(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077355
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】土留め支保工
(51)【国際特許分類】
E02D 17/08 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
E02D17/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190645
(22)【出願日】2021-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】591267925
【氏名又は名称】日本スピードショア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【弁理士】
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 真佐志
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044AA12
2D044AA20
(57)【要約】
【課題】 矢板間の隙間から、砂や小石等が飛来してくることを可及的に抑制可能な土留め支保工を提供すること、及び矢板の支保工への組み合わせ作業時の転倒を、可及的に抑制可能な土留め支保工を提供すること。
【解決手段】本発明に係る土留め支保工は、上下1対の横部材と、上下の横部材同士を連結する複数の縦部材とからなる四辺形枠で構成されると共に、横部材の外側に、矢板を上下方向に案内する矢板案内枠を設けた腹起しユニットと、対向する腹起しユニットの各横部材間に架設される切梁とにより成る土留め支保工において、矢板案内枠を、腹起しの長手方向と平行な外板と、矢板端辺の傾斜角と略平行な隔壁板とにより構成した。また、横部材に一方端が係止され、他方端が接地する転倒防止治具を備えて構成した
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下1対の横部材と、上下の横部材同士を連結する複数の縦部材とからなる四辺形枠で構成されると共に、横部材の外側に、矢板を上下方向に案内する矢板案内枠を設けた腹起しユニットと、対向する腹起しユニットの各横部材間に架設される切梁とにより成る土留め支保工において、
矢板案内枠を、腹起しの長手方向と平行な外板と、矢板端辺の傾斜角と略平行な隔壁板とにより構成した土留め支保工。
【請求項2】
横部材の長手方向両端を隔壁板と平行、且つ、一直線状に設けた請求項1に記載の土留め支保工。
【請求項3】
横部材に一方端が係止され、他方端が接地する転倒防止治具を備えた請求項1又は請求項2に記載の土留め支保工。
【請求項4】
転倒防止治具を伸縮自在にした請求項3に記載の土留め支保工。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削溝の土留支保工に関する。
【背景技術】
【0002】
溝、特に掘削深さが1~3m程度の小規模な溝を掘削する方法としては、仮掘削した溝(予掘溝)に土留め支保工を沈めたうえで土留め支保工を宙吊りしたり、土留め支保工の上部に係止部を設け、この係止部を溝口にかけたりして、土留め支保工が落下するのを防ぐと共に、この土留め支保工と土壁との間に矢板を滑り込ませて予掘溝底まで落とし込み、更に溝底を掘り下げるとともに矢板を押し込むという手順をとる方法がある。
【0003】
この工法では矢板の下側は機械で掘削できないので、その部分は手掘りで徐々に堀り下げなければならず、手間が掛かる上、矢板が不意に落下して作業を妨げたり、作業者が負傷するおそれがある。
【0004】
この手堀り作業を無くすため、土留め支保工に矢板を組合せてから予掘溝に沈め、土留め支保工に矢板を保持させた状態で、溝底を堀り下げ、この後、矢板を堀り下げられた溝底まで落とし込む方法がある。
【0005】
この方法に用いられる土留支保工500は、例えば
図6や
図7に示すように、それぞれ外側に矢板100を昇降案内する矢板案内枠300を備えた左右1対の腹起こしユニット200と、切梁400とを備える。なお、各図におけるUは上方向、Dは下方向、Rは右方向、Lは左方向を指すものである。
【0006】
図7に示すように各腹起こしユニット200は上下1対の横部材202と、上下の横部材202同士を連結する複数の縦部材201とからなる四辺形枠で構成される。
【0007】
図6に示すように矢板案内枠300は、横部材202の左右両幅を全面的に覆う外板301と、この外板301の左右両端部を横部材202の左右両端部に連結する連結板302と、前記外板301の内面に上下垂直方向に適当な間隔を置いて設けられた隔壁板303とを備えている。
【0008】
外板301と横部材202との間に挿入される矢板100には所定の高さに図示されないねじ孔が形成され、予掘溝を掘削溝の深さまで掘り下げる間、例えば
図6に示すように、このねじ孔に蝶ボルト等で構成される矢板ストッパー101を挿通し、この矢板ストッパー101を外板301で下側から受け止めることにより、矢板100が落下することを防止する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平06-067541号公報
【特許文献2】特開2003-253674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1、2等に開示される発明は、
図6に示される土留め支保工500のように、矢板を組合せてから予掘溝に沈め、外板301に矢板を保持させた状態で、溝底を堀り下げることが可能となり、作業の安全性に資するものである。
【0011】
但し、上述の通り
図6Aに示されるが如く、隔壁板303が外板301の内面に上下垂直方向に設けられていることから、
図6Bに示されるように、装備された矢板101同士の隣接する端部間に隙間102が生じてしまう。なお、図中隙間102は判別しやすいように塗つぶして作図してある。
【0012】
かかる隙間102が存在すると、当該隙間102から砂や小石などが掘削溝側に飛来してくることがある。殊に隔壁板303が外板301に対して垂直方向に設けられていると、砂や小石等が飛来してくる際に障害物がなく、減速されることなく飛来してくることになり、作業者にとって非常に危険である。
【0013】
そこで本発明は、矢板間の隙間から、砂や小石等が飛来してくることを可及的に抑制可能な土留め支保工を提供することを目的とする。
【0014】
また、背景技術の項で述べた土留め支保工に矢板を組合せてから予掘溝に沈め、土留め支保工に矢板を保持させた状態で、溝底を堀り下げるという手法を採用すると、掘削溝傍の地面上で矢板案内枠内に矢板を組み合わせる作業を行うことになる。かかる作業は矢板が長尺の場合、矢板の重量で土留め支保工ごと転倒してしまう恐れがある。
【0015】
そこで本発明は、前記地面上における矢板の支保工への組み合わせ作業時の転倒を、可及的に抑制可能な土留め支保工を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0017】
(1) 請求項1に記載の土留め支保工は、上下1対の横部材と、上下の横部材同士を連結する複数の縦部材とからなる四辺形枠で構成されると共に、横部材の外側に、矢板を上下方向に案内する矢板案内枠を設けた腹起しユニットと、対向する腹起しユニットの各横部材間に架設される切梁とにより成る土留め支保工において、矢板案内枠を、腹起しの長手方向と平行な外板と、矢板端辺の傾斜角と略平行な隔壁板とにより構成した。
【0018】
(2) 請求項2に記載の土留め支保工は、請求項1記載の発明において、横部材の長手方向両端を隔壁板と平行、且つ、一直線状に構成した。
【0019】
(3) 請求項3に記載の土留め支保工は、請求項1記載の発明において、横部材に一方端が係止され、他方端が接地する転倒防止治具を備えて構成した。
【0020】
(4) 請求項4に記載の土留め支保工は、請求項3記載の発明において、転倒防止治具を伸縮自在に構成した。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成される本発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。
【0022】
図5Aは腹起しユニット20に矢板100を装備した状態の平面図である。矢板案内枠30を構成する隔壁板32は、矢板100の端部103の傾斜角と略平行に傾斜した態様で設けられている。それゆえ隣接する隔壁板32同士の距離を、矢板100の幅程度に設定すれば、
図5Bに示すように隣接する矢板100の間に隙間は生じない。
【0023】
つまりは従来例のように、矢板間の隙間から砂や小石等が飛来してくることを防ぐことが可能となるのである。
【0024】
また、隣接する隔壁板32同士の距離よりも矢板100の幅が若干小さく、隣接する矢板100の間にわずかな隙間が生じるような場合でも、隔壁板32が傾斜していることから、土圧により矢板から矢板に対して略垂直に飛来する砂や小石が、隔壁板32に当接することになり、飛来速度が軽減されることになる。つまりは、掘削溝内で作業する作業者に対する危険が軽減されることになるのである。
【0025】
請求項2に記載の土留め支保工は
図2に示すように横部材22の長手方向両端を隔壁板32と平行、且つ、一直線状に構成してある。それゆえ
図9に示すように土留め支保工1を連続して使用する際にも、土留め支保工1同士の端部間に隙間が生じず、砂や小石の飛来を抑制することが可能となるのである。
【0026】
請求項3に記載の土留め支保工は、
図4に示すように横部22材に一方端が係止され、他方端が接地する転倒防止治具40を備えるものである。この転倒防止具40が支柱となり、矢板を矢板案内枠30に装入しても土留め支保工1が転倒することを抑止することが可能となるのである。
【0027】
請求項4に記載の発明では、転倒防止具40を伸縮自在に構成してある。かかる構成とすることで、掘削溝傍の地面が平坦でないような場合でも、転倒防止具40を伸縮させることで脚板41を地面に設置させることが可能となり、矢板案内枠30内に矢板100を組み合わせる作業の容易性が高まるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】請求項3又は3に記載の土留め支保工の斜視図
【
図5】A 矢板を装備した状態の腹起しユニット平面図 B 同、平面図
【
図6】A 矢板を装備した状態の従来例に係る腹起しユニット平面図 B 同、平面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、好ましい発明の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。 なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。
【0030】
図1に示すように請求項1に記載の土留め支保工1は、上下1対の横部材22と、上下の横部材22同士を連結する複数の縦部材21とから成る四辺形枠で構成されると共に、横部材22の外側に、矢板を上下方向に案内する矢板案内枠30を設けた腹起しユニット20と、対向する腹起しユニット20の各横部材22間に架設される切梁50とにより構成される。
【0031】
土留め支保工1は、
図1に示すように使用時に箱形に組み立てられ、不使用時には腹起しユニット20毎に解体される。図中、横部材22同士の両端間、もしくはその付近に切梁50を架設した場合を示すが、腹起しユニット20の全長に応じて両端部を外した位置に切梁50を架設する場合の他、両端部を含め、中間部にも切梁50を架設する場合もある。なお、上記縦部材21や横部材22は角型鋼管等を使用している。
【0032】
図2に示されるように、矢板案内枠30は横部材22の上下方向両幅を全面的に覆う外板31と、この外板31の上下両端部を横部材22の上下両端部に連結すると共に、前記外板31の内面に左右方向に適当な間隔を置いて設けられた隔壁板32とを備えている。尚、隔壁板32同士の距離は、矢板の幅と概ね同じ長さに設けてある。
【0033】
なお、上記外板31や隔壁板32は切板等を使用している。
【0034】
切梁50は、水圧シリンダを内蔵した伸縮式のものを使用している。
【0035】
請求項3又は請求項4記載の発明における転倒防止具40は、
図8に示されるように筒状体42と、該筒状体42内を摺動する円柱体43と、円柱体43の下端に取り付けられた脚板41と、筒状体42の上端正面側及び背面側に一対設けられたプレート44と、プレート44に取り付けられたコッター45と、プレート44の上端に連結される係止部材46とにより構成される。なお、転倒防止具40を伸縮自在なものとしない場合には、筒状体42や円柱体43を用いずに、単なる棒状部材を使用してもよい。
【0036】
図8における正面側及び背面側に一対設けられるプレート44・・には(背面側プレート44は図に表れていない)、ピン44aが架渡されている。このピン44aはコッター45の孔部45aに緩挿されており、かかる構造故にコッター45は上下方向に移動自在となる。
【0037】
係止部材46はL型に屈曲した切り板である。
図4に示すように、係止部材46を矢板案内枠30に係止し、コッター45を下方に落下させることで、転倒防止具40を土留め支保工1に固定するものである。
【0038】
請求項4記載の発明における転倒防止具40では、筒状体42内を円柱体43が摺動することで、転倒防止具40を伸縮自在なものに構成している。この際、図示されていないが筒状体42及び円柱体43それぞれに貫通孔を設け、該貫通孔にピンを差し込むことで転倒防止具の一定長さを固定できるようにしても良い。あるいは筒状体42の内周面にねじ溝を設け、円柱体43の外周面にねじをを設けることで両者を螺合させることで、転倒防止具の一定長さを固定できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
1・・土留め支保工
20・・腹起しユニット
21・・縦部材
22・・横部材
30・・矢板案内枠
31・・外板
32・・隔壁板
40・・転倒防止具
41・・脚板
42・・筒状体
43・・円柱体
44・・プレート
45・・コッター
46・・係止部材
50・・切梁
【手続補正書】
【提出日】2022-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下1対の横部材と、上下の横部材同士を連結する複数の縦部材とからなる四辺形枠で構成されると共に、横部材の切梁を架設する側と反対側に、継手を有しない鋼矢板を上下方向に案内する矢板案内枠を設けた腹起しユニットと、対向する腹起しユニットの各横部材間に架設される切梁とにより成る土留め支保工において、
矢板案内枠を、腹起しの長手方向と平行な外板と、継手を有しない鋼矢板の端辺の傾斜角と略平行であり、且つ、前記腹起しの長手方向に対して直角に設けられるものではない隔壁板と、
により構成した土留め支保工。
【請求項2】
横部材の長手方向両端を隔壁板と平行、且つ、一直線状に設けた請求項1に記載の土留め支保工。