(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077412
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】ウイルス増殖阻害作用を有するトリアジン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20230529BHJP
C07D 251/34 20060101ALI20230529BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20230529BHJP
C07D 403/04 20060101ALI20230529BHJP
C07D 403/06 20060101ALI20230529BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20230529BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C07D403/14
C07D251/34 N CSP
C07D403/12 ZNA
C07D403/04
C07D403/06
A61K31/53
A61P31/14
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186107
(22)【出願日】2022-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2021189932
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022046304
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100209598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100219841
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 綾子
(72)【発明者】
【氏名】笠松 幸司
(72)【発明者】
【氏名】幸木 謙典
(72)【発明者】
【氏名】枡田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】西部(鈴木) 悠介
(72)【発明者】
【氏名】若森 久幸
(72)【発明者】
【氏名】福田 知広
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB02
4C063BB03
4C063BB09
4C063CC43
4C063DD22
4C063DD41
4C063EE01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC64
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規なウイルス増殖阻害作用を有するトリアジン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】式(I)
で示される化合物またはその塩と、式(II)
で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、トリアジン誘導体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、R
1は置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、R
2はそれぞれ独立して、ハロゲン、シアノまたはメチル、nは1~5の整数である。)で示される化合物またはその塩と、式(II):
【化2】
(式中、R
3はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、mは0~5の整数である)で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(III):
【化3】
で示される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】
酸が、トリフルオロ酢酸である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(III)で示される化合物が、式(III-1):
【化4】
である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
式(IV):
【化5】
(式中、R
4は置換もしくは非置換の芳香族複素環式基、または置換もしくは非置換の芳香族炭素環式基であり、pは0または1であり、その他の記号は請求項1と同意義である。)で示される化合物またはその塩と、式(V):
【化6】
(式中、R
5はそれぞれ独立して、ハロゲン、または置換もしくは非置換のアルキルであり、qは0~5の整数である。)で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(VI):
【化7】
(式中の記号は上記と同意義である。)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
【請求項5】
酸が酢酸である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
式(VI)で示される化合物が、
式(VII):
【化8】
である、請求項4または5記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかの製造方法より、式(III-1):
【化9】
で示される化合物またはその塩を得る工程を含む、式(VII):
【化10】
で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
【請求項8】
式(VII):
【化11】
で示される化合物またはその塩を、フマル酸、アセトンおよび水存在下で結晶化することを特徴とする、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の製造方法を使用することにより得られた式(VII):
【化12】
で示される化合物またはその塩を、結晶化させることを特徴とする、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
結晶化温度が40~60℃であり、結晶化時間が120分以上である、請求項8または9記載の製造方法。
【請求項11】
式(VIII):
【化13】
で示される化合物、またはその塩。
【請求項12】
式(IX):
【化14】
で示される化合物、またはその塩。
【請求項13】
式(X):
【化15】
で示される化合物、またはその塩。
【請求項14】
式(XI):
【化16】
で示される化合物、またはその塩。
【請求項15】
式(VII):
【化17】
で示される化合物のトルエン和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を示す新規化合物、その新規合成中間体、またはそれらの塩およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニドウイルス目コロナウイルス科オルトコロナウイルス亜科に属するコロナウイルスは、約30キロベースのゲノムサイズを有し、既知のRNAウイルスでは最大級の一本鎖+鎖RNAウイルスである。コロナウイルスはアルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属およびデルタコロナウイルス属の4つに分類され、ヒトに感染するコロナウイルスとして、アルファコロナウイルス属の2種類(HCoV-229E、HCoV-NL63)およびベータコロナウイルス属の5種類(HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2)の計7種類が知られている。この内、4種類(HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43)は風邪の病原体であるが、残りの3種類は重症肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)である。
【0003】
2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に国際社会に蔓延し、2020年3月11日にWHOよりパンデミックが表明された。2022年9月21日時点で確認された感染者数は6.1億人以上、死者数は650万人以上に達する(非特許文献1)。SARS-CoV-2の主な感染経路として飛沫感染、接触感染およびエアロゾル感染が報告されており、SARS-CoV-2は3時間程度エアロゾルと共に空気中を漂い続け、感染力を維持することが確認されている(非特許文献2)。潜伏期間は2~14日程度であり、発熱(87.9%)、空咳(67.7%)、倦怠感(38.1%)、痰(33.4%)等の風邪様症状が典型的である(非特許文献3)。重症例では、急性呼吸窮迫症候群や急性肺障害、間質性肺炎等による呼吸器不全が起こる。また、腎不全や肝不全などの多臓器不全も報告されている。
【0004】
本邦においては、既存薬のドラッグリポジショニングから、抗ウイルス薬であるレムデシビル、抗炎症薬であるデキサメタゾン、抗リウマチ薬であるバリシチニブがCOVID-19に対する治療薬として承認され、2022年1月に抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブが追加承認されている。また、2021年7月に、抗体カクテル療法(抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体の併用)であるロナプリーブ(カシリビマブおよびイムデビマブ)が、2021年9月に、単剤の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体であるゼビュディ(ソトロビマブ)が、それぞれ特例承認され、2021年12月にモルヌピラビルが特例承認された。これらの薬剤についての有効性や安全性、耐性株の出現については、十分なエビデンスが得られていない。したがって、COVID-19に対する治療薬の創製は急務である。
【0005】
コロナウイルスは、細胞に感染すると、自己複製に必要な様々なタンパク質を合成する。その中に2つのポリタンパク質があり、ウイルスゲノムを作る複製複合体、2つのプロテアーゼが含まれている。プロテアーゼは、ウイルスから合成されたポリタンパク質を切断し、それぞれのタンパク質を機能させるために不可欠な働きをする。2つのプロテアーゼのうち、ポリタンパク質の切断のほとんどを担うのが、3CLプロテアーゼ(メインプロテアーゼ)である(非特許文献4)。
3CLプロテアーゼを標的とした、COVID-19治療薬としては、2021年6月、Pfizer社によるPF-00835231のプロドラッグであるLufotrelvir(PF-07304814)のPhase1b試験の完了がClinicalTrials.govに掲載された(NCT04535167)。また、2021年3月、Pfizer社は新型コロナウイルス感染症に対する治療薬PF-07321332のPhase1試験を開始すると発表した。PF-00835231、LufotrelvirおよびPF-07321332の構造式は以下に示す通りで、本発明に係る製造方法により製造された化合物とは化学構造が異なる(非特許文献5、12および13、ならびに特許文献6および7)。
PF-00835231:
【化1】
Lufotrelvir(PF-07304814):
【化2】
PF-07321332:
【化3】
さらに2021年7月、ハイリスク因子を持つCOVID-19患者を対象とした、PF-07321332およびリトナビル併用のPhase2/3試験が開始されることがClinicalTrials.govに掲載された(NCT04960202)。リトナビルは、CYP3Aによる薬剤の代謝を阻害することにより、薬物動態学的増強因子として働く。また、2021年11月、Pfizer社のホームページにおいて、PAXLOVID(TM)(PF-07321332;リトナビル)は、成人のハイリスク患者において、プラセボと比較して入院または死亡のリスクを89%減少させたことが報告された(非特許文献14)。さらに、2021年12月、PAXLOVID(TM)は米国で緊急使用許可が承認され、2022年2月10日、パキロビッド(登録商標)パックが日本で特例承認された。
【0006】
3CLプロテアーゼ阻害活性を有する化合物が非特許文献5~8に開示されているが、いずれの文献においても本発明に関連する化合物、製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
Ρ2X3および/またはΡ2X2/3受容体拮抗作用を有するトリアジン誘導体およびウラシル誘導体が特許文献1~4および8~12に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載も示唆もされていない。また、本発明に係る製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
抗腫瘍効果を有するトリアジン誘導体が非特許文献9~11に開示されているが、いずれの文献においても、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載されておらず、また、本発明に関連する化合物、製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
ガラニン受容体調節作用を有するトリアジン誘導体が特許文献5に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載も示唆もされていない。また、本発明に係る製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/020749号
【特許文献2】国際公開第2013/089212号
【特許文献3】国際公開第2010/092966号
【特許文献4】国際公開第2014/200078号
【特許文献5】国際公開第2012/009258号
【特許文献6】国際公開第2021/205298号
【特許文献7】国際公開第2021/250648号
【特許文献8】中国特許出願公開第113620888号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第113666914号明細書
【特許文献10】中国特許出願公開第113735838号明細書
【特許文献11】中国特許出願公開第113773300号明細書
【特許文献12】中国特許出願公開第113801097号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering at Johns Hopkins University”、[online]、Johns Hopkins University、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://coronavirus.jhu.edu/map.html>
【非特許文献2】The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE(2020年)、382巻、1564~1567頁
【非特許文献3】“Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)”、[online]、2020年2月28日、WHO、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf>
【非特許文献4】Science(2003年)、300巻、1763~1767頁
【非特許文献5】“A comparative analysis of SARS-CoV-2 antivirals characterizes 3CLpro inhibitor PF-00835231 as a potential new treatment for COVID-19”、Journal of Virology、[online]、2021年2月23日、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://jvi.asm.org/content/early/2021/02/19/JVI.01819-20><doi: 10.1128/JVI.01819-20>
【非特許文献6】Cell Research(2020年)、30巻、678~692頁
【非特許文献7】Science(2020年)、368巻、409~412頁
【非特許文献8】ACS Central Science(2021年)、7巻、3号、467~475頁
【非特許文献9】Cancer Treatment Reviews(1984年)、11巻、Supplement 1、99~110頁
【非特許文献10】Contributions to Oncology(1984年)、18巻、221~234頁
【非特許文献11】Arzneimittel-Forschung(1984年)、11巻、6号、663~668頁
【非特許文献12】261st Am Chem Soc (ACS) Natl Meet ・ 2021-04-05 / 2021-04-16 ・ Virtual, N/A ・ Abst 243
【非特許文献13】Science(2021年)、374巻、1586~1593頁
【非特許文献14】"Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk Of Hospitalization Or Death By 89% In Interim Analysis Of Phase 2/3 EPIC-HR Study"、[online]、2021年11月5日、 Pfizer Press Release、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizers-novel-covid-19-oral-antiviral-treatment-candidate>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有する新規化合物の新規合成中間体またはそれらの塩、および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に関する。
(1)式(I):
【化4】
(式中、R
1は置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、R
2はそれぞれ独立して、ハロゲン、シアノまたはメチル、nは1~5の整数である。)で示される化合物またはその塩と、式(II):
【化5】
(式中、R
3はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、mは0~5の整数である)で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(III):
【化6】
で示される化合物またはその塩の製造方法。
(2)酸が、トリフルオロ酢酸である、上記(1)記載の製造方法。
(3)式(III)で示される化合物が、式(III-1):
【化7】
である、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)式(IV):
【化8】
(式中、R
4は置換もしくは非置換の芳香族複素環式基、または置換もしくは非置換の芳香族炭素環式基であり、pは0または1であり、その他の記号は上記(1)と同意義である。)で示される化合物またはその塩と、式(V):
【化9】
(式中、R
5はそれぞれ独立して、ハロゲン、または置換もしくは非置換のアルキルであり、qは0~5の整数である。)で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(VI):
【化10】
(式中の記号は上記と同意義である。)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
(5)酸が酢酸である、上記(4)記載の製造方法。
(6)式(VI)で示される化合物が、
式(VII):
【化11】
である、上記(4)または(5)記載の製造方法。
(7)上記(1)~(3)のいずれかの製造方法より、式(III-1):
【化12】
で示される化合物またはその塩を得る工程を含む、式(VII):
【化13】
で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
(8)式(VII):
【化14】
で示される化合物またはその塩を、フマル酸、アセトンおよび水存在下で結晶化することを特徴とする、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法。
(9)上記(1)~(7)のいずれかに記載の製造方法を使用することにより得られた式(VII):
【化15】
で示される化合物またはその塩を、結晶化させることを特徴とする、上記(8)記載の製造方法。
(10)結晶化温度が40~60℃であり、結晶化時間が120分以上である、上記(8)または(9)記載の製造方法。
(11)式(VIII):
【化16】
で示される化合物、またはその塩。
(12)式(IX):
【化17】
で示される化合物、またはその塩。
(13)式(X):
【化18】
で示される化合物、またはその塩。
(14)式(XI):
【化19】
で示される化合物、またはその塩。
(15)式(VII):
【化20】
で示される化合物のトルエン和物。
(16)実質的に、式(VII):
【化21】
で示される化合物のフリー体が含まれない、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形。
(17)以下の式:
【化22】
で示される化合物のメシル酸塩。
(18)以下の式:
【化23】
で示される化合物のメシル酸塩。
(19)以下の式:
【化24】
で示される化合物、またはその塩。
(20)以下の式:
【化25】
で示される化合物、またはその塩。
(21)以下の式:
【化26】
で示される化合物の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン塩である、上記項目(20)記載の塩。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る製造方法により製造された化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有し、コロナウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。
また、本発明に係る製造方法により製造された化合物は、医薬原体として有用である。
さらに、本発明に係る製造方法により製造された式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶を含有する医薬組成物は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤として非常に有用である。本発明に係る製造方法は、本発明に係る化合物を収率よく製造することが出来る方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の非対称単位中の構造図を示す。
【
図2】式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
【
図3】式(VII)で示される化合物のトルエン和物の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
「からなる」という用語は、構成要件のみを有することを意味する。
「含む」という用語は、構成要件に限定されず、記載されていない要素を排除しないことを意味する。
以下、本発明について実施形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。
また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0014】
「ハロゲン」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を包含する。特にフッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0015】
「アルキル」とは、炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-へプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。
「アルキル」の好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルが挙げられる。さらに好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルが挙げられる。
「C1-C4アルキル」とは、炭素数1~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等が挙げられる。
【0016】
「芳香族炭素環式基」とは、単環または2環以上の、環状芳香族炭化水素基を意味する。例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等が挙げられる。6員芳香族炭素環式基としては、例えば、フェニルが挙げられる。10員芳香族炭素環式基としては、例えば、ナフチル等が挙げられる。14員芳香族炭素環式基としては、例えば、アントリル、フェナントリル等が挙げられる。
「芳香族炭素環式基」の好ましい態様として、フェニルが挙げられる。
【0017】
「芳香族炭素環」とは、上記「芳香族炭素環式基」から導かれる環を意味する。
【0018】
「芳香族複素環式基」とは、O、SおよびNから任意に選択される同一または異なるヘテロ原子を環内に1以上有する、単環または2環以上の、芳香族環式基を意味する。
2環以上の芳香族複素環式基は、単環または2環以上の芳香族複素環式基に、上記「芳香族炭素環式基」における環が縮合したものも包含し、該結合手はいずれの環に有していても良い。
単環の芳香族複素環式基としては、5~8員が好ましく、より好ましくは5員または6員である。5員芳香族複素環式基としては、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル等が挙げられる。6員芳香族複素環式基としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル等が挙げられる。
2環の芳香族複素環式基としては、8~10員が好ましく、より好ましくは9員または10員である。例えば、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。9員芳香族複素環式基としては、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフラニル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。10員芳香族複素環式基としては、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プテリジニル、ピラジノピリダジニル等が挙げられる。
3環以上の芳香族複素環式基としては、13~15員が好ましい。例えば、カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル等が挙げられる。
「芳香族複素環式基」の好ましい態様として、トリアゾリルが挙げられる。
【0019】
「芳香族複素環」とは、上記「芳香族複素環式基」から導かれる環を意味する。
【0020】
「置換アルキル」の置換基としては、次の置換基群Aが挙げられる。任意の位置の炭素原子が次の置換基群Aから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群A:ハロゲン、シアノおよびニトロ。
「置換C1-C4アルキル」の置換基としては、次の置換基群Bが挙げられる。任意の位置の炭素原子が次の置換基群Bから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群B:ハロゲン、シアノおよびニトロ。
【0021】
「置換芳香族炭素環式基」および「置換芳香族複素環式基」等の「芳香族炭素環」および「芳香族複素環」の環上の置換基としては、次の置換基群Cが挙げられる。環上の任意の位置の原子が次の置換基群Bから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群C:ハロゲン、シアノ、ニトロおよびアルキル。
【0022】
式(VI)および式(VII)で示される化合物は、特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト-エノール異性体、イミン-エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体またはそれらの混合物を含む。
【化27】
例えば、式(VII)で示される化合物は、以下のような互変異性体を包含する。
【化28】
【0023】
実質的に、式(VII):
【化29】
で示される化合物のフリー体が含まれない、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形とは、粉末X線回折測定等の測定機器で、式(VII)で示される化合物のフリー体由来のピークが検出されない(検出限界以下である)、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形を意味する。
【0024】
式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物の一つ以上の水素、炭素および/または他の原子は、それぞれ水素、炭素および/または他の原子の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123Iおよび36Clのように、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素および塩素が包含される。式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および、式(XI)で示される化合物は、そのような同位体で置換された化合物も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用であり、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物のすべての放射性標識体を包含する。また該「放射性標識体」を製造するための「放射性標識化方法」も本発明に包含され、該「放射性標識体」は、代謝薬物動態研究、結合アッセイにおける研究および/または診断のツールとして有用である。
また、本発明に係る結晶は重水素変換体であってもよい。本発明に係る結晶は同位元素(例、3H,14C,35S,125I等)で標識されていてもよい。
【0025】
式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物の放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示されるトリチウム標識化合物は、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、式(I)で示される特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。トリチウム標識化合物を調製するための他の適切な方法は、“Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)”を参照することができる。14C-標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
【0026】
式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物の塩としては、例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物と、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)およびアミノ酸との塩、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)との塩が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
式(VII)で示される化合物の塩は、例えば、式(VII)で示される化合物とカウンター分子又はカウンターイオンからなり、任意の数のカウンター分子又はカウンターイオンを含んでいても良い。式(VII)で示される化合物の塩は、化合物とカウンター分子又はカウンター原子との間でプロトン移動することにより、イオン結合を介するものをいう。
【0027】
本発明の式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物またはその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)、共結晶および/または結晶多形を形成する場合があり、本発明はそのような各種の溶媒和物、共結晶および結晶多形も包含する。「溶媒和物」は、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。また、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物またはその塩を、再結晶することで結晶多形を形成する場合がある。
【0028】
本明細書中で用いる「結晶」とは、構成する原子、イオン、分子などが三次元的に規則正しく配列した固体を意味し、そのような規則正しい内部構造を持たない非晶質固体とは区別される。本発明に係る結晶は、単結晶、双晶、多結晶などであってもよい。
さらに、「結晶」には、組成が同一でありながら結晶中の配列が異なる「結晶多形」が存在することがあり、それらを含めて「結晶形態」という。
加えて、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物は、これらの塩又はこれらの製薬上許容される溶媒和物に変換してもよい。本発明に係る結晶は、これらの塩、水和物、溶媒和物、結晶多形のいずれであってもよく、二つ以上の混合物であっても、発明の範囲内に包含されることが意図される。
結晶形態および結晶化度は、例えば、粉末X線回折測定、ラマン分光法、赤外吸収スペクトル測定法、水分吸脱着測定、示差走査熱量測定、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。
【0029】
本明細書中で用いる「共結晶」とは、例えば、式(VII)で示される化合物とカウンター分子が同一結晶格子内に規則的に配列することを意味し、任意の数のカウンター分子を含んでいても良い。また、共結晶とは、化合物とカウンター分子との分子間相互作用が、水素結合、ファンデルワールス力などの、非共有結合性かつ非イオン性の化学的相互作用を介するものをいう。共結晶は、化合物が本質的に無電荷または中性のままであるという点で、塩と区別される。共結晶は、カウンター分子が水もしくは溶媒ではないという点で水和物または溶媒和物と区別される。
【0030】
本発明の式(VII)で示される化合物を含む複合体は、広義には、塩、共結晶および包接化合物、またはその溶媒和物を含む。
【0031】
本明細書中で用いる「溶媒和物」とは、例えば式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物に対し、任意の数の溶媒分子と規則正しく配列しているものをいう。
溶媒分子としては、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2‐ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2‐ジメトキシエタン、N,N‐ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミド、1,4‐ジオキサン、2‐エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2‐メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N‐メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2‐トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、好ましくは、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、より好ましくは、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
また、式(I)、式(II)、式(III)、式(III-1)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および式(XI)で示される化合物、またはその塩、共結晶および複合体は、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。
【0032】
(粉末X線回折(XRPD))
粉末X線回折(XRPD)は、固体の結晶形態及び結晶性を測定するための最も感度の良い分析法の1つである。X線が結晶に照射されると、結晶格子面で反射し、互いに干渉しあい、構造の周期に対応した秩序だった回折線を示す。一方、非晶質固体については、通常、その構造の中に秩序だった繰返し周期をもたないため、回折現象は起こらず、特徴のないブロードなXRPDパターン(ハローパターンとも呼ばれる)を示す。
【0033】
式(VII)で示される化合物の結晶形態は、粉末X線回折パターンおよび特徴的な回折ピークにより識別可能である。式(VII)で示される化合物の結晶形態は、特徴的な回折ピークの存在によって他の結晶形態と区別することができる。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観測された回折パターンから選択されるピークである。特徴的な回折ピークは、好ましくは回折パターンにおける約10本、より好ましくは約5本、さらに好ましくは約3本から選択される。
複数の結晶を区別する上では、ピークの強度よりも、当該結晶で確認され、他の結晶では確認されないピークが、その結晶を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つまたは二つのピークでも、当該結晶を特徴付けることができる。測定して得られたチャートを比較し、これらの特徴的なピークが一致すれば、粉末X線回折スペクトルが実質的に一致するといえる。
【0034】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るため、粉末X線回折の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0035】
以下の表および図において表示されるピークの強度は、一般に、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶の選択配向の効果、粗大粒子の影響、分析される物質の純度またはサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンで示される化合物も、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
(単結晶構造解析)
結晶を特定する方法の一つで、当該結晶における結晶学的パラメーター、さらに、原子座標(各原子の空間的な位置関係を示す値)および3次元構造モデルを得ることができる。桜井敏雄著「X線構造解析の手引き」裳華房発行(1983年)、Stout & Jensen著 X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)などを参照。本発明に係る複合体、塩、光学異性体、互変異性体、幾何異性体の結晶の構造を同定する際には、単結晶構造解析が有用である。
【0037】
本発明に係る製造方法により製造された化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患の治療および/または予防剤として有用である。本明細書において「治療剤および/または予防剤」という場合、症状改善剤も包含する。コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患としては、ウイルス感染症が挙げられ、好ましくはコロナウイルス感染症が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、ヒトに感染するコロナウイルスが挙げられる。ヒトに感染するコロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルスおよび/またはベータコロナウイルス、より好ましくはベータコロナウイルスが挙げられる。
一つの態様として、アルファコロナウイルスとしては、HCoV-229EおよびHCoV-NL63が挙げられる。特に好ましくは、HCoV-229Eが挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。好ましくはHCoV-OC43またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、およびベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)が挙げられる。より好ましくは、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、およびベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、特に好ましくはベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)が挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、サルベコウイルス亜属が挙げられる。
ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)としては、例えばHCoV-HKU1およびHCoV-OC43、好ましくは、HCoV-OC43が挙げられる。ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)としては、例えばSARS-CoVおよびSARS-CoV-2、好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。ベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)としては、好ましくはMERS-CoVが挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2による感染症が挙げられる。好ましくは、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2による感染症、特に好ましくは、SARS-CoV-2による感染症が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、特に好ましくは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が挙げられる。
【0038】
以下に、本発明に係る製造方法について説明する。
工程1 式(III)で示される化合物の製造方法
【化30】
式中の記号は上記と同意義である。
本工程は、式(I)で示される化合物と式(II)で示される化合物を酸存在下で反応させることを特徴とする、式(III)で示される化合物の製造方法である。
式(I)で示される化合物に対して、式(II)で示される化合物は、通常、1.0~5.0当量、例えば、1.0~3.0当量用いることができる。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されず、酸を溶媒として利用してもよい。酸、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、酸が挙げられる。
酸としては、プロトン酸、ルイス酸が挙げられ、好ましくは、トリフルオロ酢酸が挙げられる。
式(I)で示される化合物に対して、酸の使用量は通常、1.0当量~大過剰、例えば、5.0当量~大過剰用いることができる。
反応温度は、特に制限されないが通常、約0℃~約50℃、好ましくは、室温~40℃で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.1時間~12時間、好ましくは、0.1~5時間である。
【0039】
工程2 式(VI)で示される化合物の製造方法
【化31】
式中の記号は上記と同意義である。
本工程は、式(IV)で示される化合物と式(V)で示される化合物を酸存在下で反応させることを特徴とする、式(VI)で示される化合物の製造方法である。
式(IV)で示される化合物に対して、式(V)で示される化合物は、通常、1.0~5.0当量、例えば、1.0~1.5当量用いることができる。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されず、酸を溶媒として利用してもよい。トルエン、tブタノール、tアミルアルコール等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、トルエン挙げられる。
酸としては、酢酸、2,2―ジメチルブタン酸等が挙げられる。好ましくは、酢酸が挙げられる。
式(IV)で示される化合物に対して、酸の使用量は通常、1.0当量~10当量、例えば、3.0当量~10当量用いることができる。
反応温度は、特に制限されないが通常、室温~約150℃またはマイクロウェーブ照射下、好ましくは、50~150℃またはマイクロウェーブ照射下で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.1時間~12時間、好ましくは、3~10時間である。
【0040】
工程3 式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法
本工程は、式(VII)で示される化合物をフマル酸、アセトンおよび水存在下で結晶化することを特徴とする、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法である。
式(VII)で示される化合物に対して、フマル酸の使用量は通常、1.0当量~3.0、例えば、1.0当量~1.5当量用いることができる。
結晶化温度は、特に制限されないが通常、40~80℃、好ましくは、40~60℃で行うことができる。
結晶化時間は、特に制限されないが通常、1時間以上、好ましくは、2時間以上、さらに好ましくは2~12時間である。
アセトンおよび水存在下であればよく、好ましくはアセトンおよび水の割合としては、85:15~50:50で行うことができる。
【0041】
本発明に係る製造方法により製造された化合物(式(VII)で示される化合物)は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、ウイルス感染症の治療および/または予防剤として有用である。
さらに本発明に係る製造方法により製造された化合物は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
a)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4等)に対する阻害作用が弱い。
b)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス等良好な薬物動態を示す。
c)代謝安定性が高い。
d)CYP酵素(例えば、CYP3A4)に対し、本明細書に記載する測定条件の濃度範囲内で不可逆的阻害作用を示さない。
e)変異原性を有さない。
f)心血管系のリスクが低い。
g)高い溶解性を示す。
h)タンパク質非結合率(fu値)が高い。
i)高いコロナウイルス3CLプロテアーゼ選択性を有している。
j)高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。例えば、ヒト血清(HS)またはヒト血清アルブミン(HSA)添加下において、高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。
コロナウイルス増殖阻害剤としては、例えば後述のCPE抑制効果確認試験(SARS-CoV-2)において、例えばEC50が10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは100nM以下である態様が挙げられる。
また、本発明に係る製造方法により製造された化合物の塩・結晶・複合体・共結晶は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
bb)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス、高いAUC、高い最高血中濃度等、良好な薬物動態を示す。
gg)高い溶解性、高い化学安定性、低い吸湿性を示す。
【0042】
本発明に係る製造方法により製造された化合物を含有する医薬組成物は、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。非経口投与の方法としては、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、経粘膜、吸入、経鼻、点眼、点耳、膣内投与等が挙げられる。
【0043】
経口投与の場合は常法に従って、内用固形製剤(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、フィルム剤等)、内用液剤(例えば、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、酒精剤、芳香水剤、エキス剤、煎剤、チンキ剤等)等の通常用いられるいずれの剤型に調製して投与すればよい。錠剤は、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、徐放錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠、チュアブル錠または口腔内崩壊錠であってもよく、散剤および顆粒剤はドライシロップであってもよく、カプセル剤は、ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤または徐放性カプセル剤であってもよい。
【0044】
非経口投与の場合は、注射剤、点滴剤、外用剤(例えば、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、エアゾール剤、吸入剤、ローション剤、注入剤、塗布剤、含嗽剤、浣腸剤、軟膏剤、硬膏剤、ゼリー剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、外用散剤、坐剤等)等の通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。注射剤は、O/W、W/O、O/W/O、W/O/W型等のエマルジョンであってもよい。
【0045】
本発明に係る製造方法により製造された化合物の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬組成物とすることができる。さらに、該医薬組成物は、本発明に係る製造方法により製造された化合物の有効量、剤型および/または各種医薬用添加剤を適宜変更することにより、小児用、高齢者用、重症患者用または手術用の医薬組成物とすることもできる。例えば、小児用医薬組成物は、新生児(出生後4週未満)、乳児(出生後4週~1歳未満)幼児(1歳以上7歳未満)、小児(7歳以上15歳未満)若しくは15歳~18歳の患者に投与されうる。例えば、高齢者用医薬組成物は、65歳以上の患者に投与されうる。
【0046】
本発明に係る製造方法により製造された化合物を含有する医薬組成物(例えば、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形を含む医薬組成物)の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、経口投与する場合、通常0.05~200mg/kg/日であり、好ましくは0.1~100mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005~200mg/kg/日であり、好ましくは0.01~100mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回~数回に分けて投与すれば良い。
【0047】
本発明に係る製造方法により製造された化合物(式(VII)で示される化合物)は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減等を目的として、例えば、他の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬(該治療薬としては、承認を受けた薬剤、および開発中または今後開発される薬剤を含む)(以下、併用薬剤と称する)と組み合わせて用いてもよい。この際、本発明に係る製造方法により製造された化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明に係る製造方法により製造された化合物と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類以上の製剤として投与されてもよいし、それらの活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。
【0048】
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明に係る製造方法により製造された化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明に係る製造方法により製造された化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01~100重量部用いればよい。
【実施例0049】
以下に実施例および参考例、ならびに試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0050】
また、本明細書中で用いる略語は以下の意味を表す。
BINAP:2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル
Boc:tert-ブトキシカルボニル
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
CbzCl:クロロぎ酸ベンジル
DME:ジメチルエーテル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DTT:ジチオトレイトール
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EDT:1,2-エタンジチオール
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎児血清
HOBT:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
LHMDS:リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MEK:メチルエチルケトン
MEM:イーグル最小必須培地
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
TFA:トリフルオロ酢酸
TMSCl:クロロトリメチルシラン
mM:mmol/L
μM:μmol/L
nM:nmol/L
【0051】
(化合物の同定方法)
各実施例および参考例で得られたNMR分析は400MHzで行い、DMSO-d6、CDCl3を用いて測定した。また、NMRデータを示す場合は、測定した全てのピークを記載していない場合が存在する。
明細書中に「RT」または「保持時間」とあるのは、LC/MS:液体クロマトグラフィー/質量分析または液体クロマトグラフィーでのリテンションタイムを表し、以下の条件で測定した。
なお、明細書中、MS(m/z)との記載は、質量分析で観測された値を示す。
(測定条件1)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件2)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は10mM炭酸アンモニウム含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件4)
カラム:Xselect CSH C18 (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持した。
流量:1.0mL/分
注入量:5μL
(測定条件5)
カラム:Xselect CSH C18 (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持した。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件7)
カラム:Xselect CSH Fluoro-Phenyl (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:6分間、20%溶媒[B]を維持し,21分間で20%-42%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、4分間で42%-50%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い,最後に3分間で50%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件8)
カラム:Xselect CSH Fluoro-Phenyl (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:2分間、20%溶媒[B]を維持し,6分間で20%-37%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、10分間で37%-50%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、2分間で50%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件9)
カラム:YMC Jsphere ODS-H80(4μm i.d.4.6x250mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:250nm
移動相:[A]は0.2%トリフルオロ酢酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用メタノール
グラジエント:6分間で10%-70%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、70%溶媒[B]を維持,その後,3分間で70%-90%のリニアグラジエント,その後,5分間,90%溶媒[B]を維持,その後,1分間で90%-95%のリニアグラジエント,その後5分間,95%溶媒[B]を維持
流量:1.0mL/分
注入量:5μL
(測定条件10)
カラム:Xselect CSH C18(3.5μm i.d.4.6x150mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件11)
カラム:XBridge C18(3.5μm i.d.4.6x150mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:210nm
移動相:[A]は10mMアンモニア含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用メタノール
グラジエント:5分間で5%溶媒[B]を維持し、10分間で5%-38%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、5分間で38%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:0.8mL/分
注入量:10μL
【0052】
(粉末X線回折パターンの測定)
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
(装置)
リガク社製MiniFlex600
(操作方法)
検出器:高速一次元検出器(D/TecUltra2)
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:15mA
管電圧:40Kv
試料プレート:無反射試料板
【0053】
(単結晶構造解析の測定と解析方法)
単結晶構造解析の測定条件および解析方法を以下に示す。
(装置)
リガク社製 XtaLAB P200 MM007
(測定条件)
測定温度:25℃
使用波長:CuKα線(λ=1.5418Å)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
(データ処理)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
データはローレンツ及び偏光補正、吸収補正を行った。
(結晶構造解析)
直接法プログラムShelXT(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて位相決定を行い、精密化はShelXL(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて、full-matrix最小二乗法を実施した。非水素原子の温度因子はすべて異方性で精密化を行った。水素原子はShelXLのデフォルトパラメータを用いて計算により導入し、riding atomとして取り扱った。全ての水素原子は、等方性パラメーターで精密化を行った。
図1の作図にはPLATON(Spek,1991)/ORTEP(Johnson,1976)を使用した。