(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077434
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】スリッパ
(51)【国際特許分類】
A43B 3/10 20060101AFI20230530BHJP
A43B 3/24 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A43B3/10 N
A43B3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190655
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】313000748
【氏名又は名称】道端 裕行
(72)【発明者】
【氏名】道端 裕行
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA23
4F050AA25
4F050BA26
4F050HA17
4F050HA26
4F050JA30
4F050LA09
(57)【要約】
【課題】
収納時(携帯時)に、ポケットティッシュ程度の大きさとなり、容易に持ち運び可能であるとともに、その使用時(展開時)に、使用者の踵部に床面の埃等が付き難いインナー用のスリッパを提供すること。
【解決手段】
底部1の爪先側の上方を覆うカバー部2と、底部1の踵側の後端部に配された踵起立部3とを備え、踵起立部3は、携帯用に折り畳む際に、底部1、カバー部2とともに、底部1の長手方向の中心線5を折り目として平面状に折り畳むことが出来るとともに、履物として使用するために展開した際に、底部1に対して立体的に起立して、使用者の踵部に床面の埃等が付き難くすることを可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、前記底部の爪先側の上方を覆うカバー部と、前記底部の踵側の後端部に配された踵起立部とを備え、前記踵起立部は、携帯用に折り畳む際に、前記底部、カバー部とともに、前記底部の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳むことが出来るとともに、履物として使用するために展開した際に、前記底部に対して立体的に起立してなるスリッパ。
【請求項2】
前記踵起立部は、前記底部の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳まれた状態において、前記踵側の外周部の少なくとも一部を付着して形成されてなる請求項1記載のスリッパ。
【請求項3】
前記踵起立部は、前記底部の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳まれた状態において、前記中心線の一部と前記踵側の外周部の一部を結ぶ線部を付着して形成されてなる請求項2記載のスリッパ。
【請求項4】
前記カバー部は、履物として使用するために展開した際に、前記底部に対して立体的に起立してなる請求項1~3のいずれか1項に記載のスリッパ。
【請求項5】
前記底部、カバー部及び踵起立部は、不織布や紙等の薄い材料で形成されてなる請求項1~4のいずれか1項に記載のスリッパ。
【請求項6】
前記底部、カバー部及び踵起立部は、携帯用に折り畳む際に、前記底部の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳む前に、前記底部の短手方向で、前記カバー部及び踵起立部が配されていない箇所を折り目として、前記底部の下面を重ね合わせるように折り畳み可能としてなる請求項1~5のいずれか1項に記載のスリッパ。
【請求項7】
前記底部の長手方向で、前記カバー部を配さない箇所の左右の側端部に側面起立部を備え、前記側面起立部は、携帯用に折り畳む際に、前記底部、カバー部及び踵起立部とともに、前記底部の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳むことが出来るとともに、履物として使用するために展開した際に、前記底部に対して立体的に起立してなる請求項1~6のいずれか1項に記載のスリッパ。
【請求項8】
前記側面起立部は、側面起立補足帯を備え、前記側面起立補足帯は、その横幅を、前記底部の横幅よりも長くするとともに、その側端部を前記底部の左右の側端部の下側に重ね合わせて付着して形成されてなる請求項7記載のスリッパ。
【請求項9】
前記側面起立補足帯は、その横幅を、踵側に行くほど、前記底部の横幅と比較して、より長く形成してなる請求項8記載のスリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校や病院等の室内で使用されるスリッパに関するものであり、特に、学校等で用意された備え付けスリッパの内側に挿入して使用する使い捨てのインナー用のスリッパとして、より効果を発揮するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、学校等で用意されたスリッパの内側に挿入して使用するインナー用のスリッパ(以下、「インナー」という。)としては、特許文献1(
図14(b)に代表図を示す。)に記載されるように、例えば、底部と、爪先側のカバー部(以下、「カバー部」という。)を、左右の一足分について、一体として1枚のシートで構成しつつ、左右の分を分離するための切断部分にミシン目を入れて、使用時に、切断可能とした構造を有していた。しかしながら、当該構造のインナーを、
図14(a)に示す学校等に備え付けられたスリッパ(以下、「備え付けスリッパ」という。)の内側に挿入して使用した場合、カバー部と底部を繋ぐ爪先側の先端部以外は繋がっていないため、爪先部以外の箇所では、使用者の足が、直接、備え付けスリッパのカバー部の内側に触れてしまう場合が生じ得た。
また、インナー用のスリッパの踵部は、使用者の足が備え付けスリッパの踵部に触れないように、備え付けスリッパの踵部より長めに作られる場合が多い。そのため、
図15(c)に示すように、使用中(歩行中)に、インナーの踵側の後端部が床面に触れて汚れ易い。特に、インナーは、不織布等の薄い材料を使用する場合が多いので、歩行中に、備え付けスリッパの動きに合わせて、インナーの踵側の後端部が上下にヒラヒラと揺れ易く、時に、上方に捲れ上がり、その後端部についた埃等が、使用者の足に触れて不衛生であった。
【0003】
また、特許文献2(
図16に代表図を示す。)では、カバー部を構成する左右の翼を上方で繋げて接着剤で固定する方法が示されている。しかしながら、当該従来の方式では、カバー部が略円筒状となり、その先端部が繋がっていないため、使用者の爪先部では、使用者の足が、直接、備え付けスリッパのカバー部の内側に触れてしまう場合が生じ得た。また、インナーを使用する際に、接着部の剥離紙を外して、カバー部の左右の翼を重ねて貼り合わせ、更に、インナーの踵部の接着部の剥離紙を外して、備え付けスリッパの踵部に貼り付ける作業が必要であった。なお、仮に、事前に、カバー部の左右の翼を重ねて貼り合わせておいた場合には、カバー部が略円筒状であるため、場所を取り易く、持ち運びや保管に不便であった。
【0004】
また、特許文献3(
図17に代表図を示す。)では、携帯用にコンパクトに折り畳めるスリッパが提示されている。しかしながら、当該方式では、踵部を折り曲げて挟み込むためのゴムを用いており、これを薄い不織布等で形成されるインナーに用いた場合には、当該ゴムにより薄い不織布が捩れてしまい、所定の形状を維持することが困難となり易い。また、この場合も、踵部は平面状に形成されているので、インナー用として、紙や不織布等の薄い材料を用いて形成した場合には、
図15(c)で示したように、その踵側の後端部に付いた床面の汚れが使用者の足に触れ易く、不衛生となり易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-75262号公報
【特許文献2】特開2001-61504号公報
【特許文献3】実登3011970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のインナーの課題を踏まえ、携帯用に、平面状にコンパクトに折り畳み可能としつつ、使用する際に、その踵部に付いた埃等が、使用者の足に付くのを抑制可能としたインナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のスリッパは、底部と、前記底部の爪先側の上方を覆うカバー部と、前記底部の踵側の後端部に配された踵起立部とを備え、前記踵起立部は、携帯用に折り畳む際に、前記底部、カバー部とともに、前記底部の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳むことが出来るとともに、履物として使用するために展開した際に、前記底部に対して立体的に起立してなることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、本発明のスリッパは、インナー用スリッパとして用いた場合でも、携帯する際に、平面状でコンパクトに折り畳み可能としつつ、使用する際に、使用者の足が、備え付けスリッパのカバー部および底部に、直接触れるのを抑制しつつ、その踵部に付いた埃等が使用者の足に付くのも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例のスリッパの外観を示した図
【
図2】
図2は、同スリッパの踵起立部の詳細を示した図
【
図3】
図3は、同スリッパの踵起立部の別な作り方を示した図
【
図4】
図4は、同スリッパの使用時の状態を示した図
【
図5】
図5は、同スリッパを携帯用に折り畳む様子を示した図
【
図6】
図6は、同スリッパの収納時の折り畳み方の詳細を示した図
【
図7】
図7は、同スリッパの収納時の折り畳み方の別の方法を示した図
【
図8】
図8は、同スリッパの収納時の折り畳み方の更に別の方法を示した図
【
図9】
図9は、同スリッパの別な実現方法を示した図
【
図11】
図11は、同スリッパの更に別な実現方法の詳細を示した図
【
図12】
図12は、同スリッパの側面起立部の実現方法を示した図
【
図13】
図13は、同スリッパを携帯用に折り畳む様子を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関わるスリッパは、収納時に、平面状に折り畳み可能であるとともに、使用時(展開時)に、少なくとも、その踵部が底部に対して立体的に起立してなるものである。
【実施例0011】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は、本実施例のインナー用のスリッパ(以下、「インナー」という。)の使用時の外観を示すものであり(
図1(a)は斜視図、
図1(b)は側面図、
図1(c)は、踵側から見た背面図を各々示している。)、底部1、カバー部2、及び、踵起立部3を有する。背景技術の欄でも説明したが、使用者の足が学校や病院等に備え付けられたスリッパ(以下、「備え付けスリッパ」という。)のカバー部の内側や底部に、直接触れないように、インナーの踵部の長さを、備え付けスリッパの踵部より長めに作られる場合が多い。また、備え付けスリッパには、踵部が長いものと短いものがあるので、すべての場合に対応し得るように、踵部が長いものを基準として、インナーの踵部の長さを決める場合が多い。そのため、インナーの踵部の方が、備え付けスリッパの踵部より、外側に出ている場合が多い。その結果、背景技術の欄で説明したように、インナーが薄い材料で平面的に形成された場合、使用中(歩行中)に、インナーの踵側の後端部が床面に触れて汚れ易くなり、また、歩行中の備え付けスリッパの動きに合わせて、インナーの踵側の後端部がヒラヒラと上下に揺れ動き、時に、上方に捲れ上がり、その後端部が、使用者の踵に触れる等して、不衛生となる場合があった。
しかしながら、本実施例では、収納時(携帯時)には、平面状にコンパクトに折り畳むことができるとともに、使用時には、
図1に示すように、インナーの踵部を底部1に対して立体的に起立させる箇所(踵起立部3)を設けたことで、インナーの踵部に付着した埃等の汚れが、使用者に付くのを抑制できる。
【0012】
具体的には、
図2(a)に示すように、底部1の長手方向の中心線(以下、「底部中心線」という。)5を折り目として、
図2(b)に示す矢印の向き(底部1の長手方向の左右の側端部を、上方(カバー部2が付いている側)で合わせる向き)に折り畳む。その結果、踵部周辺は、
図2(c)に示される形状となり、その角部を底部中心線5の一部5aと、踵部の円弧状の外周部(以下、「踵外周部」という。)6の一部6aを結ぶ線(以下、「踵起立形成線」という。)7で、底部中心線5を挟んだ底部1の左右の両面の内側を付着する。その結果、
図2(d)に示すように、平面状に展開した際に、左右の踵起立形成線7と、踵外周部6で囲まれる略三角状の部分が、付着されて展開されない状態となる。これは、実質的に、
図2(e)に示されるように、左右の踵起立形成線7と、踵外周部6で囲まれる当該略三角状の部分を切り抜いて、左右の踵起立形成線7を繋ぎ合わせた状態であり、その結果、
図2(f)に示すように、踵外周部6が、底部1に対して、立体的に起き上がった状態となる。
【0013】
なお、以上の説明では、底部中心線5を折り目として、底部1の長手方向の左右の側端部を上方側に折り畳み、その底部中心5側の角部で、底部1の底部中心線5を挟んで底部1の左右両側を付着する方法を示したが、当該方法に拘わらず、踵側後端部の最外周の少なくとも一部を付着することで、収納時に平面状に折り畳む事が出来るとともに、展開時(使用時)に、底部1に対して立体的に起立した踵起立部3を形成することができる。具体的には、
図3(a)に示すように、踵側後端部の最外周の一部(踵側外周付着部29)にて、底部1の左右両側を付着することで、
図3(b)の側面図に示すように、踵起立部3を設けることができる。なお、この場合は、その踵外周部6が、
図2を用いて説明した場合(踵起立形成線7で、底部1の左右両側を付着した場合)と比較して、底部1に対する踵起立部3が、より鋭角に起立し得る。即ち、踵側外周付着部29の位置を、底部中心線5側から離して、底部1の長手方向の側端部側に近づけるほど、底部1に対する踵起立部3の起立角度が、より鋭角となるので、できれば、底部1に対する踵起立部3が、床面の埃を使用者の踵に付着させない程度で、やや鈍角となるように、底部中心線5側に近づけて、踵側外周付着部29を設ける方が望ましい。
【0014】
次に、本実施例のインナーの使用方法を、
図4を用いて説明する。
図4(a)に示すように、当該インナーを履いた状態で、病院等に置かれた備え付けスリッパ8の内側に滑り込ませることで、(あるいは、備え付けスリッパ8の内側に、事前に、インナーを挿入しておき、使用者が当該状態のスリッパを履く過程でも良い。)、
図4(b)に示すように、備え付けスリッパのカバー部や底部に、使用者の足が、直接、触れるのを抑制できる。その際、前述のように、インナーの踵部は、備え付けスリッパ8の踵部より外側に長く作られる場合が多いが、本実施例では、踵起立部3を設けて、底部1の後端部が立体的に起立しているので、
図4(c)に示すように、歩行の際に、インナーの踵部が床面に接する際に、その踵側から見た背面図である
図4(d)に示すように、踵外周部6が床面と接するのではなく、その下方で、底部1が立体的に起き上がる付近(踵起立形成線7を形成する底部中心線5の一部5aの周辺)が、床面と接する場合が多くなる。また、従来の方式では、当該踵部は平面状に形成されていたため、前述のように、歩行の際に、不織布等の薄い材料で形成された踵部の後端が、上下にヒラヒラと揺れ動き易く、使用者の踵に当接し易い状態であったが、本実施例では、踵起立部3が底部1に対して立体的に形成されているので、歩行の際にも、上下の揺れを少なく抑えることができ、その点でも、使用者の踵部に、床面の埃等の汚れが付着するのを抑制可能としている。
【0015】
次に、本実施例のインナーが、携帯用に、平面状にコンパクト化される状態を、
図5を用いて説明する。本実施例のインナーは、工場等で、平面状にコンパクトに折り畳まれた後、ポケットティッシュ程度の大きさとして販売される場合がある事を想定している。その折り畳むプロセスを具体的に説明する。
図5(a)は、インナーとして、使用する際の状態を示している。この状態から、インナーの長手方向のカバー部2及び踵起立部3が無いところの短手方向折線部9を軸として、
図5(b)に示すように、底部1の踵部側と爪先側の双方の裏側(下面)を合わせるように折り畳む。この作業は、踵起立部3の形成と関係があり、インナーの使用時に、踵起立部3及びカバー部2の双方を、底部1に対して立体的に起立させつつ、その収納時には、
図5(e)で示すように、底部1、カバー部2、踵起立部3のすべてを、平面状に折り畳むために、短手方向折線部9を軸(折り目)として、底部1の踵部側と爪先側の双方の裏側を重ね合わせるように折り畳んだ上で、更に、底部中心線5を折り目として折り畳むものである。
【0016】
即ち、
図6(a)に示すように、カバー部2は、底部1に対して、底部中心線5を折り目として、
図6(b)に示すように、底部1の長手方向の左右側端部を下方に折り曲げて、底部1及びカバー部2の左右の側端部を重ね合わせる。その結果、
図6(c)に示すように、底部中心線5の下側に底部1及びカバー部2の左右の側端部を重ね合わせつつ、カバー部2は、底部中心線5の真上にある長手方向の中心線を折り目として、カバー2の内側の左右両面を重ね合わせることとなる。従って、その展開時(使用時)には、底部中心線5を折り目として折り畳まれた底部1の左右の側端部を、平面状に開く(
図6(b)の矢印と逆向きの方向に戻して、底部1を平面状とする)ことで、底部1の上方に、カバー部2が、立体的に配置されることとなる。
【0017】
これに対して、踵起立部3は、収納時には、カバー部2の場合とは逆方向に、即ち、底部1に対して、底部中心線5を折り目として、
図6(e)に示すように、底部1の左右の側端部を上方に折り曲げて、底部1及び踵起立部3の左右の側端部を重ね合わせる。その結果、
図6(f)に示すように、底部中心線5の上側に底部1及び踵起立部3の左右の側端部を重ね合わせつつ、踵起立形成線7の周辺も含めて、平面状に折り畳まれることとなる。また、その展開時(使用時)には、底部中心線5を折り目として折り畳まれた底部1の左右の側端部を開く(
図6(e)の矢印と逆向きの方向に戻して、底部1を平面状とする)ことで、底部1の上方に、踵起立部3が、立体的に形成される。従って、前述のように、
図5(b)に示すように、短手方向折線部9を折り目として、カバー部2側と踵起立部3側の双方の底部の裏側(下面)を重ね合わせるように下方に折り畳んで、
図5(c)の形状とすることが望ましい。
【0018】
なお、前述の作業を行わずに、即ち、短手方向折線部9を折り目として、カバー部2側と踵起立部3側の双方の底部1の裏側を重ね合わせるように下方に折り畳む作業を行わずに、
図7(b)に示すように、底部中心線5を折り目として、底部1の左右の側端部を上方に折り曲げて、
図7(c)に示すように、底部1、カバー部2及び踵起立部3の全てを平面状に重ね合わせる事も可能である。但し、この場合は、
図7(a)に示すように、事前にカバー部2を平面状としておく必要があり、カバー部2の長手方向の中央部を折り目にして、三角状の折り畳み部(仮三角状折部28)を作っておく必要がある。この状態で、
図7(b)の矢印に示す方向に折り畳むことにより、
図7(c)に示すように、平面状に折り畳むことが可能である。しかしながら、この場合、展開時(使用時)に、底部1の底部中心線5を軸として底部1が平面状になるように、左右の側端部を開いて展開した際に、
図7(d)(爪先側から見た正面図)に示すように、仮三角状折部28が、折り畳まれた状態のままである。(なお、この場合でも、踵起立部3は、底部1の左右の側端部を開いて展開した際に、底部1に対して、立体的に形成される。)。一方、
図5(b)に示すように、短手方向折線部9を折り目として、カバー部2側と踵起立部3側の双方の底部1の裏側を重ね合わせるように下方に折り畳んでおいた場合には、その展開時に、底部中心線5を軸として底部1が平面状になるように、底部1の左右の側端部を開いて展開した際に、
図7(e)に示すように、底部1の上方にカバー部2が立体的に形成される状態となる。その為、できれば、
図5(b)に示すように、短手方向折線部9を折り目として、カバー部2側と踵起立部3側の双方の底部1の裏側(下面)を重ね合わせるように下方に折り畳む作業を事前に加えておく方が望ましい。
【0019】
次に、
図5(d)に示すように、底部中心線5を折り目として、底部1の長手方向の左右側端部を合わせるように、下方に折り畳むことで、
図5(e)の状態となる。即ち、前述した
図6(f)で示した底部1の踵側の折り畳まれた形状が、
図5(e)に示すように、短手方向折線部9を軸として、180度、反対方向に向いた状態で、底部1のカバー部2側の底部1の下側に挟まれつつ、全体として、平面状に折り畳まれた状態となる。その後、ポケットティッシュ程度の大きさとするには、更にコンパクトに折り畳む必要があるが、望ましくは、
図5(f)に示すように、カバー部2に対して、底部1の短手方向に折り目が入るように、(言い換えれば、底部2の長手方向には、折り目が入らないように)、カバー折線部10を折り目として、折り畳むことが望ましい。
【0020】
その理由を、
図8を用いて説明する。
図8(a)は、
図5(e)の状態を示しており、この状態から、仮に、
図8(b)に示すように、カバー2を底部1の長手方向に沿って、仮第二カバー折線部11を折り目として折り畳んだ場合、
図8(c)に示すように、仮三角状折返部12が形成されることになる。この場合、展開時(使用時)に、底部1が平面状になるように、底部1の底部中心線5を軸として、左右の側端部を開いて展開した際に、
図8(d)に示すように、仮三角状折返部12が、折り畳まれた状態のままとなる(
図8(e)は、その状態を、爪先側から見た正面図で示したものであり、仮三角状折返部12が、折り畳まれた状態のまま、底部1の上側に存在する。)。そのため、その展開時(使用時)に、底部中心線5を折り目として、折り畳まれた底部1の左右の側端部を平面状に開く(
図6(b)の矢印と逆向きの方向に戻して、底部1を平面状とする)だけでは、底部1の上方に、カバー部2が、立体的に配置され難く、使用者が、仮三角状折返部12の重なった部分を開く作業が追加的に必要となり得る。
【0021】
一方、
図5(f)に示すように、カバー折線部10を折り目として、折り畳んだ場合は、展開時(使用時)に、底部1の底部中心線5の左右両側を開いた際に、
図8(f)に示すように、カバー部2が、底部1に対して立体的に形成されるので、使用者は、
図8(e)の状態時に発生する面倒な作業を強いられることない。そのため、前述のように、カバー部2に対して、底部1の短手方向に折り目が入るように、(言い換えれば、底部2の長手方向には、折り目が入らないように)、折り畳むことが望ましい。
図5(g)は、カバー折線部10を折り目として、折り畳んだ結果を示したものであり、この後、更に、カバー部2に対して、底部1の短手方向に折り目が入るように、折り進める事で、
図5(i)に示すように、平面状に、且つ、ポケットティッシュ程度の大きさに折り畳む事ができる。なお、使用時(展開時)には、その逆方向(
図5(i) →
図5(a)に戻る順番)に展開することで、カバー部2及び踵起立部3が、底部1に対して立体的に形成されることとなる。
【0022】
図9は、踵起立部3の別の作り方を示すものである。
図2に示した方法では、底部1を、底部中心線5を折り目として、底部1の左右側端部を重ねるように折り畳み、その角部にある踵起立形成線7のところで、底部1の左右面を付着して踵起立部3を形成したが、当該方法や
図3で示した方法に限らず、底部1の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳んだ状態において、実質的に、底部1の踵側の外周の少なくとも一部を付着することで、踵起立部3が形成し得る。具体的には、
図9(a)に示すように、底部1の踵側を平面状にした状態で、その外周端の一部を、その頂点を底部中心線5上に配置しつつ、扇の左右の親骨に相応する第二踵起立形成線13にて、扇状に切り抜き、その後、左右の第二踵起立形成線13を引き合わせて付着することで、
図9(b)に示すように、踵起立部3が形成される。
この場合、底部中心線5を折り目として底部1の左右側端部を重ねて折り畳む際に、第二踵起立形成線13の底部中心線5側の端部を中心として、踵外周部6を、
図9(a)の部分詳細図に示した矢印の方向に移動しつつ折り畳む事により、
図9(c)に示すように、角部が斜めに欠けた状態(
図2(b)では、その角部が踵起立形成線7の箇所で付着されつつ、その下の角部の三角状の箇所自体は存在していたが、この場合は、当該三角状の箇所が欠けた状態)となるが、底部中心線5を挟んで左右対称となるので、底部中心線5を折り目として平面状に折り畳むことが可能となる。この場合は、
図9(c)の部分詳細図に示すように、第二踵起立形成線13は、底部中心線5に、その一端を置きつつ、底部1の底部中心線5を挟んだ左右いずれかの一面に、左右の第二踵起立形成線13を付着した状態で見る事ができる。
【0023】
図10は、踵起立部3の更に別の作り方を示すものである。底部1の踵側の後端に、付帯部折返線15を挟んで、底部1の踵部側の後端部と、付帯部折返線15を対称軸として線対称である踵付帯部14を設ける。この踵付帯部14は、踵外周部6と踵付帯外周部16を重ね合わせるように、付帯部折線部15を折り目として、底部1の爪先側に折り畳まれる。その際、踵付帯斜線部17を、爪先側から見て凸状の折り目としつつ、踵付帯中心線18を凹状の折り目として折り曲げることで、
図10(b)に示すように、踵付帯後端部19を最上端部としつつ、踵付帯部14が、底部1に対して立体的に配置されることとなる。
図10(c)は、同状態を、踵側から見た背面図であり、踵付帯後端部19を最上端部(最上端の辺)としつつ、踵付帯部14が、底部1に対して立体的に配置されている。この際、踵付帯斜線部17は、その付帯部折線部15側の端部を最下点としつつ、その反対側の端部は、底部1に当接せずに、底部1より上方に浮いた状態に位置している。また、この踵付帯部14は、収納時に折り畳まれる際、
図10(d)(e)に示すように、
図9(c)に示した場合と同様に、底部1の踵側の角部が三角状に欠けた状態となる。
【0024】
なお、踵付帯部14は、仮に、踵付帯斜線部17及び踵付帯中心線18に折り目を付けずに、その踵付帯外周部16を踵外周部6に重ね合わせて、底部1側に折り畳んだと仮定した場合、
図11(a)に示すように、踵付帯部14は、踵付帯後端部19も含めて、平面状に底部1に重ね合わされ、当接する。そのため、この状態では、踵付帯部14が、底部1に対して立体的に形成されることはない。しかしながら、
図10(d)(e)で示すように、収納時に、踵付帯斜線部17を、爪先側から見て凸状の折り目としつつ、踵付帯中心線18を凹状の折り目として折り曲げた状態で折り畳む事により、その展開時(使用時)に、踵付帯斜線部17及び踵付帯中心線18の折り目が作用して、
図10(c)の踵側から見た背面図に示されるように、踵付帯中心線18の踵付帯後端部19側の端部が、踵付帯斜線部17の踵付帯後端部19側の端部を後上方に引っ張り、当該端部が底部1から浮き上がった状態となる。その結果、底部1に対して、踵付帯部14が立体的に配置されることとなる。
【0025】
図10の状態を、別の方法で説明する。
図11(a)に示すように、踵付帯部14を、付帯部折返線15を折り目として、底部1側に折り畳んで、その全面を底部1に当接させた状態において、仮に、踵付帯中心線18で、踵付帯部14を分割できた場合、
図11(b)に示すように、踵付帯斜線部17を折り目として、踵付帯後端部19を踵外周部6の外側に向けて折り畳むことが可能となる。この状態で、左右の踵付帯後端部19の間に、
図11(b)に示す扇状繋ぎ部20があると仮定すれば、底部中心線5を折り目として、底部1の左右側端部を重ね合わせるように折り畳み、その踵側の角部を踵付帯中心線18のところで付着した状態と考え得る。従って、
図2、
図3または
図9で示した場合と同様に、実質的に、底部1の長手方向の中心線を折り目として平面状に折り畳まれた状態において、底部1の踵側の外周の少なくとも一部を付着することで、底部1の後端部を、底部1に対して立体的に形成することができる。
【0026】
次に、
図12は、側面起立部21を設けた状態を示すものである。足の踵より前方側(爪先側)に汚れが付く可能性は、
図4(c)の状態等に鑑み、踵部に比べて低いと考えられるものの、
図12(a)に示すように、側面起立部21を設ける事で、その可能性を更に低く抑制し得る。
図12(b)は、側面起立部21を形成する上で必要な側面起立補足帯22を、仮に、底部1に付着させず、平面形状にまま、底部1に重ねて置いた時の状態を示している。実際には、この側面起立補足帯22の左右の側端部23を、
図12(c)に示すように、底部1の踵側の側端部24に重ね合わせて付着する。その際、側面起立補足帯22の横幅の方が、側面起立補足帯22を重ね合わせて付着した箇所の底部1の横幅よりも広いので、
図12(c)のAA断面である
図12(e)に示すように、側面起立補足帯22の側端部23が、底部1の側端部24を上方に押し上げることとなり、底部1の側面に、底部1に対して、立体的に起立した箇所(側面起立部21)が形成される。また、側面起立補足帯22の踵側後端部27を、踵外周部6に隣接させる事で、踵起立部3と連ねて、側面起立部21が配されることとなり、底部1の踵側の周囲を、底部1に対して連続的に立体的に起立させることが可能となり得る。
【0027】
また、側面起立補足帯22の形状として、
図12(b)に示すように、爪先側先端部25の横幅の長さを、底部1の重ね合わせる箇所の横幅と同じ長さとしつつ、踵側に行くほど、その横幅の長さを底部1の横幅と比べて、より長くなることで、踵側に行くほど、側面起立部21の底部1に対する立体的な位置を高くすることができる。また、当該形状の側面起立補足帯22の爪先側先端部25と底部1とを付着させる事で、
図12(e)に示すように、底部1に対して、側面起立補足帯22の左右両側で、均等に底部1を上方に押し上げる事が可能となる。なお、仮に、爪先側先端部25と底部1を付着させない場合には、
図12(f)に示すように、側面起立補足帯22が、底部1の左右のどちらかの側端部側に偏ってしまう可能性があり、この場合は、底部1の踵側の側端部24を左右両側で均等に立体的に起立させることが困難となり得る。なお、本実施例では、爪先側先端部25を、底部2に付着させることで、底部1の左右の踵側の側端部24の起立状態を均等としたが、当該方法に限定されるものではなく、側面起立補足帯22の左右の側端部23を、底部1の踵側の側端部24に重ね合わせて付着しつつ、底部中心線5に側面起立補足帯中心線26を重ね合わせて、側面起立補足帯中心線26上の少なくとも一部を底部1に付着することで、底部1の踵側の側端部24の起立状態を左右で均等とする事が可能となり得る。
【0028】
なお、底部1と側面起立補足帯22を、爪先側先端部25及び左右の側端部23の3方向で付着しつつ、踵側後端部27では付着しないことで、3方向を閉じた袋状とすることができる。ここで、この袋状の中に、ティッシュペーパー等を折り畳んで挿入する事により、踵部にクッション性を与えることが可能となる。本実施例のスリッパ(インナー)は、備え付けスリッパ8のカバー部に挿入して使用することを、主な使用状態と想定しているが、病院等に備え付けスリッパ8が用意されていない場合には、前述のように、踵部にクッション性を持たせることで、備え付けスリッパ8のカバー部に挿入することなく、単独で使用することも可能となり得る。
【0029】
図13は、側面起立部21を備えた状態で、収納時に平面状に折り畳む状態を示すものである。基本的には、
図5で示した方法と同様であるが、側面起立補足帯22も含めて、平面状に折り畳む必要があるので、底部1の踵側を側面起立補足帯22とともに、短手方向折線部9を折り目として折り曲げる際に、
図13(e)で示すように、底部1の底部中心線5に対して、側面起立補足帯22の側面起立補足帯中心線26の位置を重ね合わせつつ、上から押し下げることで、
図13(f)に示すように平面状となり、最終的に、
図13(d)に示すように、底部1、カバー部2及び踵起立部3も含めて、全体を平面状に折り畳む事が可能となる。
なお、この方法(
図13に示す方法)で、側面起立部21を折り畳んだ場合、展開時に、底部中心線5を軸として底部1が平面状になるように、底部1の左右の側端部を開いて展開した際に、側面起立補足帯22が折り畳まれた状態のまま(
図13(f)に示す状態)となり、側面起立補足帯の側端部23が、底部1の踵側の側端部24を、底部1に対して立体的に上方に押し上げることが困難となり得る。しかしながら、側面起立補足帯22の踵側後端部27を、踵外周部6に隣接させているため、底部1の左右の側端部を開いて展開した際に、踵起立部3の一部である踵外周部6が底部1に対して上方に持ち上げられ、併せて、この踵外周部6に連なる底部1の踵側の側端部24の踵外周部6側が、底部1に対して上方に引き上げられるため、ここに、側面起立補足帯22自体が有する折り目を鈍化する(平面状に戻そうとする)弾性力(インナーは、不織布等の薄い材料で作られるため、折り目の角度を鈍化する程度の力である。)も、多少加わり、底部1の踵側の側端部24が、底部1に対して上方に持ち上げられる。ここで、側面起立補足帯の側端部23の底部踵側の側端部24より外側にある部分を、
図13(f)に示す方法(折り目が1つ)ではなく、蛇腹状に折り畳む事により、側面起立補足帯22自体の弾性力を強めて、底部踵側の側端部24を上方に押し上げる力を強くすることも有効である。
本発明のスリッパは、病院等に備え付けられたスリッパの内側に挿入して用いることを主要な用途としつつ、病院等に備え付けスリッパが無い場合には、単体でも、主として内履き用のスリッパとして使用し得るものである。