(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077233
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/40 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
H04R1/40 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190456
(22)【出願日】2021-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和 2年11月25日に第41回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウムにて発表 令和 2年11月25日に第41回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウムのウェブサイトにて公開 令和 3年6月2日にJapanese Journal of Applied Physics,Volume 60のウェブサイトにて公開 令和 3年10月11日に第3回アコースティックイメージング研究会にて発表 令和 3年10月11日に第3回アコースティックイメージング研究会のウェブサイトにて公開 令和 3年10月25日に第42回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウムにて発表 令和 3年10月25日に第42回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウムのウェブサイトにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 寛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昇太
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA06
5D019BB20
5D019FF06
(57)【要約】
【課題】ステージに置かれている物体を物体に接触することなく拾い上げることができる振動子の制御装置を提供する。
【解決手段】半球体の球帯ごとに並べて配置された振動子が発生する超音波の大きさ及び位相を制御する制御装置であって、前記振動子で構成される振動子アレイが発生する超音波と前記超音波がステージを反射することで発生する反射超音波とにより形成される目標波動場に基づいて前記振動子が発生する超音波の大きさを制御する、制御装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球体の球帯ごとに並べて配置された振動子が発生する超音波の大きさ及び位相を制御する制御装置であって、
前記振動子で構成される振動子アレイが発生する超音波と前記超音波がステージを反射することで発生する反射超音波とにより形成される目標波動場に基づいて前記振動子が発生する超音波の大きさを制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記振動子が配置された前記球帯ごとに、前記振動子が発生する超音波の大きさと位相を制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、同じ球帯に配置された振動子のうち、前記半球体の第1の四分球に配置された振動子が発生する超音波の位相と、前記半球体から前記第1の四分球を除いた第2の四分球に配置された振動子が発生する超音波の位相とは逆位相になるように制御する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
半球体の球帯ごとに並べて配置された振動子が発生する超音波の大きさ及び位相を制御する制御方法であって、
前記振動子で構成される振動子アレイが発生する超音波と前記超音波がステージを反射することで発生する反射超音波とにより形成される目標波動場に基づいて前記振動子が発生する超音波の大きさを制御する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体に波(例えば超音波)を当てるとその物体に圧力を加えることができる。このとき、物体に加えられる力は音響放射力と呼ばれる。音響放射力を使用した応用技術として、対象とする物体に音響放射力を加え、浮揚させ空中で動きを制御する音響浮揚と呼ばれる技術がある。
【0003】
音響浮揚において、超音波アレイを使用することで物体を自由度高く空中で制御することができる。例えば、非特許文献1には対向させた超音波アレイが発生する定在波により物体を制御する技術が開示されている。また、非特許文献2及び3には、超音波アレイの振動子の位相を特殊な手法により制御することで片面のみのアレイで物体を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T.Hoshi, Y.Oshiai, J.Rekimoto, "Three-dimensional noncontact manipulation by opposite ultrasonic phased arrays, "Jpn.J.Appl.Phys.53, 7S , 2014.
【非特許文献2】A.Marzo, S.A.Seah, B.W.Drinkwater, D.R.Sahoo, B.Long, S.Subramanian, "Holographic acoustic elements for manipulation of levitated objects, "Nature Communications, 6, 8661, 2015.
【非特許文献3】A.Marzo, A.Ghobrial, L.Cox, M.Caleap, A.Croxford, B.W.Drinkwater, "Realization of compact tractor beams using acoustic delay-lines, "Applied.Physics.Letters, 110, 014102, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1-3に開示された物体を制御する技術においては、ステージに置かれている物体を拾い上げることが難しい。そのため、物体を空中で制御するためには事前に物体を強い波動場が集まっている空間近くまで運ぶ必要がある。
本発明の目的は、ステージに置かれている物体を物体に接触することなく拾い上げることができる振動子の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、半球体の球帯ごとに並べて配置された振動子が発生する超音波の大きさ及び位相を制御する制御装置であって、前記振動子で構成される振動子アレイが発生する超音波と前記超音波がステージを反射することで発生する反射超音波とにより形成される目標波動場に基づいて前記振動子が発生する超音波の大きさを制御する。
【0007】
本発明の一態様は、半球体の球帯ごとに並べて配置された振動子が発生する超音波の大きさ及び位相を制御する制御方法であって、前記振動子で構成される振動子アレイが発生する超音波と前記超音波がステージを反射することで発生する反射超音波とにより形成される目標波動場に基づいて前記振動子が発生する超音波の大きさを制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ステージに置かれている物体を物体に接触することなく拾い上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る物体浮揚システムの構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る振動子アレイの構成を示す図である。
【
図6】振動子アレイと虚振動子アレイを示す図である。
【
図8】振動子が発生する波動場のシミュレーション結果である。
【
図9】振動子が発生する超音波の大きさ及び位相を示す図である。
【
図10】発生する波動場による対象物体の浮揚を撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
〈物体浮揚システム〉
図1は、第1の実施形態に係る物体浮揚システム1の構成を示す図である。物体浮揚システム1は、制御装置11、DAC(Digital-Analog Converter)12、増幅器13、振動子アレイ14を備える。
制御装置11は、DAC12にデジタル信号を出力する。制御装置11による制御の詳細については後述する。DAC12は入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅器13に出力する。増幅器13は入力される信号を増幅し、振動子アレイ14に出力する。振動子アレイ14は、増幅器13から入力される信号を振動に変換し、超音波を発生する。振動子アレイ14は超音波を発生させることで対象物体15に力を加え、対象物体15を浮揚させる。
【0011】
物体浮揚システム1において、制御装置11がアナログ信号を増幅器13に出力してもよい。また、制御装置11は振動子アレイ14が超音波を発生させるために十分な大きさの信号を振動子アレイ14に出力してもよい。
【0012】
〈振動子アレイ〉
図2は、第1の実施形態に係る振動子アレイ14の構成を示す図である。
振動子アレイ14は半球状に配置された振動子141により構成される。振動子141は、例えば中空の半球体142の内壁に配置されることで半球状に配置される。振動子141は、半球体142の内壁の法線と振動子141の照射面とが直交するように配置され、半球体142のほぼ中心に超音波が集中するように配置される。
図3は、半球体142の各部分を示す図である。ここで半球体142の全球に対する切断面を開口面143と呼ぶ。また、半球体142上の点のうち、開口面143から最も距離が離れた点を頭頂点144と呼ぶ。
振動子141は、半球体142と開口面143に平行な複数の平面との交線上に並べて配置される。つまり、振動子141は、半球体142の球帯ごとに並べて配置される。
【0013】
〈振動子アレイの制御方法〉
制御装置11は、振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を制御し、対象物体15の周囲の波動場を変化させることで対象物体15を浮揚させる。制御装置11は、例えば対象物体15の周囲の波動場を変化させ、対象物体15に半球体142の内壁から中心へ向く方向の力を加えることで対象物体15を捕捉する。その後、制御装置11は、振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を変化させ、空間において加えられる力の大きさ及び向きを変化させることで、対象物体15を浮揚させる。
【0014】
制御装置11は、半球体142の球帯ごとに、当該球帯に配置される振動子141に発生させる超音波の大きさと位相を制御する。つまり、制御装置11は、異なる球帯に配置された振動子141同士で、発生する超音波の大きさと位相が異なるように制御する。また、制御装置11は、同じ球帯に配置された振動子141どうしで、発生する超音波の大きさが同じになるように制御する。
図4は、半球体142の球帯の一例を示す図である。
図4に示す例においては、球帯には開口面143に近い方から順に第1球帯、第2球帯、第3球帯、第4球帯及び第5球帯という名称が付与されている。制御装置11は、振動子141が配置される第1球帯、第2球帯、第3球帯、第4球帯及び第5球帯のそれぞれについて独立して振動子141が発生する超音波の大きさと位相を制御する。
【0015】
また、振動子141が配置される半球体142を、中心と頭頂点144とを通る平面で2等分される第1の四分球及び第2の四分球に分けて考える。
図5は、2つの四分球を示す図である。制御装置11は、同じ球帯に配置された振動子141が発生する超音波の位相のうち、第1の四分球に配置された振動子141が発生する超音波の位相と第2の四分球に配置された振動子141が発生する超音波の位相とが逆位相になるように振動子141が発生する超音波の位相を制御する。これにより、制御装置11は、対象物体15が半球体142の中心と頭頂点144とを通る軸から動くのを防ぐことができる。
【0016】
制御装置11は、振動子アレイ14が発生する超音波と超音波がステージを反射することで発生する反射超音波とにより形成される波動場が目標波動場となるように、振動子141に発生させる超音波の大きさ及び位相を制御する。目標波動場は例えば対象物体15の周囲の波動場が強い分布を有する波動場である。波動場において周囲に強い波動場がある点は焦点と呼ばれる。制御装置11は、対象物体15の近くに焦点を有する目標波動場を生成し、経時的に目標波動場の焦点の位置を上昇させることで、対象物体15を上昇させることができる。
【0017】
反射超音波は、振動子アレイ14と対象物体15を載せたステージを対称面として振動子アレイ14と対称に位置する虚振動子アレイ24が発生する超音波であると考えることができる。
図6は、振動子アレイ14と虚振動子アレイ24を示す図である。波動場を求めるためのモデルにおいて虚振動子アレイ24を考慮することで、反射超音波を考慮することができ、対象物体15の浮揚を容易に行うことができる。
【0018】
〈振動子の超音波の決定方法〉
以下、振動子141が発生する超音波を決定する方法について説明する。
【0019】
目標波動場をH、振動子141に係るパラメータをG、フィルタ係数をWとすると、H=GWと表される。
【0020】
目標波動場Hは式(1)により表される。
【0021】
【0022】
式(1)において、Hの各要素であるh0、h1・・・hcは空間内の各制御点における波動場の強度及び位相を示す。Hの各要素は複素数であって、各制御点における波動場の強度及び位相を示す。制御点は例えば振動子アレイ14と虚振動子アレイ24の間の空間にとられる。cは空間内にとられた制御点の数を示す。つまり、Hは空間内にとられた全ての制御点における目標波動場を示す。空間内の制御点の位置は任意に決めてよい。
【0023】
フィルタ係数Wの値は各球帯に配置される振動子141が発生する超音波のパワーの大きさ及び位相を示す値である。フィルタ係数Wは式(2)により表される。
【0024】
【0025】
フィルタ係数Wの各要素は複素数であって、超音波のパワーの大きさ及び位相を示す。式(2)において、tは振動子アレイ14において振動子141がそれぞれ配置される球帯の数を示す。つまり、振動子141は振動子アレイ14の第t球帯まで配置される。
【0026】
振動子141に係るパラメータGは式(3)により表される。
【0027】
【0028】
パラメータGが既知であるとき、目標波動場H及びパラメータGに基づいてフィルタ係数Wを計算することができる。フィルタ係数Wは例えば式(4)により、加重最小2乗法(weighted least squares method)を用いて算出される。
【0029】
【0030】
式(4)において、*はエルミート転置を示し、Φは重みである。パラメータGが固定されるとき、目標波動場Hとフィルタ係数Wは1対1の対応関係である。制御装置11は、計算されたフィルタ係数Wに基づいて振動子アレイ14に信号を送信し振動子アレイ14を構成する振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を制御することで、目標波動場を対象物体15の周囲に発生させ、対象物体15を浮揚させる。例えば、対応するフィルタ係数の絶対値が大きい球帯に配置される振動子141が発生する超音波の大きさは大きくなり、対応するフィルタ係数の絶対値が小さい球帯に配置される振動子141が発生する超音波の大きさは小さくなる。
【0031】
式(3)において、gijは振動子アレイ14の振動子141に関するパラメータである。gijは式(5)により表される。
【0032】
【0033】
式(5)において、mは振動子アレイ14及び虚振動子アレイ24の第j球帯に配置される振動子141の数である。反射面に対して面対象な振動子アレイ14と虚振動子アレイ24とは、対応する序数を有する。例えば、振動子アレイ14の第n球帯と虚振動子アレイ24の第n球帯とは、反射面に対して面対象となる。Mi
nは振動子アレイ14又は虚振動子アレイ24の1つの振動子141により各制御点に与えられる波動圧である。Mi
nは式(6)により定義される。
【0034】
【0035】
式(6)において、p0は振動子141から発生される超音波のパワーにより定義される定数である。p0は振動子アレイ14の振動子であっても虚振動子アレイ24の振動子であっても等しい値である。J0(x)は、次数0の第一種ベッセル関数である。kは振動子141から発生される超音波の波数である。rは振動子141の照射面の半径である。di
nは各振動子141と制御点との間の距離である。θi
nは振動子141の照射面と垂直である音軸と振動子141と制御点とを通る直線とがなす角度である。
【0036】
式(6)において、虚振動子アレイ24の振動子141が各制御点に与える波動圧が計算され、式(5)において振動子アレイ14の各球帯に対応するパラメータに虚振動子アレイ24の振動子141が各制御点に与える波動圧が含まれることで、虚振動子アレイ24が考慮される。
【0037】
以上により、制御装置11は、目標波動場H及びパラメータGからフィルタ係数Wを計算し、振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を制御することができる。
【0038】
制御装置11は、対象物体15の浮揚した距離に基づいて振動子アレイ14に送信する信号を決定してもよい。対象物体15の浮揚した距離はカメラなどを通して人間が目視で判定し制御装置11に入力してもよく、カメラなどにより物体認識され、制御装置11に入力されてもよい。振動子141を用いてステージからの反射成分により距離を判定することで、対象物体の浮揚した距離は制御装置11に入力されてもよい。制御装置11は、事前に決定されたタイミングで振動子アレイ14に送信する信号を変化させることで、振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を変化させ、対象物体15を浮揚させてもよい。
【0039】
〈作用・効果〉
制御装置11は、振動子アレイ14が発生する超音波が対象物体15を載せたステージで反射するのを考慮し、振動子アレイ14を構成する振動子141を配置される球帯の違いにより異なる制御を行う。これにより、ステージによる反射がある場合であっても波動場が擾乱することなく対象物体15を捕捉することができる。
【0040】
〈実験結果〉
以下、実験結果を説明する。本実験において使用した振動子アレイ14を構成する振動子141は180個である。振動子141は、振動子141が配置された球帯が第1球帯から第8球帯のいずれかにより8通りに制御される。各々の球帯に配置される振動子141の数は、第1球帯から第8球帯まで32、32、32、28、24、16、12、4である。半球体142の直径は120mmである。振動子141が発生する超音波の中央周波数は40kHzであり、振動子141の直径はおよそ10mmである。
【0041】
制御点は半球体142の中心を中心とする一辺40mmの立方体の空間内に4mm間隔で設定した。つまり、113=1331個の制御点を設定した。式(1)における重みΦを半球体142の中心を中心とする一辺20mmの立方体の空間内の制御点においては5とし、半球体142の中心を中心とする一辺10mmの立方体の空間内の制御点においては10とし、他の場合は1とした。本実験において、球帯は第1球帯から第8球帯まで8個、制御点は1331個であるため、パラメータGは8×1331の行列となる。
【0042】
図7は、目標波動場と制御点を示す図である。
図7に示す目標波動場においてx=0であり、焦点は(y、z)=(0,0)である。xy平面が開口面143と平行であるとき、対象物体15に目標波動場の焦点を合わせ、時間経過に応じて目標波動場の焦点を上昇させることで、対象物体15を上昇させることができる。
【0043】
図8は、振動子141が発生する波動場のシミュレーション結果である。(y,z)=(0,0)が半球体142の中心となり、z軸が半球体142の中心と頭頂点144とを結ぶ直線と平行になるように座標を定義した。Aは、
図7に示す目標波動場のテンプレートをZ軸方向に-25mmオフセットした目標波動場に、波動場が近づくようにシミュレートした結果である。Aは対象物体15がステージ上にある状態、つまり、対象物体15が置かれているステージから対象物体15を浮揚させるときである。Bは、
図7に示す目標波動場のテンプレートをZ軸方向に-10mmオフセットした目標波動場に、波動場が近づくようにシミュレートした結果である。Bは対象物体15がステージからおよそ15mm上昇した状態である。
【0044】
図9は、振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を示す図である。角柱の位置は振動子141が設置される位置を示し、角柱の大きさは当該振動子141が発生する超音波の大きさ、角柱の濃淡は当該振動子141が発生する超音波の位相を示す。Aは対象物体15が半球体142の中心付近にある状態の振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を示し、Bは対象物体15が半球体142の中心付近からおよそ15mm上昇した状態の振動子141が発生する超音波の大きさ及び位相を示す。
【0045】
図10は、発生する波動場による対象物体15の浮揚を撮影した画像である。対象物体15が段階(a)から(f)になるにつれて浮揚し、最終的にステージから2cm浮揚しているのが分かる。
【0046】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0047】
上述した実施形態における制御装置11の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記録装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 物体浮揚システム、11 制御装置、12 DAC、13 増幅器、14 振動子アレイ、15 対象物体、141 振動子、142 半球体、143 開口面、144 頭頂点、24 虚振動子アレイ