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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077364
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】リーク検査装置 リーク検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
G01M3/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004888
(22)【出願日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2021190643
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(71)【出願人】
【識別番号】505186614
【氏名又は名称】株式会社エイムテック
(74)【代理人】
【識別番号】100121599
【弁理士】
【氏名又は名称】長石 富夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 良彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 順裕
(72)【発明者】
【氏名】岡本 喜久雄
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA02
2G067AA44
2G067CC04
2G067DD03
2G067EE09
2G067EE10
2G067EE14
(57)【要約】
【課題】漏れ量測定時の圧力条件の違いに係らず漏れに関する被検査体の良否を正しく判定できるリーク検査方法およびリーク検査装置を提供する。
【解決手段】中空部を有する被検査体に気体を加圧導入した後に封止した状態で漏れ量(検出漏れ量)を測定し、該測定時の被検査体の内圧(第1の検査圧力)を測定する。また基準の検査圧力と、被検査体の内圧を基準の検査圧力として漏れの測定を行った場合の漏れの最大許容値(基準漏れ量)とを取得する。そして、検出漏れ量と基準漏れ量とが、基準の検査圧力と第1の検査圧力とが同一圧力である場合の値となるように、検出漏れ量と基準漏れ量の少なくとも一方を、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味して換算する。換算後の検出漏れ量と基準漏れ量の比較により被検査体の漏れの有無を、漏れ量測定時の圧力条件の違いにかかわらず正しく判定できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する被検査体の漏れの有無を検査するリーク検査方法であって、
前記被検査体に気体を加圧導入した後に封止した状態で前記被検査体からの漏れ量である検出漏れ量を測定する漏れ量測定ステップと、
前記測定を行った時の前記被検査体の内圧を示す第1の検査圧力を測定する検査圧力測定ステップと、
基準の検査圧力と、前記被検査体の内圧を前記基準の検査圧力として前記測定を行った場合の前記被検査体からの漏れ量の最大許容値を示す基準漏れ量とを取得する基準値取得ステップと、
前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とが、前記基準の検査圧力と前記第1の検査圧力とが同一の圧力である場合の値となるように、前記検出漏れ量と前記基準漏れ量のうちの少なくとも一方を換算する換算ステップと、
を有する
ことを特徴とするリーク検査方法。
【請求項2】
前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の内圧による体積変化を取得する体積変化取得ステップ
をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載のリーク検査方法。
【請求項3】
換算ステップでは、前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味して、前記換算する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のリーク検査方法。
【請求項4】
前記換算後の前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とを比較して、前記被検査体の漏れの有無を判定する判定ステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のリーク検査方法。
【請求項5】
前記漏れ量測定ステップでは、中空部を有する漏れの無い基準体と前記被検査体とに気体を同圧に加圧導入した後、前記基準体と前記被検査体のそれぞれを独立した閉空間として封止した状態で計測した前記被検査体の内圧と前記基準体の内圧との差圧に基づいて、前記被検査体からの漏れ量を取得する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のリーク検査方法。
【請求項6】
前記第1の検査圧力の測定時と前記検出漏れ量の測定時とにずれがある場合に、測定された第1の検査圧力を、前記検出漏れ量の測定時の値となるように補正する検査圧力補正ステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のリーク検査方法。
【請求項7】
前記検査圧力補正ステップでは、前記検出漏れ量を加味して前記補正を行う
ことを特徴とする請求項6に記載のリーク検査方法。
【請求項8】
中空部を有する被検査体の漏れの有無を検査するリーク検査装置であって、
前記被検査体に気体を加圧導入した後に封止した状態で前記被検査体からの漏れ量である検出漏れ量を測定する漏れ量測定部と、
前記測定を行った時の前記被検査体の内圧を示す第1の検査圧力を測定する検査圧力測定部と、
基準の検査圧力と、前記被検査体の内圧を前記基準の検査圧力として前記測定を行った場合の前記被検査体からの漏れ量の最大許容値を示す基準漏れ量とを取得する基準値取得部と、
前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とが、前記基準の検査圧力と前記第1の検査圧力とが同一の圧力である場合の値となるように、前記検出漏れ量と前記基準漏れ量のうちの少なくとも一方を換算する換算部と、
を有する
ことを特徴とするリーク検査装置。
【請求項9】
前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の内圧による体積変化を取得する体積変化取得部をさらに有する
ことを特徴とする請求項8に記載のリーク検査装置。
【請求項10】
前記換算部は、前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味して、前記換算する
ことを特徴とする請求項8または9に記載のリーク検査装置。
【請求項11】
前記換算後の前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とを比較して、前記被検査体の漏れの有無を判定する判定部をさらに有する
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1つに記載のリーク検査装置。
【請求項12】
前記漏れ量測定部は、中空部を有する漏れの無い基準体と前記被検査体とに気体を同圧に加圧導入した後、前記基準体と前記被検査体のそれぞれを独立した閉空間として封止した状態で計測した前記被検査体の内圧と前記基準体の内圧との差圧に基づいて、前記被検査体からの漏れ量を取得する
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1つに記載のリーク検査装置。
【請求項13】
前記検査圧力測定部は、前記第1の検査圧力の測定時と前記検出漏れ量の測定時とにずれがある場合に、測定された第1の検査圧力を、前記検出漏れ量の測定時の値となるように補正する
ことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1つに記載のリーク検査装置。
【請求項14】
前記検査圧力測定部は、前記検出漏れ量を加味して前記補正を行う
ことを特徴とする請求項13に記載のリーク検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部を有する被検査体(容器や管路等)の漏れを検査するリーク検査装置およびリーク検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空部を有する容器や管路等の被検査体の漏れを検査する場合、被検査体に空気等の気体を所定の検査圧力(たとえば、400kPa~500kPa)に加圧導入した後、これを封止し、その後の圧力変化から漏れ量を測定することが行われる。検査の合否は、測定した漏れ量と、予め定めた閾値(基準漏れ量)とを比較して判定される(たとえば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6775434号
【特許文献2】特許第3411374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、気体の漏れ量は、例えば[Pa・m3/s]のような単位で表される。1Pa・m3/sは、漏れ量が、漏れた先の圧力条件が1Paの状態で1秒間に1m3であることを意味している。ボイルの法則より、気体は体積と圧力の積で表されるからである。漏れ量は、[mL/min]のような単位で表されることもあるが、これは漏れた先の圧力条件が大気圧であることを省略したものであり、正確には[atm・mL/min]のような単位で表される。
【0005】
また、漏れ量は、漏れる元の圧力が漏れる先の圧力より高ければ高いほど多くなる。
【0006】
このように、漏れ量を論ずる場合、漏れる元の圧力条件、又は漏れる元と漏れる先の圧力差を考慮する必要があり、たとえば、同じ被検査体について漏れ量を測定した場合であっても、測定される漏れ量は、漏れた先の圧力条件(通常、大気圧)と漏れる元の圧力条件(検査圧力:漏れ量測定時の被検査体の内圧)に依存して変動することになる。
【0007】
しかしながら、従来の漏れ検査では、検査圧力の許容範囲を、たとえば、400kPa~500kPaとしているにもかかわらず、合否の判定において測定値の漏れ量と比較される基準漏れ量を、予め定めた固定値としていたので、誤判定の生じることがあった。
【0008】
図19は、検査圧力と、漏れ量と、基準漏れ量に基づく合否判定との関係の一例を示している。検査圧力の許容範囲は400kPa~500kPa、基準漏れ量は検査圧力に係らず固定値の11.2mL/min、とされている。測定された漏れ量が基準漏れ量超過であれば不良品(漏れあり)と判定され、測定された漏れ量が基準漏れ量以下であれば合格品と判定される。
【0009】
グラフAは、最大許容漏れ量サンプルである被検査体aについての検査圧力と漏れ量の関係を示している。検査圧力450kPaでの被検査体aの漏れ量は11.2mL/minとなっている。グラフBは、被検査体aより漏れ量の多い被検査体b(不良品の例)についての検査圧力と漏れ量の関係を示し、グラフCは被検査体aより漏れ量の少ない被検査体c(良品の例)についての検査圧力と漏れ量の関係を示している。
【0010】
たとえば、不良品の被検査体bの漏れ量を検査圧力450kPaで測定すると、測定値の漏れ量は基準漏れ量11.2mL/minより多いため、被検査体bは不良品と判定される。しかし、被検査体bの漏れ量を、たとえば、検査圧力410kPaで測定すると、測定値の漏れ量が基準漏れ量11.2mL/minより少なくなるため、被検査体bは良品と誤判定されてしまう。図中の斜線の施された領域E1は、測定時の検査圧力が低いために不良品が良品(合格)と誤判定される領域である。
【0011】
また、良品である被検査体cの漏れ量を検査圧力450kPaで測定すると、測定値の漏れ量は基準漏れ量11.2mL/minより少ないため、被検査体cは良品と判定される。しかし、被検査体cの漏れ量を、たとえば、検査圧力480kPaで測定すると、測定値の漏れ量が基準漏れ量11.2mL/minより多くなるため、被検査体cは不良品と誤判定されてしまう。図中の斜線の施された領域E2は、測定時の検査圧力が高いために良品が不良品(不合格)と誤判定される領域である。
【0012】
このように、検査圧力が許容範囲(たとえば、400kPa~500kPa)にあれば検査可能としているにもかかわらず、合否の判定で測定値と比較される基準漏れ量を予め定めた固定値とする場合には、誤判定の生じるおそれがあった。
【0013】
なお、本願発明者は、以下のような理由により、漏れ量を測定する時の検査圧力を正確に一定値(たとえば正確に450kPa)にして検査することが難しい点を見出した。
【0014】
(理由1)リーク検査装置が指示する所定の圧力(たとえば、450kPa)に気体を正確に加圧導入することは困難であるため、たとえば、被検査体内の圧力が400kPa~500kPa等の許容範囲に収まれば検査可能とされていた。
【0015】
(理由2)被検査体内に気体を加圧導入して封止した後、予め定めた時間(整定期間)を待ってから漏れ量の測定が行われる場合、整定期間の長さを一律にしても、漏れの大小に依存して、整定期間中の圧力降下が変動する(たとえば、漏れ量が少ない場合、漏れ量が多い場合に比べて、整定期間における圧力降下が少なくなる)。このため、たとえ、加圧導入後の封止時に正確に目標の検査圧力に加圧できたとしても、整定期間後の測定時における圧力条件は漏れ量に依存して異なってくる。
【0016】
(理由3)整定期間の長短によっても漏れる元の圧力条件は異なってくる。すなわち、漏れ量が同じでも、整定期間の長短により、測定開始時の漏れる元の圧力条件(例えば被検査体内部の圧力条件)が異なってくる。すなわち、整定期間が長ければ長いほど、その間に漏れに起因する圧力降下が発生し、整定期間が長く圧力降下が大きかったものと、整定期間が短く圧力降下が小さかったものでは、圧力条件は異なってくる。
【0017】
(理由4)被検査体内に気体を加圧導入して封止した後、整定期間の経過を待ってから漏れ量の測定が行われる場合において、漏れが大きいと、壁面を通して熱が逃げるのではなく、熱自体を含む気体が直接、被検査体の外に放出される点と、被検査体内の圧力が下がる(断熱膨張に近い状態となる事で温度が低下して圧力が下がる)点とに起因して、漏れる元の圧力条件(一律の整定期間が経過した後の被検査体内の圧力)が異なってくる。すなわち、漏れの大小で、温度変化に起因する圧力収束時間(時定数)が異なってくる事に起因して、さらに温度が下がる時間も異なるので、漏れる元の圧力が下がる時間も異なってくる。
【0018】
漏れ量の測定では、ワークに気体を加圧導入して封止した後の圧力降下(差圧ΔP[Pa])が測定されるが、[mL/min]や[Pa・m3/s]を単位とする値で設定された基準の漏れ量と比較するためには、測定値の差圧を[mL/min]や[Pa・m3/s]を単位とする漏れ量に変換する必要がある。
【0019】
漏れ量として測定した差圧ΔP[Pa]を漏れ量Q[mL/min]に換算する式は、
Q[mL/min] = ΔP[Pa]×Vw[mL]×60/( T[s]×Patm[Pa]) …式A
T[s]:ΔPの測定時間、Vw:漏れ元の体積
であり、差圧ΔP[Pa]を漏れ量Q[mL/min]に変換するには、漏れ元の体積Vw[mL]が必要になる。また、漏れ量Q[mL/min]は、漏れ元の体積Vw[mL]に比例して変化する。
【0020】
同様に、差圧ΔP[Pa]を漏れ量Q‘L [Pa・m3/s] に換算する式は、
Q‘L [Pa・m3/s] = ΔP[Pa]×VW[mL]/( T[s]×1000000) 式B
であり、漏れ量Q‘L [Pa・m3/s]は、漏れ元の体積Vw[mL]に比例して変化する。したがって、漏れ検査の合否を漏れ量[mL/min](もしくは[Pa・m3/s])で判断するには、漏れ元の体積を考慮する必要がある。また、漏れ元が柔体の場合、検査時の圧力に依存して漏れ元の体積が変化する。
【0021】
たとえば、一般的にペットボトルは手に持つと柔らかく、少し凹む。このペットボトルのような柔体に空気圧をかけると、極めて低圧の場合には、柔らかいペットボトルであっても変形することなく、内圧が優先的に上昇する。しかし、少し圧力が上がってくると、手に持つと少しへこむがごとく、ペットボトルが変形し膨らんで行く(そのかわり圧力は上がり難くなる)。さらに圧力を上げると、ぱんぱんに張って大きくなった状態でペットボトルの変形が停止し(体積変化が少なくなり)、もっぱら圧力のみが優先的に上昇し、やがてペットボトルは破裂する。
【0022】
剛体の漏れを測定するのではなく、このような柔体の漏れを測定する場合には、仮想等価体積等(仮想体積又は仮想内容積又は等価体積又は等価内容積)を用いて測定を行うことになるが、測定時の圧力に依存して仮想等価体積が変化するので、それを加味して、測定値の差圧ΔP[Pa])を[mL/min]や[Pa・m3/s]を単位とする漏れ量に変換する必要がある。しかも見た目はほとんど変わっていないにも関わらず、仮想等価体積等が数倍の値を用いないとならないことも多々ある。
【0023】
さらに、被検査体(ワーク・マスター)が剛体の場合、漏れ測定時の圧力に係らず、漏れ元の体積は一定であるという概念を一掃しなければならない事実を、本願発明者は見出した。
【0024】
すなわち、漏れ量測定時に気体が加圧導入されて封止される閉空間には、被検査体の中空部の他に、検査装置内の配管、検査装置と被検査体とを結ぶ配管、さらには、被検査体と配管とを接続する治具や、貫通型の被検査体の場合はその他端側を閉塞する治具などもあり、この部分に柔体(たとえば、ナイロンチューブ、ポリウレタンチューブ等製の配管や開閉弁等のゴム製弁座など)があれば、封止された閉空間内の体積が圧力に応じて変化してしまう。そのため、被検査体が剛体であったとしても、これら柔体部分の影響を考慮に入れる必要がある。以下は、本願発明者がこの点を発見するに至った実験結果の一例である。
【0025】
図20は、被検査体であるステンレス管(剛体)の一端にナイロンチューブ0.9mを介してリーク検査装置に接続し、他端は治具にて閉塞して漏れ量を測定した実験の結果を示している。400[kPa]~460[kPa]までは、ハーゲンポワズイユの法則を用いた直管モデルの漏れ量と実験値はほぼ一致するが、460[kPa]~500[kPa]の間は少しズレが目立つ。
【0026】
ズレの原因は以下と推定する。
・推定原因(1):検査装置内の配管や開閉弁等のゴム製弁座が、460[kPa]~500[kPa]間では、400[kPa]に対して少し体積が異なってきた。
・推定原因(2):0.9mのナイロンチューブが、460[kPa]~500[kPa]の間では、400[kPa]に対して少し体積が異なってきた。
【0027】
図21は、被検査体であるステンレス管(剛体)の一端にポリウレタンチューブ5.0mを介してリーク検査装置に接続し、他端は治具にて閉塞して漏れ量を測定した実験の結果を示している。400[kPa]~410[kPa]までは、ハーゲンポワズイユの法則を用いた直管モデルの漏れ量と実験値はほぼ一致するが、410[kPa]~500[kPa]の間は少しズレが目立つ。
【0028】
検査装置内の配管や開閉弁等のゴム製弁座は、図20と同じなので、図20図21とが大きく異なる原因は以下の推定原因(3)と考えられる。
・推定原因(3):0.9mのナイロンチューブに対して、ナイロンチューブより柔らかい5.0mのポリウレタンチューブの方が、体積変化が大きい。
【0029】
図22は、被検査体である銅管(剛体)の一端にポリウレタンチューブ2.0mを介してリーク検査装置に接続し、被検査体は途中で6本に分岐し、分岐先の6か所の他端は治具にて閉塞して漏れ量を測定した実験の結果を示している。図20図21に対して、ハーゲンポワズイユの法則を用いた直管モデルの漏れ量と実験値とには大きな差が生じている。その原因は以下と推定される。
【0030】
・推定原因(4):図21と同じポリウレタンチューブを用いて、その長さを短く(5.0m→2.0m)してリーク検査装置に接続したにもかかわらず、大きく差が生じた。この原因は、閉塞に用いた治具(他端側のみならず一端側も含めた7つの治具)が原因と考えられる。
【0031】
このように、被検査体が剛体でも、他の部分(配管や開閉弁等)に柔体(たとえば、ナイロンチューブ、ポリウレタンチューブ)が使用されるため、これら柔体部分の体積変化の影響を考慮に入れる必要がある。
【0032】
従来測定器は、精度を高め、正確な測定値を求めることを目的としてきたが、本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、漏れ量測定時の圧力条件の違いにかかわらず漏れに関する被検査体の良否を正しく判定することのできるリーク検査方法およびリーク検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0034】
[1]中空部を有する被検査体の漏れの有無を検査するリーク検査方法であって、
前記被検査体に気体を加圧導入した後に封止した状態で前記被検査体からの漏れ量である検出漏れ量を測定する漏れ量測定ステップと、
前記測定を行った時の前記被検査体の内圧を示す第1の検査圧力を測定する検査圧力測定ステップと、
基準の検査圧力と、前記被検査体の内圧を前記基準の検査圧力として前記測定を行った場合の前記被検査体からの漏れ量の最大許容値を示す基準漏れ量とを取得する基準値取得ステップと、
前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とが、前記基準の検査圧力と前記第1の検査圧力とが同一の圧力である場合の値となるように、前記検出漏れ量と前記基準漏れ量のうちの少なくとも一方を換算する換算ステップと、
を有する
ことを特徴とするリーク検査方法。
【0035】
上記発明および下記[8]の発明では、測定で得た検出漏れ量と基準漏れ量とが、基準の検査圧力と測定時の検査圧力とが同一の圧力である場合の値となるように、検出漏れ量と基準漏れ量のうちの少なくとも一方を換算する。この換算により、基準の検査圧力と異なる圧力で被検査体の漏れ量の測定が行われた場合であっても、同じ圧力条件下での値に統一することができる。「同一の圧力」は、基準の検査圧力、あるいは第1の検査圧力のほか、別途の第3の圧力としてもよい。圧力を基準の検査圧力に統一する場合は検出漏れ量を換算し、圧力を第1の検査圧力に統一する場合は基準漏れ量を換算し、圧力を第3の圧力に統一する場合は、検出漏れ量と基準漏れ量の双方を換算すればよい。
【0036】
[2]前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の内圧による体積変化を取得する体積変化取得ステップ
をさらに有する
ことを特徴とする[1]に記載のリーク検査方法。
【0037】
上記発明および下記[9]の発明では、測定した差圧[Pa]を[mL/min]を単位とする漏れ量に変換する演算では、漏れ元の体積が必要になると共に、柔体の場合、漏れ元の体積は漏れ元の内圧によって変化するので、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の内圧による体積変化を取得する。
【0038】
[3]換算ステップでは、前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味して、前記換算する
ことを特徴とする[1]または[2]に記載のリーク検査方法。
【0039】
上記発明および下記[10]の発明では、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味して換算することで、換算がより正確になる。
【0040】
[4]前記換算後の前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とを比較して、前記被検査体の漏れの有無を判定する判定ステップをさらに有する
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のリーク検査方法。
【0041】
[5]前記漏れ量測定ステップでは、中空部を有する漏れの無い基準体と前記被検査体とに気体を同圧に加圧導入した後、前記基準体と前記被検査体のそれぞれを独立した閉空間として封止した状態で計測した前記被検査体の内圧と前記基準体の内圧との差圧に基づいて、前記被検査体からの漏れ量を取得する
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のリーク検査方法。
【0042】
上記発明および下記[12]の発明では、同圧に加圧した被検査体の内圧と基準体の内圧との差圧を測定するので、高圧下で精度の高い測定が可能となる。
【0043】
[6]前記第1の検査圧力の測定時と前記検出漏れ量の測定時とにずれがある場合に、測定された第1の検査圧力を、前記検出漏れ量の測定時の値となるように補正する検査圧力補正ステップをさらに有する
ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のリーク検査方法。
【0044】
上記発明および下記[13]の発明では、検査圧力の測定時を、検出漏れ量の測定期間の開始時と終了時の中央時とすることが好ましいが、たとえば、検査圧力の測定時を、検出漏れ量の測定期間の開始時とする場合、あるいは、封止後、圧力降下がある程度落ち着く整定期間の経過を待って漏れを測定する場合に、検出漏れ量の測定開始前の整定期間中とする場合、さらには、封止後に被検査体の内圧を測定するための圧力計が設けられていないような場合には、加圧導入完了後で封止前とする場合など、検査圧力の測定時と検出漏れ量の測定時とにずれがある場合に、そのずれたタイミングで測定された第1の検査圧力を、検出漏れ量の測定時の値となるように補正する。
【0045】
[7]前記検査圧力補正ステップでは、前記検出漏れ量を加味して前記補正を行う
ことを特徴とする[6]に記載のリーク検査方法。
【0046】
上記発明および下記[14]の発明では、漏れ量の大小に応じて、封止後の圧力降下に差が生じるので、漏れ量の測定時と時間的にずれたタイミングで測定された第1の検査圧力を、漏れ量を加味して補正する(漏れ量に応じて補正量を増減させる)。
【0047】
[8]中空部を有する被検査体の漏れの有無を検査するリーク検査装置であって、
前記被検査体に気体を加圧導入した後に封止した状態で前記被検査体からの漏れ量である検出漏れ量を測定する漏れ量測定部と、
前記測定を行った時の前記被検査体の内圧を示す第1の検査圧力を測定する検査圧力測定部と、
基準の検査圧力と、前記被検査体の内圧を前記基準の検査圧力として前記測定を行った場合の前記被検査体からの漏れ量の最大許容値を示す基準漏れ量とを取得する基準値取得部と、
前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とが、前記基準の検査圧力と前記第1の検査圧力とが同一の圧力である場合の値となるように、前記検出漏れ量と前記基準漏れ量のうちの少なくとも一方を換算する換算部と、
を有する
ことを特徴とするリーク検査装置。
【0048】
[9]前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の内圧による体積変化を取得する体積変化取得部をさらに有する
ことを特徴とする[8]に記載のリーク検査装置。
【0049】
[10]前記換算部は、前記被検査体の中空部を含む前記封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味して、前記換算する
ことを特徴とする[8]または[9]に記載のリーク検査装置。
【0050】
[11]前記換算後の前記検出漏れ量と前記基準漏れ量とを比較して、前記被検査体の漏れの有無を判定する判定部をさらに有する
ことを特徴とする[8]乃至[10]のいずれか1つに記載のリーク検査装置。
【0051】
[12]前記漏れ量測定部は、中空部を有する漏れの無い基準体と前記被検査体とに気体を同圧に加圧導入した後、前記基準体と前記被検査体のそれぞれを独立した閉空間として封止した状態で計測した前記被検査体の内圧と前記基準体の内圧との差圧に基づいて、前記被検査体からの漏れ量を取得する
ことを特徴とする[8]乃至[11]のいずれか1つに記載のリーク検査装置。
【0052】
[13]前記検査圧力測定部は、前記第1の検査圧力の測定時と前記検出漏れ量の測定時とにずれがある場合に、測定された第1の検査圧力を、前記検出漏れ量の測定時の値となるように補正する
ことを特徴とする[8]乃至[12]のいずれか1つに記載のリーク検査装置。
【0053】
[14]前記検査圧力測定部は、前記検出漏れ量を加味して前記補正を行う
ことを特徴とする[13]に記載のリーク検査装置。
【発明の効果】
【0054】
本発明に係るリーク検査方法およびリーク検査装置によれば、漏れ量測定時の圧力条件の違いにかかわらず漏れに関する被検査体の良否を正しく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明に係るリーク検査装置の概略構成と検査の流れを示す図である。
図2】リーク検査装置が行う検査処理の流れを示す流れ図である。
図3】圧力と漏れ量との関係を示すグラフ((圧力変化による体積変化を考慮しない場合(式4のδ1=1、δ2=0)と考慮する場合(δ1=0.8、δ2=2.207))を示す図である。
図4】基準値の1点を通る検査圧力別の漏れ量の理論値を一次関数で近似したグラフを示す図である。
図5】2点の漏れ量測定値を通る一次関数のグラフを示す図である。
図6】傾きが図5のグラフで高さが図4の基準点を通る一次関数のグラフを示す図である。
図7図1のリーク検査装置に、仮想等価体積を求めるための可変バルブおよび流量計を追加した構成を示す図である。
図8】圧力と漏れ量との関係を示すグラフ(ΔPのみ圧力補正したものと、Vw[mL]についても圧力補正したもの)を示す図である。
図9】圧力と漏れ量との関係を示すグラフが測定系の各種の条件で異なることを示す図である。
図10】被検査体b(不良品)、被検査体c(良品)の各検査圧力における漏れ量を、基準の検査圧力(450kPa)で漏れ量を測定した場合の値となるように換算した結果を示す図である。
図11図2の流れ図に従って漏れ検査を行った場合のワークの内圧の変化状況を模式的に示す図である。
図12図11のワークW1、W2について、検出漏れ量と、温度補償なしの場合の換算漏れ量と、温度補償ありの場合の換算漏れ量を示す図である。
図13】検査圧力が高めの場合における漏れの多いワークW1の内圧の変化、検査圧力が低めの場合における漏れの少ないワークW2の内圧の変化等を示す図である。
図14】低めの検査圧力で測定した漏れの多いワークW1、および高めの検査圧力で測定した漏れの少ないワークW2についての検出漏れ量、温度補償なしの場合の換算漏れ量、温度補償ありの場合の換算漏れ量を示す図である。
図15】設定値500kPa±40 kPaで多数のワークを検査した場合の電空レギュレータの制御実績と漏れ検査の判定結果を示す図である。
図16】検査圧力の測定時を漏れ量の測定開始時とした場合の換算漏れ量と検査圧力との関係を示す図である。
図17】漏れ検査におけるワークおよびマスタの内圧の変化状況(誇張せず)を示す図である。
図18】漏れの少ないワーク、漏れの比較的少ないワーク、漏れの多いワーク、漏れの比較的少ないワークにおける温度補償なしの換算および温度補償ありの換算を例示した図である。
図19】従来のリーク検査における、検査圧力と漏れ量と基準漏れ量に基づく合否判定の関係の一例を示す図である。
図20】被検査体であるステンレス管(剛体)の一端をナイロンチューブ0.9mを介してリーク検査装置に接続し、他端は治具にて閉塞して漏れ量を測定した実験の結果を示す図である。
図21】被検査体であるステンレス管(剛体)の一端をポリウレタンチューブ5.0mを介してリーク検査装置に接続し、他端は治具にて閉塞して漏れ量を測定した実験の結果を示す図である。
図22】被検査体である銅管(剛体)の一端をポリウレタンチューブ2.0mを介してリーク検査装置に接続し、被検査体は途中で6本に分岐し、分岐先の6か所の他端は治具にて閉塞して漏れ量を測定した実験の結果を示す図である。
図23】圧力と漏れ量との関係の理論値を対数グラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0057】
図1は、本発明に係るリーク検査装置10の概略構成と検査の流れを示している。以下、圧力はすべてゲージ圧とする。リーク検査装置10は、中空部を有する被検査体(例えば、熱交換器等の管路、貯湯タンク等の容器)の漏れを検査する装置である。中空部を有する被検査体をワークとする。またワークと同形状、同材料で構成された容器等であって漏れのないことが確認されているものをマスタとする。ワークとマスタは同じ力学的および熱力学的パラメータを持った異なる容器等である。
【0058】
なお、ワークとマスタを同じ力学的および熱力学的パラメータを持った異なる容器とすると、ワークが大きい場合にはマスタも大きくなり、結果、検査装置の設置場所として広いスペースを要することとなるので、マスタを小型とし、マスタがワークと同じサイズを使用した場合と等価となるように変換係数を使用して対応してもよい。
【0059】
リーク検査装置10は、加圧源接続口11と、ワーク接続口12と、マスタ接続口13を備えている、リーク検査装置10は内部の管路として、加圧源接続口11に一端が接続された第1配管21を有し、該第1配管21は途中で二手に分岐して第2配管22と第3配管23となり、第2配管22の他端はワーク接続口12に、第3配管23の他端はマスタ接続口13にそれぞれ接続されている。
【0060】
第1配管21には第1開閉弁31が介挿されている。第2配管22には、第1配管21との分岐箇所からワーク接続口12に向かう並び順で、第2開閉弁32、第1圧力計41、第3開閉弁33が設けてある。また第3配管23には、第1配管21との分岐箇所からマスタ接続口13に向かう並び順で、第4開閉弁34、第2圧力計42、第5開閉弁35が設けてある。
【0061】
第2開閉弁32と第3開閉弁33との間の第2配管22と、第4開閉弁34と第5開閉弁35の間の第3配管23との間には、差圧計43が接続されている。また、第1開閉弁31と第4開閉弁34との間の所定箇所で第3配管23から排気管24が分岐しており、該排気管24の途中に排気弁38が設けてある。排気管24の終端は排気ポートとなっており大気開放されている。
【0062】
リーク検査装置10は、検査の流れの制御、測定、および測定結果に基づく漏れ判定等を行う検査処理部50を有する。検査処理部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を主要部とする回路であり、ROMに格納されたプログラムに従ってCPUが処理を実行することで、リーク検査装置10における検査動作の制御、測定および判定が行われる。
【0063】
検査処理部50は、漏れ量測定部51、検査圧力測定部52、基準値取得部53、換算部54、判定部55、体積変化取得部56の各機能を備えている。漏れ量測定部51は、被検査体に気体を加圧導入した後に封止した状態で該被検査体からの漏れ量である検出漏れ量を測定する機能を果たす。ここでは漏れ量測定部51は、差圧計43を用いて、測定期間開始時のワークの内圧とマスタの内圧との差圧と、測定期間終了時のワークの内圧とマスタの内圧との差圧との差を、漏れ量に対応する差圧として検出する。
【0064】
検査圧力測定部52は、漏れ量測定部51が漏れ量の測定を行った時の被検査体の内圧を示す第1の検査圧力を測定する機能を果たす。
【0065】
基準値取得部53は、基準の検査圧力と、被検査体の内圧を基準の検査圧力として漏れ量の測定を行った場合の被検査体からの漏れ量の最大許容値を示す基準漏れ量とを取得する機能を果たす。たとえば、管理者等により基準の検査圧力、および基準漏れ量の入力を受けて記憶する。
【0066】
換算部54は、検出漏れ量と基準漏れ量とが、基準の検査圧力と第1の検査圧力とが同一の圧力である場合の値となるように、検出漏れ量と基準漏れ量のうちの少なくとも一方を換算する機能を果たす。「同一の圧力」は、基準の検査圧力、あるいは第1の検査圧力のほか、別途の第3の圧力としてもよい。圧力を基準の検査圧力に統一する場合は検出漏れ量を基準の検査圧力下での値に換算し、圧力を第1の検査圧力に統一する場合は基準漏れ量を第1の検査圧力下での値に換算し、圧力を別途の第3の圧力に統一する場合は、検出漏れ量と基準漏れ量の双方を第3の圧力下での値に換算すればよい。
【0067】
ここでは、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味して前述の換算を行う。漏れ量として検出された差圧ΔP[Pa]を漏れ量Q[mL/min]に変換する際には、式Aに示したように、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の体積Vwが関係する。そして、柔体を含む閉空間の体積Vwは該閉空間内の圧力に依存して変化するので、換算部54はこれを加味して前述の換算を行う。なお、リーク検査装置10は、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化することを加味しないで換算する場合にも対応している。なお、この体積には、リーク検査装置内の差圧を計測する差圧計のダイヤフラム、検査装置から検査対象までの配管や検査対象を密閉する治具等を含み、検査対象のみの体積に限らない。
【0068】
判定部55は、換算後の検出漏れ量と基準漏れ量とを比較して、被検査体の漏れの有無を判定する機能を果たす。
【0069】
体積変化取得部56は、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の内圧による体積変化を取得する。たとえば、検査圧力の許容範囲内の複数点の圧力での漏れ量[mL/min]の設定を受ける。たとえば、12.96[mL/min at500kPa])、9.69[mL/min at402kPa]、11.03[mL/min at450kPa]のうちの少なくとも2点の設定入力を受ける。そして、これらに基づいて内圧による体積変化の影響を加味した換算を行うための係数の演算等を行う。
【0070】
リーク検査装置10のワーク接続口12には、ワーク61が接続される。この例では、ワーク61は入口と出口を有する貫通型の容器等(たとえば、給湯器の熱交換器)である。ワーク61の入口はワーク接続口12に接続され、出口には第6開閉弁36が接続されている。第6開閉弁36を開くとワーク61の出口は大気に通じて大気開放となる。
【0071】
マスタ接続口13には、マスタ62が接続される。この例では、マスタ62は、ワーク61と同様に入口と出口を有する貫通型の容器等である。マスタ62の入口はマスタ接続口13に接続され、出口には第7開閉弁37が接続されている。第7開閉弁37を開くとマスタ62の出口は大気に通じて大気開放となる。
【0072】
ワーク61は、製造から検査終了まで以下のような工程を経る。なお、マスタ62は、マスタ接続口13に接続された状態に維持される。リーク検査装置10は、次々と新たなワーク61を検査する。ワーク61は、ロー付け工程を経て製造(P1)された後、籠台車上に集積されて10分ほど放置され、環境温度+10℃程度に落ち着く(P2)。その後、大気を送風する等温化ファンユニット6に載せて数分間、大気を当てて冷却する(P3)。その後、リーク検査装置10に取り付けられて検査が行われる(P4)。検査が終了するとリーク検査装置10から取り外されて次工程に送られる(P5)。
【0073】
リーク検査装置10の加圧源接続口11には、電空レギュレータ2を介して加圧気体の供給源3が接続される。また、電空レギュレータ2と加圧源接続口11との間の配管には圧力計5が接続される。加圧気体の供給源3は、例えば屋外に設置されており、電空レギュレータ2に至るまでの配管の途中で、加圧気体を動力とする各種の機械等(例えばエアーツール等)にも加圧気体を供給するようになっている。
【0074】
たとえば、加圧気体の供給源3は、加圧気体を作る空気圧縮機(コンプレッサー、小型の場合は通称ベビコン)と、コンプレッサーからの加圧空気を一時的に貯めるタンク(圧力変動をなるべく抑えるバッファー用空気タンク)と、タンクに設けられた圧力センサーで構成される。
【0075】
加圧気体が使われるとタンク内に貯められた加圧空気が減る。加圧気体の供給源3は、圧力センサーで検出される圧力が予め設定された下限値に達すると、コンプレッサーを起動させて加圧空気をタンクに送り込み(ベビコントローラ)、圧力センサーで検出される圧力が予め設定された上限値に達すると、コンプレッサーを停止させる。この結果、供給源3のタンクから供給される加圧気体の圧力は所定範囲で変動を繰り返すことになる。また、コンプレッサーの能力を超えて加圧気体が使われると、予め設定された下限値以下で供給源3からの加圧気体が送られてくる場合もある。なお、必要に応じてアフタークーラ、ドライヤー等が追加される場合がある。
【0076】
電空レギュレータ2は、下流側が設定圧力となるように制御する機能を果たす(実際には供給源3から送られて来る以上に加圧することはできないので、管理者が供給圧を見ながら、供給圧以下の所定の範囲を設定することで、設定圧力となるように制御される)。詳細には、電空レギュレータ2の設定値は、リーク検査装置10の検査処理部50から送られてくる。この設定値は、例えば500kPa±40kPaのような設定範囲を、利用者がリーク検査装置10に入力し、電空レギュレータ2はこの500kPaという設定に基づいて、元圧の変化にリアルタイムで反応・修正しながら、下流側の圧力が設定値(たとえば、500kPa)となるように制御を続ける。
【0077】
リーク検査装置10がワーク61へ気体を加圧導入している期間中、電空レギュレータ2は前述の制御を続けており、リーク検査装置10の検査処理部50は、ワーク61への気体の加圧導入を開始してから所定時間(たとえば、10秒)が経過した時点で第1開閉弁31を閉じる。そして、タイムアップ時(第1開閉弁31を閉じたとき)の第1圧力計41の圧力が所定の許容範囲(たとえば、500kPa±40kPa)にあれば、正常に加圧されたとして判断して漏れ量の検査工程に進み、許容範囲になければ加圧エラーと判断する。たとえば、許容範囲が500kPa±40kPaであれば、タイムアップ時の圧力が480kPaであっても530kPaであっても、その圧力で漏れ量の検査工程に進むことになる。
【0078】
なお、以下のような理由で、タイムアップ時の圧力が設定値(たとえば500kPa)からずれることがある。すなわち、供給源3から電空レギュレータ2に至るまでの配管から分岐して接続されている、加圧気体を動力とする他の機械等が、想定外に多量の加圧気体を、リーク検査装置10が被検査体への気体の加圧導入を行っている期間の終了寸前に使用すると、電空レギュレータ2は供給源3から供給される加圧気体の急激な圧力低下に対して制御が間に合わなくなり、タイムアップ時の圧力が設定値より下がってしまうといった現象が生じる。例えば500kPaにコントロールしていたものが、第1開閉弁31を閉じる寸前に470kPaに下がってしまう場合がある。
【0079】
図2は、リーク検査装置10が行う検査処理の流れを示す流れ図である。リーク検査装置10は、基準の検査圧力(Ptest)と、ワーク(被検査体)の内圧を基準の検査圧力にして漏れ量の測定を行った場合の該ワークからの漏れ量の最大許容値を示す基準漏れ量(Qref)との入力設定を、たとえば漏洩検査の管理者等から受ける(ステップS100:基準値認識工程)。ここでは、基準漏れ量(Qref)は、[mL/min]を単位とする値で設定される。
【0080】
基準の検査圧力(Ptest[kPa])と基準漏れ量(Qref[mL/min])はペアの関係にあり、これらをどのように設定すれば良いかについては、たとえば、リーク検査装置10の取り扱い説明書等へ記載することで管理者に知らしめる。
【0081】
たとえば、電空レギュレータ2に対して設定する圧力範囲が、500kPa+40kPa~500kPa-30kPaの場合に、基準の検査圧力を、±の基準とされた500kPaとするか、中央値の505kPaの値とするか等の決め事を定めておけばよい。リーク検査装置10は、その決め事に基づいて、設定された圧力範囲から基準の検査圧力(Ptest)を認識すればよい。あるいは、リーク検査装置10に基準の検査圧力(Ptest)の設定値を直接入力するようにしても良い。
【0082】
次に、後述の漏洩検査工程で形成される、ワーク内部を含む封止された閉空間の内圧と体積変化との関係を示す情報を取得する(ステップS101、体積変化取得工程)。ここでは、漏れのある所定のワーク内部を含む封止された閉空間の内圧とその内圧での漏れ量(単位は[mL/min])とのペアを、複数の内圧(好ましくは、検査圧力の許容範囲の複数の内圧)について取得する。
【0083】
たとえば、402kPaと402kPaでの漏れ量9.69[mL/min]のペア、450kPaと450kPaでの漏れ量11.03[mL/min]のペア、500kPaと500kPaでの漏れ量12.96[mL/min]のペア、の入力を受ける。少なくとも2つの内圧について入力されればよい。そして、これらに基づいて内圧による体積変化の影響を加味して換算するための係数等を求める。
【0084】
リーク検査装置10は、第1開閉弁31を除くすべての開閉弁32~38を開き、この状態で、作業者により、ワーク61およびマスタ62が大気開放の状態で図1に示すようにリーク検査装置10に接続される(ステップS102)。
【0085】
リーク検査装置10は、その後、排気弁38を閉じ、この状態で第1開閉弁31を所定時間(20~30秒)開いてから閉じる制御を行うことでワーク61およびマスタ62内を掃気(プレパージ)する(ステップS103)。掃気流量は、例えば大気圧換算で50~100リットル位である。
【0086】
その後、第6開閉弁36、第7開閉弁37を閉じ、さらに第2開閉弁32、第4開閉弁34を閉じて、ワーク61とマスタ62をそれぞれ、大気開放の状態から封止した独立の閉空間にする(ステップS104)。
【0087】
その後、所定時間にわたって放置しているときのワーク61側の閉空間とマスタ62側の閉空間との差圧を差圧計43で測定する温度補償用測定工程を実施する(ステップS105)。温度補償用測定工程で測定された差圧の変化量(温度補償用測定工程の開始時の差圧(ワーク61側の閉空間とマスタ62側の閉空間との差圧)と終了時の差圧(ワーク61側の閉空間とマスタ62側の閉空間との差圧)との差分)をΔPt1とし、温度補償用測定工程での測定時間をTaとする。
【0088】
次に、漏洩検査工程を行う。漏洩検査工程では、まず、加圧気体の供給源3からワーク61とマスタ62に気体を加圧導入して所定の検査圧力(例えば500kPa±40kPaのような設定範囲内)まで加圧する(ステップS106:加圧ステップ)。具体的には、第2開閉弁32と第4開閉弁34を開いてワーク61とマスタ62とを連通した後、第1開閉弁31を開いて供給源3から気体をワーク61とマスタ62に加圧導入し、加圧導入が完了したら第1開閉弁31を閉じる。
【0089】
ここでは、前述したように、電空レギュレータ2で圧力制御(たとえば、設定値の500kPaとなるように制御)しながら気体の加圧導入を実施し、加圧導入の開始から所定時間(たとえば、10秒)が経過したら、その時の圧力状況にかかわらず(例えば500kPa±40kPaといった設定範囲から外れていても)、第1開閉弁31を閉じるように制御する。
【0090】
加圧導入完了後の封止時(第1開閉弁31を閉じた時)の圧力Pt(第1圧力計41の示す圧力)が設定範囲(例えば500kPa±40kPa)から外れている場合は、その時点で検査エラーとし、設定範囲内にあれば、さらに第2開閉弁32、第4開閉弁34を閉じて、ワーク61とマスタ62をそれぞれ、加圧された独立の閉空間にする(ステップS106)。
【0091】
その後、温度変化(圧力変化)がある程度落ち着くまでの整定期間の経過を待ち、その後の測定期間に、ワーク61側の閉空間とマスタ62側の閉空間との差圧の変化を差圧計43で測定する(ステップS107:測定ステップ)。漏洩検査工程で測定された差圧の変化量(漏洩検査工程の測定開始時の差圧と漏洩検査工程の測定終了時の差圧との差分)をΔPrとし、漏洩検査工程の測定ステップでの測定期間の長さ(時間)をTrとする。
【0092】
また、検査処理部50は、差圧ΔPrを測定したときのワーク61の内圧を第1圧力計41で測定し、これを検査圧力として記録する(ステップS108〉。たとえば、測定期間の開始時と終了時の中央時における内圧、あるいは、測定期間の開始時における内圧、を第1圧力計41で測定し、これを検査圧力として記録する。測定時のワーク61の内圧(検査圧力)をPtwとする。
【0093】
なお、漏れが大きい場合には、温度変化(温度変化に起因する圧力変化)が落ち着いても、漏れに起因する圧力変化が落ち着く(漏れによって内圧が下降し、この下降によって漏れ自体が少なくなる)までにさらに時間がかかり、温度変化が落ち着くまでの時間と圧力変化が落ち着くまでの時間に差が生じる。また、漏れが大きい場合には、壁面を通して熱が逃げるのではなく、熱自体を含む空気が直接ワーク外に放出される点と、ワーク内の圧力が下がる事(断熱膨張に近い状態となる事で温度低下が進むこと)とに起因して、温度が落ち着くのが、圧力変化が落ち着くより、早い傾向がみられる。したがって、漏れの大小により、整定期間における圧力降下に差が生じる、すなわち、漏れの大小により圧力降下が落ち着くまでの時間(圧力降下に係る時定数)に差が生じる。
【0094】
次に、ワーク61と、マスタ62を減圧して大気開放する(ステップS109:減圧ステップ)。詳細には、第2開閉弁32と第4開閉弁34を開いてワーク61とマスタ62を連通させてから排気弁38を開いて減圧して大気開放する。このとき、第6開閉弁36、第7開閉弁37をさらに開放してもよい。その後、作業者は、ワーク61を交換して次のワークの検査準備を進める。
【0095】
次に、検査処理部50は、温度補償用測定工程で得た差圧ΔPt1(温度補償用測定工程の開始時の差圧と終了時の差圧との差分)から、測定時の検査圧力に対応する温度補償値PH1を、下記式で導出する(ステップS110)。
PH1[Pa]=ΔPt1[Pa]×(Tr[s]/Ta[s])×((Ptw[Pa]+Patm[Pa])/Patm[Pa]) …式1
ここで、Taは温度補償用測定工程での測定時間[s]、Trは漏れ量の測定期間[s]、Ptwは漏れ量測定時のワークの内圧[Pa]、Patmは大気圧(101325[Pa])、である。
【0096】
さらに、PH1[Pa]を[mL/min]を単位とする漏れ量による温度補償値H1[mL/min]に下記式で変換する。
H1[mL/min] = PH1[Pa]×Vw[mL]×60/(Tr[s]×Patm[Pa]) …式2
この式で使用するVwは、ステップS107で漏れ量を測定したときのワークを含む封止された閉空間の、内圧Ptwにおける仮想等価体積(Vw at Ptw)である。参考として、閉空間全体を剛体とする場合のVwは各種の周知の方法で求める。例えば、ワークに水を入れて重さを計る。計測器~ワーク間の配管体積はノギスで直径を計り、メジャーで長さを計ることで、配管内円柱体積を求める。そしてこれらを加算する。又は、ワークと並列に既知の容積(例えば1000ml)を接続し、バルブ開閉前後の圧力(圧力計41)の値から容積を逆算する。バルブ開閉前の圧力に対して開閉後の圧力が1/2ならば、ボイルの法則に基づく逆算により、ワーク側の閉空間の体積は1000mlとなる。
【0097】
次に、検査処理部15は、ステップS107で測定した漏れ量を示す差圧ΔPrを、[mL/min]を単位とする漏れ量Qr[mL/min]に下記式で変換する。
Qr[mL/min] = ΔPr[Pa]×Vw[mL]×60/(Tr×Patm[Pa]) …式3
この式で使用するVwも、ステップS107で漏れ量を測定したときのワークを含む封止された閉空間の、内圧Ptwにおける仮想等価体積(Vw at Ptw)である。そして、検出漏れ量(Qr[mL/min])を温度補償値H1で補正し(ステップS111)、これをさらに、測定時のワークの内圧(検査圧力)が基準の検査圧力であった場合の値に換算した換算漏れ量Qsを求める(ステップS112:換算工程)。
【0098】
なお、被検査体の中空部を含む封止された閉空間(閉じた第2開閉弁32と閉じた第6開閉弁36との間の閉空間(ワーク61の中空部を含む))の体積が該閉空間の内圧に依存して変化するものとして換算を行う。この体積変化を加味した換算を行うために下記式では、δ1:寄与率、δ2:オフセット値 を使用する。
【0099】
換算式の一例を以下に示す。これはハーゲンポアズイユの直管モデルを用いた場合の換算式に、δ1:寄与率、δ2:オフセット値 を適用したものである。
Qs=
δ1×(Qr-H1)×((Ptest×1000+Patm)2-Patm2)/((Ptw×1000+Patm)2-Patm2)-ΔPOS+δ2 ・・・・式4
Qs[mL/min]:換算漏れ量、Qr[mL/min]:検出漏れ量、H1[mL/min]:温度補償値、ΔPOS[Pa]:判定値オフセット値、Ptest[kPa]:基準の検査圧力、Patm:101325[Pa]、Ptw[kPa]:漏れ量測定時のワーク内圧、
温度補償を行わない場合はH1をゼロ「0」とすればよい。オフセット値は、たとえば、季節によって多少変動することへ対応するためのものであり、無くてもよい。但し、後述で示すように、管理者が入力した漏れの有る被検査体情報、漏れ量、又は基準の漏れ量を換算する部分について、オフセット値を利用して対応するようにしても良い。
【0100】
δ1はグラフの傾きを変更する係数であり、δ1による傾きの変更によって基準の検査圧力での換算漏れ量が、基準の漏れ量からずれた分の補正(基準の検査圧力での換算漏れ量が基準の漏れ量と一致するように)をδ2で行っている。
【0101】
なお、δ1=1、δ2=0、とすれば、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の体積が該閉空間の内圧に依存して変化しないものとする場合(閉空間全体を剛体とする場合(すなわち、ハーゲンポアズイユの直管モデルに対応)の式となる。
【0102】
漏れ量測定時のワークの内圧は、発明が解決しようとする課題の項に示した(理由1)~(理由4)などに起因して変動すると共に、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の壁面の一部でも柔体(たとえば、ナイロンチューブ、ポリウレタンチューブ等製の配管や開閉弁等のゴム製弁座など)を含む場合には、該閉空間(漏れ元)の体積がその内圧によって変化する。そして、差圧ΔP[Pa]を漏れ量Q[mL/min]に変換する式Aには漏れ元の体積が含まれる。
【0103】
そのため、基準の検査圧力で測定した場合の最大許容漏れ量である基準漏れ量(Qref[mL/min])と、基準の検査圧力と異なる圧力下で測定された検出漏れ量(Qr[mL/min]あるいはQrを温度補償値H1で補正した値)とを比較しても、ワークの漏れに係る良否を正しく判定することはできない。そこで、漏れ元の内圧による漏れ元の体積変化を含めて、検出漏れ量と基準漏れ量とが同じ圧力条件下の値となるようにステップS112で、前述の式4による換算を行っている。
【0104】
検査処理部50は、換算後の漏れ量である換算漏れ量Qs[mL/min]が、基準漏れ量Qref[mL/min]より大きいか否かを判定する(ステップS113)。換算漏れ量Qs[mL/min]が、基準漏れ量Qref[mL/min]より大きい場合は(ステップS113;Yes)、漏れ有りと判定して(ステップS114)、本処理を終了する。換算漏れ量Qs[mL/min]が基準漏れ量Qref[mL/min]以下ならば(ステップS113;No)、漏れなしと判定して(ステップS115)、本処理を終了する。
【0105】
なお、漏れ量は、[mL/min]を単位とするものであっても [Pa・m3/s]を単位とするものであってもよい。差圧ΔP[Pa]は、前述の式Bにより漏れ量Q[Pa・m3/s]に変換される。
【0106】
また、基準の検査圧力における基準漏れ量Qref[mL/min]を、測定時の検査圧力における漏れ量に以下の換算式で換算して、測定値の漏れ量(Qr、または温度補償有の場合は(Qr-H1))と比較してもよい。
換算後の基準の漏れ量=
δ1×(Qref)×((Ptw×1000+Patm)2-Patm2)/((Ptest×1000+Patm)2-Patm2)-ΔPOS+δ2
【0107】
漏れ量による比較では、基準漏れ量の単位として[mL/min]や[Pa・m3/s]が使用されることが多く、基準漏れ量のベースとなる期間(時間)は[min]であったり[s]であったりするが、比較に当たっては、換算漏れ量と基準の漏れ量のベースとなる期間が同じであればよい。たとえば、換算漏れ量の時間と基準漏れ量の時間の両方を、[min]や[s]以外の[h]や[24h]等の同一時間に統一して比較してもよい。
【0108】
次に、式4のδ1、δ2、の決定方法の一例を示す。
漏れ量は以下の式5で表される。
漏れ量=(πd4/128Lμ)×((P12-P22)/2P2)・・・式5
基準漏れ量を11.03[mL/min at450kPa]とした場合、漏れ量が11.03[mL/min at450kPa]のときに式5を満足する、dとLの任意の組み合わせを定める。ここでは、L:1[mm]としてdを定める。
【0109】
具体的には式5の各値は次のようになる。
漏れ量:11.03[mL/min]=1.83833×10-7[m3/s]、
π:3.141592、
μ(空気の粘性係数20℃、空気(Pa・s)):0.0000181[Pa・s]、
P1:450[kPa G]=551325[Pa[ANR]]、
P2: 0[kPaG]=101325[Pa[ANR]]、
であり、
Lを1[mm]=1/1000[m]とすると、dは0.017448819[mm]=0.017448819/1000[m]、となる。
Lとdには相関関係があり、一方を変えると他方も変わり、この組み合わせは無限にあるが、式5で求まる漏れ量は全て同じとなるので、L又はdのどちらか一方を任意の値として良い。
【0110】
dとLを上記の値とした式5において、P1を変えることで、その圧力P1における漏れ量を求めることができる。11.03[mL/min at450kPa]の漏れ量を示す孔は、圧力が変わると図3のグラフ91に示すような漏れ量を示す。これは、圧力による体積変化を考慮しない場合に対応する。
【0111】
基準漏れ量11.03[mL/min at450kPa]となる柔体(リーク検査装置10において被検査体の中空部を含む封止された閉空間)について、圧力を変えて測定した漏れ量が、たとえば、12.96[mL/min at500kPa]、9.69[mL/min at402kPa]であったとする。
【0112】
上記の3ヶ所を式4に代入すると、
ΔQs=
δ1×(12.96)×(((450)+101.325)2-101.3252)/((500+101.325)2-101.3252)+ δ2
=δ1×(9.69)×(((450)+101.325)2-101.3252)/((402+101.325)2-101.3252)+ δ2
=δ1×(11.03)×(((450)+101.325)2-101.3252)/((450+101.325)2-101.3252)+ δ2
上記の内の少なくとも2つの式を解くと、例えば、δ1=0.8、δ2=2.207、を得られる。
【0113】
すなわち、δ1=0.8、δ2=2.207、とすると 上記3つ式は以下となる。
10.87419943[mL/min at450kPa]
=0.8×(12.96)×(((450)+101.325)2-101.3252)/((500+101.325)2-101.3252)+ 2.207 式4a
11.57348215[mL/min at450kPa]
=0.8×(9.69)×(((450)+101.325)2-101.3252)/((402+101.325)2-101.3252)+ 2.207 …式4b
11.031[mL/min at450kPa]
=0.8×(11.03)×(((450)+101.325)2-101.3252)/((450+101.325)2-101.3252)+ 2.207 …式4c
点12.96[mL/min at500kPa]を通る線(式4aのグラフ)は、10.87419943[mL/min at450kPa]の点を通り、点9.69[mL/min at402kPa]を通る線(式4bのグラフ)は、11.57348215[mL/min at450kPa]の点を通る、というように少しずれがある。
【0114】
11.031[mL/min at450kPa]を通る線の式、すなわち、式4cに対応する以下の式、
ΔQs=0.8×(11.03)×(((450)+101.325)2-101.3252)/((Ptw+101.325)2-101.3252)+ 2.207
において、Ptwをたとえば、380~520[kPa]のように変化させて得られるグラフ92を図3に示す。この場合、12.96[mL/min at500kPa]、9.69[mL/min at402kPa]、11.03[mL/min at450kPa]の近くを通る曲線が得られる。
【0115】
たとえば、図2のステップS111で求めた検査圧力下での漏れ量(Qr-H1)と、グラフ92に従って基準の漏れ量を検査圧力下での漏れ量に換算した漏れ量(換算後の基準の漏れ量)とを比較して、漏れあり/なし、の判定を行うようにしてもよい。
【0116】
換算式の他の一例を以下に示す。この式は、換算結果が実測値と近似するように適宜に設定したものである。
【0117】
Q[mL/min]=δ2+δ1×(Ptw-δ3)×δ2×((101.325+Ptw)2-101.3252)/((101.325+δ3)2-101.3252)・・・・式6
補正係数δ1:0.00238242345067852
δ2:402[kPa]の時に9.69[mL/min]漏れるので、「9.69」[mL/min]
δ3:9.69[mL/min]漏れる時に402[kPa]なので、「402」[kPa]
たとえば、12.96[mL/min at500kPa]であるから、この条件を満たすように、補正係数δ1を求めると、補正係数δ1:0.00238242345067852 を得る。
【0118】
また、たとえば、11.03[mL/min at450kPa]であるから、この条件を満たすように、補正係数δ1を求めると、補正係数δ1:0.00238438860741623 を得る。式6は、たとえば、9.69[mL/min at402kPa]を基準とした式であるので、漏れ検査の管理者が基準とする漏れの有る柔体で実測した12.96[mL/min at500kPa]や、予め定めた基準値である11.03[mL/min at450kPa]を基準とした式として補正係数δ1を求めても良い。
【0119】
δ1、δ2、δ3は実測値、又は予め定めた基準値の中から任意の、少なくとも2つの値から求めることができる。式6を用いると、12.96[mL/min at500kPa]、9.69[mL/min at402kPa]、11.03[mL/min at450kPa]、とほぼ同値となる曲線が得られる。この曲線を、各圧力下での基準の漏れ量(基準値)[mL/min]として、測定値の漏れ量[mL/min]と比較しても良い。11.03[mL/min at450kPa]となる補正係数δ1の式6に対応するグラフ93を図3に示す。実測値とかなり近似する。
【0120】
換算式は、数点のサンプル点からそれらを通る近似曲線を自動的に作成するプログラムを利用して作成されてもよい。たとえば、9.69[mL/min at402kPa]、11.03[mL/min at450kPa]、12.96[mL/min at500kPa]を通る近似曲線の式をプログラムに自動的に作成させ、これを換算式に適用してもよい。
【0121】
次に、測定値の漏れ量Qr(測定時の圧力とペア)の方を、予め定める基準値とペアの圧力下(基準の検査圧力)での値となるように補正して、予め定める基準値と比較する例を示す。下記の例は差圧ΔPs[Pa]を[mL/min]に換算してグラフ化したもので、かつ、漏れ量を示す関数を、圧力(x)に関係する部分をf(x)とし、圧力(x)に関係のない部分をbとしてf(x)+b とした場合の例を示す。bは、x=0の時にy軸との交点(シフト)である。
【0122】
1.近似曲線を自動的に作成するプログラムに漏れ量Qrと測定時の圧力の値を複数組入力して近似曲線を求めさせ、その近似曲線の式を表示させる。2組の入力であれば線形(一次関数)しか求めることができないが、3組以上の入力があれば多項式(複次関数)を求めることができる。
2.表示された近似曲線の式が、y=f(x)+b、例えばf(x)=0.001xであったとする。
3.予め定めた基準値が、例えば45[mL/min at450kPa]であったとすると、換算前の漏れ量Qr(ペアとなる測定時の検査圧力はPrとする)を、予め定める基準値とペアとなる圧力下(at 450kPa)での値に換算する式は、換算漏れ量Qs[mL/min at450kPa] =換算前の漏れ量Qr [mL/min]-(f(Pr[Pa])+b)+(f(基準圧力450000[Pa])+b)
となる。
【0123】
換算前の漏れ量Qrが、たとえば50.0[mL/min at500kPa]であった場合に、これを450kPaでの値に換算すると、換算漏れ量Qs[mL/min at450kPa]= 換算前の漏れ量50[mL/min at500kPa]-(f(Pr:500000[Pa])+b)+(f(基準圧力:450000[Pa])+b)が得られる。
上述の換算例はf(x)=0.001x のように一次関数とした例だが、f(x)が複次関数であっても同様に求められる。
この得られたQs[mL/min at450kPa]の方を、予め定める基準値(45[mL/min at450kPa])と比較しても良い。
【0124】
次に、最低限2点(漏れ量と検査圧力のペアを1つの点とする)から、仮想等価体積Vwの影響を求め、その影響を反映させて漏れ量を圧力補正する方法について説明する。この方法では、後述する図7の流量計73や予め定めた基準値と同じ漏れ量を示す被検査体(基準漏れ量サンプル)を用いなくて良く、たとえば、発注元からの図面指定で最大漏れ量を指定されている場合や、理論値から最大漏れ量を設定する場合などに対応可能となる。
【0125】
まず、仮想等価体積Vwを所定値として、予め定めた基準値が10[mL/min]at500[kPa]であった場合には、式5にこれを代入して、10[mL/min]at500[kPa]を通過する穴径d-管長Lの組み合わせを求め、後述する図8のグラフ95の様な検査圧力が変化した場合の理論漏れ量を求める。ここでは説明を簡素化する為に、本来は図23に示すようなグラフだが、これを一次関数として図4に示す。
【0126】
次に、漏れサンプルの漏れ量を2点以上測定する。この漏れサンプルは、予め定めた基準値と同じ漏れ量を示す基準漏れ量サンプルでなくて良い。測定した2点が、例えば6.4[mL/min]at400[kPa]、9.6[mL/min]at600[kPa]であった場合には、一次関数の場合には図5のような形となる。図5のグラフは8.0[mL/min]at500[kPa]を通過するが、図4のように、10[mL/min]at500[kPa]を通過していないし、傾きも異なる。理由は下記3点がある。
【0127】
1点目:漏れサンプルに開いている孔径(実際には、孔径dと孔の長さLのペア)と予め定めた基準値の漏れ量(漏れ量at検査圧力)を示すワーク(基準漏れ量サンプル)に開いていたと想定される孔径(実際には、孔径と孔の長さのペア)が異なる。
2点目:所定値として仮に定めた500[kPa]での仮想等価体積Vwが実際と異なる。
3点目:検査圧力別の仮想等価体積Vw[mL] が異なる。
【0128】
1点目で、孔の長さを固定した場合には、孔径が大きいほど漏れ量が大きく、図4のグラフは上下方向(漏れ量)方向にシフトし、傾きは変わらない。よって、式4のδ2で補正可能である。図23は、孔の長さが同じで孔径が異なる複数のサンプルについて、検査圧力と漏れ量との関係を対数グラフで示したものである。孔径が変わるとグラフが上下に並行移動していることが分かる。一次関数に簡略化した図4のグラフにおいても同様となる。
【0129】
2点目の仮想等価体積Vwは、式3から明らかなようにVwが大きいほど漏れ量が大きく、図4のグラフは上下方向(漏れ量)方向にシフトし、傾きは変わらない、よって、式4のδ2で補正可能である。
【0130】
3点目の検査圧力別の仮想等価体積Vw[mL]が異なる場合には、図4のグラフの傾きが変わる。たとえば、450kPa時の体積を基準とすれば、450kPaを中心として圧力の増減に応じて漏れ量が変わるので、450kPaの箇所を中心にグラフの傾きが変わり、それに伴い切片も変わる。よって式4のδ1およびδ2で補正可能である。
【0131】
そこで、傾きが図5のグラフと同じとなるδ1と、高さが同じ(基準値の10[mL/min]at500[kPa]を通る)となるδ2を求めると、予め定めた基準の検査圧力(漏れ量at検査圧力)とは異なる検査圧力で漏れ量を測定した場合であっても、基準の検査圧力での漏れ量を推定できる図6を得ることが出来る。
【0132】
漏れに関するワークの合格・不合格の判定には、測定値の漏れ量を、基準の漏れ量とペアの検査圧力下での値に換算して基準の漏れ量と比較する方法Aと、基準の漏れ量を、測定値の漏れ量とペアの検査圧力下での値に換算した換算基準値と測定値の漏れ量とを比較する方法Bとがある。図6は、方法Bで比較するための換算基準値として使用できる。また、δ1、δ2と式4があれば、漏れ量(Qr-H1)を、予め定めた基準値の漏れ量(漏れ量at検査圧力)とペアの圧力(基準の検査圧力)下での漏れ量(換算漏れ量Qs)に換算できるので、方法Aにより、固定の基準値と比較することができる。
【0133】
最低限2点から仮想等価体積Vwの影響を求め、漏れ量を圧力補正する方法の具体例を、以下に、2例示す。
【0134】
(具体例1)
最低限2点から漏れ量を圧力補正する、ハーゲンポワズイユの式(グラフ)に代わる方法について説明する。説明の簡素化を図るために、一次関数で近似するものとする。測定値の漏れ量Qr(測定時の圧力とペア)の方を、予め定める基準値とペアの圧力下(基準の検査圧力)での値となるように補正して、予め定める基準値と比較する例を示す。
【0135】
下記の例は差圧ΔPs[Pa]を[mL/min]に換算してグラフ化したもので、かつ、漏れ量を示すf(x)は、y=0.08×(x)×10-3-0 とした場合の例を示す。式4のδ1(傾き)に相当するものが0.08であり、x=0の時にy軸との交点(シフト)であるδ2に相当するものが0である。
【0136】
1.測定値の漏れ量Qr(測定時の圧力とペア)を管理者に測定してもらう。この時に使用してもらうワークが予め定める基準値(基準の検査圧力とペア)と同じ漏れ量(測定時の圧力と基準の検査圧力を同じとした漏れ量が同じ値)を示せば良いが、基準値を理論量で求める場合には、同じ漏れ量を示すことはないので、その場合を例示する。
【0137】
まず、漏れ量Qr(測定時の圧力とペア)の値を用いて、近似曲線を自動的に作成するプログラムに近似曲線を求めさせ、その近似曲線の式を表示させる。
2.表示された近似曲線の式は、y=0. 08×(x)×10-3-0であったとする。
3.予め定めた基準値は、45[mL/min at450kPa]なので、上記式に×=450を代入すると、36[mL/min at450kPa]が得られ、45[mL/min at450kPa]とは9[mL/min at450kPa]の差が生じている。この差は管理者に測定してもらったワークが予め定める基準値と同じ漏れ量を示していなかった差(漏れ出る孔の直径が異なる差)なので、もし基準値と同じ漏れ量を示すワークを用いて、管理者に測定してもらった場合の近似曲線の式を求めると、f(x)は、y=0.08×(x)×10-3+9 となる(式5の孔の直径を変えると、後述のやや弓なりの形状は同じとなり、今例示する一次関数では傾きに相当する部分が例えば略同じとなり、孔の直径差は上下方向にほぼシフトするだけなので、上下方向のシフト量は9となる)。
【0138】
換算前の漏れ量Qrが、たとえば50.0[mL/min at500kPa]であった場合に、これを450kPaでの値に換算すると、49[mL/min at450kPa]= 0.08×(500)×10-3+9が得られる。この得られた49[mL/min at450kPa]を、予め定める基準値(45[mL/min at450kPa])と比較しても良い。
【0139】
ちなみに、予め定めた基準値が45[mL/min at450kPa]の場合、ハーゲンポワズイユの法則を用いた理論値(図3のδ1=1の場合を示すグラフ91に相当)を、例えば一次関数でf(x):y=0.1×(x)とすると、y=0.08×(x)×10-3+9 は図3のグラフ92に相当し、式4のδ1は、実測値から求められる係数/理論値の係数なのでδ1=0.8 δ2=9となる。
【0140】
(具体例2)
ハーゲンポワズイユの式を用いれば、管理者による事前に行う1点の測定のみで、漏れ量を圧力補正(漏れ量を、例えば予め定める基準値とペアとなる圧力下での値に換算)することができる。しかし、以下の3つの問題があるので2点以上の事前測定が必要となる。
【0141】
その1:被検査体(ワーク)の中空部を含む封止された閉空間の体積が圧力で変わらない場合には、事前の測定なしに、ハーゲンポワズイユの式を用いて漏れ量を圧力補正(漏れ量を、例えば予め定める基準値とペアとなる圧力下での値に換算)することが出来るが、大抵の場合、閉空間の体積が圧力で変わるので、ハーゲンポワズイユの式の傾きとは違う傾きとなってしまう(仮想等価体積Vwが圧力で変わる為に、例えば式4のδ1のような変数を新たに求める必要がある)。
【0142】
その2:管理者による測定に使用する漏れの有る被検査体(ワーク:予め定めた漏れ限度サンプル)が、予め定める基準値(漏れ量と圧力とペア)と同じ値を示すとは限らない。
【0143】
その3:漏れ量を示すf(x)+bとして一次関数を求めるのには、最低限2点の測定が必要である。やや弓なりに湾曲するハーゲンポワズイユの式を応用した式6でも同じく2点の測定が必要である。
【0144】
上述のように、少なくとも2点の設定入力を受ければ、傾き(例えば式4のδ1)を求めることが出来、漏れ量を圧力補正する式やグラフを作成することが出来るが、予め定めた漏れ限度サンプルが予め定める基準値(漏れ量と測定時の圧力とペア)と同じ値を示すとは限らない問題(上記その2を参照)に関しては、例えば、少なくとも2点の設定入力を受けて作られた式に予め定める基準値の圧力を入力して漏れ量を求め、予め定める基準値の漏れ量との差をオフセット(例えば式4のδ2)を用いて対応すればよい。
【0145】
次に、被検査体の中空部を含む封止された閉空間(閉空間全体を柔体とする場合)の圧力別の体積Vw(仮想等価体積)を求め、この体積Vwを式Aに適用して、差圧[Pa]を漏れ量[mL/min]に変換する場合について説明する。
【0146】
図7は、図1のリーク検査装置10に、仮想等価体積を求めるために可変バルブ71、72および流量計73を追加したものを示している。配管の材質、長さ等はマスター側とワーク側で同一であり、可変バルブ71、可変バルブ72の両方が閉の場合には、これから求める仮想等価体積は同じである。
【0147】
仮想等価体積は以下のステップ1~8で求める。なお、マスター側にある点線部分は3方分岐管(第1配管21が第2配管22と第3配管23の分岐する箇所)、分岐管~可変バルブ72までの配管(第3配管23)、可変バルブ72の入口から可変バルブ72内の閉止部分までの体積(仮想等価体積)を示す。
【0148】
<ステップ1>
可変バルブ71、可変バルブ72の両方を閉とし、漏れ量が0[mL]であることを確認する。
【0149】
<ステップ2>
リーク検査装置10に、体積(仮想等価体積)の仮の値を入力する。例えば526.8 [mL]を仮入力する。
【0150】
<ステップ3>
ワーク側に加圧(例えば450[kPa])し、流量計73を見ながら、予め定めた基準値(漏れ量例えば10[mL/min]at450[kPa])近くとなるように、可変バルブ71を操作して、バルブ開度を固定する。
【0151】
<ステップ4>
ワーク側はステップ3で固定した可変バルブ71の開度を維持し、マスター側は可変バルブ72を閉とし、仮入力した526.8[mL]での漏れ量Aと流量計73で測定した漏れ量Bの両方を測定する。漏れ量Aは差圧計43で測定した差圧値を、体積として仮入力した526.8[mL]を適用して式Aで[mL/min]に変換したものである。
【0152】
例えば、3回の平均値がリーク検査装置側は8.929865517[mL/min]、流量計73は9.326666667[mL/min]であった場合には、450[kPa]での仮想等価体積は、仮入力の仮想等価体積×(流量計73の漏れ量/リーク検査装置側の漏れ量) で求めることができるから、
550.20851[mL](=526.8[mL]×9.326666667[mL/min]/8.929865517[mL/min])が得られる。
【0153】
<ステップ5>
前述した式5(漏れ量=(πd4/128Lμ)×((P12-P22)/2P2)・・式5)を用いて450[kPa]の時に9.326666667[mL/min]の漏れ量を示す孔の関係を求める。ここでは、孔の長さL:1[mm]として、孔の直径dを定める。
【0154】
漏れ量:9.326666667[mL/min]=1.55454×10-7[m3/s]、
π:3.141592
μ(空気の粘性係数20℃、空気(Pa・s)):0.0000181[Pa・s]、
P1:450[kPa G] =551325[ Pa[ANR] ]
P2: 0[kPa G] =101325[ Pa[ANR] ]、
L:1[mm]=1/1000
とすると、d:孔の直径は16.7706417982308[μ]=16.7706417982308/1000000[m]、となる。
【0155】
孔の長さと孔の直径のどちらか一方を仮固定すると他方が求まり、どのような組み合わせでも、孔に印加する圧力[kPa]を決めれば漏れ量[mL/min]が求まるので、式5のd、Lを上記の値として、圧力P2と漏れ量との関係を示すグラフを作成すると、図8のグラフ95のようになる。
【0156】
図8のグラフ95は前述した
式A(Q[mL/min] = ΔP[Pa]×Vw[mL]×60/(Tdet×Patm[Pa]) …式A)のΔP[Pa]のみ圧力補正したものであり、Vw[mL]は試験圧力(450[kPa])下の値のまま変化せず固定値としたものである。
【0157】
<ステップ6>
ステップ4と同様に例えば検査圧力範囲の上限(400[kPa])と下限(500[kPa])で、漏れ量がどの程度変化するのかを流量計73で測定する。図8のグラフ96は流量計73で測定された値をプロットしたもので、式AのΔP[Pa]とVw[mL]の両方を圧力補正したものと同値となる。
【0158】
<ステップ7>
図8のグラフ95とグラフ96の差が、式AのVw[mL]が圧力補正されるか否かによって生じる差である。例えば450[kPa]での仮想等価体積は550.20851[mL]であったが、グラフ95とグラフ96の比較からも判るように400[kPa]での仮想等価体積は450[kPa]の時よりも少し多くしないと流量計83での測定値と一致せず、500[kPa]での仮想等価体積は450[kPa]の時よりも少し少なくしないと流量計83での測定値と一致しない。
【0159】
具体的には、仮想等価体積は
558.3393406[mL]at400[kPa]=550.20851[mL]×1.014777726倍(後述のk=1.014777726)
550.20851[mL]at 450[kPa] =550.20851[mL]×1倍(後述のk=1)
543.2902174[mL]at 500[kPa]==550.20851[mL]×0.987426053倍(後述のk=0.987426053)
となる。
【0160】
<ステップ8>
仮想等価体積は、k×Vw [mL]で表され、kは検査圧力別の係数値であることから、上記3点の仮想等価体積から、検査圧力とkの関係を示す近似式を作成する。例えば1次関数式、2次関数式等(例えば=(( 4×10-7)×(検査圧力2)) -( 0.0007×検査圧力) + 1.214)を設定することで、実際の検査圧力でのkを求めて、実際の検査圧力での仮想等価体積を求める。
【0161】
なお、ステップ4で行った検査圧力(上限(400[kPa])と下限(500[kPa])とするの)ではなく、ステップ3の450[kPa]と他点(例えば500[kPa])のように2つの異なる圧力での漏れ量がどの程度変化するのかを測定すれば、少なくとも2点での測定で仮想等価体積を求める(推定する)ことができる。
【0162】
圧力別のKの値を示すグラフは、図9に示すように、測定系の各種の条件で異なることが分かる。よって、実際に漏れ検査に使用するリーク検査装置に対応するものを使用する必要がある。図9は、図20図22にかかわる実験の予備段階の試験で得た結果である。
【0163】
図2のステップS106の漏洩検査工程で測定した差圧ΔPr[Pa]から漏れ量[mL/min]を求める場合の換算は以下のようになる。
【0164】
温度補償値は、PH1=ΔPt1(Tr/Ta)×((Ptw+Patm)/Patm) を用いる。まず、ハーゲンポアズイユの直管モデルを用いて、測定値の差圧ΔPr[Pa]を、温度補償ありで、基準の検査圧力下での差圧(換算差圧ΔPs[Pa])に下記式7で変換する。
【0165】
ΔPs=(ΔPr-PH1)×((Ptest×1000+Patm)2-Patm2)/((Ptw×1000+Patm)2-Patm2)-ΔPOS ・・・・式7
ΔPs[Pa]:換算差圧値、ΔPr[Pa]:検出差圧値、PH1[Pa]:温度補償値、ΔPOS[Pa]:判定値オフセット値、Ptest[kPa]:基準の検査圧力、Patm:101325[Pa]、Ptw[漏れ量測定時のワーク内圧[kPa]
次に、ΔPsを漏れ量ΔQs[mL/min]に変換する。このとき、前述の係数値kを使用する。
【0166】
Qs[mL/min] = ΔPs[Pa]×kVw[mL]×60/(Tdet×Patm[Pa]) …式8
kはPtw[漏れ量測定時のワーク内圧[kPa]での値、たとえば、ステップ8で求めた検査圧力とkの関係を示す近似式を用いて、Ptwにおけるkを求める。Vwは、Ptest[kPa]:基準の検査圧力、における仮想等価体積である。
【0167】
図7の可変バルブ72に記した点線部分は3方分岐管、分岐管~可変バルブ72までの配管、可変バルブ72の入口から可変バルブ72内の閉止部分までの体積(仮想等価体積)を示すことは先に述べたが、マスタ接続口13とマスタ62との配管を少し長め(例えば20cm長め)として直結(3方分岐管、分岐管~可変バルブ72までの配管、可変バルブ72を設けずに直結)し、直結前の例えば10[mL/min]at450[kPa] 近くの9.326666667[mL/min]と同じ計測値を示すまで配管を少しずつ短くしていく。
【0168】
例えば10cm長めのところで同じ計測値を示したならば、点線部分の450[kPa]での仮想等価体積と同等の配管長さ(例えば10cm)を得ることができる。工場等実際の漏れ測定では点線部分の仮想等価体積測定用部材は仮想等価体積を求めた後なので、不要であり、例えば10cm長めの配管とすれば、コストダウンを計ることが出来る。
【0169】
ところで、例えば、図20図21の差は、0.9mのナイロンチューブに対して、ナイロンチューブより柔らかい5.0mのポリウレタンチューブを使用した点のみである。加圧の程度(400[kPa]の時や500[kPa]の時などの加圧圧力の違いの程度)でチューブが膨らんでいるとは思うが、チューブは略均一に作られていると考えられるから、部分的な変形を特定することは不可能である。
【0170】
また、実体積に対して仮想等価体積Vwが例えば300%(図9のk=3.0の場合)位になれば、例えば変形を、変位センサを用いて0.1mm以上の差として捉えることができるが、見た目では実体積とほぼ変わらないことを鑑みると、kが±0.1のような程度の変形では変位センサで捉えることは不可能であり、従来は、被検査体が剛体であれば、体積変化は無いと考えられていた。
【0171】
本願発明は、被検査体が剛体であっても検査系の一部にでも柔体(たとえば、ナイロンチューブ、ポリウレタンチューブ等製の配管や開閉弁等のゴム製弁座など)があれば、封止された閉空間内の体積が圧力に応じて変化することを見出したからこそ至ることができた発明である。
【0172】
次に、少なくとも2点での測定で仮想等価体積を求める(推定する)ことができることを詳述する。
【0173】
図20のような場合だと検査圧力範囲の400~460kPaの範囲は、δ1を「1」、H1を「0」、ΔPOSとδ2を「0」とした式4を用いて、任意の1点のみで計算できる、ハーゲンポワズイユの直管モデルと実際の漏れが大変よく一致している。検査圧力の許容範囲を3σ(標準偏差99.7%)とした場合の2σ(標準偏差95.4%)に相当する2点を管理者に測定してもらった場合を想定すると、この2点は、ほぼハーゲンポワズイユの直管モデル上に位置し、この結果から検査圧力範囲の全範囲で予め定めた基準値に基づく判定で誤判定が生じないことが判る。
【0174】
すなわち、漏れの有るワークを用いた任意の2点の計測を用い、図20のような条件だと、検査圧力範囲の全範囲で、被検査体の中空部を含む封止された閉空間の体積Vwは圧力によって変化しない剛体として良いことが判る(仮想等価体積は圧力を変えても変化しないと言い直すことも出来る)。
【0175】
さらに測定点を増やせば、例えば460~470 kPa当たりで例えばナイロンチューブ等の変形が始まり(図20のみではなく、図9の変曲点Aも参照)、例えば460kPaの場合には剛体として設定した体積Vwを0.998倍、470kPaの場合には0.996倍、480kPaの場合には0.993倍、490kPaの場合には0.990倍、500kPaの場合には0.986倍のように、検査圧力範囲の区間の一部を、閉空間全体を柔体として漏れを求め、残りの区間(例えば400[kPa]~460[kPa])を、閉空間全体を剛体として漏れを求めることで(剛体から柔体となる変曲点を求めることで)、判定精度を高めることができる。但し、適切な2点のみの測定では、例えば500 kPa近い測定では漏れ換算誤差が大きくなる。
【0176】
図21のような場合だと検査圧力範囲の400[kPa]~410[kPa]までは、ハーゲンポワズイユの法則を用いた直管モデルの漏れ量と実験値はほぼ一致するが、410[kPa]~500[kPa]の間は少しズレが目立つ。例えば410~420 kPa当たりで例えばポリウレタン等の変形が始まっていると考えられる。2σ(標準偏差95.4%)に相当する2点を管理者に測定してもらうと、今度は検査圧力範囲の全範囲で閉空間の体積Vwが圧力によって変化する柔体としないと誤判定が生じることが判る(例えば2点からkを求め仮想等価体積を求めることができるが、あくまでkは2点間の平均でしかないので換算誤差が大きくなる。)。
【0177】
さらに測定点を増やせば、各圧力範囲別の式4ではδ1や仮想等価体積を求める(k×Vw [mL])圧力別のKの値を求めることができ、検査圧力範囲の区間の一部(例えば400[kPa]~410[kPa])を、閉空間全体を剛体とし、残りの区間(例えば410[kPa]~500[kPa])を、柔体閉空間全体を柔体として漏れを求めることで判定精度を高めることができる。但し、適切な2点のみの測定では、あくまで2点間の平均のKの値しか求めることができないので、例えば400 kPa近い測定では漏れ換算誤差が大きくなる。
【0178】
図22のような場合だと検査圧力範囲の全範囲で、ハーゲンポワズイユの法則を用いた直管モデルの漏れ量と実験値は一致しない。従ってかなり低い圧力(例えば200 kPa)で治具等の変形が始まっていると考えられる。また、例えば410~420 kPa当たりで例えばポリウレタン等の追加の変形が始まっていると考えられる。従って測定点を増やせば、仮想等価体積が途中で変わる変曲点を求めることもでき、漏れを求める上での判定精度を高めることができる。但し2点のみの測定では、あくまで2点間の平均のKの値しか求めることができないので、変曲点をその区間に含むか否かでも漏れ換算誤差が大きくなる。
【0179】
上述のように、管理者に、漏れのあるワークについて少なくとも2点の測定を依頼し、リーク検査装置10に入力することを想定しているが、検査圧力範囲の全範囲や、例えば検査圧力範囲外も含めて、多点での測定を自動化し、自動で換算を行うのに必要なデータ(閉空間の内圧とその内圧での漏れ量とのペア)を収集するようにしても良い。
【0180】
図10は、図19に示した被検査体b(不良品)、被検査体c(良品)の各検査圧力における漏れ量を、基準の検査圧力(450kPa)で漏れ量を測定した場合の値となるように前述の式4で換算した結果を示している。この例では、基準漏れ量11.2mL/minとペアを成す基準の検査圧力を450kPaとする。
【0181】
図10のグラフB2は、図19の被検査体bに係るやや弓なりに湾曲したグラフBを本発明に係る換算(封止された閉空間の体積が該閉空間内の圧力によって変化することを加味した換算)を施したグラフであり、図10のグラフC2は、図19の被検査体cに係るやや弓なりに湾曲したグラフCを本発明に係る換算(封止された閉空間の体積が該閉空間内の圧力によって変化することを加味した換算)を施したグラフである、グラフB2、C2はいずれも検査圧力の許容範囲内についてのみ示してある。
【0182】
グラフB2、C2に示されるように、換算後の被検査体bの漏れ量および換算後の被検査体cの漏れ量は、検査圧力にかかわらず、それぞれ略一定の値になっている。したがって、検査圧力の許容範囲(この例では400kPa~500kPa)内のどの圧力で測定が行われたとしても、換算後の漏れ量と固定値の基準漏れ量11.2mL/minとの比較により、被検査体(ワーク)の漏れの良否を正しく判定することができる。
【0183】
不良品である被検査体bの場合、たとえば、基準の検査圧力450kPaより低い410kPaの検査圧力で測定した検出漏れ量(グラフBの410kPaでの値)と、基準漏れ量11.2mL/minを比較すると、検出漏れ量が基準漏れ量より少ないので良品と誤判定される。しかし、本発明に係る換算を行って得た漏れ量(換算漏れ量)と基準漏れ量との比較では、換算漏れ量(グラフB2の410kPaでの値)は基準漏れ量より多くなり、不良品であると正しく判定される。
【0184】
良品である被検査体cの場合、たとえば、基準の検査圧力450kPaより高い490kPaの検査圧力で測定した検出漏れ量(グラフCの490kPaでの値)と基準漏れ量11.2mL/minとを比較すると、検出漏れ量が基準漏れ量より多いので不良品と誤判定される。しかし、本発明に係る換算を行って得た換算漏れ量(グラフC2の490kPaでの値)と基準漏れ量との比較では、換算漏れ量が基準漏れ量より少なくなり、良品であると正しく判定される。
【0185】
図11は、図2の流れ図に従って漏れ検査を行った場合のワーク61、マスタ62の内圧等の変化状況を模式的に示すグラフである。ワーク61の内圧は、第1圧力計41で測定されたものを示し、ワーク61とマスタ62との差圧は、差圧計43で測定されたものを示している。マスタ62の内圧は、第2圧力計42で測定されたものを示すべきだが、グラフ81より漏れ量の少ないグラフ82よりもさらに上にグラフ82と略同じような曲線として描かれる(図示省略)。
【0186】
理論上は、「差圧計43の測定値」=「第1圧力計41の測定値」-「第2圧力計42の測定値」であるので、差圧計43は不要なのだが、高精度に差圧を測定する必要があるので、別途専用の差圧計43を設けている。
【0187】
図11には、グラフの一部(漏れ測定期間におけるワーク内圧の変化)を拡大して示してある。圧力の変化は誇張して示してある。拡大表示しない場合には図17のようになる。
【0188】
図11に示すように、図2のステップS104でワークとマスタをそれぞれ大気開放の状態から封止して独立の閉空間にすると(時刻t0)、ワーク自体が持っている熱により、ワークの内圧は、一旦、上昇し、その後、放熱により緩やかに低下する。ステップS104の温度補償用測定工程では、図11の期間Taにおける圧力低下がΔPt1として測定される。
【0189】
ワーク61は製造後(例えば溶接終了後)の所定時間後に検査される場合があるので、圧力低下が測定されやすく、他方マスタは周囲温度と同じ場合が多いので、この間の圧力変化は測定されない。従って、第1圧力計41で測定される圧力低下と同じ値が、差圧計43でもΔPt1として測定される。
【0190】
その後、ステップS106の漏洩検査工程の加圧ステップ(図11のt3~t4の期間)において、ワークに気体が加圧導入されることで、ワークの内圧はPtまで上昇する。第1開閉弁31の封止後は、温度低下と漏れとに起因してワークの内圧は次第に降下する。封止後、整定期間(図11のt4~t5の期間)の経過をまつ間に内圧の降下は次第に落ち着く。整定期間経過後の測定期間(Tdet;t5~t6)に漏れ量は測定される。漏れ量は、測定期間の開始時(t5)のワークの内圧とマスタの内圧との差圧ΔP1(差圧計43で計測)と、測定期間の終了時(t6)のワークの内圧とマスタの内圧との差圧ΔP2(差圧計43で計測)との差が、検出差圧ΔPrとして測定される(ΔPr=(ΔP2-ΔP1))。
【0191】
通常、ワークに気体が加圧導入されてから第1開閉弁31の封止にいたるまで、所定の期間を設ける。また、マスタは漏れがないので温度低下にのみ起因してワークの内圧は次第に降下する。
【0192】
図11のグラフ81は漏れの多い不良品のワークW1に関するものであり(例えば図10の被検査体bに相当するものであり)、グラフ82は漏れの少ない良品のワークW2に関するものである(例えば図10の被検査体cに相当するものである)。時刻t4までワークW1とワークW2の第1圧力計41で測定される内圧は同じ変化となっている。加圧導入完了時の圧力Ptは、漏れの多い不良品のワークW1、漏れの少ない良品のワークW2共に同圧であるが、整定期間中の圧力降下は、漏れの少ないワークW2より漏れの多いワークW1の方が大きい。そのため、測定期間開始時(t5)のワークの内圧は漏れの多いワークW1の方が低圧になる。
【0193】
この結果、漏れの無いマスタ62との差圧(差圧計43で測定される差圧)は、漏れの少ないワークW2より漏れの多いワークW1の方が大きくなる。但し、図中は拡大表示されているので、差圧計43で測定される差圧(例えばΔPt1)や第1圧力計41で測定された整定期間中の圧力降下は、極めて小さい。これを拡大表示を行わないと図17のような表示となる。
本発明による換算では、測定時のワークの内圧(検査圧力)が低いほど大きな倍率が適用される。これは例えば、式4のPtestがワークW1とワークW2で同じであるのに対しPtwがワークW1<ワークW2である事に起因し、漏れが少なくPtwが大きいほど、式4によるΔPr[Pa](検出差圧値)に乗じられる換算倍率は小さくなる。よって、漏れの少ないワークW2に適用される倍率より漏れ量の多いワークW1に適用される倍率の方が大きくなる。
【0194】
図11の例において、第1圧力計41で測定されたt5でのPtからの圧力降下分ΔP1と、t6でのPtからの圧力降下分ΔP2との差圧(ΔP2-ΔP1)は、漏れの多いワークW1>漏れの少ないワークW2となり、また、マスタ62との差は差圧計43を用いて測定され、ΔP1、ΔP2から引かれるマスタ62の差圧(ΔPm=マスタ62のΔP2-ΔP1)は同じなので、漏れの多いワークW1の検出差圧をΔPr1、漏れの少ないワークW2の検出差圧をΔPr2とすると、この2者もまた ΔPr1 > ΔPr2 の関係にある。
【0195】
検出差圧であるΔPr1を、[mL/min]を単位とする漏れ量に変換したものを検出漏れ量Qr1[mL/min]、検出差圧であるΔPr2を、[mL/min]を単位とする漏れ量に変換したものを検出漏れ量Qr2[mL/min]とする。
【0196】
図12は、図11のワークW1、W2について、検出漏れ量[mL/min]と、温度補償なしの場合の換算漏れ量[mL/min]と、温度補償ありの場合の換算漏れ量を示している。この例での、漏れの多いワークW1は、第1圧力計41で測定される内圧は低いが、差圧計43で測定されるマスタ62との差圧(検出差圧ΔPr1)は大きく、かつ、Ptwが小さいがために本発明による換算は大きな倍率が適用される。この結果、例えば漏れ量Qr1 [mL/min]に変換する前の差圧ΔPは大きい値を示す。漏れの少ないワークW2は、第1圧力計41で測定される内圧は高いが、差圧計43で測定されるマスタ62との差圧(検出差圧ΔPr2)は小さく、かつ、Ptwが大きいがために本発明による換算は小さな倍率が適用される。この結果、例えば漏れ量Qr2[mL/min]に変換する前の差圧ΔPは小さい値を示す。
【0197】
温度補償なしの場合の換算漏れ量は、漏れの多いワークW1については、検出漏れ量Qr1を高倍率して得た値であり、漏れの少ないワークW2については、検出漏れ量Qr2を低倍率して得た値である。温度補償なしの場合、漏れの少ないワークW2については、本来合格であるにもかかわらず不合格となっている。この現象は、ワークが例えば溶接終了後、マスタと同じ温度となるまで十分な冷却を行わずに、熱を持っている状態で検査したために不合格となっている状態を示すもので、もし、十分な冷却を行なっていれば、温度補償なしの換算値は温度補償ありの換算値と同値となり、漏れの少ないワークW2については、合格となる。
【0198】
温度補償ありの場合の換算漏れ量は、温度補償なしの場合の換算漏れ量からさらに、それぞれの倍率で補正後の温度補償値H1を減算した値である。漏れの多いワークW1については、図10の被検査体bを示すグラフBと空気圧450kPaとの交点、すなわちグラフB2との交点に相当する。これを温度補償ありを示す図18ではb点として示す。漏れの少ないワークW2については、図10の被検査体cを示すグラフCと空気圧450kPaとの交点、すなわちグラフC2との交点に相当する。これを図18ではc点として示す。
【0199】
漏れの多いワークW1は元々、不合格品であるため、換算漏れ量と基準値(基準の漏れ量)との比較においても不合格品となる。漏れの少ないワークW2は元々、合格品であるため、換算漏れ量値と基準値との比較においても合格品となる(図12の温度補償ありの換算値を参照)。
【0200】
図13は、図11に、加圧導入完了時の圧力が図11の圧力Ptより許容範囲内で低めとなった場合(例えば図10図18における空気圧420kPa強のような場合)における漏れの比較的多い(ワークW1の漏れ量と基準値との例えば中間の漏れ量を示す)ワークW1’の内圧の変化を示すグラフ83、加圧導入完了時の圧力が圧力Ptより許容範囲内で高めとなった場合(例えば図10図18における空気圧480kPa弱のような場合)における漏れの比較的少ない(ワークW2の漏れ量と基準値との例えば中間の漏れ量を示す)ワークW2’の内圧の変化を示すグラフ84を加えて示したものである。
【0201】
圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’の封止後(t4以降)の圧力降下は、グラフ83が示すように緩やかであり、圧力Ptの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’に係るグラフ82(Pt:450kPaでの測定点 図18では c点)の封止後の圧力降下に近い(c点と同じ圧力降下を示す 図18では c’点)。そして、図13の例では、圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’の検出差圧ΔPr3は、圧力Ptの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’の検出差圧ΔPr2と同じになっている(図18のc点とc’点は同じ漏れ量を示す)。
【0202】
一方、圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’の封止後(t4以降)の圧力降下は、グラフ84とグラフ81を対比すれば分かるように、圧力Ptの検査圧力で測定した漏れの多いワークW1に係るグラフ81(Pt:450kPaでの測定点 図18では b点)の封止後の圧力降下に近いb点と同じ圧力降下を示す 図18では b’点)。そして、図13の例では、圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’の検出漏れ量ΔPr4は、圧力Ptの検査圧力で測定した漏れの多いワークW1の検出差圧ΔPr1と同じになっている(図18のb点とb’点は同じ漏れ量を示す)。
【0203】
したがって、本発明の換算を行わずに基準値と比較すると、圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’を良品と誤判定し、圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’を不良品と誤判定することになる。
【0204】
図14は、図13の圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’、および圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’のそれぞれについて、検出漏れ量と、温度補償なしの場合の換算漏れ量と、温度補償ありの場合の換算漏れ量を示している。圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’の検出差圧ΔPr3を、[mL/min]を単位とする漏れ量に変換したものを検出漏れ量Qr3[mL/min]、圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’の検出差圧をΔPr4を、[mL/min]を単位とする漏れ量に変換したものを検出漏れ量Qr4[mL/min]とする。
【0205】
ここでは、圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’については、検出漏れ量Qr3および温度補償値H1がそれぞれ超高倍率に換算され、圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’については、検出漏れ量Qr4、温度補償値H1がそれぞれ超低倍率に換算される。
【0206】
温度補償なしの場合の換算漏れ量は、圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’については、検出漏れ量Qr3を超高倍率して得た値であり、圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2’については、検出漏れ量Qr4を超低倍率して得た値である。温度補償なしの場合、漏れの比較的少ないワークW2’については、本来合格であるにもかかわらず不合格となっている。この現象は、ワークが例えば溶接終了後、マスタと同じ温度となるまで十分な冷却を行わずに、熱を持っている状態で検査したために不合格となっている状態を示すもので、もし、十分な冷却を行なっていれば、温度補償なしの換算値は温度補償ありの換算値と同値となり、漏れの比較的少ないワークW2’については、合格となる。
【0207】
温度補償ありの場合の換算漏れ量は、温度補償なしの場合の換算漏れ量からさらに、それぞれの倍率で補正後の温度補償値H1を減算した値である。すなわち、圧力Ptより低めの検査圧力で測定した漏れの比較的多いワークW1’の温度補償ありの場合の換算漏れ量は、検出漏れ量ΔQr3を超高倍率した値からさらに温度補償値H1の超高倍率を減算して得た値である(Pt:450kPaに換算すると 図18では c”点)。圧力Ptより高めの検査圧力で測定した漏れの比較的少ないワークW2‘の温度補償ありの場合の換算漏れ量は、検出漏れ量ΔQr4を超低倍率した値から温度補償値H1の超低倍率を減算して得た値である(Pt:450kPaに換算すると 図18では b”点)。
【0208】
低い検査圧力で漏れ量の測定が行われたために、漏れの比較的多いワークW1’の漏れ量(検出漏れ量)が少なく測定された場合でも、本発明に係る換算を行うことで、
漏れの多い比較的ワークW1’の換算漏れ量 > 基準値
となり、ワークW1’は不良品と判定される。
【0209】
また、高い検査圧力で漏れ量の測定が行われたために、漏れの比較的少ないワークW2’の漏れ量(検出漏れ量)が多く測定された場合でも、本発明に係る換算を行うことで、
漏れの比較的少ないワークW2’の換算漏れ量 < 基準値
となり、ワークW2’は良品と判定される。
【0210】
次に、ワークの漏れに起因する圧力変動、およびワークの漏れに起因する時間変動(圧力降下が落ち着くまでの時間)について説明する。漏れの大小にかかわりなく温度変化(温度変化に起因する圧力変化)が安定するまでの整定期間(時間)は、あまり差がない。しかし、漏れが多いとその漏れに起因するワークの内圧が大きく下降し、その下降が落ち着くまでの期間の長さは漏れの大小に依存する。そこで、圧力降下(漏れに起因する圧力変化)が落ち着くまで待ってから、漏れ量(差圧ΔPr)を測定することが好ましい。しかし、それを行うには、長い検査時間を要し、検査効率が低下する(多数のワークを効率よく検査できない)。
【0211】
本発明に係るリーク検査装置10では、測定される漏れ量が測定時のワークの内圧(検査圧力)に依存して変化することに着目し、測定された漏れ量を、基準の検査圧力の下で測定した場合の値に換算する。すなわち、漏れが少なく圧力変化が安定している時に測定された検出差圧ΔPrであっても、漏れが多く圧力変化が安定していない時に測定された検出差圧ΔPrであっても、これらを基準の検査圧力下で測定した場合の換算漏れ量ΔQs[mL/min]に換算(検査圧力によって体積が変化することも加味して換算)して漏れ量を判定するので、漏れに起因する圧力変化が落ち着くまで待つことなく、漏れに起因する圧力変化が落ち着く前に漏れ量の測定を行うことができる。
【0212】
詳述すると、漏れ量が大きい場合には、漏れ量が少ない場合に比べて、整定期間における圧力降下が大きくなるので測定時のワークの内圧(検査圧力)が低くなり、漏れ量は少なく測定されるが、本発明に係るリーク検査装置10では、許容範囲内のどの圧力条件で漏れ量(差圧)が測定されたとしても、測定された漏れ量(差圧)を基準の検査圧力で測定した場合の漏れ量に換算(漏れ量ΔQs[mL/min]に換算する場合は圧力による体積変化も加味して換算)するので、測定時の検査圧力にかかわらず、一定の判断基準で漏れ量を判定することができる。
【0213】
次に、漏れ量が大きい場合には、測定時のワークの内圧(検査圧力)が低くなり、漏れ量は少なく測定されるのであれば、基準漏れ量(最大許容漏れ量)を少なめの値とすれば、本願と同等の効果を得られると思われるかもしれないが、そうではない点を説明する。ここでは、被検査体が携帯用ポットである場合の例を用いて同等で無い点を詳述する。例えば350cc、600 cc、1000 cc、の外観形状が全く同じで長さのみ異なる3種類のポットの漏れ検査を、水没試験で行う場合と、リーク検査装置10のように気体を加圧導入して漏れ量を測定する場合について考える。
【0214】
水没試験は周知のように、被検査体に空気圧をかけて水没させ、孔が開いている部分から気泡が漏れ出る様子を目視確認する試験法であり、気泡の発生量は、空気圧 - 表面張力、に略比例し、例え孔があっても(ヘリウムディテクターやエアリークテスターで漏れ量が検出されても)孔の周長に比例する表面張力に打ち勝つだけの空気圧をかけなければ、気泡が漏れ出ることはなく、合格となる。そして、表面張力というデメリットがある分、ポットが壊れない限界空気圧を用いて検査を行って、孔が無いことを確認することができる。
【0215】
つまり、ポットが壊れない限界空気圧を印加するポットの水没試験では、いずれのサイズのポットでも同一の基準を用いている。すなわちポットの容積は勘案されない。表面張力はヤング・ラプラスの式から求められ、水中にある半径Rの気泡は、孔の半径と略同等であるから、ポットの水没試験では、いずれのサイズのポットでも孔の半径が所定値以下なら合格、所定値以上なら不合格という基準であると換言できる。
【0216】
ところが、気体を被検査体に加圧導入した後、封止して漏れ量を測定するエアリークテスターの場合、例えば、350cc、600 cc、1000ccの各サイズに同じ空気圧を印加しても、同じ直径の孔があいていた場合、圧力降下は350ccの方が大きく、1000ccの方が小さい。この事は、漏れ量が大きい場合には、測定時のワークの内圧(検査圧力)が低くなり、漏れ量は少なく測定されるのと同様の現象である。したがって、エアリークテスターで漏れ量を検出する場合には、350ccの方が少なく漏れ量が求められ、1000ccの方が漏れ量は多めに出る。換言すれば、ポットの容積を無視、又は、同じとする同一の検査基準を用いて水没試験を行うことができたポットのようなものを、通常のエアリークテスターに切り替えると、同一の検査基準を用いて検査することができず、混合検査においては、検査毎に基準を入れ替える事となり、検査が煩雑となる。
【0217】
これに対し、本発明に係るリーク検査装置10やリーク検査方法では、気体を被検査体に加圧導入した後、封止して漏れ量を測定する方法を採用しているが、測定した漏れ量を、測定時のワーク(この例ではポット)の内圧に基づいて、所定の基準の検査圧力で測定した場合の値に換算するので、検査毎に基準を入れ替える事なしに混合検査を行うことができる。
【0218】
また、本発明が解決しようとする課題の解決策として、検査圧力の許容範囲を狭く設定すれば済む、と考えられるかもしれないが、そうではないことを説明する。
【0219】
図15は、電空レギュレータ2の設定値500kPa±40 kPa で検査した4271件(拡大図250件)の制御実績を示している。工場の休み時間に電空レギュレータ2に500kPaを設定したが、検査時は他の機器で加圧気体の供給源からの圧縮空気が使われたため、500kPa未満の検査圧力となっている。図中、塗りつぶされた丸印は合格品のワークが検査に合格とされた、もしくは不合格品のワークが検査に不合格した事案を示し、白抜き黒丸は合格品のワークが不合格とされた、もしくは不合格品のワークが合格とされた事案を示している。
【0220】
この図から、誤判定は、必ずしも検査圧力が設定値から大きくずれている場合に限らないことが分かる。すなわち、基準の検査圧力で検査した場合の漏れ量が、基準の漏れ量に近いワークの場合、検査圧力が基準の検査圧力から少し異なるだけで、誤判定が生じる可能性がある。これは図19において、検査圧力の許容範囲を、たとえば440kPaから460kPaのように狭くしても、その中に不良品を合格と誤判定する領域E1や良品を不合格と誤判定する領域E2が含まれることからも分かることである。さらに、図15に示すように、加圧導入後の圧力に大きなバラツキがあるので、検査圧力の許容範囲を狭くすると、加圧導入完了時の圧力が許容範囲に入らずエラーになる事象が多々発生し、検査を円滑に行うことができない。このように、検査圧力の許容範囲を狭くしても、本発明の課題は解決されない。
【0221】
ではなぜ図15のような制御実績が生じたのかについて言及しておくと、工場では日々製品が製造され、製造ラインの更新(リーク検査装置10による検査ラインの設置等を含む)は、昼休み、夜間等就業終了後、土日の休日や年末年始等の製造ラインが休止している時など、日々の製造が阻害されない時間帯で行われる。すなわち、供給源3から電空レギュレータ2に至るまでの配管から分岐して接続されている、加圧気体を動力とする他の機械等は動作が行われていない時間帯であり、極めて安定した条件で、リーク検査装置10の設定が行われるから、図15のような実態はいままで管理者に把握されてこなかったのである。
【0222】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0223】
実施の形態では、検出漏れ量(検出差圧)を換算漏れ量(換算差圧)に換算するための演算として、ハーゲンポアズイユの直管モデルを使用したが、JIS8762-2に定められるオリフィスの流量式を用いても良いし、例えば、予め定めた漏れ限度サンプルの、少なくとも2点間の検査圧力別の漏れ量から求めた、検査圧力と漏れ量との関係を示す一次関数を使用してもよい。さらに3点以上の圧力別の漏れ量を用いた副次関数としても良い。さらに、これらの関数を複数組み合わせても良い(重み付けをして組み合わせる)。
【0224】
また、漏洩検査工程で測定された差圧の変化量(漏洩検査工程での測定開始時の差圧と漏洩検査工程の測定終了時の差圧との差分)であるΔPr[Pa](もしくはΔQr[mL/min])と、これを測定した時のワークの内圧値(検査圧力)とをペアとする場合、検査圧力の測定タイミングは、漏洩検査工程での測定開始時と漏洩検査工程の測定終了時の中央値の時間とすることが好ましい。しかし、他のタイミングで検査圧力が測定されることも許容される。たとえば、測定開始時を検査圧力の測定タイミングとしても良い。
【0225】
検査圧力の測定タイミングを差圧ΔPrの測定開始時とする場合には、図16に示されるように、換算漏れ量と検査圧力との関係を示すグラフは、わずかな下り勾配を示す。本来、換算漏れ量は検査圧力にかかわらず一定値となるべきであるが、検査圧力の許容範囲内において、本来の正しい換算漏れ量との誤差が所定範囲内に収まれば、検査精度として問題がない。
【0226】
検査圧力の測定タイミングを差圧ΔPrの測定期間の開始時とすれば、差圧ΔPrの測定期間の長短にかかわらず、同じタイミング(測定期間の長短に合わせて検査圧力の測定タイミングを変更すること無く同じタイミング)で検査圧力を取得できるので、簡易な方法で十分な効果を発揮することができる。
【0227】
このことは、検査圧力の測定タイミングは、漏洩検査工程での測定開始時と漏洩検査工程の測定終了時の中央値の時間から、所定時間離れても良いことを示しており、たとえば、測定開始時より手前であっても良いし、漏洩検査工程の測定終了後より後であっても良いことを示している。測定された漏れ量(検出差圧もしくは検出漏れ量)とペアとなるべき検査圧力を取得できれば良い。
【0228】
また、検査圧力の測定時と検出漏れ量(検出差圧)の測定時とにずれがある場合に、測定された検査圧力を、検出漏れ量の測定時の値となるように補正してもよい。さらに、検出漏れ量を加味してこの補正を行うとよい。すなわち、検出漏れ量の大小に応じて、検出圧力の補正量を変更するとよい。図11に示したように、封止後の圧力降下は、漏れの大小に依存しており、漏れが少ない場合に比べて、漏れが多い場合の圧力降下が大きい。そこで、検査圧力の測定時と検出漏れ量の測定時(たとえば、漏洩検査工程での測定開始時と測定終了時の中央値の時間)との間における圧力降下量を、漏洩検査工程で測定された検出漏れ量に応じて変更して、上記補正を行うようにすれば、より正確な補正を行うことができる。
【0229】
さらに、サイズの異なる複数のワークを次々と検査する混合検査を行わない場合には、検出漏れ量(検出差圧)とペアにされる検査圧力の測定タイミングを、ワークへの気体の加圧導入完了後であって封止前(第1開閉弁31を閉じる前)としても良い。たとえば、リーク検査装置を、図1に示すリーク検査装置10に対して第1圧力計41および第2圧力計42を設けない構成とした場合、圧力計5を用いて(例えば圧力計5相当を第1配管21に設け、それを用いて)、上記タイミング(加圧導入完了後の封止前)に検査圧力を取得する。そして、前述したように、取得した検査圧力を、検出漏れ量の測定時の値となるように補正すれば良い。この補正において、検出漏れ量を加味するとさらに良い。
【0230】
また、検査圧力の測定時と検出漏れ量の測定時とにずれがある場合に、測定された検査圧力を検出漏れ量の測定時の値となるように補正することに代えて、漏れの判定に使用される基準漏れ量を補正するようにしてもよい。すなわち、検査圧力の測定時(たとえば、気体の加圧導入完了後で第1開閉弁31を閉じる前)から検出漏れ量の測定時(たとえば、漏洩検査工程における測定開始時と終了時の中央値の時間)までの時間におけるワークからの漏れ量を勘案して、基準漏れ量(最大許容漏れ量)を、本来の値より少なめの値と(例えば手動入力で少なめに設定)してもよい。
【0231】
さらに、最大許容漏れ量を示すワークのサンプルを用いて、第1開閉弁31を閉じてから漏れ量の測定時(漏洩検査工程の測定期間の中央値の時間)までの圧力降下を測定し、その測定結果に基づいて、基準漏れ量(最大許容漏れ量)を、どの程度少なめにすれば良いかを検査処理部50が自動で求めるようにしても良い。なお、この手法は、検出圧力の測定タイミングを、気体の加圧導入完了後で第1開閉弁31を閉じる前とする場合に限らず、第1開閉弁31を閉じた後、たとえば、漏洩検査工程の測定期間の中央値の時間から所定時間前または後、とした場合の補正としても用いることができ、その場合には、最大許容漏れ量を示すサンプルを用いることなく、測定毎に補正することができる。
【0232】
また、本発明では、検出漏れ量と基準漏れ量とが同一の圧力条件で測定した場合の値となるように検出漏れ量と基準漏れ量のうちの少なくとも一方を換算すればよく、検出漏れ量を基準の検査圧力で漏れ量を測定した場合の値となるように換算してもよいし、基準漏れ量を、検出圧力で測定した場合の値となるように換算してもよいし、検出漏れ量と基準漏れ量の双方を、検査圧力でも基準の検査圧力でもない第3の圧力で測定した場合の値となるように換算してもよい。いずれの場合においても、これまで説明した各種のバリエーションを取ることができる。
【0233】
実施の形態では、リーク検査装置10としてワーク61とマスタ62の差圧を測定する例を示したが、ワーク61の圧力を直接測定する構成でも構わない。
【0234】
さらに、リーク検査装置10としてワーク61とマスタ62の差圧を測定する際に、漏れを測定する対象物(被検査体)であるワーク61と漏れのないマスタ62の差圧を測定するのではなく、被検査体を両方に接続する、両ワーク方式でも構わない(この場合にはマスタ62ではなくワーク62となり、ワーク61との差圧を測定することとなる)。このような両ワーク方式は、被検査体の漏れ品が極めて少ない場合(例えば5%以下のような場合)に用いられる方式である。従来は、ワーク61の検出漏れ量(検出差圧)を換算漏れ量(換算差圧)に換算するための演算に用いる圧力を例えば第1圧力計41の圧力を参照したが、両ワーク方式で測定される場合には、ワーク61に漏れが無く、ワーク62に漏れが有る場合がある。このような場合には、差圧計43で測定される漏れ量は、マイナス表示となるが、ワーク62の検出漏れ量(検出差圧)を換算漏れ量(換算差圧)に換算するための演算に用いる圧力は例えば第2圧力計42の圧力を参照した方が好ましい。
【0235】
すなわちリーク検査装置10としては、漏れのないマスタを用いた従来方式の検査を行っているのか、又は、上記の両ワーク方式で検査しているのかは把握できないので、差圧計43で測定される漏れ量がプラスの場合には(ワーク61に漏れがある場合には)、演算に用いる圧力を例えば第1圧力計41の圧力を参照し、漏れ量がマイナスの場合には(マスタ62又はワーク62に漏れがある場合には)、演算に用いる圧力を例えば第2圧力計42の圧力を参照した方が好ましい。なお、マスタ62又はワーク62に漏れがあっても、第1圧力計41の圧力と第2圧力計42の圧力の値はほぼ同じとして、第1圧力計41の値を用いて演算を行うようにしても良い。また、両ワークである旨を入力できる場合には、マイナス表示を行うのではなく、マスタ62又はワーク62に漏れが有る旨を表示と共に、漏れ量をマイナス表示ではなく、プラス表示としてもかまわない。
【0236】
本発明は、リーク検査装置に限定されず、リーク検査方法も含まれる。リーク検査方法は、外部のパソコン等で実施される。たとえば、リーク検査装置を検査処理部15の無い構成とし、検査処理部15に相当する機能(本発明に係るリーク検査方法を実施する機能を含む)を外部のパソコン等に担わせる構成としてもよい。
【0237】
従来測定器は、精度を高め、正確な測定値を求めることを目的としてきたが、図19に示すように予め定めた基準値に基づく判定で誤判定が生じるという問題点があった(漏れ量の正確性を高めると判定精度が下がるという問題点があった)。これに対して本願発明は、例えば検査装置を使用するユーザーに対して、漏れの有るワークのサンプル値(漏れ量と圧力をペアとした少なくとも2点以上のサンプル値)を提供してもらい、このサンプル値に基づいて、予め定めた基準値、又は新たに検査するワークの検査値等を補正することで、可能な限り正確な合否判定を行おうとするものである。
【0238】
すなわち、漏れの有るサンプルと新たに検査するワークとは異なる物であるので、当然新たに検査するワークの圧力換算漏れ量(例えば、予め定める基準値とペアとなる圧力下での値に換算した漏れ量)は推定に基づく補正(換算)を経なければならない。従って、従来(の延長線上の方法、例えば、予め定める基準値とペアとなる圧力と同じ圧力として測定した漏れ量)と比して、正確な値を求めることができず、あくまでも推定値の域を出ない不完全なものである(例えば図3のグラフ93に示すように、完全に一致するものを得られるとは限らない)。
【0239】
しかし、従来の計測器での、予め定めた基準値に基づく判定で誤判定が生じるという問題点に対して、少なくとも本願発明は誤判定率を下げることができるものである。計測器を作るメーカーとしては漏れ量を高精度に求め、あくまで合否判定は付属機能としていたが、計測器を工場等で使う作業者は漏れ量を見るのは仕事でなく、良品か不良品かを分けるのが仕事であって、合否判定画面しか見ていない。本願発明は計測器を作るメーカーが拘りがちな測定精度ではなく、ユーザーが欲する合否判定機能の精度を高めようとするものである。
【0240】
さらに次の利点も有する。例えば、従来は安いポリウレタンチューブ等を使用すると、原因不明の漏れ量誤差が生じるので、ナイロンチューブを使用せざるを得なかったが、本願発明を用いれば、安いポリウレタンチューブを長距離(例えば20m)用いても、補正・換算が行われるので、誤判定を避けられるのみならず、測定精度も向上させることができる等、優位な面も有する。
【符号の説明】
【0241】
2…電空レギュレータ
3…加圧気体の供給源
5…圧力計
6…等温化ファンユニット
10…リーク検査装置
11…加圧源接続口
12…ワーク接続口
13…マスタ接続口
15…検査処理部
21…第1配管
22…第2配管
23…第3配管
24…排気管
31…第1開閉弁
32…第2開閉弁
33…第3開閉弁
34…第4開閉弁
35…第5開閉弁
36…第6開閉弁
37…第7開閉弁
38…排気弁
41…第1圧力計
42…第2圧力計
43…差圧計
50…検査処理部
51…漏れ量測定部
52…検査圧力測定部
53…基準値取得部
54…換算部
55…判定部
56…体積変化取得部
61…ワーク
62…マスタ
71、72…可変バルブ
73…流量計

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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