(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077371
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20230529BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036521
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2021190610の分割
【原出願日】2021-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】小林 日登志
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃棄物処理でのカーボンニュートラルの実現性を高める情報処理方法を提供する。
【解決手段】廃棄物処理でのカーボンニュートラルの実現性を高める情報処理方法であって、情報処理装置1は、制御部と、通信部12と、記憶部13と、を含み、通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、制御部によって、廃棄物についてのマニフェスト情報と、廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて記憶部に記憶することを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
廃棄物についてのマニフェスト情報と、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含む、
情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記廃棄物が処理された電気炉の電力使用量実績から、廃棄物1トンあたりの電力使用量を算出することと、
前記電力使用量に、前記マニフェスト情報に含まれる廃棄物数量の情報を掛けることによって、前記廃棄物を処理するために使用された電力量を算出することと、
前記電力量の電力を、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力として決定することと、
によって、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明することを含む、情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理方法において、
前記ネットワークはブロックチェーンネットワークを含み、
関連付けられた前記マニフェスト情報と前記証明情報とをブロックチェーンに登録することを更に含む、
情報処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理方法において、
関連付けられた前記マニフェスト情報と前記証明情報とをインターネットで公開することを更に含む、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃棄物の処理方法、リサイクル原料、リサイクル方法及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室効果ガス総排出量を「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令」で定められる方法で算定する際に参照されるガイドラインが知られている(例えば非特許文献1)。上記ガイドラインの第25頁目から第30頁目には、「一般廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出量」の算定方法が記載され、第31頁目から第32頁目には、「産業廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出量」の算定方法が記載される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“温室効果ガス総排出量 算定方法ガイドライン Ver.1.0”、[online]、平成29年3月、環境省 総合環境政策局 環境計画課、[令和3年11月11日検索]、インターネット<URL:https://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/data/guideline.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄物の処理のために焼却炉を使用する場合、燃焼室で重油又はガスが使用される。このため、カーボンニュートラルを実現することは不可能である。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、廃棄物処理でのカーボンニュートラルの実現性を高めるための廃棄物の処理方法、リサイクル原料、リサイクル方法及び情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
廃棄物についてのマニフェスト情報と、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態による廃棄物の処理方法、リサイクル原料、リサイクル方法及び情報処理方法によれば、廃棄物処理でのカーボンニュートラルの実現性を高めることができるので、次のような貢献及び寄与による社会的な効果を生じさせることができる。すなわち、第1の効果として廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを可視化することができる。このように、社会にカーボンニュートラルな廃棄物処理を分かりやすく認識させることができるので、その環境価値を向上させることができる。第2の効果として、環境への負荷の低減に資する廃棄物処理を行うことができるので、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することができる。
【0008】
また、本開示の一実施形態による廃棄物の処理方法、リサイクル原料、リサイクル方法及び情報処理方法によれば、廃棄物処理でのカーボンニュートラルの実現性を高めることができるので、次のような経済的な効果を生じさせることができる。すなわち、第1の効果として、廃棄物の処理に対する行政からの総合評価を上昇させることができるので、競争入札で落札を勝ち取る可能性を高めることができ、もって受注量及び収益を拡大することができる。第2の効果として、本特許出願が特許を受けた場合には、特許に係る発明の実施をする者(例えば、鋼材製品を製造する電気炉メーカー)に実施権を設定することによって使用料(ライセンス料)を得ることができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本実施形態の情報処理装置及びネットワークの概略図である。
【
図4】情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】マニフェストDB(database)のデータ構造を示す図である。
【
図7】情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、電気炉により廃棄物が処理される。
図1に示されるように、電気炉EFは、電極ELに高電圧をかけて電気アークEAを発生させる。電気炉EFは、電気アークEAによる熱エネルギーで電気炉EF内の処理対象となる資源化原料廃棄物を高温で溶融又は溶解、及び無害化処理し、処理された廃棄物を鉄又はスラグ等として再生及びリサイクルする。アーク温度は約4,000℃である。本実施形態では、資源化原料廃棄物を電気炉EFにて高温で溶融又は溶解、及び無害化処理して得られたもの(すなわち生成されたもの)がリサイクル原料と称される。資源化原料廃棄物は次の廃棄物のうち少なくとも1つを含む。
・第1の資源化原料廃棄物W1
・第2の資源化原料廃棄物W2
・第3の資源化原料廃棄物W3
【0011】
第1の資源化原料廃棄物W1は鉄を含む廃棄物である。第1の資源化原料廃棄物W1は例えば次の少なくとも1つを含んでよいし、鉄を含む他の廃棄物を含んでよい。
・インフレーター
・スプリングマットレス
・ショットブラスト
・鉄研磨材
・磁石屑
【0012】
第1の資源化原料廃棄物W1は、鉄スクラップの代替物であり、鉄原料として利用される。鉄原料は、廃棄物から生成されるリサイクル原料の一例である。
【0013】
第2の資源化原料廃棄物W2は炭素を含む廃棄物である。第2の資源化原料廃棄物W2は例えば次の少なくとも1つを含んでよいし、炭素を含む他の廃棄物を含んでよい。
・炭素繊維屑
・トナーカートリッジ
・カーボン屑
・活性炭
【0014】
第2の資源化原料廃棄物W2は、コークスの代替物であり、鉄スクラップの溶融促進のための鉄への浸炭原料として利用される。炭素は鉄中へ浸炭され鉄の溶融温度を低下させることで、鉄スクラップの溶融を促進させる。
【0015】
第3の資源化原料廃棄物W3はCaO又はSiO2を含む廃棄物である。第3の資源化原料廃棄物W3は例えば次の少なくとも1つを含んでよいし、CaO又はSiO2を含む他の廃棄物を含んでよい。
・ガラス屑
・保温材屑
・ゼオライト屑
・鉄鋼スラグ
・コンクリート混合物
【0016】
第3の資源化原料廃棄物W3は、石灰又は珪石の代替物であり、造滓材として利用される。造滓材は、廃棄物から生成されるリサイクル原料の一例である。
【0017】
上記の資源化原料廃棄物を廃棄物の種類の観点から分類した表は次の通りである。
【表1】
【0018】
本実施形態の電気炉EFで使用される電力は、再生可能エネルギー等の非化石電源から発電された、二酸化炭素を排出しない電力である。ここでの再生可能エネルギーとは、次に掲げるエネルギー源をいう。
一 太陽光
二 風力
三 水力
四 地熱
五 バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。)
六 上記一乃至五のエネルギー源のほか、原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品以外のエネルギー源のうち、電気のエネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの
【0019】
非化石電源には、再生可能エネルギーだけでなく、例えば原子力も含まれる。非化石電源から発電された電気には次の2つが含まれる。
1.電気そのものが有する価値(kWh価値等)
2.非化石としての価値
本実施形態では、上記2つの価値のうち「非化石としての価値」を、非化石価値と称する。電気炉EFでは、非化石価値で定義された電力が使用される。ここでの非化石価値は、日本国の「エネルギー供給構造高度化法」上の非化石電源比率の算定時に非化石電源として計上される価値である。非化石価値は、定められた目標値を達成するために、新規の電力小売事業者によって購入される価値である。
【0020】
非化石価値によって定義された電力は、例えば次の3つの手段のうち少なくとも1つを利用して入手及び証明可能である。
(1)非化石証書
(2)グリーン電力証書
(3)Jクレジット
【0021】
非化石証書とは、再生可能エネルギーで発電された電気の環境価値を証書のかたちにしたものである。
【0022】
グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーで発電された電力の環境価値の証書である。グリーン電力証書にはシリアルナンバーが付されるので、唯一無二である。グリーン電力証書には、発電電力量と発電期間と発電方法と証書の発行日との情報が含まれる。グリーン電力証書には更に、認証機関名と証書発行事業者名との情報が含まれる。
【0023】
Jクレジットとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減量と吸収量とを「クレジット」として国が認証する制度である。
【0024】
追加例として又は代替例として、非化石価値で定義された電力は、次の手段によっても入手及び証明可能である。
(4)自社が保有する太陽光発電設備を用いた発電
【0025】
代替例として、電気炉EFで使用される電力は、非化石価値で定義された電力ではなく、ゼロエミ価値で定義された電力であってよい。ここでのゼロエミ価値とは、日本国の「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下、温対法)上の二酸化炭素排出係数がゼロである価値である。具体的にはゼロエミ価値は、電気の小売事業者が調整後排出係数の算定時に、調達した非化石証書の電力量に「全国平均係数」を乗じることで算出した二酸化炭素排出量を実二酸化炭素排出量から減算することができる価値である。製造業等の電力購入者が温対法に基づいて二酸化炭素排出量を国に報告する際には、ゼロエミ価値を持つ電力の二酸化炭素排出係数はゼロとなる。例えば、ゼロエミ価値で定義された電力は、既存の電力販売会社が水力等の再生可能エネルギー又は原子力で発電した電力であってよい。ゼロエミ価値で定義された電力は、次の手段によって入手及び証明可能である。
(5)電力小売との契約(例:東京電力エナジーパートナー(登録商標)社によって提供される「アクアプレミアム」(登録商標)及び「アクアエナジー100」)
【0026】
上記で例示された手段(1)乃至(5)のそれぞれにつき、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証書等の情報は、唯一無二の証明情報として証明書発行事業者又は認証機関等から取得される。上記の手段(1)乃至(5)は一例であり、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する他の任意の手段によって代替可能である。
【0027】
本発明において、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることの証明方法には、上記(1)乃至(5)のいずれかによって証明情報を入手して証明する方法、もしくは証明情報を入手できない場合は、電力会社等によって公開される任意の証明情報(例えば二酸化炭素排出係数(残渣))を利用して再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法(詳細は後述する)がある。
【0028】
処理される廃棄物は、
図2に例示されるマニフェストMによって管理される。マニフェストMは、産業廃棄物の処理委託の際に必要な伝票であり、産業廃棄物管理票とも称される。マニフェストMは、D票又はE票のいずれであってもよい。
【0029】
廃棄物は、マニフェストMに対応付けられる。
図2に示されるように、マニフェストMには例えば次のマニフェスト情報21乃至25と証明情報26とが含まれ、マニフェスト情報と証明情報とが関連付けられる。
・交付番号21(唯一無二のシリアルナンバー)
・廃棄物の種類22
・廃棄物の数量23
・廃棄物の名称24
・廃棄物の処分方法25
・証明情報26(ここでは一例としてグリーン電力証書のシリアルナンバー)
【0030】
追加例として、マニフェストMにおいて、廃棄物から生成されたリサイクル原料(すなわち、鉄原料又は造滓材)を示す情報が、マニフェスト情報及び証明情報と関連付けられてよい。
【0031】
例えば、マニフェストMに含まれるマニフェスト情報21乃至25と、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報26とは、電気炉EFの管理者等により操作される情報処理装置1によって電子的に取得され、情報処理装置1の記憶部13に記憶される。代替例として、マニフェスト情報と証明情報とは、ユーザによって手動で入力され、情報処理装置1の記憶部13に記憶されてよい。
【0032】
図3に示されるように、情報処理装置1はネットワークNWと通信可能に接続されたノードの1つである。情報処理装置1は、ネットワークNWを介して他の1以上の情報処理装置2乃至5と互いに通信可能である。
図3では5つの情報処理装置1乃至5がネットワークNWに接続されるが、情報処理装置の台数は任意である。情報処理装置2乃至5のハードウェア構成は情報処理装置1のハードウェア構成と同一であるため、ここでの説明を省略する。
【0033】
情報処理装置1は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバなどのコンピュータである。代替例として情報処理装置1は、携帯電話機、スマートフォン、ウェアラブル機器、若しくはタブレットなどのモバイル機器であってよい。別の代替例として情報処理装置1は、PCなどの汎用機器、又は専用機器であってもよい。「PC」は、personal computerの略語である。
【0034】
図4を参照して情報処理装置1の内部構成が詳細に説明される。
【0035】
情報処理装置1は、制御部11と通信部12と記憶部13とを含む。情報処理装置1の各構成要素は、例えば専用線を介して互いに通信可能に接続される。
【0036】
制御部11は例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)を含む1つ以上の汎用プロセッサを含む。制御部11は、特定の処理に特化した1つ以上の専用プロセッサを含んでよい。制御部11は、プロセッサを含む代わりに、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってよい。制御部11は、ECU(Electronic Control Unit)を含んでもよい。制御部11は通信部12を介して、任意の情報を送信及び受信する。
【0037】
通信部12は、ネットワークNWに接続するための、1つ以上の有線又は無線LAN(Local Area Network)規格に対応する通信モジュールを含む。通信部12は、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、又は5G(5th Generation)を含む1つ以上の移動体通信規格に対応するモジュールを含んでよい。通信部12は、Bluetooth(登録商標)、AirDrop(登録商標)、IrDA、ZigBee(登録商標)、Felica(登録商標)、又はRFIDを含む1つ以上の近距離通信の規格又は仕様に対応する通信モジュール等を含んでよい。通信部12は、ネットワークNWを介して任意の情報を送信及び受信する。
【0038】
記憶部13は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれるが、これらに限られない。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。ROMは、例えば、EEPROMである。記憶部13は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部13は、制御部11によって分析又は処理された結果の情報を記憶してよい。記憶部13は、情報処理装置1の動作又は制御に関する各種情報等を記憶してよい。記憶部13は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェア等を記憶してよい。記憶部13は情報処理装置1の外部に設けられて、情報処理装置1からアクセスされてよい。記憶部13は、マニフェストDBを含む。
【0039】
ネットワークNWは一例として、分散台帳(Hyperledger)型のブロックチェーンネットワークである。この場合、ネットワークNWに接続された全てのノードが、同一のデータを1以上のブロックとして時系列に保持する。
【0040】
ネットワークNWは、インターネットに接続されたパブリックなネットワークであってよいし、プライベートなネットワークであってもよい。
【0041】
情報処理装置1の記憶部13は、
図5に示されるようにブロックチェーンBCを記憶する。ブロックチェーンBCは、ブロックチェーンネットワークNWにおける全てのノードによって共有される。ここでは説明の便宜のため、ブロックチェーンBCが第1のブロックB1と第2のブロックB2と第3のブロックB3と第4のブロックB4とを含む場合が説明される。ブロックチェーンBCに含まれるブロックの数は任意である。
【0042】
第1のブロックB1は、ブロックチェーンBCの最初のブロックであり、取引データT1を含む。
図5では、1つのブロックに取引データが3つ含まれる。しかし1つのブロックに含まれる取引データの数は任意である。
【0043】
第2のブロックB2は、前のブロックである第1のブロックB1のハッシュH2と、ハッシュH2に対応するナンス値N2と、取引データT2とを含む。
【0044】
第3のブロックB3及び第4のブロックB4についての説明は、重複説明を避けるために、省略する。
【0045】
情報処理装置1の制御部11は、マニフェスト1つにつき、マニフェスト情報と、廃棄物の処理時に電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを一体化する。ここで、証明情報とは、以下の方法により得ることができる。電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現するには、まず、対象となるマニフェストMに記載された廃棄物が処理された電気炉EFでの工場電力使用量実績から、廃棄物1トン当たりの電力使用量が算出される。算出は、制御部11(例えばプロセスコンピュータ)によって行われてよいし、手動で行われてよい(以下同じ)。次いで、廃棄物1トン当たりの電力使用量に、対象となるマニフェストMに記載された廃棄物数量を掛けることで、対象となる廃棄物を処理するために使用された実績電力使用量が算出される。この実績電力使用量の電力を非化石電力とみなすことで、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現及び証明することができる。
【0046】
マニフェスト情報と証明情報とを一体化する方法の具体例として制御部11は、
図6のマニフェストDBに示されるように、ブロックチェーンBCのブロックB1に関連付けて、マニフェスト情報M1と証明情報V1とを記憶部13に記憶する。すなわちマニフェスト情報M1と証明情報V1とは、ブロックチェーンBCのブロックB1内に取引データとして登録される。登録された情報は、ブロックチェーンBCのトークンとして記憶される。代替例として証明情報V1はマニフェスト情報M1に埋め込まれてもよい。
【0047】
制御部11は、マニフェスト情報M1と証明情報V1とを、任意の第三者に向けてインターネット等で公開することができる。
【0048】
図7を参照して、情報処理装置1の制御部11による情報処理方法が説明される。
【0049】
ステップS1にて制御部11は、廃棄物の処理についてのマニフェスト情報と、廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを取得する。
【0050】
ステップS2にて制御部11は、マニフェスト情報と証明情報とを関連付けることによって一体化する。
【0051】
ステップS3にて制御部11は、関連付けられたマニフェスト情報と証明情報とをネットワークNW(例えばブロックチェーンネットワークNW)に登録する。ステップS3は任意である。
【0052】
ステップS4にて制御部11は、関連付けられたマニフェスト情報と証明情報とをインターネットで公開する。ステップS4は任意である。
【0053】
[変形例]
上記実施形態では、マニフェスト情報と証明情報とが関連付けて記憶部13に記憶される。しかし、制御部11がグリーン電力証書等の証明情報を入手できない場合がある。そこで制御部11は、電力需要者によって購入された電力の発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定することができる。そのような特定は、電力会社等によって公開される任意の証明情報(例えば二酸化炭素排出係数(残渣))を利用して行うことができる。制御部11は、証明情報を、マニフェスト情報に関連付けて記憶してよい。
【0054】
上記の通り、電力需要者によって購入された電力の発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定することができる。特定が可能な理由は、「経済産業省第15回 総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会(2017年11月28日)」において次のように定められたためである。すなわち、FIT(Feed-in Tariff:固定価格買取制度)対象の非化石証書のオークションの結果、約定されずに売れ残る非化石証書が発生することが想定された場合に、当該非化石証書は、翌年度以降に繰り越されることはできず、「余剰非化石電気相当量」とされる。余剰非化石電気相当量に係る環境価値のうちゼロエミ価値については、需要家がFIT賦課金として費用を負担していること等に鑑み、価値を埋没させることなく、販売電力量のシェアに応じて配分することとされた。
【0055】
更に、本年度の電力会社の二酸化炭素排出係数は、年度終了後に公開される場合がある。この場合、本年度の二酸化炭素排出係数は、制御部11によって次の手順により算出可能である。
手順1.前年度の二酸化炭素排出係数と非化石電力比率とから、前年度ベースでの非化石電力の使用可能量を推定し、本年度に工場で使用する予定電力計画へ推定結果を反映する。代替例として非化石電力比率には、任意の自治体によって公開されるエネルギー環境計画書に記載の、本年度の再生可能エネルギー比率目標値が採用されてよい。
手順2.顧客からの要望に応じて、本年度の非化石電力を充当する。
手順3.本年度の二酸化炭素排出係数が公開された時点で、非化石電力の充当分と、非化石電力以外の残りの電力の充当分との実績を調整及び確定する。
【0056】
発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法は、以下の方法により得ることができる。電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現するには、まず、対象となる電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量が操業実績から、算出される。算出は、制御部11(例えばプロセスコンピュータ)によって行われてよいし、手動で行われてよい(以下同じ)。1ヒートとは、電気炉EFにおいて1回に溶解される溶鋼である。次いで、1ヒートに使用される電力量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力量が算出される。そして、対象となるマニフェストMに記載された廃棄物が処理された電気炉EFでの工場電力使用量実績から、廃棄物1トン当たりの電力使用量が算出される。次いで、廃棄物1トン当たりの電力使用量に、対象となるマニフェストMに記載された廃棄物数量を掛けることで、対象となる廃棄物を処理するために使用された実績電力使用量が算出される。この実績電力使用量の電力を再生可能エネルギー電力とみなすことで、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現及び証明することができる。
【0057】
[効果]
以上述べたように本実施形態によれば、廃棄物は、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力を使用した電気炉で処理される。ここで、電気炉で使用されるエネルギーの大部分(例えば80%以上)は電力である。この事情から、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力(例えばグリーン電力)を調達して電気炉で使用することによって、工程で使用されるコークス等から排出される二酸化炭素を相殺することができる。すなわち、相殺とは、コークス等のエネルギーに相当する非化石電力使用量を算出して、算出された非化石電力使用量を追加的にマニフェストに記載し、廃棄物の処理で使用した非化石電力として廃棄物と関連付けを行うことで行われる。もってカーボンニュートラルな廃棄物の処理の実現性を容易に高めることができる。更に、廃棄物が溶解された後の電気炉内の残渣はほぼゼロであるため、ほぼ100%のリサイクルが可能である。このため、埋立処分場が延命される。
【0058】
対照的に焼却炉での廃棄物の処理に使用されるエネルギーは、都市ガス、天然ガス、重油、灯油等と多岐にわたる。この場合、カーボンニュートラルの証明にはLCA評価を元にした複雑な計算が必要であるし、計算を行ってもカーボンニュートラルの実現は不可能である。
【0059】
また本実施形態によれば、リサイクル方法は、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力を使用した電気炉で廃棄物を処理し、処理された廃棄物をリサイクル原料としてリサイクルする方法である。廃棄物が溶解された後の電気炉内の残渣はほぼゼロであるため、ほぼ100%のリサイクルが可能である。このため、埋立処分場が延命される。
【0060】
また本実施形態によれば、情報処理装置1は、廃棄物についてのマニフェスト情報と、廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付ける。この構成により、廃棄物処理がカーボンニュートラルであることの証明が容易である。
【0061】
また本実施形態によれば、ネットワークNWはブロックチェーンネットワークを含み、関連付けられたマニフェスト情報と証明情報とはブロックチェーンに登録される。このようにブロックチェーン技術が利用される場合、登録情報が分散して全てのノードで共有される。すなわち中央管理者が不要である。このため、次の効果が奏される。
・改ざんが困難
・単一障害点が無いため、システムダウンが無い
・他者システムとのデータ共有が容易
よって情報処理装置1は、安全性が高く、低コストであるシステムを実現することができる。更に、ブロックチェーンにおいて全てのデータが記録されるので、トレーサビリティが確保される。
【0062】
また本実施形態によれば、制御部11は、関連付けられたマニフェスト情報と証明情報とをインターネットで公開する。この構成により情報処理装置1は、廃棄物処理がカーボンニュートラルであることを対外的に示すことができる。
【0063】
また本実施形態によれば、制御部11は、購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定することと、特定された電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、電気炉で処理される廃棄物についてのマニフェスト情報に関連付ける。この構成により情報処理装置1は、発電プロセスにおいて再生可能エネルギー以外のエネルギーが使用された場合であっても、廃棄物処理が部分的にカーボンニュートラルであることを証明することができる。
【0064】
本開示が諸図面及び実施例に基づき説明されるが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。例えば、各手段又は各ステップに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0065】
例えば、上記の実施形態において、情報処理装置1の機能又は処理の全部又は一部を実行するプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読取り可能な記録媒体は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体を含み、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(Digital Versatile Disc)又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。またプログラムの流通は、プログラムを任意のサーバのストレージに格納しておき、任意のサーバから他のコンピュータにプログラムを送信することにより行ってもよい。またプログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。本開示は、プロセッサが実行可能なプログラムとしても実現可能である。
【0066】
コンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【符号の説明】
【0067】
NW ネットワーク
1 情報処理装置
11 制御部
12 通信部
13 記憶部
2乃至5 情報処理装置
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
廃棄物を処理するために使用された電力量を算出することと、
前記廃棄物についてのマニフェスト情報と、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含む、
情報処理方法。
【請求項2】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
廃棄物についてのマニフェスト情報と、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含み、
前記制御部によって更に、
前記廃棄物が処理された電気炉の電力使用量実績から、廃棄物1トンあたりの電力使用量を算出することと、
前記電力使用量に、前記マニフェスト情報に含まれる廃棄物数量の情報を掛けることによって、前記廃棄物を処理するために使用された電力量を算出することと、
前記電力量の電力を、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力として決定することと、
によって、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明することを含む、情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理方法において、
前記ネットワークはブロックチェーンネットワークを含み、
関連付けられた前記マニフェスト情報と前記証明情報とをブロックチェーンに登録することを更に含む、
情報処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理方法において、
関連付けられた前記マニフェスト情報と前記証明情報とをインターネットで公開することを更に含む、
情報処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理方法において、
前記廃棄物は電気炉で処理される、情報処理方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
廃棄物についてのマニフェスト情報と、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報とを関連付けて前記記憶部に記憶することを含み、
前記制御部によって更に、
前記廃棄物が処理された電気炉の電力使用量実績から、廃棄物1トンあたりの電力使用量を算出することと、
前記電力使用量に、前記マニフェスト情報に含まれる廃棄物数量の情報を掛けることによって、前記廃棄物を処理するために使用された電力量を算出することと、
前記電力量の電力を、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力として決定することと、
によって、前記廃棄物の処理に使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明することを含む、情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記ネットワークはブロックチェーンネットワークを含み、
関連付けられた前記マニフェスト情報と前記証明情報とをブロックチェーンに登録することを更に含む、
情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理方法において、
関連付けられた前記マニフェスト情報と前記証明情報とをインターネットで公開することを更に含む、
情報処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理方法において、
前記廃棄物は電気炉で処理される、情報処理方法。