成回路と、位相シフト設定信号と前記周波数設定信号に基づいて、前記第1のクロック信号を分周し、かつ、遅延させることにより、前記参照クロック信号と第1の位相差を有するように、前記第1のクロック信号より低い周波数を有する第2のクロック信号を生成する分周及び遅延回路と、前記第1のクロック信号と、サンプリング期間と変換期間を示す変換トリガ信号に基づいて、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、前記第2のクロック信号に基づいて、前記デジタル信号に応じた処理を実行するデジタル信号処理回路と、前記周波数設定信号と前記第1のクロック信号に基づいて、前記第2のクロック信号と同じ周期を有するように、前記変換トリガ信号を生成する制御回路とを有する。
【発明の効果】
【0008】
クロック信号に基づく雑音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の比較例による無線通信回路の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、クロック信号と、変換トリガ信号と、アナログデジタル変換回路の内部状態と、アナログデジタル変換回路の出力データの例を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、参照クロック信号とクロック信号の位相関係を示す図である。
【
図4】
図4は、第2の比較例による無線通信回路の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態による半導体集積回路の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、クロック信号の位相関係を示す図である。
【
図7】
図7は、分周回路と分周及び遅延回路とADCCの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、分周回路と分周及び遅延回路とADCCの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図9】
図9(A)及び(B)は、クロック信号と電流の例を示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10(A)及び(B)は、無線通信回路の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、第1の比較例による無線通信回路101の構成例を示す図である。無線通信回路101は、例えば、電子料金収受システム(ETC:Electric Toll Collection System)で利用される。ETCは、有料道路の料金の決済システムであり、日本全国で整備されている。ETCの自動収受技術(車載器と路側間の双方向通信技術)を、様々な分野で利用可能とするものが狭域通信(DSRC:Dedicated Short-Range Communication)システムである。DRSCは、例えば、駐車場管理や物流管理、ガソリン代決済等の分野において利用が期待されている。
【0011】
DSRCは、5.8GHzバンドを用いる無線通信であり、ARIB STD-T75標準規格に規定されている。変調方式は、ASKとπ/4シフトQPSKの2種が使われる。ASK変調の場合、スプリットフェーズ符号化された2048kbaudの変調信号が使用され、信号送信速度は1024kbpsである。QPSKの場合、4相位相変調された2048kbaudの変調信号が使用され、信号送信速度は4096kbpsである。ASKとQPSKは、いずれの場合も、シンボルレートが2048kbaudであるため、無線通信回路101は、共通にでき、両方の変調方式に対応したものとして実現される。
【0012】
無線通信回路101では、デジタルで実現が可能な信号処理は、できる限りロジック回路で実装することが望ましい。デジタル回路の処理結果は確定的であり、アナログ回路で実現した場合に生じる各種問題、例えば、製造ばらつきによる特性の個体差、デバイス雑音による特性劣化、特性の温度ドリフト等を排除することができるからである。デジタル信号処理の規模が大きくなる場合、従来は規模的な制約と速度的な制約が存在した。しかし、製造プロセスが進化して、リソグラフィがシュリンクするのに伴い、論理規模に関する制約は急激に小さくなっている。
【0013】
無線通信回路101にとって重要な構成要素の1つがアナログデジタル変換回路(ADC)115である。アナログ信号処理回路とデジタル信号処理回路の境界部には、アナログ信号をデジタイズするためのアナログデジタル変換回路115が置かれる。アナログデジタル変換回路115は、入力された信号を信号電圧の大小に応じたデジタルコードへ変換する。
【0014】
無線通信回路101には、アンテナ102と発振回路103が接続される。無線通信回路101は、受信回路であり、低雑音増幅回路(LNA)111と、直交ミキサ回路112と、バンドパスフィルタ回路113と、可変ゲイン増幅回路(VGA)114と、アナログデジタル変換回路115と、復調回路116を有する。
【0015】
さらに、無線通信回路101は、位相シフト回路117と、位相ロックループ(PLL)回路118と、位相ロックループ回路123と、分周回路127と、アナログデジタル変換コントローラ(ADCC)128を有する。
【0016】
アンテナ102は、電波を無線受信し、受信信号を低雑音増幅回路111に出力する。受信信号は、ASK変調又はQPSK変調された変調信号である。低雑音増幅回路111は、アンテナ102により受信された受信信号を増幅し、その増幅した受信信号を直交ミキサ回路112に出力する。
【0017】
発振回路103は、参照クロック信号CK1を生成する。参照クロック信号CK1は、例えば、32.768MHzである。位相ロックループ回路118は、参照クロック信号CK1に基づき、クロック信号CK2を生成する。クロック信号CK2の周波数は、受信信号の周波数に対して、中間周波数のぶんオフセットした周波数である。例えば、中間周波数が3.072MHzである直交ミキサ回路112で5800MHzのチャネルを選択する場合には、クロック信号CK2の周波数は、5803.072MHz又は5796.928GHzである。このように、参照クロック信号CK1の周波数に対して整数比ではない周波数のクロック信号CK2を生成するために、小数分周型(分数分周型)の位相ロックループ回路118を用いる。
【0018】
位相ロックループ回路118は、位相検出回路(位相比較回路)119と、電圧制御発振回路(VCO)120と、分周回路121と、デルタシグマ変調回路122を有する。位相検出回路119は、参照クロック信号CK1とクロック信号CK5との位相差を検出し、その位相差に基づく電圧を電圧制御発振回路120に出力する。電圧制御発振回路120は、その電圧に基づく周波数のクロック信号CK2を生成する。デルタシグマ変調回路122は、クロック信号CK5に基づいて、分周回路121を制御する。分周回路121は、デルタシグマ変調回路122の制御により、クロック信号CK2を小数分周(分数分周)したクロック信号CK5を位相検出回路119に出力する。クロック信号CK2及びCK5の周波数比は、小数(分数)である。したがって、クロック信号CK1及びCK2の周波数比も小数(分数)である。位相ロックループ回路118は、クロック信号CK1及びCK5の位相差が0に近付くようにフィードバック制御し、クロック信号CK2を生成する。
【0019】
位相シフト回路117は、クロック信号CK2の位相をシフトすることにより、0°のクロック信号と90°のクロック信号を直交ミキサ回路112に出力する。0°のクロック信号と90°のクロック信号は、相互に90°の位相差を有する。
【0020】
直交ミキサ回路112は、低雑音増幅回路111が出力する受信信号と0°のクロック信号をミキシング(乗算)し、低雑音増幅回路111が出力する受信信号と90°のクロック信号をミキシング(乗算)する。そして、直交ミキサ回路112は、受信信号と0°のクロック信号をミキシングすることによるI信号(同相信号)と、受信信号と90°のクロック信号をミキシングすることによるQ信号(直交信号)を出力する。
【0021】
バンドパスフィルタ回路113は、直交ミキサ回路112が出力するI信号とQ信号の不要な周波数成分を除去し、除去後のI信号とQ信号を出力する。可変ゲイン増幅回路114は、バンドパスフィルタ回路113が出力するI信号とQ信号を増幅し、増幅したI信号とQ信号をアナログデジタル変換回路115に出力する。
【0022】
アナログデジタル変換回路115は、例えば、中間周波数を3.072MHz、狭域通信の専有周波数帯域幅を4.4MHzとすれば、最大3.072MHz+4.4MHz/2=5.272MHzの信号を変換することになる。そこで、例えば、アナログデジタル変換回路115は、サンプルレートを32.768MHzに設定すれば、信号周波数に対して十分高いサンプルレートで変換できる。
【0023】
アナログデジタル変換回路115は、例えばゲート長が90ナノメートル以降のCMOSテクノロジノードでは、逐次比較型のアナログデジタル変換回路を採用することが合理的である。逐次比較型のアナログデジタル変換回路115は、アナログ信号の1点のアナログデジタル変換を行う場合、最初にアナログ信号電圧に応じた電荷をサンプリングし、その後、2分検索を行って、例えば12ビットのデジタル値を求める。つまり、逐次比較型のアナログデジタル変換回路115は、サンプルレートに対して、例えば20倍の周波数のクロック信号CK3が必要である。そのため、位相ロックループ回路123は、参照クロックCK1を20倍に逓倍して、クロック信号CK3を生成する。例えば、参照クロック信号CK1の周波数は32.768MHzであり、クロック信号CK3の周波数は655.36MHzである。このように、参照クロック信号CK1の周波数に対して整数比(20倍)の周波数のクロック信号CK3を生成するために、整数分周の位相ロックループ回路123を用いる。
【0024】
位相ロックループ回路123は、位相検出回路124と、電圧制御発振回路125と、分周回路126を有する。位相検出回路124は、参照クロック信号CK1とクロック信号CK6との位相差を検出し、その位相差に基づく電圧を電圧制御発振回路125に出力する。電圧制御発振回路125は、その電圧に基づく周波数のクロック信号CK3を生成する。分周回路126は、クロック信号CK3を20分周したクロック信号CK6を位相検出回路124に出力する。クロック信号CK3及びCK6の周波数比は、20倍である。したがって、クロック信号CK1及びCK3の周波数比も20倍である。位相ロックループ回路123は、クロック信号CK1及びCK6の位相差が0に近付くようにフィードバック制御し、クロック信号CK3を生成する。
【0025】
分周回路127は、クロック信号CK3を20分周したクロック信号CK4を復調回路116に出力する。例えば、クロック信号CK3の周波数は、655.36MHzである。クロック信号CK4の周波数は、クロック信号CK3の周波数の1/20倍の周波数であり、例えば32.768MHzである。また、分周回路127は、クロック信号CK3に基づいて、0~19のカウント値を繰り返しカウントし、そのカウント値をADCC128に出力する。
【0026】
ADCC128は、アナログデジタル変換コントローラであり、クロック信号CK3と分周回路127のカウント値に基づき、変換トリガ信号STCをアナログデジタル変換回路115に出力する。変換トリガ信号STCは、アナログデジタル変換のためのサンプリング期間と変換期間を示す信号である。
【0027】
アナログデジタル変換回路115は、クロック信号CK3と変換トリガ信号STCに基づいて、可変ゲイン増幅回路114が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。具体的には、アナログデジタル変換回路115は、可変ゲイン増幅回路114が出力するアナログのI信号とQ信号をデジタルのI信号とQ信号に変換する。
【0028】
復調回路116は、クロック信号CK4に基づき、アナログデジタル変換回路115が出力するデジタルのI信号とQ信号に対して、ASK復調処理又はQPSK復調処理を行い、データを復元する。復調回路116は、アナログデジタル変換回路115と同期して動作する必要があるので、アナログデジタル変換回路115のクロック信号CK3を例えば20分周して生成されたクロック信号CK4を入力する。アナログデジタル変換回路115と復調回路116は、クロック信号CK3のエッジを起点とする論理で動作するため、アナログデジタル変換回路115と復調回路116間の同期関係が維持される。
【0029】
図2は、クロック信号CK3と、変換トリガ信号STCと、アナログデジタル変換回路115の内部状態と、アナログデジタル変換回路115の出力データD[11:0]と、クロック信号CK4の例を示すタイミングチャートである。変換トリガ信号STCの周期は、クロック信号CK3の周期の20倍である。クロック信号CK4の周期は、変換トリガ信号STCの周期と同じであり、クロック信号CK3の周期の20倍である。
【0030】
変換トリガ信号STCは、ハイレベル期間がサンプリング期間を示し、ローレベル期間が変換期間を示す。アナログデジタル変換回路115は、クロック信号CK3と変換トリガ信号STCを入力する。変換トリガ信号STCがアサートされると、アナログデジタル変換回路115は、次のクロック信号CK3の立ち上がりエッジ(図中のサイクル0)で、サイクル0のアナログ信号のサンプリングを開始する。次に、変換トリガ信号STCがネゲートされると、アナログデジタル変換回路115は、次のクロック信号CK3の立ち上がりエッジ(図中のサイクル4)で、サイクル0のアナログ信号のサンプリングを終了し、アナログデジタル変換のための2分検索を開始する。2分検索は、12ビットバイナリコードD11~D0の上位から1ビットずつ順に決定される。
【0031】
図2の内部状態は、12ビットバイナリコードのD11からD0までを順次判定を行うことを示しているが、そこにD5RとD2Rの状態が含まれる。このD5RとD2Rは、それぞれ、冗長判定を示し、その時点までに含まれる判定誤りを救済するための処理である。判定誤りの原因は、無線通信回路101のパッケージの寄生インダクタンスがアナログデジタル変換回路115のセトリング不良を引き起こすことが代表例である。アナログデジタル変換回路115は、サイクル20で2分検索を終えると、次のクロック信号CK3の立ち上がりエッジで、アナログデジタル変換回路115の出力データD[11:0]を更新する。
【0032】
クロック信号CK4は、分周回路127がクロック信号CK3を20分周したクロック信号であり、復調回路116に供給される。復調回路116は、クロック信号CK4の立ち上がりエッジで駆動される。ここで、変換トリガ信号STCとクロック信号CK4は、周期が相互に同一であり、ハイレベル期間とローレベル期間のサイクル数が異なる。そのため、ADCC128は、分周回路127の内部の20カウンタのカウント値に基づき、変換トリガ信号STCを生成する。ADCC128と分周回路127の間の結線は、ADCC128が分周回路127のカウント値を参照することを示している。
【0033】
図3は、参照クロック信号CK1とクロック信号CK4の位相関係を示す図である。クロック信号CK1及びCK4の周波数は、相互に同じであり、例えば、32.768MHzである。
図1の無線通信回路101の場合、参照クロック信号CK1とクロック信号CK4の位相関係は確定的ではない。クロック信号CK4の取り得る位相は、参照クロック信号CK1を基準にすると、20通りある。
【0034】
クロック信号CK4は、分周回路127がクロック信号CK3を分周したクロック信号である。クロック信号CK3は、位相ロックループ回路123が参照クロック信号CK1に基づき生成したクロック信号である。そのため、参照クロック信号CK1に対するクロック信号CK4の位相は、無線通信回路101のリセットの投入タイミング、デバイス雑音等の初期条件によって、起動するたびに変化する。クロック信号CK4とアナログデジタル変換回路115の内部状態は同期するため、参照クロック信号CK1と、アナログデジタル変換回路115及び復調回路116の動作には、20通りの位相関係が存在する。すると、20通りの位相関係のそれぞれの場合で、無線通信回路101の受信感度が変化する。
【0035】
すると、例えば、無線通信回路101は、フィールドにおける性能を保証するために、出荷時に不良選別を行うことを考えると、20通りの位相関係の場合について試験を行う必要が生じる。これは、出荷試験コストを増大させてしまう。
【0036】
図4は、クロック信号CK1及びCK4の位相関係が不確定の課題を解決するための第2の比較例による無線通信回路101の構成例を示す図である。
図4の無線通信回路101は、
図1の無線通信回路101に対して、分周回路127を削除したものである。以下、
図4の無線通信回路101が
図1の無線通信回路101と異なる点を説明する。
【0037】
分周回路126は、クロック信号CK3を20分周したクロック信号CK4を位相検出回路124及び復調回路116に出力する。例えば、クロック信号CK3の周波数は655.36MHzであり、クロック信号CK4の周波数は32.768MHzである。位相検出回路124は、クロック信号CK1及びCK4の位相差を示す電圧を電圧制御発振回路125に出力する。位相ロックループ回路123は、クロック信号CK1及びCK4の位相差を0に近づけるようにフィードバックするので、定常状態では、クロック信号CK1及びCK4の位相が相互に一致する。
【0038】
また、分周回路126は、クロック信号CK3に基づいて、0~19のカウント値を繰り返しカウントし、そのカウント値をADCC128に出力する。ADCC128は、クロック信号CK3と分周回路126のカウント値に基づき、変換トリガ信号STCをアナログデジタル変換回路115に出力する。これにより、アナログデジタル変換回路115のサンプリングと復調回路116の処理は同期する。クロック信号CK4と変換トリガ信号STCの関係は、
図2の場合と同じである。
【0039】
位相ロックループ回路123は、クロック信号CK1及びCK4の位相差が0に近づくように制御するので、クロック信号CK1及びCK4の位相関係は常に同じである。そのため、
図4の無線通信回路101は、
図1の無線通信回路101におけるクロック信号CK1及びCK4の位相関係が不確定の課題を解決することができる。
【0040】
位相ロックループ回路118は、例えば5MHz間隔の受信チャネル周波数に同調するために、小数分周型が用いられる。小数分周型(分数分周型)の位相ロックループ回路118は、デルタシグマ変調回路122が必要であり、比較的論理規模が大きい。デルタシグマ変調回路122は、位相検出回路119に入力される帰還クロック信号CK5で駆動されるので、結果的に、参照クロック信号CK1の32.768MHzに同期して動作する。
【0041】
つまり、デルタシグマ変調回路122とアナログデジタル変換回路115と復調回路116は、参照クロック信号CK1の立ち上がりエッジで駆動されることになる。参照クロック信号CK1の周波数は、例えば32.768MHzである。
【0042】
32.768MHzの参照クロック信号CK1に同期して動作するデルタシグマ変調回路122とアナログデジタル変換回路115と復調回路116は、32.768MHzの整数倍の高調波を発する。そのため、例えば、狭域通信では、デルタシグマ変調回路122とアナログデジタル変換回路115と復調回路116は、32.768MHz×177=5799.936GHzの周囲に高調波雑音が発生し、これが無線通信回路101の受信部(例えば、直交ミキサ回路112)に注入されて、無線通信回路101の5800MHzチャネルの受信感度を劣化させる。
【0043】
復調回路116が32.768MHzのクロック信号CK4の周期で電源から引く電荷量は、処理内容によって刻一刻と変化するもので、雑音とみることができる。デルタシグマ変調回路122が32.768MHzのクロック信号CK5の周期で電源から引く電荷量は、デルタシグマ変調回路122の内部状態に応じて毎回異なるため、周期的ではなく、雑音とみなすべきものである。
【0044】
アナログデジタル変換回路115は、サンプリングに伴い、前段の可変ゲイン増幅回路114から電荷を引く。このときに引く電荷量は、1つ前にサンプリングした電荷量と現在変換している電圧によるため、雑音といえる。
【0045】
以上の参照クロック信号CK1に同期するデルタシグマ変調回路122とアナログデジタル変換回路115と復調回路116で生じる雑音のうちの高い周波数成分は、何らの経路を通じて、無線通信回路101の受信部の雑音となる。これらの雑音が無線通信回路101の受信部へ伝わる経路としては、電源配線を経由する経路、信号経路を経由する経路、空間的な結合を通じる経路、シリコン基板を経由する経路等の様々な経路がある。しかし、無線通信回路101の全ての構成要素を1つのシリコンダイに集積するSoCの場合、上記の3つのクロック同期回路と無線通信回路101の受信部との結合の度合いを小さくするには限界があり、無線通信回路101の受信感度が劣化する主要因となる。以下、この課題を解決するための実施形態を説明する。
【0046】
図5は、本実施形態による半導体集積回路500の構成例を示す図である。半導体集積回路500は、無線通信回路101と、アンテナ102と、発振回路103と、処理回路505を有する。処理回路505は、例えば、マイクロコントローラ、DSP(Digital Signal Processor)又は中央処理ユニット(CPU)である。
【0047】
シリコンCMOSプロセスの微細化に伴い、無線通信回路101は、シングルチップのシリコンダイへ集積することが可能である。その適用範囲は、狭域通信にも及ぶ。例えば、狭域通信の半導体集積回路500は、5.8GHzバンドの直交ミキサ回路112と、復調回路116と、システム制御を司る処理回路(マイクロコントローラ)505と、フラッシュメモリを含み、SoCの形態で実現される。
【0048】
図5の無線通信回路101は、
図4の無線通信回路101に対して、分周回路126を削除し、分周及び遅延回路502と、不揮発性メモリ503と、分周回路504を追加したものである。
【0049】
無線通信回路101には、アンテナ102と発振回路103と処理回路505が接続される。無線通信回路101は、低雑音増幅回路111と、直交ミキサ回路112と、バンドパスフィルタ回路113と、可変ゲイン増幅回路114と、位相シフト回路117と、位相ロックループ回路118と、処理回路501を有する。処理回路501は、アナログデジタル変換回路115と、復調回路116と、位相ロックループ回路123と、ADCC128と、分周及び遅延回路502と、不揮発性メモリ503を有する。
【0050】
アンテナ102と、低雑音増幅回路111と、直交ミキサ回路112と、バンドパスフィルタ回路113と、可変ゲイン増幅回路114と、アナログデジタル変換回路115と、復調回路116は、
図1及び
図4のものと同様である。また、位相シフト回路117と位相ロックループ回路118も、
図1及び
図4のものと同様である。
【0051】
不揮発性メモリ503は、位相シフト設定値(位相シフト設定信号)PSHIFTと分周比(周波数設定信号)Nを記憶する。位相シフト設定値PSHIFTと分周比Nは、無線通信回路101の製造個体ごとに異なる値を記憶させることができる。不揮発性メモリ503は、位相シフト設定値(位相シフト設定信号)PSHIFTを分周及び遅延回路502に出力し、分周比(周波数設定信号)Nを分周回路504に出力する。位相シフト設定値PSHIFTは、参照クロック信号CK1とクロック信号CK4との位相差を示す設定値である。分周比Nは、分周回路504の分周比である。分周比Nは、クロック信号CK6に対するクロック信号CK3の周波数比、すなわち、参照クロック信号CK1に対するクロック信号CK3の周波数比である。
【0052】
位相ロックループ回路123は、位相検出回路124と、電圧制御発振回路125と、分周回路504を有する。位相ロックループ回路123は、クロック生成回路であり、参照クロック信号CK1と分周比Nに基づいて、参照クロック信号CK1より高い周波数を有するクロック信号CK3を生成する。
【0053】
位相検出回路124は、参照クロック信号CK1とクロック信号CK6との位相差を検出し、その位相差に基づく電圧を電圧制御発振回路125に出力する。電圧制御発振回路125は、その電圧に基づく周波数のクロック信号CK3を生成する。分周回路504は、不揮発性メモリ503に記憶されている分周比Nに基づき、クロック信号CK3をN分周したクロック信号CK6を位相検出回路124に出力する。例えば、分周比Nが20である場合、分周回路504は、クロック信号CK3を20分周して、クロック信号CK6を生成する。クロック信号CK6に対するクロック信号CK3の周波数比は、N倍である。したがって、参照クロック信号CK1に対するクロック信号CK3の周波数比もN倍である。位相ロックループ回路123は、クロック信号CK1及びCK6の位相差が0に近付くようにフィードバック制御し、クロック信号CK3を生成する。定常状態では、クロック信号CK1及びCK6の位相が相互に一致する。
【0054】
例えば、参照クロック信号CK1及びクロック信号CK6の周波数は、32.768MHzである。分周比Nが20である場合、クロック信号CK3の周波数は、655.36MHzである。分周比Nは、クロック信号CK3の周波数を設定するための周波数設定値である。
【0055】
また、分周回路504は、クロック信号CK3に基づいて、0~N-1のカウント値CNTを繰り返しカウントし、そのカウント値CNTをADCC128と分周及び遅延回路502に出力する。
【0056】
分周及び遅延回路502は、
図6に示すように、不揮発性メモリ503に記憶されている位相シフト設定値PSHIFT及び分周比Nと、分周回路504のカウント値CNTに基づいて、クロック信号CK3をN分周し、かつ、遅延させることにより、参照クロック信号CK1と位相差を有するように、クロック信号CK3より低い周波数を有するクロック信号CK4を生成する。分周回路504のカウント値CNTは、分周比Nに基づく0~N-1のカウント値である。
【0057】
例えば、参照クロック信号CK1の周波数は、32.768MHzである。分周比Nが20である場合、クロック信号CK3の周波数CK3は、655.36MHzである。クロック信号CK4の周波数は、参照クロック信号CK1の周波数と同じであり、32.768MHzである。
【0058】
位相シフト設定値PSHIFTは、0~N-1の値である。分周比Nが20である場合、位相シフト設定値PSHIFTは、0~19の値である。クロック信号CK4は、位相シフト設定値PSHIFTに応じて、クロック信号CK1に対する位相差が異なる。
【0059】
位相シフト設定値PSHIFTが0である場合、クロック信号CK4は、クロック信号CK1に対する位相差が0である。位相シフト設定値PSHIFTが1である場合、クロック信号CK4は、クロック信号CK1に対する位相差がクロック信号CK3の1サイクルである。位相シフト設定値PSHIFTが2である場合、クロック信号CK4は、クロック信号CK1に対する位相差がクロック信号CK3の2サイクルである。以上のように、クロック信号CK4は、クロック信号CK1に対して、位相シフト設定値PSHIFTに応じたクロック信号CK3のサイクル数の分だけ位相シフトされたものである。
【0060】
ADCC128は、アナログデジタル変換コントローラ(制御回路)であり、
図8に示すように、分周回路504のカウント値CNTと位相シフト設定値PSHIFTとクロック信号CK3に基づいて、クロック信号CK4と同じ周期を有し、かつクロック信号CK4と同じ位相を有するように、変換トリガ信号STCを生成する。
【0061】
変換トリガ信号STCは、クロック信号CK4と同じ周期を有する。また、変換トリガ信号STCは、位相シフト設定値PSHIFTに基づき、クロック信号CK4と同じ位相を有する。例えば、
図6と同様に、位相シフト設定値PSHIFTが0である場合、変換トリガ信号STCは、クロック信号CK1に対する位相差が0である。位相シフト設定値PSHIFTが1である場合、変換トリガ信号STCは、クロック信号CK1に対する位相差がクロック信号CK3の1サイクルである。位相シフト設定値PSHIFTが2である場合、変換トリガ信号STCは、クロック信号CK1に対する位相差がクロック信号CK3の2サイクルである。なお、変換トリガ信号STCは、クロック信号CK4と同じ位相でなくてもよく、一定の位相差を有するようにしてもよい。
【0062】
ADCC128は、変換トリガ信号STCをアナログデジタル変換回路115に出力する。変換トリガ信号STCは、
図2に示すように、アナログデジタル変換のためのサンプリング期間と変換期間を示す信号である。変換トリガ信号STCは、ハイレベル期間がサンプリング期間を示し、ローレベル期間が変換期間を示す。
【0063】
アナログデジタル変換回路115は、クロック信号CK3と変換トリガ信号STCに基づいて、アナログのI信号とQ信号をデジタルのI信号とQ信号に変換する。具体的には、アナログデジタル変換回路115は、変換トリガ信号STCが示すサンプリング期間で、アナログ信号をサンプリングし、変換トリガ信号STCが示す変換期間で、アナログデジタル変換のための2分検索を行う。
【0064】
復調回路116は、デジタル信号処理回路であり、クロック信号CK4に基づいて、アナログデジタル変換回路115が出力するデジタル信号に応じた処理を実行する。具体的には、復調回路116は、クロック信号CK4に基づき、アナログデジタル変換回路115が出力するデジタルのI信号とQ信号に対して、ASK復調処理又はQPSK復調処理を行い、データを復元する。そして、復調回路116は、復元したデータを、無線通信回路101の出力信号として、処理回路505に出力する。処理回路505は、復調回路116の出力信号に対して、種々の処理を行う。
【0065】
前述のように、デルタシグマ変調回路122は、参照クロック信号CK1の立ち上がりエッジで駆動される。これに対して、以上のように、アナログデジタル変換回路115は、変換トリガ信号STCの立ち上がりエッジで駆動される。復調回路116は、クロック信号CK4に同期して駆動される。
【0066】
分周及び遅延回路502は、位相シフト設定値PSHIFTに基づいて、参照クロック信号CK1と位相差を有するクロック信号CK4を生成する。ADCC128は、位相シフト設定値PSHIFTに基づいて、参照クロック信号CK1と位相差を有する変換トリガ信号STCを生成する。参照クロック信号CK1と変換トリガ信号STCとの位相差は、参照クロック信号CK1とクロック信号CK4との位相差と同じである。
【0067】
したがって、クロック信号CK4と変換トリガ信号STCは、参照クロック信号CK1に対して、位相が異なるようにすることができる。これにより、アナログデジタル変換回路115と復調回路116の駆動タイミングは、デルタシグマ変調回路122の駆動タイミングと異ならせることができる。無線通信回路101は、雑音を低減し、受信感度の劣化を抑制することができる。
【0068】
無線通信回路101は、位相シフト設定値PSHIFTに応じて、参照クロック信号CK1に同期するデルタシグマ変調回路122の駆動位相と、クロック信号CK4に同期するアナログデジタル変換回路115及び復調回路116の駆動位相の関係を任意に設定することができる。
【0069】
なお、参照クロック信号CK1に対するクロック信号CK4の位相差と、参照クロック信号CK1に対する変換トリガ信号STCの位相差とを相互に異ならせてもよい。
【0070】
図7は、
図5の分周回路504と分周及び遅延回路502とADCC128の構成例を示す図である。分周回路504は、セレクタ701と、レジスタ702と、減算器703と、セレクタ704と、レジスタ705を有する。分周及び遅延回路502は、加算器706と、剰余演算器707と、セレクタ708と、レジスタ709を有する。ADCC128は、加算器706と、剰余演算器707と、セレクタ710と、レジスタ711を有する。分周及び遅延回路502とADCC128は、加算器706と剰余演算器707を共有する。
【0071】
図8は、
図7の分周回路504と分周及び遅延回路502とADCC128の動作例を示すタイミングチャートであり、分周比Nが20であり、位相シフト設定値PSHIFTが2である例を示す。
【0072】
セレクタ701とレジスタ702と減算器703は、カウント値CNTをカウントするカウンタを構成する。初期状態では、セレクタ701は、N-1をカウント値CNT1としてレジスタ702に出力する。分周比Nが20である場合、セレクタ701は、19のカウント値CNT1を出力する。レジスタ702は、クロック信号CK3の立ち上がりエッジが入力されると、セレクタ701から入力したN-1を保持し、その保持したN-1をカウント値CNTとして出力する。
【0073】
減算器703は、カウント値CNTから1を減算した値をセレクタ701に出力する。カウント値CNTが19の場合、減算器703は、18を出力する。セレクタ701は、カウント値CNTが0でないので、減算器703が出力した18をレジスタ702に出力する。レジスタ702は、クロック信号CK3の立ち上がりエッジが入力されると、セレクタ701から入力した18を保持し、保持した18をカウント値CNTとして出力する。
【0074】
以上のように、セレクタ701は、カウント値CNTが0でない場合には、減算器703の出力値をレジスタ702に出力し、カウント値CNTが0である場合には、N-1をレジスタ702に出力する。レジスタ702は、クロック信号CK3の立ち上がりエッジが入力されると、セレクタ701から入力した値を保持し、その保持した値をカウント値CNTとして出力する。これにより、クロック信号CK3の立ち上がりエッジがレジスタ702に入力されるたびに、カウント値CNTは、デクリメントされ、19、18、17、・・・、0、19、18、・・・の順で繰り返される。分周回路504のカウンタは、20サイクルで1周するバイナリカウンタである。
【0075】
セレクタ704とレジスタ705は、クロック信号CK6を生成するための論理回路である。セレクタ704は、カウント値CNTがN/2以上である場合には、1をレジスタ705に出力し、カウント値CNTがN/2未満である場合には、0をレジスタ705に出力する。レジスタ705は、クロック信号CK3の立ち上がりエッジが入力されると、セレクタ704の出力値を保持し、その保持した出力値をクロック信号CK6として出力する。クロック信号CK6は、クロック信号CK3をN分周したものになる。
【0076】
なお、セレクタ704は、N/2が整数でない場合、カウント値CNTがN/2の小数点以下の値の四捨五入、切り捨て又は切り上げによる整数以上であるか否かに応じて、1又は0を出力してもよい。また、セレクタ704は、カウント値CNTが固定値(例えば10)以上であるか否かに応じて、1又は0を出力してもよい。
【0077】
加算器706は、カウント値CNTと位相シフト設定値PSHIFTとを加算した値CNT+PSHIFTを出力する。位相シフト設定値PSHIFTは、例えば2である。剰余演算器707は、次式のように、加算器706の出力値CNT+PSHIFTを分周比Nで除算した場合の余りを、カウント値CNT2として出力する。ここで、%は剰余演算を示す。
CNT2=(CNT+PSHIFT)%N
【0078】
セレクタ708とレジスタ709は、カウント値CNT2に基づき、クロック信号CK4を生成する。セレクタ708は、カウント値CNT2がN/2以上である場合には、1をレジスタ709に出力し、カウント値CNT2がN/2未満である場合には、0をレジスタ709に出力する。レジスタ709は、クロック信号CK3の立ち上がりエッジが入力されると、セレクタ708の出力値を保持し、その保持した出力値をクロック信号CK4として出力する。クロック信号CK4は、クロック信号CK6の位相を位相シフト設定値PSHIFTだけシフトしたものであり、クロック信号CK6と同じ周期を有する。位相ロックループ回路123は、クロック信号CK1及びCK6の位相差を0に近づけるようにフィードバックし、定常状態では、クロック信号CK1及びCK6の位相が相互に一致するので、クロック信号CK4は、クロック信号CK1の位相を位相シフト設定値PSHIFTだけシフトした信号である。
【0079】
すなわち、加算器706及び剰余演算器707は、位相シフト設定値PSHIFTに基づいて、クロック信号CK6とクロック信号CK4の間の位相差、すなわち、クロック信号CK1とクロック信号CK4の間の位相差を設定する位相シフト設定回路として機能する。
【0080】
なお、セレクタ708は、N/2が整数でない場合、カウント値CNT2がN/2の小数点以下の値の四捨五入、切り捨て又は切り上げによる整数以上であるか否かに応じて、1又は0を出力してもよい。また、セレクタ708は、カウント値CNT2が固定値(例えば10)以上であるか否かに応じて、1又は0を出力してもよい。
【0081】
セレクタ710とレジスタ711は、カウント値CNT2に基づき、変換トリガ信号STCを生成する。セレクタ710は、カウント値CNT2が16以上である場合には、1をレジスタ711に出力し、カウント値CNT2が16未満である場合には、0をレジスタ711に出力する。レジスタ711は、クロック信号CK3の立ち上がりエッジが入力されると、セレクタ710の出力値を保持し、その保持した出力値を変換トリガ信号STCとして出力する。変換トリガ信号STCの位相は、クロック信号CK4の位相と同じであり、クロック信号CK6の位相を位相シフト設定値PSHIFTだけシフトしたものである。変換トリガ信号STCの周期は、クロック信号CK6及びCK4の周期と同じである。位相ロックループ回路123は、クロック信号CK1及びCK6の位相差を0に近づけるようにフィードバックし、定常状態では、クロック信号CK1及びCK6の位相が相互に一致するので、変換トリガ信号STCは、クロック信号CK1の位相を位相シフト設定値PSHIFTだけシフトした信号である。
【0082】
すなわち、加算器706及び剰余演算器707は、位相シフト設定値PSHIFTに基づいて、クロック信号CK6と変換トリガ信号STCの間の位相差、すなわち、クロック信号CK1と変換トリガ信号STCの間の位相差を設定する位相シフト設定回路として機能する。
【0083】
なお、
図7では、加算器706及び剰余演算器707が分周及び遅延回路502及びADCC128によって共有されているため、変換トリガ信号STCの位相は、クロック信号CK4の位相と同じであるが、この態様には限定されない。例えば、加算器706及び剰余演算器707の回路ブロックを分周及び遅延回路502及びADCC128に対して個別に設け、少なくとも一方の回路ブロックの加算器706において、位相シフト設定値PSHIFTにさらに一定のオフセット値を加算するような回路構成をとることにより、変換トリガ信号STCの位相とクロック信号CK4の位相を異なるものとすることができる。
【0084】
図9(A)及び(B)は、クロック信号CK1と、クロック信号CK4と、電流IDD1と、電流IDD4と、電流IDD1+IDD4の例を示すタイミングチャートである。電流IDD1は、クロック信号CK1の位相で駆動されるデルタシグマ変調回路122に流れる電流を示す。電流IDD4は、クロック信号CK4の位相で駆動されるアナログデジタル変換回路115と復調回路116に流れる電流を示す。電流IDD1+IDD4は、電流IDD1と電流IDD4の和の電流を示す。電流IDD1及びIDD4は、電流波形をのこぎり波で近似している。電流IDD1と電流IDD4の振幅は、相互に等しいものとして単純化している。
【0085】
図9(A)は、参照クロック信号CK1に対するクロック信号CK4の位相が0°である場合のタイミングチャートであり、
図4の第2の比較例による無線通信回路101の場合のタイミングチャートである。参照クロック信号CK1とクロック信号CK4との位相差は0°である。
【0086】
図9(B)は、参照クロック信号CK1に対するクロック信号CK4の位相が180°である場合のタイミングチャートであり、
図5の本実施形態による無線通信回路101の場合のタイミングチャートである。参照クロック信号CK1とクロック信号CK4との位相差は、位相シフト設定値PSHIFTにより設定可能であり、180°である。
【0087】
図9(B)の電流IDD1+IDD4は、
図9(A)の電流IDD1+IDD4に対して、振幅が半分であり、周期が半分である。参照クロック信号CK1とクロック信号CK4が32.768MHzである場合、32.768MHzの177次高調波は、狭域通信の5800MHzチャネルとほぼ一致する。
【0088】
そのため、
図9(A)に対応する
図4の無線通信回路101は、高調波が受信部(例えば、直交ミキサ回路112)へ注入されると雑音となり、受信感度を劣化させる。のこぎり波のn次高調波の振幅は、1/nであるので、1次調波の振幅を1とすれば、177次の高調波の振幅は1/177である。無線通信回路101の受信部は、アンテナ102から入力微弱な信号を処理する回路であるので、わずかな雑音注入に敏感である。そのため、
図9(A)に対応する
図4の無線通信回路101は、受信感度が劣化する。
【0089】
図9(B)に対応する
図5の無線通信回路101では、電流IDD1と電流IDD4の振幅が相互に等しいと仮定している。その場合、電流IDD1+IDD4は、電流波形が32.768MHz×2=65.536MHzののこぎり波になり、n次高調波が5800MHzチャネルと衝突しない。そのため、
図9(B)に対応する
図5の無線通信回路101は、受信感度の劣化がない。
【0090】
図9(A)及び(B)では、上記のように単純化したモデルで説明をした。実際には、電流IDD1と電流IDD4は、のこぎり波ではなく、より複雑である。電流IDD1と電流IDD4の振幅は、同じではない。そのため、
図5の無線通信回路101では、例えば5800MHzの高調波雑音の影響が完全に消えるとは限らない。しかし、
図5の無線通信回路101は、位相シフト設定値PSHIFTを調整し、最適な位相シフト設定値PSHIFTを設定することにより、参照クロック信号CK1の同期回路とクロック信号CK4の同期回路が引き起こす感度劣化の課題を軽減することができる。
【0091】
以上のように、
図5の無線通信回路101は、デルタシグマ変調回路122と、アナログデジタル変換回路115及び復調回路116とを、異なる位相で駆動することにより、高調波雑音を制御し、受信感度の劣化を抑制することができる。
【0092】
図10(A)及び(B)は、
図5の無線通信回路101の動作例を示すタイミングチャートである。
図10(A)及び(B)は、クロック信号CK3と、変換トリガ信号STCと、アナログデジタル変換回路115の内部状態と、電流IDD10又はIDD11の例を示すタイミングチャートである。
【0093】
図10(A)は、分周比Nが20である場合のタイミングチャートである。変換トリガ信号STCの周期は、クロック信号CK3の周期の20倍である。変換トリガ信号STCのハイレベル期間は、アナログデジタル変換回路115のサンプリング期間Ts1を示す。サンプリング期間Ts1では、アナログデジタル変換回路115は、アナログ信号の電荷を取得する。
【0094】
変換トリガ信号STCのローレベル期間は、アナログデジタル変換回路115の変換期間Tc1を示す。変換期間Tc1では、アナログデジタル変換回路115は、上記の取得したアナログ信号の電荷量に対応するデジタル値を検索する。
【0095】
サンプリング期間Ts1と変換期間Tc1の和は、クロック信号CK3の20サイクルに相当する。
図7のセレクタ710は、カウント値CNT2が16未満である場合に0を出力する。そのため、変換期間Tc1は、クロック信号CK3の16サイクルに相当する。したがって、サンプリング期間Ts1は、クロック信号CK3の4(=20-16)サイクルに相当する。アナログデジタル変換回路115は、20サイクル(32.768MHz)のサンプリングレートで、アナログデジタル変換を行う。
【0096】
電流IDD10は、分周比Nが20である場合にアナログデジタル変換回路115に流れる電流である。電流IDD10は、サンプリング期間Ts1の開始時のピークと、変換期間Tc1の開始時のピークを有する。サンプリング期間Ts1の開始時には、アナログデジタル変換回路115は、内部回路を初期化し、アナログ信号の電荷を取得するため、電流IDD10は、ピークを有する。また、変換期間Tc1の開始時には、アナログデジタル変換回路115は、最上位ビットに対応する容量素子の切り替わりが生じるため、電流IDD10は、ピークを有する。その結果、電流IDD10は、2つのピークを有する。
【0097】
図10(B)は、分周比Nが30である場合のタイミングチャートである。変換トリガ信号STCの周期は、クロック信号CK3の周期の30倍である。変換トリガ信号STCのハイレベル期間は、アナログデジタル変換回路115のサンプリング期間Ts2を示す。サンプリング期間Ts2では、アナログデジタル変換回路115は、アナログ信号の電荷を取得する。
【0098】
変換トリガ信号STCのローレベル期間は、アナログデジタル変換回路115の変換期間Tc2を示す。変換期間Tc2では、アナログデジタル変換回路115は、上記の取得したアナログ信号の電荷量に対応するデジタル値を検索する。
【0099】
サンプリング期間Ts2と変換期間Tc2の和は、クロック信号CK3の30サイクルに相当する。
図7のセレクタ710は、カウント値CNT2が16未満である場合に0を出力する。そのため、変換期間Tc2は、クロック信号CK3の16サイクルに相当する。したがって、サンプリング期間Ts2は、クロック信号CK3の14(=30-16)サイクルに相当する。アナログデジタル変換回路115は、30サイクル(32.768MHz)のサンプリングレートで、アナログデジタル変換を行う。
【0100】
電流IDD11は、分周比Nが30である場合にアナログデジタル変換回路115に流れる電流である。電流IDD11は、電流IDD10と同様に、サンプリング期間Ts2の開始時のピークと、変換期間Tc2の開始時のピークを有する。
【0101】
図10(B)の変換トリガ信号STCの周期は、
図10(A)の変換トリガ信号STCの周期と同じである。
図10(B)のクロック信号CK3の周期は、
図10(A)のクロック信号CK3の周期に対して、20/30倍である。
【0102】
変換期間Tc1及びTc2は、分周比Nにかかわらず、16サイクルの一定である。クロック信号CK3の周波数は、分周比に応じて変化する。クロック信号CK4と変換トリガ信号STCの周波数は、分周比Nにかかわらず、一定である。
【0103】
逐次比較型のアナログデジタル変換回路115では、分周比Nにかかわらず、変換期間Tc1及びTc2のサイクル数を固定値(例えば16サイクル)とすることが合理的である。その理由は、変換期間Tc1及びTc2では、最高速度の論理速度が必要であるので、論理が単純である必要がある。そのため、変換期間Tc1及びTc2が、分周比Nにかかわらず、固定サイクルである単純な論理とする。
【0104】
ここで、
図10(A)において、サンプリング期間Ts1は、変換期間Tc1に対して短く、電流IDD10の2つのピークの間隔が狭く、2つのピークは互いに接近している。そのため、電流IDD10は、32.768MHzのn次高調波を発してしまう。アナログデジタル変換回路115は、雑音に敏感な受信部(例えば、直交ミキサ回路112)の最も近くに置かれるので、変換トリガ信号STCに同期する雑音を発すると影響が大きい。
【0105】
そこで、
図10(B)のように、サンプリング期間Ts2と変換期間Tc1をほぼ同じサイクル数にし、電流IDD11の2つのピークの間隔が広がり、2つのピークが互いに離れるようにすることにより、電流IDD11は、32.768MHzの整数倍高調波を低減できる。
【0106】
図10(B)のタイミングを実現するためには、分数比Nにかかわらず、変換トリガ信号STCの周波数を32.768MHzの一定値に維持したまま、分周比Nに応じて、サンプリング期間Ts2と変換期間Tc2の比率を変更させる。
図10(A)の分周比Nが20である場合、サンプリング期間Ts1は4サイクルであり、変換期間Tc1は16サイクルである。
図10(B)の分周比Nが30である場合、サンプリング期間Ts1は14サイクルであり、変換期間Tc1は16サイクルである。
【0107】
図7に示したように、ADCC128は、分周比Nに基づいて、クロック信号CK4と同じ周期を維持しながら、サンプリング期間と変換期間の比率を変更させることにより、変換トリガ信号STCを生成する。ADCC128は、分周比Nに基づいて、クロック信号CK3のサイクル(周期)を基準として、変換期間のサイクル数を固定しながら、サンプリング期間のサイクル数を変更することにより、変換トリガ信号STCを生成する。
【0108】
無線通信回路101は、分周比Nに応じて、クロック信号CK4及び変換トリガ信号STCの周波数を32.768MHzに維持したまま、アナログデジタル変換回路115の動作のためのクロック信号CK3の周波数を変更することができる。
【0109】
無線通信回路101は、不揮発性メモリ503に記憶される分周比Nを任意に設定することができる。
図10(A)及び(B)に示したように、変換トリガ信号STCは、ローレベル期間が例えば16サイクルの固定であり、ハイレベル期間がN-16サイクルである。これにより、無線通信回路101は、変換トリガ信号STCのハイレベルが示すサンプリング期間を変化させ、32.768MHzチャネルの整数倍高調波雑音を低減することができる。
【0110】
図10(A)及び(B)の例は、簡単化したモデルで効果を示した。実際には、より複雑であることは、先の位相シフト設定値PSHIFTの場合と同様である。しかし、無線通信回路101は、位相シフト設定値PSHIFTにより参照クロック信号CK1と、クロック信号CK4及び変換トリガ信号STCの位相差を調整できるようにすることと、変換トリガ信号STCのハイレベル期間(サンプリング期間)とローレベル期間(変換期間)の比率を調整できるようにすることができる。位相シフト設定値PSHIFTは、参照クロック信号CK1と、クロック信号CK4及び変換トリガ信号STCとの位相差を設定することができる。分周比Nは、変換トリガ信号STCのハイレベル期間とローレベル期間の比率を調整することができる。これにより、無線通信回路101は、製造後にこれらの位相シフト設定値PSHIFTと分周比Nの最適値を設定することにより、雑音を低減し、受信性能を改善させることできる。
【0111】
最適値は、無線通信回路101の製造時のトランジスタ特性が一方に偏った場合に変化する場合がある。そのような場合には、無線通信回路101の製造個体ごとに、位相シフト設定値PSHIFTと分周比Nの最適値を求めて、位相シフト設定値PSHIFTと分周比Nの最適値を不揮発性メモリ503に格納しておくことで、製造歩留まりを改善した、特性の良い無線通信回路101を実現することができる。
【0112】
本実施形態によれば、無線通信回路101は、位相シフト設定値PSHIFTにより雑音を低減できる効果に加え、分周比Nにより雑音をさらに低減できる効果を有し、受信感度の劣化を抑制することができる。また、無線通信回路101の機能及び性能試験に係るコストを抑制しつつ、デルタシグマ変調回路122とアナログデジタル変換回路115と復調回路116に起因する雑音が無線通信回路101の受信部の動作に与える影響を低減することができる。
【0113】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0114】
101 無線通信回路
102 アンテナ
103 発振回路
111 低雑音増幅回路
112 直交ミキサ回路
113 バンドパスフィルタ回路
114 可変ゲイン増幅回路
115 アナログデジタル変換回路
116 復調回路
117 位相シフト回路
118 位相ロックループ回路
119 位相検出回路
120 電圧制御発振回路
121 分周回路
122 デルタシグマ変調回路
123 位相ロックループ回路
124 位相検出回路
125 電圧制御発振回路
126 分周回路
128 ADCC
500 半導体集積回路
501 処理回路
502 分周及び遅延回路
503 不揮発性メモリ
504 分周回路
505 処理回路