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2023-77390紫外線レーザー印刷用媒体、印刷物、および加工品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077390
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】紫外線レーザー印刷用媒体、印刷物、および加工品
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/46 20060101AFI20230529BHJP
   B32B 9/06 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
B41M5/46 510
B32B9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159443
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2021190380の分割
【原出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】東川 一希
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐美
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 香里
【テーマコード(参考)】
2H111
4F100
【Fターム(参考)】
2H111HA14
4F100AA21B
4F100AK01C
4F100AK04B
4F100AK21A
4F100AK26A
4F100BA02
4F100BA44B
4F100DC21
4F100DE01B
4F100DG02A
4F100DG10A
4F100EH17
4F100EH23
4F100EH46
4F100HB00B
4F100JL10B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】紫外線レーザー印刷によって印刷された画像の視認性に優れ、さらに印刷後の印刷物の耐水性の低下が抑制された紫外線レーザー印刷用媒体を提供すること。さらに、前記紫外線レーザー印刷用媒体を用いた印刷物、および前記紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物を用いてなる加工品を提供すること。
【解決手段】紙基材と、酸化チタンを含有する印刷層とを有し、紙基材および印刷層は直接に接しており、紙基材を構成するパルプ繊維の保水度が100%以上であり、かつ、紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長が2.2mm以下である、紫外線レーザー印刷用媒体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、酸化チタンを含有する印刷層とを有し、
紙基材および印刷層は直接に接しており、
紙基材を構成するパルプ繊維の保水度が100%以上であり、かつ、
紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長が2.2mm以下である、
紫外線レーザー印刷用媒体。
【請求項2】
前記印刷層の酸化チタンの含有量が0.04g/m以上10.0g/m以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
【請求項3】
前記印刷層が、酸化チタンを含有するラミネート層、または酸化チタンを含有する塗工層である、請求項1または2に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
【請求項4】
前記印刷層の厚さが1.0μm以上45μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
【請求項5】
前記印刷層の上に、さらに樹脂層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用媒体から得た印刷物であって、
前記印刷層が、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、
非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用媒体、または請求項6に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線レーザー印刷用媒体、印刷物、および加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造日や出荷日などの日付や、バーコードなどの可変情報を、収容物が収容される容器等の包装体に表示するために、ラベル表示またはインクジェット印刷が行われている。
また、レーザー光照射により印字する方法も提案されており、例えば、特許文献1には、レーザー光照射により、鮮明な印字が高速で行え、かつ、印字された部分が各種の耐性に優れたレーザー印字用積層体およびその印字体を提供することを目的として、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上に、白インキ、黒インキおよびオーバープリントニス(OPニス)を塗布して製造したレーザー印刷用積層体が開示されている。
また、特許文献2には、発熱が比較的少なく、包装材のレーザマーキングに好ましく適用可能な技術を提供することを目的として、平均粒子径が150nm以下の第一の酸化チタン粒子を含み、紫外線レーザーの照射により色変化するレーザマーキング層を形成するために用いられるインキ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-123607号公報
【特許文献2】特開2020-75943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装体、ラベル、粘着テープなどの表面への印刷手段として、サーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いて包装体表面に直接インキを載せる方法があり、現在多用されている。しかし、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換を怠ると印刷漏れが発生する場合もある。さらに、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷による包装体への変動情報の直接印刷も行われているが、包装体表面の汚れや包装体の厚さむら等によって、印刷カスレや文字欠け等が発生する場合がある。
また、特許文献1に記載の方法では、高速化が可能であるものの、COレーザー光の照射によりレーザー光を吸収しやすい上層を除去して、下層を露出し、上層と下層の色の違いから視認可能な文字等を形成する技術であるため、上層はレーザー光を吸収しやすい材料に限定され、逆に下層はレーザー光を吸収しにくく、かつ、上層と色のコントラストの取れる材料に限定される。すなわち、レーザー光を吸収しやすいカーボンブラック系の材料(黒色)が上層となり、酸化チタン系の材料(白色)が下層となり、レーザー光の照射により形成される文字等は、黒地に白い文字となり、視認性に劣る。
特許文献2に記載の方法では、レーザー照射によって印刷が可能であるものの、印刷後の耐水性の低下については検討されていない。
【0005】
本発明は、紫外線レーザー印刷によって印刷された文字、図形その他の画像の視認性に優れ、さらに印刷後の印刷物の耐水性の低下が抑制された紫外線レーザー印刷用媒体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記紫外線レーザー印刷用媒体を用いた印刷物、および前記紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物を用いてなる加工品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、紙基材上に直接接する酸化チタンを含有する印刷層を有する紫外線レーザー印刷用媒体において、紙基材を構成するパルプ繊維の保水度を特定の値以上とし、さらに紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長を特定の値以下とすることにより、印刷された画像の視認性に優れ、さらに印刷後の耐水性の低下が抑制されることを見出した。本発明は以下の<1>~<7>に関する。
<1> 紙基材と、酸化チタンを含有する印刷層とを有し、紙基材および印刷層は直接に接しており、紙基材を構成するパルプ繊維の保水度が100%以上であり、かつ、紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長が2.2mm以下である、紫外線レーザー印刷用媒体。
<2> 前記印刷層の酸化チタンの含有量が0.04g/m以上10.0g/m以下である、<1>に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<3> 前記印刷層が、酸化チタンを含有するラミネート層、または酸化チタンを含有する塗工層である、<1>または<2>に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<4> 前記印刷層の厚さが1.0μm以上45μm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<5> 前記印刷層の上に、さらに樹脂層を有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体から得た印刷物であって、前記印刷層が、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体、または<6>に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紫外線レーザー印刷によって印刷された画像の視認性に優れ、さらに印刷後の印刷物の耐水性の低下が抑制された紫外線レーザー印刷用媒体が提供される。さらに、本発明によれば、前記紫外線レーザー印刷用媒体を用いた印刷物、および前記紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物を用いてなる加工品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体の一実施態様を示す断面模式図である。
図2】本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体の他の一実施態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[紫外線レーザー印刷用媒体]
本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体(以下、単に「印刷用媒体」ともいう)は、紙基材と、酸化チタンを含有する印刷層とを有し、紙基材および印刷層は直接に接しており、紙基材を構成するパルプ繊維の保水度が100%以上であり、かつ、紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長が2.2mm以下である。
本実施形態によれば、紫外線レーザー印刷によって印刷された画像の視認性に優れ、さらに印刷後の印刷物の耐水性の低下が抑制された優れる紫外線レーザー印刷用媒体が提供される。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。本発明では、紙基材上に、該紙基材に直接に接して積層された酸化チタンを含有する印刷層を有する。紙基材上に、酸化チタンを含有する印刷層を有することにより、紫外線レーザーによるレーザー照射により、印刷層中の酸化チタンが変色し、印刷することが可能である。前記酸化チタンの変色は、印刷層が含有する酸化チタンのイオン価数が4価から3価に変化し、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へと変化し、これにより、視認可能となっていると考えられる。酸化チタンのイオン価数は、酸化チタンのバンドギャップに相当する光エネルギーを照射する際に変化するものと考えられる。酸化チタンのバンドギャップは結晶系によって異なるが、一般に3.0~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(例えば532nm、1064nm、10600nm)を用いても本発明のような酸化チタンのイオン価数変化に起因する印刷を施すことは困難である。
【0010】
紫外線レーザーの照射により、酸化チタンが変色することで印刷物を得ることができる。一方で、紫外線レーザーの照射により、耐水性が低下する場合があることを見出した。この原因について検討した結果、紫外線レーザーの光を吸収した酸化チタンが発熱することで、微細な空隙が印刷層に発生し、発生した空隙から水が浸入するためと考えられた。
印刷層の直下に位置する紙基材を構成するパルプの保水度を100%以上とすることにより、紙基材中の水分量が多くなり、酸化チタンによる発熱を気化熱として逃がすために、空隙の発生が抑制され、耐水性の低下が抑制されたものと考えられる。
また、紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長を2.2mm以下とすることにより、パルプ繊維の表面積が増加し、パルプ繊維の保水度が向上すると共に、加熱された際の水分の放出が促進されることで、発熱が抑制され、その結果、空隙の発生が抑制され、耐水性の低下が抑制されたものと考えられる。さらに、密な紙基材となることで、印刷層との接着が増加し、印刷層で発生した熱が紙基材側に伝達されやすくなることで、空隙の発生が抑制され、耐水性の低下が抑制されたものと考えられる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体について、図を用いて説明する。
図1は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体の一実施態様を示す断面模式図である。図1に示す紫外線レーザー印刷用媒体100は、紙基材10と、酸化チタンを含有する印刷層20を有し、紙基材10および印刷層20は直接に接している。
図2は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体の他の一実施態様を示す断面模式図である。図2に示す紫外線レーザー印刷用媒体100は、紙基材10と、酸化チタンを含有する印刷層20とを有し、紙基材10および印刷層20は直接に接している。図2では、印刷層上に、さらに樹脂層30が積層されている。当該樹脂層は、酸化チタンを実質的に含有していないことが好ましい。
印刷層は、後述するように、酸化チタンを含有するラミネート層であってもよく、また、酸化チタンを含有する塗工層であってもよい。
本実施形態において、紫外線レーザーの照射による耐水性の低下の抑制の効果が顕著である観点から、図1の態様であることが好ましい。
紫外線レーザー印刷用媒体は、紙基材上に印刷層を有するが、印刷層は、少なくとも紙基材の片面に形成されていればよく、両面に形成されていてもよいが、片面のみに印刷層を有することが好ましい。また、紙基材の全面に印刷層を有していてもよいが、印刷を行いたい、一部の領域(部分)のみに印刷層を有していてもよい。
【0012】
<紙基材>
本実施形態の印刷用媒体は、紙基材上に直接接して印刷層を有する。
なお、例えば紙基材は、紙に塗工層が設けられた塗工紙であってもよく、該塗工層は、紙基材の印刷層側に設けられていてもよく、その反対面に設けられてもよく、特に限定されない。
【0013】
紙基材を構成する原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、竹、バガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、例えば、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。原料パルプは、上記の1種を単独でも2種以上混合して用いてもよい。なお、原料パルプに、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維を混用してもよい。
原料パルプは、入手のしやすさという観点から、木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、原料パルプは、木材パルプの中でも、地合いの均一性の観点から、好ましくは化学パルプであり、より好ましくはクラフトパルプであり、さらに好ましくはユーカリ、アカシア等の広葉樹クラフトパルプ、およびマツ、スギ等の針葉樹クラフトパルプから選択される1種以上であり、よりさらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選択される1種以上である。
【0014】
紙基材は、必要に応じて内添剤を添加したパルプスラリーを抄紙することにより得られる。
紙基材には、上述したパルプに加え、填料、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤(例えば、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン)、歩留向上剤(例えば、硫酸バンド)、濾水性向上剤、pH調整剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、染料・顔料等の公知の抄紙用内添剤を必要に応じて添加することができる。
填料としては、例えば、カオリン、タルク、酸化チタン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を例示することができる。
サイズ剤としては、例えば、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。
【0015】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機、例えば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機を適宜選択して使用することができる。次に、抄紙機によって形成された紙層をフェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0016】
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図り、印刷適性の向上を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0017】
紙基材としては、ライナー原紙、クラフト紙、上質紙、コート紙等の従来公知の紙基材の中から、適宜選択して使用してもよい。
また、紙基材は、単層であっても多層であってもよく、異なるパルプ組成の多層構成としてもよい。
【0018】
紙基材を構成するパルプ繊維の保水度は、紫外線レーザー印刷による耐水性の低下を抑制する観点から、100%以上であり、好ましくは105%以上、より好ましくは110%以上、さらに好ましくは115%以上であり、そして、上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは200%以下、より好ましくは170%以下、さらに好ましくは150%以下である。
パルプ繊維の保水度は、パルプ繊維中のヘミセルロース含有量が多いと、高い傾向がある。従って、α-セルロース含有量が高く、ヘミセルロース含有量が減少した溶解パルプを原料パルプとして使用した場合には、保水度が減少する傾向にある。
また、パルプ繊維の叩解度が高いと、保水度が向上する傾向にある。従って、カナダ標準ろ水度(CSF:Canadian Standard freeness)が小さく、叩解度の高いパルプ繊維を使用することが、保水度の観点からは好ましい。
紙基材を構成するパルプ繊維の保水度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0019】
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、紫外線レーザー印刷による耐水性の低下を抑制する観点から、2.2mm以下であり、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.6mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、よりさらに好ましくは1.0mm以下である。下限は特に限定されないが、紙基材としての強度を得る観点、および紫外線レーザー照射時に紙粉が発生することを抑制する観点から、好ましくは0.50mm以上、より好ましくは0.60mm以上、さらに好ましくは0.70mm以上、よりさらに好ましくは0.75mm以上である。
紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長の調整は、紙基材の原料パルプの種類の選択や、叩解度の選択により行ってもよい。
原料パルプの種類としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)または広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が好ましく例示される。
また、叩解度が高く、カナダ標準ろ水度(CSF:Canadian Standard freeness)が小さいと、パルプ繊維の長さ加重平均繊維長が減少する傾向にある。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0020】
紙基材に用いられる木材パルプのカナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness;CSF)は、紙基材に求められる強度を得る観点、および紫外線レーザー印刷による耐水性の低下を抑制する観点から、好ましくは150mL以上、より好ましくは300mL以上、さらに好ましくは350mL以上であり、そして、好ましくは800mL以下、より好ましくは750mL以下、さらに好ましくは700mL以下である。
ここで、CSFは、JIS P 8121-2:2012によるカナダ標準ろ水度のことである。
【0021】
紙基材の坪量は、印刷用媒体としての強度、および包装体としての加工容易性の観点から、好ましくは30g/m以上、より好ましくは40g/m以上、さらに好ましくは50g/m以上、よりさらに好ましくは60g/m以上であり、そして、好ましくは700g/m以下、より好ましくは500g/m以下、さらに好ましくは350g/m以下である。
坪量はJIS P 8124:2011に規定される方法で測定する。
【0022】
紙基材の厚みは特に限定されないが、印刷用媒体としての強度、および包装体としての加工容易性の観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは70μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは900μm以下、より好ましくは700μm以下であり、さらに好ましくは500μm以下である。
紙基材の厚みはJIS P 8118:2014記載の方法で測定することができる。
【0023】
紙基材の密度は特に限定されないが、印刷用媒体としての強度、および包装体としての加工容易性の観点から、好ましくは0.30g/cm以上、より好ましくは0.40g/cm以上、さらに好ましくは0.45g/cm以上であり、そして、好ましくは1.20g/cm以下、より好ましくは1.00g/cm以下、さらに好ましくは0.90g/cm以下である。
紙基材の密度は、上述した紙基材の坪量および紙厚から算出される。
【0024】
<印刷層>
紫外線レーザー印刷用媒体は、紙基材に直接に接して積層された、酸化チタンを含有する印刷層を有する。当該印刷層は、塗工により設けてもよく、また、ラミネートにより設けてもよく、特に限定されない。印刷層は、酸化チタンを含有するラミネート層、または酸化チタンを含有する塗工層であることが好ましい。
【0025】
印刷層中の酸化チタンの含有量は、十分な印刷濃度を得る観点から、好ましくは0.04g/m以上、より好ましくは0.1g/m以上、さらに好ましくは0.2g/m以上、よりさらに好ましくは0.3g/m以上、特に好ましくは0.4g/m以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなり、必要以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、印刷層の形成容易性の観点、酸化チタンの含有量を多くすることにより、紫外線レーザー照射時の発煙により印字濃度が低下することを抑制する観点から、好ましくは10.0g/m以下、より好ましくは7.0g/m以下、さらに好ましくは5.0g/m以下、よりさらに好ましくは3.0g/m以下である。
【0026】
印刷層の厚みは、印字濃度を高くする観点から、好ましくは1.0μm以上であり、より好ましくは1.5μm以上であり、そして、印字後の平滑性を向上する観点から、好ましくは45μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
なお、印刷層の厚みが1.0μm以上であると、紫外線レーザー照射時に、レーザー光の吸収が厚み方向の全体で生じるため、印字濃度が高くなり、視認性に優れる画像が得られるので好ましい。また、必要以上の印刷層を設けることによるコストアップを抑制する観点から、45μm以下であることが好ましい。
印刷層の厚みは、印刷用媒体の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から測定される。
【0027】
印刷層は、酸化チタンに加え、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
(酸化チタン)
酸化チタンは、印刷層を塗工により設ける場合には、塗工液に含有されて、塗工されることが好ましく、該塗工液が水性塗工液であることがより好ましい。
一方、酸化チタンをラミネートにより設ける場合には、積層されるフィルムに含有されて積層されることが好ましい。
【0028】
印刷層が含有する酸化チタンは、組成式TiOで表され、二酸化チタン、またはチタニアとも呼ばれる。
酸化チタンは、いずれも結晶構造でもよく、また、アモルファスであってもよく、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、およびアモルファス酸化チタンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、入手容易性および安定性の観点から、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ルチル型酸化チタンであることがさらに好ましい。
酸化チタンの結晶形は、公知の方法で決定することができ、具体的には、ラマンスペクトル、XRDパターンの解析などにより決定することができる。例えば、ラマンスペクトルから同定する場合には、一般的には、ルチル型では、447±10cm-1、609±10cm-1にピークが確認され、アナターゼ型では、395±10cm-1、516±10cm-1、637±10cm-1にピークが確認される。
酸化チタンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
酸化チタンの形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
酸化チタンが不定形または球状である場合、酸化チタンの粒子径は特に限定されないが表面平滑性に優れるシート媒体を得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上であり、そして、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下、よりさらに好ましくは3.0μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
印刷層中の酸化チタンの粒子径は、マッフル炉で印刷用媒体または印刷物を525℃の条件で燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、S5200など)から得られるSEM画像から算出する。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させた後、SEMに供試する適当サイズへアルミ皿を切り出して作製した。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とする。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とする。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択すればよいが、20000倍程度が好ましい。また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定する。
基材が酸化チタンを含有する場合には、酸化チタンや無機顔料を含まない透明粘着テープ(3M株式会社製、309SNなど)に印刷層を移して灰分サンプルを作製する。具体的には、ローラー質量2kgのテープ圧着ローラー(株式会社安田精機製作所製、No349など)を用いて印刷層の上層へ粘着テープを貼付する。その後、セルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製など)に24時間浸漬させた後、印刷層を含む粘着テープをイオン交換水でよく洗浄する。得られた印刷層を含む粘着テープの水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させる。その後、525℃のマッフル炉で燃焼させて粒子径測定に用いる灰分を作製し、上記と同じ方法で粒子径を測定する。
なお、原料として使用する酸化チタン粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、LA-300等)によって測定されるメディアン径として求めることができる。測定条件は、以下の条件が好ましい。なお、レーザー回折・散乱式粒度分布計から求められる平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から算出する粒子径と±50%程度乖離する場合がある。
分散媒:イオン交換水、
測定粒子屈折率:2.75-0.01i、
溶剤屈折率:1.333、
内蔵超音波照射(30W):3分、
循環速度:3
【0030】
また、酸化チタンが針状である場合、酸化チタンの長径は、特に限定されないが、表面平滑性に優れるシート媒体を得る観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは15.0μm以下である。また、短径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、そして、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、酸化チタンが針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは30以下である。
印刷層が含有する酸化チタンの長径、短径は、印刷用媒体または印刷物をマッフル炉で燃焼して得た灰分を上記と同様に処理して、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、S5200など)から得られるSEM画像から測定することができる。走査型電子顕微鏡に供試する粉体は、上記と同様の方法で得られる。
また、原料として使用する酸化チタンの長径および短径についても、走査型電子顕微鏡から得られるSEM画像から測定することができる。
基材が酸化チタンを含有する場合には酸化チタンや無機顔料を含まない透明粘着テープ(3M株式会社製、309SNなど)に印刷層を移して灰分サンプルを作製する。具体的には、ローラー質量2kgのテープ圧着ローラー(株式会社安田精機製作所製、No349など)を用いて印刷層の上層へ粘着テープを貼付する。その後、セルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製など)に24時間浸漬させた後、印刷層を含む粘着テープをイオン交換水でよく洗浄する。得られた印刷層を含む粘着テープの水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させる。その後、525℃のマッフル炉で燃焼させて粒子径測定に用いる灰分を作製し、上記と同じ方法で長径と短径を測定する。
酸化チタンの粒子径、長径および短径は、実施例に記載の方法により測定される。なお、原料として使用した酸化チタンの粒子径、長径、および短径の値を採用してもよい。
【0031】
(熱可塑性樹脂)
印刷層に使用される熱可塑性樹脂は、バインダーとして機能する。
印刷層の熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、印刷層を塗工により設ける場合、すなわち、印刷層が塗工層である場合には、水性塗工液として塗布することが好ましい観点から、水希釈性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
水希釈性の樹脂とは、水溶性、エマルション型、ディスパーション型の樹脂が例示される。
水希釈性の熱可塑性樹脂としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよく、例えば、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
より具体的には、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステルまたはスチレン等とをモノマー成分として共重合したアクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂が例示される。また、マレイン酸系樹脂としては、スチレン-マレイン酸樹脂が例示される。
これらの中でも、塗工液の安定性、塗工層の耐溶剤性の観点から、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、およびマレイン酸系樹脂から選択される少なくとも1つが好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、およびマレイン酸系樹脂から選択される少なくとも1つがより好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがさらに好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがよりさらに好ましい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤系の塗工液とする場合には、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル共重合系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0032】
熱可塑性樹脂の含有量は、塗工液の固形分中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0033】
塗工液は、水性塗工液であることが好ましく、使用する水性媒体としては、水、または水と水混和性溶剤との混合物が挙げられる。
水混和性溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類が挙げられる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プルピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
有機溶剤系塗工液である場合には、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤など公知の溶剤等が挙げられる。
【0034】
塗工液の固形分濃度は特に限定されないが、所望の塗工層の厚みを得る観点、塗工液を塗工容易な粘度とする観点、および乾燥容易性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0035】
塗工液の粘度は、塗工適性、所望の塗工層の厚みを得る観点、および乾燥容易性の観点から、Brookfield型粘度計による測定で、好ましくは10mPa・s(20℃)以上、より好ましくは30mPa・s(20℃)以上であり、そして、好ましくは5000mPa・s(20℃)以下、より好ましくは4000mPa・s(20℃)以下、さらに好ましくは3000mPa・s(20℃)以下、よりさらに好ましくは2000mPa・s以下である。
【0036】
印刷層をラミネートにより設ける場合、すなわち、印刷層がラミネート層である場合には、酸化チタンを含有するフィルムを基材に積層することが好ましい。
ラミネート層を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、酸化チタンを内包させてフィルム状に加工可能であればよく、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選すればよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
これらの中でも、ラミネート層を構成する樹脂は、汎用的に使用することができ、かつ、紫外線の透過率が高く、ラミネート層の内部まで酸化チタンの変色を可能とする観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルを含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。ラミネート層を構成する樹脂は、ポリオレフィンであることがよりさらに好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1つであることがよりさらに好ましい。ポリエチレン(PE)は、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のように区分される。これらの中では、押し出しラミネート性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
なお、ラミネート層を構成する樹脂として、生分解性樹脂であるポリエステルを使用すると、環境負荷が低減される点で好ましく、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートが例示される。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ラミネート層中の熱可塑性樹脂の含有量は、紫外線レーザー照射時の発煙を抑制する観点から、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、さらに好ましくは50.0質量%以上、よりさらに好ましくは70.0質量%以上であり、そして、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99.0質量%以下である。
【0038】
印刷層は、上述した酸化チタンおよび熱可塑性樹脂に加え、他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、酸化チタン以外の無機顔料が例示される。無機顔料としては、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛などが例示され、これらの中でも、紫外線レーザー照射時の発煙を抑制する観点、および入手容易性の観点から、カオリン、炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムでもよく、軽質炭酸カルシウムでもよく、特に限定されないが、重質炭酸カルシウムであることが好ましい。
酸化チタン以外の無機顔料を含有することにより、紫外線レーザー照射時の酸化チタンの飛散が抑制され、発煙が抑制されると共に、印刷濃度が高い印刷物が得られるので好ましい。また、印刷層が塗工層である場合に、無機顔料を含有することが好ましい。
【0039】
無機顔料の形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
印刷層が無機顔料を含有する場合、印刷層中の無機顔料の含有量は、発煙を抑制する観点、および印刷濃度が高い印刷物を得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
酸化チタンを除く無機顔料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、酸化チタンを除く無機顔料の合計として、上記の含有量であることが好ましい。
【0040】
本実施形態の印刷用媒体は、印刷層に、上述した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の成分を添加してもよく、例えば、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、消泡剤、造膜剤、顔料分散剤、粘度調整剤などが例示される。
【0041】
〔塗工液〕
印刷層を塗工により設ける場合、塗工液は、上記の各種材料を水性媒体と混合して得られる。なお、水性媒体との混合に先立ち、酸化チタン、熱可塑性樹脂、水、および必要に応じて水混和性溶剤、顔料分散剤、顔料分散性樹脂等を混合して混練し、これに、さらに水、必要に応じて水混和性溶剤、および所定の材料の残りを添加、混合してもよい。
塗工液は、上記各成分をホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、3本ロールミルやビーズミル等の分散機にて混合、分散することにより得られる。
【0042】
塗工液の塗布方法としては特に限定されず、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布等により基材に塗布すればよい。
【0043】
〔ラミネート層(フィルム)〕
ラミネート層は、少なくとも酸化チタンおよび熱可塑性樹脂、並びに必要に応じて無機顔料等の材料を溶融混練した原料組成物を調製し、これをフィルム状に成形した後、必要に応じて延伸することで得られる。
なお、原料組成物の調製に際し、酸化チタンや無機顔料を高濃度で含有するマスターバッチを調製してから、これを樹脂と混合してもよい。
また、予め均一に混合した材料を成形機に仕込んでもよく、成形機と一体となったホッパーや混練機で混合してもよい。
フィルム状に成形する方法としては、従来公知の方法から適宜選択すればよく、例えば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
【0044】
基材とフィルムとを接着剤層を介して貼付してもよく、またはラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
ラミネート加工としては、具体的には、熱ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法等により、紙基材とラミネート層とを積層することが例示される。
これらの中でも、ラミネート層と紙基材とを貼付する工程が不要であり、製造工程の観点から、押出ラミネート法が好ましい。
【0045】
<樹脂層>
本実施形態の印刷用媒体は、防水性、防汚性を向上させる観点から、紙基材および印刷層の上に、樹脂層を有していていもよく、印刷濃度向上の観点から、印刷層が塗工層である場合には、樹脂層を有することが好ましい。なお、この場合には、上述した図2の構成を有する。
樹脂層に使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されず、印刷層にラミネートできるものであれば特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選択すればよい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示され、これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがさらに好ましく、ポリエチレンがよりさらに好ましい。
また、バイオマス樹脂や生分解性樹脂を用いてもよい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の熱可塑性樹脂の中では、押し出しラミネート性とバリア性が優れることからポリエチレンが好ましい。
ポリエチレン(PE)は、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のように区分される。これらの中では、押し出しラミネート性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
ラミネート層は、従来公知の製造方法から適宜選択して製造すればよく、例えば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
【0046】
樹脂層の全光線透過率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上であり、そして、100%以下である。上限は特に限定されない。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される。
【0047】
樹脂層の厚みは特に限定されないが、鮮明な印字を得る観点、並びに印刷用媒体および印刷物のハンドリング性の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは12μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0048】
[印刷物および印刷物の製造方法]
本実施形態の印刷物の製造方法は、上述した紫外線レーザー印刷用媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する。
また、本実施形態の印刷物は、上述した紫外線レーザー印刷用媒体から得られた印刷物であって、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを有する印刷領域を有する。非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。また、前記変色された酸化チタンを有する印刷領域は、紫外線レーザーの照射により変色した酸化チタンを含有する領域であり、紫外線レーザー照射領域、すなわち、印刷領域である。
本実施形態の印刷物の製造方法に使用される印刷用媒体としては、上述した印刷用媒体が例示され、好ましい範囲も同様である。また、本実施形態の印刷物の製造方法において、少なくとも紫外線レーザー照射領域が紙基材上に印刷層を有していればよく、印刷を行わない領域には印刷層が設けられていなくてもよい。
【0049】
紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。すなわち、本実施形態の印刷物において、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。ラマン強度の比を前記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
なお、印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)である。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。また、印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物において、紫外線レーザーによる印刷が可能な領域と、存在する場合は紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)とを合わせた酸化チタンを含有する領域全体を意味し、非印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物における印刷可能領域以外の領域を意味する。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
【0050】
本実施形態の印刷物は、非印刷領域が白色であり、印刷領域が黒色であることが好ましい。
非印刷領域は、マンセル表色系における明度が10番、すなわち、白色であることが好ましい。一方、印刷領域は、マンセル表色系における0番~8番のいずれかであることが好ましく、0~6番であることがより好ましく、0~4番であることがさらに好ましい。
上記のマンセル表色系における色を得るために、印刷用媒体における印刷層の厚み、酸化チタンの含有量等の特性、紫外線レーザーの照射条件(例えば、平均出力、繰返し周波数、波長など)を適宜調整することが好ましい。
【0051】
<紫外線レーザーの照射条件>
紫外線レーザーの波長としては、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは370nm以下、より好ましくは365nm以下、さらに好ましくは360nm以下であり、そして、好ましくは260nm以上、より好ましくは340nm以上、さらに好ましくは350nm以上である。
【0052】
紫外線レーザーの平均出力は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは0.3W以上、より好ましくは0.8W以上、さらに好ましくは1.2W以上、よりさらに好ましくは1.8W以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは30W以下、より好ましくは25W以下、さらに好ましくは20W以下、よりさらに好ましくは15W以下、よりさらに好ましくは10W以下、よりさらに好ましくは6W以下である。
【0053】
紫外線レーザーの繰返周波数(周波数)は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは10kHz以上、より好ましくは20kHz以上、さらに好ましくは30kHz以上であり、そして、好ましくは100kHz以下、より好ましくは80kHz以下、さらに好ましくは60kHz以下である。
【0054】
紫外線レーザーのスポット径は、鮮明な画像を得る観点および印刷容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは240μm以下、さらに好ましくは180μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。
【0055】
紫外線レーザーのスキャンスピードは、高速印刷および印刷領域の視認性の観点から、好ましくは500mm/sec以上、より好ましくは1000mm/sec以上、さらに好ましくは2000mm/sec以上であり、そして、好ましくは7000mm/sec以下、より好ましくは6000mm/sec以下、さらに好ましくは5000mm/sec以下である。
【0056】
紫外線レーザーのラインピッチは、鮮明な画像を得る観点、および装置の入手容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0057】
<印刷物の製造方法の態様>
本実施形態の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本実施形態の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本実施形態の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本実施形態の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、本実施形態の印刷用媒体を有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の実施態様の印刷物の製造方法は、酸化チタンを所定量含有し、本実施形態の印刷用媒体にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の最外層が、上記本実施形態の印刷用媒体にて作製されていればよい。
また、包装体としては、食品用容器等が例示され、該包装体の側面または裏面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
【0058】
(2)ラベルへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第二の実施態様は、本実施形態の印刷用媒体を有するラベルに情報を印刷する方法である。該ラベルの印刷面を構成する印刷用媒体が、本実施形態の印刷用媒体にて作製されていればよい。
印刷されたラベルは、ラベル貼り付け装置を用いて包装体にラベルを貼付することが好ましい。ラベル貼り付け装置としては、各種のラベル貼り付け装置が提案されている。
第1のラベル貼り付け装置としては、ロール状に巻いたラベル原紙に接着剤を付与した後に物品に貼付する。より具体的には、ロール状に巻いたラベル原紙を1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベル原紙を、接着剤が塗布されたラベル原紙保持体によって受取り、このラベル原紙の裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段から接着剤が付与されたラベル原紙(ラベル)を受け取って容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラにおいて、上記切断手段と糊付け搬送手段との間に、外面にラベル保持面を有する回転搬送手段を設けたロールラベラが例示され、特開平6-64637号公報が例示される。
また、ロール状に巻いたラベル原紙を一枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、貼付ロールに受け渡す受渡ロールと、貼付ロールに保持されたラベル原紙に糊を付与する糊付けロールとを有するロールラベラや、前記受渡ロールを不要とした態様が例示される。
紫外線レーザーの照射は、ロール状に巻いたラベル原紙を所定の長さに切断する前、または切断後であって次のロール等への受け渡し前であることが好ましい。ロールラベラの態様に合わせて、ロール状に巻いたラベル原紙の表面または裏面が、包装体に貼付した際の表面または裏面となるため、これに合わせて紫外線レーザーの照射を行う。
【0059】
第2のラベル貼り付け装置は、ラベルとして、粘着ラベルロールを使用する。
剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合には、例えば、粘着ラベルと剥離紙を分離する剥離紙分離手段と、剥離紙が分離された粘着ラベルを受け取る受渡ロールと、受渡ロールから粘着ラベルを吸引して、物品(包装体)に貼付する貼付ロールとを有する貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、剥離紙を分離する前、または剥離紙分離後であって貼付ロールに担持される前に行うことが好ましい。
また、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルと剥離紙とを分離する機構を有し、分離直後にラベルを貼付する機構を有し、セットされた粘着ラベルロールから剥離紙を分離するまでの間に紫外線レーザーにより印刷する装置が例示される。上記の粘着ラベルの貼付方法は、流し貼りとも呼ばれる。
さらに、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルから剥離紙を分離する機構を有し、粘着ラベルを物品(包装体)に貼付する機構を有し、前記貼付する機構が、シリンジ方式、エアジェット方式、またはロボットアーム方式であるラベル貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、セットされた剥離紙付きの粘着ラベルロールから、剥離紙を分離するまでの間で行われることが好ましい。
【0060】
ラベルとして、ライナレス粘着ラベルを使用してもよい。ライナレス粘着ラベルは、剥離紙のないラベルであり、剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合に比して、1ロールのラベル枚数が多く、剥離紙が存在しないため、安価であるという特徴を有する。
ライナレス粘着ラベルを使用したラベル貼り付け装置としては、ライナレスラベルロールをセットする機構と、ライナレスラベルを1枚ずつに切断する切断機構と、切断されたライナレスラベルを物品(包装体)に貼付する貼付機構を有し、前記貼付機構が、シリンダー方式またはロボットアーム方式である装置が例示される。紫外線レーザーの照射による印刷は、ライナレスラベルロールをセットする機構から切断機構までの間、または、切断されたライナレスラベルが貼付機構に送られる間であることが好ましい。
【0061】
第3のラベル貼り付け装置は、本実施形態の印刷用媒体を物品(包装体)に貼付した後に、紫外線レーザーにて印刷する。
ラベルの貼付の方法としては、上述した第1の装置および第2の装置が参照される。
【0062】
(3)粘着テープへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第三の実施態様は、本実施形態の印刷用媒体を粘着テープとする態様である。
すなわち、第三の実施態様の印刷物の製造方法は、前記本実施形態の印刷用媒体から作製された粘着テープを物品(包装体)に貼付する工程を有し、前記貼付する工程の前、または貼付する工程の後に、紫外線レーザーにより印刷する工程を有する。
また、段ボール封緘機に紫外線レーザーによる印刷装置を組み込んだ印刷装置を使用してもよい。具体的には、粘着テープ巻取りをセットする機構と、段ボールを搬送用のコンベアを有し、段ボールのフラップを折り込む機構と、粘着テープを貼付して段ボールを封緘する機構を有し、粘着テープを貼付する間、または貼付した後に、粘着テープに紫外線レーザーにて印刷する機構を有する。
【0063】
本実施形態の印刷物および印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
【0064】
<印刷用媒体および印刷物を用いてなる加工品>
本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体は、紫外線レーザーを照射することにより印刷が可能であり、種々の用途に使用可能である。
本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体および該印刷用媒体に紫外線レーザーにより印刷を行った印刷物は、種々の加工品に加工して使用される。
本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体および該印刷用媒体に紫外線レーザーにより印刷を行った印刷物を用いてなる加工品としては、例えば、包装体、ラベル、または粘着テープなどが例示される。また、本実施形態の印刷用媒体および印刷物を成形することにより、直接、包装体に成形して使用することも好ましい。
包装体としては、外装箱;牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器);食品トレー、食品カップ(どんぶり状)などの食品用容器、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベルシート、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
包装体表面に紫外線レーザーを照射することで、日付、バーコードの他、内容物に関する各種情報(内容物、原材料名、内容量、製造社名)などの文字の印刷が可能である。
【実施例0065】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下の実施例において、「%」および「部」は特に記載のない限り、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0066】
[パルプスラリーの調製]
パルプスラリーA~Gを、表1に示す方法にて調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
[塗工液Aの調製]
固形分として酸化チタン(石原産業株式会社製、品番:R-780、平均粒子径0.24μm(カタログ値)、不定形)3部、炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製、品番:FMT-97W、重質炭酸カルシウム、平均粒子径0.95μm(カタログ値)、不定形)37部、カオリン(Tiele社製、KAOFINE90、平均粒子径0.21μm(カタログ値))40部を混合し、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.08部を添加した後、イオン交換水を加え、固形分濃度が67.5%に調製した。その後コーレス分散機を用いて顔料分散液を作製し、スチレン-ブタジエン系ラテックスを固形分として20部添加して固形分濃度が62.3%の塗工液を調製した。
【0069】
[塗工液B~Dの調製]
固形分として表2の配合になるようにした以外は塗工液Aと同様にして、塗工液B~Dを調製した。
【0070】
[塗工液E]
塗工液Eとして、フレキソ用水系白インク(サカタインクス株式会社製、NP10 白 SN-15 SP-3 PR-809、固形分濃度68.0%、固形分中、酸化チタン濃度75%)を使用した。
【0071】
[塗工液F]
塗工的Fとして、DICグラフィック株式会社製、ラミCP709(固形分濃度46.0%、固形分中、酸化チタン濃度60%)を使用した。
【0072】
[塗工液Gの調製]
酸化チタンとして、酸化チタン(アナターゼ型酸化チタン、韓国コスモケミファ製、品番:Ka-100、粒子径0.15μm(カタログ値)、形状:不定形)を使用した以外は、塗工液Aと同様にして、塗工液Gを調製した。
【0073】
[塗工液Hの調製]
塗工液E100部とメジウム(サカタインクス株式会社製、NP10 PP-F、固形分濃度25.0%、固形分中、酸化チタン濃度0%)9928部を混合し、固形分濃度25.4%、固形分中、酸化チタン濃度2%の塗工液Hを調製した。
【0074】
[塗工液の粘度]
塗工液A~E、塗工液αの粘度は、JIS Z 8803(2011)単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法を参考に、Brookfield型粘度計(東機産業株式会社製、型番:BII形粘度計)により、20℃で測定した。
【0075】
【表2】
【0076】
[実施例1~5、比較例1、2]
(紙基材の製造方法)
表3に示すパルプスラリー(固形分)100部に対して、両性ポリアクリルアミド系内添紙力増強剤(荒川化学工業株式会社製、品番:ポリストロンPS1260)0.55部(固形分換算)、ロジン系内添サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、品番:サイズパインN-771)1.45部(固形分換算)、硫酸バンド2.5部(固形分換算)を添加し、表層用、表下層用、中層用、裏下層用、裏層用の五層分の紙料を調製した。この紙料を用いて、五層全ての設定坪量を60g/mとして、五層抄きのツインワイヤー抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、サイズプレスでポリビニルアルコールを0.7g/m塗布し、カレンダーで平滑化処理を施して、坪量300g/m、紙厚357μm、密度0.84g/cmの紙基材を得た。
【0077】
(マスターバッチの製造方法)
特開2015-96568号公報に習い、以下の手順で作製した。
PE樹脂(ポリエチレン樹脂(LDPE)、日本ポリエチレン株式会社製、品番:LC522)60部と酸化チタン(石原産業株式会社製、品番:R-780、ルチル型酸化チタン、平均粒子径0.24μm、形状:不定形)40部をタンブラーミキサー(株式会社エイシン製、TM-65S)にて45rpm、1時間の条件で混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42)にてスクリュー回転数250rpm、シリンダー温度200℃の条件で溶融混練し、ストランド状に押出し、これを水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて平均軸径2.0mm、平均軸長3.0mmの柱状にペレット化してマスターバッチを得た。
【0078】
(印刷層付与方法)
ポリエチレン樹脂(LDPE、日本ポリエチレン株式会社製、品番:LC522)と前記マスターバッチを酸化チタンの固形分濃度、厚みが表の通りになるよう単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、前記紙基材の表面に溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、ラミネート層を有する印刷用媒体を得た。なお、溶融温度は320℃とした。
【0079】
[実施例6~8]
(印刷層付与方法)において、印刷層中の酸化チタンの濃度を表3のように変更した以外は実施例2と同様にして印刷用媒体を得た。
【0080】
[実施例9~10]
(印刷層付与方法)において、印刷層の厚みを表3のように変更した以外は実施例2と同様にして印刷用媒体を得た。
【0081】
[実施例11]
ポリエチレンをポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、品番:PH943B)に変更した以外は実施例2と同様にして印刷用媒体を得た。なお、マスターバッチ作製時のシリンダー温度は200℃とし、溶融積層の際の溶融温度は380℃とした。
【0082】
[実施例12]
酸化チタンをアナターゼ型酸化チタン(韓国コスモケミファ製、品番:Ka-100、平均粒子径0.15μm(カタログ値)、不定形)に変更した以外は実施例2と同様にして印刷用媒体を得た。
【0083】
[実施例13]
(塗工液の調製方法)
固形分として酸化チタン(石原産業株式会社製、R-780)100部、イオン交換水50部を混合し、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.08部を添加し、カウレスディゾルバーを用いて顔料分散液を作製した。上記顔料分散液15.7部とバインダー(三井化学株式会社製、ケミパールS300、固形分35%)571部をカウレスディゾルバーを用いて混合し、固形分濃度36%、固形分中の酸化チタン濃度5%の塗工液を調製した。
(印刷層付与方法)
実施例2で使用した紙基材に対して、メイヤーバーを用いて表の厚さになるよう塗工し、140℃、1分間の条件で乾燥させて印刷層を付与し、印刷用媒体を得た。
【0084】
[実施例14]
印刷層の上に、さらに下記の樹脂層を設けた以外は、実施例2と同様にして、印刷用媒体を得た。
(樹脂層の付与)
PE樹脂(LDPE、日本ポリエチレン株式会社製、品番:LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、印刷層の上に、樹脂の厚みが15μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、ラミネート層を有するシート媒体を得た。なお、溶融温度は320℃とした。
【0085】
[実施例15~27、較例3~4]
(紙基材の製造方法)
表4のパルプを使用し、実施例1と同じ方法で紙基材を得た。
(印刷層付与方法)
メイヤーバーを用いて、表4の塗工液を、表4に記載の厚さ(乾燥後厚み)になるよう塗工し、140℃、1分間の条件で乾燥させて印刷層を付与し、印刷用媒体を得た。
【0086】
[実施例28]
(紙基材の製造方法)
実施例16で作製した紙基材を使用した。
(印刷層付与方法)
ロッドコーターを用いて表4に記載の塗工液を、表4に記載の厚さ(乾燥厚み)で塗工した(塗工速度:200m/min)。その後130℃に設定した乾燥ゾーンを通過させ、乾燥させた。
(樹脂層の付与)
PE樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、品番:LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、印刷層の上に樹脂の厚みが15μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、印刷層の上に、さらに樹脂層を有する印刷用媒体を得た。なお、溶融温度は320℃とした。
【0087】
[実施例29]
(紙基材の製造方法)
実施例16で作製した紙基材を使用した。
(印刷層付与方法)
グラビア印刷機を用いて表4に記載の塗工液を、表4に記載の厚さ(乾燥厚み)で塗工した(塗工速度:100m/min)。その後100℃に設定した乾燥ゾーンを通過させ、乾燥させた。
(樹脂層の付与)
PE樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、品番:LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、印刷層の上に樹脂の厚みが15μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、印刷層の上に、さらに樹脂層を有する印刷用媒体を得た。なお、溶融温度は320℃とした。
【0088】
[測定および評価方法]
実施例および比較例で得られた印刷用媒体に対して、以下の測定および評価を行った。
<保水度測定方法>
実施例および比較例の印刷用媒体を5cm角に切り出し、それをイオン交換水に浸し、濃度2%に調整した上で、24時間浸した。24時間浸した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。樹脂層を有する場合には、樹脂層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取した。
得られたパルプ繊維について、JAPAN TAPPI No.26(2000)(パルプ-保水度試験方法)に準じて、保水度を測定した。
【0089】
<長さ加重平均繊維長>
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、以下の方法で測定した。
実施例および比較例の印刷用媒体を5cm角に切り出し、それをイオン交換水に浸し、濃度2%に調整した上で、24時間浸した。
24時間浸した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。樹脂層を有する場合には、樹脂層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取した。
繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ加重平均繊維長(ISO)」を測定した。
なお、「長さ加重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。
【0090】
<酸化チタンの含有量>
1.印刷層がラミネート層(フィルム)である場合
(前処理)
印刷層であるラミネート層と紙基材とを分離する前処理を実施した。適当なサイズに切り出した印刷可能領域をセルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製)に3時間浸漬させた後、ラミネート層を紙基材から剥離してイオン交換水を用いてよく洗浄した。その後、ラミネート層の水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させて、測定に供試するラミネート層を得た。
また、切り出した試験片は面積が算出できるよう切り出し、算出した面積を後述の式に適用した。
(試験片の作製)
前処理したラミネート層を適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積と質量を記録した。
(試験片の溶解)
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させた。試験片の質量は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容した。また未溶解物が残留する場合は、硝酸、フッ酸の比率を変更してもよい。
(溶解液中の酸化チタン量測定)
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原子の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定した。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試した。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出した。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの分子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m
【0091】
2.印刷層が塗工層である場合
2-1.非印刷可能領域を印刷用媒体中に含む場合
(試験片の作製)
印刷用媒体の印刷可能領域、非印刷可能領域(塗工層が設けられていない領域)それぞれを適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積を記録した。
(試験片の溶解)
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させた。試験片の面積は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容した。
(溶解液中の酸化チタン量測定)
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原子の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定した。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試した。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出した。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの分子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m
印刷可能領域の酸化チタン含有量から、非印刷可能領域の酸化チタン含有量を減じることにより、塗工層中の酸化チタンの含有量を求めた。
【0092】
2-2.非印刷可能領域を印刷用媒体中に含まない場合
(試験片の作製)
記録媒体2枚を適当なサイズに切り出し、切り出した面積を記録した。
切り出した試験片のうち1枚を研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて、樹脂層と印刷層(塗工層)のみを削り取り除き、リファレンスサンプルとした。
過剰に削り取り過ぎないよう、適宜電子顕微鏡を用いて断面を観察した。
(その後の処理)
2-1.と同様に処理し、2枚の酸化チタン含有量の差を塗工層の酸化チタン含有量とした。
【0093】
<無機顔料含有量>
1.印刷層がラミネート層(フィルム)である場合
(前処理)
印刷用媒体に対して、印刷層であるラミネート層と紙基材とを分離する前処理を実施した。適当なサイズに切り出した印刷可能領域をセルロース粘度測定用の銅エチレンジアミン溶液(メルク社製)に3時間浸漬させた後、ラミネート層を紙基材から剥離してイオン交換水を用いてよく洗浄した。その後、ラミネート層の水分を拭き取り、60℃の乾燥機で1時間乾燥させて、測定に供試するラミネート層を得た。
また、切り出した試験片は面積が算出できるよう切り出し、算出した面積を後述の式に適用した。
【0094】
(試験片の作製)
前処理したラミネート層および印刷用媒体の印刷可能領域を適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積と質量を記録した。
【0095】
(試験片中の灰分含有量測定)
マッフル炉を用いて525℃、2時間の条件で試験片を焼成した。
得られた灰分の質量を正確に測定し、下記式で試験片中の灰分を算出した。
試験片中の灰分含有量(g/m)=灰分質量(g)÷試験片面積(m
【0096】
(試験片中の無機顔料含有量測定)
上記試験片中の灰分含有量から酸化チタン含有量を差し引き、試験片中の無機顔料含有量とした。
【0097】
2.印刷層が塗工層である場合
2-1.非印刷可能領域を印刷用媒体中に含む場合
(試験片の作製)
印刷用媒体の印刷可能領域、非印刷可能領域(塗工層が設けられていない領域)それぞれを適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積を記録した。
【0098】
(試験片中の灰分含有量測定)
マッフル炉を用いて525℃、2時間の条件で試験片を焼成した。
得られた灰分の質量を正確に測定し、下記式で試験片中の灰分含有量を算出した。
その後、印刷可能領域の灰分含有量から非印刷可能領域の灰分含有量の差を灰分含有量とした。
試験片中の灰分含有量(g/m)=灰分質量(g)÷試験片面積(m
灰分含有量(g/m)=印刷可能領域の灰分含有量(g/m)-非印刷可能領域の灰分含有量(g/m
【0099】
(試験片中の無機顔料測定)
上記試験片中の灰分含有量から酸化チタン含有量を差し引き、試験片中の無機顔料含有量とした。
【0100】
2-2.非印刷可能領域を印刷用媒体中に含まない場合
(試験片の作製)
記録媒体2枚を適当なサイズに切り出し、切り出した面積を記録した。
切り出した試験片のうち1枚を研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて、樹脂層と塗工層(印刷層)のみを削り取り除き、リファレンスサンプルとした。
過剰に削り取り過ぎないよう、適宜電子顕微鏡を用いて断面を観察した。
(その後の処理)
2-1.と同様に処理し、2枚の灰分含有量差から酸化チタン含有量を差し引き、無機顔料含有量とした。
【0101】
<印刷層および樹脂層の厚み>
走査型電子顕微鏡から得られる画像データから印刷層および樹脂層の厚みを測定した。
(1)測定サンプルの作製
サンプルを光硬化型樹脂(東亞合成株式会社製、D-800)で包埋し、ウルトラミクロトームで印刷用媒体の断面出しを実施した。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削した。
切削した断面へ厚さ20nm程度の金蒸着を施し、走査型電子顕微鏡の測定へ供試した。
(2)測定装置・条件
測定装置:S-3600(株式会社日立ハイテク製)
測定条件:倍率2000倍
走査型顕微鏡の種類は上記に限らないが、スケールバーが表示されるタイプの装置を使用する。
印刷層や樹脂層が薄い場合は、適切な倍率を選択して画像データを取得する。
(3)測定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて、観察する印刷層からチタン元素が含有されることを確認した後、倍率2000倍で画像データを取得した。得られた画像データを印刷用紙に印刷した後、定規で対象の印刷層および樹脂層の厚み(他の層との境界から境界の長さ)を測定し、スケールバーと比較して実際の印刷層および樹脂層の厚みを測定した。1つの測定サンプルから無作為に選んだ5箇所の画像データを取得し、1箇所の画像データから、印刷層(または樹脂層)が最も厚い箇所、薄い箇所の厚みを測定し、計10箇所の平均を印刷層(または樹脂層)の厚みとした。
【0102】
<耐水性ダウン率の評価>
JIS P 8140:2020を参考に、下記の方法で測定した。
(使用器具)
吸水度試験機(JIS P 8140:2020に準拠。φ85mm)
金属ローラー(JIS P 8140:2020に準拠。幅200mm、φ90mm、10kg)
【0103】
1.印刷用媒体の透気度が99999秒以上の場合(JIS P 8117:2009記載の王研式試験機法による透気度)
印刷用媒体の印刷層が設けられている側から測定した透気度(JIS P 8117:2009記載の王研式試験機法による透気度)が99999秒以上である場合、以下の方法により耐水性ダウン率を評価した。
(試験片)
実施例・比較例の印刷用媒体から110mm角2枚に切り出し、1枚は紫外線レーザー照射機(株式会社キーエンス製、型番:MD-U1020C)を用いて、試験片表面に100mm×100mmの正方形(全体を塗り潰し)を印刷した。
・波長:355nm
・出力:80%(出力100%時2.5W)
・周波数:40kHz
・スポット径:40μm(焦点合わせ時)
・スポット可変:0
・塗りつぶし間隔:0.10mm
・スキャンスピード:1000mm/sec
(操作)
JIS P 8111:1998に準拠した方法で、試験片を調湿した後、試験片の質量を記録した。
その後吸水度試験機に試験片を設置し、90℃に調整したイオン交換水100mL投入から30分後、JIS P 8140:2020に記載の脱水方法で試験片の水分を除去して、湿潤質量を測定した。
吸水度(g/m)=(湿潤質量(g)-調湿後質量(g))÷試験面積(m
印刷を行った試験片の吸水度と、印刷を行っていない試験片の吸水度との差を耐水性ダウン量とした。
(評価)
A:耐水性ダウン量が1g/m未満
B:耐水性ダウン量が1g/m以上10g/m未満
C:耐水性ダウン量が10g/m以上20g/m未満
D:耐水性ダウン量が20g/m以上30g/m未満
E:耐水性ダウン量が30g/m以上
【0104】
2.印刷用媒体の透気度が99999秒未満の場合(JIS P 8117:2009記載の王研式試験機法による透気度)
印刷用媒体の印刷層が設けられている側から測定した透気度(JIS P 8117:2009記載の王研式試験機法による透気度)が99999秒未満である場合、イオン交換水の温度を23℃とし、投入から脱水までの時間を1分間とした。また試験片への印刷を以下の条件に変更した。それ以外は1.の方法と同様に評価した。
(試験片)
実施例・比較例の印刷用媒体から110mm角2枚に切り出し、1枚は紫外線レーザー照射機(株式会社キーエンス製、型番:MD-U1020C)を用いて、試験片表面に100mm×100mmの正方形(全体を塗り潰し)を印刷した。
・波長:355nm
・出力:80%(出力100%時2.5W)
・周波数:40kHz
・スポット径:40μm(焦点合わせ時)
・スポット可変:0
・塗りつぶし間隔:0.05mm
・スキャンスピード:3000mm/sec
【0105】
(評価)
A:耐水性ダウン量が5g/m未満
B:耐水性ダウン量が5g/m以上10g/m未満
C:耐水性ダウン量が10g/m以上15g/m未満
D:耐水性ダウン量が15g/m以上20g/m未満
E:耐水性ダウン量が20g/m以上
なお、実施例1~12、14、28、29は、透気度が99999秒以上であり、上記1.により評価した。また、実施例13、15~27は、透気度が99999秒未満であり上記2.により評価した。
【0106】
<印刷濃度>
実施例、比較例で得られた印刷用媒体をMD:50mm×CD:50mmにカットし、試験片とした。
試験片を、紫外線レーザー照射機(社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、サンプル表面に10mm×10mmの正方形を印字した。
測定の際は、以下の条件を用いた。
・波長:355nm
・出力:80%(出力100%時2.5W)
・周波数:40kHz
・スポット径:40μm(焦点合わせ時)
・スポット可変:60
・塗りつぶし間隔:0.04mm
・スキャンスピード:3000mm/sec
なお、レーザーの焦点位置の調整では、装置付属の高さ補正機能を使用し、上記スポット可変値で、レーザーの焦点位置を補正した。
印字した10mmの正方形角を使用し、マクベス濃度計で印字部の濃度を測定し、以下基準により評価した。
A:測定値が0.40以上
B:測定値が0.30以上0.4未満
C:測定値が0.20以上0.3未満
D:測定値が0.20未満
なお、A評価の場合には、印刷濃度が高く、印刷内容を容易に視認可能であった。また、B評価の場合には、印刷濃度が若干薄いが、印刷内容を視認可能であった。C評価の場合には、印字濃度は薄いが、印刷内容を何とか視認可能であった。一方、D評価の場合には、印刷濃度が薄すぎて、印刷内容が視認(判別)できなかった。
【0107】
<ラマン強度比>
上記<印刷濃度>の評価と同様に印刷画像を得て、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比を、以下のように測定した。
ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
・装置:レニショウ製 inVia Raman microscope QUONTOR
・励起レーザー:532nm
・レーザーパワー:50mW(出力100%時)
・レーザー出力:5%
・測定モード:共焦点モード
・照射時間:2.0sec
・積算回数:10回
・レーザースポット径:2.5μm
・対物レンズ:20倍
【0108】
(測定方法)
以下の方法により測定を行った。
(1)標準試料(単結晶シリコン、レニショー製)を用いて、ラマンシフト位置のキャリブレーションを実施した(単結晶シリコンの520.5cm-1)。
(2)シート状のサンプルを試料台に設置した。シートが平面を保てるよう、必要に応じて押さえを設置した。
(3)装置にてフォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)した。印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷部を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した。
(4)得られたラマンスペクトルは、装置付属の処理ソフト(レニショー製、Wire5.2)にてベースライン補正(インテリジェント補正)を実施した。前記処理ソフトの多項式11にてベーラインを補正した。
(5)ルチル型酸化チタンの場合447±10cm-1、アナターゼ型酸化チタンの場合516±10cm-1の波数範囲の最大値(最大強度)を読み取り、下記式によりラマン強度比を算出した。
ラマン強度比=印刷領域の最大強度÷非印刷領域の最大強度
(6)印刷領域(印字部)、非印刷領域(非印字部)について、それぞれ10箇所を測定し、平均値を測定結果とした。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
表3および表4に示すように、紙基材と、該紙基材に直接積層された酸化チタンを含有する印刷層とを有し、紙基材を構成するパルプの保水度が100%以上であり、紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長が2.2mm以下である紫外線レーザー印刷用媒体を、紫外線レーザーにて直接印刷することで、耐水性の低下が抑制され、さらに印刷濃度の高い印刷物が得られた。
一方、紙基材を構成するパルプ繊維の保水度が100%未満である比較例1、3の印刷用媒体では、印刷後の耐水性に劣るものであった。また、紙基材を構成するパルプ繊維の繊維長が2.2mmを超える比較例2、4の印刷用媒体でも、印刷後の耐水性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の紫外線レーザー印刷用媒体は、紫外線レーザーの照射によって酸化チタンが変色することで、視認性に優れる印刷物が提供でき、さらに、印刷適性に優れる。本発明の紫外線レーザー印刷用媒体および印刷物は、日付、バーコード等の可変情報が印刷される包装体、ラベル、および粘着テープなどの加工品に好適に適用される。さらに、本発明の印刷物の製造方法は、包装体、ラベル、粘着テープなどへの可変情報の印刷に好適に適用される。
【符号の説明】
【0113】
100 印刷用媒体
10 紙基材
20 印刷層
30 樹脂層
図1
図2