(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077185
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】ボールジョイント及びそのダストカバー
(51)【国際特許分類】
F16C 11/06 20060101AFI20230529BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20230529BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
F16C11/06 Q
F16J3/04 C
F16J15/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190375
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】曽布川 真宜
(72)【発明者】
【氏名】丸山 康之
【テーマコード(参考)】
3J043
3J045
3J105
【Fターム(参考)】
3J043AA03
3J043CB13
3J043DA06
3J043DA20
3J043FA04
3J043FA20
3J043FB03
3J043FB10
3J045AA10
3J045BA02
3J045CB16
3J045CB17
3J045EA03
3J105AA22
3J105AB32
3J105AC10
3J105CC33
3J105CC43
3J105CC44
3J105CC65
(57)【要約】
【課題】大径側リップ部とカバー取付部との密着性を向上したボールジョイントのダストカバー及びこれを備えたボールジョイントを提供する。
【解決手段】ダストカバー14は、筒状の本体部22と、本体部22の軸方向の端部に設けられ、少なくとも一部がカバー取付部15に取り付けられる大径側リップ部24と、を備える。大径側リップ部24は、軸方向に対して傾斜し傾斜部17に密着される他の傾斜面部36と、他の傾斜面部36を含む仮想面に対して突出して傾斜部17に圧接される突出部42と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸直方向に凹設された溝状のカバー取付部を外側部に有し、前記カバー取付部の内壁面の少なくとも一部に軸方向一端側から他端側へと拡大する傾斜部を有する筒状の受け側部材と、この受け側部材に回動可能に保持されるボール部を有するボール側部材とを備えるボールジョイントに対し、前記受け側部材の前記カバー取付部と前記ボール側部材とに亘り取り付けられるボールジョイントのダストカバーであって、
筒状の本体部と、
この本体部の軸方向の端部に設けられ、少なくとも一部が前記カバー取付部に取り付けられるリップ部と、を備え、
前記リップ部は、
軸方向に対して傾斜し前記傾斜部に密着されるリップ傾斜部と、
このリップ傾斜部を含む仮想面に対して突出して前記傾斜部に圧接される突出部と、を有する
ことを特徴とするボールジョイントのダストカバー。
【請求項2】
突出部は、軸方向に複数設定された突起部である
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイントのダストカバー。
【請求項3】
突出部は、軸方向の所定幅に亘る大突起である
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイントのダストカバー。
【請求項4】
軸直方向に凹設された溝状のカバー取付部を外側部に有し、前記カバー取付部の内壁面の少なくとも一部に軸方向一端側から他端側へと拡大する傾斜部を有する筒状の受け側部材と、
この受け側部材に回動可能に保持されるボール部を備えるボール側部材と、
前記受け側部材の前記カバー取付部と前記ボール側部材とに亘り取り付けられる請求項1ないし3いずれか一記載のダストカバーと、
を備えることを特徴とするボールジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け側部材のカバー取付部とボール側部材のスタッド部とに亘り取り付けられるボールジョイントのダストカバー及びこれを備えたボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両の操舵装置や懸架装置に用いられるボールジョイントは、水泥や粉塵の侵入を防止するためにダストカバーが装着されている。ダストカバーは、円筒状に形成されており、両端部にリップ部を備えている。そして、一端側のリップ部がボール側部材であるボールスタッドのスタッド部に固定され、他端側のリップ部が受け側部材であるソケットの周囲に形成された溝状のカバー取付部に固定される。
【0003】
従来、カバー取付部は、ソケットの成形後、切削により形成されている。これに対し、近年、製造コストの抑制等を目的として、ソケットの成形時において省切削化が進んできており、カバー取付部を無切削、すなわち鍛造等の塑性変形のみで仕上げる構造、あるいは最小限の切削のみを行う少切削で仕上げる構造も増えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-197230号公報(第4-9頁、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切削によって形成されたカバー取付部は、断面コ字状に高精度に形成できるため、ダストカバーのリップ部をカバー取付部に対し両端方向及び径方向に確実に圧接させて浸水等を防止できる。それに対し、ソケット端部のかしめ変形によって形成されたカバー取付部は、切削によって形成されたカバー取付部と比較して、各面を高精度に仕上げることが容易でない。そのため、リップ部を仮にカバー取付部の形状に応じた形状に形成したとしても、特に両端方向にリップ部を圧接させることが困難で、浸水を防ぎきるまでの密着性を得ることが難しい。
【0006】
そこで、このようなカバー取付部に対しても密着性を確保した構成が望まれている。このような課題は、車両用のボールジョイントに限らず、任意の箇所に用いるボールジョイントに対しても同様に生じる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、リップ部とカバー取付部との密着性を向上したボールジョイントのダストカバー及びこれを備えたボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のボールジョイントのダストカバーは、軸直方向に凹設された溝状のカバー取付部を外側部に有し、前記カバー取付部の内壁面の少なくとも一部に軸方向一端側から他端側へと拡大する傾斜部を有する筒状の受け側部材と、この受け側部材に回動可能に保持されるボール部を有するボール側部材とを備えるボールジョイントに対し、前記受け側部材の前記カバー取付部と前記ボール側部材とに亘り取り付けられるボールジョイントのダストカバーであって、筒状の本体部と、この本体部の軸方向の端部に設けられ、少なくとも一部が前記カバー取付部に取り付けられるリップ部と、を備え、前記リップ部は、軸方向に対して傾斜し前記傾斜部に密着されるリップ傾斜部と、このリップ傾斜部を含む仮想面に対して突出して前記傾斜部に圧接される突出部と、を有するものである。
【0009】
請求項2記載のボールジョイントのダストカバーは、請求項1記載のボールジョイントのダストカバーにおいて、突出部は、軸方向に複数設定された突起部であるものである。
【0010】
請求項3記載のボールジョイントのダストカバーは、請求項1記載のボールジョイントのダストカバーにおいて、突出部は、軸方向の所定幅に亘る大突起であるものである。
【0011】
請求項4記載のボールジョイントは、軸直方向に凹設された溝状のカバー取付部を外側部に有し、前記カバー取付部の内壁面の少なくとも一部に軸方向一端側から他端側へと拡大する傾斜部を有する筒状の受け側部材と、この受け側部材に回動可能に保持されるボール部を備えるボール側部材と、前記受け側部材の前記カバー取付部と前記ボール側部材とに亘り取り付けられる請求項1ないし3いずれか一記載のダストカバーと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のボールジョイントのダストカバーによれば、突出部の位置でリップ部が受け側部材のカバー取付部を押圧する力が増加するので、密着性を確保できる。
【0013】
請求項2記載のボールジョイントのダストカバーによれば、請求項1記載のボールジョイントのダストカバーの効果に加えて、リップ部とカバー取付部との間の浸水経路において複数の箇所で局部面圧を発生させることができ、リップ部とカバー取付部との密着性をより向上できる。
【0014】
請求項3記載のボールジョイントのダストカバーによれば、請求項1記載のボールジョイントのダストカバーの効果に加えて、リップ部とカバー取付部との間の浸水経路において広範囲で面圧を発生させることができ、リップ部とカバー取付部との密着性をより向上できる。
【0015】
請求項4記載のボールジョイントによれば、ダストカバーのリップ部と受け側部材のカバー取付部との間からの浸水を防止でき、浸水に起因する発錆等の不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態のボールジョイントのダストカバーを備えるボールジョイントの一部を示す断面図、(b)は同上ダストカバーの一部を示す断面図である。
【
図2】同上ボールジョイントの受け側部材の製造方法の一部を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態のボールジョイントのダストカバーの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1(a)において、1はボールジョイントである。本実施の形態において、ボールジョイント1は、例えば自動車等の車両のスタビライザ装置に用いられるスタビライザリンクの一部を構成する、車両用のものである。スタビライザ装置は、例えば左右の車輪に対して用いられる懸架装置の一部を成すもので、コーナリング中等の車両の旋回時のロールを抑制する。なお、ロールとは、車両の走行前後方向に沿う軸を中心とする車両の回動をいう。そして、スタビライザリンクは、車輪を弾性的に支持する被接続部としての車輪支持部材であるアブソーバとスタビライザバーとを相対的に可動するように連結するものである。なお、以下、上下方向については、
図1(a)を基準として説明する。また、ボールジョイント1の中心軸側を内側、その反対側を外側として説明する。図中では、矢印A方向を内側、矢印B方向を外側とする。
【0019】
ボールジョイント1は、受け側部材であるソケット2を備える。ソケット2は、ハウジングとも呼ばれる。ソケット2は、例えば金属製である。本実施の形態において、ソケット2は、有底円筒状に形成されている。すなわち、ソケット2は、一端部である上部に開口部3を有し、他端部である下端部が閉塞されて、内部に開口部3と連通する内室4が形成されている。ソケット2は、鍛造や鋳造により一体的に有底円筒状に形成されていてもよいし、複数の部材を互いに組み付けることで有底円筒状に形成されていてもよい。
【0020】
内室4には、摺動部材であるベアリングシート5が収容されている。ベアリングシート5は、ボールシート等とも呼ばれる。ベアリングシート5は、例えば耐摩耗性に優れる合成樹脂製である。ベアリングシート5は、内室4に嵌着される円筒状に形成されている。ベアリングシート5は、一つの部品により構成されていてもよいし、複数の部品により構成されていてもよい。ベアリングシート5は、ソケット2の開口部3の縁部に形成された抜止部6により内室4に対し抜け止めされている。抜止部6は、ソケット2の内側に向かい突出されている。抜止部6の下部にベアリングシート5の上部が当接してベアリングシート5がソケット2から抜け止めされている。
図2に示すように、抜止部6は、ソケット2の周壁部の一端部をなして軸方向に延びる端縁部7をローラ等のかしめ手段によりかしめ変形させて端縁部7の先端側の余肉の一部を内側に突出させることで形成されている。
【0021】
図1(a)に戻って、ベアリングシート5には、ボール側部材であるボールスタッド10が保持されている。ボールスタッド10は、ボールジョイント1を他部材と接続する接続部材である。ボールスタッド10は、球状のボール部11を有する。ボール部11は、例えば鋼鉄製等である。ボール部11は、ベアリングシート5に回動可能に保持される。ボール部11の外周面とベアリングシート5の内周面との間には、潤滑剤が配置される。ボール部11は、ベアリングシート5とともにソケット2の内室4に位置する。すなわち、ボール部11は、ソケット2に回動可能に保持されている。
【0022】
ボール部11には、スタッド部が突設されている。スタッド部は、例えば鋼鉄製等である。スタッド部は、他部材に接続されて荷重が加わる部分である。スタッド部は、円柱状に形成されている。スタッド部は、ボール部11の上部に一体的に配置されている。また、スタッド部は、ボール部11と同軸または略同軸に配置されている。すなわち、スタッド部の中心軸は、ボール部11の中心または略中心を通るように配置されている。スタッド部は、開口部3を介してソケット5の外部である上方に突出している。スタッド部の先端部である上端部側には、他部材と接続される接続部が形成されている。接続部は、例えば雄ねじ状の螺合部である。なお、スタッド部は、ボール部11と一体に形成されていてもよいし、ボール部11に対し溶接等により一体的に連結されていてもよい。
【0023】
ボールスタッド10のスタッド部とソケット2とに亘り、ダストカバー14が取り付けられている。ソケット2には、ダストカバー14を受けるカバー取付部15が形成されている。カバー取付部15は、ソケット2の外側部に軸直方向に溝状に凹設されている。カバー取付部15は、ソケット2の全周に亘り連なっている。カバー取付部15は、ソケット2の一端部である上端部寄りに位置している。カバー取付部15の内壁面は、傾斜部17と、傾斜部17に対して連なる対向部18と、対向部18に対して傾斜部17とは反対側に連なる(一の)端面部19と、を有する。なお、カバー取付部15は、傾斜部17に対して対向部18とは反対側に連なる(他の)端面部をさらに有していてもよい。
【0024】
傾斜部17は、カバー取付部15の下端部側を構成している。傾斜部17は、ソケット2の軸方向一端側である上側から他端側である下側へと徐々に外側に拡大されるように傾斜している。傾斜部17の位置において、ソケット2の周壁部は上側から下側へと徐々に厚みが増加するようになっている。図示される例では、傾斜部17は、截頭円錐面状に形成されている。これに限らず、傾斜部17は、軸直方向に凹状または凸状等に湾曲されていてもよい。
【0025】
傾斜部17の上部に連なる対向部18は、ソケット2の軸方向に沿って形成されている。つまり、対向部18は、ソケット2の軸方向に対して傾斜していない非傾斜部である。対向部18は、円筒面状に形成されている。対向部18は、上下方向の長さが傾斜部17よりも短く設定されている。対向部18に対し、傾斜部17が外側に位置する。
【0026】
対向部18の上部に連なる端面部19は、カバー取付部15の上端部側を構成している。端面部19は、ソケット2の軸方向他端側である下側から一端側である上側へと徐々に拡大されるように傾斜している。つまり、端面部19は、対向部18に対してソケット2の外方に延出されている。端面部19は、ソケット2の軸直方向に対して対向部18から上方に向かい僅かに傾斜して形成されている。端面部19は、対向部18に対して外側に位置する。端面部19は、ソケット2の軸直方向に対して、傾斜部17よりも傾斜角度が小さい。
【0027】
本実施の形態において、カバー取付部15は、ソケット2の周壁部をかしめ変形させることで形成されている。より詳細には、
図2に示すように、カバー取付部15は、ソケット2の成形時に傾斜部17が予め形成されているとともに、対向部18が端縁部7の外面部の一部として予め形成されており、この端縁部7をローラ等のかしめ手段によりかしめ変形させて端縁部7の先端側の余肉の一部を外側に突出させて受け側突出部20を形成することで、受け側突出部20の下側が端面部19として形成される。つまり、本実施の形態では、カバー取付部15(受け側突出部20)は、端縁部7のかしめ変形により、抜止部6と同時に成形される。
【0028】
そして、
図1(a)に示すダストカバー14は、ダストシール、ブーツ等とも呼ばれる。ダストカバー14は、ボールスタッド10の揺動に拘らずソケット2の開口部3を覆い、ソケット2あるいはベアリングシート5の内部への水分および塵埃等の侵入を阻止する。ダストカバー14は、例えば合成樹脂製である。本実施の形態において、ダストカバー14は、ゴム、あるいは合成樹脂等の弾性材料で成形されている。
【0029】
ダストカバー14は、円筒状の本体部22を有する。本体部22は、例えば軸方向の中間部分が径方向に膨出する円筒状となっている。本体部22は、軸寸法と比較して径寸法が大きい、扁平な形状に形成されている。
【0030】
本体部22の軸方向の一端部である上端部には、(一の)リップ部である小径側リップ部が一体的に形成されている。小径側リップ部は、本体部22よりも径寸法が小さく形成された円筒状である。小径側リップ部は、ボールスタッド10のスタッド部の外側部に内部側が圧接される部分である。本実施の形態において、小径側リップ部は、スタッド部の外側部の形状に応じた弾性変形の反力によって、スタッド部の外側部に圧接される。
【0031】
また、本体部22の軸方向の他端部である下端部には、(他の)リップ部である大径側リップ部24が形成されている。大径側リップ部24は、少なくとも一部がソケット2のカバー取付部15に取り付けられる部分である。大径側リップ部24は、本体部22に連なって内側へと延びる延出部26と、延出部26から軸方向に延びるリップ対向部27と、リップ対向部27の軸方向の端部である下端部から外側へと延びるスカート部28と、により、外側に開口された断面コ字状に形成されている。これら延出部26、リップ対向部27、及びスカート部28によって、大径側リップ部24の外側に受容部29が凹設され、この受容部29に、大径側リップ部24をカバー取付部15に保持するための保持部材30が取り付けられている。保持部材30は、クリップ等とも呼ばれる円環状の締め付け部材である。保持部材30は、受容部29に嵌合されて、大径側リップ部24をソケット2のカバー取付部15に締め付けて保持するように構成されている。
【0032】
また、大径側リップ部24の内側には、カバー取付溝15に嵌合される突起32が形成されている。本実施の形態において、突起32は、大径側リップ部24において、最も内側に突出する大突起である。突起32は、リップ対向部27に形成されている。
図1(b)に示すように、突起32は、ダストカバー14の軸方向に沿う対向面部34と、対向面部34に対しダストカバー14の軸方向の一端部側である上端部に連なる(一の)リップ傾斜部である一の傾斜面部35と、対向面部34に対しダストカバー14の軸方向の他端部側である下端部に連なる(他の)リップ傾斜部である他の傾斜面部36と、からなる外側面を有する、断面台形状に形成されている。
【0033】
図1(a)に示すように、対向面部34は、対向部18に対し軸直方向に圧接される部分である。
【0034】
一の傾斜面部35は、端面部19に対し圧接される部分である。一の傾斜面部35は、ダストカバー14の軸方向に対して傾斜している。一の傾斜面部35は、対向面部34から上側に向かい徐々に外側へと傾斜して形成されている。一の傾斜面部35の傾斜は、端面部19の傾斜に沿っている。一の傾斜面部35は、突起32から延出部26に亘り連なって形成されている。
【0035】
一の傾斜面部35に連なって、大径側リップ部24にはショルダ部40が形成されている。ショルダ部40は、延出部26の内面部をなす。ショルダ部40は、軸方向に延びる円筒状に形成されている。ショルダ部40の内側に、受け側突出部20が嵌合されている。つまり、ショルダ部40は、受け側突出部20に対し軸直方向に圧接される部分である。
【0036】
また、他の傾斜面部36は、傾斜部17に沿って密着する部分である。他の傾斜面部36は、対向面部34から下側に向かい徐々に外側へと傾斜して形成されている。他の傾斜面部36の傾斜は、傾斜部17の傾斜に沿っている。他の傾斜面部36は、突起32からスカート部28に亘り連なって形成されている。
【0037】
他の傾斜面部36には、突出部42が形成されている。突出部42は、傾斜部17に圧接され、傾斜部17に対し、他の傾斜面部36よりも大きな面圧を生じさせる部分である。突出部42は、他の傾斜面部36を含む仮想面に対して突出している。つまり、突出部42は、他の傾斜面部36に対して突出して形成されている。本実施の形態において、突出部42は、突起32と比較して内側に突出しない小突起である。
【0038】
突出部42は、軸方向に所定の幅を有する突起部である。突出部42は、単数でも複数でもよい。本実施の形態において、突出部42は、複数、例えば2つ設定されている。好ましくは、突出部42は、少なくとも他の傾斜面部36の下端部に位置する。図示される例では、突出部42には、他の傾斜面部36の下端部に配置される下側の突出部42aと、他の傾斜面部36の上下方向の中間部に配置されている上側の突出部42bと、が設定されている。突出部42aは、スカート部28の内側に位置する。突出部42aは、下端部において最も軸直方向の厚みが大きくなるように形成されている。また、突出部42bは、スカート部28よりも上方にてリップ対向部27の内側に位置する。好ましくは、突出部42bは、一部または全体がスカート部28の上面より上方にある。したがって、突出部42bは、受容部29に取り付けられた保持部材30の締め付けを直接受ける位置にある。突出部42bは、断面が凸状の半円形状に形成されている。これら突出部42a,42bは、上下方向に離れて配置されている。
【0039】
そして、ダストカバー14をソケット2とボールスタッド10のスタッド部とに亘り取り付けると、小径側リップ部がスタッド部の外側面に圧接されるとともに、大径側リップ部24がソケット2のカバー取付部15に位置し、保持部材30により締め付け固定される。
【0040】
大径側リップ部24は、ショルダ部40が受け側突出部20に圧接され、突起32の一の傾斜面部35が端面部19に圧接され、対向面部34が対向部18に圧接され、他の傾斜面部36が傾斜部17に圧接される。このとき、他の傾斜面部36に突出部42が形成されていることで、突出部42の位置で面圧、すなわち大径側リップ部24がソケット2のカバー取付部15を内側すなわち中心軸側に向かって押圧する力が増加する。そこで、大径側リップ部24とカバー取付部15との密着性すなわちシール性を確保できる。
【0041】
特に、突出部42(突出部42a)を、少なくとも他の傾斜面部36の下端部に配置することで、大径側リップ部24の他の傾斜面部36の下端部とソケット2のカバー取付部15との間の浸水経路の入り口付近の面圧すなわち密着性を向上させることができる。
【0042】
しかも、突出部42(突出部42a)は、軸直方向の厚みが他の傾斜面部36の下端部の位置で最も大きくなるように形成したことで、上記の浸水経路の入り口の位置での面圧を最も大きく設定できる。
【0043】
また、突出部42を複数設定した突起部とすることで、大径側リップ部24とカバー取付部15との間の浸水経路において複数の箇所で局部面圧を発生させることができ、大径側リップ部24とカバー取付部15との密着性をより向上できる。
【0044】
この結果、主としてかしめ変形により形成されたカバー取付部15をソケット2に有するボールジョイント1においても、ダストカバー14の大径側リップ部24とソケット2のカバー取付部15との間からの浸水を防止でき、浸水に起因する発錆等の不具合を防止できる。
【0045】
次に、第2の実施の形態について、
図3を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施の形態のダストカバー14は、突出部42が、他の傾斜面部36の下端部から上端部近傍に亘る所定の広い範囲に一つ形成された大突起である。
【0047】
突出部42は、他の傾斜面部36の位置での大径側リップ部24の肉厚(ボリューム)が増加されている。すなわち、突出部42は、軸方向の所定幅に亘る厚肉部として形成されている。突出部42は、他の傾斜面部36を含む仮想面に対し軸方向に延びて形成されている。突出部42は、内側が軸方向に沿う円筒面状に形成されている。そのため、突出部42は、他の傾斜面部36の下端部側ほど肉厚が大きくなるように形成されている。
【0048】
そして、ダストカバー14をソケット2とボールスタッド10のスタッド部とに亘り取り付けた状態で、大径側リップ部24は、ショルダ部40が受け側突出部20に圧接され、突起32の一の傾斜面部35が端面部19に圧接され、対向面部34が対向部18に圧接され、他の傾斜面部36が傾斜部17に圧接される。このとき、他の傾斜面部36に突出部42が形成されていることで、突出部42の位置で面圧、すなわち大径側リップ部24がソケット2のカバー取付部15を内側すなわち中心軸側に向かって押圧する力が増加する。そこで、大径側リップ部24とカバー取付部15との密着性すなわちシール性を確保できる等、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
また、突出部42を軸方向の所定幅に亘る大突起とすることで、大径側リップ部24とカバー取付部15との間の浸水経路において広範囲で面圧を発生させることができ、大径側リップ部24とカバー取付部15との密着性をより向上できる。
【0050】
なお、第2の実施の形態において、突出部42の内側は、軸方向に対して傾斜部17よりも小さい角度で傾斜していてもよいし、円弧状等に膨出していてもよい。
【0051】
また、上記の各実施の形態において、ボールジョイント1は、自動車用または車両用に限られず、その他の任意の機器に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば自動車等の車両のスタビライザリンクとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ボールジョイント
2 受け側部材であるソケット
10 ボール側部材であるボールスタッド
11 ボール部
14 ダストカバー
15 カバー取付部
17 傾斜部
22 本体部
24 リップ部である大径側リップ部
36 リップ傾斜部である他の傾斜面部
42 突出部