(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077227
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】排水管の詰まり検出装置及び詰まり監視システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/30 20060101AFI20230529BHJP
E03C 1/22 20060101ALI20230529BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
E03C1/30
E03C1/22 Z
E03C1/122 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190449
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000155333
【氏名又は名称】株式会社木村技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 朝映
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB10
2D061AC05
2D061AC10
2D061AE03
2D061AE10
2D061DE30
(57)【要約】
【課題】排水管の詰まりを適切に検出可能な技術を提供する。
【解決手段】排水管の詰まり検出装置が、一方向に延在し、少なくとも第一端部が排水管内に配置されるロッド部と、前記ロッド部の延在方向において前記第一端部と反対側の第二端部を所定範囲内での移動を可能に支持する支持部と、前記ロッド部の前記第一端部が前記排水管内を流れる排水と接して前記ロッド部が移動した際の移動量を検出する検出部と、前記検出部による検出値に基づいて前記排水管の詰まりを判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延在し、少なくとも第一端部が排水管内に配置されるロッド部と、
前記ロッド部の延在方向において前記第一端部と反対側の第二端部を所定範囲内での移動を可能に支持する支持部と、
前記ロッド部の前記第一端部が前記排水管内を流れる排水と接して前記ロッド部が移動した際の移動量を検出する検出部と、
前記検出部による検出値に基づいて前記排水管の詰まりを判定する判定部と、
を備える排水管の詰まり検出装置。
【請求項2】
前記支持部が、前記ロッド部と接して前記延在方向への移動をガイドするガイド部材と、
前記ロッド部を前記延在方向において前記第二端部側へ付勢する付勢部材と、
を有する請求項1に記載の排水管の詰まり検出装置。
【請求項3】
前記支持部が、前記ロッド部の前記第二端部を中心に前記ロッド部を揺動可能に支持する揺動部を有する請求項1に記載の排水管の詰まり検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記排水管に接続された便器に洗浄水が流されたことを示す洗浄情報を取得し、前記洗浄水が流されたタイミングで、前記検出部による前記検出値が基準値を越えない場合に、前記排水管の詰まりが発生したと判定する請求項1~3の何れか1項に記載の排水管の詰まり検出装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の排水管の詰まり検出装置と、
前記詰まり検出装置から前記排水管の詰まりが発生したことを示す詰まり発生情報を取得し、前記詰まりが発生した場合に、前記排水管に接続された便器への洗浄水の放出を制御する洗浄コントローラへ、洗浄水の放出を禁止する洗浄禁止命令を送信する管理装置と、
を備える詰まり監視システム。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載の排水管の詰まり検出装置と、
前記詰まり検出装置から前記排水管の詰まりが発生したことを示す詰まり発生情報を取得し、前記詰まりが発生した場合に、所定の管理者端末へ詰まり発生通知を送信する管理装置と、
を備える詰まり監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管の詰まり検出装置及び詰まり監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレや厨房で利用された水は、利用後、排水として排水管を介して外部へ排出される。この場合、排水に含まれる物質が、徐々に排水管内に積層することで、排水管を詰まらせてしまうことがある。
【0003】
特許文献1では、排水横枝管に、水位検出器を設け、水位検出器からの水位情報に基づいて、排水横枝管内の水位の変化に要した時間(排水時間)を計測し、排水時間が所定時間以上であった場合には、排水管の詰まりがあると判断するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水位を検出する装置としては、例えば水面にフロートを浮かべ、水位と共に変動するフロートの位置をセンサで検出するものが考えられる。しかしながら、フロート式の検出装置を排水管中に配置した場合、排水に含まれる汚れがフロートに付着して、フロートが動かなくなり、水位の検出ができなくなることがある。また、超音波センサによって排水管中の水位を検出するものも提案されているが、超音波センサの検出範囲に汚れが付着すると、正しく水位を検出することができなくなるため、汚れが付着する可能性の高いトイレや厨房の排水管に適用することは、現実的でなかった。
【0006】
そこで、本発明は、排水管の詰まりを適切に検出可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る排水管の詰まり検出装置は、
一方向に延在し、少なくとも第一端部が排水管内に配置されるロッド部と、
前記ロッド部の延在方向において前記第一端部と反対側の第二端部を所定範囲内での移動を可能に支持する支持部と、
前記ロッド部の前記第一端部が前記排水管内を流れる排水と接して前記ロッド部が移動した際の移動量を検出する検出部と、
前記検出部による検出値に基づいて前記排水管の詰まりを判定する判定部と、
を備える。
【0008】
前記排水管の詰まり検出装置は、
前記支持部が、前記ロッド部と接して前記延在方向への移動をガイドするガイド部材と、
前記ロッド部を前記延在方向において前記第二端部側へ付勢する付勢部材と、
を有してもよい。
【0009】
前記排水管の詰まり検出装置は、
前記支持部が、前記ロッド部の前記第二端部を中心に前記ロッド部揺動可能に支持する揺動部を有してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記排水管に接続された便器に洗浄水が流されたことを示す洗浄情報を取得し、前記洗浄水が流されたタイミングで、前記検出部による前記検出値が基準値を越えない場合に、前記排水管の詰まりが発生したと判定してもよい。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る詰まり監視システムは、
前記排水管の詰まり検出装置と、
前記詰まり検出装置から前記排水管の詰まりが発生したことを示す詰まり発生情報を取得し、前記詰まりが発生した場合に、前記排水管に接続された便器への洗浄水の放出を制御する洗浄コントローラへ、洗浄水の放出を禁止する洗浄禁止命令を送信する管理装置と、
を備える。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る詰まり監視システムは、
前記排水管の詰まり検出装置と、
前記詰まり検出装置から前記排水管の詰まりが発生したことを示す詰まり発生情報を取得し、前記詰まりが発生した場合に、所定の管理者端末へ詰まり発生通知を送信する管理装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排水管の詰まりを適切に検出可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る詰まり監視システムの概略構成を示す図である。
【
図2】排水管に取り付けられた流水センサの構成を示す図である。
【
図3】制御部による詰まり検出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態は本発明の一例であり、本発明の構成は以下の例には限られない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る詰まり監視システムの概略構成を示す図である。本実施形態の詰まり監視システム100は、建物内のトイレや、流し台、洗面台、浴槽、シャワー室などの水回り設備に接続された排水管5の詰まりを検出するものである。排水管5は、建物の各フロアに配置される排水横枝管や、各フロアの排水を集合させて排出させる排水立て管を含み得る。本実施形態では、トイレの排水管5の詰まりを監視する詰まり監視システム100の例を示す。トイレの排水管は、大便器と接続された排水横枝管のほか、小便器と接続された排水横枝管や、洗面台と接続された排水横枝管であってもよい。
図1では、排水管5と接続する便器6の例を一つ示したが、排水管5に対して複数の便器6が接続されてもよい。
【0017】
詰まり監視システム100は、詰まり検出装置1と、管理装置2と、洗浄コントローラ3とを備えている。管理装置2は、インターネットなどのネットワークNを介して管理者端末4と通信可能になっている。
【0018】
詰まり検出装置1は、排水管5に取り付けられた流水センサ(検出部)10と、流水センサ10の検出結果に基づいて排水管の詰まりを判定する制御部20とを備えている。
【0019】
図2は、排水管5に取り付けられた流水センサ10の構成を示す図である。流水センサ10は、ロッド部11、支持部12、及び検出部13を備えている。
【0020】
ロッド部11は、一方向に延在した細長い棒状の部材であり、少なくとも先端部(第一端部)111が排水管5内に配置されている。ロッド部11は、例えば柔軟な合成樹脂によって形成されている。
【0021】
支持部12は、ロッド部11の延在方向において先端部111と反対側の基端部(第二端部)112を所定範囲内での移動を可能に支持している。支持部12は、概ね円柱形であり、下部が排水管5の管壁51を貫通して排水管5に取り付けられている。支持部12は、円柱の軸方向に延在する内空121を上部に有している。支持部12において、内空121の下側に位置する底部122には、内空121から支持部12の下端にかけて、ロッド部11を通す貫通穴120が設けられている。
【0022】
支持部12の内空121内には、スプリング123が配置され、スプリング123の上部に円板状の保持板124が載置され、この保持板124にロッド部11の基端部112が保持されている。即ち、また、ロッド部11の基端部112が保持板124を介してスプリング123の上部に保持されている。スプリング123は、伸びた状態で形成されており、ロッド部11が排水の流れによって先端部111側に引かれ、スプリング123が押し縮められた場合に、その弾性力によって、ロッド部11を基端部112側へ付勢する付勢部材として機能する。このように本実施形態では、ロッド部11がスプリング123の伸縮範囲内で上下動可能に支持されている。この場合、ロッド部11は、支持部12の貫通穴120に沿って上下動する。即ち、貫通穴120の外周を画す周壁が、本実施形態におけるガイド部材となっている。
【0023】
また、保持板124の上には、マグネット125が設けられ、ロッド部11と共に上下動する。検出部13は、磁気センサであり、ロッド部11が下に引かれてマグネット125が検出部13に近づいた場合に、検出値が大きくなる。このため、流水センサ10は、排水の流れの状態、例えば流速や流量に応じた値を検出できる。即ち、流水センサ10は、排水の流速や流量を検出できる。
【0024】
制御部20は、メモリやプロセッサを有するマイクロコンピュータであり、流水センサ10の検出結果に基づいて排水管の詰まりを判定する判定部の一形態である。制御部20は、洗浄コントローラ3と電気的に接続され、洗浄コントローラ3から洗浄情報を取得する。制御部20は、洗浄水が流されたタイミングで、流水センサ10による検出値が基準値を越えない場合に、排水管5の詰まりが発生したと判定する。また、制御部20は、管理装置2と接続され、詰まりが発生したことを示す詰まり情報を管理装置2へ送信する。
【0025】
管理装置2は、メモリやプロセッサ、通信インタフェースを有するコンピュータであり、詰まりが発生した場合に、トイレの管理者が利用する所定の管理者端末4へ詰まり発生通知を送信する。また、管理装置2は、洗浄コントローラ3と電気的に接続され、詰まりが発生した場合に、洗浄コントローラ3へ、洗浄水の放出を禁止する洗浄禁止命令を送信する。
【0026】
洗浄コントローラ3は、便器6の利用者が、用を足した後、洗浄ボタンを押した場合などに、便器6へ洗浄水を放出する。これに限らず、洗浄コントローラ3は、所定時間以上利用者の存在を検出したのち、利用者が便器6から離れたことを検出した場合に、洗浄水を放出してもよい。また、洗浄コントローラ3は、定期的に洗浄水を状出してもよい。洗浄コントローラ3は、洗浄水を放出した場合、洗浄情報を制御部20へ送信する。そして、洗浄コントローラ3は、管理装置2から、洗浄禁止命令を受信した場合、洗浄水の放出
を禁止する。
【0027】
図3は、制御部20による詰まり検出処理のフローチャートである。制御部20は、電源が投入された場合、
図3の処理を繰り返し実行する。ステップS10にて、制御部20は、洗浄コントローラ3から洗浄情報を受信したか否かによって、洗浄水の放出が行われたか否かを判定する。これに限らず、制御部20は、流水センサ10によって排水が流れを検出した場合に放出が行われたと判定してもよい。制御部20は、ステップS10で、否定判定の場合、
図3の処理を終了し、肯定判定の場合、ステップS20へ移行する。
【0028】
ステップS20にて、制御部20は、流水センサ10から検出値を取得する。そして、ステップS30にて、制御部20は、洗浄水の放出が完了したか否か、即ち排水が流れが止まったか否かを判定する。制御部20は、ステップS20で否定判定であれば、ステップS10へ戻って検出値の取得を繰り返し、肯定判定であれば、ステップS40へ移行する。
【0029】
ステップS40にて、制御部20は、ステップS20で取得した検出値の最大値に基づいて、排水管5の詰まりが発生したか否かを判定する。例えば、排水管5が詰まっていて排水が流れない場合や、流れが悪く、流速が低い又は流量が少ない場合、検出値の最大値が小さくなる。このため、検出値の最大値が基準値以下であれば、詰まりが発生したと判定し、当該最大値が基準値を越えていれば詰まりが発生していないと判定する。なお、基準値は、検出する詰まりの程度に応じて予め設定する。例えば、詰まりの予兆を早めに検出する場合には基準値を高めに設定し、詰まりが生じて清掃が必要となったことを検出する場合には基準値を低めに設定する。
【0030】
制御部20は、ステップS40で否定判定(S40,No)であれば、
図3の処理を終了し、肯定判定(S40,Yes)であれば、ステップS50へ移行する。
【0031】
ステップS50にて、制御部20は、管理装置2へ、排水管5に詰まりが発生したことを示す詰まり発生情報を送信する。制御部20から詰まり発生情報を取得した管理装置2は、洗浄コントローラ3へ洗浄禁止命令を送信する。これにより、洗浄コントローラ3に洗浄水の放出を禁止させ、排水管5が詰まった状態で洗浄水を放出して便器6から洗浄水が溢れるといった不具合を防止することができる。また、詰まり発生情報を取得した管理装置2は、所定の管理者端末4へ詰まり発生通知を送信する。これにより、トイレの管理者に、清掃などのメンテナンスが必要となったことを通知することができる。
【0032】
このように本実施形態の詰まり検出装置1は、ロッド部11の移動量によって、排水の流れの状態を検出し、これに基づいて排水管の詰まりを判定する。このため、従来のフロートを用いる場合と比べて、汚れが付着する部分が少なく、また、超音波センサのように少しの汚れで検出精度が大きく損なわれることがないため、適切に排水管の詰まりを検出することができる。
【0033】
<変形例>
図4は、流水センサの変形例を示す図である。本変形例は、前述の実施形態と比べて流水センサ10Aに係る構成が異なっており、その他の構成は同じである。このため、前述の実施形態と同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、流水センサ10Aは、ロッド部11が、揺動部113により、基端部112における揺動軸12Xを中心に揺動可能に支持されている。また、揺動部113の上部にマグネット125が設けられている。このため、排水の流れが無い状態では、マグネット125が上部に位置し、検出部13と近いため検出値が大きく、排水が流れてい
る状態では、揺動部113が回転しマグネット125が検出部13から遠ざかることで検出値が小さくなる。即ち、流水センサ10Aは、排水の流れの状態、例えば流速や流量に応じた値を検出できる。このため、制御部20は、
図3のステップ40において、流水センサ10Aによる検出値の最大値が、基準値を越えていれば詰まりが発生したと判定し、当該最大値が基準値以下であれば詰まりが発生していないと判定する。このように本変形例においても前述の実施形態と同様に、排水管の詰まりを適切に検出することができる。
【0035】
〈その他〉
本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1: 検出装置
10: 流水センサ
10A: 流水センサ
100: 監視システム
11: ロッド部
111: 先端部
112: 基端部
113: 揺動部
12: 支持部
120: 貫通穴
121: 内空
122: 底部
123: スプリング
124: 保持板
125: マグネット
12X: 揺動軸
13: 検出部
2: 管理装置
20: 制御部
3: 洗浄コントローラ
4: 管理者端末
5: 排水管
51: 管壁
6: 便器