(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007735
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】飲料及び光劣化臭のマスキング方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20230112BHJP
A23L 2/42 20060101ALI20230112BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230112BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20230112BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 N
A23L2/00 Z
A23L27/00 Z
A23L27/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110767
(22)【出願日】2021-07-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】市川 英李
(72)【発明者】
【氏名】石引 智子
(72)【発明者】
【氏名】三木 智恵
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB02
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF07
4B047LG05
4B047LG37
4B047LP14
4B117LC03
4B117LC15
4B117LE10
4B117LK06
4B117LK09
4B117LK12
4B117LK30
4B117LL02
4B117LL09
4B117LP17
4B117LP18
(57)【要約】
【課題】 不飽和脂肪酸を含む飲料の光劣化臭が感じにくくなる新規な技術を提供する。
【解決手段】 不飽和脂肪酸を含む飲料であって、2.5~500ppbのサビネン及び/又は5~5000ppbのγ-テルピネンを含む飲料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和脂肪酸を含む飲料であって、
2.5~500ppbのサビネン及び/又は5~5000ppbのγ-テルピネンを含む飲料。
【請求項2】
(E)-2-デセナールを0.5~500ppb含む請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記サビネンと前記γ-テルピネンの両方を含む請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
前記サビネンと前記γ-テルピネンの含有量比(サビネン:γ-テルピネン)が1:3~1:200である、請求項3に記載の飲料。
【請求項5】
光透過性を有する容器に充填されている請求項1乃至4のいずれか一つに記載の飲料。
【請求項6】
炭酸飲料である請求項1乃至5のいずれか一つに記載の飲料。
【請求項7】
有糖飲料である請求項1乃至6のいずれか一つに記載の飲料。
【請求項8】
無糖飲料である請求項1乃至6のいずれか一つに記載の飲料。
【請求項9】
不飽和脂肪酸を含む飲料の製造方法であって、
前記飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は前記飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させることを含む、飲料の製造方法。
【請求項10】
不飽和脂肪酸を含む飲料における光劣化臭のマスキング方法であって、
前記飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は前記飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させることを含む、光劣化臭のマスキング方法。
【請求項11】
(E)-2-デセナールを含む飲料であって、
2.5~500ppbのサビネン及び/又は5~5000ppbのγ-テルピネンを含む飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和脂肪酸を含有する飲料などに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料に添加される果汁や香料には、不飽和脂肪酸が含まれることがある。不飽和脂肪酸を含む飲料は、光に暴露されることで、不飽和脂肪酸から(E)-2-デセナールや1-オクテン-3-オン等の異臭を感じさせる成分を生成する。その結果、光が暴露された不飽和脂肪酸を含む飲料は、飲用時や飲用後に異臭(以下、「光劣化臭」ともいう)を感じさせる。
【0003】
光の暴露による成分変化を抑制する技術として、特許文献1には、茶抽出物、フラボノイド、ポリフェノール、カテキン、没食子酸などの抗酸化剤を添加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光の暴露による成分変化を抑制するため、飲料に抗酸化剤を添加してしまうと、飲料に濁りが生じることがあり、また、飲料の製造コストが上昇してしまう。
【0006】
本発明は、不飽和脂肪酸を含む飲料の光劣化臭が感じにくくなる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、不飽和脂肪酸を含む飲料に対し、サビネン及び/又はγ-テルピネンを所定の含有量で添加することで、光劣化臭が感じにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 不飽和脂肪酸を含む飲料であって、2.5~500ppbのサビネン及び/又は5~5000ppbのγ-テルピネンを含む飲料。
[2] (E)-2-デセナールを0.5~500ppb含む[1]に記載の飲料。
[3] 前記サビネンと前記γ-テルピネンの両方を含む[1]又は[2]に記載の飲料。
[4] 前記サビネンと前記γ-テルピネンの含有量比(サビネン:γ-テルピネン)が1:3~1:200である、[3]に記載の飲料。
[5] 光透過性を有する容器に充填されている[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の飲料。
[6] 炭酸飲料である[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の飲料。
[7] 有糖飲料である[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の飲料。
[8] 無糖飲料である[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の飲料。
[9] 不飽和脂肪酸を含む飲料の製造方法であって、
前記飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は前記飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させることを含む、飲料の製造方法。
[10] 不飽和脂肪酸を含む飲料における光劣化臭のマスキング方法であって、
前記飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は前記飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させることを含む、光劣化臭のマスキング方法。
[11]
(E)-2-デセナールを含む飲料であって、
2.5~500ppbのサビネン及び/又は5~5000ppbのγ-テルピネンを含む飲料。
[12] 前記(E)-2-デセナールの含有量が0.5~500ppbである[11]に記載の飲料。
[13] 前記サビネンと前記γ-テルピネンの両方を含む[11]又は[12]に記載の飲料。
[14] 前記サビネンと前記γ-テルピネンの含有量比(サビネン:γ-テルピネン)が1:3~1:200である、[13]に記載の飲料。
[15] 光透過性を有する容器に充填されている[11]乃至[14]のいずれか一つに記載の飲料。
[16] 炭酸飲料である[11]乃至[15]のいずれか一つに記載の飲料。
[17] 有糖飲料である[11]乃至[16]のいずれか一つに記載の飲料。
[18] 無糖飲料である[11]乃至[16]のいずれか一つに記載の飲料。
[19] (E)-2-デセナールを含む飲料の製造方法であって、
前記飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は前記飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させることを含む、飲料の製造方法。
[20] (E)-2-デセナールを含む飲料における光劣化臭のマスキング方法であって、
前記飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は前記飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させることを含む、光劣化臭のマスキング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不飽和脂肪酸を含む飲料の光劣化臭が感じにくくなる新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a】試験1-1の評価結果を示すグラフである。
【
図1b】試験1-2の評価結果を示すグラフである。
【
図2a】試験2-1の評価結果を示すグラフである。
【
図2b】試験2-2の評価結果を示すグラフである。
【
図3a】試験3-1の評価結果を示すグラフである。
【
図3b】試験3-2の評価結果を示すグラフである。
【
図4a】試験4-1の評価結果を示すグラフである。
【
図4b】試験4-2の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態の飲料は、不飽和脂肪酸を含む飲料であり、2.5~500ppbのサビネン及び/又は5~5000ppbのγ-テルピネンを含む。
【0013】
本実施形態の飲料に含まれる不飽和脂肪酸は、不飽和結合を有する脂肪酸である。不飽和脂肪酸の由来は、特に限定されるものではなく、例えば、飲料の原料として添加した果汁に含まれる不飽和脂肪酸であってもよく、飲料の原料として添加した香料に含まれる不飽和脂肪酸であってもよく、飲料の原料として添加した香料と果汁の両方に含まれる不飽和脂肪酸であってもよい。
【0014】
本実施形態の飲料における不飽和脂肪酸の含有量は、所望する飲料の風味などに応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、一例としては、オレイン酸とリノール酸の含有量が合計で1ppb以上であるときに、不飽和脂肪酸を含む飲料であると判断することができる。なお、飲料に含まれる不飽和脂肪酸は、高速液体クロマトグラフ質量分析計を用いてターゲット分析することで定量できる。飲料に果汁を含有することにより、不飽和脂肪酸(果汁に由来する不飽和脂肪酸)を飲料に含有させるような場合には、例えば、果汁の含有量は、飲料100質量%に対して1~30質量%とすることができる。
【0015】
本実施形態の飲料に含有され得る果汁は、レモン、グレープフルーツ、ゆず、ライム、シイクワシャー、オレンジ、みかん、モモ、ブドウ、イチゴ、ウメ、リンゴ、和梨、洋梨などの果汁を例示することができる。これらの果汁の中でも、サビネンやγ-テルピネンとの相性がよいことから、レモン、グレープフルーツ、ゆず、ライム、シイクワシャー、オレンジ、みかんなどの柑橘果汁であることが好ましく、レモン果汁であることがより好ましい。なお、果汁は、1種類のみを含有させてもよいが、2種以上を含有させてもよい。
【0016】
なお、本明細書において、果汁とは、果物を搾汁して得られる液体成分であり、搾汁とは、果物から液体成分を搾って分離する操作である。果汁は、例えば、果物を適当な大ききに破砕し、当該破砕物を搾汁することで得ることができる。搾汁の方法は、特に限定されるものではなく、通常の搾汁機を用いて常法により行うことができ、例えば、ブラウン型(パドル型)又はバタフライ型のパルパーフィニッシャーなどを用いることができる。果汁は、搾汁後に、精密濾過法、酵素処理法、限外濾過法などの清澄化処理が行われたものであってもよい。
【0017】
不飽和脂肪酸が含まれる飲料は、光が暴露されることによって、不飽和脂肪酸から(E)-2-デセナールや1-オクテン-3-オン等の異臭を感じさせる成分(以下、「異臭成分」ともいう)を生成する。異臭成分を含む飲料にサビネン及び/又はγ-テルピネンが所定の含有量(サビネン:2.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)で含まれていない場合には、飲料に含まれる異臭成分の影響により、飲用時や飲用後に異臭(以下、「光劣化臭」ともいう)を感じさせる。光劣化臭は、具体的には、金属臭、油の酸化臭、樹脂臭、またはカメムシを想起させるような不快な臭いを指す。
【0018】
異臭成分は、異臭成分を含む原料を添加することで本実施形態の飲料に含有されてもよいが、飲料の原料に含まれていなくてもよい。すなわち、異臭成分は、製造直後の飲料に含まれていてもよいが、製造直後の飲料に含まれていなくてもよい。製造直後の飲料に異臭成分が含まれていなくても、その飲料に不飽和脂肪酸が含まれていれば、光の暴露により異臭成分が生成されることから、製造直後の飲料における異臭成分の有無は特に限定されるものではない。
【0019】
飲料における異臭成分の含有量は、特に限定されるものではない。飲料の光劣化臭を感じにくくする観点からは、飲料における(E)-2-デセナールの含有量は、0.5~500ppbであることが好ましく、0.5~100ppbであることがより好ましく、1~10ppbであることが特に好ましい。なお、本明細書において、異臭成分の含有量とは、飲料が製造されてから消費される(飲用される)までの間における含有量を指す。また、異臭成分の含有量が所定範囲にあるとは、飲料が製造されてから消費されるまでの間の少なくとも一時期(例えば、飲料に対する光(発光ダイオードによる光など)の積算照度が100万~1000万lx・hrになった時や、光(発光ダイオードによる光など)が照射される陳列棚に飲料を陳列後1日~10日経過した時)において所定範囲内にあることを指し、製造されてから消費されるまで継続して所定の範囲内にあることだけを意味するものでなく、製造直後は所定の範囲外であったものが消費されるまでの間に所定の範囲内に入ってくるものも含む意味である。また、本明細書におけるppbは、質量ppbを意味する。
【0020】
本実施形態の飲料には、上述した不飽和脂肪酸の他に、2.5~500ppbのサビネン及び/又は5~5000ppbのγ-テルピネンが含まれている。本実施形態の飲料におけるサビネンやγ-テルピネンの含有量が、前述したそれぞれの含有量の範囲(サビネン:2.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)内にあることで、飲料の飲用時や飲用後に光劣化臭を感じにくくなる。
【0021】
サビネン(1-isopropyl-4-methylenebicyclo[3.1.0]hexane)は、二環式モノテルペンであり、例えば、ナツメグなどのスパイスに含まれる物質である。γ-テルピネン(4-Isopropyl-1-methyl-1,4-cyclohexadiene)は、p-メンタン骨格をもつモノテルペンであり、例えば、コリアンダーなどの植物に含まれる物質である。
【0022】
本実施形態の飲料におけるサビネンやγ-テルピネンは、化学合成されたものでもよく、天然物から抽出・精製されたものでもよい。本実施形態の飲料におけるサビネンやγ-テルピネンの由来は、特に限定されるものではなく、例えば、サビネンやγ-テルピネンを含有する香料を原料として飲料に添加することで、本実施形態の飲料にサビネンやγ-テルピネンを含有してもよい。
【0023】
本実施形態の飲料は、サビネンとγ-テルピネンの少なくとも一方を含有すればよく、いずれか一方のみを含有してもよい。ここで、サビネンやγ-テルピネンは、前述したそれぞれの含有量の範囲(サビネン:2.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)内にある場合、柑橘風味の飲料全体の風味(つまり、柑橘風味)には悪影響を及ぼしにくい。このため、本実施形態の飲料を柑橘風味にする場合、サビネンとγ-テルピネンのどちらを含有させても飲料全体の風味(柑橘風味)に悪影響を及ぼしにくいが、γ-テルピネンの含有量が1000ppb以上(1000~5000ppb)となる場合には、サビネンを飲料に含有させた方が、γ-テルピネンを含有させるよりも、飲料全体の風味(柑橘風味)に悪影響をより及ぼしにくい。このため、柑橘風味の本実施形態の飲料にサビネンとγ-テルピネンのいずれか一方のみを含有する場合、γ-テルピネンのみを含有するよりも、サビネンのみを含有した方が好ましい。
【0024】
本実施形態の飲料は、サビネンとγ-テルピネンのいずれか一方のみを含有していてもよいが、サビネンとγ-テルピネンの両方を含有することが好ましい。サビネンとγ-テルピネンの両方を含有する飲料は、サビネンとγ-テルピネンのいずれか一方のみを含有する飲料と比較して、飲料における光劣化臭がより感じにくくなる。
【0025】
サビネンとγ-テルピネンの両方を含有する飲料において、サビネンとγ-テルピネンの含有量比は、前述したそれぞれの含有量の範囲内(サビネン:2.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)において適宜設定することができ、特に限定されるものではない。飲料全体の風味への悪影響を抑制ししつ、飲料の光劣化臭を感じにくくする観点からは、サビネンとγ-テルピネン(サビネン:γ-テルピネン)の含有量比は、1:3~1:200であることが好ましく、1:3~1:100であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態の飲料がサビネンを含む場合において、臭気成分とサビネンの含有量比は、特に限定されるものではない。例えば、臭気成分が(E)-2-デセナールである場合には、(E)-2-デセナールとサビネンの含有量比は、前述したそれぞれの含有量の範囲((E)-2-デセナール:0.5~500ppb,サビネン:2.5~500ppb)内において適宜設定することができる。飲料全体の風味への悪影響を抑制ししつ、飲料の光劣化臭を感じにくくする観点からは、(E)-2-デセナールとサビネンの含有量比((E)-2-デセナール:サビネン)は、1:0.02~1:10とすることが好ましい。
【0027】
本実施形態の飲料がγ-テルピネンを含む場合において、臭気成分とγ-テルピネンの含有量比は、特に限定されるものではない。例えば、臭気成分が(E)-2-デセナールである場合には、(E)-2-デセナールとγ-テルピネンの含有量比は、前述したそれぞれの含有量の範囲内((E)-2-デセナール:0.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)において適宜設定することができる。飲料全体の風味への悪影響を抑制ししつ、飲料の光劣化臭を感じにくくする観点からは、(E)-2-デセナールとγ-テルピネンの含有量比((E)-2-デセナール:γ-テルピネン)は、1:0.1~1:100とすることが好ましい。
【0028】
なお、本明細書において、飲料全体の風味への悪影響とは、サビネン及びγ-テルピネンを添加していないこと以外は同じ組成の飲料の風味と比較して、異なる風味が感じられることを指す。
【0029】
本実施形態の飲料がサビネンを含有する場合、サビネンの含有量は、2.5~500ppbであればよいが、飲料全体の風味への悪影響を抑制ししつ、飲料の光劣化臭を感じにくくする観点からは、2.5~200であることが好ましい。また、本実施形態の飲料がγ-テルピネンを含有する場合、γ-テルピネンの含有量は、5~5000ppbであればよいが、飲料全体の風味への悪影響を抑制ししつ、飲料の光劣化臭を感じにくくする観点からは、7.5~2000ppbであることが好ましい。
【0030】
飲料におけるサビネン、γ-テルピネン、及び異臭成分の含有量は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いたジクロロメタン抽出法等により測定することができる。定量には、例えば、ヘプタン-3-オールを用いた内部標準法により、目的成分と内部標準物質のピーク面積比と含有量比の関係をもとに計算することができる。なお、飲料の原料として用いたサビネンやγ-テルピネンの添加量が判明している場合、その添加量と飲料の質量から、サビネンやγ-テルピネンの含有量を計算により求めてもよい。
【0031】
本実施形態の飲料は、前述した不飽和脂肪酸と、サビネン及び/又はγ-テルピネンと、飲料水(原料水)に加えて、本願発明の目的を達成できる範囲で他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、甘味料(糖類、高甘味度甘味料など)、香料、色素成分、果汁、pH調整剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、保存料、調味料、酸味料、ビタミン、アミノ酸等を挙げることができる。
【0032】
本実施形態の飲料は、果汁や香料などにより風味が付与されたフレーバー飲料とすることができる。本実施形態の飲料におけるサビネンやγ-テルピネンは、柑橘風味に悪影響を及ぼしにくいことから、本実施形態の飲料は、フレーバー飲料の中でも、柑橘風味の飲料であることが好ましく、レモン風味の飲料であることがより好ましい。なお、柑橘風味の飲料とは、柑橘果実を想起させる風味の飲料を指す。
【0033】
本実施形態の飲料を柑橘風味の飲料とする場合、柑橘風味とは異なる他の風味(以下、「他の風味」ともいう)を有していないことが好ましい。柑橘風味とは異なる他の風味としては、例えば、スパイス風味を挙げることができる。
【0034】
上述したスパイス風味は、スパイスを想起させる風味であり、例えば、シナモンを想起させるシナモン風味や、ジンジャーを想起させるジンジャー風味や、ハーブを想起させるハーブ風味や、カッシャを想起させるカッシャ風味や、クローブを想起させるクローブ風味を挙げることができる。コーラ風味の飲料は、柑橘風味に加えて、スパイス風味を有する飲料であり、本実施形態の飲料は、コーラ風味のような柑橘風味とは異なる他の風味を有していないことが好ましい。
【0035】
本実施形態の飲料は、糖類を実質的に含まない無糖飲料とすることができる。健康増進法に基づく栄養表示基準においては、飲料100mlあたり0.5g未満であれば無糖と表示できることから、本明細書においても当該規定と同様に、糖類の含有量が100mlあたり0.5g未満を無糖飲料という。本実施形態の飲料を無糖飲料とする場合、糖類の含有量が0.0gの無糖飲料であってもよい。無糖飲料は、糖類を含まないため、有糖飲料よりも、含有される成分による嗜好性への影響が生じやすい。このため、一般的に、無糖飲料は、有糖飲料と比較して、含有できる成分やその含有量が制限される傾向にある。
【0036】
本実施形態の飲料は、糖類の含有量が100mlあたり0.5g以上の有糖飲料とすることもできる。飲料の光劣化臭を感じにくくする観点からは、本実施形態の飲料は、無糖飲料とするよりも、有糖飲料とする方が好ましい。本実施形態の飲料が有糖飲料である場合、その糖度(Brix値)は、特に限定されるものではないが、例えば、1~15とすることができる。なお、本明細書において糖度(Brix値)とは、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を使用して測定することができる。
【0037】
本実施形態の飲料は、酸味料を添加することなどにより酸度[g/100ml]が調整されていてもよい。飲料の酸度は、特に限定されるものではなく、飲料の呈味に応じて適宜設定することができるが、本実施形態の飲料が有糖飲料である場合、0.05~0.5であることが嗜好性を向上する観点から好ましい。なお、酸度とは、飲料100ml中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数[無水クエン酸g/100ml]である。飲料の酸度は、JAS規格の酸度測定法に定められた方法、具体的には、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0038】
本実施形態の飲料は、炭酸ガスが溶存している炭酸飲料とすることができる。本実施形態の飲料を炭酸飲料にする場合、炭酸ガスボリュームは、特に限定されるものではなく炭酸飲料の一般的な範囲内とすることができるが、例えば、1.5vol~5.0volとすることができる。
【0039】
なお、炭酸ガスボリューム[vol]とは、1気圧、20℃における、炭酸飲料の体積に対する、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積の比を指す。炭酸ガスボリュームは、例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。より具体的には、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値から算出することで得ることができる。
【0040】
本実施形態の飲料は、容器に充填された容器詰飲料とすることができる。飲料を充填する容器は、特に限定されるものではないが、例えば、光透過性を有する容器とすることができる。光透過性を有する容器に充填された飲料は、容器充填後も光に暴露されるため、容器内においても不飽和脂肪酸から臭気成分を生成する。
【0041】
なお、本明細書において光透過性を有するとは、容器を介して、直接内容物が看視できることを意味し、少なくとも可視光領域である380nm以上750nm以下の光を透過することが好ましい。この波長領域における容器の光透過率は、例えば、50%以上とすることができ、70%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがより好ましい。
【0042】
また、光透過性を有する容器は、その全体が透明である必要はなく、一部が透明である容器であってもよい。例えば、内容表示用のラベルや印刷部分が不透明あるいは半透明であり、それ以外の部分が透明な容器であってもよく、光透過性を有する部分と光透過性を有していない部分とが不規則又は規則的に並んだ容器であってもよい。
【0043】
飲料を充填する容器は、限定されるものではなく、例えば、ガラス製のビン、PETボトルなどのプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などを用いることができる。光透過性を有する容器としては、ガラス製のビンや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン・1-アルケン共重合体、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル等のプラスチック容器を例示することができる。
【0044】
本実施形態の飲料の外観は、特に限定されるものではないが、無色透明などの透明とすることができる。本明細書において、透明とは720nmの吸光度が0.01以下である飲料を指す。また、無色透明とは、透けて見え、特定の色もなく、水と同様の外観である状態を指す。720nmの吸光度は、例えば、分光光度計を用い、光路長1cmとして測定することができる。透明の飲料は、飲料を着色する成分の使用が制限される。このため、一般的に、透明の飲料は、非透明の飲料と比較して、含有できる成分やその含有量が制限される傾向にある。
【0045】
次に、本実施形態の飲料の製造方法の一例について説明する。
【0046】
本実施形態の飲料は、飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させる(以下、この処理を「含有処理」ともいう)ことで製造することができる。
【0047】
含有処理では、飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを飲用水に含有することに加え、サビネンやγ-テルピネン以外の各原料(飲用水を除く)を飲用水に含有してもよい。飲用水にする各原料(不飽和脂肪酸、サビネン、γ-テルピネン、及び他の成分)の添加順序は、特に限定されるものではなく、各原料を飲料水に対して順次添加してもよく、各原料を飲料水に対して同時に添加してもよい。
【0048】
上述した含有処理を含む製造方法により、本実施形態の飲料を製造することができる。
【0049】
なお、本実施形態の飲料を炭酸飲料とする場合には、上述した含有処理に加えて、含有処理後の飲料(各原料を添加した飲料水)に対して炭素ガスを含ませる溶存処理を行うことで、本実施形態の炭酸飲料を製造することができる。
【0050】
溶存処理において炭酸ガスを飲料に含ませる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、炭酸ガスを予め溶存させておいた飲料水を含有処理後の飲料に混合する方法(ポストミックス法)や、含有処理後の飲料に炭素ガスを噴き込んで溶存させる方法(プレミックス法)を用いることができる。
【0051】
ここで、ポストミックス法では、含有処理後の飲料に対して、炭酸ガスを予め溶存させておいた飲料水(炭酸水)を混合するため、溶存処理前後においてサビネンやγ-テルピネンの含有量が変化する。このため、溶存処理においてポストミックス法を用いる場合には、混合される炭酸水の量を考慮して、含有処理におけるサビネンやγ-テルピネンの含有量を調整する。具体的には、含有処理では、溶存処理後の飲料におけるサビネンやγ-テルピネンの含有量が上述した範囲(サビネン:2.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)となる量のサビネンやγ-テルピネンを飲料水に含有させる。
【0052】
また、本実施形態の飲料を容器詰飲料とする場合には、上述した含有処理に加えて、含有処理後の飲料を容器に充填する充填処理を行うことで、本実施形態の容器詰飲料を製造することができる。飲料の容器への充填は、常法に従って行うことができ、特に限定されるものではない。また、本実施形態の飲料を容器詰炭酸飲料とする場合には、上述した含有処理後に、溶存処理を行い、溶存処理後の炭酸飲料を容器に充填する充填処理を行うことで、本実施形態の容器詰炭酸飲料を製造することができる。
【0053】
以上説明した本実施形態の飲料では、所定の含有量(サビネン:2.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)で含まれるサビネンやγ-テルピネンが、異臭成分に由来する光劣化臭を感じさせにくくさせる。このため、本実施形態の飲料は、サビネンやγ-テルピネンを含まない飲料と比較して、飲用時や飲用後に光劣化臭を感じさせにくい。
【0054】
また、本実施形態の飲料によれば、抗酸化剤の有無にかかわらず、光劣化臭を感じにくくすることができるため、抗酸化剤の添加によって生じ得る飲料の濁りやコスト上昇を抑制することもできる。
【0055】
また、本実施形態の飲料に所定の含有量(サビネン:2.5~500ppb,γ-テルピネン:5~5000ppb)で含まれるサビネンやγ-テルピネンは、光劣化臭を感じにくくさせることから、本発明の一態様として、飲料における含有量が2.5~500ppbとなる量のサビネン及び/又は飲料における含有量が5~5000ppbとなる量のγ-テルピネンを含有させることを含む、不飽和脂肪酸を含む飲料における光劣化臭のマスキング方法を提供することができる。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0057】
[評価1-1(無糖炭酸飲料における(E)-2-デセナールの影響)]
飲料水に対してシトラールを添加するとともに、ポストミックス法によりに炭酸ガスを溶存させて、レモン風味の無糖炭酸飲料を得た。このレモン風味の無糖炭酸飲料は、シトラールの含有量が10ppmであり、炭酸ガスボリュームが4.0volであった。得られたレモン風味の無糖炭酸飲料を参考例1の飲料(未劣化品(無色透明))とした。
【0058】
参考例1のシトラールを添加する工程において、さらに(E)-2-デセナールを添加して、参考例1のレモン風味の無糖炭酸飲料に(E)-2-デセナール(異臭成分)を含有させた。これ以外は、参考例1と同様の方法で、下記表1aに示す参考例2~5の無糖炭酸飲料(劣化品(無色透明))を得た。
【0059】
参考例1~5の飲料を5人のパネリストが試飲し、後述する評価基準に基づき、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」について評価した。パネリストには、官能評価士や飲料の開発者などの適切な者を選定し、極端に好き嫌いのある者やアレルギーのある者などは除外した。
【0060】
<「飲料全体の風味」の評価基準>
「飲料全体の風味」は、1点から5点の5段階で評価し、5点から1点に近づくにつれて、飲料全体の風味が悪くなるものとした。また、パネリスト間で評価基準を統一するため、未劣化品(本評価では、参考例1)と同等の風味であるときに5点にすることとし、風味が悪くなることの意味が、未劣化品(本評価では、参考例1)の風味(つまり、レモン風味)とは異なる風味が感じられることだという共通の認識を持たせた上で評価を行った。
1点:飲料全体の風味が悪い。
2点:飲料全体の風味がやや悪い。
3点:どちらとも言えない。
4点:飲料全体の風味がやや良い。
5点:飲料全体の風味が良い(未劣化品と同等)。
【0061】
<「光劣化臭」の評価基準>
「光劣化臭」は、1点から5点の5段階で評価し、5点から1点に近づくにつれて、光劣化臭がより強く感じられるものとした。また、パネリスト間で評価基準を統一するため、未劣化品(本評価では、参考例1)と同等の劣化臭であるときに5点にすることとし、光劣化臭の意味が、金属臭、油の酸化臭、樹脂臭、またはカメムシを想起させるような不快な臭いであるという共通の認識を持たせた上で評価を行った。
1点:光劣化臭が強い。
2点:光劣化臭がやや強い。
3点:どちらとも言えない。
4点:光劣化臭がやや弱い。
5点:光劣化臭が弱い(未劣化品と同等)。
【0062】
参考例1~5の炭酸飲料の評価結果を表1a及び
図1aに示す。
【表1a】
【0063】
表1a及び
図1aに示すように、無糖炭酸飲料に(E)-2-デセナールが含まれると、その含有量が高くなるにつれて光劣化臭がより強く感じられた。また、飲料全体の風味についても、(E)-2-デセナールの含有量が高くなるにつれてより悪くなった。
【0064】
[評価1-2(有糖飲料における(E)-2-デセナールの影響)]
飲料水に対してシトラール、酸(クエン酸)及び糖(果糖ブドウ糖液糖)を添加するとともに、ポストミックス法によりに炭酸ガスを溶存させて、レモン風味の有糖炭酸飲料を得た。このレモン風味の有糖炭酸飲料は、シトラールの含有量が10ppmであり、炭酸ガスボリュームが4.0volであり、糖度(Brix値)が5であり、酸度が0.1であった。得られたレモン風味の有糖炭酸飲料を参考例6の飲料(未劣化品(無色透明))とした。
【0065】
参考例6のシトラール、酸及び糖を添加する工程において、さらに(E)-2-デセナールを添加して、参考例6のレモン風味の有糖炭酸飲料に(E)-2-デセナールを含有させた。これ以外は、参考例6と同様の方法で、下記表1bに示す参考例7~10の有糖炭酸飲料(劣化品(無色透明))を得た。
【0066】
得られた参考例6~10の飲料について、評価1-1と同様の評価基準で、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」を評価した。なお、本評価では、「飲料全体の風味」及び「光劣化臭」の評価基準における未劣化品(つまり、5点)は、参考例6の炭酸飲料とした。
【0067】
参考例6~10の飲料の評価結果を表1b及び
図1bに示す。
【表1b】
【0068】
表1b及び
図1bに示すように、有糖炭酸飲料に(E)-2-デセナールを含有させても、(E)-2-デセナールの含有量が高くなるにつれて、光劣化臭がより強く感じられた。また、飲料全体の風味についても、(E)-2-デセナールの含有量が高くなるにつれてより悪くなった。
【0069】
[評価2-1(無糖炭酸飲料の光劣化臭に対するサビネンの影響)]
評価1-1の参考例4における各原料を添加する工程において、さらにサビネンを添加して、参考例4の無糖炭酸飲料にサビネンを含有させた。これ以外は参考例4と同様の方法で、下記表2aに示す実施例1~4の無糖炭酸飲料(無色透明)を得た。
【0070】
また、実施例1~4の飲料の比較対象として、評価1-1の参考例1と参考例4を用意し、これらをそれぞれ未劣化品(参考例1)と劣化品(参考例4)とした。
【0071】
実施例1~4の飲料を5人のパネリストが試飲し、後述する評価基準に基づき、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」について評価した。パネリストには、官能評価士や飲料の開発者などの適切な者を選定し、極端に好き嫌いのある者やアレルギーのある者などは除外した。
【0072】
<「飲料全体の風味」の評価基準>
「飲料全体の風味」は、1点から5点の5段階で評価し、5点から1点に近づくにつれて、飲料全体の風味が悪くなるものとした。また、パネリスト間で評価基準を統一するため、未劣化品(本評価では、参考例1)と同等の風味であるときに5点にすることとし、劣化品(本評価では、参考例4)と同等の風味であるときに1点にすることとした。なお、評価1-1と同様に、風味が悪くなることの意味が、未劣化品(本評価では参考例1)の風味(つまり、レモン風味)とは異なる風味が感じられることだという共通の認識を持たせた上で評価を行った。
1点:飲料全体の風味が悪い(劣化品と同等)。
2点:飲料全体の風味がやや悪い。
3点:どちらとも言えない。
4点:飲料全体の風味がやや良い。
5点:飲料全体の風味が良い(未劣化品と同等)。
【0073】
<「光劣化臭」の評価基準>
「光劣化臭」は、1点から5点の5段階で評価し、5点から1点に近づくにつれて、光劣化臭がより強く感じられるものとした。また、パネリスト間で評価基準を統一するため、未劣化品(本評価では、参考例1)と同等の劣化臭であるときに5点にすることとし、劣化品(本評価では、参考例4)と同等の劣化臭であるときに1点にすることとした。なお、評価1-1と同様に、光劣化臭の意味が、金属臭、油の酸化臭、樹脂臭、またはカメムシを想起させるような不快な臭いであるという共通の認識を持たせた上で評価を行った。
1点:光劣化臭が強い(劣化品と同等)。
2点:光劣化臭がやや強い。
3点:どちらとも言えない。
4点:光劣化臭がやや弱い。
5点:光劣化臭が弱い(未劣化品と同等)。
【0074】
実施例1~4の飲料の評価結果を表2a及び
図2aに示す。
【表2a】
【0075】
表2a及び
図2aに示すように、実施例1~4の飲料は、サビネンを含有していない劣化品(参考例4)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。
【0076】
[評価2-2(無糖炭酸飲料の光劣化臭に対するγ-テルピネンの影響)]
評価1-1の参考例4における各原料を添加する工程において、さらにγ-テルピネンを添加して、参考例4の無糖炭酸飲料にγ-テルピネンを含有させた。これ以外は参考例4と同様の方法で、下記表2bに示す実施例5~8の無糖炭酸飲料(無色透明)を得た。
【0077】
また、実施例5~8の飲料の比較対象として、評価1-1の参考例1と参考例4を用意し、これらをそれぞれ未劣化品(参考例1)と劣化品(参考例4)とした。
【0078】
実施例5~8の飲料を5人のパネリストが試飲し、評価2-1と同様の評価基準で、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」を評価した。
【0079】
実施例5~8の飲料の評価結果を表2b及び
図2bに示す。
【表2b】
【0080】
表2b及び
図2bに示すように、実施例5~8の飲料は、γ-テルピネンを含有していない劣化品(参考例4)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。
【0081】
[評価3-1(有糖炭酸飲料の光劣化臭に対するサビネンの影響)]
評価1-2の参考例9における各原料を添加する工程において、さらにサビネンを添加して、参考例9の有糖炭酸飲料にサビネンを含有させた。これ以外は参考例9と同様の方法で、下記表3aに示す実施例9~12の有糖炭酸飲料(無色透明)を得た。
【0082】
また、実施例9~12の飲料の比較対象として、評価1-2の参考例6と参考例9を用意し、これらをそれぞれ未劣化品(参考例6)と劣化品(参考例9)とした。
【0083】
実施例9~12の炭酸飲料を5人のパネリストが試飲し、評価2-1と同様の基準で、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」について評価した。なお、本評価では、「飲料全体の風味」及び「光劣化臭」の評価基準における未劣化品(つまり、5点)は参考例6とし、劣化品(つまり、1点)は参考例9とした。
【0084】
実施例9~12の炭酸飲料の評価結果を表3a及び
図3aに示す。
【表3a】
【0085】
表3a及び
図3aに示すように、実施例9~12の飲料は、サビネンを含有していない劣化品(参考例9)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。
【0086】
[評価3-2(有糖炭酸飲料の光劣化臭に対するγ-テルピネンの影響)]
評価1-2の参考例9における各原料を添加する工程において、さらにγ-テルピネンを添加して、参考例9の有糖炭酸飲料にγ-テルピネンを含有させた。これ以外は参考例9と同様の方法で、下記表3bに示す実施例13~16の有糖炭酸飲料(無色透明)を得た。
【0087】
また、実施例13~16の飲料の比較対象として、評価1-2の参考例6と参考例9を用意し、これらをそれぞれ未劣化品(参考例6)と劣化品(参考例9)とした。
【0088】
実施例13~16の炭酸飲料を5人のパネリストが試飲し、評価3-1と同様の評価基準で、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」について評価した。
【0089】
実施例13~16の炭酸飲料の評価結果を表3b及び
図3bに示す。
【表3b】
【0090】
表3b及び
図3bに示すように、実施例13~16の飲料は、γ-テルピネンを含有していない劣化品(参考例9)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。
【0091】
[評価4-1(サビネンとγ-テルピネンの併用による影響(無糖炭酸飲料))]
評価1-1の参考例4における各原料を添加する工程において、さらにサビネン及び/又はγ-テルピネンを添加して、参考例4の無糖炭酸飲料にサビネン及び/又はγ-テルピネンを含有させた。これ以外は参考例4と同様の方法で、下記表4aに示す実施例17~21の無糖炭酸飲料(無色透明)を得た。
【0092】
また、実施例17~21の飲料の比較対象として、評価1-1の参考例1と参考例4を用意し、これらをそれぞれ未劣化品(参考例1)と劣化品(参考例4)とした。
【0093】
実施例17~21の飲料を5人のパネリストが試飲し、評価2-1と同様の基準で、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」を評価した。
【0094】
実施例17~21の飲料の評価結果を表4a及び
図4aに示す。
【表4a】
【0095】
表4a及び
図4aに示すように、サビネンとγ-テルピネンの両方を含有する実施例19~21は、サビネン及びγ-テルピネンを含有していない劣化品(参考例4)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。また、サビネンとγ-テルピネンのいずれか一方しか含有しない実施例17,18についても、サビネン及びγ-テルピネンを含有していない劣化品(参考例4)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。
【0096】
[評価4-2(サビネンとγ-テルピネンの併用による影響(有糖炭酸飲料))]
評価1-2の参考例9における各原料を添加する工程において、さらにサビネン及び/又はγ-テルピネンを添加して、参考例9の有糖炭酸飲料にサビネン及び/又はγ-テルピネンを含有させた。これ以外は参考例9と同様の方法で、下記表4bに示す実施例22~27の有糖炭酸飲料(無色透明)を得た。
【0097】
また、実施例22~27の飲料の比較対象として、評価1-2の参考例6と参考例9を用意し、これらをそれぞれ未劣化品(参考例6)と劣化品(参考例9)とした。
【0098】
実施例22~27の飲料を5人のパネリストが試飲し、評価3-1と同様の基準で、「飲料全体の風味」と「光劣化臭」について評価した。
【0099】
実施例22~27の炭酸飲料の評価結果を表4b及び
図4bに示す。
【表4b】
【0100】
表4b及び
図4bに示すように、サビネンとγ-テルピネンの両方を含有する実施例24~26は、サビネン及びγ-テルピネンを含有していない劣化品(参考例9)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。また、サビネンとγ-テルピネンのいずれか一方しか含有しない実施例22,23,27についても、サビネン及びγ-テルピネンを含有していない劣化品(参考例9)と比較して、光劣化臭がより感じにくくなり、全体の風味も改善した。