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  • 特開-道路用標示体の設置構造 図1
  • 特開-道路用標示体の設置構造 図2
  • 特開-道路用標示体の設置構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077449
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】道路用標示体の設置構造
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/608 20160101AFI20230530BHJP
   E01F 9/615 20160101ALI20230530BHJP
【FI】
E01F9/608
E01F9/615
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190694
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高室 和俊
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA22
2D064BA09
2D064CA01
2D064DA05
2D064DA09
2D064EA03
2D064EB22
2D064HA13
2D064JA02
(57)【要約】
【課題】設置面からの脱離を効果的に抑制できる道路用標示体の設置構造を提供する。
【解決手段】設置面と道路用標示体のベース部との間に、このベース部と別体に形成した弾性材料からなる緩和シートを配置し、前記緩和シートの下面と前記設置面とを接着剤からなる第一接着層で接着固定し、前記緩和シートの上面と前記ベース部の下面とを接着剤からなる第二接着層で固定する。季節や昼夜による温度変化によって生じる前記ベース部の熱膨張収縮の大きさと、設置面の熱膨張収縮の大きさとの差が、前記緩和シートの弾性変形によって吸収されて、前記道路用標示体の設置面からの脱離が抑制される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部を備える道路用標示体の設置構造であって、前記設置面とベース部との間に、該ベース部と別体に形成された弾性材料からなる緩和シートが配置され、前記緩和シートの下面と前記設置面とが接着剤からなる第一接着層によって接着固定されると共に、前記緩和シートの上面と前記ベース部の下面とが接着剤からなる第二接着層によって固定されていることを特徴とする道路用標示体の設置構造。
【請求項2】
前記緩和シートがポリウレタン樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の道路用標示体の設置構造。
【請求項3】
前記緩和シートが前記ベース部の下面よりも大きな形状に形成されており、該ベース部の端部より外側へ突出する突出部が前記ベース部の下面の略全周に亘って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の道路用標示体の設置構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置面へ接着剤により接着固定する道路用標示体の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センターライン等に設置される車線分離標や、交通規制誘導標示などを目的として道路等に設置する標識柱、等の道路用標示体は従来から利用されている。道路用標示体の設置面への設置方法としては、埋設固定したアンカーナットなどの雌ねじ部へ道路用標示体の下面に形成した雄ねじ部を螺結して固定する方法や、道路用標示体の下面へ塗布した接着剤により設置面へ接着固定する方法などがあり、状況に応じて適切な設置方法が用いられている。
【0003】
設置面へ接着剤によって固定する道路標示体については、ベース部と、前記ベース部から上方に突設された本体部とを備えた道路用標示体であって、前記ベース部の底面には、下方に開口する複数個のくぼみ部と、隣り合うくぼみ部を連通させる周向連結溝部とが、前記底面の側縁に沿う列状に連設されて環状の収容部が構成されていることを特徴とする道路用標示体の構成が本出願人によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-185170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の道路用標示体は、くぼみ部と周向連結溝部を有する環状の収容部をベースの底面に形成することで、固定用の接着剤をベースの底面に均一に付着させるよう設けている。
本発明は、これとは異なる構成によって、接着固定した道路用標示体が設置面から脱離しにくい設置構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路用標示体の設置構造は、ベース部を備える道路用標示体の設置構造であって、前記設置面とベース部との間に、該ベース部と別体に形成された弾性材料からなる緩和シートが配置され、前記緩和シートの下面と前記設置面とが接着剤からなる第一接着層によって接着固定されると共に、前記緩和シートの上面と前記ベース部の下面とが接着剤からなる第二接着層によって固定されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る道路用標示体の設置構造によれば、道路用標示体のベース部と設置面と間に、ベース部と別体に形成した緩和シートを配置し、前記緩和シートの下面と前記設置面とを接着剤からなる第一接着層によって接着固定するので、緩和シートが設置面へ設置される。また、前記緩和シートの上面と前記ベース部の下面とを接着剤からなる第二接着層によって固定するので、道路用標示体が前記緩和シートを介して設置面へ設置される。また、前記緩和シートを弾性材料で形成するので、季節や昼夜による温度変化によって生じる前記ベース部の熱膨張収縮の大きさと、設置面の熱膨張収縮の大きさとの差が、前記緩和シートの弾性変形によって吸収されて、前記道路用標示体の設置面からの脱離が抑制される。
【0008】
また、前記緩和シートをエーテル系ポリウレタン樹脂で形成すれば、低温の状況でも弾性が維持されるので、前記道路用標示体の設置面からの脱離を抑制でき、好ましい。
【0009】
前記緩和シートを前記ベース部の下面よりも大きな形状に形成し、このベース部の端より外側へ突出する突出部を前記ベース部の下面の略全周に亘って形成すれば、熱膨張収縮によるベース部の変形が最も大きくなるベース部の端が緩和シートの端よりも内側に配置されるので、緩和シートの端の設置面からの剥離を効果的に抑制でき、好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る道路用標示体の設置構造によれば、ベース部と設置面との熱膨張収縮の差を緩和シートで吸収して、道路用標示体の設置面からの脱離を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る道路用標示体の設置構造の実施の一形態を示す正面図である。
図2図1のベース部付近を拡大して示す図である。
図3図2のベース部の図中左側の端付近を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は道路用標示体である。
図1に示す道路用標示体1は、柱部11と、キャップ部12と、ベース部13とを含んだ構成であり、具体的には、略円錐台形状に形成させたベース部13の上に、円筒形状に形成させた柱部11を上方へ突設させている。キャップ部12は柱部11の上端に取り付けて、円筒形状の柱部11の開口を閉塞させている。
柱部11は、車両が接触するなどして力が加えられたときに弾性的に曲がり、その後もとの状態に戻る可撓性を備えている。
また、柱体11には、照射された光を照射方向へ反射させる光の再帰反射性を有する反射シートLをその外周面に貼り付けており、道路用標示体1の視認性を向上させている。
【0013】
図1に示す道路用標示体1は、コンクリートからなる設置面Gの上面に設置した緩和シート2の上面に設置している。具体的には、前記緩和シート2を設置面Gへ接着剤によって接着固定し、この緩和シート2の上面へ前記ベース13の下面を接着剤によって接着固定している。
【0014】
図2図1のベース部13付近を拡大して示す図であり、図3図2のベース部の図中左側の端付近を拡大して示す図である。
図1~3に示す緩和シート2は円形に形成したシートであり、平面視の形状を略円錐台形状の前記ベース部13の下面よりも大きな円形に形成し、厚み方向の大きさを約3mmに形成している。
前記道路用標示体1は緩和シート2の略中央に配置して設置しており、緩和シート2は前記ベース部13の端から外側へはみ出るように突出する突出部21を有している。換言すると、前記緩和シート2は、道路用標示体1を上面に設置させた状態において、前記突出部21が端部の全周に亘って設けられるように形成している。
【0015】
前記緩和シート2は弾性材料で形成しており、具体的には、エーテル系ポリウレタン樹脂で形成している。
また、緩和シート2は設置面Gへ接着剤によって固定しており、具体的には、2液硬化型エポキシ樹脂系接着剤を利用して接着固定している。緩和シート2と設置面Gとの間には、前記接着剤で構成する第一接着層3を形成している。
緩和シート2の固定においては、固定前にコンクリートからなる設置面Gの上面をワイヤブラシなどで研磨し表面のレイタンス層を除去している。次に、レイタンス層を除去した設置面Gの上に前記接着剤を塗布し、その上に緩和シート2を載置して、緩和シート2の上面を樹脂ハンマなどで叩くことで緩和シート2と設置面Gとの間の空気を除去した後、前記接着剤を硬化させて前記緩和シート2を接着固定している。前記緩和シート2と設置面Gとの間には、硬化した前記接着剤で構成される前記第一接着層3を形成している。
【0016】
前記道路用標示体1は、緩和シート2の上面へ接着剤によって固定している。具体的には、2液硬化型エポキシ樹脂系接着剤を利用して接着固定しており、ベース部13の下面と緩和シート2との間に前記接着剤で構成する第二接着層4を形成している。
第二接着層4を構成する接着剤は、前記第一接着層3を構成する接着剤と同じ2液硬化型エポキシ樹脂系接着剤であり、この接着剤を下面全体に塗布した前記ベース部13を緩和シート2の中央に載置し、前記接着剤を硬化させて前記道路用標示体1を接着固定している。前記ベース部13の下面と緩和シート2との間には、硬化した硬化した前記接着剤で構成される前記第二接着層4を形成している。
尚、前記第一接着層3は、その厚みの大きさを前記第二接着層4よりも小さく形成している。第一接着層3の厚みを小さく設けることで、第一接着層3を形成する接着剤の熱膨張収縮による影響が小さくなるので、第一接着層3の界面における剥離が生じにくくなされ、設置面Gから緩和シート2が脱離しにくくなされる。
【0017】
設置面Gを構成する部材と、道路用標示体1のベース部13を構成する部材は、それぞれ熱膨張係数が異なるため、季節や昼夜の移り変わり等による周囲の温度の変化によって熱膨張・収縮による変形の大きさに差が生じる。
緩和シート2を配置せずに設置面Gへベース部13を接着剤によって直接固定した場合、両部材の変形の大きさの差によって硬化した接着剤の界面が剥離し、ベース部13が接着面Gから脱離する可能性がある。
図1~3に示す道路用標示体1の設置構造においては、配置した緩和シート2が弾性変形することで、設置面Gとベース部13との間の熱膨張収縮による変形の大きさの差が前記緩和シート2で吸収されるので、前記第一接着剤層3や第二接着剤4に生じる破損が低減し、設置したベース部13の脱離を抑制できる。
特に、設置面Gをコンクリートで形成する構成において、設置面Gへベース部13を接着剤によって直接固定した場合に上記接着剤の界面における剥離が生じやすいが、前記緩和シート2を配置することで上記接着剤界面の剥離を低減し、設置したベース部13の脱離を効果的に抑制できる。
【0018】
前記緩和シート2はエーテル系ポリウレタン樹脂で形成しているが、緩和シート2の材料はこれに限るものではない。エーテル系以外のポリウレタン樹脂で形成してもよく、塩化ビニル樹脂などポリウレタン樹脂以外の合成樹脂エラストマーで形成してもよく、合成ゴムなどで形成してもよく、他の弾性材料で形成してもよい。
しかしながら、ポリウレタン樹脂は経年によるブルームやブリードのおそれが小さいため、緩和シート2をポリウレタン樹脂で形成することで、前記第一接着層3や第二接着層4による接着が安定するので、好ましい。
また、エーテル系ポリウレタン樹脂はガラス転移点が低いので、緩和シート2をエーテル系ポリウレタン樹脂で形成することで、低温の環境下でも緩和シート2による設置面Gとベース部13との前記変形の差を吸収する効果を大いに得ることができ、好ましい。
【0019】
また、前記緩和シート2を構成する樹脂は、そのショア硬度(A)を80以上、95以下とするのが好ましい。緩和シート2を構成する樹脂のショア硬度(A)が80未満の場合、特に夏場などの周囲の温度が高い状態において道路用標示体1へ車両等が接触したときに、ベース部13が設置場所から移動してしまう可能性がある。また、緩和シート2を構成する樹脂のショア硬度(A)が95を超える場合、緩和シート2による設置面Gとベース部13との間に生じる熱膨張収縮の差を吸収する効果を十分に得られない可能性がある。
尚、上記のショア硬度(A)は、JIS K6253-3にて測定される。
また、前記緩和シート2は、伸び(JIS K7311)が400%以上の樹脂を利用している。
【0020】
また、前記緩和シート2は、その厚みの大きさを2mm以上、4mm以下とするのが好ましい。緩和シート2の厚みが2mm未満の場合、緩和シート2による設置面Gとベース部13との間に生じる熱膨張収縮の差を吸収する効果を十分に得られない可能性がある。また、緩和シート2の厚みが4mmを超える場合、道路用標示体1へ車両などが接触したときに、その衝撃などによって緩和シート2の内部で破損などが生じる可能性がある。
【0021】
前記第一接着層3や第二接着層4は、2液硬化型エポキシ樹脂系接着剤を利用して形成しているが、これに限るものではなく、ブタジエン系ゴム製接着剤など他の材質の接着剤を利用しても良い。
しかしながら、2液硬化型エポキシ樹脂系接着剤は、接着力が高い、高温時や低温時における接着強度が安定している、等の長所があるため、前記第一接着層3や第二接着層4は2液硬化型エポキシ樹脂系接着剤を利用して形成するのが好ましい。
【0022】
尚、本発明に係る道路用標示体1の設置構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、図1~3に示す前記道路用標示体1の設置構造は、ベース部13の端から外側へはみ出るように突出する突出部21を緩和シート2の端部の全周に亘って形成しているが、これに限るものではなく、突出部21を緩和シート2の端部の一部のみに形成してもよく、突出部21を形成しなくてもよい。しかしながら、突出部21を緩和シート2の端部の略全周に亘って形成すれば、熱膨張収縮によるベース部13の変形によって最も大きく移動することになるベース部13の端が緩和シート3の端よりも内側に配置されるので、ベース部13の変形が緩和シート2によって効果的に吸収される。また、ベース部13の端と緩和シート2の端とが離間するので、ベース部13の上記変形によって緩和シート2の端が設置面Gから剥離するような問題を抑制できる。
【0023】
また、前記緩和シート2は、その上面と下面とが平滑な均一な厚みを有する円形のシート状に形成しているが、これに限るものではない。例えば、ベース部13の端から外側へ突出する前記突出部21において、外側の端へ至るほど厚みが小さくなるように形成してもよい。また、緩和シート2の表面にシボやリブなどの凸凹を形成してもよく、その一部にスリットや孔などの厚み方向へ貫通する部位を形成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 道路用標示体
11 柱部
12 キャップ部
13 ベース部
2 緩和シート
21 突出部
3 第一接着層
4 第二接着層

図1
図2
図3