(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077458
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】バッテリー収納装置及びバッテリー収納装置の製造方法とこのバッテリー収納装置を備える電動移動体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20230530BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230530BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230530BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20230530BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20230530BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20230530BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230530BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230530BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230530BHJP
H01M 50/231 20210101ALI20230530BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/6568
H01M10/653
H01M50/249
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190710
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】391006083
【氏名又は名称】三光合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(74)【代理人】
【識別番号】100225141
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 安司
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】甲野 晋
(72)【発明者】
【氏名】杉森 達也
(72)【発明者】
【氏名】薮 英聰
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 惇史
(72)【発明者】
【氏名】松本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】沖津 雅憲
(72)【発明者】
【氏名】横内 寛
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE04
5H031HH08
5H031KK08
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040CC33
5H040JJ03
5H040JJ05
5H040LL01
5H040LL06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】収納スペース効率、冷却効率が良く、部品コストの点からも有利なバッテリー収納装置及びバッテリー収納装置の製造方法とこのバッテリー収納装置を備える電動移動体を提供する。
【解決手段】バッテリー収納装置1は、アルミ製のバッテリーケース2と、そのバッテリーケース2に収納されてリチウムイオンバッテリー3を収納可能にされた樹脂製モジュールケース4とを備える。バッテリーケース2の内側面に樹脂製モジュールケース4の外側面が嵌合する態様で、バッテリーケース2の内側に樹脂製モジュールケース4が収納され、樹脂製モジュールケース4自体に冷却水経路5が形成されて、バッテリー収納装置1の高さを低減することができる。すなわちスペース効率の向上を図ることができる。しかも樹脂製モジュールケース4自体に冷却水経路5が形成されて、樹脂製モジュールケース4が一体な冷却水経路5を有する結果冷却効率も向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーケースと、そのバッテリーケースに収納されてバッテリーを収納可能にされたモジュールケースとを備えるバッテリー収納装置において、前記モジュールケースに温度調整液体経路が形成されてなることを特徴とするバッテリー収納装置。
【請求項2】
バッテリーケースと、そのバッテリーケースに収納されてバッテリーを収納可能にされたモジュールケースとを備えるバッテリー収納装置において、前記モジュールケースと一体な温度調整液体経路を有することを特徴とするバッテリー収納装置。
【請求項3】
バッテリーケースと、そのバッテリーケースに収納されてバッテリーを収納可能にされたモジュールケースとを備えるバッテリー収納装置において、前記モジュールケース自体が温度調整液体経路を有することを特徴とするバッテリー収納装置。
【請求項4】
前記モジュールケースに一体なセパレータを備え、前記セパレータを介在させて前記バッテリーを複数収納可能にされた請求項1~請求項3いずれか一に記載のバッテリー収納装置。
【請求項5】
前記モジュールケースが底部と側部とを一体に形成してなり、前記底部に前記温度調整液体経路が形成された請求項1~請求項4いずれか一に記載のバッテリー収納装置。
【請求項6】
前記モジュールケースが底部と側部とを一体に形成してなり、前記側部に前記温度調整液体経路が形成された請求項1~請求項4いずれか一に記載のバッテリー収納装置。
【請求項7】
前記底部及び/又は側部には前記温度調整液体経路に接続するインレット接続口及びアウトレット接続口がモジュールケースと一体に形成された請求項5又は請求項6記載のバッテリー収納装置。
【請求項8】
前記モジュールケースが樹脂からなる請求項1~請求項8いずれか一に記載のバッテリー収納装置。
【請求項9】
前記モジュールケースが熱伝導率を向上する素材を分散した複合材からなる請求項1~請求項8いずれか一に記載のバッテリー収納装置。
【請求項10】
前記モジュールケースはCNF(セルロースナノファイバー)との複合樹脂からなる請求項1~請求項9いずれか一に記載のバッテリー収納装置。
【請求項11】
前記バッテリーケースは炭素繊維複合樹脂からなる請求項1~請求項10のいずれか一記載のバッテリー収納装置。
【請求項12】
前記温度調整液体経路が複数に分岐されて、少なくとも一対の分岐路内の温度調整液体の流れ方向が同一方向にされる請求項1~請求項11のいずれか一記載のバッテリー収納装置。
【請求項13】
前記温度調整液体経路が複数に分岐されて、少なくとも一対の分岐路内の温度調整液体の流れ方向が逆方向にされる請求項1~請求項12のいずれか一記載のバッテリー収納装置。
【請求項14】
前記モジュールケース外周にさらに冷却配管を設けてなる請求項1~請求項13のいずれか一記載のバッテリー収納装置。
【請求項15】
前記モジュールケースがスライド金型を用いて成形されて、前記スライド金型によって形成された開口部分にボトムパネルを溶着してなる請求項1~請求項14のいずれか一記載のバッテリー収納装置。
【請求項16】
前記モジュールケースの対向する2側面にボトムパネルを溶着してなる請求項1~請求項15のいずれか一記載のバッテリー収納装置。
【請求項17】
前記モジュールケースに金属部品がインサート成形されてなる請求項1~請求項16のいずれか一記載のバッテリー収納装置。
【請求項18】
前記モジュールケース本体部には板状の前記金属部品が備える係止部を係止させる係止孔部が形成され前記金属部品を前記モジュールケース本体部に形成された係止孔部に係合させて金属部品がインサート成形されてなる請求項17に記載のバッテリー収納装置。
【請求項19】
前記モジュールケースの係止孔部の開口面積は前記金属部品の係止部の断面積よりも大にされる請求項18に記載のバッテリー収納装置。
【請求項20】
前記金属部品の端部を前記温度調整液体経路に当接させ、かつ前記係止部端部はモジュールケースの外側に突出させた請求項18又は請求項19に記載のバッテリー収納装置。
【請求項21】
請求項1~請求項20のいずれか一記載のバッテリー収納装置の製造方法であって、 樹脂射出成形によってモジュールケースの底部と側部とを一体に形成し、温度調整液体経路が形成された本体部を得る工程と、前記温度調整液体経路の開口部分にボトムパネルを溶着して前記モジュールケースを得る工程とよりなることを特徴とするバッテリー収納装置の製造方法。
【請求項22】
複数の前記開口部分に単一のボトムパネルを溶着する請求項21記載のバッテリー収納装置の製造方法。
【請求項23】
請求項1~請求項19のいずれか一記載のバッテリー収納装置の製造方法であって、予めモジュールケース本体部とモジュールケース配管カットモデルとを射出成型する工程と、前記モジュールケース配管カットモデルを前記モジュールケース本体部に振動溶着する工程とよりなることを特徴とするバッテリー収納装置の製造方法。
【請求項24】
同一の前記モジュールケース本体部に対し、前記モジュールケース配管カットモデルに2種類以上の冷却媒体の流路を形成できるようにした請求項23記載のバッテリー収納装置の製造方法。
【請求項25】
請求項1~請求項19のいずれか一記載のバッテリー収納装置を備える電動移動体であって、前記バッテリー収納装置が移動体の駆動力を生じるモータに電力を供給するようにしてなる電動移動体。
【請求項26】
請求項25に記載される電動移動体であって、前記バッテリー収納装置が移動体本体の全高の半分の高さより下方に配置される電動移動体。
【請求項27】
前記電動移動体が地上を走行する電気自動車又はハイブリッド車又はPHEV又はFHEVである請求項25又は請求項26記載の電動移動体。
【請求項28】
前記電動移動体が空中飛翔体である請求項25又は請求項26記載の電動移動体。
【請求項29】
前記電動移動体が水上又は水中を移動する船体である請求項25又は請求項26記載の電動移動体。
【請求項30】
前記電動移動体が軌道上を移動する電車である請求項25又は請求項26記載の電動移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動移動体に使用されるバッテリー収納装置及びバッテリー収納装置の製造方法とこのバッテリー収納装置を備える電動移動体に関し、とくに、全体の高さを低くして、狭いスペースに収納可能なバッテリー収納装置及びバッテリー収納装置の製造方法とこのバッテリー収納装置を備える電動移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に冷却方式は空冷又は水冷又は冷媒による冷却方式に分類される。このうち自然空冷は構造簡単であるもののバッテリ性能に限界があり、またバッテリの寿命が比較的短期であるという欠点がある。また開放型強制空冷は構造簡単であるものの温度制御できないという問題がある。さらに密閉型強制空冷では水冷の場合のような水漏れの問題がない反面、水冷よりも冷却が困難でありまたファン/ダクトスペースが必要となるという問題がある。
【0003】
また水以外の液体を冷媒として用いる冷媒直冷は、冷却効果が高く冷却制御容易であるという利点があるものの冷媒漏れ防止対策が必要となる。
【0004】
さらに水を用いる冷却方式、すなわち水冷方式であるラジエター方式は構造が簡単であるものの外気温以下に冷却できないという問題がある。またこれも水冷方式であるチラー方式は構造簡単で確実に冷却できるという利点がある反面、バッテリーを温めることができという問題もある。
ラジエターとチラーのハイブリット方式は冷却制御が容易であるものの構造複雑になり、また水漏れの問題の可能性が指摘されている。
【0005】
以上の各種冷却方式の中で水冷方式によるバッテリー用冷却装置では、バッテリーケースと、そのバッテリーケースに収納するモジュールケースと、そのモジュールケース内に複数のバッテリーを収納する方式が従来から採用されている。
係るバッテリーモジュール方式を採用することによってバッテリー組付け工程のシンプル化を行うことが可能となる。具体的にはバッテリーを1つ1つバッテリーケースに入れてその各バッテリーの固定と配線接続を行う作業を行う場合にバッテリー組付け工程工数が膨大となる問題を解消し、生産性を飛躍的に向上することができる。またそのようにバッテリーモジュールを採用することによってバッテリー組付け工程のサブライン化や別の場所での作業にすることができ、工程設計の自由度が上がる。
【0006】
係る従来方式に関し特許文献1に示すバッテリー用冷却装置にあってはバッテリーモジュール100は、
図23に示すように、前後方向に積層した複数のバッテリーセル101と、複数のバッテリーセル101を収容するモジュールケース105とを備えている。
【0007】
さらにバッテリーケース200は、
図24に示すように、略水平な板状をなすロアケース201と、ロアケース201に対し上から覆うように組み付けられたカバー206とを備えている。
【0008】
図25に示すように複数のバッテリーモジュール100をロアケース201に固定した後、バッテリーモジュー ル100を上から覆い隠すようにカバー206を被せ、被せたカバー206をボルト等によってロアケース201に固定する。以上により、バッテリーケース200が構成されるとともに、バッテリーケース200内に複数のバッテリーモジュール100が固定された状態で収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されたバッテリー収納装置では
図26に示すようにバッテリーモジュール100の下面とロアケース201の底板部202の上面との間に冷却器300が配置される。その結果ロアケース201の底板部202、バッテリーモジュール100、冷却器300それぞれの高さを加算した地上高を生じる収納スペースが必要となる。しかもバッテリーモジュール100、冷却器300が上下に隣接して配置されて単にバッテリーモジュール100が下面から冷却されるだけであり、その冷却効率には限界があった。またそのような部品構成であることから部品点数が多くなり、部品コストが嵩むという問題もあった。
【0011】
本発明は以上の従来技術に関する問題に鑑み、収納スペース効率、冷却効率が良く、部品コストの点からも有利なバッテリー収納装置及びバッテリー収納装置の製造方法とこのバッテリー収納装置を備える電動移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明のバッテリー収納装置は、バッテリーケースと、そのバッテリーケースに収納されてバッテリーを収納可能にされたモジュールケースとを備えるバッテリー収納装置において、前記モジュールケース自体が温度調整液体経路を有することを特徴とする。
【0013】
また本発明のバッテリー収納装置は、バッテリーケースと、そのバッテリーケースに収納されてバッテリーを収納可能にされたモジュールケースとを備えるバッテリー収納装置において、前記モジュールケースと一体な温度調整液体経路を有することを特徴とする。
【0014】
さらに本発明のバッテリー収納装置は、バッテリーケースと、そのバッテリーケースに収納されてバッテリーを収納可能にされたモジュールケースとを備えるバッテリー収納装置において、前記モジュールケースに温度調整液体経路が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
また本発明のバッテリー収納装置の製造方法は、本発明のバッテリー収納装置の製造方法であって、樹脂射出成形によってモジュールケースの底部と側部とを一体に形成し、温度調整液体経路が形成された本体部を得る工程と、前記温度調整液体経路の開口部分にボトムパネルを溶着して前記モジュールケースを得る工程とよりなることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明のバッテリー収納装置の製造方法は、本発明のバッテリー収納装置の製造方法であって、予めモジュールケース本体部とモジュールケース配管カットモデルとを射出成型する工程と、前記モジュールケース配管カットモデルを前記モジュールケース本体部に振動溶着する工程とよりなることを特徴とする。
ことを特徴とする。
【0017】
加えて本発明の電動移動体は、本発明のバッテリー収納装置を備える電動移動体であって、バッテリー収納装置が移動体の駆動力を生じるモータに電力を供給するようにしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバッテリー収納装置及びバッテリー収納装置の製造方法とこのバッテリー収納装置を備える電動移動体によれば、収納スペース効率、冷却効率が良く、部品コストの点からも有利であるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るバッテリー収納装置の模式断面図である。
【
図2】
図1のバッテリー収納装置の分解斜視図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態に係るバッテリー収納装置の模式断面図である。
【
図4】本発明のバッテリー収納装置によるバッテリー収納状態の例を示す斜視図であり、(a)バッテリーの下面冷却時のバッテリー配列、(b)バッテリーの側面冷却時のバッテリー配列、である。
【
図5】本発明の一実施の形態のバッテリー収納装置における温度調整液体経路の一パターンを示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施の形態のバッテリー収納装置における温度調整液体経路の他のパターンを示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施の形態のバッテリー収納装置における温度調整液体経路の別のパターンを示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施の形態のバッテリー収納装置における温度調整液体経路のまた別のパターンを示す模式図である。
【
図9】本発明の他の実施の形態に係るバッテリー収納装置の部分斜視図である。
【
図10】本発明の他の実施の形態に係るバッテリー収納装置の部分模式図である。
【
図11】本発明のさらに他の実施の形態に係るバッテリー収納装置の部分模式図である。
【
図12】本発明のさらに他の実施の形態に係るバッテリー収納装置の部分斜視図であり、(a)組付け工程を示す、(b)組付け後を示す。
【
図14】本発明のさらに他の実施の形態に係るバッテリー収納装置の組付け工程を示す部分分解斜視図である。
【
図15】
図14に示す実施の形態のバッテリー収納装置の組付け後を示す部分斜視図である。
【
図16】
図15に示す実施の形態のバッテリー収納装置の横断面図である。
【
図17】本発明のバッテリー収納装置の製造方法の一実施の形態の説明図である。
【
図18】本発明のバッテリー収納装置の製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図19】本発明のバッテリー収納装置の製造方法の一実施の形態のまた他の説明図である。
【
図20】本発明のバッテリー収納装置の製造方法の他の実施の形態の説明斜視図である。
【
図22】本発明の電動移動体の一実施の形態の側面透視模式図である。
【
図23】従来のバッテリー用冷却装置におけるバッテリーモジュールの分解斜視図である。
【
図24】従来のバッテリー用冷却装置におけるバッテリーケースの斜視図である。
【
図25】従来のバッテリー用冷却装置のバッテリーケースにおけるバッテリーモジュールの収納状態を示す部分斜視図である。
【
図26】従来のバッテリー用冷却装置におけるバッテリーケースの部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示す本発明の一実施の形態に係るバッテリー収納装置1は、アルミ製のバッテリーケース2と、そのバッテリーケース2に収納されてリチウムイオンバッテリー3を収納可能にされた樹脂製モジュールケース4とを備える。バッテリーケース2の内側面に樹脂製モジュールケース4の外側面が嵌合する態様で、バッテリーケース2の内側に樹脂製モジュールケース4が収納される。
この本発明の一実施の形態に係るバッテリー収納装置1にあっては樹脂製モジュールケース4自体が温度調整液体経路である冷却水経路5を有する。すなわち樹脂製モジュールケース4自体に冷却水経路5が形成されて、樹脂製モジュールケース4が一体な冷却水経路5を有する。温度調整液体経路の態様としては加温若しくは加熱水経路とすることもある。
【0021】
さらに詳細には樹脂製モジュールケース4の下面には凹所5aが形成され、その凹所5aの開口部分5bがボトムパネル6によって閉塞されて冷却水経路5が形成される。樹脂製モジュールケース4の下面とボトムパネル6上面との間にはOリング7が配置されて止水が図られ、その状態で樹脂製モジュールケース4とボトムパネル6相互はボルト8によって締結される。なお、樹脂製モジュールケース4とボトムパネル6相互はボルト8による機械的結合と併せて、もしくは機械的結合以外に溶着手段又は接着手段によって締結することもできる。
また樹脂製モジュールケース4は一体に形成したセパレータ9を備え、このセパレータ9を介在させて複数のリチウムイオンバッテリー3が収納可能にされる。
【0022】
本実施の形態のバッテリー収納装置1は以上の様に構成される結果、従来の金属ケース、冷却装置及びバッテリーモジュールの3層構造のバッテリー収納装置に比較してバッテリー収納装置1の高さを低減することができる。すなわスペース効率の向上を図ることができる。しかも樹脂製モジュールケース4自体に冷却水経路5が形成されて、樹脂製モジュールケース4が一体な冷却水経路5を有する結果冷却効率も向上する。
【0023】
図3は本発明の他の実施の形態のバッテリー収納装置1を示す。本実施の形態では樹脂製モジュールケース4が底部4aと側部4bとを一体に形成してなり、側部4b自体が冷却水経路5を有する。すなわち側部4bに冷却水経路5が形成される。さらに詳細には樹脂製モジュールケース4の側部4b側面には凹所5cが形成され、その凹所5cの開口部分5dがサイドパネル10によって閉塞されて冷却水経路5が形成される。なお、樹脂製モジュールケース4の側面とサイドパネル10側面との間にはOリング11が配置されてその状態で樹脂製モジュールケース4とサイドパネル10相互は図示しないボルトによって締結される。またサイドパネル10の一端側部10aはバッテリーケース2の内側端部に嵌合して配置される。
【0024】
以上の実施の形態で樹脂製モジュールケース4が底部4aと側部4bとを一体に形成してなり、底部4a自体も冷却水経路5を有するようにしてもよい。すなわち底部4aにも冷却水経路5が形成されるようにしてもよい。
【0025】
図4(a)は底部4a自体が冷却水経路5を有する下面冷却時のリチウムイオンバッテリー3配列を示し、
図4(b)は、側部4b自体が冷却水経路5を有する。すなわち側部4bに冷却水経路5が形成される側面冷却時のリチウムイオンバッテリー3配列を示す。この場合に樹脂製モジュールケース4のサイズを適切に考慮し、下面冷却又は側面冷却いずれの場合でも同一サイズの樹脂製モジュールケース4によって同一数のリチウムイオンバッテリー3を収納することができるように構成することができる。
【0026】
以上の各実施の形態において樹脂製モジュールケース4は熱伝導率を向上する素材、例えば窒化アルミニウムを分散して高熱伝導化した複合材としてもよい。
またCNF(セルロースナノファイバー)との複合樹脂を素材として耐熱性を強化してもよい。
またアルミ製のバッテリーケース2及びサイドパネル10は炭素繊維複合樹脂を素材として軽量化を図ることもできる。
以上の各実施の形態において
図2に示すように樹脂製モジュールケース4の底部4a及び/又は側部4bには冷却水経路5に接続するインレット接続口12及びアウトレット接続口13が樹脂成型によって樹脂製モジュールケース4と一体に設けられる。
【0027】
図5~
図8は底部4aに形成される冷却水経路5の各種パターンを示す。
図5に示すパターンでは底部4aに底部4aの長手方向に延長する複数の同一長さの仕切り板14が同一間隔で相互に平行に配設される。各仕切り板14の両端部14a,bは底部4aの短手側両側内側面に達しない長さとされ、その両端部14a,b位置を均一に揃えて各仕切り板14が配置される。
以上の結果この
図5に示すパターンではインレット接続口12から流入する冷却水は底部4aの長手側両側内側面及び短手側両側内側面に沿った分枝路5a,bと、各仕切り板14間に形成される分枝路5c内を同一方向に進行してアウトレット接続口13に達して排出される。この態様はインレット接続口12から流入してアウトレット接続口13に達して排出される。このパターンでは冷却水がインレット接続口12から流入してアウトレット接続口13に達して排出されるまでの時間が比較的に短くなることから冷却水の温度が比較的に高い場合の冷却効率向上に有効である。
【0028】
図6に示すパターンでは
図5のパターンと同様に底部4aに底部4aの長手方向に延長する複数の同一長さの仕切り板14が同一間隔で相互に平行に配設される。しかし各仕切り板14の両端部14a,bのうち一端の14a若しくは14bは底部4aの短手側両側内側面の一方に達し、当接し、他端は短手側両側内側面の他方に達っせず、当接しない態様で、複数の同一長さの仕切り板14が交互に配置される。その結果この
図6に示すパターンではインレット接続口12から流入する冷却水の底部4aの長手側両側内側面に沿った分枝路5aは形成されるものの短手側両側内側面に沿った状態で延びる分枝路は形成されない。
以上の結果、この
図6に示すパターンでは
図5に示すパターンとは異なり、インレット接続口12から流入して底部4aの長手側両側内側面に沿った分枝路5aを流れる冷却水の流れを順方向の流れとすると、接続口12から流入して底部4aの長手側両側内側面に沿った分枝路5aを順方向に流れる冷却水は短手側両側内側面に到達すると仕切り板14間を逆方向に流れ、さらに反対側の短手側両側内側面に到達すると仕切り板14間を再度順方向に流れ、その順方向の流れと逆方向の流れを交互に反復し、蛇行しながらアウトレット接続口13に達して排出される。このパターンでは冷却水がインレット接続口12から流入してアウトレット接続口13に達して排出されるまでの時間が比較的に長くなることから冷却水の温度が比較的に低い場合の冷却効率向上に有効である。
【0029】
図7に示すパターンでは底部4aに底部4aの短手方向に延長する複数の同一長さの仕切り板14が同一間隔で相互に平行に配設される。各仕切り板14の両端部14a,bは底部4aの長手側両側内側面に達しない長さとされ、その両端部14a,b位置を均一に揃えて各仕切り板14が配置される。
以上の結果この
図5に示すパターンではインレット接続口12から流入する冷却水は底部4aの長手側両側内側面及び短手側両側内側面に沿った分枝路5a,bと、各仕切り板14間に形成される分枝路5c内を同一方向に進行してアウトレット接続口13に達して排出される。このパターンでは冷却水がインレット接続口12から流入してアウトレット接続口13に達して排出されるまでの時間が比較的に短くなることから冷却水の温度が比較的に高い場合の冷却効率向上に有効である。
【0030】
図8に示すパターンでは
図7に示すパターンと同様に底部4aに底部4aの短手方向に延長する複数の同一長さの仕切り板14が同一間隔で相互に平行に配設される。しかし各仕切り板14の両端部14a,bのうち一端の14a若しくは14bは底部4aの長手側両側内側面の一方に達し、当接し、他端は長手側両側内側面の他方に達っせず、当接しない態様で、複数の同一長さの仕切り板14が交互に配置される。その結果この
図8に示すパターンではインレット接続口12から流入する冷却水の底部4aの短手側両側内側面に沿った分枝路5aは形成されるものの長手側両側内側面に沿った状態で延びる分枝路は形成されない。
以上の結果、この
図8に示すパターンでは
図7に示すパターンとは異なり、インレット接続口12から流入して底部4aの短手側両側内側面に沿った分枝路5aを流れる冷却水の流れを順方向の流れとすると、接続口12から流入して底部4aの短手側両側内側面に沿った分枝路5aを順方向に流れる冷却水は長手側両側内側面に到達すると仕切り板14間を逆方向に流れ、さらに反対側の長手側両側内側面に到達すると仕切り板14間を再度順方向に流れ、その順方向の流れと逆方向の流れを交互に反復し、蛇行しながらアウトレット接続口13に達して排出される。このパターンでは冷却水がインレット接続口12から流入してアウトレット接続口13に達して排出されるまでの時間が比較的に長くなることから冷却水の温度が比較的に低い場合の冷却効率向上に有効である。
【0031】
図9はさらに本発明の他の実施の形態の樹脂製モジュールケース4を示す。本実施の形態では樹脂製モジュールケース4外周にさらに冷却配管15を設けて冷却効果を増強する。冷却配管15は樹脂製モジュールケース4の成型工程において肉厚の大きい部位を予め設定し、その部分にガス射出を行うことによって空洞を生成し、その空洞を冷却媒体の流動通路、すなわち冷却配管15とする。これによって、樹脂製モジュールケース4による冷却性能をさらに向上させることができる。
【0032】
図10、
図11は本発明のバッテリー収納装置1の樹脂製モジュールケース4の他の形態を示す。
図10に示す樹脂製モジュールケース4はガスインジェクション成形にあたってスライド金型を用いて得られ、冷却水経路5はほとんどの領域が樹脂層によって形成され、スライド金型を用いて樹脂製モジュールケース4の短手側両側面に形成された開口部分5bに成形後にボトムパネル6を溶着して樹脂製モジュールケース4を得ることができる。その場合にボトムパネル6は両側面の2枚の同一のボトムパネル6で足りる。冷却水経路5はその長手方向を樹脂製モジュールケース4の長手方向に一致させて、順方向と逆方向とが交互に形成される蛇行する冷却水経路5となる。
【0033】
図11に示す樹脂製モジュールケース4もガスインジェクション成形にあたってスライド金型を用いて得られ、冷却水経路5はその長手方向を樹脂製モジュールケース4の短手方向に一致させて、樹脂製モジュールケース4の長手方向に蛇行して進行する冷却水経路5となる。またその開口部分5bは樹脂製モジュールケース4の長手側両側面に形成され、成形後にボトムパネル6を溶着して樹脂製モジュールケース4を得ることができる。その場合にボトムパネル6は両側面の2枚の同一のボトムパネル6で足りる。
【0034】
図12(a)(b)は本発明のバッテリー収納装置1の樹脂製モジュールケース4の他の形態を示す。この実施の形態では樹脂製モジュールケース4壁面に板金プレス等によって得られた金属部品16をインサート成形し冷却効果を増強する。
この場合にリチウムイオンバッテリー3に金属板を直接に接する構造とした場合にはショートの可能性が生じ、リチウムイオンバッテリー3がダメージを受けることがある。その場合には金属板からの放熱が出来ず、冷却性能が低くなる。そこで樹脂製モジュールケース4を射出成型する際に熱伝導率の高い銅、アルミ等の板状金属部品16をインサート成形し、樹脂製モジュールケース4内部の温度制御を向上させると共にショートの可能性を無くし冷却性能の低下を防ぐ。そのために樹脂製モジュールケース4本体部には板状金属部品16が備える係止部16aを係止させる係止孔部17が長手側両側面に形成される。さらに樹脂製モジュールケース4外側面には係止孔部17を囲む庇部17a,b,c,dが樹脂製モジュールケース4外側面の外方に延出する態様で設けられる。なお、
図12中楕円破線部の庇部17a,b,c,dを
図12中で拡大して示す。
板状金属部品16が備える係止部16a端部は樹脂製モジュールケース4外側に係止孔部17を介して延出し、庇部17a,b,c,dに係合する。
図13に示す様に、その樹脂製モジュールケース4の係止孔部17の開口面積は16の係止部16の断面積よりも大にされており、その結果、庇部17a,b,c,dと金属部品16の係止部16aとの間に予め間隙18を設けることができる。これによって、温度変化における樹脂部分と金属部分の線膨張の差を吸収し、製品の寸法安定性を向上させることができる。
【0035】
図14は本発明のバッテリー収納装置1の樹脂製モジュールケース4の他の形態を示す。樹脂製モジュールケース4を製造するにあたって予めプレス工法にて成型された熱伝導率の高い、銅、アルミ等の板状金属部品16を用意する。この板状金属部品16を配置して樹脂製モジュールケース配管カットモデル4eを脂製モジュールケース本体部4dに振動溶着して締結し、
図15、
図16に示す樹脂製モジュールケース4を得る。これによって板状金属部品16及び冷却水経路5の冷却媒体を介して効率よくバッテリーを冷却することを可能ならしめる。
具体的には
図16に示す様に板状金属部品16はその端部が冷却水経路5に当接して冷却水経路5によって冷却されると共に金属部品16の係止部16a端部は樹脂製モジュールケース4の外側に突出して、放熱される。
【0036】
以下に本発明のバッテリー収納装置1の製造方法につき説明する。
図17、
図18、
図19に示すように先ず樹脂射出成形によって樹脂製モジュールケース4の底部4aと側部4bとを一体に形成した本体部4cを得る。係る本体部4cには所定の射出成形金型(図示せず)を用いることによって冷却水経路5が形成される。その冷却水経路5の開口部分5bにボトムパネル6を溶着して樹脂製モジュールケース4を得ることができる。この場合に複数の開口部分5bに単一のボトムパネル6aを溶着するようにすることによって部品点数を低減しボトムパネル6の溶着工数を削減することができる。また冷却水経路5の長手方向端部に開口部分5bが形成される様にすることによって溶着工程を簡易化することができる。
【0037】
図20は本発明のバッテリー収納装置1の製造方法の他の形態を示す。
図20に示すように予め樹脂製モジュールケース本体部4dと樹脂製モジュールケース配管カットモデル4eを射出成型する。その後に樹脂製モジュールケース配管カットモデル4eを脂製モジュールケース本体部4dに振動溶着して
図21に示す樹脂製モジュールケース4を得る。係る態様によって樹脂製モジュールケース4の底部冷却部の冷却効果を最適化するよう制御する。すなわち樹脂製モジュールケース本体部4dを同一の態様の部品として、一方樹脂製モジュールケース配管カットモデル4eによって多様な冷却媒体の流路を形成できるようにする。これによって樹脂製モジュールケース配管カットモデル4eによって得られる冷却媒体の流路の最適化が容易となる。そのように最適化した樹脂製モジュールケース配管カットモデル4eを振動溶着により締結し、得られる樹脂製モジュールケース4によって適切な冷却効果が得られるように制御することが可能となる。
【0038】
図22は本発明に係るバッテリー収納装置1を備える電動移動体としての自動車19を示す。この自動車19ではバッテリー収納装置1が自動車19の駆動力を生じるモータに電力を供給するように配置される。この場合にバッテリー収納装置1は自動車19の全高の半分の高さより下方に配置される。自動車19は電気自動車又はハイブリッド車又はPHEV又はFHEVである。
本発明に係るバッテリー収納装置1によれば従来の収納装置に比べ高さが低減されているため以上の自動車19はその全高が低減されている。
その結果、自動車19は前面投影面積を低減して空気抵抗係数(Cd=Contance drag) X 前面投影面積によって求められる空気抵抗を低くすることを可能として、電費向上を可能としている。しかも全高が低くかつバッテリー収納装置1は自動車19の全高の半分の高さより下方に配置されることも相まって重心高が低減され操舵性能が向上されている。特に電気自動車又はハイブリッド車はトルクが大きいので車重を下げることにもまして空気抵抗を下げた方が電費の抑制となるため空力性能の向上は非常に重要となる。
【0039】
本発明に係るバッテリー収納装置1を備える電動移動体は空中飛翔体である航空機若しくは水上又は水中を移動する船体とすることもできる。
さらに本発明に係るバッテリー収納装置1を備える電動移動体は地上に設置された軌道上を移動する電車とすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・バッテリー収納装置、3・・・リチウムイオンバッテリー、2・・・バッテリーケース、4・・・樹脂製モジュールケース、5・・・冷却水経路、6・・・ボトムパネル、9・・・セパレータ。