(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077403
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】遮熱組成物、遮熱材、及び遮熱組成物に用いられる中空粒子
(51)【国際特許分類】
C08L 33/20 20060101AFI20230529BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230529BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230529BHJP
C09D 133/18 20060101ALI20230529BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230529BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20230529BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20230529BHJP
C08J 9/32 20060101ALI20230529BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C08L33/20
C09K3/00 111B
C09D201/00
C09D133/18
C09D7/65
C09C3/10
C09C3/12
C08J9/32 CFF
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181491
(22)【出願日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2021189926
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】梶原 裕一
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4F074AA48
4F074AA78
4F074AC19
4F074CB74
4F074CB79
4F074CB84
4F074CC10X
4F074CC22X
4F074CC28Y
4F074CC29Y
4F074DA03
4F074DA32
4J002BG102
4J002CK021
4J002FA092
4J002FD012
4J002GH01
4J002GL00
4J002GT00
4J002HA02
4J037CA09
4J037CA16
4J037CC00
4J037DD05
4J037FF13
4J038CG162
4J038DG001
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038KA21
4J038MA06
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA13
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、優れた遮熱性能が発現可能な遮熱組成物、遮熱材及びその遮熱組成物に用いられる中空粒子を提供することを目的とする。
【解決方法】 外殻部が熱可塑性樹脂を含む中空粒子(A)と、基材成分(B)を含み、前記粒子(A)の内径(r1)と外径(r2)の比(r1/r2)が0.7~0.999であり、前記粒子(A)の平均粒子径が0.1~50μmであり、前記粒子(A)をメチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の粒子残存率が50%以上である、遮熱組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻部が熱可塑性樹脂を含む中空粒子(A)と、基材成分(B)を含み、
前記粒子(A)の内径(r1)と外径(r2)の比(r1/r2)が0.7~0.999であり、
前記粒子(A)の平均粒子径が0.1~50μmであり、
前記粒子(A)をメチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の粒子残存率が50%以上である、遮熱組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(C)を含む重合性成分の重合体であって、前記単量体(C)がニトリル系単量体を含み、前記ニトリル系単量体の含有量が前記単量体(C)100重量部に対して30重量部以上である、請求項1に記載の遮熱組成物。
【請求項3】
前記粒子(A)の含有量が、前記成分(B)の含有量100重量部に対して0.001~20重量部である、請求項1又は2に記載の遮熱組成物。
【請求項4】
塗料組成物である、請求項1又は2に記載の遮熱組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の遮熱組成物を成形してなる、遮熱材。
【請求項6】
遮熱組成物に用いられる中空粒子であって、
外殻部が熱可塑性樹脂を含み、
内径(r1)と外径(r2)の比(r1/r2)が0.7~0.999であり、
平均粒子径が0.1~50μmであり、
メチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の残存率が50%以上である、中空粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の中空粒子と微粒子を含み、前記微粒子が前記中空粒子の外殻部の外表面に付着してなる、微粒子付着中空粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱組成物、遮熱材、及び遮熱組成物に用いられる中空粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
遮熱性は一般的に、780~2100nmの波長域における光を反射することで得られる。また、遮熱性を有する材は、工場、住宅等の建築物の屋根や外壁、コンテナ、冷凍車等の屋根や外壁、物置の屋根や外壁に適用されることで、光に起因する内部温度の上昇を抑制することができる。
遮熱性を発現させるためには、酸化チタン等の顔料を使用するのが一般的であるが、ガラスビーズなどの無機粒子を使用して、遮熱効果を高めているものもある。
【0003】
特許文献1では、中空粒子と、塗膜形成後に前記中空粒子の配列構造を保持する構造保持剤とを含有する塗料であって、中空粒子として中空ガラス粒子を使用することで、熱伝導率及び空気伝播音を低減できるため、遮熱性及び遮音性の向上が可能であることが開示されている。
しかし、中空ガラス粒子を用いる場合、遮熱効果を発現するためには多量の中空ガラス粒子が必要となり、中空ガラス粒子の分散性が不十分になり塗工性が悪くなるため、新たに他の添加剤を加えるか、または中空ガラス粒子の添加量を抑制する必要があり、遮熱性能を十分に発現できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、十分に遮熱性能を発現可能な遮熱組成物はこれまでなかった。
本発明の目的は、優れた遮熱性能が発現可能な遮熱組成物、遮熱材及びその遮熱組成物に用いられる中空粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の中空粒子と基材成分を含む遮熱組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、外殻部が熱可塑性樹脂を含む中空粒子(A)と、基材成分(B)を含み、前記粒子(A)の内径(r1)と外径(r2)の比(r1/r2)が0.7~0.999であり、前記粒子(A)の平均粒子径が0.1~50μmであり、前記粒子(A)をメチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の粒子残存率が50%以上である、遮熱組成物である。
【0007】
本発明の遮熱組成物は、以下の1)~3)のうちの少なくとも1つを満足すると好ましい。
1)前記熱可塑性樹脂が、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(C)を含む重合性成分の重合体であって、前記単量体(C)がニトリル系単量体を含み、前記ニトリル系単量体の含有量が前記単量体(C)100重量部に対して30重量部以上である。
2)前記中空粒子(A)の含有量が、前記基材成分(B)の含有量100重量部に対して0.001~20重量部である。
3)塗料組成物である。
【0008】
本発明の遮熱材は、上記遮熱組成物を成形してなるものである。
【0009】
また、本発明は遮熱組成物に用いられる中空粒子であって、外殻部が熱可塑性樹脂を含み、内径(r1)と外径(r2)の比(r1/r2)が0.7~0.999であり、平均粒子径が0.1~50μmであり、メチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の残存率が50%以上である、中空粒子である。
【0010】
本発明の微粒子付着中空粒子は、上記中空粒子と微粒子を含み、前記微粒子が前記中空粒子の外殻部の表面に付着してなるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遮熱組成物は、優れた遮熱性能を発現できる。
本発明の遮熱材は、上記遮熱組成物を成形してなるものであるから、遮熱性能に優れる。
本発明の遮熱組成物に用いられる中空粒子は、優れた遮熱性能を発現できる遮熱組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】微粒子付着中空粒子の一例を示す概略図である。
【
図2】中空粒子を乾式加熱膨張法で製造するための製造装置の発泡工程部の概略図である。
【
図3】遮熱材を有する試験片の裏面温度を測定する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の遮熱組成物は、中空粒子(A)と基材成分(B)を必須に含むものである。以下に、遮熱組成物を構成する各成分を詳しく説明する。
【0014】
〔中空粒子(A)〕
中空粒子(A)(以下、単に粒子(A)ということがある)は本発明の遮熱組成物の必須成分であり、遮熱組成物に用いられるものである。
粒子(A)は、熱可塑性樹脂を含む外殻部を有するものであって、その粒子内部に空洞に相当する中空部を有するものである。外殻部が熱可塑性樹脂を含み形成されることで、粒子(A)は軽量で高い分散性を有し、優れた遮熱性能を発現させることができる。
また、粒子(A)は、外殻部と、その外殻部に囲まれた中空部を含むものであると好ましい。粒子(A)は(ほぼ)球状で、その形状を身近な物品で例示するならば、軟式テニスボールを挙げることができる。
粒子(A)は、後述する熱膨張性微小球の膨張体であってもよい。
【0015】
粒子(A)が有する外殻部は、その外表面と内表面とで囲まれ、端部はなく、連続した形状を有する。
粒子(A)が有する中空部は(ほぼ)球状であり、外殻部の内表面と接している。中空部は、基本的には気体で満たされており、液化した状態のものを有していてもよい。中空部は、通常、大きな中空部1つであることが好ましいが、粒子(A)中に複数あってもよい。
【0016】
粒子(A)の内径(r1)と外径(r2)の比(r1/r2)は0.7~0.999である。該比率が0.7未満であると、発現する遮熱性能が低下する。一方、該比率が0.999超であると、粒子(A)の外殻部の厚みが薄く、遮熱組成物や遮熱材の製造時において粒子(A)が潰れたり、変形してしまう。該比率の上限は、好ましくは0.99、より好ましくは0.98、さらに好ましくは0.97、特に好ましくは0.95、最も好ましくは0.94である。一方、該比率の下限は、好ましくは0.75、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.85である。
なお、粒子(A)の内径(r1)と外径(r2)の比は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0017】
粒子(A)の平均粒子径は0.1~50μmである。該平均粒子径が0.1μm未満であると、中空粒子の凝集が発生するため分散性が低下し、発現する遮熱性能が低下する。一方、該平均粒子径が50μm超であると、赤外光の反射効率が低下し、発現する遮熱性能が低下する。該平均粒子径の上限は、好ましくは40μm、より好ましくは35μm、さらに好ましくは30μm、特に好ましくは25μm、最も好ましくは20μmである。一方、該平均粒子径の下限は、好ましくは0.3μm、より好ましくは0.5μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは2μmである。
なお、粒子(A)の平均粒子径は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0018】
粒子(A)の体積基準の累計90%粒子径(D90)と平均粒子径の比(D90/D50)は、特に限定はないが、好ましくは1.1~6である。該比率が1.1以上であると、遮熱組成物中への分散性が向上する傾向があり、6以下であると、得られる遮熱材の凹凸を軽減できる傾向がある。該比率の上限は、より好ましくは5、さらに好ましくは4、特に好ましくは3である。一方、該比率の下限は、より好ましくは1.2、さらに好ましくは1.3、特に好ましくは1.4である。
なお、粒子(A)の体積基準の累計90%粒子径(D90)は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0019】
粒子(A)の真比重は、特に限定はないが、好ましくは0.003~0.6である。該真比重が0.003以上であると、粒子(A)の潰れや、変形が抑制される傾向がある。一方、該真比重が0.6以下であると、発現される遮熱性能が向上する傾向がある。該真比重の上限は、より好ましくは0.4、さらに好ましくは0.3、特に好ましくは0.2、最も好ましくは0.15である。該真比重の下限は、より好ましくは0.005、さらに好ましくは0.01、特に好ましくは0.03である。
なお、粒子(A)の真比重は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0020】
粒子(A)のメチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の粒子残存率(以下、単に粒子残存率)は、50%以上である。該粒子残存率が50%未満であると、外殻部を形成する熱可塑性樹脂の強度が低く、遮熱組成物や遮熱材の製造時において粒子(A)が潰れたり、変形してしまう。さらには、有機溶剤と共に用いられる場合において、粒子(A)が有機溶剤で大きく膨潤してしまい、十分な遮熱性能が発現できない。該粒子残存率は、好ましくは60~100%、より好ましくは65~100%、さらに好ましくは70~100%、特に好ましくは75~100%である。
なお、粒子(A)のメチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の粒子残存率は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0021】
粒子(A)を構成する外殻部は熱可塑性樹脂を含む。粒子(A)の外殻部を形成する熱可塑性樹脂は、特に限定はないが、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(C)を含み、重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体(D)を含んでもよい重合性成分の重合体であると好ましい。
【0022】
重合性成分に含まれる単量体(C)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸の無水物や、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル等のイタコン酸ジエステル等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。これら単量体成分は1種または2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、アクリル酸またはメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸ということもあり、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとし、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを意味するものとする。
【0023】
重合性成分は単量体(C)としてニトリル系単量体を含むと、外殻部を形成する熱可塑性樹脂の緻密性や耐溶剤性が向上する点で好ましい。ニトリル系単量体の含有量は特に限定はないが、単量体(C)100重部に対して、好ましくは30重量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100重量部、より好ましくは99.7重量部、さらに好ましくは99.5重量部、特に好ましくは99重量部、最もこのましくは98重量部である。一方、該含量の下限は、より好ましくは35重量部、さらに好ましくは40重量部、特に好ましくは45重量部、最も好ましくは50重量部である。
【0024】
単量体(C)がニトリル系単量体を含む場合、外殻部を形成する熱可塑性樹脂の剛性が向上する点で、ニトリル系単量体がアクリロニトリル及び/またはメタクリロニトリルを含むと好ましく、アクリロニトリルを必須に含むと好ましい。
ニトリル系単量体がアクリロニトリルを含む場合、その量は特に限定はないが、ニトリル系単量体100重量部に対して、好ましくは30~100重量部である。該含有量の上限は、より好ましくは95重量部、さらに好ましくは90重量部、特に好ましくは80重量部、最も好ましくは70重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは35重量部、さらに好ましいくは40重量部、特に好ましくは45重量部、最も好ましくは50重量部である。
ニトリル系単量体がメタクリロニトリルを含む場合、その量は特に限定はないが、ニトリル系単量体100重量部に対して、好ましくは5~100重量部である。該含有量の上限は、より好ましくは70重量部、さらに好ましくは65重量部、特に好ましくは60重量部、最も好ましくは50重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは10重量部、さらに好ましいくは20重量部、特に好ましくは30重量部である。
【0025】
ニトリル系単量体がアクリロニトリル(AN)及びメタクリロニトリル(MAN)を含む場合、AN及びMANの重量比(AN/MAN)は、特に限定はないが、好ましくは30/70~99/1である。該重量比の上限は、より好ましくは90/10、さらに好ましくは87/13、特に好ましくは80/20である。一方、該重量比の下限は、より好ましくは40/60、さらに好ましくは50/50、特に好ましくは55/45、最も好ましくは60/40である。
【0026】
単量体(C)は(メタ)アクリル酸エステルを含むと、外殻部を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度を調整でき、中空粒子(A)の製造条件を調整できる点で好ましい。
単量体(C)が(メタ)アクリル酸エステルを含む場合、その量は特に限定はないが、単量体(C)100重量部に対して0.2~70重量部である。該含有量の上限は、より好ましくは60重量部、さらに好ましくは50重量部、特に好ましくは35重量部、最も好ましくは20重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは0.5重量部、さらに好ましくは0.7重量部、特に好ましくは1重量部である。
【0027】
単量体(C)はハロゲン化ビニリデン系単量体を含むと、外殻部を形成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上する点で好ましい。
単量体(C)がハロゲン化ビニリデン系単量体を含む場合、その量は特に限定はないが、単量体(C)100重量部に対して、好ましくは0.2~70重量部である。該含有量の上限は、より好ましくは60重量部、さらに好ましくは50重量部、特に好ましくは35部、最も好ましくは20部である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.5重量部、さらに好ましくは0.7重量部、特に好ましくは1重量部である。
【0028】
単量体(C)がカルボキシル基含有単量体を含むと、外殻部を形成する熱可塑性樹脂の耐熱性が向上する点で好ましい。
カルボキシル基含有単量体の含有量は特に限定はないが、単量体(C)100重量部に対して、好ましくは0~80重量部である。該含有量の上限は、より好ましくは70重量部、さらに好ましくは60重量部、特に好ましくは50重量部、最も好ましくは45重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは5重量部、さらに好ましくは10重量部、特に好ましくは15重量部、最も好ましくは20重量部である。
【0029】
上述のとおり、重合性成分は単量体(D)を含んでいてもよい。重合性成分が単量体(D)を含むと、外殻部を形成する熱可塑性樹脂の耐熱性や耐溶剤性が向上する点で好ましい。
単量体(D)としては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらの単量体(D)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0030】
重合性成分は単量体(D)を含まなくてもよいが、重合性成分が単量体(D)を含む場合、その量は特に限定はないが、単量体(C)100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部である。該含有量の上限は、より好ましくは0.1重量部、さらに好ましくは0.3重量部、特に好ましくは0.5重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは6重量部、さらに好ましくは3.5重量部、特に好ましくは1.6重量部、最も好ましくは1.1重量部である。
【0031】
粒子(A)は、加熱により気化する成分を含有していてもよい。加熱により気化する成分を含有すると、粒子(A)の内部における圧力を高め、粒子(A)の耐圧性が向上してその形状を維持でき、付与する遮熱性能が向上する点で好ましい。
加熱により気化する成分としては、例えば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3~13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150~260℃及び/または蒸留範囲70~360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭素数1~12の炭化水素のハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等の炭素数1~5のアルキル基を有するシラン類;アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。該成分は1種の化合物から構成されていてもよく、2種以上の化合物の混合物から構成されていてもよい。該成分は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
加熱により気化する成分としては、特に限定はないが、沸点が30℃以下の化合物を含むと、粒子(A)の耐圧性がより向上する点で好ましい。また、沸点が30℃以下の化合物としては、炭素数3~5の炭化水素であると好ましい。
【0032】
粒子(A)が含有する加熱により気化する成分の含有量は、特に限定はないが、粒子(A)全体に対して、好ましくは0.5重量%以上である。該含有量が0.5重量%以上であると、十分な耐圧性を有する傾向がある。該含有量の上限は、好ましくは20重量%、より好ましくは15重量%、さらに好ましくは12重量%、特に好ましくは10重量%である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは1.5重量%、特に好ましくは2重量%である。
なお、粒子(A)の加熱により気化する成分の含有量は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0033】
[中空粒子(A)の製造方法]
本発明の遮熱組成物に含まれる中空粒子(A)において、その製造方法は、例えば、熱可塑性樹脂を含む外殻と、それに内包されかつ加熱することにより気化する発泡剤を含む熱膨張性微小球を加熱膨張させる工程1(膨張工程)を含む製造方法を挙げることができる。また、膨張工程に先立って、熱膨張性微小球を製造しておく必要があり、この熱膨張性微小球の製造方法としては、例えば、上述の重合性成分及び発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、重合開始剤を用いて重合性成分を重合させる工程2(重合工程)を含む製造方法が挙げられる。
したがって、粒子(A)は順に、重合工程、膨張工程を経て製造することができる。
本発明の遮熱組成物に含まれる粒子(A)においては、効率的に粒子(A)が得られる点で、上記膨張工程のように、熱膨張性微小球を加熱膨張させる工程を経て製造することが好ましい。
【0034】
(重合工程)
発泡剤は加熱することによって気化するものであればよく、上記で説明した粒子(A)が含有する加熱により気化する成分を使用してもよい。
また、本発明の遮熱組成物に含まれる粒子(A)が熱膨張性微小球を膨張させて得られる膨張体であると、粒子(A)が有する加熱により気化する成分は、熱膨張性微小球が含有する発泡剤を含む。
【0035】
重合工程では、上述の重合性成分を重合することで、熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂とすることができる。
また重合工程では、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。重合開始剤は、重合性成分や発泡剤とともに油性混合物に含まれるとよい。
重合開始剤としては、特に限定はないが、たとえば、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド等の過酸化物;アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアルキル、高分子アゾ開始剤等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種または2種以上を併用してもよい。なお、重合開始剤としては、重合性成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
重合開始剤の配合量については、特に限定されないが、重合性成分100重量部に対して、0.05~10重量部が好ましく、0.1~8重量部がより好ましく、0.2~5重量部がさらに好ましい。
重合工程において、油性混合物は、連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
【0036】
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100~1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0037】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1~50重量部含有するのが好ましい。
【0038】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基が置換したアルキル基が窒素原子と結合した構造を有するポリアルキレンイミン類、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩;金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、及び水溶性ホスホン酸(塩)類等から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001~1.0重量部、より好ましくは0.0003~0.1重量部、さらに好ましくは0.001~0.05重量部である。
【0039】
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、例えば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらの分散安定剤は1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~100重量部、より好ましくは0.2~70重量部である。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、例えば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は1種または2種以上を併用してもよい。
【0040】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、必要に応じて、電解質、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
重合工程では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウム及び塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
【0041】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に
懸濁分散させる。
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0042】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30~100℃、より好ましくは40~90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0~5MPa、より好ましくは0.2~3MPaの範囲である。
【0043】
得られたスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等により濾過し、含水率10~50重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは20~40重量%のケーキ状物とし、ケーキ状物を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、含水率5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下の乾燥粉体とする。
また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体を得てもよい。
【0044】
このようにして、熱可塑性樹脂を含む外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤と、を含む熱膨張性微小球が得られる。
重合工程により得られる熱膨張性微小球の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.05~25μm、より好ましくは0.1~20μm、さらに好ましくは0.3~15μm、特に好ましくは0.5~12μm、最も好ましくは0.7~12μmである。
重合工程により得られる熱膨張性微小球の真比重は、好ましくは0.97~1.30、より好ましくは1.05~1.20である。熱膨張性微小球の真比重が上記範囲内であると、効率的に粒子(A)を得ることができる傾向がある。
【0045】
(膨張工程)
膨張工程は、熱膨張性微小球を加熱膨張させる工程であれば、特に限定はないが、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法のいずれでもよい。
乾式加熱膨張法としては、特開2006-213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法を挙げることができる。湿式加熱膨張法としては、特開昭62-201231号公報に記載の方法等がある。熱膨張性微小球を加熱膨張させる温度は、好ましくは80~450℃である。
【0046】
粒子(A)が熱膨張性微小球の膨張体である場合、粒子(A)は膨張余力性を有すると耐圧性の点で好ましい。粒子(A)の膨張余力性とは、当該中空粒子を加熱するとさらに膨張する性質(再膨張)を意味する。
中空粒子の膨張余力率は特に限定はないが、好ましくは1~80%である。該余力率が1%以上であると、耐圧性が向上する傾向があり、80%以下であると付与する遮熱性能が向上する傾向がある。該余力率の上限は、より好ましくは75%、さらに好ましくは70%、特にこのましくは65%である。一方、該余力率の下限は、より好ましくは5%、さらに好ましくは10%、特に好ましくは15%である。膨張していない熱膨張性微小球の膨張余力率は、およそ95%を超える。
なお、膨張余力率とは、最大再膨張時の中空粒子に対する膨張程度を示しており、中空粒子の真比重(d1)及び、最大再膨張時の中空粒子の真比重(d2)を測定し、以下に示す計算式(1)で算出される。
膨張余力率(%)=(1-d2/d1)×100 (1)
【0047】
粒子(A)が膨張余力率を有する場合、再膨張開始温度(TS2)を有していると好ましい。粒子(A)の再膨張開始温度(TS2)は、特に限定はないが、好ましくは60~210℃である。粒子(A)の再膨張開始温度(TS2)が70℃以上であると、付与する遮熱性能が向上する傾向があり、180℃以下であると、粒子(A)は十分な耐圧性を有する傾向がある。該再膨張開始温度の上限は、より好ましくは150℃、さらに好ましくは130℃、特に好ましくは120℃である。一方、該再膨張開始温度の下限は、より好ましくは75℃、さらに好ましくは80℃、特に好ましくは85℃である。
なお、粒子(A)の再膨張開始温度(TS2)は本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0048】
粒子(A)が膨張余力率を有する場合、最大再膨張温度(Tmax2)を有していると好ましい。粒子(A)の最大再膨張温度(Tmax2)は、特に限定はないが、好ましくは90~200℃である。粒子(A)の最大再膨張温度(Tmax2)が90℃以上であると、付与する遮熱性能が向上する傾向があり、200℃以下であると、粒子(A)は十分な耐圧性を有する傾向がある。該最大再膨張温度の上限は、より好ましくは150℃、さらに好ましくは130℃である。一方、該最大再膨張温度の下限は、より好ましくは100℃、さらに好ましくは105℃、特に好ましくは110℃である。
なお、粒子(A)の最大再膨張温度(Tmax2)は本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0049】
〔微粒子付着中空粒子〕
遮熱性組成物は、その製造の際に微粒子付着中空粒子を用いてもよい。微粒子付着中空粒子は、上記で説明した中空粒子(中空粒子(A))と微粒子を含み、微粒子が中空粒子の外殻部の外表面に付着してなるものであり、例えば、
図1に示すようなものである。ここでいう付着とは、単に中空粒子の外殻部(2)の外表面に微粒子(4及び5)が、吸着された状態(4)であってもよく、外表面近傍の外殻部を形成する熱可塑性樹脂が加熱によって軟化や融解し、中空粒子の外殻部の外表面に微粒子がめり込み、固定された状態(5)であってもよいという意味である。微粒子の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。
【0050】
微粒子としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物としては、特に限定はないが、例えば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカ、アルミナ、雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロサルタイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ、ガラスマイクロバルーン等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物としては、後述する顔料を使用してもよい。
【0051】
微粒子を構成する有機物としては、特に限定はないが、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物や有機物は、シランカップリング剤、パラフィンワックス、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理されていてもよく、未処理のものでもよい。
【0052】
微粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001~30μm、より好ましくは0.005~25μm、特に好ましくは0.01~20μmである。なお、該平均粒子径は、レーザー回折法により測定された体積基準の累積50%粒子径の値である。微粒子の平均粒子径と中空粒子の平均粒子径との比率(微粒子の平均粒子径/中空粒子の平均粒子径)は特に限定はないが、中空粒子表面への微粒子の付着性の点で、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下である。
【0053】
微粒子付着中空粒子全体に占める微粒子の重量割合については、特に限定はないが、95重量%以下が好ましく、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下、最も好ましくは80重量%以下である。該重量割合が95重量%超であると、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際にその添加量が大きくなり、非経済的であることがある。微粒子の重量割合の下限は、好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは30重量%、最も好ましくは40重量%である。
【0054】
微粒子付着中空粒子の真比重は、特に限定はないが、好ましくは0.01~0.6である。該真比重が0.01以上であると、微粒子付着中空粒子の潰れや、変形が抑制される傾向がある。一方、該真比重0.6以下であると、発現される遮熱性能が向上する傾向がある。該真比重の上限は、より好ましくは0.5、さらに好ましくは0.4、特に好ましくは0.3、最も好ましくは0.20である。一方、該真比重の下限は、より好ましくは0.03、さらに好ましくは0.05、特に好ましい下限は0.07、最も好ましくは0.1である。
【0055】
微粒子付着中空粒子において、その製造方法は、例えば、微粒子付着熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって得ることができる。微粒子付着中空粒子の製造方法としては、熱膨張性微小球と微粒子とを混合する工程(混合工程)と、混合工程で得られた混合物を熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱して、熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程(付着工程)を含む製造方法が好ましい。
【0056】
(混合工程)
混合工程は、熱膨張性微小球と微粒子とを混合する工程である。
混合工程における熱膨張性微小球及び微粒子の合計に対する微粒子の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下、最も好ましくは80重量%以下である。該重量割合が95重量%以下であると、得られる微粒子付着中空粒子は軽量であり、十分な低比重化効果が得られる傾向がある。該重量割合の下限は、好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは30重量%である。
【0057】
混合工程において、熱膨張性微小球と微粒子とを混合するのに用いられる装置としては、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。
粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等が挙げられる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。
【0058】
(付着工程)
付着工程は、上記で説明した混合工程で得られた混合物を、熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱する工程である。付着工程では、熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外殻部の外表面に微粒子を付着させる。
加熱は、一般的な接触伝熱型または直接加熱型の混合式乾燥装置を用いて行えばよい。混合式乾燥装置の機能については、特に限定はないが、温度調節可能で原料を分散混合する能力や、場合により乾燥を早めるための減圧装置や冷却装置を備えたものが好ましい。加熱に使用する装置としては、例えば、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)、ソリッドエアー(株式会社ホソカワミクロン)等が挙げられる。
加熱の温度条件については熱膨張性微小球の種類にもよるが、最適膨張温度とするのがよく、好ましくは70~250℃、より好ましくは80~230℃、さらに好ましくは90~220℃である。
【0059】
微粒子付着中空粒子が熱膨張性微小球を膨張させて得られるものである場合においても、前述にて説明したように、微粒子付着中空粒子を構成する中空粒子が膨張余力性を有すると好ましい。
微粒子付着中空粒子が膨張余力性を有する場合、構成する中空粒子の膨張余力率は、上記で説明した粒子(A)が有する膨張余力率と同じ数値範囲であると好ましい。また、微粒子付着中空粒子が膨張余力性を有する場合、微粒子付着中空粒子の再膨張開始温度、最大再膨張温度はそれぞれ、上記で説明した粒子(A)の再膨張開始温度、最大再膨張温度と同じ数値範囲であると好ましい。
【0060】
[基材成分(B)]
基材成分(B)(以下、単に成分(B)ということがある)は遮熱組成物に必須に含まれる成分である。成分(B)は特に限定はなく、遮熱組成物の形態や用途などに応じて適宜選択することができる。
成分(B)としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス等の樹脂ワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;澱粉樹脂等のバイオプラスチック等が挙げられる。さらに、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、天然ゴムやスチレン系ゴム等のゴム等と可塑剤を含むプラスチゾルや、これらと液体分散媒を含む樹脂エマルジョン、ラテックス等の樹脂含有液状物等も挙げられる。
これらの成分(B)中でも、遮熱材の成形性の点で、ゴム類、熱可塑性樹脂、樹脂含有液状物が好ましい。
【0061】
[その他成分]
本発明の遮熱組成物は、粒子(A)と成分(B)以外にも、必要に応じて、顔料、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、安定剤、滑剤、レオロジー調整剤、界面活性剤、酸化防止剤等のその他成分を含んでいてもよい。
顔料としては、例えば、酸化チタン等の白色顔料;Paliogen(登録商標) Black L 0086(BASF社製)、Sicopal(登録商標) Black 0095(BASF社製)等の黒色顔料;Fastogen(登録商標) Blue 5485K(DIC株式会社製)、Fastogen(登録商標) Blue RSE(DIC株式会社製)、シアニンブルー5240KB(大日精化工業社製)等の青色顔料;Fastogen(登録商標) Super Magenta RH(DIC株式会社製)、Fastogen(登録商標) Red7100Y(DIC株式会社製)、ルビクロンレッド400RG(DIC株式会社製)等の赤色顔料等が挙げられる。
無機充填剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、ケイ酸カルシウムアルミニウム、ワラストナイト、ガラスビーズ等が挙げられる。
【0062】
有機充填剤としては、例えば、綿繊維、麻繊維、ケナフ繊維等のセルロース系繊維、紙粉、木粉、竹粉、籾殻粉、果実殻粉等のセルロース系粉や澱粉等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル;アジピン酸エステル;セバシン酸エステル;アゼライン酸エステル;リン酸エステル;トリメリット酸エステル;ポリエステル系高分子可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系可塑剤等が挙げられる。
【0063】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム等の金属石鹸;パラフィンワックス、流動パラフィン等の炭化水素系ワックス;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等のアミド系ワックス;ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、ステアリン酸ブチル等のエステル系ワックス;ステアリン酸等の脂肪酸系ワックス;ステアリルアルコール等の高級アルコール系ワックス等が挙げられる。
【0064】
レオロジー調整剤としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン・ポリプロピレンブロックポリマー、ポリアルキレングリコール系誘導体、ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、コーンスターチ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸系共重合体、ビニルアルコール系共重合体、ビニルピロリドン系共重合体等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0065】
本発明の遮熱組成物は、中空粒子(A)と、基材成分(B)と、必要に応じてその他成分とを混合することによって調製することができる。また、中空粒子(A)と、基材成分(B)とを混合して得られた組成物と、さらに別の基材成分(B)とを混合して、遮熱組成物とすることもできる。
【0066】
〔遮熱組成物、及びその製造方法〕
本発明の遮熱組成物は、上記で説明した中空粒子(A)と、上記で説明した基材成分(B)を必須に含むものであって、それを成形することによって優れた遮熱性能を有する遮熱材を得ることができる。
本発明の遮熱組成物は遮熱材をより効率的に製造することができる点で、塗料組成物であると好ましい、また、本発明の遮熱組成物の形態としては、液状又はペースト状の組成物であると好ましい。
【0067】
本発明の遮熱組成物において、粒子(A)の含有量は特に限定はないが、成分(B)の含有量100重量部に対して、好ましくは0.001~20重量部である。該含有量が0.001重量部以上であると、発現できる遮熱性能が向上する傾向がある。一方、該含有量が20重量部以下であると、成分(B)の有する物性をより効率的に維持できる傾向がある。該含有量の上限は、より好ましくは15重量部、さらに好ましくは12重量部、特に好ましくは10重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは0.01重量部、さらに好ましくは0.1重量部、特に好ましくは0.5重量部、最も好ましくは1重量部である。
【0068】
本発明の遮熱組成物において、その製造方法は特に限定はないが、従来公知の方法を採用すればよい。その方法としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、スタティックミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、プラネタリーミキサー、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等の混合機を用いて、混合させる方法が挙げられる。
【0069】
〔遮熱材、及びその製造方法〕
本発明の遮熱材は上記で説明した遮熱組成物を成形してなるものであり、優れた遮熱性を有する。本発明の遮熱材の形態としては、塗膜状、フィルム状、シート状等が挙げられ、建築物の屋根や外装やアスファルト道路等の路盤等に適用することができる。
【0070】
本発明の遮熱材において粒子(A)を含有する層を有する場合、その層の厚みは特に限定はないが、50~1000μmであると好ましい。該厚みが50μm以上であると良好な遮熱性能を有する傾向があり、1000μm以下であると経済性が向上する傾向がある。
本発明の遮熱材は粒子(A)を有する層のみであってもよく、粒子(A)を有する層以外に保護層等の他の層を有していてもよい。
【0071】
本発明の遮熱材の比重は、特に限定はないが、0.4~1.0であると、遮熱材は性能が均一で、良好な遮熱性能を有していることから好ましい。該比重の上限は、より好ましくは0.9、さらに好ましくは0.8、特に好ましくは0.7である。一方、該比重の下限は、より好ましくは0.5である。
【0072】
本発明の遮熱材において、その製造方法としては、例えば、スプレー吹き付け法、フロー遮熱法、ロールコート法、バーコート法、刷毛塗り法、ディップ遮熱法、スピン遮熱法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の塗工する方法;押出成形;射出成形;カレンダー成形;インフレーション成形;中空成形;混練成形;圧縮成形;真空成形;熱成形等が挙げられる。
塗工する方法により遮熱材を成形する場合、塗工後に乾燥を行ってもよく、乾燥後にさらに、遮熱材の性能を損なわない程度に、好ましくは100℃以下での熱処理や紫外線照射等を行ってもよい。
【実施例0073】
以下に、本発明の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、特に断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味し、「部」とは「重量部」を意味するものである。
また、以下で用いる熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子と、実施例と比較例で挙げた遮熱性組成物、及び遮熱材について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。以下では、熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
【0074】
〔熱膨張性微小球の平均粒子径の測定〕
測定装置として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(Microtrac ASVR、日機装社製)を使用し、体積基準測定によるD50値を平均粒子径とした。
【0075】
〔中空粒子の平均粒子径の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(マスタサイザー3000(Malvern))を使用し、乾式測定法により測定した。平均粒子径は体積基準測定によるD50値を採用した。
なお、中空粒子の水湿潤物については、これを乾燥して得られた中空粒子について平均粒子径を測定した。
【0076】
〔含水率の測定〕
熱膨張性微小球及び中空粒子の含水率は、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。なお、熱膨張性微小球の含水率はCW1(%)とした。
【0077】
〔熱膨張性微小球が含有する発泡剤の含有率の測定〕
乾燥後の熱膨張性微小球1.0(g)を直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量W3(g)を測定した。アセトニトリルを30mL加え均一に分散させ、2時間室温で放置した後、110℃で2時間乾燥後の重量W4(g)を測定した。測定したW3、W4、CW1から、発泡剤の含有率CR1(重量%)は、下記の計算式より算出した。
CR1=((W3-W4)/1.0)×100-CW
【0078】
〔中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量の測定〕
中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量は、ヘッドスペース ガスクロマトグラフィー法により、以下のようにして測定した。
20mLヘッドスペースバイアルに0.1gの中空粒子を秤量し、フッ素樹脂で被覆したシリコーンゴム製セプタムをアルミニウム製のキャップを用いてヘッドスペースバイアルを密栓した。密栓したヘッドスペースバイアルを170℃で20分間加熱し、ヘリウムで0.5分間加圧後、気相(ヘッドスペース)を3mL採取し、これをガスクロマトグラフに導入し、中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量を測定した。
ヘッドスペース ガスクロマトグラフィー法の分析条件は以下の通りとした。
(分析条件)
GCカラム;Agilent社製 DB-624 長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.40μm)
検出器:FID、温度200℃
昇温プログラム:40℃で6分間保持した後、200℃まで20℃/分で昇温させ、20
0℃到達後3分間保持した。
注入口温度:200℃
ガス導入量:3mL
ヘリウム流量:1mL/min
スプリット比:10:1
定量方法は検量線法を採用し、以下の方法で実施した。
(定量方法の条件)
既知量の試料をDMFに溶解させた溶液5μLを20mLヘッドスペースバイアルに採取し、フッ素樹脂で被覆したシリコーンゴム製セプタムをアルミニウム製のキャップを用いてヘッドスペースバイアルを密栓した。密栓したヘッドスペースバイアルを170℃で20分間加熱し、ヘリウムで0.5分間加圧後、気相(ヘッドスペース)を3mL採取し、これをガスクロマトグラフに導入した。
なお、微粒子付着中空粒子については、まず前処理として、微粒子付着中空粒子から微粒子を洗い流す操作を行った。具体的には、微粒子付着中空粒子と、水と、さらに必要に応じて酸又は塩基とを混合し、これを攪拌することにより、微粒子を分解又は洗い流した。ついで、これをろ過することにより固液分離した。この操作を数回繰り返すことにより、微粒子付着中空粒子から微粒子が取り除かれた中空粒子を得た。例えば、微粒子が炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムである場合、塩酸等で洗浄後、さらに水洗工程を数回繰り返すことにより微粒子を付着しない中空粒子を取り出すことができる。
次に、得られた中空粒子を乾燥して、含水率を1%以下に調整した(その灰分を分析し、5重量%未満であることを確認した)。そして、この中空粒子が含有する加熱により気化する成分の量は、上記と同様にして測定した。
また、中空粒子の水湿潤物については、前処理として、40℃以下の環境下において乾燥を実施し、含水率を1%以下に調整した中空粒子を得た。得られた中空粒子が含有する加熱により気化する成分の量を、上記と同様にして測定した。
【0079】
〔灰分の測定〕
乾燥した試料Wp(g)をるつぼに入れ、電熱器にて加熱を行い、700℃で30分間強熱して灰化させ、得られた灰化物Wq(g)を重量測定する。試料の灰分CA(重量%)は、Wp(g)およびWq(g)から下記式によって算出される。
CA(重量%)=(Wq/Wp)×100
ここで、上記試料として、熱膨張性微小球又は中空粒子をそれぞれ用いて、灰分の測定を行った。また、灰分の測定には、含水率1%以下である試料を用いた。
【0080】
〔膨張開始温度(TS1)および最大膨張温度(Tmax1)、最大変位量(Hmax1)の測定〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。熱膨張性微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、熱膨張性微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を熱膨張性微小球の膨張開始温度(TS1)とし、最大変位量(Hmax1)を示したときの温度を熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax1)とした。
【0081】
〔再膨張開始温度(TS2)および最大再膨張温度(Tmax2)の測定〕
上記膨張開始温度及び最大膨張温度の測定において、熱膨張性微小球0.5mgに代えて中空粒子0.5mgを用いる以外は同様にして、測定を行った。正方向への変位開始温度を中空粒子の再膨張開始温度(TS2)とし、最大変位量(Hmax2)を示したときの温度を中空粒子の最大再膨張温度(Tmax2)とした。
微粒子付着中空粒子については、3.0mgの微粒子付着中空粒子を用いる以外は同様にして、再膨張開始温度及び最大再膨張温度の測定を行った。
中空粒子の水湿潤物については、中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量の測定方法に記載の方法で中空粒子を得て、その得られた中空粒子の再膨張開始温度及び最大再膨張温度の測定を、上記の方法と同様にして測定した。
【0082】
〔中空粒子の真比重(d1)の測定〕
中空粒子の真比重(d1)は、環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100mLのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100mLの充満されたメスフラスコの重量(WB2)を秤量した。
また、容量100mLのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50mLの中空粒子を充填して、メスフラスコの重量(WS2)を秤量した。そして、中空粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS3)を秤量した。そして、得られたWB1、WB2、WS1、WS2およびWS3を下式に導入して、中空粒子の真比重(d1)を計算した。
d1={(WS2-WS1)×(WB2-WB1)/100}/{(WB2-WB1)-(WS3-WS2)}
なお、微粒子付着中空粒子又は中空粒子の水湿潤物においては、中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量の測定の方法に記載の方法で中空粒子をそれぞれ得て、その得られた中空粒子の真比重の測定を、上記の方法と同様にして測定した。
【0083】
〔中空粒子の最大再膨張時の真比重(d2)の測定〕
中空粒子の最大再膨張時の真比重(d2)は、以下の測定方法により測定した。
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作製し、その中に中空粒子又は微粒子付着中空粒子(以下、総じて単に中空粒子試料ということがある)1.0gを均一になるように入れ、上記再膨張開始温度の測定により得られた再膨張開始温度から5℃ずつ温度を上昇させ、各温度で1分間加熱した後、再膨張した中空粒子試料の真比重を上記中空粒子の真比重(d1)の測定方法と同様に測定した。それらの中で最低真比重を示したものを、中空粒子試料の最大再膨張時の真比重(d’)とした。中空粒子試料が中空粒子である場合、真比重(d’)は最大再膨張時の真比重(d2)である。
なお、中空粒子の水湿潤物においては、中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量の測定の方法に記載の方法で中空粒子を得て、得られた中空粒子を中空粒子試料として測定した。
(微粒子付着中空粒子の最大再膨張時における中空粒子の真比重(d2)の測定)
上記中空粒子試料が微粒子付着中空粒子である場合、最低真比重を示した微粒子付着中空粒子から、中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量の測定方法に記載の方法で中空粒子を得た。得られた中空粒子の真比重を上記中空粒子の真比重(d1)の測定方法と同様にして、最大再膨張時の真比重(d2)を測定した。
【0084】
〔微粒子付着中空粒子の真比重(d3)の測定〕
上記中空粒子の真比重(d1)の測定において、中空粒子の代わりに微粒子付着粒子を用いること以外は上記中空粒子の真比重(d1)の測定と同様にして、微粒子付着中空粒子の真比重(d3)を測定した。
【0085】
〔メチルエチルケトンへ浸漬させた後の中空粒子の粒子残存率〕
メチルエチルケトンへ浸漬させた後の中空粒子の粒子残存率は以下のように測定した。
まず、容量100mLのスクリュー管に中空粒子1.0gを秤量した。次に中空粒子が入ったスクリュー管にメチルエチルケトン50mLを添加し、25℃にて24時間静置して、メチルエチルケトンに中空粒子を浸漬させた。24時間後、遠心分離を2000rpmで2分実施し、メチルエチルケトンにより膨潤してゲル状となった部分を下部に沈殿させた。上部に残存した中空粒子をアルミ製の耐熱容器(W1)に移し替え、乾燥機に入れて40℃で24時間乾燥させた。使用したアルミ製の耐熱容器は残存した中空粒子を移し替える前に、あらかじめその重量を測定した(W1)。
乾燥後、中空粒子と耐熱容器の重量(W2)を測定し、残存した中空粒子の乾燥重量(W=W2-W1)を求めて、中空粒子の残存率を下記の式より計算した。
中空粒子の残存率(%)=(残存した中空粒子の乾燥重量(W)/1.0)×100
なお、微粒子付着中空粒子又は中空粒子の水湿潤物においては、中空粒子が含有する加熱により気化する成分の含有量の測定の方法に記載の方法で中空粒子をそれぞれ得て、その得られた中空粒子のメチルエチルケトンへ浸漬させた後の中空粒子の粒子残存率の測定を、上記の方法と同様にして測定した。
【0086】
〔中空粒子の外殻部の真比重の測定〕
中空粒子の外殻樹脂(外殻部を構成する熱可塑性樹脂)の真比重(dp)の測定は以下のとおりに行った。
具体的には、中空粒子5gをN,N-ジメチルホルムアミド200mLに分散させた後に超音波分散機30分間で処理し、室温で24時間静置した。24時間後、120℃で5時間減圧乾燥し、外殻樹脂を得た。得られた外殻樹脂の真比重(d4)の測定は上記中空粒子の真比重(d1)の測定において、中空粒子の代わりに外殻樹脂を用いること以外は同様にして行った。測定した外殻樹脂の真比重を、中空粒子の外殻部の真比重(dp)とした。
【0087】
〔中空粒子の内径(r1)と外径(r2)の測定〕
測定した中空粒子の真比重(d1)及び中空粒子の外殻部の真比重(dp)から、中空粒子の内径(r1)を下記の式より算出した。また、内径(r1)と外径(r2)の比(r1/r2)を算出した。
r1=(r2)×[{(dp)-(d1)}/(dp)]1/3
r2=(中空粒子の平均粒子径)/2
【0088】
〔中空粒子の中空率の測定〕
測定した中空粒子の内径(r1)及び外径(r2)から、中空粒子の中空率の測定を下記の式により算出した。
中空粒子の中空率(%)=(r1/r2)3×100
【0089】
〔遮熱組成物の比重の測定〕
実施例及び比較例に記載の手順および割合で得られた遮熱組成物の比重を、JIS K 5600-2-4に準拠した方法により測定した。
具体的には、容量50mLの比重カップ(TP技研株式会社製)を空にし、乾燥後、比重カップの重量(WB3)を秤量した。秤量した比重カップの縁まで遮熱組成物を満たした後、上部から蓋を閉め、内部を遮熱組成物で充満させた後、遮熱組成物と軽量カップの重量の合計(WB4)を秤量した。
そして、秤量したWB3及びWB4から、遮熱組成物の液比重(d5)を下記の式より算出した。
d5=(WB4-WB3)/50
【0090】
(製造例1、熱膨張性微小球の製造例)
イオン交換水500gに、有効成分20重量%であるコロイダルシリカ85g及び有効成分50重量%のアジピン酸-ジエタノールアミンの縮合物3gを加えた後、得られた混合物のpHを3.0~4.0に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル125g、メタクリロニトリル55g、メタクリル酸メチル20g、エチレングリコールジメタクリレート1.0g、イソブタン20g、イソペンタン10g、及びジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート2gを混合して油性混合物を調製した。
調製した水性分散媒および油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサーにより12000rpmで5分間分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度70℃で15時間重合した。得られた重合生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球1(微小球1)を得た。得られた微小球1の物性を表1に示す。
【0091】
(製造例2~10、熱膨張性微小球の製造例)
実施例1で用いた水性分散媒、油性混合物を構成する各種成分及びその量を、表1、表2に示すものに変更する以外は同様にして熱膨張性微小球2~10(微小球2~10)をそれぞれ得た。得られたそれぞれの熱膨張性微小球の物性を表1~2に示す。
なお、表1~2においては、以下に示す略号が使用されている。
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
OPP:ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(純度70%)
イソブタン:2-メチルプロパン、沸点-12℃
イソペンタン:2-メチルブタン、沸点28℃
【0092】
【0093】
【0094】
(製造例A1、中空粒子の製造方法)
製造例1で得られた微小球1を乾式加熱膨張法により、加熱させて、中空粒子を製造した。
乾式加熱膨張法として特開2006-213930号公報に記載されている内部噴射方法を採用した。具体的には、
図2に示す発泡工程部を備えた製造装置を用いて、以下の手順で熱膨張性微小球を加熱膨張させて、中空粒子を製造した。
【0095】
(発泡工程部の説明)
図2に示すとおり、発泡工程部は、出口に分散ノズル(11)を備え且つ中央部に配置された気体導入管(番号表記せず)と、分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)と、気体導入管の周囲に間隔を空けて配置された過熱防止筒(10)と、過熱防止筒(10)の周囲に間隔を空けて配置された熱風ノズル(8)とを備える。この発泡工程部において、気体導入管内の矢印方向に熱膨張性微小球を含む気体流体(13)が流されており、気体導入管と過熱防止筒(10)との間に形成された空間には、熱膨張性微小球の分散性の向上及び気体導入管と衝突板の過熱防止のための気体流(14)が矢印方向に流されており、さらに、過熱防止筒(10)と熱風ノズル(8)との間に形成された空間には、熱膨張のための熱風流が矢印方向に流されている。ここで、熱風流(15)と気体流体(13)と気体流(14)とは、通常、同一方向の流れである。過熱防止筒(10)の内部には、冷却のために、冷媒流(9)が矢印方向に流されている。
(製造装置の操作)
噴射工程では、熱膨張性微小球を含む気体流体(13)を、出口に分散ノズル(11)を備え且つ熱風流(15)の内側に設置された気体導入管に流し、気体流体(13)を前記分散ノズル(11)から噴射させる。
分散工程では、気体流体(13)を分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)に衝突させ、熱膨張性微小球が熱風流(15)中に万遍なく分散するように操作される。ここで、分散ノズル(11)から出た気体流体(13)は、気体流(14)とともに衝突板(12)に向かって誘導され、これと衝突する。
膨張工程では、分散した熱膨張性微小球を熱風流(15)中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる。その後、得られた中空粒子を冷却部分に通過させる等して回収する。
【0096】
(膨張条件及び結果)
製造例A1では、
図2に示す製造装置を用い、膨張条件として、原料供給量0.8kg/min、原料分散気体量0.35m
3/min、熱風流量8.0m
3/min、熱風温度290℃に設定し、中空粒子1を得た。得られた中空粒子1の物性を表3に示す。
【0097】
(製造例A2~A4及び製造比較例A1~A3、中空粒子の製造方法)
製造例A1において、製造例1で得られた熱膨張性微小球1の代わりに、製造例2~4及び製造例8~10で得られた熱膨張性微小球に変更し、さらに以下に示す製造条件に変更する以外は同様にして、中空粒子をそれぞれ得た。得られたそれぞれの中空粒子の物性を表3~4に示す。
なお、変更した中空粒子の製造条件は、製造例A2は熱風温度を240℃、製造例A3は熱風温度を220℃、製造例A4は熱風温度を270℃、製造比較例A1は熱風温度を280℃、製造比較例A2は熱風温度を260℃、製造比較例A3は熱風温度を240℃の条件で製造した。
【0098】
(製造例A5、中空粒子の水湿潤物の製造方法)
製造例5で得られた熱膨張性微小球5を3重量%含有する水分散液(スラリー)を調整した。特開昭62-201231号公報記載の湿式過熱膨張法に従い、このスラリーをスラリー導入管から発泡管(直径16mm、容積120mL、SUS304TP製)に5L/minの流量を示すように送り込み、さらに水蒸気(温度:147℃、圧力:0.3MPa)を蒸気導入管より供給し、スラリーと混合して、湿式加熱膨張した。なお、混合後のスラリー温度(発泡温度)を115℃に調節した。
得られた中空粒子を含むスラリーを発泡管突出部から流出させ、冷却水(水温15℃)と混合して、50~60℃に冷却した。冷却したスラリー液を遠心脱水機で脱水して、中空粒子5を33重量%含有する水湿潤物(水は67重量%含有)を得た。
得られた中空粒子5を単離し、その物性を測定した。結果を表3に示す。
【0099】
(製造例A6~A7、中空粒子の水湿潤物の製造方法)
製造例A5において、製造例5で得られた熱膨張性微小球5の代わりに製造例6~7で得られた熱膨張性微小球に変更し、さらに以下に示す製造条件に変更する以外は同様にして、中空粒子の水湿潤物をそれぞれ得た。得られた中空粒子を単離し、その物性を測定した。結果を表3~4に示す。
なお、変更した中空粒子の水湿潤物の製造条件は、製造例A6は膨張温度を125℃、製造例A7は膨張温度を110℃の条件で製造した。
【0100】
(製造例A8、微粒子付着中空粒子の製造方法)
40重量部の製造例1で得られた熱膨張性微小球1と、60部の炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製:ホワイトンSB赤)とをセパラブルフラスコに添加して混合し、次いで、攪拌しながら5分間かけて加熱温度140℃まで昇温して、微粒子付着中空粒子8を得、その物性を測定した。その結果を表4に示す。
【0101】
(製造例A9、微粒子付着中空粒子の製造方法)
製造例A8において、製造例1で得られた熱膨張性微小球1の代わりに製造例2で得られた熱膨張性微小球に変更し、さらに炭酸カルシウムを酸化チタン(石原産業株式会社製:タイペークCR-50)に変更し、また加熱温度を120℃までに変更する以外は同様にして、微粒子付着中空粒子2を得た。得られた微粒子付着中空粒子9の物性を測定した。その結果を表4に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
(実施例1)
溶剤系ウレタン樹脂(バイロンUR-1400、東洋紡株式会社製、有効成分30%、溶剤:メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=35/35)50重量部に中空粒子1を1.0重量部の割合で添加して均一に分散させて、攪拌脱泡機にて脱泡し、遮熱組成物を得た。得られた遮熱組成物は中空粒子1を40体積%含有しており、その比重は0.74であった。
次に、得られた遮熱組成物を厚み0.1mmのOHPフィルムにコーターを用いて、乾燥後の塗膜厚みが300μmとなるように塗工し、遮熱材を有する試験片1を得た。得られた試験片1について、後述する方法にて日射反射率を測定した。その結果を表5に示す。
また、得られた遮熱組成物1を厚み0.8mmのアルミ板にコーターを用いて、乾燥後の塗膜厚みが300μmとなるように塗工し、遮熱材を有する試験片2を得た。得られた試験片2の遮熱材が存在する面の裏面温度を後述する方法にて測定した。その結果を表5に示す。
【0105】
(実施例2~6、比較例1~9)
実施例1において、製造例A1で得られた中空粒子1を製造例A2~A4、製造例A8~A9及び比較製造例A1~A3で得られた中空粒子に変更し、その添加量を表5~6に示す量に変更する以外は同様にして、遮熱組成物を得た。得られたそれぞれの遮熱組成物の物性を測定した。その結果を表5~6に示す。
さらに、比較例4~8においては、中空粒子を添加せずに表6に示すその他成分とその量を添加して、実施例1と同様にして遮熱組成物を得た。
なお、表6に記載のその他成分については、下記に示すものを用いた。
ガラスビーズ:グラスバブルス VS5500(スリーエムジャパン株式会社製)
炭酸カルシウム:ホワイトンSB赤(備北粉化工業株式会社製)
酸化チタン:TITANIX JR-600A(テイカ株式会社製)
次に、得られた遮熱組成物を使用して、実施例1と同様にして遮熱材を有する試験片1及び試験片2を得た。得られたそれぞれの試験片の日射反射率及び裏面温度を測定し、評価した。結果を表5~6に示す。
また、比較例9においては、溶剤系ウレタン樹脂のみを実施例1と同様にして塗工し、試験片1及び試験片2を得、測定と評価を行った。
【0106】
(実施例7)
水性ウレタン塗料(水性つやありウレタン建物用、有効成分48%、透明、大日本塗料株式会社製)50重量部に、製造例A5で得られた中空粒子5の水湿潤物(中空粒子含有量33%)7.5重量部添加し、均一に分散させて、遮熱組成物を得た。得られた遮熱組成物は中空粒子1を40.7体積%含有しており、その比重は0.80であった。
次に、得られた遮熱組成物を厚み0.1mmのOHPフィルム及び厚み0.8mmのアルミ板にコーターを用いて塗工し、実施例1と同様にして、遮熱材を有する試験片1と試験片2を得た。得られたそれぞれの試験片を、実施例1と同様の方法で、日射反射率及び裏面温度を測定した。その結果を表5に示す。
【0107】
(実施例8~9)
実施例7において、製造例A5で得られた中空粒子5の水湿潤物の代わりに製造例A6~A7で得られた中空粒子の水湿潤物に変更し、その添加量を表5に示す量に変更する以外は同様にして、遮熱組成物をそれぞれ得た。得られたそれぞれの遮熱組成物の物性を測定した。その結果を表5に示す。
次に、得られた遮熱組成物を使用して、実施例1と同様にして、遮熱材を有する試験片1及び試験片2を得た。得られたそれぞれの試験片の日射反射率及び裏面温度を測定し、評価した。結果を表5に示す。
【0108】
(実施例10)
実施例1において、顔料であるPaliogen Black L 0086を表5に示す量を加えること以外は同様にして、遮熱組成物を得た。得られた遮熱組成物の物性を測定した。その結果を表5に示す。
次に、得られた遮熱組成物を使用して、実施例1と同様にして、遮熱材を有する試験片1及び試験片2を得た。得られた試験片の日射反射率及び裏面温度を測定し、評価した。結果を表5に示す。
【0109】
(実施例11)
実施例7において、顔料であるBlue 5484Kを表6に示す量を加えること以外は同様にして、遮熱組成物を得た。得られた遮熱組成物の物性を測定した。その結果を表6に示す。
次に、得られた遮熱組成物を使用して、実施例1と同様にして、遮熱材を有する試験片1及び試験片2を得た。得られたそれぞれの試験片の日射反射率及び裏面温度を測定し、評価した。結果を表6に示す。
【0110】
<日射反射率の測定>
試験片1について、UV-Vis-IR分光光度計(島津製作所:Solid Spec 3700)を用いて測定波長領域300-2500nmの面分光反射率を測定した。得られた分光反射率についてJIS K 5602に基づき日射反射率を算出し、以下の基準にて、遮熱材の遮熱性能を評価した。
×:日射反射率が50%未満。
〇:日射反射率が50%以上75%未満。
〇〇:日射反射率が75%以上85%未満。
〇〇〇:日射反射率が85%以上。
【0111】
<裏面温度の測定>
試験片2について
図3に示す試験装置により遮熱性能の評価を行なった。評価手順は以下の通りである。
図3に示すように、およそ40cm立方体の断熱容器(17、発泡スチロールなど)の上部を切り取って、この上に試験片(16、厚み0.8mmのアルミ板)を塗工面が上になるように設置した。
試験片の裏側には温度センサー用の熱電対(18)をセロハンテープで固定して裏面の温度変化を測定した。
熱源として50Wのレフ球(20)を使用して、試験片から垂直に10cmの距離から光を照射した。照射開始から10分後の裏面温度を測定した。なお、本裏面温度の測定は温度25℃の雰囲気下で風がない状態で実施した。
【0112】
〔遮熱材の比重の測定〕
上記中空粒子の真比重(d1)の測定において、中空粒子の代わりに遮熱材を用いること以外は上記中空粒子の真比重(d1)の測定と同様にして、遮熱材の比重を測定した。なお、遮熱材は幅2cm、奥行き0.5cmの大きさに裁断して、測定を行った。
【0113】
【0114】
【0115】
表5~6からわかるように、外殻部が熱可塑性樹脂を含む特定の中空粒子(A)と、基材成分(B)を含む遮熱組成物であると、日射反射率が50%以上の優れた遮熱性能を付与できることができ、その遮熱組成物から得られる遮熱材は、その遮熱材を有する部材の裏面温度が高くなることを抑制することができる。
一方、平均粒子径が0.1~50μmではない中空粒子を含む場合(比較例1)、内径と外径の比(r1/r2)が0.7~0.999の範囲にない中空粒子を含む場合(比較例2)、メチルエチルケトンに24時間浸漬させた後の粒子残存率が50%以上ではない中空粒子を含む場合(比較例1、3)、及び外殻部が熱可塑性樹脂を含む中空粒子(A)を含まない場合(比較例4~9)は、いずれも日射反射率が50%未満となり、遮熱性能に劣る。また、その遮熱組成物から得られる遮熱材は、その遮熱材を有する部材の裏面温度が高くなる。なかでも比較例4~6においては、樹脂中における無機粉体の分散性が低いため、得られる遮熱材中に均一に存在できていないことが原因であると考えられる。