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特開2023-774143’で保護されていない標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みによるDNAのシーケンシング
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  • 特開-3’で保護されていない標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みによるDNAのシーケンシング 図1
  • 特開-3’で保護されていない標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みによるDNAのシーケンシング 図2
  • 特開-3’で保護されていない標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みによるDNAのシーケンシング 図3
  • 特開-3’で保護されていない標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みによるDNAのシーケンシング 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077414
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】3’で保護されていない標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みによるDNAのシーケンシング
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230529BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20230529BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20230529BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230529BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20230529BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230529BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALN20230529BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6816 Z
C12Q1/6834 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/10 110Z
C12N15/11 Z
C12Q1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022186265
(22)【出願日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】21210099
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ペルボス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ピナード
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非3’キャッピングおよび蛍光標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みによるDNAシーケンシング法を提供する。
【解決手段】個々のヌクレオチド(A、またはT、またはG、またはC)の組み込みはそれぞれ、洗浄によって分けられている。4つの塩基すべてを使用したすべての組み込みの後に、基質を画像化し、次いで、色素を開裂させ、次のサイクルである組み込み、洗浄、イメージング、および開裂を再開する、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAまたはDNA分子の配列の少なくとも一部を検出するための方法において、
a) ポリメラーゼの存在下で開裂可能なリンカーを介して少なくとも1つの蛍光色素がそれぞれ備えられたヌクレオチドA、T、C、およびGを前記RNAまたはDNA分子に連続的に提供し、それによって、前記ヌクレオチドを前記RNAまたはDNA分子に組み込むステップであって、前記ヌクレオチドの前記蛍光色素が、異なる発光最大値を有し、前記ヌクレオチドが、保護されていない3’OH位置を有する、組み込むステップと、
b) 組み込まれていないヌクレオチドを除去するステップと、
c) 組み込まれた前記ヌクレオチドを励起することによって検出し、前記蛍光色素の蛍光発光放射を検出し、それによって、配列情報を得るステップと、
d) 前記蛍光色素を、前記開裂可能なリンカーを開裂させることによって、前記組み込まれたヌクレオチドから除去するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップb)~e)を、シーケンシングすべき前記RNAまたはDNA分子の少なくとも一部のシーケンシングに必要なすべてのヌクレオチドが完成するまで繰り返すことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップb)~e)を5~1000サイクルで繰り返すことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ヌクレオチドA、T、C、およびGのそれぞれを、開裂可能なリンカーを介して蛍光色素が備えられた種と、蛍光色素なしの種とを含む混合物として提供し、どちらの種も、保護されていない3’OH位置を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記開裂可能なリンカーを、酵素的もしくは化学的に開裂させるか、または放射線によって開裂させることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記RNAまたはDNA分子に、アダプター配列の一部として、固有識別子(UMI)としての4~50個のヌクレオチドの配列を提供することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記RNAまたはDNA分子に、蛍光発光放射の較正配列として少なくとも1つの蛍光色素がそれぞれ備えられた4~50個のA、T、C、およびGヌクレオチドの配列を提供し、前記組み込まれたヌクレオチドの前記蛍光発光放射を、前記較正配列の前記蛍光発光放射に対するその相対強度によって検出することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ヌクレオチドが、一般式(I)
NP-(CL-D)(I)
を有し、式中、
N:天然または人工核酸
P:3個以上のホスフェート基
CL:開裂可能なリンカー
D:蛍光色素
X:1~10の整数
であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ヌクレオチドを、10~80℃の温度でポリメラーゼの存在下において、前記DNAまたはRNA分子に組み込むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記RNAまたはDNA分子を、前記RNAまたはDNA分子の複数のコンカテマーを含むRNAまたはDNAロロニーとして提供することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記RNAまたはDNA分子を、一本鎖RNAもしくはDNA分子として、ならびに/またはセンスおよびアンチセンスDNA一本鎖の混合物として提供することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記RNAまたはDNA分子をヌクレオチドの組み込み前に断片化することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記RNAまたはDNA分子を固体表面に固定化することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記RNAまたはDNA分子を、静電荷またはNHSエステル活性化架橋剤を介して前記表面と相互作用させることによって固定化する、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
次世代シーケンシング(NGS)は、臨床的に関連する標的配列を研究するための非常に強力なツールであり、遺伝子ベースのパネル試験は、DNAバリアントを研究するための最初の選択肢である。例えば、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング(Drmanac等(1998)Nat Biotechnol 16:54-58)、操作されたナノ細孔を使用した一本鎖DNAの配列特異的検出(Kasianowicz等(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93:13770-13773)、パイロシーケンシング(Ronaghi等(1998)Science 281:363-365)、単一DNA分子のシーケンシング(Braslavsky等(2003)Proc Natl Acad Sci USA 100:3960-3964)、ライゲーションによるシーケンシング(Shendure等(2005)Science 309:1728-1732)、およびロロニー/ポロニー(Mitra等(2003)Anal Biochem 320:55-65)などのアプローチが広く研究されてきた。
【0002】
しかしながら、現在、合成によるDNAシーケンシング(SBS)がシーケンシングのために選択されている方法である。このアプローチでは、各シーケンシングサイクルは、少なくとも、1)開裂可能な蛍光標識を備えた保護ヌクレオチドの付加、2)オリゴヌクレオチドでプライミングされたDNAまたはRNAへのポリメラーゼの付加およびヌクレオチドの組み込み、3)蛍光標識の検出、4)蛍光標識の除去、5)組み込まれたヌクレオチドの脱保護のステップを伴い、ここで、各ステップに洗浄ステップが続き得る。
【0003】
可逆的に終結するヌクレオチドを用いた合成によるDNAシーケンシング(SBS)化学は、主要な酵素としてポリメラーゼを使用し、かなりの性能を有するいくつかのDNAシーケンシングシステムにすでに組み込まれている。開裂可能なフルオロフォアを塩基につなぎ、デオキシリボースホスフェート骨格の3’-OH基をキャッピングする、化学的に可逆的なリンカーを含有する修飾ヌクレオチドのDNAポリメラーゼによる効率的な認識および組み込みを含む、シーケンスの速度および費用を改善するための課題がなおも多くある。今日まで、そのようなヌクレオチドを通常のDNAポリメラーゼで組み込むことに成功した例は報告されていない。主な理由は、デオキシリボースの3’位置が、ポリメラーゼの活性部位のアミノ酸残基の近くに位置しているため、リボース環のこの領域での修飾が、これらの修飾ヌクレオチドの組み込みを損なうか、または低減させることである(Pelletier等(1994)Science 264:1891-1903)。
【0004】
それとは反対に、開裂可能なリンカーを介してピリミジンの5位(TおよびC)およびプリンの7位(GおよびA)に連結された独自の蛍光色素は、それらが活性部位の残基に近接して位置していないため、より許容可能である。さらに、後続の可逆的に終結するヌクレオチドを可能にするために、各サイクル間でキャッピング基を化学的に除去する必要がある。したがって、全体的なプロセスは、非常に遅くなり、例えば、100個のヌクレオチド単位を有するDNA/RNAの典型的なシーケンシングには、約9~15時間かかる。
【0005】
さらに、3’-OH基をキャッピングするために使用される、SBSアプローチに必要な小さな化学部分を含む非常に広範な修飾を許容するために、またこれらのヌクレオチド類似体を成長するDNA鎖に組み込むことを可能にするために、修飾DNAポリメラーゼを使用する必要がある。したがって、本発明の目的は、DNAまたはRNAライブラリーをシーケンシングするための著しく迅速かつ単純なプロセスを提供することであった。
発明の概要
【0006】
本発明において、本発明者等は、非3’キャッピング蛍光標識ヌクレオチドの連続的な付加/組み込みを使用するアプローチによってDNAまたはRNAをシーケンシングするための方法を記載している。
【0007】
したがって、本発明の対象は、RNAまたはDNA分子の配列の少なくとも一部を検出するための方法において、
a) ポリメラーゼの存在下で開裂可能なリンカーを介して少なくとも1つの蛍光色素がそれぞれ備えられたヌクレオチドA、T、C、およびGをDNAまたはDNA分子に連続的に提供し、それによって、ヌクレオチドをDNAまたはRNA分子に組み込むステップであって、ヌクレオチドの蛍光色素が、異なる発光最大値を有し、ヌクレオチドが、保護されていない3’OH位置を有する、組み込むステップと、
b) 組み込まれていないヌクレオチドを除去するステップと、
c) 組み込まれたヌクレオチドを励起することによって検出し、蛍光色素の蛍光発光放射を検出し、それによって、配列情報を得るステップと、
d) 蛍光色素を、開裂可能なリンカーを開裂させることによって、組み込まれたヌクレオチドから除去するステップと
を含むことを特徴とする、方法である。
【0008】
このアプローチでは、デオキシリボースホスフェート骨格の3’OH位置において保護されていない(キャッピングされていないとも称される)個々のヌクレオチドを、定められた順序で連続的に使用し、伸長したDNAまたはRNA鎖を、4つのヌクレオチドすべてがポリメラーゼによって付加された後に単独で画像化する。
【0009】
本発明は、複数の組み込みサイクルと、撮影する必要がある画像の数の削減とを利用する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明で使用される保護されていない(「キャッピングされていない」)3’OH位置および保護されている(「キャッピングされている」)3’OH位置を有するヌクレオチドA、T、C、およびGの一般式を示す。
図2】本発明の方法の1サイクルを示す。
図3】表面に固定化されたロロニーとしてのRNA/DNA分子を提供することを含む本発明の実施形態を示す。
図4】T、G、A、およびCを含むライブラリーアダプター(較正配列)の最後の4つのヌクレオチドを使用するシーケンシングの最初の4サイクル中の単独組み込みを使用する較正ステップを示す。
【0011】
詳細な説明
キャッピングされていないヌクレオチドを使用すると、通常のポリメラーゼの使用が可能になり、それと引き換えに、現在SBSによって使用されている高温および遺伝子操作された好熱性DNAポリメラーゼの必要性が排除される。これらの酵素は、それらの中温性対応物と同じ触媒メカニズムを共有しているが、高温で最適に活性化する。
【0012】
好ましくは、ヌクレオチドを、10~80℃の温度でポリメラーゼの存在下において、好ましくは10~40℃の温度でポリメラーゼの存在下において、DNAまたはRNA分子に組み込む。
【0013】
SBSの間、標識およびターミネーターは、次のシーケンシングサイクルのための相補鎖を調製するために、組み込みおよびイメージングの後に化学的に除去される。サイクル中に塩基が組み込まれない場合、鎖は遅れ始める。他方で、1回のサイクルで複数の塩基を追加すると、鎖は先に進む(リード)。これは、フェージングと称される。フェージングは、実際の塩基コーリングの実施をより困難にし、エラー率を増加させるであろう。高度に修飾されたヌクレオチド、特に、ポリメラーゼの活性部位の近くに位置しているデオキシリボースホスフェート骨格の3’OH位置に修飾を有するヌクレオチドの組み込みが困難であることは、フェージング現象に対して有利であろう。3’OH位置に修飾を使用しないことによって、フェージングの問題が排除または大幅に軽減される。
【0014】
任意選択的に、シーケンシングプロセスの前に、RNAまたはDNA分子に、ポリメラーゼのためのプライマーまたはアダプターとして4~50個のヌクレオチドの配列を提供する。
【0015】
さらなる識別目的のために、シーケンシングプロセスの前に、RNAまたはDNA分子に、任意選択的にアダプター配列の一部として、固有識別子(UMI)としての4~50個のヌクレオチドの配列を提供することが可能である。そのような配列は、単一細胞シーケンシングの技術分野で知られている。
【0016】
本発明の別の実施形態では、RNAまたはDNA分子に、蛍光発光放射の較正配列として少なくとも1つの蛍光色素がそれぞれ備えられた4~50個のA、T、C、およびGヌクレオチドの配列を提供し、組み込まれたヌクレオチドの蛍光発光放射を、較正配列の蛍光発光放射に対するその相対強度によって検出する。
【0017】
シーケンシングすべき各DNA/RNA分子またはロロニーまたはクラスターの較正は、既知の較正配列のシグナルを測定することによって達成することができる。最も単純な変形形態では、シーケンシングの最初の4サイクル中のA、T、C、およびGヌクレオチドの単一組み込み(それぞれ1つ)が較正に使用される。較正効率を上げるために、A、T、C、およびGヌクレオチドそれぞれのうちの2~4個を較正配列として提供してもよい。
【0018】
較正プロセスの一般的なワークフローが図4に示されており、測定された強度は、1つのヌクレオチドに等しく、これらの値は、本発明のシーケンシングプロセス中にそれぞれのヌクレオチドの強度を調整するために使用される。
【0019】
目的の配列を実際にシーケンシングする前に各ロロニーまたはクラスターについて実施されたこれらの単独組み込みのシグナルによって、単一ヌクレオチド組み込みについてのシグナルを決定することができ、ホモポリマーに見られる複数塩基組み込みについて予想されるシグナルを予測することができる。
【0020】
ステップa)において、開裂可能なリンカーを介して少なくとも1つの蛍光色素がそれぞれ備えられたヌクレオチドA、T、C、およびGが連続的に提供され、すなわち、ある種類のヌクレオチドの後に他のヌクレオチドがあり、任意選択的に、組み込まれていないヌクレオチドを除去するための洗浄手順が続く。
【0021】
図1に示されているように、本発明の方法で使用されるヌクレオチドは、保護されていない3’OH位置を有する。
【0022】
ヌクレオチドは、一般式(I)NP-(CL-D)(I)を有し得て、式中、
N:天然または人工核酸
P:3個以上のホスフェート基
CL:開裂可能なリンカー
D:蛍光色素
x:1~10の整数
である。
【0023】
ヌクレオチドは、ヌクレオチドがDNAまたはRNA分子に組み込まれるように、ポリメラーゼの存在下でDNAまたはRNA分子に提供される。
【0024】
検出のための組み込まれたヌクレオチドを区別するために、ヌクレオチドの蛍光色素は、異なる発光最大値を有する。
【0025】
ヌクレオチドA、T、C、およびGのそれぞれを、開裂可能なリンカーを介して蛍光色素が備えられた種と蛍光色素なしの種とを含む混合物として提供し、どちらの種も、保護されていない3’OH位置を有することがさらに可能である。この実施形態では、互いに隣接した色素の消光を低減することができる。
【0026】
好適な蛍光色素および検出手段は、公開されているシーケンシング技術から知られている。ヌクレオチドは、免疫蛍光技術の分野、例えば、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡法で知られている好適な蛍光色素を使用して標識することができる。例えば、蛍光色素は、フルオレセインもしくはローダミン色素のようなキサンテン色素、クマリン色素、シアニン色素、ピレン色素、オキサジン色素、ピリジルオキサゾール色素、ピロメテン色素、アクリジン色素、オキサジアゾール色素、カルボピロニン色素、ベンゾピリリウム色素、フルオレン色素、またはRu、Eu、Pt錯体などの有機金属錯体である。単一分子実体のみならず、小有機分子色素のクラスター、蛍光オリゴマー、またはポリフルオレンなどの蛍光ポリマーも蛍光部分として使用することができる。さらに、蛍光色素は、フィコビリタンパク質などのタンパク質ベース、量子ドットなどのナノ粒子、アップコンバーティングナノ粒子、金ナノ粒子、染色ポリマーナノ粒子であり得る。これらは、3’もしくは5’末端に修飾を有し得るか、または修飾は、PAリンカーを有するdUTPなどの、主骨格上の任意の塩基であり得る。標識分子は、蛍光分子(R6G、ROX、Cy3、Cy5、Alexa色素、ATTO色素など)またはエネルギー移動色素であり得る。
【0027】
DNAまたはRNA分子は、この方法において、いくつかの変形形態で提供することができる。第1の変形形態では、DNAまたはRNA分子を、RNAまたはDNA分子の複数のコンカテマーを含むRNAまたはDNAロロニーとして提供することができる。第2の変形形態では、RNAまたはDNA分子を、一本鎖RNAもしくはDNA分子として、ならびに/またはセンスおよびアンチセンスDNA一本鎖の混合物として提供する。第3の変形形態では、RNAまたはDNA分子をヌクレオチドの組み込み前に断片化する。
【0028】
さらに、RNAまたはDNA分子(任意選択的にロロニーの形態にある)を固体表面に固定化することができる。RNAまたはDNA分子を、静電荷またはNHSエステル活性化架橋剤を介して表面と相互作用させることによって固定化することができる。
【0029】
RNAまたはDNA分子/ロロニー/ナノボール/クラスターは、較正配列、アダプター、プライマー、UMI、またはさらなるバーコードを任意選択的に含むライブラリーから生成され得る。これらは、所定のゲノム上の目的の領域のいくつかのコピーを有しており、固体表面に結合しているか、またはゲルに埋め込まれている。
【0030】
ステップa)では、キャッピングされていない蛍光ヌクレオチド(T、A、G、またはC)トリホスフェートが、特定の既知の順序で、DNAポリメラーゼの存在下で固体表面に付加される。例えば、Tを含有する溶液を最初に添加し、続いて、A、G、次いでCを添加する。各溶液の添加の後に、表面を洗浄して、組み込まれていない痕跡量のヌクレオチドをすべて除去する。
【0031】
ステップcでは、すべての組み込みの後に、4つのヌクレオチドすべてを含有する溶液を使用して、シーケンシングすべき領域に対応する伸長したシーケンシングプライマーを、それぞれのヌクレオチド蛍光チャネルにおいて画像化する。
【0032】
ステップd)では、開裂可能なリンカー(例えば、ジスルフィドまたはアジド結合を含有するリンカー)を介してヌクレオチド塩基に結合した蛍光色素が除去され、ステップa)で再び始まるサイクルが繰り返される。
【0033】
開裂可能なリンカーを、酵素的もしくは化学的に開裂させても、または放射線によって開裂させてもよい。
【0034】
組み込みサイクル後の各ヌクレオチド上の蛍光色素の除去は、開裂可能なリンカーに依存し、以下から適切に選択され得る:
- ジスルフィドリンカーは、他のリンカーを損なわないチオールでの処理によって選択的に開裂させることができる。
【0035】
- オキシメチン-アジド(-OCH(N)-)は、ホスフィン(例えば、TCEP)で処理した場合、光開裂可能または他の酵素的に開裂可能なリンカーの存在下で選択的に開裂させることができる。
【0036】
- あるいは、TCEPを使用して、ジスルフィドおよびオキシメチンアジドリンカーの両方を開裂させることができる。
【0037】
- 開裂試薬は、チオール(例えば、ジチオトレイトール-DDT、ジメルカプト-プロパンスルホネート-DMPSなど)、ホスフィン(例えば、TCEP、THPPなど)、穏やかな還元剤(例えば、Na2S2O4)、特定の波長の光、酵素(例えば、ペプチダーゼ、デキストラナーゼ、エステラーゼ、ホスファターゼ、プロテイナーゼなど)であり得る。
【0038】
酵素的に開裂可能なリンカーは、ヒドロラーゼのような特定の酵素によって開裂可能な任意の分子であり得る。酵素分解性スペーサーPとして好適なものは、例えば、多糖類、タンパク質、ペプチド、デプシペプチド、ポリエステル、核酸、およびそれらの誘導体である。好適な多糖類は、例えば、デキストラン、プルラン、イヌリン、アミロース、セルロース、ヘミセルロース、例えばキシランもしくはグルコマンナン、ペクチン、キトサン、またはキチンであり、これらは、リンカーLの共有結合または非共有結合のための官能基を提供するように誘導体化することができ、酵素分解性リンカーとして使用されるタンパク質、ペプチド、およびデプシペプチドは、アミノ酸の側鎖官能基を介して官能化することができ、酵素分解性リンカーとして使用されるポリエステルおよびポリエステルアミドは、側鎖官能基を提供するコモノマーと合成することができるか、または後に官能化することができる。分岐ポリエステルの場合、官能化は、カルボキシルまたはヒドロキシル末端基を介したものであり得る。ポリマー鎖の重合後官能化は、例えば、不飽和結合への付加、すなわち、チオレン反応もしくはアジド-アルキン反応によるものであり得るか、またはラジカル反応による官能基の導入によるものであり得る。
【0039】
ステップb)~e)を、シーケンシングすべきDNAまたはRNA分子の少なくとも一部またはすべてのシーケンシングに必要なすべてのヌクレオチドが完成するまで繰り返すことができる。例えば、ステップb)~e)を5~1000サイクルで繰り返す。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】