(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007736
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ブルーライト障害抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20230112BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230112BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230112BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230112BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230112BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20230112BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20230112BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230112BHJP
A23F 3/16 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q17/00
A61P17/00
A61P27/02
A61K31/715
A61P17/16
A23L33/10
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110769
(22)【出願日】2021-07-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.碁石茶
(71)【出願人】
【識別番号】591061068
【氏名又は名称】東洋精糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 雄志
(72)【発明者】
【氏名】タンジャ マハマドゥ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B027
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD42
4B018ME14
4B027FB13
4B027FC06
4B027FK04
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC662
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD662
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC32
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE12
4C083EE29
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086EA11
4C086EA20
4C086GA02
4C086MA01
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA89
4C086ZA92
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れたブルーライト障害抑制作用を示すブルーライト障害抑制剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のブルーライト障害抑制剤は、α-グルコシルルチン、α-グルコシルヘスペリジン及びα-グルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種の成分(A)を含み、皮膚若しくは眼を構成する細胞又は毛髪に対する、ブルーライトによる障害を抑制する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-グルコシルルチン、α-グルコシルヘスペリジン及びα-グルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種の成分(A)を含む、皮膚若しくは眼を構成する細胞又は毛髪に対する、ブルーライトによる障害を抑制する、ブルーライト障害抑制剤。
【請求項2】
前記障害が、皮膚又は眼を構成する細胞の細胞死である、請求項1に記載のブルーライト障害抑制剤。
【請求項3】
前記障害が、毛髪のキューティクルに対する障害である、請求項1に記載のブルーライト障害抑制剤。
【請求項4】
前記細胞が、表皮角化細胞又は角膜上皮細胞である、請求項1又は2に記載のブルーライト障害抑制剤。
【請求項5】
前記成分(A)がα-モノグルコシルルチン、α-モノグルコシルヘスペリジン及びα-モノグルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のブルーライト障害抑制剤。
【請求項6】
前記成分(A)の含有量が65質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のブルーライト障害抑制剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のブルーライト障害抑制剤を含む、皮膚、眼、又は毛髪に用いるブルーライト障害抑制用外用剤又はブルーライト障害抑制用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーライト障害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT技術の進歩により、パソコンやスマートフォン等のデジタルデバイスが急速に普及している。デジタルデバイスのディスプレイには、LEDが使用されることが多い。また、消費電力が少なく、寿命が長いことから、LED照明の普及も進んでいる。そのため、現代生活において、人体はLEDに長時間暴露されている。
LEDの光には波長が400~500nmの青色光であるブルーライトが多く含まれている。ブルーライトは、可視光線の中で波長が短く、強いエネルギーを持っているため、人体への影響が懸念されている。
ブルーライトによる人体への影響としては、眼の疲れや痛み、黄斑変性等の眼への影響、皮膚の老化、色素沈着、screen dermatitis等の皮膚への影響、さらに、サーカディアンリズムの乱れに起因する睡眠障害、肥満、癌等の全身への影響等が知られている。
ブルーライトによる影響から人体を保護する方法としては、市販の青色光の透過率が低い眼鏡の他に、ビルベリー抽出物を有効成分とする、ブルーライトによる細胞生育阻害抑制(特許文献1)、碁石茶抽出物を含有することを特徴とする、青色光による皮膚細胞増殖阻害抑制剤(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-44773号公報
【特許文献2】特開2017-178898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れたブルーライト障害抑制作用を示すブルーライト障害抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の〔1〕~〔7〕に関する。
〔1〕 α-グルコシルルチン、α-グルコシルヘスペリジン及びα-グルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種の成分(A)を含む、皮膚若しくは眼を構成する細胞又は毛髪に対する、ブルーライトによる障害を抑制する、ブルーライト障害抑制剤。
〔2〕 前記障害が、皮膚又は眼を構成する細胞の細胞死である、〔1〕に記載のブルーライト障害抑制剤。
〔3〕 前記障害が、毛髪のキューティクルに対する障害である、〔1〕に記載のブルーライト障害抑制剤。
〔4〕 前記細胞が、表皮角化細胞又は角膜上皮細胞である、〔1〕又は〔2〕に記載のブルーライト障害抑制剤。
〔5〕 前記成分(A)がα-モノグルコシルルチン、α-モノグルコシルヘスペリジン及びα-モノグルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のブルーライト障害抑制剤。
〔6〕 前記成分(A)の含有量が65質量%以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のブルーライト障害抑制剤。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のブルーライト障害抑制剤を含む、皮膚、眼、又は毛髪に用いるブルーライト障害抑制用外用剤又はブルーライト障害抑制用飲食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れたブルーライト障害抑制作用を示すブルーライト障害抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ブルーライト照射による正常ヒト表皮ケラチノサイトの生存率の変化及びそれに対するα-グルコシルルチン(αGルチン)の影響を示すグラフである。
【
図2】
図2は、ブルーライト照射による正常ヒト表皮ケラチノサイトの生存率の変化及びそれに対するα-グルコシルヘスペリジン(αGヘスペリジン)の影響を示すグラフである。
【
図3】
図3は、ブルーライト照射による正常ヒト表皮ケラチノサイトの生存率の変化及びそれに対するα-グルコシルナリンジン(αGナリンジン)の影響を示すグラフである。
【
図4】
図4は、ブルーライト照射による正常ヒト表皮ケラチノサイトの生存率の変化に対する影響を、α-グルコシルルチン(αGルチン)、α-グルコシルヘスペリジン(αGヘスペリジン)及びα-グルコシルナリンジン(αGナリンジン)で比較したグラフである。
【
図5】
図5は、α-グルコシルルチン(αGルチン)の200nm~500nmにおける吸収スペクトルである。
【
図6】
図6は、α-グルコシルヘスペリジン(αGヘスペリジン)の200nm~500nmにおける吸収スペクトルである。
【
図7】
図7は、α-グルコシルナリンジン(αGナリンジン)の200nm~500nmにおける吸収スペクトルである。
【
図8】
図8は、青色LEDの分光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明について具体的に説明する。
<成分(A)>
本発明のブルーライト障害抑制剤は、α-グルコシルルチン、α-グルコシルヘスペリジン及びα-グルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種の成分(A)を含む。成分(A)は、α-グルコシルルチン、α-グルコシルヘスペリジン及びα-グルコシルナリンジンのいずれか1種又は任意で選択される2種を含むものであってもよいし、α-グルコシルルチン、α-グルコシルヘスペリジン及びα-グルコシルナリンジンの3種全てを含むものであってもよい。その中でも、比較的低濃度でもブルーライト障害抑制効果が高いことから、成分(A)として、α-グルコシルルチンを含むものが好ましい。
【0009】
成分(A)は、ブルーライト障害抑制効果の観点から、α-モノグルコシルルチン、α-モノグルコシルヘスペリジン及びα-モノグルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0010】
ブルーライト障害抑制剤が含む、成分(A)の含有量は特に限定されない。例えば、本発明のブルーライト障害抑制剤が含む、成分(A)の含有量の下限としては例えば、30質量%、40質量%、45質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%が挙げられる。また、本発明のブルーライト障害抑制剤が含む、成分(A)の含有量の上限としては、例えば、100質量%、99質量%、98質量%、95質量%、90質量%、85質量%が挙げられる。本発明のブルーライト障害抑制剤が含む、成分(A)の含有量の範囲としては、前記下限と上限とを任意に組み合わせた範囲を任意に設定することができ、例えば30~100質量%、60~100質量%、60~90質量%等の範囲を設定することができる。ブルーライト障害抑制効果の観点から、本発明のブルーライト障害抑制剤が含む、前記成分(A)の含有量は65質量%以上であることが好ましい。
【0011】
〈α-グルコシルルチン〉
α-グルコシルルチン(αグルコシルルチンともいう)は、ルチンが有するルチノース残基中のグルコース残基に、α1→4結合により1分子以上のグルコースが付加された化合物の総称である。本発明におけるα-グルコシルルチンは、そのような構造を有する化合物のうちの1種類単独からなるものであっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0012】
α-グルコシルルチンは、下記式(1)で表すことができる。式(1)中、nは、0又は1以上の整数、例えば1~19の整数である。
【0013】
【0014】
α-グルコシルルチンは、「酵素処理ルチン」(「糖転移ルチン」と呼ばれることもある。)として知られている製品に主成分として含まれている化合物である。α-グルコシルルチンのうち、グルコースが1つだけ結合したものを「α-モノグルコシルルチン」と称し、グルコースが2つ以上結合したものを「α-ポリグルコシルルチン」と称する。つまり、式(1)において、α-モノグルコシルルチンはnが0の化合物であり、α-ポリグルコシルルチンは一般的にnが1~19の化合物である。
【0015】
酵素処理ルチンは、ルチンの糖に関する酵素処理により生成する化合物の集合体であり、通常は、ルチンに結合したグルコースの個数が異なる化合物の混合物、例えば、α-モノグルコシルルチンとα-ポリグルコシルルチンとからなる混合物を含む。また、酵素処理ルチンは、一般的には酵素処理によって製造されるため、未反応のルチンやその他の誘導体、例えばイソケルシトリンを含むこともある。なお、イソケルシトリン(「イソクエルシトリン」と呼ばれることもある。)は、ケルセチン骨格の3位の水酸基にβ-D-グルコースが結合した化合物、言い換えればルチンのルチノース残基中のラムノース残基が切断された化合物である。
【0016】
酵素処理ルチンは、例えば、α-グルコシル糖化合物(サイクロデキストリン、澱粉部分分解物など)の共存下で、ルチンに糖転移酵素(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase、EC2.4.1.19)など、ルチンにグルコースを付加する機能を有する酵素)を作用させることにより得られる生成物(本明細書において「第1酵素処理ルチン」と呼ぶ。)である。
【0017】
第1酵素処理ルチンは、結合したグルコースの個数が異なる様々なα-グルコシルルチン、すなわちα-モノグルコシルルチン及びα-ポリグルコシルルチンからなる集合体と、未反応物であるルチンとを含有する組成物である。必要に応じて、例えば多孔性合成吸着材と適切な溶出液を用いて、第1酵素処理ルチンを精製することにより、糖供与体及びその他の不純物を除去し、さらにルチンの含有量を減らし、α-グルコシルルチンの純度を高めた第1酵素処理ルチン(α-グルコシルルチン精製物)が得られる。
【0018】
また、第1酵素処理ルチンを、α-1,4-グルコシド結合をグルコース単位で切断するグルコアミラーゼ活性を有する酵素、たとえばグルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)で処理し、複数のグルコースが付加されたα-グルコシルルチンにおいて、ルチン自体の(ルチノース残基中の)グルコース残基に直接付加されたグルコース残基を1つだけ残してそれ以外のグルコース残基を切断することにより、α-モノグルコシルルチンを多く含有する酵素処理ルチン(本明細書において「第2酵素処理ルチン」と呼ぶ。)を得ることができる。この酵素処理によって、ケルセチン骨格に直接結合しているルチノース残基中のグルコース残基が、ケルセチン骨格から切断されることはない。
【0019】
本発明のブルーライト障害抑制剤においては、本発明の効果などを考慮すると、α-グルコシルルチンを含有する組成物である酵素処理ルチンを用いることが好ましく、第1酵素処理ルチン、及び第2酵素処理ルチンのいずれのα-グルコシルルチンを含有する組成物を用いてもよい。
【0020】
酵素処理ルチンは、本発明の効果などを考慮すると、少なくともα-グルコシルルチンを含み、さらにイソケルシトリンを含む混合物であることが好ましい。
このような混合物は、(i)上述した第1酵素処理ルチンを調製する、(ii)第1酵素処理ルチンを、グルコアミラーゼ活性を有する酵素で処理し、α-グルコシルルチンをほとんど全てα-モノグルコシルルチンに変換する、(iii)同時にラムノシダーゼ活性を有する酵素で処理し、未反応のルチンをほとんど全てイソケルシトリンに変換する、という手順により製造することができる。
【0021】
酵素処理ルチンの市販品としては、例えば東洋精糖株式会社の製品「αGルチンPS―C」、「αGルチンPS」、「αGルチンP」、「αGルチンH」などが挙げられる。「αGルチンPS―C」は、α-モノグルコシルルチンを65質量%、イソケルシトリンを15質量%含有する組成物である。「αGルチンPS」は、α-モノグルコシルルチンを65質量%、イソケルシトリンを15質量%含有する組成物である。また、「αGルチンP」は、α-グルコシルルチン60質量%、ルチン10質量%、イソケルシトリン1%を含有する組成物である。
【0022】
α-グルコシルルチンとしては、α-モノグルコシルルチンが好ましい。α-モノグルコシルルチンの分子量はα-ポリグルコシルルチンの分子量よりも小さいため、単位質量あたりの分子数はα-モノグルコシルルチンの方が多くなり、作用効果の上で有利であると考えられるためである。
【0023】
酵素処理ルチンに含まれる各種のα-グルコシルルチン、及びその他の成分の存在はHPLCのクロマトグラムによって確認することができ、各成分の含有量、又は所望の特定の成分の純度は、クロマトグラムのピーク面積から算出することができる。
【0024】
α-グルコシルルチンの製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。収率が良く、また製造が容易であることから、前記の通り、ルチンの酵素処理により製造することが好ましい。ルチンの入手及び調製方法は特に限定されるものではなく、試薬若しくは精製物として一般的に製造販売されている化合物を使用しても、又は柑橘類(ミカン、オレンジ等)の外皮やソバの実などの原料から抽出して調製した化合物を使用してもよい。
【0025】
〈α-グルコシルへスペリジン〉
α-グルコシルヘスペリジン(αグルコシルヘスペリジンともいう)は、ヘスペリジンのルチノース単位中の水酸基に、α-1,4結合により1分子以上のグルコースが付加された化合物の総称である。本発明におけるα-グルコシルヘスペリジンは、そのような構造を有する化合物のうちの1種類単独からなるものであっても、2種類以上の混合物であってもよい。なお、ヘスペリジンは、ヘスペレチンの7位の水酸基にβ-ルチノース(6-O-α-L-ラムノシル-β-D-グルコース)が結合した化合物、すなわちヘスペレチン配糖体である。
【0026】
α-グルコシルヘスペリジンは、下記式(2)で表すことができる。式(2)中、nは、0又は1以上の整数、例えば1~19の整数である。
【0027】
【0028】
α-グルコシルヘスペリジンは、「酵素処理ヘスペリジン」(「糖転移ヘスペリジン」と呼ばれることもある。)として知られている素材に主成分として含まれている化合物である。α-グルコシルヘスペリジンのうち、グルコースが1つだけ結合したものを「α-モノグルコシルヘスペリジン」と称し、グルコースが2つ以上結合したものを「α-ポリグルコシルヘスペリジン」と称する。つまり、式(2)において、α-モノグルコシルヘスペリジンはnが0の化合物であり、α-ポリグルコシルヘスペリジンは一般的にnが1~19の化合物である。
【0029】
酵素処理ヘスペリジンは、ヘスペリジンの糖に関する酵素処理により生成する化合物の集合体であり、通常は、ヘスペリジンに結合したグルコースの個数が異なる化合物の混合物、例えば、α-モノグルコシルヘスペリジンとα-ポリグルコシルヘスペリジンとからなる混合物を含む。また、酵素処理ヘスペリジンは、α-グルコシルヘスペリジンだけでなく、未反応のヘスペリジンや7-グルコシルヘスペレチン等のα-グルコシルヘスペリジン以外のヘスペリジン誘導体(その他のヘスペリジン誘導体ともいう)を含んでいてもよい。ただし、酵素処理ヘスペリジンに、ヘスペレチンは含まないことが好ましい。
【0030】
上記ヘスペリジンの糖に関する酵素処理の例としては、以下の通りである。(1)糖供与体の共存下でヘスペリジンに糖転移酵素を作用させ、ヘスペリジンのグルコース単位にα-1,4結合によりグルコースを付加することにより、α-グルコシルヘスペリジンが生成し、未反応のヘスペリジンとα-グルコシルヘスペリジンを含有する組成物が得られる(第1酵素処理ヘスペリジン)。(2)上記(1)により生成したα-グルコシルヘスペリジンにグルコアミラーゼ等を作用させ、ヘスペリジンのグルコース単位に結合しているグルコース鎖から1分子だけを残して他のグルコースを切断することにより、α-モノグルコシルヘスペリジンが生成し、未反応のままのヘスペリジンとα-モノグルコシルヘスペリジンを含有する組成物が得られる(第2酵素処理ヘスペリジン)。(3)上記(2)の未反応のままのヘスペリジンにα-L-ラムノシダーゼを作用させ、へスペリジンのルチノース単位に含まれるラムノースを切断することにより7-グルコシルヘスペレチンが生成し、7-グルコシルヘスペレチンとα-モノグルコシルヘスペリジンを含有する組成物が得られる(第3酵素処理ヘスペリジン)。
【0031】
第1酵素処理の例としては、α-グルコシル糖化合物(例:サイクロデキストリン、澱粉部分分解物)の共存下で、ヘスペリジンに糖転移酵素(例:サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase、EC2.4.1.19)などの、ヘスペリジンにグルコースを付加する機能を有する酵素)を作用させることが挙げられる。
【0032】
本発明のブルーライト障害抑制剤においては、本発明の効果などを考慮すると、α-グルコシルヘスペリジンを含有する組成物である酵素処理ヘスペリジンを用いることが好ましく、第1酵素処理ヘスペリジン、及び第2酵素処理ヘスペリジン、第3酵素処理ヘスペリジンのいずれの組成物を用いてもよい。
【0033】
酵素処理ヘスペリジンは、本発明の効果などを考慮すると、少なくともα-グルコシルヘスペリジンを含み、さらにヘスペリジン及び7-グルコシルヘスペレチンのいずれか一方又は双方を含む混合物であることが好ましい。
【0034】
酵素処理ヘスペリジンの市販品としては、例えば、東洋精糖株式会社の製品「αGヘスペリジンPS-CC」及び「αGヘスペリジンPA-T」が挙げられる。「αGヘスペリジンPS-CC」は、α-モノグルコシルヘスペリジン80質量%以上を含み、7-グルコシルヘスペレチンを含む。「αGヘスペリジンPA-T」は、α-モノグルコシルヘスペリジン75質量%以上を含み、ヘスペリジンを含む。
【0035】
α-グルコシルヘスペリジンとしては、α-モノグルコシルヘスペリジンが好ましい。α-モノグルコシルヘスペリジンの分子量はα-ポリグルコシルヘスペリジンの分子量よりも小さいため、単位質量あたりの分子数はα-モノグルコシルヘスペリジンの方が多くなり、作用効果の上で有利であると考えられるためである。
【0036】
α-モノグルコシルヘスペリジンは、糖加水分解酵素をα-ポリグルコシルヘスペリジンに作用させ、ヘスペリジンに結合したグルコースを1つだけ残して切断することにより産生することができる(第2酵素処理ヘスペリジン)。糖加水分解酵素としては、α-1,4-グルコシド結合をグルコース単位で切断するグルコアミラーゼ活性を有する酵素、例えばグルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)が挙げられる。なお、α-グルコシルヘスペリジン中のα-モノグルコシルヘスペリジンの割合は、グルコアミラーゼによる酵素処理の温度又は時間条件などにより調節することが可能であり、さらに酵素処理ヘスペリジンの混合物からα-モノグルコシルヘスペリジンを精製及び分取する方法も公知である。
【0037】
酵素処理ヘスペリジンに含まれる各種のα-グルコシルヘスペリジン、ヘスペリジン、及びその他の成分の存在はHPLCのクロマトグラムによって確認することができ、各成分の含有量、又は所望の特定の成分の純度は、クロマトグラムのピーク面積から算出することができる。
【0038】
α-グルコシルヘスペリジンの製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。収率が良く、また製造が容易であることから、前記のヘスペリジンの酵素処理により製造することが好ましい。ヘスペリジンの入手及び調製方法は特に限定されるものではなく、試薬若しくは精製物として一般的に製造販売されている化合物を使用しても、又は柑橘類(ミカン、オレンジ等)の外皮などの原料から抽出して調製した化合物を使用してもよい。
【0039】
〈α-グルコシルナリンジン〉
α-グルコシルナリンジン(αグルコシルナリンジンともいう)は、ナリンジンが有する水酸基に1分子以上のグルコースが付加された化合物の総称である。ナリンジンは、ナリンゲニン(5,7,4'-トリヒドロキシフラバノン)骨格の7位の水酸基にネオヘスペリドース(L-ラムノシル-(α1→2)-D-グルコース)がβ結合した構造を有する、フラボノイドの一種である。α-グルコシルナリンジンは、そのナリンジンが有する、ネオへスペリドース残基中のグルコース残基の3位(3''位)の水酸基及びナリンゲニン骨格中のフェニル基の4位(4'位)の水酸基の少なくとも一つに、α-グルコースが1分子以上結合した構造を有する。本発明におけるα-グルコシルナリンジンは、そのような構造を有する化合物のうちの1種類単独からなるものであっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0040】
α-グルコシルナリンジンは、下記式(3)で表すことができる。式(3)中、R1のm及びR2のnは、それぞれ3''位及び4'位に結合したα-グルコース残基の数を意味し、互いに独立した、0以上、通常は25以下の整数を表す。ただし、式(3)が「α-グルコシルナリンジン」を表すためには、m+n≧1を満たす、つまりナリンジンに少なくとも1分子のα-グルコースが連結している必要がある(m=n=0の場合、つまりR1、R2ともに-Hである場合、式(3)は「ナリンジン」を表す)。
【0041】
【0042】
α-グルコシルナリンジンは、「酵素処理ナリンジン」(「糖転移ナリンジン」と呼ばれることもある。)として知られている素材に主成分として含まれている化合物である。α-グルコシルナリンジンのうち、グルコースが1つだけ結合したものを「α-モノグルコシルナリンジン」と称し、グルコースが2つ以上結合したものを「α-ポリグルコシルナリンジン」と称する。
【0043】
酵素処理ナリンジンは、例えば、ナリンジンと糖供与体(例えばデキストリン)の混合物に糖転移酵素(例えばシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ)を反応させることにより得られる生成物(本明細書において「第1酵素処理ナリンジン」と呼ぶ。)であって、ナリンジンが有する水酸基に1分子以上のグルコースが付加された様々な化合物の集合体である。したがって、酵素処理ナリンジンは、通常は、ナリンジンに結合したグルコースの個数が異なる化合物の混合物、例えば、α-モノグルコシルナリンジンとα-ポリグルコシルナリンジンとからなる混合物を含む。また、α-グルコシルナリンジンに加えて、未反応のナリンジンや7-グルコシルナリンゲニン等のα-グルコシルナリンジン以外のナリンジン誘導体(その他のナリンジン誘導体ともいう)を含んでいてもよい。
【0044】
第1酵素処理ナリンジンの基本的な製造方法は、例えば特開平4-13691号公報を参照することができる。必要に応じて、例えば多孔性合成吸着材と適切な溶出液を用いて、第1酵素処理ナリンジンを精製することにより、糖供与体及びその他の不純物を除去し、さらにナリンジンの含有量を減らし、α-グルコシルナリンジンの純度を高めた第1酵素処理ナリンジン(α-グルコシルナリンジン精製物)が得られる。
【0045】
α-グルコシルナリンジンとしては、ナリンジンの3''位にα-グルコースが1分子及び/又は4'位にα-グルコースが1分子連結したもの、すなわち3''-α-モノグルコシルナリンジン(式(3)中、m=1、n=0)、4'-α-モノグルコシルナリンジン(同じくm=0、n=1)、及び3''-4'-α-ジグルコシルナリンジン(同じくm=1、n=1)から選択される少なくとも一種のα-グルコシルナリンジンが好ましく、中でも3''-α-モノグルコシルナリンジンがより好ましい。α-モノグルコシルナリンジンの分子量はα-ポリグルコシルナリンジンの分子量よりも小さいため、単位質量あたりの分子数はα-モノグルコシルナリンジンの方が多くなり、作用効果の上で有利であると考えられるためである。
【0046】
上記3種のα-モノ/ジグルコシルナリンジンを多く含有する酵素処理ナリンジン(本明細書において「第2酵素処理ナリンジン」と呼ぶ。)は、例えば、上述した第1酵素処理ナリンジンをグルコアミラーゼ活性を有する酵素で処理し、ナリンジンの3''位及び/又は4'位に前記糖転移酵素によって転移された、2分子以上のα-グルコースがα-1,4結合によって結合している糖鎖を、根元の1分子相当のα-グルコース残基だけを残して切断することによって得ることができる。さらに、第2酵素処理ナリンジンをα-グルコシダーゼ活性を有する酵素で処理し、4'位の水酸基に直接結合している1分子相当のα-グルコース残基を切断することにより、3''-α-モノグルコシルナリンジンを残存させ、4'-α-モノグルコシルナリンジン及び3''-4'-α-ジグルコシルナリンジンをほとんどないし全く含有しない酵素処理ナリンジン(本明細書において「第3酵素処理ナリンジン」と呼ぶ。)を得ることができる。第2及び第3酵素処理ナリンジンの基本的な製造方法は、例えば特開2002-199896号公報を参照することができる。
【0047】
さらに、第3酵素処理ナリンジンにα-L-ラムノシダーゼを作用させ、ナリンジンのルチノース単位に含まれるラムノースを切断することにより7-グルコシルナリンゲニンが生成し、7-グルコシルナリンゲニンとα-モノグルコシルナリンジンを含有する酵素処理ナリンジン(本明細書において「第4酵素処理ナリンジン」と呼ぶ。)が得られる。
【0048】
また、第1酵素処理ナリンジンに対してトランスグルコシダーゼを作用させれば、トランスグルコシダーゼはグルコアミラーゼ活性とα-グルコシダーゼ活性の両方を有する酵素なので、上述したような2段階の処理でなく1段階の処理で、3''-α-モノグルコシルナリンジンに富んだ第3酵素処理ナリンジンが得られる。さらに、必要であればβ-グルコシダーゼ活性を有する酵素を第3酵素処理ナリンジンに対して作用させて(第1酵素処理ナリンジンに対してトランスグルコシダーゼと同時に作用させてもよい)、水溶液中に少量溶解している未反応のナリンジンが有する(糖転移酵素による糖鎖の修飾を受けていない)ネオヘスペリドース残基をそのアグリコンであるナリンゲニンから切断する処理を行ってもよい。そのような処理によって生成するナリンゲニンはナリンジンよりも溶解度が低いので、沈殿となって水溶液中から容易に除去できるので、水溶液から3''-α-モノグルコシルナリンジンをより高純度で回収することが可能となる。
【0049】
本発明のブルーライト障害抑制剤においては、本発明の効果などを考慮すると、α-グルコシルナリンジンを含有する組成物である酵素処理ナリンジンを用いることが好ましく、第1酵素処理ナリンジン、第2酵素処理ナリンジン、第3酵素処理ナリンジン、及び第4酵素処理ナリンジンのいずれの組成物を用いてもよい。
【0050】
酵素処理ナリンジンは、本発明の効果などを考慮すると、少なくともα-グルコシルナリンジンを含み、さらにナリンジン及び7-グルコシルナリンゲニンのいずれか一方又は双方を含む混合物であることが好ましい。
【0051】
酵素処理ナリンジンに含まれる各種のα-グルコシルナリンジン、ナリンジン、及びその他の成分の存在はHPLCのクロマトグラムによって確認することができ、各成分の含有量、又は所望の特定の成分の純度は、クロマトグラムのピーク面積から算出することができる。
【0052】
α-グルコシルナリンジンの製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。収率が良く、また製造が容易であることから、前記のナリンジンの酵素処理により製造することが好ましい。ナリンジンの入手及び調製方法は特に限定されるものではなく、試薬若しくは精製物として一般的に製造販売されている化合物を使用しても、又は柑橘類(ナツミカン、グレープフルーツ等)の外皮などの原料から抽出して調製した化合物を使用してもよい。
【0053】
<皮膚を構成する細胞>
本発明において皮膚とは、全身の皮膚を意味し、付属器官(汗腺、脂腺、アポクリン腺、エクリン腺、毛包、及び爪)及び口唇(皮膚部、移行部、及び粘膜部)を含む。皮膚の部位は特に制限されないが、ブルーライトに暴露されやすいことから、皮膚は顔、頭、首、手、又は腕の皮膚であることが好ましく、顔の皮膚又は頭の皮膚(頭皮)であることがより好ましい。
【0054】
皮膚を構成する細胞は、皮膚を構成する任意の細胞であればよく、特に制限されない。皮膚を構成する細胞としては、表皮の表皮角化細胞(ケラチノサイト)、真皮の線維芽細胞、及び皮下脂肪層の脂肪細胞、及びその他の細胞、例えば表皮ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞、メラノサイト、メルケル細胞、組織球、肥満細胞、形質細胞、幹細胞などが挙げられ、付属器官、例えば皮脂腺、汗腺、毛包などを構成する細胞も含まれうる。ブルーライトによる障害を受けやすいことから、皮膚を構成する細胞は、表皮角化細胞、真皮線維芽細胞、又はメラノサイトが好ましく、表皮角化細胞がより好ましい。
【0055】
皮膚を構成する細胞の由来は特に制限されないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、サル又はヒトを含む霊長類の哺乳動物が好ましく、ヒトがより好ましい。
【0056】
<眼を構成する細胞>
眼とは、眼球、視神経、及び付属器(眼瞼、涙器)を意味する。
眼を構成する細胞は、眼を構成する任意の細胞であればよく、特に制限されないが、好ましくは眼球を構成する細胞である。
【0057】
眼球を構成する細胞としては、例えば、網膜に存在する錐体視細胞、杆体視細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、メラノプシン神経節細胞、及び網膜色素上皮細胞;角膜に存在する角膜上皮細胞、角膜実質細胞(corneal keratocytes、corneal fibroblasts)、及び角膜内皮細胞;虹彩に存在する虹彩細胞、及び虹彩色素上皮細胞;水晶体に存在する水晶体線維細胞、及び水晶体上皮細胞;毛様体に存在する毛様体無色素上皮細胞、及び色素上皮細胞;脈絡膜に存在する眼球脈絡膜線維芽細胞等が挙げられる。ブルーライトによる障害を受けやすいことから、眼球を構成する細胞は、角膜上皮細胞、錐体視細胞、又は杆体視細胞が好ましく、角膜上皮細胞がより好ましい。
【0058】
眼を構成する細胞の由来は特に制限されないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、サル又はヒトを含む霊長類の哺乳動物が好ましく、ヒトがより好ましい。
【0059】
<毛髪>
毛髪は、特に制限されず、例えば、頭髪、眉毛、睫毛、髭、体毛を挙げることができるが、好ましくは頭髪である。
毛髪の由来は特に制限されないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、サル又はヒトを含む霊長類の哺乳動物が好ましく、ヒトがより好ましい。
毛髪は、バージン毛であってよいし、過去にヘアカラー剤、ブリーチ剤、パーマネントウェーブ剤、縮毛矯正剤又はトリートメント剤より処理された毛髪であってもよい。
【0060】
<ブルーライト障害抑制剤>
本発明のブルーライト障害抑制剤は、皮膚若しくは眼を構成する細胞又は毛髪に対する、ブルーライトによる障害を抑制する。
本発明において、ブルーライトとは、波長が400~500nmの光を意味する。
本発明において、ブルーライトによる障害とは、ブルーライト暴露により生じる、皮膚若しくは眼を構成する細胞又は毛髪の正常な機能又は構造の一部又は全部が損なわれた状態を意味する。
【0061】
皮膚又は眼を構成する細胞に対する、ブルーライトによる障害は、例えば、前記細胞の呼吸、代謝、DNA複製、転写、又は翻訳の抑制又は停止、細胞構造又は細胞構成物質の損傷、破壊又は酸化、細胞周期、又は細胞内シグナル伝達の抑制又は停止等であってもよいし、より具体的な障害として、細胞の形態変化、増殖又は分化の抑制又は停止、細胞老化、細胞死(ネクローシス、アポトーシス)、DNA損傷、突然変異、炎症、過剰な色素産生、弾性繊維の切断又は減少等であってもよい。評価を容易に行えることから、皮膚又は眼を構成する細胞に対する、ブルーライトによる障害は、好ましくは皮膚又は眼を構成する細胞の形態変化、増殖若しくは分化の抑制若しくは停止、又は細胞死であり、より好ましくは細胞死である。
【0062】
皮膚又は眼を構成する細胞に対する、ブルーライトによる障害を抑制する効果を評価する方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、被験物質を添加してブルーライトに暴露した細胞の障害の程度が、被験物質を添加せずにブルーライトに暴露した細胞の障害の程度よりも低い場合に、被験物質にはブルーライトによる障害を抑制する効果があると評価することができる。
ブルーライトによる障害が細胞死である場合は、例えば、実施例で後述するように、ブルーライトに暴露していない細胞の生存率を100%としたときに、被験物質を添加してブルーライトに暴露した細胞の生存率が、被験物質を添加せずにブルーライトに暴露した細胞の生存率よりも高い場合に、被験物質にはブルーライトによる障害を抑制する効果があると評価することができる。この場合、細胞の生存率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0063】
毛髪に対する、ブルーライトによる障害は、キューティクル、コルテックス、又はメデュラのいずれに対する障害でもよく、例えば、枝毛、切れ毛、ぱさつき、ツヤの低下等の毛髪の表面状態又は感触の変化;引っ張り強度等の物性の変化;毛髪のキューティクル、コルテックス、又はメデュラの微細構造の変化;毛髪を構成するタンパク質の酸化又は官能基の変化等が挙げられる。評価を容易に行えることから、毛髪に対する、ブルーライトによる障害は、好ましくはキューティクルに対する障害であり、より好ましくはキューティクルの微細構造の変化である。
【0064】
毛髪に対する、ブルーライトによる障害を抑制する効果を評価する方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、被験物質を添加してブルーライトに暴露した毛髪の障害の程度が、被験物質を添加せずにブルーライトに暴露した毛髪の障害の程度よりも低い場合に、被験物質にはブルーライトによる障害を抑制する効果があると評価することができる。
【0065】
本発明において、「ブルーライト障害抑制」とは、上記のブルーライトによる障害の予防、改善、症状の軽減、症状の消失、症状の緩和、さらには、治療、治癒及び治癒促進等を包含する意味である。
【0066】
本発明のブルーライト障害抑制剤の作用機序は不明であるが、成分(A)はブルーライトを吸収しないので、成分(A)の持つ生理的作用によるものであると推定される。
【0067】
ブルーライト障害抑制剤は、α-グルコシルルチン、α-グルコシルヘスペリジン及びα-グルコシルナリンジンから選択される少なくとも一種の成分(A)を含むものであればよく、前記成分(A)のみからなるものであってもよいし、前記成分(A)によるルーライト障害抑制効果を妨げない限り、さらに賦形剤、安定化剤や湿潤剤や乳化剤等の公知の任意成分を含有してもよい。また、前記ブルーライト障害抑制剤は、前記成分(A)を含む組成物である、酵素処理ルチン、酵素処理ヘスペリジン、酵素処理ナリンジンから選ばれる少なくとも一つであってもよいし、酵素処理ルチン、酵素処理ヘスペリジン、酵素処理ナリンジンから選ばれる少なくとも一つを含むものであってもよい。
【0068】
前記成分(A)を含むブルーライト障害抑制剤としては、例えば、東洋精糖株式会社の製品「αGルチンPS」、「αGルチンP」、「αGルチンH」、「αGヘスペリジンPS-CC」、「αGヘスペリジンPA-T」等の市販品をあげることができる。これら商品自体をブルーライト障害抑制剤として使用してもよいし、これら商品を配合した組成物をブルーライト障害抑制剤として使用してもよい。
【0069】
<ブルーライト障害抑制剤の用途>
ブルーライト障害抑制剤の用途は特に制限されないが、本発明のブルーライト障害抑制剤は、ブルーライトによる障害を抑制する高い作用を有するので、例えば、生体における皮膚若しくは眼を構成する細胞又は毛髪に生じるブルーライト障害を予防又は改善する目的で、単回又は複数回生体に投与することができる。
【0070】
ブルーライト障害抑制剤は、皮膚又は眼を構成する細胞に対するブルーライト障害が関与する疾患や症状の予防又は改善に有用であり、例えば、皮膚の老化、色素沈着、screen dermatitis、眼の疲れ若しくは痛み、黄斑変性等の発症、進展の予防又は改善に寄与する。
【0071】
ブルーライト障害抑制剤の投与量は、ブルーライト障害又はブルーライト障害が関与する疾患又は症状の種類又は程度によって適宜選択すればよい。例えば、前記ブルーライト障害抑制剤を経口投与する場合は、ブルーライト障害抑制効果の観点から成分(A)として一日あたり10mg~700mgが好ましく、100mg~500mgがさらに好ましい。また、前記ブルーライト障害抑制剤を外用する場合は、ブルーライト障害抑制効果の観点から、成分(A)を好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.025~0.5質量%の濃度で含む組成物を適量投与することができる。また、前記一日あたり投与量を、例えば1日あたり1~3回にわけて投与することができ、2又は3回にわけて投与することが好ましい。
【0072】
ブルーライト障害抑制剤の投与期間は、ブルーライト障害又はブルーライト障害が関与する疾患又は症状の種類又は程度によって適宜選択すればよい。ブルーライト障害抑制効果の観点から、好ましくは7~80日、より好ましくは14日~60日である。
【0073】
〈ブルーライト障害抑制剤を含む製剤〉
ブルーライト障害抑制剤は、そのまま生体に投与してもよいし、前記ブルーライト障害抑制剤の有効量を薬学的に許容する担体とともに配合した製剤として投与してもよい。
ブルーライト障害抑制剤を含む製剤は、特に制限されず、例えば、外用剤、注射剤、又は飲食品が挙げられるが、好ましくは外用剤又は飲食品であり、より好ましくは外用剤である。
ブルーライト障害抑制剤を含む製剤の投与方法は特に制限されず、経口、又は非経口とすることができる。前記製剤は、投与が容易であることから、非経口投与することが好ましく、外用することがより好ましく、皮膚、毛髪、又は眼に外用することがさらに好ましい。
【0074】
ブルーライト障害抑制剤を含む製剤は、これらの製剤について一般的に用いられている手法に従って前記ブルーライト障害抑制剤を添加することにより製造することができる。前記ブルーライト障害抑制剤は、製剤の製造工程の初期に添加されるか、製造工程の中期又は終期に添加されればよく、また添加の手法は、混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等から適切なものを製剤の態様に応じて選択すればよい。
【0075】
前記ブルーライト障害抑制剤の有効成分である前記成分(A)は、水溶性が良好であるため、水又は水分の多い製剤に添加する際も、均一に溶解又は分散させることが可能である。
【0076】
〈外用剤〉
本発明において外用剤とは、皮膚、眼、毛髪等の表面に直接、適用する製剤を意味し、医薬品、医薬部外品、化粧品のいずれであってもよい。
外用剤は、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、ムース状、噴霧用剤、又はこれらを混合して用いる二剤式など、皮膚、粘膜、眼、爪、毛髪等の体表面に塗布又は浸透可能なものであれば、性状や剤型は制限されない。
【0077】
本発明の一態様は、前記ブルーライト障害抑制剤を含む、皮膚、眼、又は毛髪に用いる外用剤であり、好ましくは前記ブルーライト障害抑制剤を含む、皮膚、眼、又は毛髪に用いる、ブルーライト障害抑制用外用剤である。
【0078】
皮膚に用いる外用剤としては、例えば、化粧水、乳液、スキンクリーム、フェイスクリーム、アイクリーム、美容液、パック等のスキンケア化粧品;ファンデーション、アイシャドウ等のメークアップ化粧品;洗顔料等の洗浄料;入浴剤、ボディクリーム等のボディケア化粧品;軟膏、リニメント剤及びローション剤等の皮膚外用剤;育毛剤、養毛剤、美容液、オイル等の頭皮に用いる外用剤;リップクリーム、口紅、リップグロス等の口唇に用いる外用剤、ネイルカラー、ベースコート、トップコート、爪用美容液等の爪に用いる外用剤が挙げられる。
皮膚に用いる外用剤は、好ましくは、スキンケア化粧品、又は皮膚外用剤であり、より好ましくは、スキンクリーム、フェイスクリーム、アイクリーム、又は美容液である。
【0079】
皮膚に用いる外用剤は、ブルーライト障害抑制効果の観点から、成分(A)を好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.025~0.5質量%の濃度で含む。皮膚に用いる外用剤は、一日あたり、好ましくは0.1~5g、より好ましくは0.5~2g用いる。
【0080】
皮膚に用いる外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤や洗浄剤等に用いられる成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、シリコーン油、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、界面活性剤、水溶性高分子、増粘剤、粉体、皮膚保護剤、美白剤、シワ改善剤、老化防止剤、植物抽出物、防腐剤、消炎剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、色素、顔料等などを必要に応じて適宜配合することができる。これらの成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
塗布が容易であり、ブルーライト障害抑制効果がより充分に得られることから、皮膚に用いる外用剤には、保湿剤を配合することが好ましい。
保湿剤としては、例えば、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物及びそれらの塩等の粘稠剤;キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、ヘパリン等の多糖類;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;グルコース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール等の糖類;グリセリルグルコシド等の多価アルコールの糖誘導体が挙げられる。
皮膚に用いる外用剤に配合する保湿剤は、多価アルコール又は多価アルコールの糖誘導体が好ましく、グリセリン、1,3-ブチレングリコール又はグリセリルグルコシドがより好ましく、グリセリルグルコシドがさらに好ましい。
皮膚に用いる外用剤が含む保湿剤の含有量は特に制限されないが、外用剤の安定性及び保湿効果の観点から、0.5~20質量%が好ましく、2~15%質量がより好ましく、2~10質量%がさらに好ましい。
【0082】
皮膚に用いる外用剤を製造する方法は特に制限されず、周知の方法で製造することができる。例えば、ホモジナイザー、ディスパーザー、ディスパミキサー、プロペラミキサー、タービンミキサー、コロイドミル等の一般的な機器を用いて、原材料を混合、攪拌することにより製造できる。
【0083】
眼に用いる外用剤としては、例えば、眼軟膏剤、眼ゲル剤、眼クリーム剤、点眼剤が挙げられる。投与が容易であることから、眼に用いる外用剤は、好ましくは点眼剤である。
【0084】
眼に用いる外用剤は、ブルーライト障害抑制効果の観点から成分(A)を好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.025~0.5質量%の濃度で含む。眼に用いる外用剤は、一日あたり、好ましくは0.01~0.5g、より好ましくは0.05~0.3g用いる。
【0085】
眼に用いる外用剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、通常、眼科用局所適用製剤に用いられる種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を配合することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、保湿剤、充血除去剤、眼調節薬、抗炎症薬又は収斂薬、抗ヒスタミン薬又は抗アレルギー薬、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌剤、殺菌剤、糖類、多糖類又はその誘導体、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、前述以外の水溶性高分子、局所麻酔薬、ステロイド、緑内障治療薬、白内障治療薬、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、増粘剤(分散剤)、安定化剤(抗酸化剤)、保存剤(防腐剤)などが挙げられる。これらの成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
ブルーライト障害抑制効果がより充分に得られることから、眼に用いる外用剤には、保湿剤を配合することが好ましい。
保湿剤としては、例えば、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物及びそれらの塩等の粘稠剤;キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、ヘパリン等の多糖類;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;グルコース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール等の糖類;グリセリルグルコシド等の多価アルコールの糖誘導体が挙げられる。
眼に用いる外用剤に配合する保湿剤は、ムコ多糖類又は多価アルコールの糖誘導体が好ましく、ヒアルロン酸ナトリウム又はグリセリルグルコシドがより好ましい。
眼に用いる外用剤が含む保湿剤の含有量は特に制限されないが、外用剤の安定性及び保湿効果の観点から、0.1~10質量%が好ましく、0.1~5%質量がより好ましく、0.3~3質量%がさらに好ましい。
【0087】
眼に用いる外用剤を製造する方法は特に制限されず、周知の方法で製造することができる。例えば、点眼薬とする場合であれば、蒸留水又は精製水等の適当な希釈剤中で原材料を混合して、所望の浸透圧及びpHに調整し、無菌環境下、高圧蒸気滅菌あるいはろ過滅菌処理し、洗浄滅菌済みの容器に無菌充填することにより製造できる。また、例えば、眼軟膏とする場合であれば、通常用いられる眼軟膏用基剤中に、ブルーライト障害抑制剤を混和し、常法に従って無菌的に調製することができる。
【0088】
毛髪に用いる外用剤としては、例えば、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、養毛料、育毛料、整髪剤(ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアフォーム、ヘアミスト等)、ヘアカラー剤、パーマネントウェーブ剤が挙げられる。毛髪に用いる外用剤は、洗い流す外用剤であってもよいし、洗い流さない外用剤であってもよいが、洗い流さない外用剤が好ましい。投与が容易であることから、毛髪に用いる外用剤は、好ましくはトリートメント、又は整髪料であり、より好ましくは整髪料、さらに好ましくはヘアミストである。
【0089】
毛髪に用いる外用剤は、ブルーライト障害抑制効果の観点から、成分(A)を好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.025~0.5質量%の濃度で含む。毛髪に用いる外用剤は、毛髪の量や長さにもよるが、一日あたり、好ましくは0.5~15g、より好ましくは1~10g用いる。
【0090】
毛髪に用いる外用剤には、通常頭髪用化粧品剤等に用いられる成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、シリコーン油、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、界面活性剤、水溶性高分子、増粘剤、粉体、皮膚保護剤、美白剤、シワ改善剤、老化防止剤、植物抽出物、防腐剤、消炎剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、色素、顔料等などを必要に応じて適宜配合することができる。これらの成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
ブルーライト障害抑制効果がより充分に得られることから、毛髪に用いる外用剤には、植物抽出物を配合することが好ましい。
植物抽出物としては、例えば、ソウハクヒ、シャクヤク、オウゴン、カミツレ、トウキ、ローズマリー、ゲンノショウコ、シコン、茶、葛根、丁字、甘草、枇杷、橙皮、高麗人参、芍薬、山査子、麦門冬、生姜、松笠、厚朴、阿仙薬、黄ゴン、アロエ、アルテア、シモツケ、オランダガラシ、キナ、コンフリー、ロート、ホホバ、センブリ、西洋のこぎり草、アーモンド、カカオ、マカデミアナッツ、オリーブ、ショウガ、トウモロコシ、ボダイジュ、マツ、ハッカ、ゴボウ、ゴマ、プルーン、ドクダミ、クマザザ、ツバキ、グレープフルーツ、ゼニアオイ、イネ、アボガド、サボテン、ラベンダー、ヒマワリ、ヒノキ、ゴマ、ユリ、ユズ、バラ、アセロラ、キュウリ、コメ、シアバター、シラカバ、トマト、ニンニク、ハマメリス、ヘチマ、ホップ、モモ、アンズ、レモン、キウイ、ドクダミ、トウガラシ、クララ、ギシギシ、コウホネ、セージ、ノコギリ草、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、タイム、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、オウバク、ベニバナ、サンシシ、タイソウ、チンピ、ヨクイニン、クチナシ、カモミラ、メリッサ、ビワ、ゲラニウム、エリカ、トクサ、ハイビスカス等の抽出物が挙げられる。
毛髪に用いる外用剤に配合する植物抽出物は、ゲラニウム抽出物又はハイビスカス抽出物が好ましく、ゲラニウム抽出物がより好ましい。
毛髪に用いる外用剤が含む植物抽出物の含有量は特に制限されないが、外用剤の安定性の観点から、乾燥固形分として0.01~3質量%が好ましく、0.05~2%質量がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。
【0092】
<飲食品>
本発明において、飲食品とは、日常生活において経口又は消化管投与などにより摂取されるものを意味し、例えば、一般の飲食品、健康食品、健康飲料、サプリメント、保健機能食品、保健機能飲料、栄養補助食品、栄養補助飲料、医薬部外品、医薬品(内服薬)などのいずれであってもよい。
本発明の一態様は、前記ブルーライト障害抑制剤を含む、飲食品であり、好ましくは前記ブルーライト障害抑制剤を含む、ブルーライト障害抑制用飲食品である。
【0093】
飲食品の性状や剤型、形態は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。飲食品は、固形製剤、液状製剤の他、冷菓、麺類、菓子類、パン、水産・畜産加工食品、乳製品、油脂加工食品、調味料、レトルトパウチ食品等であってもよい。
飲食品は、投与が容易で、ブルーライト障害抑制効果を発揮しやすいことから、好ましくは固形製剤又は液状製剤であり、より好ましくは固形製剤である。
【0094】
固形製剤としては、粉末剤、顆粒剤、錠剤、チュアブル錠、カプセル剤、トローチ等が挙げられるが、好ましくは錠剤、チュアブル錠、又はカプセル剤である。
【0095】
固形製剤においては賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤(滑剤)、矯味剤、安定化剤などの補助剤を用いてもよい。固形製剤における賦形剤の好適な例としては、例えば乳糖、D-マンニトール、デンプンなどが挙げられる。結合剤の好適な例としては、例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、糖アルコール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。崩壊剤の好適な例としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等が挙げられる。滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。流動化剤(滑剤)の好適な例としては、例えば二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0096】
液状製剤は、内用液剤、シロップ剤、ドリンク剤等の他、例えば、果汁飲料、茶飲料、ココア、野菜ジュース、青汁、豆乳、乳飲料、乳酸飲料、ニアウォーター、スポーツドリンク、栄養ドリンク、炭酸飲料等の飲料も含む。
【0097】
液状製剤は、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、香料、調味料、甘味料、増粘剤等の補助成分を含んでいてもよい。溶媒としては成分(A)を溶解させることができ、生体安全性が高いものが選択される。溶媒の好適な例としては、例えば、水、エタノールなどが挙げられ、好ましくは水である。
【0098】
飲食品における成分(A)の含有量は、対象となる飲食品の種類に応じて適宜選択すればよい。
飲食品が飲料である場合、成分(A)の含有量は、好ましくは0.001~3質量%、より好ましくは0.01~2質量%、さらに好ましくは0.01~1質量%である。
飲食品が固形製剤である場合、成分(A)の含有量は、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは0.5~20質量%であり、さらに好ましくは1~15質量%である。
カプセル剤など、口腔内に成分(A)がほとんど溶出せずに内服される固形製剤である場合には、成分(A)の含有量は、好ましくは10~95質量%であり、より好ましくは30~90質量%であり、さらに好ましくは50~85質量%である。
【実施例0099】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0100】
〔実施例1〕ブルーライト照射による正常ヒト皮膚細胞への影響
(被験物質の調製)
被験物質は、α-グルコシルルチンとして下記αGルチン、α-グルコシルへスペリジンとして下記αGヘスペリジン、α-グルコシルナリンジンとして下記αGナリンジンを用いた。各被験物質の組成は以下の通りである。
αGルチン(αGルチンPS-C、東洋精糖株式会社製):α-モノグルコシルルチン65質量%、イソケルシトリン15質量%
αGヘスペリジン(αGヘスペリジンPS-CC、東洋精糖株式会社製):α-モノグルコシルヘスペリジン80質量%、7-グルコシルヘスペレチン10質量%
αGナリンジン(第4酵素処理ナリンジン):α-モノグルコシルナリンジン75質量%、7-グルコシルナリンゲニン10質量%
各被験物質500mgをイオン交換水にて10mLに定容し、被験物質原液を調製した。この被験物質原液をイオン交換水で段階的に希釈して、各被験物質の希釈系列を調製した。各被験物質の希釈系列を培地体積の1/1000量添加した。
【0101】
(細胞培養とブルーライト照射)
表皮ケラチノサイト(成人由来、KURABO社製、NO.KK-4109)を96well plateに2×104cells/wellで播種し、37℃、5%CO2下でインキュベーションした。培地はHuMedia-KG2(KURABO社製、NO.KK-2150S)を用いた。播種24時間後に、被験物質又は溶媒のみを添加した培地に交換した後、1時間培養した。その後、インキュベーター内で、青色LED(バイオリサーチセンター株式会社製、LEDA―420、ピーク波長420nm)を、細胞培養面における照度が500lxとなるように照射しながら、18時間培養した。照度は照度計(ケニス株式会社製、UV―340A)を用いて測定した。比較対照として、溶媒のみを添加した培地で培養した細胞をブルーライト照射せずに培養した。一実験条件あたりN=3で実験した。
【0102】
(生細胞数の測定)
96well plateをPBSで洗浄後、Cell Counting Kit-8(DOJINDO社製、NO.CK04)を使用し、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。
Cell Counting Kit-8は、テトラゾリウム塩を発色基質として使用している。テトラゾリウム塩は、細胞中の脱水素酵素により産生されるNADHによって橙色の水溶性のホルマザンに還元されるので、ホルマザンの量は生細胞数に比例する。ホルマザンの450nmの吸光度を測定することにより、生細胞数を測定することができる。
生細胞(%)は以下の式(I)により算出した。
生細胞(%)=(各被験物質のブルーライト照射した試験区の吸光度)/(ブルーライト照射を行っていない試験区の吸光度)×100 ・・・式(I)
p値はブルーライト照射ありサンプル添加なし(0ppm)を対照に算出し、p<0.05を有意差あり(*)とした。
【0103】
(結果)
結果を
図1~
図4に示す。図中、BL(-)はブルーライト照射なし、BL(+)はブルーライト照射あり、無添加とは溶媒のみを添加したことを示す。グラフの縦軸は、細胞生存率(%)を示す。
図1より、αGルチンは、0.00625%、0.0125%、0.025%、0.05%において、ブルーライトによる障害を抑制することが示された。αGルチンによるブルーライト障害抑制効果は濃度依存的であり、特に0.0125%、0.05%において有意であった。
図2より、αGヘスペリジンは、0.25%、0.5%において、ブルーライトによる障害を有意に抑制することが示された。
図3より、αGナリンジンは、0.025%、0.05%において、ブルーライトによる障害を有意に抑制することが示された。
図4より、ブルーライト障害抑制効果は、αGルチン、αGヘスペリジン、及びαGナリンジンの中では、αGルチンが最も高いことが明らかになった。
【0104】
〔参考例1〕被験物質の吸収スペクトル測定
(方法)
被験物質は、実施例1と同じものを用いた。各被験物質をイオン交換水に溶解させ、αGルチンは終濃度20ppm、αGヘスペリジン及びαGナリンジンは終濃度25ppmの水溶液を調製した。
被験物質の水溶液を石英セル(セル長10.0mm)に入れ、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、NO.U-3900)を用いて、200nm~900nmの吸収スペクトルを測定した。
【0105】
(結果)
αGルチン、αGヘスペリジン、及びαGナリンジンの200nm~500nmの吸収スペクトルをそれぞれ
図5~
図7に示す。
図5より、αGルチンは、ブルーライト波長域(400nm~500nm)の光はほとんど吸収しないことが明らかになった。
図6より、αGヘスペリジンは、ブルーライト波長域(400nm~500nm)の光は吸収しないことが明らかになった。
図7より、αGナリンジンは、ブルーライト波長域(400nm~500nm)の光は吸収しないことが明らかになった。
以上の結果から、αGルチン、αGヘスペリジン、及びαGナリンジンのブルーライト障害抑制効果は、αGルチン、αGヘスペリジン、及びαGナリンジンがブルーライト波長域(400nm~500nm)の光を吸収することによる効果ではなく、それ以外のメカニズムによる効果であることが明らかになった。
【0106】
〔参考例2〕青色LEDの分光スペクトル測定
(方法)
実施例1においてブルーライト照射に用いた青色LEDの分光スペクトルを、可視域用刻線回折格子(Thorlabs社製)と光パワーメータ(BRCバイオリサーチセンター社製)から構成される測定系を用いて測定した。
【0107】
(結果)
結果を
図8に示す。ピーク波長は420nmであった。
【0108】
〔実施例2~34〕
表1~11に記載の配合割合で、各成分を秤量して、混合することによりスキンクリーム、フェイスクリーム、アイクリーム、化粧水、美容液、ドリンク剤、茶飲料、点眼剤、ヘアミスト、カプセル剤、及びチュアブル錠を調製した。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】