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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077191
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20230529BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20230529BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190382
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智貴
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 智有
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 豪
(72)【発明者】
【氏名】臼井 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 竜士
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054AA21
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC29
3D054CC33
3D054CC42
3D054DD13
3D054DD28
(57)【要約】
【課題】乗員の体格に拘らず膨張展開時に腕部を押し上げることが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグ13は、座席Sに着座した乗員Hの側方にガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部20を備える。エアバッグ本体部20は、展開状態で車幅方向に分岐される複数の突出部25を上部に有するとともに、複数の突出部25の下部にこれら突出部に共通の基部24を有する。エアバッグ本体部20の展開状態で、外側突出部30が乗員Hの肩部SHと同等または肩部SHより上方に位置し、内側突出部31が座席Sに正常に着座させた状態での乗員Hの腕部ARの下端より上方に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に着座した乗員の側方にガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備え、
前記エアバッグ本体部は、展開状態で車幅方向に分岐される複数の突出部を上部に有するとともに、複数の突出部の下部にこれら突出部に共通の基部を有し、
前記エアバッグ本体部の展開状態で、一の前記突出部が前記乗員の肩部と同等または前記肩部より上方に位置し、他の前記突出部が前記座席に正常に着座させた状態での前記乗員の腕部の下端より上方に位置する
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
車外側に位置する一の突出部の上端部が車内側に位置する他の突出部の上端部より上方に位置し、
前記一の突出部と前記他の突出部とが分岐される位置は、腕部を45°に設定したSID-IIsで規定される側面衝突用ダミーを前記座席に正常に着座させた状態での前記腕部の下端位置以下である
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に着座した乗員の側方にガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備えるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の座席に着席した乗員の側方にエアバッグを展開し、側面衝突時に乗員を保護する側突用のエアバッグ装置が知られている。側突用のエアバッグ装置においては、乗員とエアバッグとの間に乗員の腕部が介在されないようにエアバッグによって腕部を押し上げて、腕部による胸部への負荷(傷害値)を低減することが望まれる。この点、例えば、エアバッグに乗員側に突出するアームサポート縁を設け、エアバッグの展開時に乗員の腕部の下部がエアバッグに当接すると、エアバッグに沿って乗員の腕部を滑り上がらせ、アームサポート縁に載せるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-132072号公報 (第4-5頁、図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗員には体格差があるため、乗員の体格差を考慮して腕部を押し上げることが可能な構成が求められている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、乗員の体格に拘らず膨張展開時に腕部を押し上げることが可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のエアバッグは、座席に着座した乗員の側方にガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備え、前記エアバッグ本体部は、展開状態で車幅方向に分岐される複数の突出部を上部に有するとともに、複数の突出部の下部にこれら突出部に共通の基部を有し、前記エアバッグ本体部の展開状態で、一の前記突出部が前記乗員の肩部と同等または前記肩部より上方に位置し、他の前記突出部が前記座席に正常に着座させた状態での前記乗員の腕部の下端より上方に位置するものである。
【0007】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、車外側に位置する一の突出部の上端部が車内側に位置する他の突出部の上端部より上方に位置し、前記一の突出部と前記他の突出部とが分岐される位置は、腕部を45°に設定したSID-IIsで規定される側面衝突用ダミーを前記座席に正常に着座させた状態での前記腕部の下端位置以下であるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のエアバッグによれば、共通の基部から各突出部へと迅速にガスを供給させて複数の突出部を迅速に展開させ、乗員の体格に拘らず、膨張展開した一の突出部によって乗員の肩部を保護しつつ、他の突出部の上端部によって腕部を押し上げることができる。
【0009】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、車内側に位置する他の突出部によって腕部をより確実に押し上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態のエアバッグをSID-IIsで規定される側面衝突用ダミーに適用した状態を車室内側から示す側面図である。
図2図1の正面図であり、(a)はエアバッグ展開初期を示し、(b)はエアバッグ展開後期を示す。
図3】同上エアバッグの断面図であり、(a)は非膨張時を示し、(b)は膨張時を示す。
図4】同上エアバッグをWorldSID-50Mで規定される側面衝突用ダミーに適用した状態を車室内側から示す側面図である。
図5】同上エアバッグを構成する基布の一例を示す側面図である。
図6】同上エアバッグの折り畳み状態の一例を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態のエアバッグを構成する基布の一例を示す側面図である。
図8】同上エアバッグの断面図であり、(a)は非膨張時を示し、(b)は膨張時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1において、10はエアバッグ装置である。エアバッグ装置10は、被取付部材である自動車の車室の座席(シート)Sに取り付けられて、座席Sに着座した被保護物である乗員Hと車体のドアトリム及び窓部などの対向物との間に膨張展開して乗員Hを保護するいわゆるサイドエアバッグ装置を構成している。なお、乗員Hは、例えば図1ではSID-IIsで規定される小柄な乗員の側面衝突用ダミーH1により示し、図4ではWorldSID-50Mで規定される大柄な乗員の側面衝突用ダミーH2により示す。これら側面衝突用ダミーH1,H2は、所定の規格、例えば米国高速道路交通安全協会(NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration)の規格である49CFR Part572に基づいて規定される。乗員Hは、腕部(上腕部)ARを含む胸部CT、腹部AB、及び、腰部WAなどを備える。腕部ARの角度は、側面衝突実験において規定された所定の設定角度であり、乗員Hを側方から見た状態で身体の側部に位置させた腕部ARの中心に沿う基準線SLに対して、例えば前方に45°などに固定されている。また、前後、両側、上下などの方向は、自動車の直進方向を基準とし、図1などの矢印Fが前方、矢印Rが後方、矢印Uが上方、矢印Dが下方、図2(a)などに示す矢印WIが車室内側、矢印WOが車室外側を示す。
【0013】
そして、図1に示すエアバッグ装置10は、ガスを発生させ噴射するインフレータ12、このインフレータ12が供給するガスにより膨張展開するエアバッグ13、これらインフレータ12とエアバッグ13とを連結して座席Sに固定する図示しない固定具、これら部材を収納するカバーである図示しない樹脂製のケース体、などを備える。
【0014】
インフレータ12は、略円柱状の本体部17と、この本体部17の一端部から突設されたガス供給部18とを備える。また、本体部17の他端部には、インフレータ12を動作させるための図示しない端子部が設けられている。そして、ガス供給部18は、本体部17の一端部に配置されている。本実施の形態において、インフレータ12は、ガス供給部18を本体部17の下部に位置させた状態で配置される。
【0015】
また、固定具は、リテーナとも呼び得るもので、例えばインフレータ12の外周に沿って板金を折り曲げて形成されており、インフレータ12を保持した状態で取付手段であるボルトをエアバッグ13に貫通させ、さらに座席Sを構成するフレームなどの部材に挿入し、ナットを螺合して締め付けることにより、固定具、インフレータ12及びエアバッグ13の後端部が座席Sに固定されるようになっている。
【0016】
そして、図1図3(a)、図3(b)及び図4に示すように、エアバッグ13は、袋状のエアバッグ本体部20を備える。エアバッグ本体部20は、複数の基布(パネル)21により形成されている。これら基布21を重ね合わせて、部品挿入部となる後端の開口部22の部分を除いて外周部近傍を縫製などにより接合することにより、エアバッグ本体部20が車幅方向に扁平な袋状に構成されるとともに、エアバッグ本体部20に、ガスの導入により膨張展開して下部を構成する基部24と、この基部24の上部から車幅方向に分岐されて上部を構成する複数の突出部25と、が設定される。つまり、本実施の形態において、エアバッグ本体部20には、複数の突出部25に共通して一つの基部24が備えられる。基部24に対して、複数の突出部25が並列に接続される。
【0017】
基部24は、乗員Hの腹部AB及び腰部WAを保護する部分である。基部24には、開口部22と連通して、インフレータ12を収容するガス導入部27が設定されている。ガス導入部27は、基部24の後端部に位置し、エアバッグ本体部20(エアバッグ13)の展開方向後方の端末部となる。また、基部24の後端部近傍には、開口部22の近傍に取付穴28が形成されている。取付穴28は、上下に並んで配置されている。
【0018】
突出部25は、乗員Hの胸部CT及び/または肩部SHを保護する部分である。本実施の形態において、突出部25には、車室外側に位置する一の突出部である外側突出部30と、車室内側に位置する他の突出部である内側突出部31と、が設定されている。これら外側突出部30と内側突出部31とが、共通の基部24の上部の分岐部32から車幅方向に分岐されている。
【0019】
外側突出部30は、乗員Hの肩部SHを保護する部分である。外側突出部30は、車幅方向に扁平な袋状に構成されている。外側突出部30は、ガスの導入により膨張展開した状態で、内側突出部31よりも上端部が上方に延びて位置する。好ましくは、外側突出部30は、上端部が、乗員HすなわちWorldSID-50Mで規定される側面衝突用ダミーH2の肩部SHと同等、または、肩部SHよりも上方に位置するように設定される。
【0020】
内側突出部31は、乗員Hの胸部CTを保護する部分である。内側突出部31は、車幅方向に扁平な袋状に構成されている。
【0021】
また、内側突出部31は、ガスの導入による膨張展開によって小柄な乗員Hの腕部ARを押し上げる機能を有する。そのため、内側突出部31の基点となる分岐部32は、乗員HすなわちSID-IIsで規定される側面衝突用ダミーH1の腕部ARを45°に設定して座席Sに正常に着座させた状態での腕部ARの下端と同等、または、腕部ARの下端より下となる位置に設定される。また、内側突出部31は、上端部が、ガスの導入により膨張展開した状態で、乗員Hすなわち側面衝突用ダミーH1の腕部ARを45°に設定して座席Sに正常に着座させた状態での腕部ARの下端よりも上方に位置するように設定される。
【0022】
エアバッグ本体部20を構成する基布21は、基部24及び突出部25(外側突出部30及び内側突出部31)を形成できれば、任意に設定してよいが、本実施の形態では、図5に一例を示すように、基布21には、第一基布35と、第二基布36と、第三基布37と、第四基布38と、が設定されている。なお、基布21には、テザーやヒートパッチが設定されていてもよい。
【0023】
図3(a)、図3(b)及び図5に示すように、第一基布35は、車両外側パネルとも呼ばれるもので、エアバッグ本体部20の車室外側の全体を構成する部分である。第一基布35は、対向物と対向する対向物対向面をなす。第一基布35は、基部24及び外側突出部30の車室外側を構成する。第一基布35は、上下方向に長手状に形成されている。第一基布35は、エアバッグ本体部20の上下方向の最大長さを規定する。第一基布35には、取付穴28が後端部近傍に形成されている。
【0024】
第二基布36は、車両内側パネルとも呼ばれるもので、エアバッグ本体部20の車室内側を構成する部分である。第二基布36は、乗員と対向する乗員対向面をなす。第二基布36は、基部24及び内側突出部31の車室内側を構成する。第二基布36は、上下方向に長手状に形成されている。第二基布36は、第一基布35よりも上下方向に短く形成されている。第二基布36には、取付穴28が後端部近傍に形成されている。また、第二基布36には、エアバッグ本体部20の製造時に取付穴28と重ね合わせられる取付穴39が取付穴28の前方にて第二基布36の後端部寄りの位置に形成されている。取付穴39は、取付穴28と同様に上下に並んで配置されている。そして、第二基布36は、第一基布35に対して下端部が位置合わせされ、下部側が第一基布35の下部側と重ねられて、後端部を除く下部側の外周縁部が第一基布35の下部側の外周縁部と接合される。
【0025】
第三基布37及び第四基布38は、それぞれ第一基布35と第二基布36との車幅方向での間に位置する部分である。第三基布37は、(一の)サブ車両内側パネルとも呼ばれるもので、第一基布35の車室内側に重ねられて、外側突出部30の車室内側を構成する。第三基布37は、第一基布35の上下方向の長さの半分未満の上下寸法を有する。第三基布37は、第一基布35の取付穴28よりも上方の部分と同一または略同一の形状に形成されている。第三基布37は、第一基布35に対して上端部が位置合わせされ、上側の外周縁部が第一基布35の上部側の外周縁部と接合される。
【0026】
また、第四基布38は、(他の)サブ車両内側パネルとも呼ばれるもので、第二基布36の車室外側に重ねられて、内側突出部31の車室外側を構成する。第四基布38は、第二基布36の取付穴28よりも上方の部分と同一または略同一の形状に形成されている。第四基布38は、第二基布36の上下方向の長さの半分未満の上下寸法を有する、第四基布38は、第二基布36に対して上端部が位置合わせされ、上側の外周縁部が第二基布36の上部側の外周縁部と接合される。
【0027】
第三基布37と第四基布38とは、下端部が互いに接合される。したがって、第三基布37と第四基布38との接合部が、突出部25にて外側突出部30と内側突出部31とが分岐される分岐部32となっている。
【0028】
そして、エアバッグ装置10は、インフレータ12と固定具とを組み合わせた組立体をエアバッグ本体部20に挿入するとともに、固定具のボルトを折り重ねたエアバッグ本体部20の取付穴28から外部に引き出し、後端部を前方に折り返してボルトをさらに取付穴28に挿通して、適宜の状態にエアバッグ13を折り畳んで組み立てられる。
【0029】
このエアバッグ13の折り畳み方法は、任意としてよいが、例えば図6に示すように、突出部25については、外側突出部30の上端部側(第一基布35と第三基布37とが接合されている部分)を車室外側に折り返し、内側突出部31の上端部側(第二基布36と第四基布38とが接合されている部分)を車室内側に折り返す。なお、これらの折りは、接合部分をエアバッグ本体部20の内部へと折り込むアリゲータ折りでもよい。また、基部24については、第一基布35と第二基布36とを接合した下端部をエアバッグ本体部20の内部へと折り込むアリゲータ折りとする。この状態で、エアバッグ本体部20を前端部から後部に向かって任意の折り方で折り畳み、必要に応じて図示しないケースに収納した上で、図1図4に示す座席Sの側部に収納し、ナットなどを用いて、固定具のボルトを座席Sのフレームなどの部材に固定することにより、自動車の座席Sに取り付ける。さらに、エアバッグ装置10のインフレータ12の端子部を、例えばハーネスを介して、車両側に備えられた制御手段としての制御装置に接続する。制御装置は、CPUを備えるとともに、単数あるいは複数のセンサが接続され、乗員Hや衝突の状態に応じてインフレータ12を起動させる点火信号を送る。そして、センサは、必要に応じて、乗員Hの体型や姿勢を検知するものとして、CCDカメラ、座席Sに内蔵された体重(ウェイト)センサ、及び座席Sの前後位置やリクライニング状態を検出するシートスライドリクライニングセンサなどを備えている。また、センサは、衝突の状態を検知するものとして、車体側面に衝突検知センサを備えている。
【0030】
そこで、車両が側面衝突などの衝撃を受けると、各センサのセンシング信号に基づき、制御装置は、乗員Hの保護に適切な状態でインフレータ12を起動し、ガス供給部18からガスを噴射する。すると、このガスの圧力により、エアバッグ13はカバーを開いて座席Sから突出し、乗員Hとドアトリム及び窓部などの対向物Tとの間の隙間に膨張展開する。
【0031】
このとき、インフレータ12のガス供給部18から外周側に噴射されるガスがエアバッグ本体部20の内部にてガス導入部27から基部24へと導入されるとともに、基部24から外側突出部30及び内側突出部31へと並列に直接分岐されて供給され、展開初期では、図2(a)に示すように、基部24が乗員Hの腹部AB及び腰部WAの側方にて対向物Tとの間に展開するとともに、外側突出部30が対向物Tに沿って乗員Hの肩部SH付近まで展開し、内側突出部31が乗員Hの腕部ARの下部に入り込む。
【0032】
次いで、展開後期では、図2(b)に示すように、基部24及び外側突出部30が車幅方向に膨張して乗員Hの腹部AB及び腰部WAを拘束し、内側突出部31が上方への展開によって乗員Hの腕部ARを上方の押し上げ、かつ、外側突出部30が乗員Hの肩部SHを拘束して、乗員Hを保護する。
【0033】
このように、展開状態で車幅方向に分岐される複数の突出部25をエアバッグ本体部20の上部に設定し、突出部25の下部に共通の基部24を設定して、一の突出部25である外側突出部30を乗員Hの肩部SHと同等または肩部SHより上方に位置させ、他の突出部25である内側突出部31を座席Sに正常に着座させた状態での乗員Hの腕部ARの下端より上方に位置させることで、基部24から各突出部25へと迅速にガスが供給され、複数の突出部25を迅速に展開させることができるとともに、乗員Hが小柄であっても大柄であっても、すなわち乗員Hの体格に拘らず、膨張展開した外側突出部30によって乗員Hの肩部SHを保護しつつ、内側突出部31の上端部が腕部ARを押し上げることができ、腕部ARによる胸部CTへの負荷(傷害値)を低減できる。
【0034】
本実施の形態では、車外側の突出部25である外側突出部30の上端部を車内側の突出部25である内側突出部31の上端部より上方に位置させ、かつ、突出部25が分岐される分岐部32の位置を、腕部ARを45°に設定したSID-IIsで規定される側面衝突用ダミーH1を座席Sに正常に着座させた状態での腕部ARの下端位置以下とすることで、内側突出部31の上端部によって腕部ARを確実に押し上げることができる。
【0035】
特に、内側突出部31の上端部を、ガスの導入により膨張展開した状態で、SID-IIsで規定される側面衝突用ダミーH1の腕部ARを45°に設定して座席Sに正常に着座させた状態での腕部ARの下端よりも上方に位置するように設定したことで、乗員Hの体格に拘らず、膨張展開した内側突出部31の上端部によって腕部ARを確実に押し上げることができる。
【0036】
また、複数の突出部25が並列に基部24と連通することで、車室内側の突出部25である内側突出部31を基部24から上方に長手状に形成できるので、腕部ARの押し上げストロークを確保できる。
【0037】
さらに、エアバッグ本体部20を、外側突出部30は外側に、内側突出部31は内側に折るとともに、基部24をアリゲータ折りとすることで、基部24が下方に向かって迅速に展開するとともに、内側突出部31が乗員Hの身体に近い位置から車室外側に向かい上方へと膨張展開し、かつ、外側突出部30の膨張展開が内側突出部31の膨張展開を阻害しないので、内側突出部31によって腕部ARを確実に押し上げることが可能になる。
【0038】
次に、第2の実施の形態を図7及び図8を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
本実施の形態において、図7に示すように、エアバッグ本体部20を構成する基布21には、外側基布40と、内側基布41と、連結体であるテザー42と、が設定されている。
【0040】
外側基布40は、外側メインパネルとも呼ばれるもので、エアバッグ本体部20の車室外側の全体を構成する部分である。外側基布40は、対向物と対向する対向物対向面をなす。外側基布40は、基部24及び外側突出部30の車室外側を構成する。外側基布40は、上下方向に長手状に形成されている。外側基布40は、エアバッグ本体部20の上下方向の最大長さを規定する。外側基布40には、取付穴28が後端部近傍に形成されている。
【0041】
内側基布41は、内側メインパネルとも呼ばれるもので、エアバッグ本体部20の車室内側を構成する部分である。内側基布41は、乗員と対向する乗員対向面及び分岐部32より上方の突出部25の側面をなす。内側基布41は、上下方向に長手状に形成されている。内側基布41は、外側基布40よりも上下方向に長く形成されている。図8(a)に示すように、内側基布41は、前後方向に沿う複数の折り線部45を谷折りとして車室内側に突出するプリーツ形状に折り曲げられたプリーツ部46が上下方向の中央部に形成される。本実施の形態において、折り線部45は、三本設定され、互いに略等しい間隔で上下に離れている。図7の二点鎖線に示すように、内側基布41は、プリーツ部46が形成された状態で上下方向の長さが短縮されて、外側基布40と上下方向に略等しい長さとなる。内側基布41には、取付穴28及び取付穴39が後端部近傍に形成されている。そして、内側基布41は、プリーツ部46が形成された状態で、外側基布40と上端部及び下端部が位置合わせされて重ねられ、後端部を除く外周縁部全体が外側基布40と接合されることで、エアバッグ本体部20が袋状に形成される。
【0042】
図8(a)に示すように、テザー42は、内側基布41のプリーツ部46を利用して内側突出部31を構成するためのものである。テザー42は、外側基布40と内側基布41との間に位置してエアバッグ本体部20の内部にある。テザー42は、下端部が外側基布40の下端部と連結され、上端部が内側基布41のプリーツ部46の凹部分を形成する折り線部45と連結されている。本実施の形態において、テザー42は、内側基布41に対し、最上部の折り線部45の位置に連結され、この連結部分が分岐部32として構成される。この分岐部32も、第1の実施の形態と同様に、腕部ARを45°に設定したSID-IIsで規定される側面衝突用ダミーH1を座席Sに正常に着座させた状態での腕部ARの下端位置と同等、または、それ以下に位置する。
【0043】
そして、インフレータ12のガス供給部18から供給されたガスの圧力により、エアバッグ13はカバーを開いて座席Sから突出し、乗員Hと対向部Tとの間の隙間に膨張展開する。
【0044】
インフレータ12のガス供給部18からガスがエアバッグ本体部20内においてガス供給部27から基部24へと導入されて基部24からさらに上方に噴射されると、ガスの圧力により外側基布40及び内側基布41が上方に展開する。このとき、テザー42によって内側基布41のプリーツ部46の上端部の位置が規制されることにより、図8(b)に示すように、プリーツ部46よりも上方の位置にて外側基布40と内側基布41とにより外側突出部30が車室外側に膨張し、プリーツ部46の部分で内側基布41により、外側突出部30よりも上端部が下方に位置する内側突出部31が外側突出部30に対し車室内側に膨張し、プリーツ部46が乗員Hの腕部ARの下部に入り込んで、乗員Hの腕部ARを容易に上方に押し上げる。
【0045】
このように、車幅方向に分岐される複数の突出部25をエアバッグ本体部20の上部に設定し、突出部25の下部に共通の基部24を設定するとともに、一の突出部25である外側突出部30を乗員Hの肩部SHと同等または肩部SHより上方に位置させ、他の突出部25である内側突出部31を座席Sに正常に着座させた状態での乗員Hの腕部ARの下端より上方に位置させるなど、上記の第1の実施の形態と同様の構成を有することにより、乗員Hの肩部SHを保護しつつ、乗員Hの体格に拘らず膨張展開時に腕部ARを押し上げることが可能になるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
また、エアバッグ本体部20が膨張展開した状態で、乗員Hの腕部ARをプリーツ部46の弛みに載せることができるので、腕部ARをより容易に押し上げることができる。
【0047】
さらに、基布21に外側基布40と内側基布41とのみが設定されているため、エアバッグ本体部20を形成する際に、縫製などによる基布21の接合が容易である。
【0048】
なお、上記の各実施の形態において、インフレータ12、及びエアバッグ13の形状や構成は上記のものに限られず、種々の構成のものを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、自動車の座席の側部に収納され、乗員とドアとの間に展開して、乗
員を保護するいわゆるサイドエアバッグとして用いられる。
【符号の説明】
【0050】
13 エアバッグ
20 エアバッグ本体部
24 基部
25 突出部
30 一の突出部である外側突出部
31 他の突出部である内側突出部
AR 腕部
H 乗員
H1 側面衝突用ダミー
S 座席
SH 肩部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8